特許第6020110号(P6020110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020110
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】トロイダル型無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 15/38 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   F16H15/38
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-268999(P2012-268999)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-114864(P2014-114864A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】土肥 永生
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−234685(JP,A)
【文献】 特開2009−281403(JP,A)
【文献】 特開2004−60715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転トルクが入力される入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して入力側ディスクから所定の変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあるトラニオン軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンを前記トラニオン軸の軸方向に変位させる駆動装置とを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記駆動装置は、シリンダボディと、このシリンダボディに設けられ、かつ、前記トラニオン軸に連結されたピストンとを備え、
前記トラニオン軸の軸方向における前記トラニオンの変位量が、当該トラニオンが前記シリンダボディに当接することで規制されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記ピストンは前記トラニオン軸に嵌合する嵌合筒を有し、
前記トラニオン軸に前記嵌合筒が嵌合され、この嵌合筒の一方の端部が、前記トラニオン軸に形成された当接部に当接され、
前記嵌合筒の他方の端部が前記トラニオン軸に螺合されたナットによって締め付けられることによって、前記嵌合筒が前記ナットと前記当接部とによって挟み付けられて固定されていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記トラニオンは、当該トラニオンを傾転自在に支持する傾転軸受を有し、
前記トラニオン軸の軸方向における前記トラニオンの変位量が、前記傾転軸受が前記シリンダボディに当接することで規制されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトロイダル型無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図5および図6に示すように構成されている。図5に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁(中間壁)13に対しアンギュラ玉軸受107を介して支持されるとともに、この仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図6参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図5中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図5の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図5のA−A線に沿う断面図である図6に示すように、ケーシング50の内側であって、出力側ディスク3,3の側方位置には、両ディスク3,3を両側から挟む状態で一対のヨーク23A,23Bが支持されている。これら一対のヨーク23A,23Bは、鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。そして、後述するトラニオン15の両端部に設けられた枢軸14を揺動自在に支持するため、ヨーク23A,23Bの四隅には、円形の支持孔18が設けられるとともに、ヨーク23A,23Bの幅方向の中央部には、円形の係止孔19が設けられている。
【0007】
一対のヨーク23A,23Bは、ケーシング50の内面の互いに対向する部分に形成された支持ポスト64,68により、支持ポスト64,68を支点として揺動できるように支持されている。これらの支持ポスト64,68はそれぞれ、入力側ディスク2の内側面2aと出力側ディスク3の内側面3aとの間にある第1キャビティ221および第2キャビティ222にそれぞれ対向する状態で設けられている。
【0008】
したがって、ヨーク23A,23Bは、各支持ポスト64,68に支持された状態で、その一端部が第1キャビティ221の外周部分に対向するとともに、その他端部が第2キャビティ222の外周部分に対向している。
【0009】
第1および第2のキャビティ221,222は同一構造であるため、以下、第1キャビティ221のみについて説明する。
【0010】
