(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導出部は、第2期間を変えながら、加速度センサの取付け角の絶対値を仮の絶対値として複数導出するとともに、複数の仮の絶対値を加重平均することによって、加速度センサの取付け角の絶対値を導出しており、前記相関部において導出した相関値が大きくなるほど、加重平均の際の重みを大きくすることを特徴とする請求項2に記載の導出装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、車両等に搭載された加速度センサの取付け角を導出する導出装置に関する。取付け角を短期間に導出するために、本実施例に係る導出装置は、次の処理を実行する。導出装置は、加速度センサからの進行方向出力値であって、かつ車両の進行方向についての進行方向出力値(以下、「加速度センサY軸出力値」という)を入力する。また、導出装置は、距離センサからの速度パルスをもとに加速度を取得する。ここで、道路の傾斜角が変化しない期間において、加速度センサY軸出力値の時間変化と、加速度の時間変化とをもとに、取付け角の絶対値が導出される。道路の傾斜角が変化しない期間を検出するために、導出装置は、加速度センサY軸出力値と加速度との相関値を計算し、相関値がしきい値以上の期間を特定する。加速度センサY軸出力値の時間変化と、加速度の時間変化とを検出ための期間を短縮することによって、導出装置は、短期間であっても取付け角を導出できる。
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る加速度センサ12を搭載した車両10を示す。車両10は、図中の車両進行方向へ移動する。加速度センサ12は、車両10に搭載されている。加速度センサ12が加速度を検出する軸は、車両進行方向に一致せず、車両進行方向からずれている。軸と車両進行方向との間の角が、前述の取付け角に相当し、ここではこれをθ
sと示す。一般的に取付け角が大きくなるほど、加速度センサ12の出力から道路傾斜角を算出する場合の誤差が大きくなる。
【0013】
図2は、本発明の実施例に係る導出装置100の構成を示す。導出装置100は、入力部20、取得部22、相関部24、導出部26、制御部28を含み、取得部22は、速度計算部30、加速度計算部32を含み、導出部26は、絶対値計算部34、符号計算部36を含む。導出装置100には、加速度センサ12、距離センサ14が接続される。
【0014】
加速度センサ12は、車両10の主たる移動方向、例えば、車両の前後方向に生じる加速度を検出する。ここでは、加速度を説明するために
図3を使用する。
図3は、導出装置100において処理対象となる角度を示す。水平面方向がY軸として規定されるとともに、Y軸に対する鉛直方向がZ軸として規定される。重力加速度は、Z軸に重なる。道路面204は、Y軸に対して傾き角θ
pだけ傾いている。道路面204の方向は、
図1の車両進行方向に相当する。前述のごとく、加速度センサ12は、車両進行方向に対して取付け角θ
sずれて搭載されている。加速度センサ12の検出軸は、加速度センサY軸200として示されている。また、加速度センサY軸200に鉛直の軸が加速度センサZ軸202として示されている。加速度センサY軸200には、道路面204方向の加速度成分と、重力加速度成分とが重畳されている。以下では、車両10の進行方向についての出力値を「進行方向出力値」といい、車両10の進行方向に対して鉛直方向についての出力値を「重力加速度方向出力値」という。
図1に戻る。加速度センサ12は、検出した出力値を入力部20へ順次出力する。
【0015】
入力部20は、加速度センサ12に接続されており、加速度センサ12からの出力値を順次受けつける。このような出力値には、進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが含まれている。入力部20は、相関部24および導出部26へ出力値を順次出力する。
【0016】
距離センサ14は、車両10の移動距離を検出する。例えば、距離センサ14は、所定の期間の速度パルスを加算することによって移動距離を導出する。距離センサ14は、検出した移動距離に関する情報(以下、「距離情報」という)を取得部22へ順次出力する。また、GPSから出力される速度情報に時間を乗算することによって、移動距離が導出されてもよい。GPSから出力される速度情報は
図3のY軸における速度であるので、例えば、GPSから出力される高度情報等から道路傾斜θ
