【実施例】
【0022】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0023】
製造例1〔重合方法(A)〕
攪拌機を有する内容積10Lのステンレス鋼製圧力反応器に、
水 5550g
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4(乳化剤) 10g
リン酸水素二ナトリウム・12水和物(緩衝剤) 3g
アセトン(連鎖移動剤) 15g
を仕込み、内部空間を窒素ガスで置換した後、
フッ化ビニリデン〔VdF〕 700g(77.0モル%)
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕 490g(23.0モル%)
を初期仕込みガスとして仕込み、反応器内温を80℃に昇温した。この時の反応器内圧は約3.66MPa・Gであった。
【0024】
反応器内温度が安定していることを確認した後、過硫酸アンモニウム(反応開始剤)3.5gをイオン交換水100gに溶解させた重合開始剤水溶液として反応器内に圧入し、重合反応を開始させた。重合反応開始後は、内圧が3.40MPa・Gとなったところで、VdF/HFP=68.5/31.5(モル%)の混合ガスを追加分添し、反応器内圧力を3.50MPa・Gまで昇圧させた。重合反応中はVdF/HFP=68.5/31.5(モル%)の混合ガスを追加分添することで、反応圧力を3.40〜3.50MPa・Gに保った。追加分添したVdF/HFP混合ガスの合計量が2,120g(1,020g/1,100g)となったところで追加分添を終了し、その後反応器内の圧力が1.45MPa・Gとなった時点で反応器を冷却して重合反応を終了させた。反応開始剤投入から重合反応終了までに要した時間は278分であった。
【0025】
得られた含フッ素エラストマー共重合体の水性分散液8,425gを、同量の2重量%CaCl
2水溶液で凝集させた後
ろ過して得られたVdF/HFP共重合体を、10倍量のイオン交換水で5回洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させて、2,690gのVdF/HFPエラストマー共重合体Aを得た。ポリマー収率(添加モノマーに対して)は81.3%であり、またその共重合組成を
19F-NMRにより測定すると、VdF/HFP=78.0/22.0(モル%)であった。
【0026】
得られた共重合体A 20mgについて、示差走査熱量測定装置(SII Nano Technology Inc.製品DSC6220 高感度DSC)を用い、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で、ファーストステップとして200℃までの昇温を行い、次いでセカンドステップとして、10℃/分の降温速度でマイナス50℃まで降温を行い、最後にサードステップとして、再度10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温を行い、セカンドステップにおける結晶化ピークおよび転移熱量の測定、サードステップにおける結晶融点、結晶融解熱量ΔHおよびガラス転移温度Tgの確認を行った。その結果、結晶化ピークは30℃に確認され、転移熱量は1.7J/gであり、結晶融点は95℃に確認され、結晶融解熱量ΔHは1.7J/g、ガラス転移温度は-22℃であった。
【0027】
製造例2〔重合方法(B)〕
攪拌機を有する内容積10Lのステンレス鋼製圧力反応器に、
水 5600g
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4(乳化剤) 10g
リン酸水素二ナトリウム・12水和物(緩衝剤) 3g
アセトン(連鎖移動剤) 15g
を仕込み、内部空間を窒素ガスで置換した後、
フッ化ビニリデン〔VdF〕 270g(33.6モル%)
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕 1250g(66.4モル%)
を初期仕込みガスとして仕込み、反応器内温を80℃に昇温した。この時の反応器内圧は約3.07MPa・Gであった。
【0028】
反応器内温度が安定していることを確認した後、過硫酸アンモニウム(反応開始剤)5gをイオン交換水100gに溶解させた重合開始剤水溶液として反応器内に圧入し、重合反応を開始させた。重合反応開始後は、内圧が2.90MPa・Gとなったところで、VdF(100モル%)ガスを追加分添し、反応器内圧力を3.00MPa・Gまで昇圧させた。重合反応中はVdF(100モル%)ガスを追加分添することで、反応圧力を2.90〜3.00MPa・Gに保った。追加分添したVdFの合計量が1,460gとなったところで追加分添を終了し、その後反応器内の圧力が1.35MPa・Gとなった時点で反応器を冷却して重合反応を終了させた。反応開始剤投入から重合反応終了までに要した時間は277分であった。
【0029】