図6に示すように、ケーシング50の内側において、第1キャビティ221には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸(傾転軸)14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図6においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、その本体部である支持板部16の長手方向(図6の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0011】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0012】
また、前述したように、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図6の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。前述したように、各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受(傾転軸受)30を介して揺動自在(傾転自在)に支持されている。また、前述したように、ヨーク23A,23Bの幅方向(図6の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、支持ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ(シリンダボディ)31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0013】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図6で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0014】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0015】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0016】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図6の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(枢軸14から延びる軸部)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ(シリンダボディ)31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0017】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、駆動軸22の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2および入力軸1に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0018】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位(オフセット)する。例えば、図6の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
【0019】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0020】
ところで、上記構成のトロイダル型無段変速機において、トラニオン15の枢軸14を揺動自在に且つ軸方向に変位自在に支持する前述したヨーク23A,23Bは、従来から様々な構造形態のものが知られているが、一般的には、変速時、それ自体が球面ポスト64,68を中心に揺動することにより、例えば一方のトラニオン15(例えば図6の右側のトラニオン15)の上側への変位に伴って他方のトラニオン15(例えば図6の左側のトラニオン15)を下側へ変位させるといったように、同一キャビティ内で対向する一対のトラニオン15の動きをシーソーのように同期させてこれらをそれぞれ逆方向に変位させる機能を有している。
【0021】
例えば、図6の左側の駆動ピストン33が同図の下側に変位し且つ右側の駆動ピストン33が同図の上側に変位すると、これらの駆動ピストン33に結合されているトラニオン15,15が互いに逆方向に変位し(左側のトラニオン15が下側に変位し、右側のトラニオン15が上側に変位し)、これにより、上側のヨーク23Aは、その右側が上になる方向に傾く。同様に、下側のヨーク23Bも上側のヨーク23Aと同じ方向に傾く。逆に、図6の左側の駆動ピストン33が同図の上側に変位し且つ右側の駆動ピストン33が同図の下側に変位すると、上側のヨーク23Aは、その左側が上になる方向に傾き、同様に、下側のヨーク23Bも上側のヨーク23Aと同じ方向に傾く。
【0022】
ここで問題となるのは、駆動ピストン33の油圧制御によっては上記変速時に駆動ピストン33の端面33aと駆動シリンダ31(61)の端面61aとが接触することが考えられ、その場合には、両者が接触しながらトラニオン15およびパワーローラ11と共に駆動ピストン33が傾転してしまうということである。このような事態が生じると、端面33a,61a同士の接触部に摩耗が発生したり、また、接触による摩擦抵抗によって駆動ピストン33を固定するためのボルトが緩むことが懸念される。
そのため、例えば特許文献1では、一対のヨークを揺動可能に支持する支持部材を備え、この支持部材およびヨークの少なくとも一方に、トラニオンの軸方向変位に伴うヨークの揺動を規制する規制手段を形成している。
