(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光を吸収可能に層面に沿って配列された光吸収部と、光を透過可能に前記光吸収部同士の間に前記光吸収部と交互に配列された光透過部と、を有する光線制御層を、少なくとも含み、
前記光吸収部は、光硬化性樹脂の硬化物から構成され、前記光硬化性樹脂は、光重合性化合物として、光重合性プレポリマー及び分子量400以上の光重合性モノマーのうちの1以上の化合物を含み、且つ光重合性モノマーは全て分子量400以上であり、
前記光透過部は、光硬化性樹脂の硬化物から構成される、
光学シート。
画像表示パネルと、この画像表示パネルの表示光が出光する前面側、この前面側とは反対側の背面側、のいずれか1以上の側に配置される請求項1に記載の光学シートと、を備えた表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0013】
〔1〕光学シート
先ず、本発明による光学シートから説明する。
【0014】
図1は、本発明による光学シート10の一実施形態を示す断面図である。
本実施形態では、光学シート10は、光線制御層1に加えて、さらに、透明基材層2、機能層3、及び接合層4を有する。
光線制御層1は、光を吸収可能に層面に沿って配列された光吸収部1Aと、光を透過可能に光吸収部1A同士の間に光吸収部1Aと交互に配列された光透過部1Bとを有する。光吸収部1Aは、互いに隣接する光透過部1B同士の間に配置されて、光吸収部1Aと光透過部1Bとは交互に配列される。前記「層面」とは、光線制御層1の層の面であって、光学シート10を全体的にみたときの、そのシート面に平行な面を意味する。
本発明においては、光学シート10は、少なくとも、光線制御層1のみを有すればよい。
【0015】
本実施形態においては、光線制御層1の光吸収部露出側面Seに、さらに、接合層4を介して機能層3が積層されている。
図1に示す本実施形態では、光吸収部露出側面Seは光線制御層1の図面上方の層面である。
ここで、本発明においては、光線制御層1の対向する表裏面のうち、光吸収部1A及び光透過部1Bによって表面が形成される側の面を、「光吸収部露出側面Se」とも呼ぶことにする。
【0016】
光線制御層1は、光吸収部1A及び光透過部1Bが、本発明固有の材料から構成されている。すなわち、光吸収部1Aは、光硬化性樹脂の硬化物から構成され、この光硬化性樹脂は、光重合性化合物として光重合性プレポリマー及び分子量400以上の光重合性モノマーのうちの1以上の化合物を含み、且つ光重合性モノマーは全て分子量400以上である。
。一方、光透過部1Bは、光硬化性樹脂の硬化物から構成される。
【0017】
透明基材層2は、
図1では、光線制御層1の光吸収部露出側面Seとは反対側の図面下方の面に接して形成され、光線制御層1を作成時に基材として機能し、また、光学シート10の機械的強度を向上させる層として機能している。
機能層3は、本実施形態においては、光線制御層1とは異なる機能、例えば、ハードコート層などの機能を担う層となっている。
接合層4は、接合層4を挟んで隣接する機能層3と光線制御層1とを接合している。
【0018】
このように、光線制御層1を構成する光吸収部1A及び光透過部1Bの材料、とりわけ光吸収部1Aの材料に本発明固有の材料を用いてあるため、光吸収部1Aの部分の凹陥部rの窪みを小さくすることができる。その結果、光線制御層1に接して、より具体的には、光吸収部露出側面Seに接して、接合層4を介して機能層3が積層されるときの、光線制御層1と接合層4との間に生じ得る残留気泡発生を抑制できる。
【0019】
本発明においては、光学シート10は、光線制御層1の光吸収部露出側面Seが露出している構成であってもよい。こうした、光吸収部露出側面Seが露出している光学シート10においては、残留気泡発生を抑制する効果は、この光学シート10を他の層に積層するときに、得ることができる。
【0020】
以下、本実施形態における光学シート10を構成する各層について更に説明する。
【0021】
〔光線制御層1〕
光線制御層1は、光を吸収可能に層面に沿って配列された多数の光吸収部1Aと、光吸収部1A同士の間に光吸収部1Aと交互に光を透過可能に配列された光透過部1Bと、を有する。