得られた含フッ素エラストマー共重合体の水性分散液8,112gについて、実施例1と同様に洗浄および乾燥を行い、2,480gのVdF/HFPエラストマー共重合体Bを得た。ポリマー収率は83.2%であり、その共重合組成は、VdF/HFP=78.1/21.9(モル%)であった。実施例1と同様に、DSC測定が行われたところ、結晶化ピークは21℃に確認され、転移熱量は3.1J/gであり、結晶融点と思われるゆるやかな転移が83℃付近で確認され、結晶融解熱量ΔHは4.6J/gであり、ガラス転移温度は-21℃であった。
【0030】
製造例3〔重合方法(A)〕
攪拌機を有する内容積10Lのステンレス鋼製圧力反応器に、
水 5550g
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4(乳化剤) 10g
リン酸水素二ナトリウム・12水和物(緩衝剤) 3g
アセトン(連鎖移動剤) 18g
を仕込み、内部空間を窒素ガスで置換した後、
フッ化ビニリデン〔VdF〕 660g(81.5モル%)
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕 350g(18.5モル%)
を初期仕込みガスとして仕込み、反応器内温を80℃に昇温した。この時の反応器内圧は約3.69MPa・Gであった。
【0031】
反応器内温度が安定していることを確認した後、過硫酸アンモニウム(反応開始剤)3.5gをイオン交換水100gに溶解させた重合開始剤水溶液として反応器内に圧入し、重合反応を開始させた。重合反応開始後は、内圧が3.40MPa・Gとなったところで、VdF/HFP=78.2/21.8(モル%)の混合ガスを追加分添し、反応器内圧力を3.50MPa・Gまで昇圧させた。重合反応中はVdF/HFP=78.2/21.8(モル%)の混合ガスを追加分添することで、反応圧力を3.40〜3.50MPa・Gに保った。追加分添したVdF/HFP混合ガスの合計量が2,250g(1,360g/890g)となったところで追加分添を終了し、その後反応器内の圧力が1.71MPa・Gとなった時点で反応器を冷却して重合反応を終了させた。反応開始剤投入から重合反応終了までに要した時間は316分であった。
【0032】
得られた含フッ素エラストマー共重合体の水性分散液7,815gについて、実施例1と同様に洗浄および乾燥を行い、2,550gのVdF/HFPエラストマー共重合体Cを得た。ポリマー収率は78.2%であり、またその共重合組成は、VdF/HFP=84.2/15.8(モル%)であった。実施例1と同様に、DSC測定が行われたところ、結晶化ピークは72℃に確認され、転移熱量は5.6J/gであり、結晶融点は124℃で確認され、結晶融解熱量ΔHは3.7J/gであり、ガラス転移温度は-26℃であった。
【0033】
比較製造例〔
重合方法(A)に準ずる〕
攪拌機を有する内容積10Lのステンレス鋼製圧力反応器に、
水 5100g
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4(乳化剤) 10g
リン酸水素二ナトリウム・12水和物(緩衝剤) 3g
アセトン(連鎖移動剤) 18g
を仕込み、内部空間を窒素ガスで置換した後、
フッ化ビニリデン〔VdF〕 260g(47.2モル%)
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕 680g(52.8モル%)
を初期仕込みガスとして仕込み、反応器内温を80℃に昇温した。この時の反応器内圧は約3.11MPa・Gであった。
【0034】
反応器内温度が安定していることを確認した後、過硫酸アンモニウム(反応開始剤)3.5gをイオン交換水100gに溶解させた重合開始剤水溶液として反応器内に圧入し、重合反応を開始させた。重合反応開始後は、内圧が3.00MPa・Gとなったところで、VdF/HFP=79.9/20.1(モル%)の混合ガスを追加分添し、反応器内圧力を3.10MPa・Gまで昇圧させた。重合反応中はVdF/HFP=79.9/20.1(モル%)の混合ガスを追加分添することで、反応圧力を3.00〜3.10MPa・Gに保った。追加分添したVdF/HFP混合ガスの合計量が2,100g(1,320g/780g)となったところで追加分添を終了し、その後反応器内の圧力が1.10MPa・Gとなった時点で反応器を冷却して重合反応を終了させた。反応開始剤投入から重合反応終了までに要した時間は251分であった。
【0035】
得られた含フッ素エラストマー共重合体の水性分散液7,760gについて、実施例1と同様に洗浄および乾燥を行い、2,460gのVdF/HFP共重合体Dを得た。ポリマー収率は80.9%であり、またその共重合組成は、VdF/HFP=78.0/22.0(モル%)であった。実施例1と同様にDSC測定が行われたが、結晶化ピークおよび結晶融点は確認されなかった。ガラス転移温度は-22℃であった。
【0036】
実施例1
製造例1で得られたVdF/HFPエラストマー共重合体A 100重量部
PTFE充填剤(ダイキン工業製品L-5F) 35 〃
酸化マグネシウム(協和化学製品キョーワマグ♯150) 3 〃