また、特許文献2では、トラニオンをその軸方向に変位させる油圧作動の駆動装置を備え、当該駆動装置の油圧シリンダを構成するバルブボディに、トラニオンの軸方向変位に伴うヨークの揺動を規制するストッパをバルブボディとは別体に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2008−138762号公報
【特許文献2】特開2012−177394公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
このように、前記特許文献1および2に記載の発明では、ヨークによってトラニオンの軸方向への移動を規制している。しかし、ヨークとトラニオンの位置は、常に同じではない。つまり、ヨークとトラニオンとは完全固定されているものではなく、必ずしもヨークとトラニオンが一緒に動くとは限らない。
一方、トラニオン(トラニオンの上下端部に設けられたトラニオンボール)とヨークとの間に隙間がある場合があり、この場合、当該隙間分ヨークとトラニオンが上下に相対的に動くことになる。一般的にはトラニオンの変形により、トラニオンに設けられた傾転ベアリングがヨークに押し付けられるので、ヨークと傾転ベアリングとの間に摩擦力が生じ、この摩擦力によって、ヨークとトラニオンが上下に相対的に動くことはないと考えられている。
そのため、従来のヨークをストッパ等によって止めてトラニオンの軸方向への移動を規制する場合、前記摩擦力が大きい場合は、トラニオンがヨークから外れることはない(そのため、従来のストッパ等でヨークを止めれば、トラニオンも止まる)が、前記摩擦力以上の上下方向の荷重がトラニオンに入力されると、トラニオンがヨークから抜けるように動くおそれがあり、その場合、ヨークとトラニオンが上下方向に相対的に動いてしまうので、ヨークをストッパ等によって拘束しても、それ以上にトラニオンが上下に動くことになる。
したがって、目論見よりもトラニオンが上下に動くと、ピストンがシリンダボディに接触しないようにピストン室の上下方向空間を大きくとる必要があり、このためシリンダボディが大型化してしまうという問題があった。
【0025】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、シリンダボディを大型化することなく、トラニオンの軸方向への移動を確実に規制できるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記目的を達成するために、本発明のトロイダル型無段変速機は、回転トルクが入力される入力側ディスクと、前記入力側ディスクとの間に挟持されるパワーローラを介して入力側ディスクから所定の変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスクと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあるトラニオン軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンを前記トラニオン軸の軸方向に変位させる駆動装置とを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記駆動装置は、シリンダボディと、このシリンダボディに設けられ、かつ、前記トラニオン軸に連結されたピストンとを備え、
前記トラニオン軸の軸方向における前記トラニオンの変位量が、当該トラニオンが前記シリンダボディに当接することで規制されていることを特徴とする。
【0027】
ここで、トラニオンはシリンダボディに直接当接するように構成してもよいし、トラニオンに設けた他の部材を介してシリンダボディに間接的に当接するように構成してもよい。
他の部材としては、例えばワッシャや、トラニオンに設けられて、当該トラニオンを傾転自在に支持する傾転軸受を採用できる。
【0028】
本発明においては、トラニオンがトラニオン軸の軸方向に変位して、当該トラニオンがシリンダボディに当接することによって、直接トラニオンのトラニオン軸の軸方向への変位を規制しており、従来のようにヨークによって規制するものでないので、ピストンと、シリンダボディとの隙間を大きくする必要がない、つまりピストン室の上下方向空間を大きくとる必要がない。したがって、シリンダボディを大型化することなく、トラニオンの軸方向への移動を確実に規制できる。
【0029】
本発明の前記構成において、前記ピストンは前記トラニオン軸に嵌合する嵌合筒を有し、
前記トラニオン軸に前記嵌合筒が嵌合され、この嵌合筒の一方の端部が、前記トラニオン軸に形成された当接部に当接され、
前記嵌合筒の他方の端部が前記トラニオン軸に螺合されたナットによって締め付けられることによって、前記嵌合筒が前記ナットと前記当接部とによって挟み付けられて固定されていてもよい。
【0030】
このような構成によれば、トラニオンがトラニオン軸の軸方向に変位して、当該トラニオンがシリンダボディに当接するとともに、トラニオン軸が回転しても、ピストンの嵌合筒は、ナットと当接部とによって挟み付けられて固定されているので、トラニオン軸とピストンとが相対回転することがない。
したがって、トラニオン軸の下端部に螺合していたナットが緩んでしまうことがなく、よって、トロイダル型無段変速機の機能を損うこともない。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、シリンダボディを大型化することなく、トラニオンの軸方向への移動を確実に規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、バリエータモジュールの断面図である。
