(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記スライダは、円筒形状の上記第1筒部及び円筒形状の上記第2筒部からなるスライダ本体と、上記スライダ本体の上記第1筒部側の端部を覆うキャップと、上記第2筒部の外周面に取り付けられて上記大気連通部の内壁面に密着する封止部材と、を備える請求項3に記載のインクカートリッジ。
上記キャップは、厚み方向に貫通する貫通孔を有する蓋部と、上記貫通孔を囲む位置において上記蓋部から突出して上記第1筒部の外周面を覆う円筒形状の円筒部とを有しており、
上記第1筒部は、上記蓋部の壁面と上記半透膜とが離間した状態で上記円筒部の先端と当接する位置において、その外周面からの径方向外向きに突出するフランジ部を有する請求項4に記載のインクカートリッジ。
上記連通口は、上記スライド向きに沿って延設された上記大気連通部の内壁面に設けられており、上記閉塞部材が上記第2位置に移動された状態において、上記第2筒部の開口より上記大気連通部の開口側に位置する請求項1から6のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0012】
[実施形態]
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、記録ヘッド21と、インク供給装置100と、記録ヘッド21及びインク供給装置100を接続するインクチューブ20とを備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面に開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から抜き出される。
【0013】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。カートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。
【0014】
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0015】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21へインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。カートリッジ装着部110は、ケース101と、係合部材145と、インクニードル113と、光センサ114とを備えている。なお、
図1においては、ケース101内にインクカートリッジ30が装着された状態が示されている。カートリッジ装着部110には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能であるが、
図1においては、1つのインクカートリッジ30が収容可能な空間が示されている。
【0016】
図1に示されるように、インクニードル113は、管状の樹脂針からなり、ケース101の終面の下部に設けられている。インクニードル113は、ケース101の終面において、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30のインク供給部34に対応する位置に配置されている。インクニードル113は、後述するインクカートリッジ30のインク供給口71に挿入されてインク供給バルブ70を開く。これにより、インク室36内のインクは、インク流路72を通じてインクニードル113に接続されたインクチューブ20に流出される。
【0017】
また、
図1に示されるように、光センサ114は、ケース101の終面におけるインクニードル113より重力方向の上側に設けられている。光センサ114は、馬蹄形の筐体の一方側の先端に設けられた発光素子と、他方側の先端に設けられた受光素子とで構成されている。発光素子は、例えばLED等であって、挿入及び取出方向50と垂直な水平方向(
図2の幅方向51に相当)へ光を照射する。受光素子は、例えばフォトトランジスタ等であって、発光素子から照射された光を受光する。発光素子と受光素子との間の空間には、後述するインクカートリッジ30の検知部33が進入可能である。光センサ114の光路に検知部33が進入すると、光センサ114は、検知部33によって受光素子が受光する光量の変化を検知し得る。なお、
図1の高さ方向52が重力方向に相当する。
【0018】
さらに、
