(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020111
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】高炉ダスト堆積レベルの検出方法および検出装置
(51)【国際特許分類】
C21B 7/22 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
C21B7/22
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-269073(P2012-269073)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-114478(P2014-114478A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(72)【発明者】
【氏名】森田 茂利
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−010022(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/22−7/24
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉ダストキャッチャーにおける高炉ダスト堆積レベルの検出方法であって、
前記高炉ダストキャッチャーの内部の温度を測定する温度計を備え、
前記温度計の測定値より、所定時間当たりの温度変化量を算出し、前記温度変化量と予め設定した規定値とを比較して、前記温度変化量が前記規定値よりも少ない状態が一定時間以上継続したときに、前記温度計の位置に高炉ダストが有ると判定することを特徴とする、高炉ダスト堆積レベルの検出方法。
【請求項2】
前記高炉ダストキャッチャーの底部を高さ方向に複数の区画に分けて、前記複数の区画にそれぞれ温度計を配置することを特徴とする、請求項1に記載の高炉ダスト堆積レベルの検出方法。
【請求項3】
高炉ダストキャッチャーにおける高炉ダスト堆積レベルの検出装置であって、
前記高炉ダストキャッチャーの内部の温度を測定する温度計と、
前記温度計の測定値より、所定時間当たりの温度変化量を算出し、前記温度変化量と予め設定した規定値とを比較して、前記温度変化量が前記規定値よりも少ない状態が一定時間以上継続したときに、前記温度計の位置に高炉ダストが有ると判定する判定部と、を有することを特徴とする、高炉ダスト堆積レベルの検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガス中のガス灰捕集装置である高炉ダストキャッチャー(以下DCと称する)において、捕集された高温の高炉ダストの堆積レベルを検出する、高炉ダスト堆積レベルの検出方法および検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、銑鉄の製造における高炉には、炉頂から装入物として、粉鉄鉱石を焼き固めた焼結鉱や塊状鉄鉱石等、及びコークスが、交互に高炉の上部から装入されて堆積し、炉内に鉱石層およびコークス層が形成される。そして、高炉下方にある羽口から吹き込まれる熱風とコークスとの反応によって生じるCOガスにより、鉄鉱石は加熱、還元され(間接還元)、一部はコークスにより直接的に還元されて、軟化融着帯を形成した後、溶滴となる。溶滴、すなわち溶銑は、コークス層の間を通過して炉底部に溜まる。このとき高炉から発生する高炉ガスは、COを多量に含んでいるので、回収して種々の用途に再利用される。
【0003】
高炉ガスには高炉ダストが浮遊しているため、高炉ガスを再利用する際には、高炉ダストを除去する必要がある。そこで、高炉ガスは、高炉から、例えばサイクロン式集塵設備等による集塵設備へ送られ、そこで高炉ダストが除去される。そして、高炉ダストが除去された高炉ガスは、ガス洗浄装置で洗浄され、その後、燃料等として再利用される。
【0004】
高炉ガスから除去された高炉ダストは、集塵設備のDC底部に貯留される。高炉の連続操業により、DCの底部に貯留される高炉ダストは徐々に堆積されていく。堆積された高炉ダストは適宜排出する必要があり、そのためには、DC内の高炉ダストの貯留量を検出することが重要である。
【0005】
