特許第6020147号(P6020147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020147
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】切断装置及び切断方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/08 20060101AFI20161020BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B26D1/08
   B26D7/02 C
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-283606(P2012-283606)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-124723(P2014-124723A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120178
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 康成
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】四條 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】三田村 一広
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雅基
(72)【発明者】
【氏名】池内 淳
(72)【発明者】
【氏名】清水 基男
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴司
(72)【発明者】
【氏名】日吉 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高階 優一
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−149112(JP,U)
【文献】 特開昭48−016270(JP,A)
【文献】 特開2010−247237(JP,A)
【文献】 特開2010−058221(JP,A)
【文献】 特開平09−136319(JP,A)
【文献】 特開平11−144713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/08
B26D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の刃と第2の刃との間に切断対象物を配置し、押さえ部材によって前記切断対象物を前記第2の刃に押し付けた状態で前記切断対象物を前記第1の刃と前記第2の刃とで挟んで切断する切断装置であって、
前記切断対象物が切断される間、前記押さえ部材を前記切断対象物に向けて押す第1の負荷機構と、
前記切断対象物が切断される間、前記第1の負荷機構が前記押さえ部材を押す位置を挟んで両側、かつ、等距離にある位置を、それぞれ前記切断対象物に向けて前記第1の負荷機構が前記押さえ部材を押す力よりも小さい力で押す一対の第2の負荷機構と、
を備えたことを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断装置であって、
前記一対の第2の負荷機構のそれぞれが前記押さえ部材を押す力は、前記第1の負荷機構が前記押さえ部材を押す力の1/2以下である、
ことを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の切断装置であって、
前記押さえ部材は、前記第1の刃の刃先よりも前記第2の刃の近くまで延びる押し付け部を有し、該押押し付け部を前記切断対象物に押し付ける、
ことを特徴とする切断装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の切断装置であって、
前記押さえ部材は、前記切断対象物の切断面に隣接する部位に押し付けられる、
ことを特徴とする切断装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の切断装置であって、
前記切断対象物は、金属箔を複数積層して形成される集電体である、
ことを特徴とする切断装置。
【請求項6】
第1の刃と第2の刃との間に切断対象物を配置し、押さえ部材によって前記切断対象物を前記第2の刃に押し付けた状態で前記切断対象物を前記第1の刃と前記第2の刃とで挟んで切断する切断方法であって、
前記押さえ部材を第1の大きさの力で前記切断対象物に向けて押すとともに、前記第1の大きさの力で前記押さえ部材を押す位置を挟んで両側、かつ、等距離にある位置を、それぞれ前記第1の力よりも小さい第2の力で前記切断対象物に向けて押し、この状態で前記切断対象物を前記第1の刃と前記第2の刃とで挟んで切断する、
ことを特徴とする切断方法。
【請求項7】
請求項6に記載の切断方法であって、
前記第2の力は、前記第1の力の1/2以下である、
ことを特徴とする切断方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の切断方法であって、
前記押さえ部材は、前記第1の刃の刃先よりも前記第2の刃の近くまで延びる押し付け部を有し、該押押し付け部を前記切断対象物に押し付ける、
ことを特徴とする切断方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一つに記載の切断方法であって、
前記押さえ部材を、前記切断対象物の切断面に隣接する部位に押し付ける、
ことを特徴とする切断方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一つに記載の切断方法であって、