図1に示されるように、係合部材145は、ケース101の天面において、開口112側に設けられた支軸147を中心に回動可能に設けられている。係合部材145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を装着状態に保持するためのものである。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、係合部材145は、後述するインクカートリッジ30の係止部45に係合され、インクカートリッジ30を取出向き55に押す力に抗してインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110内に保持する。一方、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から取り出される場合、インクカートリッジ30に設けられた回動部材80の後端がユーザによって押し下げられることにより、係合部材145が反時計回りに回動して係止部45との係合が解除される。これにより、インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110から取り出し可能となる。
【0019】
[インクカートリッジ30]
図2〜4に示されるように、インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留するインク室36である。インク室36は、インクカートリッジ30の外観を形成している本体31に収納された内部フレーム35によって形成されているが、本体31そのものによって形成されていてもよい。
【0020】
インクカートリッジ30は、
図2〜4に示された起立状態、つまり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して矢印50で示される方向(以下「挿入及び取出方向50」と表記する。)に沿って挿抜される。挿入及び取出方向50は水平方向に沿っている。インクカートリッジ30は、起立状態のままカートリッジ装着部110に挿抜される。この起立状態が、装着姿勢に相当する。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される向きが水平方向に沿った挿入向き56であり、取り出される向きが取出向き55である。また、起立状態における高さ方向(上下方向)52が、重力方向に相当する。すなわち、インクカートリッジ30は、挿入及び取出方向50に沿ってカートリッジ装着部110に挿入され、また、挿入及び取出方向50に沿ってカートリッジ装着部110から抜き出される。なお、本実施形態では、挿入及び取出方向50が水平方向に沿っているが、挿入及び取出方向50は、重力方向や、水平方向及び重力方向と交差する方向であってもよい。
【0021】
図2〜4に示されるように、インクカートリッジ30は、略直方体形状の本体31と、前壁140側を構成するブラケット90と、インク室36を区画する内部フレーム35とで構成される。本体31にブラケット90が組み付けられて、インクカートリッジ30の外形が構成されている。内部フレーム35は、組み付けられた本体31及びブラケット90の内部に収納される。インクカートリッジ30は、全体として、幅方向(左右方向)51に細く、高さ方向(上下方向)52及び奥行き方向(前後方向)53が幅方向51よりも大きい扁平形状である。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されるときに挿入向き56の前方側となるブラケット90の壁が前壁140であり、挿入向き56の後方側となる本体31の壁が後壁42である。前壁140と後壁42とは、挿入及び取出方向50(すなわち、奥行き方向53)において対向している。
【0022】
[本体31]
本体31は、幅方向51において互いに対向する側壁37、38と、高さ方向52において互いに対向する上壁39及び下壁41とが後壁42から挿入向き56に延設されて構成されており、奥行き方向53において後壁42に対向する面が開口された箱形である。本体31の内部には、開口を通じて内部フレーム35が挿入される。内部フレーム35の前壁40側の一部は、本体31から露出されている。すなわち、本体31は、内部フレーム35の後方側の一部を覆っている。
【0023】
本体31には、上壁39の後方側に回動部材80が設けられている。回動部材80は、例えば
図1に示されるように、屈曲された平板形状をなしており、その長手方向が奥行き方向53に沿うように配置されている。回動部材80は、その屈曲部に設けられた軸(不図示)の周りに回動可能である。回動部材80は、その先端が本体31の上側に形成された係止面46側へ延出されており、後端が後壁42側へ延出されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、回動部材80の屈曲部より先端側は、係止部45に係合される係合部材145の下方に位置する。そして、インクカートリッジ30をカートリッジ装着部110から取り出す際に、回動部材80の後端がユーザによって押し下げられることにより、係合部材145と係止部45との係合が解除される。