従来、例えば、集塵設備の外側から放射線を照射して、DC内に堆積した高炉ダストの高さを検出する技術が検討されている。ところが、放射線を使用する場合、照射する回数を制限する必要があるため、検出精度に限界がある。しかも、放射線の使用にあたっては、測定機器のみならず作業員の被曝管理も必要であり、安全性の確保に多大な時間と労力を要する。
【0006】
そのため、放射線を使用しない検出方法として、例えば特許文献1には、DC側壁の高さ方向で選択した一定範囲のレベル間の平均温度を測定して、上限レベル以上のレベルの側壁温度および下限レベル以下のレベルの側壁温度に基づいて演算し、DC内に堆積したダストレベルを知る方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、集塵設備の外筒を上下方向に複数の帯域に分けて各帯域の平均温度を測定し、その平均温度と予め設定したしきい値とを比較して、ダストレベルを判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭55−131724号公報
【特許文献2】特開2007−262438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1、2は、平均温度に基づいて高炉ダストの貯留量を管理するため、高精度な検出は期待できない。さらに、いずれも、ダストを堆積させるDCの外側に設置した温度計の測定値によって、高炉ダストの貯留量を検出する方法であり、DC内の温度を間接的に測定するため、精度に問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、高炉ダストキャッチャー(DC)内の高炉ダストの堆積量を、放射線を使用せず高精度に検出できる、高炉ダスト堆積レベルの検出方法および検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するため、本発明は、高炉ダストキャッチャーにおける高炉ダスト堆積レベルの検出方法であって、前記高炉ダストキャッチャーの内部の温度を測定する温度計を備え、前記温度計の測定値より、所定時間当たりの温度変化量を算出し、前記温度変化量と予め設定した規定値とを比較して、
前記温度変化量が前記規定値よりも少ない状態が一定時間以上継続したときに、前記温度計の位置
に高炉ダストが有ると判定することを特徴とする、高炉ダスト堆積レベルの検出方法を提供する。
【0012】
前記高炉ダスト堆積レベルの検出方法において
、前記高炉ダストキャッチャーの底部を高さ方向に複数の区画に分けて、前記複数の区画にそれぞれ温度計を配置してもよい。
【0013】
さらに、本発明は、高炉ダストキャッチャーにおける高炉ダスト堆積レベルの検出装置であって、前記高炉ダストキャッチャーの内部の温度を測定する温度計と、前記温度計の測定値より、所定時間当たりの温度変化量を算出し、前記温度変化量と予め設定した規定値とを比較して、
前記温度変化量が前記規定値よりも少ない状態が一定時間以上継続したときに、前記温度計の位置
に高炉ダストが有ると判定する判定部と、を有することを特徴とする、高炉ダスト堆積レベルの検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安全かつ高精度に、DC内の高炉ダストの堆積レベルを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の実施の形態にかかる検出装置の例を示す断面図である。
【
図3】高炉の炉頂部とDC内の温度測定値の例を示すグラフである。
【
図4】
図3の温度測定時のDC内部を示す断面図であり、(A)は
図3のT1、T4時、(B)は
図3のT2、T3時を示す。
【
図5】本発明の実施の形態にかかる検出方法を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明が適用される高炉ダストキャッチャー(DC)を備えた高炉設備の構成例を示す。高炉1には、炉頂から鉄鉱石または鉱石、及びコークスが交互に装入され、高炉下方から吹き込まれる熱風とコークスとの反応によって生じるCOガスにより、鉄鉱石は加熱、還元され、溶銑となる。溶銑は、コークス層の間を通過して炉底部に溜まり、このとき、高炉1から高炉ガス2が発生する。高炉1で発生した高炉ガス2は、高炉ダストを除去して再利用するために、例えばサイクロン式集塵設備等による集塵設備3へ送られる。集塵設備3で除去された高炉ダスト4はDC5の底部に堆積される。その後、高炉ガス2はガス洗浄装置6で洗浄され、燃料等として再利用される。