図1の断面図では、光吸収部1Aは紙面に垂直な方向に延在し、紙面左右方向に一定の周期で配列されている。したがって、光線制御層1をその層面に垂直な方向からみると、光吸収部1Aと光透過部1Bとは、ストライプ状に交互に配列されている。本実施形態での光吸収部1Aの断面形状は、同図のように台形形状の底辺が光吸収部1Aの内部側に湾曲した略台形形状であり、その底辺側を図面上方に向けて配列されている。また、本実施形態では、同図のように、光吸収部1A同士の間のそれぞれの光透過部1Bは、略台形形状の光吸収部1Aの上底側で、この上底よりも図面下方に連続層として位置する部分で相互に連結して形成される。
【0022】
[光吸収部1A]
光吸収部1Aは、光吸収粒子と、光吸収粒子を分散させたバインダーから構成されている。光吸収粒子が迷光や外光などの不要光を吸収するように作用する。このバインダーには、特定の光硬化性樹脂が用いられている。
光吸収部1Aは、光吸収粒子をバインダー中に分散させた光吸収部形成用材料によって形成することができる。
【0023】
(光吸収粒子)
光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、用途に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。
こうした光吸収粒子としては、具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましい。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましい。光吸収性及びバインダーとの密着性に優れているからである。
【0024】
なお、本発明においては、光吸収部1Aは、光吸収作用を付与する為に、光吸収粒子の他、染料により光吸収部1Aの全体を光吸収性にしてもよい。
【0025】
(光硬化性樹脂)
光吸収部1Aを形成するためのバインダーは、紫外線や電子線で硬化可能な光硬化性樹脂として、特定の重合性化合物を含む。当該重合性化合物としては、光重合性プレポリマー及び分子量400以上の光重合性モノマーのうちの1以上の化合物を用いる。しかも、
光重合性モノマーには全て分子量400以上の化合物を用いる。
【0026】
光吸収部1Aに用いる光硬化性樹脂を構成する光重合性化合物としては、光重合性プレポリマーのみでもよい。ただし、光重合性プレポリマーのみでは、光吸収部1Aをワイピング法で形成するときの粘度が高すぎることもあるので、このような場合には、光重合性モノマーも併用するとよい。光重合性モノマーの併用によって、粘度を下げることができる。或いは、光吸収部1Aに用いる光硬化性樹脂を構成する光重合性化合物としては、光重合性モノマーのみでもよい。
本発明においては、光吸収部形成用材料は、トルエンなどの揮発性希釈溶剤は含まない。換言すると、光吸収部1Aを形成するためのバインダー乃至は光硬化性樹脂は、トルエンなどの揮発性希釈溶剤は含まない。揮発性希釈溶剤は揮発することにより体積減少が生じるからである。したがって、光吸収部形成用材料は無溶剤の組成物でもある。
【0027】
前記光重合性プレポリマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマー、エポキシ(メタ)アクリレートプレポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレートプレポリマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートプレポリマー、アクリル(メタ)アクリレートプレポリマー、シリコーン(メタ)アクリレートプレポリマー、などのアクリレート系プレポリマーを用いることができる。
【0028】
本発明において、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味し、単に「アクリレート系」と言うときはメタクリレート系も含む。
本発明において、光重合性プレポリマーにおける「プレポリマー」とは、重合反応に関与し得る重合物のうち、分子量1000以上の重合物を意味することとする。
本発明において、「分子量」とは、対象とする化合物が重合物、或いは重合単位が複数連結した繰り返し部分を有する化合物であって一分子中での重合単位の繰り返し数が異なる化合物の混合物であるときは、「重量平均分子量」のことを意味する。したがって、本発明においては、「重量平均分子量」のことを、単に「分子量」とも呼ぶことにする。
【0029】
前記分子量400以上の光重合性モノマーとしては、単官能モノマー、2官能以上の多官能モノマーを用いることができる。例えば、分子量400以上の光重合性モノマーとしては、以下の化合物を挙げることができる。以下において、( )中のnは、重合単位の繰り返し数であり、「合計n」は、複数の光重合性官能基のそれぞれに結合した重合単位の繰り返し数の一分子当たりの合計数である。