図2】同、(a)は図1における要部の拡大断面図、(b)はトラニオンの上下方向への変位を規制する手段を示す要部の拡大断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、その要部の概略を示す断面図である。
図4】本発明の第3の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、その要部の概略を示す断面図である。
図5】従来のトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。
図6図5におけるA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
近年、トロイダル型無段変速機においては、モジュール化したものが主流にとなってきているので、本実施の形態では、モジュール化されたバリエータモジュールに、本発明を適用した場合を例にとって説明する。
なお、前述した従来のトロイダル型無段変速機と共通構成部分には、同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。また、本発明は前述した従来のトロイダル型無段変速機に適用することもできる。
【0034】
図1に示すように、バリエータモジュール43は、図示しないケーシングに収容する前の段階で、前記入力軸1、入力側ディスク(図5参照)、出力側ディスク(図5参照)、出力歯車、上下のヨーク23A,23B、トラニオン15、パワーローラ11、駆動装置32、押圧装置(図5参照)、固定部材52(アッパープレート)等が一体に組み立てられて構成されている。
なお、このバリエータモジュール43を組んだ段階でケーシングに収容する前に、試験的にバリエータモジュール43を動作(回転)させることが可能になっている。
【0035】
このようなバリエータモジュール43においては、パワーローラ11を支持するトラニオン15は、駆動装置32に支持されている。
また、対向するトラニオン15,15間には、柱状ポスト69が設けられ、この柱状ポスト69の上端部に上側の球面ポスト64が形成され、下端部に下側の球面ポスト68が形成されている。上側の球面ポスト64は上側のヨーク23Aに形成された係止孔19に嵌合され、下側の球面ポスト68は下側のヨーク23Bに形成された係止孔19に嵌合されている。
また、柱状ポスト69は、上側シリンダボディ61の上面に形成され、かつ、柱状ポスト69の下端面に形成された凸部が嵌合する凹部(インロー穴部)と、アッパープレート52の下面に設けられ、柱状ポストの上端面に形成された凸部が嵌合する凹部(インロー穴部)とにより位置決めされている。
さらに、バリエータモジュール43において一対の柱状ポスト69がアッパープレート52と、駆動シリンダ(シリンダボディ)31を接続した状態となっている。
【0036】
また、柱状ポスト69の上下の中央部分を入力軸1が貫通した状態となっており、バリエータモジュール43において、入力軸1を柱状ポスト69が支持している。また、バリエータモジュール43においては、一対の柱状ポスト69に支持された入力軸1に一対の入力側ディスク、出力側ディスク、出力歯車、押圧装置等が支持されている。
なお、前記一対の出力側ディスクと出力歯車は、一対の出力側ディスクの背面同士を接合した状態に、一対の出力側ディスクを一体にするとともに、この一体になった出力側ディスクの外周面に歯を設けて出力歯車とした一体型出力側ディスクが用いられている。
【0037】
前記トラニオン15はトラニオン本体15aと、このトラニオン本体15aの端部に一体的に設けられたトラニオン軸15bとを有しており、このトラニオン軸15bに駆動ピストン(ピストン)33が連結されている。なお、前記トラニオン15の内部には、このトラニオン15の内側面に設けたパワーローラ11の回転支持部に、潤滑油を送り込むための潤滑油通路27a、27bが設けられている。
図2(a)に示すように、駆動ピストン33は、円板状のピストン本体331とトラニオン軸15bに嵌合する嵌合筒332とを備えており、嵌合筒332の外周部にピストン本体331が同軸に設けられている。
駆動ピストン33の嵌合筒332はトラニオン軸15bに外挿されており、当該嵌合筒332の上端面は、トラニオン15の下端部に設けられた当接面15cにワッシャ15dを介して当接されている。この当接面15cは、トラニオン軸15bの上端の周囲にトラニオン軸15bと同軸に形成された円形状の平面であり、この当接面15cにワッシャ15dがその外周を当接面15cより外側にはみ出させて当接されている。
また、トラニオン軸15bの下端部には、雄ネジが形成されており、この雄ネジにナット15eが螺合されている。このナット15eは嵌合筒332の下端面に当接されたうえで締め付けられている。これによって、嵌合筒332は、ナット15eと当接面15cとによって挟み付けられて固定されている。なお、嵌合筒332と当接面15cとの間にはワッシャ15dが介在している。
【0038】
また、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ(シリンダボディ)31内に、駆動ピストン33が油密に嵌装されている。なお、駆動ピストン33は、図1において、左右に一対設けられており、駆動シリンダ(シリンダボディ)31と、駆動ピストン33,33とで、トラニオン15,15をそのトラニオン軸15bの軸方向に変位させる駆動装置32が構成されている。
【0039】
また、駆動シリンダ(シリンダボディ)31を構成する上側シリンダボディ61の上面には上方に突出するリング状の突出部61bが形成されており、この突出部61bの内周面に駆動ピストン33の嵌合筒332が液密にかつ上下方向に摺動自在に摺接している。