【0024】
[ブラケット90]
ブラケット90は、幅方向51において互いに対向する側壁143、144と、高さ方向52において互いに対向する上壁141及び下壁142とが前壁140から取出向き55に延設されて構成されており、奥行き方向53において前壁140に対向する面が開口された箱形である。ブラケット90の内部には、開口を通じて内部フレーム35が挿入される。すなわち、ブラケット90は、内部フレーム35のうちの本体31によって覆われていない前方側の一部を覆っている。
【0025】
ブラケット90が本体31に組み付けられた状態において、ブラケット90の上壁141は、本体31の上壁39と連続してインクカートリッジ30の上壁を構成する。同様に、ブラケット90の下壁142は本体31の下壁41と連続してインクカートリッジ30の下壁を構成し、ブラケットの側壁143、144は本体31の側壁37、38とそれぞれ連続してインクカートリッジ30の側壁を構成する。また、インクカートリッジ30が組み立てられた状態において、インクカートリッジ30の前壁を構成するブラケット90の前壁140と、インクカートリッジ30の後壁を構成する本体31の後壁42とは、奥行き方向53において互いに対向する。インクカートリッジの前壁140と後壁42とが対向する方向(すなわち、奥行き方向53)が前後方向(水平方向)であって、本実施形態においては挿入及び取出方向50と一致している。また、インクカートリッジ30の上壁39と下壁41とが対向する方向(すなわち、高さ方向52)が上下方向(重力方向)である。
【0026】
ブラケット90の側壁143、144には、高さ方向52の概ね中央で且つ前壁140に接する位置において、幅方向51に貫通する開口95が形成されている。この開口95は、ブラケット90に内部フレーム35が挿入された状態において、内部フレーム35の検知部33を外部へ露出させる。したがって、開口95は、内部フレーム35の検知部33に対応する位置、寸法、及び形状に形成されている。
【0027】
また、ブラケット90の前壁140には、高さ方向52の開口95より上側において、奥行き方向53へ貫通する孔96が形成されている。孔96は、ブラケット90に内部フレーム35が挿入された状態において、大気連通部120を外部に連通させるための孔になる。したがって、孔96は、内部フレーム35の大気連通部120に対応する位置、寸法、及び形状に形成されている。
図2において、前後方向における孔96の前端は、後述するインク供給部34の先端よりも前方に配置されている。
【0028】
さらに、ブラケット90の前壁140には、高さ方向52の開口95より下側において、奥行き方向53へ貫通する孔97が形成されている。孔97は、ブラケット90に内部フレーム35が挿入された状態において、内部フレーム35のインク供給部34を外部へ露出させるための孔になる。したがって、孔97は、内部フレーム35のインク供給部34に対応する位置、寸法、及び形状に形成されている。孔97は、前後方向において孔96よりも後方側に配置されている。
【0029】
ブラケット90の前壁140には、第1突起85及び第2突起86が設けられている。第1突起85は、ブラケット90の前壁140の上端において、前壁140から前方に向けて離れる向き(挿入向き56)に突設されている。そして、孔96は、第1突起85の先端に設けられている。第2突起86は、ブラケット90の前壁140の下端において、前壁140から前方に向けて離れる向き(挿入向き56)に突設されている。第1突起85及び第2突起86は、カートリッジ装着部110に設けられたセンサ(不図示)に検知されることによって、プリンタ10にインクカートリッジ30の種別を判定させるために設けられる。インクカートリッジ30の種別とは、インクの色や成分の違い、インク室36に最初に貯留されるインクの量の違いなどである。
【0030】
[内部フレーム35]
図3及び
図4に示されるように、内部フレーム35は、幅方向51に対向する一対の面が開放された環状に構成されている。そして、開放された一対の面がフィルム(不図示)によって封止されることにより、その内部にインクを貯留可能なインク室36が形成される。内部フレーム35が筐体に相当する。インク室36を区画する前壁40は、内部フレーム35がブラケット90に挿入された際に、ブラケット90の前壁140に対向する壁面であり、大気連通部120、閉塞部材収容室32、検知部33、及びインク供給部34が設けられている。