単官能モノマーを挙げれば、
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
例えば、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=9,分子量454);
2官能モノマーを挙げれば、
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=14,分子量708)、
ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=9,分子量536)、
ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=14,分子量736);
ボリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
例えば、ボリプロピレングリコールジアクリレート(n=7,分子量536)、
ボリプロピレングリコールジアクリレート(n=12,分子量808);
ボリプロピレングリコールジメタクリレート(n=7,分子量536)、
ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
例えば、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(n=9,分子量758);
エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、
例えば、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(合計n=5,分子量804);
エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
例えば、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート(EO分n=6,PO分n=12,合計n=18、分子量1114);
などである。
【0030】
また、3官能以上で分子量400以上の光重合性モノマーを挙げれば、
ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、
例えば、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(分子量466);
エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、
例えば、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(合計n=35,分子量1892);
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、
例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量578);
などである。
【0031】
分子量400以上の光重合性モノマーは、より好ましくはその分子量が500以上である。分子量が大きくなる程、分子の嵩(かさ)が大きくなる結果、光吸収部1Aの部分での凹陥部rを、より小さくできるからである。
【0032】
これらの分子量400以上の光重合性モノマーは、市販品を用いることができる。例えば、東洋ケミカルズ株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社などの市販品を用いることができる。
【0033】
上記重合性化合物を含む光硬化性樹脂は、紫外線で光重合させて硬化物とするときは、ベンゾフェノン系などの公知の重合開始剤を含む。また、光硬化性樹脂は、安定剤、レベリング剤、重合禁止剤などの公知の添加剤を含み得る。
【0034】
(光吸収部1Aの断面形状)
光吸収部1Aの断面形状、つまり、光吸収部1Aの延在方向に直交する断面での形状は、本実施形態においては、図面下方の側が幅狭となる楔状形状、より具体的には略台形形状をしている。
本発明においては、光吸収部1Aの断面形状は、凹陥部dが存在しない状態の形状で、
台形形状以外でもよい。例えば、三角形形状(含む二等辺三角形形状)、四角形形状、五角形形状、六角形形状、三角形の両方又は片方の斜辺を折れ線化又は曲線化した形状(外側に向かって凸形状或いは凹形状)等である。
ただし、本発明においては、光吸収部1Aの断面形状は、光吸収部露出側面Seにおいて光透過部1Bの面と面一であってもよい。つまり、後述する