【0018】
本発明者らは、DC5の底部に堆積した高炉ダスト4の上面位置を検出する手段として、高炉ダスト4の温度に着目した。DC5には、高炉1内で高温に曝された高炉ダスト4が高炉ガス2とともに吹き込まれ、高炉ダスト4がDC5の底部に堆積する。このとき、DC5内の空間の温度は高炉ガス2の温度変化とほぼ同等の変動をするのに対して、堆積した高炉ダスト4は、高炉ガス2の温度変化の影響をほとんど受けない。そこで、熱電対を用いてDC5内部の温度を測定したところ、高炉ダスト4に埋もれた熱電対の測定値は、埋もれた時点の温度を起点として一定勾配による温度下降または一定の温度推移を示す特性があることが分かった。高炉ガス2の温度変動は極めて大きいため、ある一定の温度をしきい値として、温度測定値がそのしきい値を単純に超えた(下回った)ときに高炉ダストの有無を判定するという従来の方法では、誤って判定される場合がある。本発明者らは、温度変化の特性を活用することによって、高炉ダスト4の上面位置を正確に検出することが可能であることを見出した。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態にかかる検出装置の一例を示し、集塵設備3のDC5を拡大した断面図である。本実施形態においては、DC5の底部を、上下方向に複数、例えば6つの区画7a〜7fに分けて、各区画7a〜7fの内部にそれぞれ温度計8を取り付ける。温度計8は、各区画7a〜7fにおいて同一円周位置に配置され、測温部9がDC5の内部に配置されるように取り付けられる。また、温度計8は、それぞれ、測定データの読み取りおよびそのデータを用いた演算を行う判定部10に接続される。各区画7a〜7fに取り付ける温度計8の個数は1つずつには限らず、区画毎に円周方向に複数個の温度計8を設置すれば、高炉ダスト4の円周方向の堆積分布が検出され、さらに検出精度が向上する。温度計8の種類は、DC5内部の高炉ダスト4を直接測温するため、熱電対を使用するのが好ましく、測温部9がDC5の内部に配置されていればよい。また、DC5の底部を分割する区画の数は、DC5の大きさにもよるため特に限定しないが、多すぎると温度計8の取り付けや配線およびメンテナンスの手間が増大するため、4〜6区画が好ましい。ただし、例えば1区画のみとして、高炉ダスト4の上限に設定する高さのみの温度測定を行って高炉ダスト4の有無を検出するようにしてもよい。
【0020】
次に、
図2に示す検出装置を用いて各区画の高炉ダスト4の有無を判定する検出方法を説明する。
【0021】
一般的に、高炉ガス2の温度は、高炉1の稼働状況に応じて上下に変動する。
図3は、高炉1内の炉頂部の温度、およびDC5の底部に
図4に示すように3つの温度計8a、8b、8cを設置した場合の各温度計8a、8b、8cによる温度測定値の例を示すグラフである。炉頂部の温度は、
図3に破線で示すように、高炉ガス2の温度と同期して規則的に変動している。温度計8a、8b、8cがいずれも高炉ダスト4に埋もれていない場合、温度測定値は、DC5の内部空間の温度を示し、炉頂部の温度と同期して変動する。
図4(A)に示すように、一番下の温度計8aが高炉ダスト4に埋もれ始めると(
図3のT1)、温度計8aの測定値t8aは、高炉ガス2の温度変動にかかわらず、一定勾配による温度降下または一定の温度推移を示す。さらに高炉ダスト4の量が増えて、温度計8bが高炉ダスト4に埋もれ始めると(
図3のT2)、温度計8bの測定値t8bが、一定勾配による温度降下または一定の温度推移を示す。その後、温度計8cが高炉ダスト4に埋もれる前に、高炉ダスト4が排出され、温度計8bが高炉ダスト4から抜け出すと(
図3のT3)、温度計8bの測定値t8bが、再び炉頂部の温度と同期して変動するようになる。さらに高炉ダスト4が排出されて温度計8aが高炉ダスト4から抜け出すと(
図3のT4)、温度計8aの測定値t8aも、炉頂部の温度と同期して変動する。本発明は、この温度推移の特性を利用して、温度計8が設置された位置の高炉ダスト4の有無を判定する。
【0022】
すなわち、先ず、DC5内部に配置したそれぞれの温度計8により、予め設定した時間ΔT(sec)毎に温度測定を行い、前回の温度測定値と比較する。測定値の比較は、温度差の絶対値とする。一方、高炉1の稼働状況による高炉ガス2の温度変動を元に、時間ΔTの温度差である温度の偏差Δt(℃)を規定値として予め設定しておく。
【0023】