【0031】
[検知部33]
検知部33は、高さ方向52における大気連通部120及びインク供給部34の間において、内部フレーム35の前壁40から挿入向き56に突設されている。検知部33は、インク室36に連通された箱形である。検知部33は、ブラケット90の開口95を通じてインクカートリッジ30の外部へ露出されている。また、検知部33は、カートリッジ装着部110に設けられた光センサ114(
図1参照)から出射されて、挿入及び取出方向50と垂直な方向(本実施形態では、幅方向51)に進行する光、例えば赤外光を透過させる透光性の樹脂からなる一対の壁を有する。なお、光は赤外光でもよいし、可視光であってもよい。
【0032】
検知部33の一対の壁の間はインクを貯留可能とするために中空とされている。
図1に示されるように、検知部33の一対の壁の間にはセンサーアーム60のインジケータ部62が位置している。センサーアーム60は、板状のアーム本体61の両端に、インジケータ部62及びフロート部63がそれぞれ設けられたものである。センサーアーム60は、インク室36において、幅方向51に沿って延びる支軸64により回動可能に支持されている。センサーアーム60は、インク室36に存在するインク量に対応して回動するものである。
【0033】
インジケータ部62は、センサーアーム60が回動されることによって、検知部33の重力方向の下側に位置する下位姿勢と、下位姿勢よりも検知部33の重力方向の上側に位置する上位姿勢とに姿勢変化が可能である。インジケータ部62が上位姿勢のときの検知部33は、光センサ114から出射される赤外光を透過させる。一方、インジケータ部62が下位姿勢のときの検知部33は、光センサ114から出射される赤外光を遮光又は減衰させる。この検知部33の透光状態に応じて、インク室36内のインク残量が所定量未満になったことが判定される。
【0034】
[インク供給部34]
インク供給部34は、高さ方向52における検知部33より下側において、内部フレーム35の前壁40から挿入向き56、すなわち前後方向における前向きに突設されている。インク供給部34は、円筒形状の外形をなしており、ブラケット90の前壁140に設けられた孔97を通じて外側へ突出されている。インク供給部34の突出端には、インク供給口71が形成されている。また、
図1に示されるように、インク供給部34の内部には、インク供給口71とインク室36とを連通させるインク流路72が形成されており、インク供給口71を開閉させるインク供給バルブ70が配置されている。
【0035】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル113がインク供給口71に挿入される。そして、インクニードル113がインク供給バルブ70を前後方向における後方に移動させることにより、インク供給口71が開く。これにより、インク室36内のインクは、インク流路72を通ってインクニードル113へ流出される。インクの流出方向は、前後方向における前方と略同一である。なお、インク供給口71は、必ずしもインク供給バルブ70によって開閉可能な構成に限定されない。例えば、インク供給口71がフィルムなどで閉塞されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インクニードル113がフィルムを突き破ることによりインク供給口71が開かれる構成であってもよい。
【0036】
また、
図3、4に示されるように、内部フレーム35の前壁40の下端には、一対の係合爪43が形成されている。一対の係合爪43の先端は、インクカートリッジ30の幅方向51の外向きへそれぞれ突出されている。一対の係合爪43は、幅方向51の中央に設けられた切欠き(不図示)により幅方向51の寸法が縮小されるように弾性変形が可能である。一対の係合爪43の先端は、ブラケット90に設けられた一対の長孔91へそれぞれ進入して、長孔91を形成する円筒形状の内壁の内面と係合する。
【0037】
さらに、内部フレーム35の上壁には、係止部45が形成されている。係止部45は、インクカートリッジ30の幅方向51及び高さ方向52に拡がる係止面46を有している。係止面46は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、カートリッジ装着部110に設けられた係合部材145と係合される。係止部45は、インクカートリッジ30を取出向き55に押し出させる付勢力を受けるものである。
【0038】
[大気連通部120]