図2で示す凹陥部dは、存在しない光吸収部1Aであってもよい。
断面形状を調整することで、光線制御層1の光線制御機能を調整することができる。
【0035】
[光透過部1B]
光透過部1Bは、光硬化性樹脂を用いて形成することができる。光透過部1Bに用いる光硬化性樹脂としては、特に制限はない。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマー、エポキシ(メタ)アクリレートプレポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレートプレポリマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートプレポリマー、アクリル(メタ)アクリレートプレポリマー、シリコーン(メタ)アクリレートプレポリマー、などのアクリレート系プレポリマーを用いることができる。
【0036】
光透過部1Bを形成するための光重合性化合物としては、前記した光吸収部1Aで列記した光重合性化合物を用いてもよい。
光吸収部1Aの場合と同様に、光透過部1Bを形成するための光硬化性樹脂は、紫外線で光重合させて硬化物とするときは、ベンゾフェノン系などの公知の重合開始剤を含む。また、光透過部1Bを形成するための光硬化性樹脂は、安定剤、レベリング剤、重合禁止剤などの公知の添加剤を含み得る。
【0037】
[残留気泡Gが抑制される理由]
図2は、本発明による光線制御層1が、その光吸収部1Aの凹陥部rが、従来の光線制御層51に比較して小さいことを、模式的に説明する断面図である。
図2(A)は本発明の場合であり、
図2(B)は従来の場合である。
従来は、
図2(B)に示すように、光透過部1Bを光硬化性樹脂の硬化物の層として形成したのち、この光透過部1Bの表面の光吸収部形成用凹部dに未硬化状態である光吸収部形成用材料を充填すると、光吸収部形成用材料中の光重合性化合物として、反応性希釈溶剤として低分子量の重合性化合物であるモノマー類が使用されている。この低分子量重合性化合物は、分子の嵩(かさ)が、分子量の大きい重合性化合物であるプレポリマーに比べて小さい。このため、低分子量重合性化合物は、光吸収部形成用凹部dから、光透過部1Bの内部に浸透し易く、浸透した分だけ、光吸収部形成用凹部dの内部に充填済みの光吸収部形成用材料の体積が減少することになる。もちろん、従来から考えられていた、光重合性化合物を光吸収部形成用凹部dに充填した後に、光重合させて硬化させるときの硬化収縮による体積減少も関係していると思われる。しかし、硬化収縮による体積減少が生じているとしても、また、生じなくしたとしても、低分子量重合性化合物の光透過部1Bへの浸透による体積減少が発生していると考えられる。
【0038】
一方、本実施形態においては、
図2(A)に示すように、光吸収部形成用材料として、光透過部1Bの内部に浸透し易いような嵩が比較的小さい低分子量重合性化合物は、光吸収部形成用材料を構成する光重合性化合物としては用いていない。反応性希釈溶剤を用いる場合でも、分子量400以上の光重合性モノマーを用いる。
分子量400以上の光重合性モノマーは、光透過部1Bに浸透したとしても、浸透性が前記した低分子量重合性化合物に比べて小さくなるので、光吸収部形成用凹部dに充填された後の光吸収部形成用材料の体積減少を少なくすることができると考えられる。つまり、分子量400以上の光重合性モノマーは、非浸透性光重合性モノマーとでも言える。この結果、光吸収部1Aの露出面eでの凹陥部rの窪みが小さくなる。そして、凹陥部dに起因する残留気泡Gの発生が抑制されることになる。
【0039】
〔透明基材層2〕
透明基材層2は、各種の層を形成するときに基材として利用され得る層である。
図1に示す本実施形態では、透明基材層2は、光線制御層1に対して使われている。また、透明基材層2により、光学シート10の機械的強度を増すこともできる。
こうした透明基材層2には、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等の透明樹脂を用いることができる。
【0040】
本発明において、透明基材層2は必須ではなく、省略することができる。例えば、透明基材層2の面を剥離性としておき、この剥離性の面に光線制御層1を形成後、透明基材層2から光線制御層1を剥離し、透明基材層2は光学シート10の構成層としては組み入れない構成である。
【0041】
透明基材層2と隣接する層との密着性を強化する目的で、透明基材層2は、その表面をプライマー層の形成、コロナ放電処理などの公知の密着強化処理を施したものとしてもよい。