ハイドロタルサイト(同社製品DHT-4A) 1 〃
ビスフェノールAF(キュラティブ♯30:有効成分50重量%) 3.5 〃
5-ベンジル-1,5-ジアザビシクロ〔4,3,0〕 0.875 〃
-5-ノネニウムテトラフルオロボレート
以上の各成分を、加圧式ニーダおよびオープンロールで混練し、180℃、6分間の一次架橋(加圧プレス)および260℃、10時間の二次架橋(オーブン架橋)を行い、架橋成形した架橋シート(100×200×2mm)およびストッパー成形品を用いて、硬さ試験、脱離試験、粘着試験および反発弾性率の測定を行った。
硬さ試験:JIS K6253(1997)準拠。初期および25℃で14日間保管した後の架橋シートに
ついてタイプAデュロメータを用いて瞬時の硬さを測定した
脱離試験:フィルターろ過された純水を入れたガラスビーカーにストッパー成形品を入
れて1分間超音波を加え洗浄を行った後、純水中に抽出された0.5μm以上の
パーティクルをリキッドパーティクルカウンター(残渣塵埃測定機:リオン
社製KS-28)を用いて測定した
パーティクル量が少ない程クリーンな材料といえる
粘着試験:マグネットホールドタイプのストッパー成形品をHDD実機に装着し、(1)初期
および(2)磁力によってストッパーとアームを接触
させ、80℃、相対湿度
80%RHといった環境負荷を10時間与えた
後、アームを回転させてストッパー
からアームが離れる際の
引剥力を環境負荷前後で測定し、ホールディングト
ルク増加率を算出した
ホールディングトルク増加率(%)=
〔(環境負荷後の引剥力−初期の引剥力)/初期の引剥力〕×100
反発弾性率の測定:JIS K6255準拠
厚さ2mm、直径29mmのゴムシートを6枚重ねて試験片とし、リュプケ
法により-20℃、25℃、80℃での反発弾性率を測定した
HDD用ストッパーとしては、反発弾性率が低いほどアームの振動を
よく吸収することとなる
【0037】
実施例2
実施例1において、PTFE充填剤量が5重量部に変更されて用いられた。
【0038】
実施例3
実施例1において、PTFE充填剤量が70重量部に変更されて用いられた。
【0039】
実施例4
実施例1において、ハイドロタルサイト量が0.5重量部に変更されて用いられた。
【0040】
実施例5
実施例1において、ハイドロタルサイト量が2重量部に変更されて用いられた。
【0041】
実施例6
実施例1において、5-ベンジル-1,5-ジアザビシクロ〔4,3,0〕-5-ノネニウムテトラフルオロボレートの代わりに
、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(キュラティブ♯20:有効成分33重量%)7.5重量部が用いられた。
【0042】
実施例7
実施例1において、製造例1で得られたVdF/HFPエラストマー共重合体Aの代わりに、製造例2で得られたVdF/HFPエラストマー共重合体Bが同量用いられた。
【0043】
実施例8
実施例1において、製造例1で得られたVdF/HFPエラストマー共重合体Aの代わりに、製造例3で得られたVdF/HFPエラストマー共重合体Cが同量用いられた。
【0044】
比較例1
実施例1において、さらにFEFカーボンブラック(東海カーボン製シーストG-SO)5重量部が用いられた。
【0045】
比較例2
実施例1において、PTFE充填剤の代わりにMTカーボンブラック(Huber製品N990)35重量部が用いられた。
【0046】
比較例3
実施例1において、ハイドロタルサイト量が3重量部に変更されて用いられた。
【0047】
比較例4
実施例1において、ハイドロタルサイトの代わりに、酸化カルシウム(近江化学工業製品カルディック♯2000)3重量部が用いられた。
【0048】
比較例5
実施例1において、PTFE充填剤量が105重量部に変更されて用いられた。
【0049】
参考例
実施例1において、フッ素ゴムとして比較製造例で得られた含フッ素エラストマー共重合体Dが同量用いられた。
【0050】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。なお、比較例3〜4は架橋成形物の発泡により、また比較例5は混練加工性が悪く分散不良により、いずれも評価ができなかった。
表
実施例 比較例
項目 1 2 3 4 5 6 7 8 1 2 参考例
硬さ試験
初期硬さ(Duro A) 81 72 90 81 82 84 88 86 82 78 72
硬さ変化(Point) 0 +1 0 0 0 0 +1 +2 0 +3 0
脱離試験
パーティクル数(count/cm
2) 1 1 1 1 1 1 1 1 10 10 1
粘着試験
ホールディングトルク増加率(%) 13 15 11 17 12 15 13 13 12 15 12
反発弾性率
-20℃(%) 31 28 32 30 32 30 29 29 30 25 28
+25℃(%) 12 13 11 11 13 13 11 11 13 13 11
+80℃(%) 41 46 40 40 42 40 43 45 43 46 40