大気連通部120は、高さ方向52における検知部33より上側において、内部フレーム35の前壁40から挿入向き56に突設されている。大気連通部120は、インク室36をインクカートリッジ30の外部と連通させるためのものであり、その突出端に開口119が設けられ、且つ内部に開口119から奥行き方向53に延びる筒状の内壁を有する気体通路121が形成されている。気体通路121の内径は、開口119とほぼ同じであり、且つブラケット90に形成された孔96よりも小さい。また、大気連通部120の奥行き方向53に延設された壁面には、気体通路121とインク室36とを連通させる連通口122が設けられている。さらに、気体通路121内には、スライダ123と、閉塞部材128とが配置されている。
【0039】
より詳しくは、内部フレーム35上方には、内部フレーム35を画定する壁およびフィルムによって形成されており、インク室36に連通する連通溝118が形成されている。連通溝118は、インク室36に連通する部分から前後方向における前方に延び、さらに幅方向51から見て大気連通部120とオーバーラップするように下方に延びる。大気連通部120の内壁を貫通するように設けられた連通口122は、連通溝118の下端と連通する。高さ方向52における連通口122の位置は、インク室36に貯留されたインクの液面の初期位置(すなわち、最高位置)よりも上方である。これにより、開口119から気体通路121に流入した空気は、連通口122を通過し、更に連通溝118を経由してインク室36に流入する。
【0040】
また、大気連通部120は、開口119と反対側の端部において気体通路121と同径の開口117を有し、開口117よりも後方に形成された閉塞部材収容室32に連通されている。閉塞部材収容室32は、インクカートリッジ30の使用時において閉塞部材128を収容する空間を有する。閉塞部材収容室32は、幅方向51及び高さ方向52を含む断面(換言すれば、奥行き方向53から平面視したときの断面)の断面積が、気体通路121より大きく設定され、開口117を除いた部分は壁面によって画定された閉鎖的な空間である。
【0041】
閉塞部材128は、開口119と連通口122との間において気体通路121を閉塞させるものであり、例えばゴム等の弾性部材によって概ね円柱形状に形成されている。閉塞部材128の外径は気体通路121より僅かに大きく設定されており、気体通路121に圧入されている。本実施形態における閉塞部材128は、
図5(A)に示されるように、その外周面が、連通口122が形成された位置を含む大気連通部120の内壁面に密着して、連通口122を閉塞している。
図5(A)における閉塞部材128の位置が第1位置に相当する。なお、
図5(A)では閉塞部材128の外周面が連通口122を完全に覆っている状態を示しているが、本発明の第1位置はこれに限定されない。例えば、閉塞部材128が連通口122より開口119側において大気連通部120の内壁面に密着する位置を第1位置としてもよい。
【0042】
スライダ123は、気体通路121の内部において閉塞部材128より開口119側に配置される。スライダ123は、大気連通部120の内壁面に密着して配置されている。より詳細には、スライダ123は、円筒形状のスライダ本体124と、スライダ本体124の挿入向き56側の端部を覆うキャップ125と、スライダ本体124の外周面に取り付けられて大気連通部120の内壁面に密着するOリング126と、スライダ123の内部に設けられた貫通孔を封止する半透膜127とを有する。内部フレーム35がブラケット90に挿入された状態において、スライダ123の一端は、孔96を通じて外部に露出されている。スライダ本体124の内部には、
図5に示されるように、大気連通部120の延出方向(すなわち、挿入及び取出方向50)に沿って延びる貫通孔116が形成されている。
【0043】
スライダ本体124は、相対的に外径寸法の大きい大径部129と、大径部129より外形寸法の小さい小径部130とで構成されている。そして、スライダ本体124は、大径部129を挿入向き56(すなわち、スライド向きの上流側)に向け、小径部130を取出向き55(すなわち、スライド向きの下流側)に向けて、気体通路121内に配置される。また、大径部129の先端は、インクカートリッジ30から露出されている。大径部129には、その外周面から径方向外側に突設された円板形状のフランジ部131が設けられている。一方、小径部130の外周面には、Oリング126を保持する円周溝132が形成されている。大径部129が第1筒部に相当し、小径部130が第2筒部に相当する。また、取出向き55がスライド向きに相当する。
【0044】