透明基材層2の厚みは、その機能に応じて設定され、例えば、25μm〜5mmである。
【0042】
〔機能層3〕
機能層3は、光学シート10に、各種機能を付与する為の層である。本発明においては、光学シート10は機能層3を含まなくてもよい。ただし、本実施形態においては、光学シート10は機能層3を含む。しかも、本実施形態においては、この機能層3は、従来は残留気泡Gを生じ易かった、光線制御層1の光吸収部露出側面Seの面上に形成された構成であり、本実施形態における光学シート10は、これ自体で、残留気泡Gの発生が抑制される効果が得られる構成である。
【0043】
機能層3は、従来公知の各種光学シートに於ける各種機能層を適宜採用できる。
機能層3によって、機能層3が有する機能に応じた機能を、光学シート10に付与することができる。
【0044】
機能層3は、大別すると光学機能を担う光学機能層と、光学機能以外の機能を担う非光学機能層がある。
光学機能層の例を挙げれば、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能などの特定波長光の透過を抑制し残りの波長光は透過させる色補正層や着色層などの波長フィルタ層、通常最外層に設けられる反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、光の進行方向を偏向するフレネルレンズ層、プラズマディスプレイパネル本体からのネオン光を吸収するネオン光吸収層、近赤外線を吸収する近赤外線吸収層、紫外線を吸収する紫外線吸収層、或いは、前記した光線制御層1などがある。機能層3が光線制御層1の場合、光学シート10は、光線制御層1を2層以上備えた構成となる。このとき、それぞれの光線制御層1の光吸収部1Aの延在方向は、通常、直交するなど互いに交差する方向となる。
非光学機能層の例を挙げれば、表面を保護する表面保護層やハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、プラズマディスプレイパネルなど画像表示パネルからの電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層、2層間の物質移動を防ぐバリア層、或いは前記した透明基材層2、後述する2層間を密着させる接合層3(接着剤層や粘着剤層)、などがある。
【0045】
光学機能層及び非光学機能層の、それぞれの各層は単層で機能を兼用する事もあり、光学機能層と非光学機能層間で機能を兼用する事もある。また、波長フィルタ層、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層等は、透明基材層2、或いは光線制御層1に於ける光透過部1Bと兼用させることもできる。
【0046】
前記した透明基材層2も機能層3の一種であり、また、後述する接合層4も機能層3の一種である。本実施形態においては、残留気泡Gの発生に関係する、光線制御層1の光吸収部露出側面Seへ積層される層の例示として、機能層3及び接合層4を挙げた関係上、この接合層4は機能層3の一種ではあるが、あえて機能層3とは呼んでいない。
また、本実施形態における透明基材層2は、光線制御層1の光吸収部露出側面Seとは反対側の面に接して形成され、残留気泡Gとは無関係の位置に形成されており、また、光線制御層1形成時の基材として用いられている関係上、この透明基材層2も前記接合層4と同様に、機能層3の一種ではあるが、あえて機能層3とは呼んでいない。
【0047】
機能層3の位置は、
図1に示す本実施形態においては、光線制御層1の層面のうち図面で上方となる光吸収部露出側面Seの側であった。
本発明においては、機能層3の位置は任意である。機能層3に担わせる機能に応じた位置に設けることができる。例えば、
図3に例示する実施形態の光学シート10は、
図1に例示の実施形態の構成に対して、さらに、透明基材層2側の面に、接合層4を介して機能層3が積層された構成である。この場合の機能層3は、用途に応じた機能を担い、例えば、光学シート10としての機械的強度を高める補強層的な機能を担う。
【0048】
〔接合層4〕
接合層4は、その両側の層を接合するための層である。接合層4は接合の必要性に応じて設けられる。
図1に示す本実施形態では、接合層4は、光線制御層1と機能層3との接合に、使われている。接合層4は、粘着剤層、接着剤層等として用いられ得る。
接合層4は、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いることができる。