前記切断対象物は、金属箔を複数積層して形成される集電体である、
ことを特徴とする切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断対象物を上刃と下刃とで挟んで切断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、活物質層が表面に形成された金属箔からなる集電体を、上刃と下刃とで挟んで所望の寸法に切断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−144713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集電体を上刃と下刃との間に挟んで切断する場合、切断時に集電体に剪断抵抗が作用して集電体が動き、切断位置がずれてしまう。このため、一般的には、押さえ板によって切断対象物を下刃に押し付け、集電体が動かないようにしたうえで集電体を切断することが行われている。
【0005】
しかしながら、押さえ板に加えられる力によって押さえ板が微少変形すると、押さえ板と集電体とが密着せず、両者の間に隙間が生じる。そして、隙間が生じた部位では、切断時の剪断抵抗によって集電体中の金属箔の一部が引っ張られてずれ、又は、変形し、この状態で金属箔が切断されるとバリが発生する。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、押さえ部材によって切断対象物を下刃に押し付けた状態で切断対象物を上刃と下刃とで挟んで切断する切断装置において切断面の不良を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、第1の刃と第2の刃との間に切断対象物を配置し、押さえ部材によって前記切断対象物を前記第2の刃に押し付けた状態で前記切断対象物を前記第1の刃と前記第2の刃とで挟んで切断する切断装置が提供される。
【0008】
切断装置は、前記切断対象物が切断される間、前記押さえ部材を前記切断対象物に向けて押す第1の負荷機構を備える。さらに、切断装置は、前記切断対象物が切断される間、前記第1の負荷機構が前記押さえ部材を押す位置を挟んで両側、かつ、等距離にある位置を、それぞれ前記切断対象物に向けて前記第1の負荷機構が前記押さえ部材を押す力よりも小さい力で押す一対の第2の負荷機構を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、第1の負荷機構及び一対の第2の負荷機構から押さえ部材に作用する力が押さえ部材の長手方向に沿って傾斜配分されるので、押さえ部材で切断対象物を下刃に押し付けた時の押さえ部材の微少変形が抑えられる。
【0010】
これにより、押さえ部材で切断対象物を下刃に押し付けた時に、押さえ部材と切断対象物とが隙間無く密着し、切断時の剪断抵抗によって切断対象物にずれ及び変形が生じにくくなり、切断面の不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る切断装置の全体斜視図である。
図2】本実施形態に係る切断装置の正面図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】集電体の模式図である。
図5A】切断装置の動作を説明するための図である。
図5B】切断装置の動作を説明するための図である。
図5C】切断装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
リチウムイオンバッテリの製造工程では、正極、負極及びセパレータを複数積層した電極積層体を作成し、この電極積層体の集電体の端部を揃えるためにトリムすることが行われる。
【0014】
図1図3に示す本発明の実施形態に係る切断装置1は、上記トリム工程で用いられる切断装置である。切断対象物である集電体2は、図4に示すように、活物質層21が表面に形成されたアルミ箔、銅箔等の金属箔22を複数積層して形成される。
【0015】
まず、図1図3を参照しながら、切断装置1の構成について説明する。図1はその全体斜視図、図2はその正面図、図3図2の要部拡大図である。
【0016】
切断装置1は、上プレート3と、下プレート4と、下プレート4の四隅に配置されたガイドシリンダ5とを備える。上プレート3には図示しないプレス等のアクチュエータ(図示せず)が接続されており、アクチュエータを動作させると上プレート3がガイドシリンダ5に沿って上下動する。
【0017】
上プレート3には、鋼、超硬合金等で形成された上刃6が取付部材を介して固定されている。
【0018】
下プレート4には、鋼、超硬合金等で形成された下刃7が、下プレート4から突出した状態で取付部材を介して固定されている。集電体2を切断する際には、図2に示すように、下刃7の上に集電体2が載置される。
【0019】
また、上プレート3には、ダンパ付きのセンタースプリング8、及び、一対のダンパ付きサイドスプリング9を介して押さえ板10が取り付けられている。押さえ板10は、上プレート3と共に上下動し、センタースプリング8及び一対のサイドスプリング9が縮むことによって、上プレート3に対して相対変位することができる。
【0020】
押さえ板10は、上刃6及び下刃7の刃幅方向に延びる長尺状の部材である。押さえ板10は、下面中央に、上刃6及び下刃7の刃幅方向に延びる押さえ板10よりも短い押さえ部11を有している。押さえ部11は、断面がL字であり、集電体2の切断面に隣接する部位に向けて垂下する部位を有する。これにより、集電体2の切断が開始される前の初期状態では、押さえ部11の下端は上刃6の刃先6eよりも下方に位置している(図5A参照)。
【0021】
図2図3に示すように、センタースプリング8は、集電体2の上方であって、押さえ板10の長手方向中央位置に接続されている。また、一対のサイドスプリング9は、センタースプリング8が接続される位置を挟んで両側、かつ、等距離(略等距離含む)の位置、本実施形態では押さえ板10の両端に接続されている。