前記突出部61bとトラニオン15の当接面15cに当接されているワッシャ15dとの間には所定の間隔yが設けられている。この間隔yがトラニオン15の下方向変位規制距離となる。
そして、トラニオン軸15bの軸方向(図1および図2(a)において下方向)におけるトラニオン15の変位量は、当該トラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接することで規制されている。
【0040】
すなわち、図1において右側の駆動ピストン33によって右側のトラニオン15が下方に変位する場合、当該右側のトラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接して、それ以上の変位が規制される。一方、右側のトラニオン15の下方の変位に伴って、左側の駆動ピストン33によって左側のトラニオン15が上方に変位すると、当該左側のトラニオン15の上端部に形成された当接部15sがアッパープレート52の下面に形成された凹部の底面52aに当たることによって、左側のトラニオン15の上方への変位が規制される。
同様に、左側の駆動ピストン33によって左側のトラニオン15が下方に変位する場合、当該左側のトラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接して、それ以上の変位が規制される。一方、左側のトラニオン15の下方の変位に伴って、右側の駆動ピストン33によって右側のトラニオン15が上方に変位すると、当該右側のトラニオン15の上端部に形成された当接部15sがアッパープレート52の下面に形成された凹部の底面52aに当たることによって、右側のトラニオン15の上方への変位が規制される。
したがって、トラニオン軸15bの軸方向(図1および図2(a)において上下方向)におけるトラニオン15の変位量は、当該トラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接するとともに、トラニオン15の当接部15sがアッパープレート52の下面の凹所の底面52aに当たることによって規制されることになる。
【0041】
このように、本実施の形態では、トラニオン軸15bの軸方向におけるトラニオン15の変位量を、当該トラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介してシリンダボディ31の突出部61aに当接するとともに、トラニオン15の当接部15sがアッパープレート52の底面52aに当たることで規制しており、従来のようにヨークによって規制するものでないので、ピストン(駆動ピストン)33と、シリンダボディ31との隙間を大きくする必要がない、つまりピストン室の上下方向空間を大きくとる必要がない。したがって、シリンダボディ31を大型化することなく、トラニオン15の軸方向への移動を確実に規制できる。
【0042】
また、本実施の形態では、トラニオン15の上端部に形成された当接部15sをアッパープレート52の下面に形成された凹部の底面52aに当てることによって、トラニオン15の上方への変位を規制するようにしたが、図2(b)に示すように、トラニオン15の軸方向でかつ上方への変位量を、当該トラニオン15をシリンダボディ31に当接っせることによって規制してもよい。
すなわちまず、前記トラニオン15のトラニオン軸15bの下端部には、ワッシャ15wが外挿されている。また、トラニオン軸15bの下端部には雄ネジが形成されており、この雄ネジにナット15eが螺合されている。このナット15eを締め付けることによって駆動ピストン33の嵌合筒332が上下のワッシャ15d,15wによって挟み付けられて固定されている。
前記ワッシャ15wは、ナット15eより大径に形成されており、下側シリンダボディ62の下面より下方位置に配置されるとともに、下側シリンダボディ62の下面と所定の間隔yをもって設けられている。この間隔yがトラニオン15の上方向変位規制距離となる。
そして、トラニオン軸15bの軸方向でかつ図2(b)において上方向におけるトラニオン15の変位量は、当該トラニオン15のワッシャ15wが下側シリンダボディ62の下面に当接することで規制されている。
【0043】
すなわち、一方のトラニオン15が下方に変位する場合、当該一方のトラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接して、それ以上の変位が規制される。一方のトラニオン15が下方に変位するに伴って、他方のトラニオン15は上方に変位するが、当該他方のトラニオン15のトラニオン軸15bのワッシャ15wが下側シリンダボディ62の下面に当接することで、当該トラニオン15の上方への変位量が規制される。
このように、本例ではトラニオン15をシリンダボディ31(上側シリンダボディ61の突出部61bと下側シリンダボディ62の下面)に当てることによって、トラニオン15の軸方向(上下方向)への変位量を規制できる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図3は第2の実施の形態のトロイダル型無段変速機における要部の概略を示す断面図である。
前記第1の実施の形態では、トラニオン15がトラニオン軸15bの軸方向に変位して
当該トラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接すると、ワッシャ15と突出部61bとの間に摩擦力が作用する。つまり、ワッシャ15に突出部61bから摩擦力が作用する。
一方、トラニオン15はトラニオン軸15bの軸方向への変位とともに軸回りにも回転するが、ピストン33は上述したようにナット15eによってトラニオン軸15bに固定されているので、当該ピストン33はトラニオン軸15bとともに回転する。