図5に示されるように、スライダ本体124の内部を挿入及び取出方向50に貫通する貫通孔116は、大径部129の内部に形成された大径孔133と、小径部130の内部に形成された中径孔134及び小径孔135とを含む。大径孔133は、スライド向きの上流側において開口され、スライド向きの下流側において中径孔134に連通される。大径孔133の開口には奥行き方向53の前方側から半透膜127が貼り付けられることで封止されている。中径孔134は、スライド向きの上流側において大径孔133に連通され、スライド向きの下流側において小径孔135に連通される。小径孔135は、スライド向きの下流側において開口され、スライド向きの上流側において中径孔134に連通される。なお、大径孔133、中径孔134、及び小径孔135は、同心円状に形成されている。また、大径孔133は、中径孔134及び小径孔135よりも奥行き方向53における長さが短い。
【0045】
中径孔134は、スライド向きから見たときの断面積が大径孔133より小さく設定されている。小径孔135は、スライド向きから見たときの断面積が中径孔134より小さく設定されている。大径孔133が第1孔に相当し、中径孔134が第3孔に相当し、小径孔135が第4孔に相当する。すなわち、スライダ本体124の内部に設けられた貫通孔は、スライド向きと反対向きに向かって段階的に拡径されている。
【0046】
キャップ125は、大径孔133の開口に取り付けられた半透膜127を覆うように、スライダ本体124の大径部129に取り付けられる。本実施形態におけるキャップ125は、円板形状の蓋部136と、蓋部136の厚み方向の一方側の壁面から突出する円筒形状の円筒部137とで構成される。また、蓋部136には、厚み方向に貫通する貫通孔138が形成されている。そして、円筒部137は、貫通孔138を囲むように形成されている。貫通孔138が第2孔に相当する。蓋部136の円筒部137とは反対側の面は、挿入向き56の前方に対して直交する方向に拡がる平面をなし、その中央部に貫通孔138が形成されている。蓋部136の外径は、インクカートリッジ30の孔96の直径よりも大きい。
【0047】
すなわち、スライダ本体124を貫通する貫通孔(大径孔133、中径孔134、及び小径孔135)と、キャップ125に設けられた貫通孔138とは、連通した1つの孔を形成している。また、この孔は、スライダ123のスライド向きの上流側及び下流側において開口されている。すなわち、スライダ123には、スライド向きに貫通する貫通孔が形成されていることになる。
【0048】
キャップ125は、大径部129の外周面を円筒部137で覆うように、スライダ本体124に取り付けられる。ここで、大径部129の外形寸法は、円筒部137の内径寸法より僅かに大きく設定されている。すなわち、キャップ125は、スライダ本体124に対して圧入される。また、キャップ125をスライダ本体124に取り付ける過程において、円筒部137の突出端は、蓋部136が半透膜127に接する前にフランジ部131に当接される。すなわち、
図5に示されるように、キャップ125をスライダ本体124に取り付けた状態において、蓋部136の壁面と半透膜127とは離間しており、両者の間には空間が形成されている。
【0049】
Oリング126は、スライダ本体124の小径部130に設けられた円周溝132に嵌め込まれる。Oリング126は、例えばゴム等の弾性部材によってリング状に構成されている。Oリング126が封止部材に相当する。円周溝132に取り付けられたOリング126は、連通口122よりスライド向きの上流側において大気連通部120の内壁面に密着する。
【0050】
スライダ本体124の小径部130の外形寸法は、大気連通部120の内径寸法より小さく設定されている。また、円周溝132に嵌め込まれた状態のOリング126の外形寸法は、大気連通部120の内径寸法より大きく設定されている。すなわち、気体通路121内でスライダ本体124をスライドさせる場合において、大気連通部120の内壁面に常に接触しているのは、Oリング126のみである。一方、スライダ本体124の大径部129の内径寸法(すなわち、大径孔133の断面積)は、大気連通部120の外形寸法(すなわち、気体通路121の断面積)より大きく設定されている。すなわち、スライダ123を気体通路121内でスライドさせると、
図5(B)に示されるように、大径部129のスライド向きの下流側を向く面が開口119を形成する大気連通部120の端部に当接され、それ以上のスライドが規制される。
【0051】