【0022】
サイドスプリング9のばね定数はセンタースプリング8のばね定数よりも小さく、好ましくは1/2以下、本実施形態では略1/2である。押さえ板10が集電体2に接触した状態から上プレート3がさらに下降すると、センタースプリング8及び一対のサイドスプリング9が上プレート3と押さえ板10との間で圧縮され、それらのばね反力の合力が押さえ板10に作用する。センタースプリング8及び一対のサイドスプリング9は同じ量だけ圧縮されるので、一対のサイドスプリング9のそれぞれのばね反力F2はセンタースプリング8のばね反力F1よりも小さくなり、1/2以下、本実施形態では略1/2となる。
【0023】
したがって、センタースプリング8及び一対のサイドスプリング9から押さえ板10に作用する力は、押さえ板10の長手方向中央位置で最大となり、長手方向中央位置から離れるにつれて小さくなる。すなわち、センタースプリング8及び一対のサイドスプリング9から押さえ板10に作用する力は、押さえ板10の長手方向に傾斜配分される。
【0024】
続いて、上記切断装置1の動作について説明する。
【0025】
図5Aは、上プレート3が上死点位置にある状態を示している。この状態では、押さえ板10の押さえ部11の下端が上刃6の刃先6eよりもΔhだけ下方に位置する。また、下刃6の上には切断対象物である集電体2が載置されている。
【0026】
図示しないアクチュエータによって上プレート3が下降すると、上プレート3とともに押さえ板10及び上刃6が下降し、図5Bに示すように、押さえ板10の押さえ部11が最初に集電体2に接触する。
【0027】
押さえ板10の押さえ部11が集電体2に接触した状態で上プレート3がさらに下降すると、上プレート3と押さえ板10との間でセンタースプリング8及び一対のサイドスプリング9が圧縮され、それらのばね反力が押さえ板10に作用する。
【0028】
上記の通り、センタースプリング8及び一対のサイドスプリング9から押さえ板10に作用する力は、押さえ板10の長手方向に傾斜配分されるので、押さえ板10を集電体2に押し付けた時の押さえ板10の微少変形は抑えられ、押さえ板10の押さえ部11は集電体2と隙間無く密着する。また、集電体2の切断面に隣接する部位(下刃6の刃先7eの上方に位置する部位)が押さえ板10によって下刃7に押し付けられる。
【0029】
図5Bの状態から上プレート3が下降すると、上刃6が集電体2に接触し、さらに上プレート3が下降すると、上刃6と下刃7とが噛み合って、図5Cに示すように、集電体2が切断される。
【0030】
集電体2の切断が終了したら、図示しないアクチュエータによって上プレート3が上昇し、図5Aに示す上死点位置まで戻ったところで停止する。切断装置1の各部位が初期位置に戻り、集電体2のトリム工程の1サイクルが完了する。
【0031】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0032】
上記実施形態では、集電体2の切断開始から切断終了までの間、押さえ板10によって集電体2が下刃7に押し付けられるが、センタースプリング8及び一対のサイドスプリング9から押さえ板10に作用する力が押さえ板10の長手方向に沿って傾斜配分されているので、押さえ板10の微少変形が抑えられる。
【0033】
これにより、押さえ板10の押さえ部11を集電体2に密着させることができ、切断時の剪断抵抗によって集電体2を構成する金属箔22の一部が引っ張られてずれたり変形したりするのを抑え、バリの発生を抑えることができる。
【0034】
センタースプリング8及び一対のサイドスプリング9から押さえ板10に作用する力を押さえ板10の長手方向に沿って傾斜配分させるには、一対のサイドスプリング9のそれぞれが押さえ板10を押す力をセンタースプリング8が押さえ板10を押す力よりも小さくすればよい。特に、前者を後者の1/2以下、好ましくは略1/2とすれば、押さえ板10の微少変形がさらに抑えられて押さえ部11と集電体の密着度が上がり、集電体2を構成する金属箔22のずれ及び変形を抑えて、バリの発生をさらに抑えることができる。
【0035】
また、押さえ板10の押さえ部11が上刃6の刃先6eよりも下方に垂下しているので(図5A)、上刃6の刃先6eよりも先に、すなわち、集電体2の切断開始前に押さえ板10を集電体2に押しつけることができる。これにより、押さえ板10によって集電体2が下刃7に押し付けられない状態で、集電体2の切断が行われるのを防止することができる。
【0036】
また、押さえ板10が下方に垂下する押さえ部11を有することで、押さえ板10の上下方向の高さがその分高くなり、押さえ板10の長手方向の曲げ剛性が向上する。これにより、押さえ板10の微少変形がさらに抑えられ、バリの発生がさらに抑えられる。
【0037】
また、押さえ板10が集電体2を押す部位を、集電体2の切断面に隣接する部位としたことにより、仮に、集電体2の金属箔22のずれ又変形が生じたとしてもその程度を抑えることができ、これによってもバリの発生がさらに抑えられる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0039】
例えば、上記実施形態では、押さえ板10が集電体2を下刃7に押し付ける力をスプリングによって作用させる構成であるが、スプリングではなく、その他の弾性部材、アクチュエータ等によって作用させる構成であってもよい。
【0040】
また、切断装置1が切断する切断対象物は、集電体2に限定されず、集電体2以外の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 切断装置
2 集電体(切断対象物)
6 上刃(第1の刃)
7 下刃(第2の刃)
8 センタースプリング(第1の負荷装置)
9 サイドスプリング(第2の負荷装置)
10 押さえ板(押さえ部材)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C