ところが、前記のようにワッシャ15dに摩擦力が作用すると、トラニオン軸15bとピストン33とが相対回転する可能性あり、この場合、トラニオン軸15bの下端部に螺合していたナット15eが緩んでしまい、結果として、バリエータモジュールの機能を損なって好ましくない。
【0045】
そこで、本実施の形態では、トラニオン15がトラニオン軸15bの軸方向に変位して、当該トラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接した際に、トラニオン15とピストン33とが相対回転しない構造としたことに特徴がある。この構造について以下に説明する。
【0046】
すなわち、トラニオン軸15bは、前記ワッシャ15dが設けられる大径部15fと、この大径部15fより小径の小径部15gとを有しており、小径部15gと大径部15fとの間に段差部(当接部)15hが形成されている。
一方、前記トラニオン軸15bの小径部15gには、ピストン33の嵌合筒332が嵌合され、この嵌合筒332の上端部は、段差部(当接部)15hに当接されている。
すなわち、トラニオン軸15bの小径部15gに外挿されている駆動ピストン33の嵌合筒332の上端面は、前記段差部(当接部)15hに当接されている。
また、トラニオン軸15bの小径部15gの下端部には、雄ネジが形成されており、この雄ネジにナット15eが螺合されている。このナット15eは嵌合筒332の下端面に当接されたうえで締め付けられている。これによって、嵌合筒332は、ナット15eと段差部15hとによって挟み付けられて固定されている。
【0047】
したがって、本実施の形態では、図3(b)に示すように、トラニオン15がトラニオン軸15bの軸方向に変位して、当該トラニオン15の当接面15cがワッシャ15dを介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接するとともに、トラニオン軸15bが回転しても、ピストン333の嵌合筒332は、ナット15eと段差部(当接部)15hとによって挟み付けられて固定されているので、トラニオン軸15bとピストン33とが相対回転することがない。
したがって、トラニオン軸15bの下端部に螺合していたナット15eが緩んでしまうことがなく、よって、バリエータモジュールの機能を損うこともない。
【0048】
(第3の実施の形態)
図4は第3の実施の形態のトロイダル型無段変速機における要部の概略を示す断面図である。
本実施の形態が第2の実施の形態と異なる点は、トラニオン15が傾転軸受を介してシリンダボディ31に当接する点であるので、以下ではこの点について説明し、第2の実施の形態と共通構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図4に示すように、トラニオン本体15aの下端部には、トラニオン軸15bより大径でかつトラニオン本体15aより小径の取付部15tがトラニオン軸15bと同軸に形成されている。この取付部15tに、傾転軸受70が取り付けられている。この傾転軸受70は前記下側のヨーク23B(図1参照)に形成された支持孔18(図1参照)に嵌め込まれ、これによって、トラニオン15は傾転軸受70によって傾転自在に支持されている。
【0050】
また、トラニオン軸15bの上端部には、リング状のリング部材71がトラニオン軸15bと同軸に取り付けられている。このリング部材71の外周部には上方に突出する凸部71aが周方向に沿って形成されており、この凸部71aが傾転軸受70の下面に当接している。
【0051】
このような本実施の形態では、トラニオン15がトラニオン軸15bの軸方向に変位して、当該トラニオン15に設けられた傾転軸受70がリング部材71を介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接することによって、トラニオン15のトラニオン軸15bの軸方向への変位を規制しているので、第1の実施の形態と同様に、シリンダボディ31を大型化することなく、トラニオン15の軸方向への移動を確実に規制できる。
また、第2の実施の形態と同様に、トラニオン15がトラニオン軸15bの軸方向に変位して、当該トラニオン15に設けられた傾転軸受70がリング部材71を介して上側シリンダボディ61の突出部61bに当接するとともに、トラニオン軸15bが回転しても、ピストン33の嵌合筒332は、ナット15eと段差部(当接部)15hとによって挟み付けられて固定されているので、トラニオン軸15bとピストン33とが相対回転することがない。
したがって、トラニオン軸15bの下端部に螺合していたナット15eが緩んでしまうことがなく、よって、バリエータモジュールの機能を損うこともない。
【0052】
なお、前記第2および第3の実施の形態において、トラニオン15の上方向への変位規制は、前記第1の実施の形態と同様に、トラニオン15の当接部15sをアッパープレート52の底面52aに当てることによって行ってもよいし、トラニオン15のワッシャ15wを下側シリンダボディ62の下面に当てることによって行ってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 入力軸
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
15 トラニオン
15b トラニオン軸
15h 段差部(当接部)
31 油圧シリンダ(シリンダボディ)
32 駆動装置
33 ピストン
332 嵌合筒
70 傾転軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6