なお、スライダ123は、閉塞部材128を閉塞部材収容室32まで移動させた状態において、大径部129のスライド向きの上流側を向く面が開口119を形成する大気連通部120の端部と前後方向において離間している。すなわち、閉塞部材128を閉塞部材収容室32に移動させた後も、ユーザは、スライダ123をスライド向きに移動させることができる。このようにすると、閉塞部材128が気体通路121を移動するときは閉塞部材128から荷重を受けるが、閉塞部材128が閉塞部材収容室32に移動した後はその荷重がスライダ123にかからなくなるので、ユーザは、スライダ123の押し込み抵抗の変化(減少)によって、閉塞部材128が閉塞部材収容室32に収容されてインク室36が大気連通されたことを認識できる。
【0052】
半透膜127は、大径部129の開口端部に取り付けられて、大径孔133を封止する。半透膜127は、気体の通過を許容し且つ液体の通過を規制する微小な孔を有する多孔質膜であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などのフッ素樹脂からなる。
【0053】
上記のように構成されたスライダ123は、気体通路121の内部をスライド向きにスライド可能である。そして、閉塞部材128に当接されたスライダ123は、閉塞部材128をスライド向きに押すことによって、連通口122の閉塞を解除する。本実施形態におけるスライダ123は、
図5(B)に示されるように、閉塞部材128を閉塞部材収容室32まで移動させる。
図5(B)における閉塞部材128の位置が第2位置に相当する。なお、
図5(B)では連通口122が完全に露出された状態を示しているが、本発明の第2位置はこれに限定されない。例えば、閉塞部材128の開口119側の端面が連通口122の開口119側の端よりスライド向きの下流側に移動されることにより、閉塞部材128の外周面が連通口122の一部と重ならなくなる位置を第2位置としてもよい。
【0054】
未使用状態のインクカートリッジ30は、インク室36が負圧状態に維持されている。また、大気連通部120は、
図5(A)に示されるように閉塞されている。未使用状態のインクカートリッジ30において、スライダ123は、スライド向きの下流側の先端部分を閉塞部材128に当接させている。この時、小径孔135のスライド向きの下流側の開口が閉塞部材128に閉塞された状態である。また、フランジ部131と大気連通部120の先端とは、少なくとも閉塞部材128がスライド向きに移動して閉塞部材収容室32に収容されるまでの移動距離よりも離れている。この状態においては、閉塞部材128が大気連通部120の連通口122を封止しているので、インク室36は外部に対して閉塞されている。したがって、インク室36内のインクが外部に漏れることが防止される。
【0055】
インクカートリッジ30を使用する際は、
図5(A)の状態からスライダ123をスライド向きにスライドさせる。具体的には、キャップ125の前方を向く面に対してスライド向きの押圧力がユーザ或いはカートリッジ装着部110から付与されることによって、スライダ123がスライド向きに向けて移動を開始する。スライダ123は、Oリング126が気体通路121から受ける摺動抵抗及びスライド向きの下流側の端部が閉塞部材128から受ける反力に抗してスライド向きにスライドする。スライダ123は、スライドする際に閉塞部材128の弾性力によりスライド向きとは逆向きの反力を受けるが、Oリング126が気体通路121と接触することによって生じる摩擦力の方が大きいので、スライダ123がスライド向きと反対向きに移動することがない。したがって、スライダ123は、気体通路121に対してスライド向きに不可逆的に移動する。
【0056】
スライダ123の移動に伴い、スライダ123に押された閉塞部材128がスライド向きに移動されることによって、連通口122が徐々に露出される。しかしながら、スライダ123のスライド向きの下流側の端部と閉塞部材128とが当接されている間は小径孔135の開口が閉塞部材128によって閉塞されるので、インク室36は外部に連通されない。すなわち、インク室36は未だ負圧状態に維持されている。
【0057】
そして、
図5(B)に示されるように、気体通路121を抜けた閉塞部材128が開口117を通じて閉塞部材収容室32に落ち込むことによって、小径孔135の開口が開放される。このとき、Oリング126は連通口122よりスライド向きの上流側に位置し、小径孔135の開口は連通口122よりスライド向きの下流側に位置する。すなわち、蓋部136の貫通孔138から流入した空気は、スライダ123の内部を通って小径孔135の開口から気体通路121に流入し、スライダ123の外側に回り込んで連通口122からインク室36に流入する。これにより、インク室36内が外気圧となる。なお、
図5(B)の状態において、気体通路121は、その大部分がスライダ123によって閉塞されており、スライダ123の内部に形成された貫通孔によってのみ外部に連通されている。すなわち、スライダ123を貫通する貫通孔は、気体通路121の一部と考えることができる。