そして、温度計8による時間ΔT毎の温度測定値の差が、偏差Δt以内となる状態が、一定時間以上継続するかどうかで、温度計8が高炉ダスト4に埋もれているかどうかを判定する。つまり、温度計8が高炉ダスト4の上端よりも上方に配置されているときには、温度計8の測定値は、高炉ガス2の温度変動と同期するため、時間ΔTの温度測定値の差が偏差Δt以下という状態が継続することはない。これに対し、温度計8が高炉ダスト4に埋もれた場合は、高炉ダスト4によって保温状態となり、高炉ガス2の温度変動と同期せず、一定勾配による温度下降または一定の温度推移を示す。尚、この時の高炉ダスト4の温度は、温度計8が埋もれた時点の温度が起点となる。この場合、温度測定値の差が偏差Δt以内となる状態が継続するので、高炉ダスト有りと判定される。高炉ダスト4が排出されて再び温度計8が高炉ダスト4の上方に露出するまで、この状態が継続する。温度計8が高炉ダスト4から露出すれば、変動する高炉ガス2の温度と同期して、再び偏差Δtを上回る温度差が生じるため、高炉ダスト無しと判定される。
【0024】
図5は、温度測定値の時間変化のグラフの一例を示す。本発明にかかる高炉ダスト堆積レベルの検出方法について、
図5に基づいて更に具体的に説明する。
【0025】
図5のA区間では、温度計8による測定値は、高炉の稼働状況に応じて上下に変動し、各測定値A1、A2、A3、A4は、それぞれ、前回の測定値に対して、予め設定した偏差Δtを超える温度差が生じている。この場合には、温度計8の位置は高炉ダストの非検知が判定される。測定間隔は例えば20秒、偏差Δtは例えば0.6℃と設定される。
【0026】
温度計8が高炉ダスト4に埋もれていなくても、温度差が偏差Δt以内となる場合がある。
図5のB区間において、測定値B1とB2のように、炉内の温度が下限値となる前後で測定したときには、温度差が0に近く、偏差Δt以内となる。この時点で、高炉ダスト4有りと判定するための判定タイマーが開始される。ところが、次の測定値B3では、測定値B2に対してΔtを超える温度差が生じたため、温度差が偏差Δt以内となる状態が一定時間継続したことにはならない。この場合には、判定タイマーは停止され、時間測定をリセットして、高炉ダストの非検知が判定される。偏差Δt以内となる状態が継続する一定時間は、例えば120秒と設定される。
【0027】
図5のC区間では、測定値C1からC4までの間は、一定勾配による緩やかな温度下降の推移を示している。測定値C1とC2の温度差が偏差Δt以内となり、このときに判定タイマーが開始される。一定時間経過後の測定値Cnまでの間、偏差Δt以内の状態が継続すれば、判定タイマーがカウントアップし、その時点で、高炉ダストの検知が判定される。その後も温度測定が行われ、温度測定値の差と偏差Δtとの比較を継続する。
【0028】
図5のD区間では、最初の測定値D1とD2の温度差は偏差Δt以下であるが、測定値D3とD2との温度差はΔtを上回っている。高炉ダスト4の排出により、このように再び温度差が偏差Δtよりも大きくなれば、すぐに判定タイマーがリセットされ、高炉ダストの非検知が判定される。
【0029】
以上のように、温度測定値の差の推移と、予め設定した偏差Δtとを比較することにより、温度測定位置における高炉ダストの有無を判定することができる。本発明では、DC5の内部に温度計8の測温部9を配置して直接温度測定を行うため、正確にDC5内部の状態を把握できる。そして、このような温度測定による高炉ダストの検出を、DC5の高さ方向の区画毎に独立して実施することで、各区画での高炉ダスト4の有無を判定でき、DC5内の高炉ダスト堆積レベルの高精度な検出が可能となる。
【0030】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0031】
例えば、上記実施形態では、温度計8の測温部9がDC5内に配置されているものとしたが、DC5の内部の温度を直接測定できれば良く、温度計8全体がDC5の内部に配置されても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、温度が変動する高温ガス中のガス灰捕集装置において、捕集された高温のガス灰の堆積レベルを検出する際に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 高炉
2 高炉ガス
3 集塵設備
4 高炉ダスト
5 高炉ダストキャッチャー(DC)
6 ガス洗浄装置
7a〜7f 区画
8 温度計
9 測温部
10 判定部