【0049】
本発明においては、接合層4は省略することができる。例えば、光線制御層1に対して機能層3を塗工形成する場合の、機能層3と光線制御層1との間の接合層4、或いは、機能層3と光線制御層1との間の接合層4を、機能層3自体が接合機能を有する接着性材料で形成する場合などである。
【0050】
〔製造方法〕
本実施形態による光学シート10は、光線制御層1の光吸収部1A及び光透過部1B、とりわけ光吸収部1Aの光硬化性樹脂として、特定の重合性化合物を用いる以外は、従来公知のマイクロルーバー構造を持つ光線制御層を含む光学シート10の製造方法によって製造することができる。例えば、帯状の樹脂シートからなる透明基材層2に対して、2P法とワイピング法によって光線制御層1を形成した後、この光線制御層1の面に、接合層4とする接着剤を介して、機能層3とするシートをラミネータ等によって積層することで、製造することができる。
【0051】
2P法とワイピング法によって光線制御層1を形成する工程は、以下のとおりとすることができる。
少なくとも以下の(a)〜(c)の工程をこの順に含む光線制御層1を形成する、光線制御層形成工程。
(a)透明基材層2上に、光吸収部1Aの形状に対応した光吸収部形成用凹部dを表面に有する光透過部1Bを2P法によって形成する、光透過部形成工程。
(b)前記光透過部1Bの前記光吸収部形成用凹部dが形成された側の面に、光吸収部形成用凹部dの内部及び外部も含めて、光吸収部形成用材料を塗工する工程であって、前記光吸収部形成用材料は光重合性化合物として光重合性プレポリマー及び分子量400以上の光重合性モノマーのうちの1以上の化合物を含み、分子量400未満の光重合性化合物及び揮発性希釈溶剤を含まない、光吸収部形成用材料塗工工程。
(c)前記光吸収部形成用材料が塗工された塗工面をドクターブレードで掻き取り、前記光吸収部形成用凹部dの外部の前記光吸収部形成用材料を除去し、前記光吸収部形成用凹部dの内部のみに前記光吸収部形成用材料を充填し、前記光吸収部形成用凹部dの内部の光吸収部形成用材料を重合させて固化させて光吸収部1Aを形成する光吸収部形成工程。
【0052】
〔構成例〕
ここで、光線制御層1の構成例を示す。
【0053】
[本実施形態の構成例]
光吸収部1Aをワイピング法を利用して形成するために用いた光吸収部形成用材料中の光硬化性樹脂は、光重合性化合物として光重合性モノマーのみを用い、この光重合性モノマーとしてはポリテトラメチレングリコールジアクリレート(n=9,分子量758,新中村化学工業株式会社製、「NKエステル」A−PTMG−65)を用いる。ワイピング加工時は、光吸収部形成用材料は50℃に加温する。
【0054】
光透過部1Bを2P法を利用して形成するために用いた光硬化性樹脂は、光重合性化合物として、ウレタンアクリレート系プレポリマー60質量部と、フェノキシエチルアクリレート40質量部の混合物を用いる。
【0055】
光吸収部1A及び光透過部1Bに用いる光硬化性樹脂は、ともに紫外線で硬化させるため、さらに、上記光重合性化合物に加えて光重合性化合物を含む。
【0056】
以上の材料を用いることによって、後述する従来の構成例に比べて、光吸収部1Aの露出面eに生じる凹陥部rの窪みが小さくなる。その結果、光線制御層1の光吸収部露出側面Seに、機能層3を、アクリル系粘着剤を用いた接合層4を介して積層するときに、残留気泡Gの発生が抑制される。前記機能層3は、ポリカーボネート系樹脂シートと、この樹脂シートの片面にアクリル系紫外線硬化型の光硬化性樹脂の硬化物の層として形成されるハードコート層とを含む。機能層3は、ハードコート層の側が光学シート10における最表層となる。
【0057】
[従来の構成例]
一方、従来の構成として、光吸収部1Aをワイピング法を利用して形成するために用いた光吸収部形成用材料中の光硬化性樹脂の光重合性化合物として、ウレタンアクリレート系プレボリマー(分子量4500)50質量部と、トリプロピレングリコールジアクリレート(分子量300)40質量部と、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(分子量218)10質量部との混合物を用いる。
【0058】
〔用途〕
本発明による光学シート10の用途は、その光線制御層1の光線制御機能を活かせる用途であれば、特に限定されない。光線制御機能は、例えば、視野角制御などの光線進行方向変更(拡大、縮小、偏向)、外光吸収、迷光吸収、コントラスト向上、輝度向上、覗き見防止、映り込み防止などである。その用途を例示すれば、例えば、後述する表示装置、或いは、車両、航空機、船舶等の乗り物、建築物などの窓に対する、覗き見防止或いは直射日光の遮光などである。