【0058】
[実施形態の作用効果]
本実施形態におけるスライダ123は、閉塞部材128と連結されておらず、スライド向きにスライドされた際に当接されるだけなので、スライダ123によって閉塞部材128をスライド向きと反対向き(すなわち、挿入向き56)に移動させることはできない。また、閉塞部材128を気体通路121の外径より大きく形成したことにより、閉塞部材収容室32に入り込んだ閉塞部材128を気体通路121に戻すことは極めて困難である。すなわち、本実施形態における閉塞部材128は、気体通路121内を第1位置から第2位置に向けて(すなわち、スライド向き)不可逆的に移動可能に構成されている。
【0059】
このように、連通口122を閉塞する閉塞部材128をスライド向きにのみ移動可能とすることにより、簡素な構成でインク室36を外気に連通させる大気連通部120を実現できる。なお、スライダ123は、インクカートリッジ30の使用前にユーザによってスライドされてもよいし、プリンタ10に装着される際に自動的にスライドされる構成であってもよい。例えば、カートリッジ装着部110終面の大気連通部120に対応する位置にロッドを突設しておき、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程において、当該ロッドをスライダ123に当接させてスライド向きに移動させてもよい。
【0060】
また、本実施形態によれば、閉塞部材128が閉塞部材収容室32に露出されるのに伴って、閉塞部材128と大気連通部120の内壁面との接触面積が徐々に減少する。これにより、スライダ123をスライドさせるのに必要な負荷が徐々に低下させることができる。また、第2位置に到達した閉塞部材128が完全に閉塞部材収容室32に収容されることによって、スライダ123をスライドさせるのに必要な負荷が急激に低下するので、特にユーザがスライダ123をスライドさせる場合において、インク室36が外気に連通されたことを確実に認識できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、スライダ123のうちOリング126のみが大気連通部120の内壁面に密着され、小径部130は大気連通部120の内壁面に密着されない。このように、大気連通部120の内壁面に密着される部分を相対的に断面積の小さい部分に限定することにより、スライダ123をスライドさせる際の抵抗を低減できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、インク室36が外気に連通された
図5(B)の状態において、Oリング126が連通口122よりスライド向きの上流側に位置しているので、インク室36から連通口122を通じて気体通路121に漏れ出したインクは、Oリング126によって堰き止められる。また、小径孔135の開口が連通口122よりスライド向きの下流側に位置しているので、気体通路121に漏れ出したインクは、気体通路121内を閉塞部材収容室32側に回り込まなければ、スライダ123の貫通孔に到達できない。
【0063】
また、インクの流出経路にインクが侵入した場合において、小径孔135と中径孔134との境界に形成された開口、及び中径孔134と大径孔133との境界に形成された開口にそれぞれインクによるメニスカスが形成される。その結果、スライダ123の貫通孔に流入したインクが半透膜127に到達するのを抑制できる。さらに、スライダ123内に到達したインクは、半透膜127によって外部への流出が阻止される。
【0064】
このように構成することにより、インクの外部への流出を効果的に抑制できる。また、インクの流出経路の最下流側に半透膜127を配置することにより、半透膜127に到達するインク量が極めて少なくなるので、インクが付着することによって半透膜127の通気性が低下するのを抑制できる。
【0065】
また、本実施形態によれば、半透膜127が大径孔133の開口端に取り付けられ、且つ蓋部136と半透膜127とが離間された状態でキャップ125がスライダ本体124に取り付けられているので、半透膜127の厚み方向の一方側及び他方側に大きな空間を確保できる。その結果、空気が半透膜127をスムーズに通過できる。
【0066】
さらに、本実施形態のように、スライダ123を大気連通部120の内部(すなわち、気体通路121)に配置することにより、スライダ123をスライドさせる空間を別途設ける必要がなくなるので、インクカートリッジ30を小型化或いは大容量化できる。しかしながら、本発明は上記の例に限定されない。