【0059】
〔2〕表示装置
本発明による表示装置は、画像表示パネルと、この画像表示パネルの表示光が出光する前面側、この前面側とは反対側の背面側、のいずれか1以上の側に配置される上記本発明による光学シート10とを備える。
【0060】
図4に、本発明による表示装置100の実施形態例として3例を示す。
光学シート10を画像表示パネル20に対して配置する位置は、光学シート10が含む光線制御層1が担う光線制御機能に応じた位置に配置される。
例えば、
図4(A)の様に、画像表示パネル20の画像を観察する観察者V側の前面側(画面側)でもよいし、これとは逆に、
図4(B)の様に、画像表示パネル20の背面側でもよいし、或いは図示はしないが、前面側と背面側の両方の側でもよい。
光学シート10が含む光線制御層1が担う光線制御機能に応じた位置に、光学シート10は配置される。
【0061】
光学シート10を画像表示パネル20の背面側に配置する形態では、画像表示パネル20は透過光を利用して画像を表示する透過型となり、この画像表示パネル20を背面側から照明するバックライト30を備える。画像表示パネル20の背面側に配置されるとき、光学シート10はバックライト30から画像表示パネル20に到達する照明光を制御する機能を担う。
光学シート10は、
図4では、画像表示パネル20、或いはバックライト30と別体の構成であるが、画像表示パネル20やバックライト30と一体化した構成などもあり得る。
【0062】
図4(A)は、光学シート10が画像表示パネル20の前面側に配置される形態であった。こうした光学シート10が画像表示パネル20の前面側に配置される形態には、その一種として、
図4(C)に示すように、画像表示パネル20を含む映像光源40から投影された映像光を背面側から受けて結像する透過型のスクリーンとして、光学シート10が用いられる形態もある。
【0063】
図示はしないが、光学シート10をスクリーンとして用いる形態では、
図4(C)とは位置関係が逆に、スクリーンの前面側から映像光を投影する反射型のスクリーンとして、光学シート10が用いられる形態もある。
【0064】
以下、画像表示パネル20、バックライト30、及び映像光源40について、説明する。
【0065】
〔画像表示パネル20〕
画像表示パネル20は、画像を表示可能なものであれば、特に制限はなく、従来公知のものを適宜採用できる。例えば、画像表示パネル20は、液晶パネル、EL(電界発光)パネル、プラズマディスプレイパネル、電子ペーパパネル、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)、ブラウン管等である。
【0066】
〔バックライト30〕
バックライト30は、画像表示パネル20の表示用の光を画像表示パネル20の背面側へ出光できるものであれば特に制限はなく、従来公知のものを適宜採用できる。例えば、導光板を用いたサイドライト型、或いは直下型などである。光源自体は、冷陰極管(CCFL)、発光ダイオード(LED)、EL(電界発光)パネル、なとである。
【0067】
〔映像光源40〕
図4(C)に示す形態では、スクリーンとしての光学シート10に、映像光を投影する手段である映像光源40の一構成要素として、画像表示パネル20が使われる。さらに、画像表示パネル20が、自発光型ではなく、それ自体が発光しない液晶表示パネルのような透過型であるときは、画像表示パネル20の背面側にはバックライト30が配置され、映像光源40は画像表示パネル20とバックライト30とを含む構成となる。
【0068】
〔その他の構成要素〕
表示装置100は、上記した構成要素以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、表示装置の用途に応じて、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
【0069】
〔効果〕
本発明による表示装置100は、表示装置100が備える光学シート10について、そのマイクロルーバー構造を持つ光線制御層1の層面の窪みに起因する残留気泡の発生が抑制されているので、残留気泡による表示画像の画質低下を抑制することができる。
【0070】
〔用途〕
本発明による表示装置100は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電子看板、遊戯機器、携帯電話、携帯情報端末、電子書籍端末、映写システム等の表示装置として好適である。