pを算出し、速度をcos(θ
p)で除算することで道路面204方向の移動距離として導出する。
【0017】
速度計算部30は、距離センサ14に接続されており、距離センサ14から距離情報を順次受けつける。速度計算部30は、距離情報に含まれた移動距離の時間変化を計算することによって、速度を導出する。速度計算部30は、導出した速度を加速度計算部32へ順次出力する。加速度計算部32は、速度計算部30から速度を順次受けつける。加速度計算部32は、速度の時間変化を計算することによって、加速度を導出する。この加速度は、進行方向出力値とは別に導出されており、道路の傾き方向についての加速度といえる。加速度計算部32は、相関部24および導出部26へ導出した加速度を順次出力する。このように取得部22は、車両10の加速度を順次取得する。
【0018】
相関部24は、加速度計算部32から加速度を順次受けつけ、入力部20から出力値を順次受けつける。相関部24は、加速度と、出力値、特に進行方向出力値との間の相関値を導出する。ここでは、相関部24での相関処理を説明する前に、取付け角θ
sを導出するための処理の概要を説明する。
図3に示された角度が規定される状況下において、加速度センサ12によって検出される加速度は、次のように示される。
【数1】
ここで、K
aは、加速度センサY軸感度[m/(s
2・V)]であり、a
YOutは、加速度センサY軸出力[V]であり、a
YLOfsは、加速度センサY軸水平時オフセット[V]であり、a
Yは、加速度[m/s
2]であり、gは、重力加速度[m/s
2]である。また、a
YOutは、前述の進行方向出力値に相当し、a
Yは、加速度計算部32において導出される。
【0019】
式(1)について、時刻nでの加速度と時刻n+1での加速度との連立式は、次のように示される。
【数2】
式(2)において、θ
p[n]とθ
p[n+1]とが等しければ、次の関係が成立する。
【数3】
ここで、式(3)の右辺が一定値であれば、取付け角θ
sの絶対値が導出される。また、式(3)の右辺が一定値になることは、式(2)の右辺の重力項が消去できることに相当する。
【0020】
このような状況は、(i)a
YLOfsの温度特性による変化が微小である場合、かつ(ii)a
YOutとa
Yとの相関が高い場合に成立する。条件(i)は、時刻nと時刻n+1との時間間隔が微少であるようにすれば満たされる。ここで、微少な時間間隔は、例えば、1秒である。条件(ii)が成立しているかを検出するために、前述のごとく、相関部24は相関値Cを次のように計算する。
【数4】
【数5】
【0021】
図4(a)−(b)は、相関部24における処理概要を示す。
図4(a)は、時間経過に対する加速度センサY軸出力210、加速度212との関係を示しており、相関が高い場合に相当する。
図4(b)は、
図4(a)と同様の関係を示しているが、相関が低い場合に相当する。
図2に戻る。相関部24は、相関値Cとしきい値とを比較し、相関値Cがしきい値以上であれば、その旨を導出部26へ通知する。例えば、式(4)において、N=4、しきい値=0.99である場合、相関部24は、相関値Cが0.99以上であれば、導出部26への通知を出力する。
【0022】
絶対値計算部34は、相関部24において導出した相関値がしきい値以上である場合に、相関部24から通知を受けつける。絶対値計算部34は、通知を受けた場合に、式(3)を計算することによって、cos(θ
s)を計算する。cosは
偶関数であるので、これは、車両10に対する加速度センサ12の取付け角θ
sの絶対値を導出することに相当する。なお、式(3)の計算は、取得部22において順次取得した加速度の変化と、入力部20において順次入力した進行方向出力値の変化とをもとに、車両10に対する加速度センサの取付け角θ
sの絶対値を導出することである。
【0023】
なお、絶対値計算部34は、相関部24において相関値を導出するための期間(以下、「第1期間」という)よりも短い期間(以下、「第2期間」という)において式(3)を計算する。例えば、式(3)において、第1期間はN=4であり、n=2と3のときの値が使用される。その際、第2期間は「2」であり、かつ第1期間に含まれている。絶対値計算部34は、取付け角θ
sの絶対値を符号計算部36に出力してもよいし、外部に出力してもよい。
【0024】
符号計算部36は、入力部20から出力値を順次受けつける。符号計算部36は、絶対値計算部34が絶対値を算出した後、道路面204が水平に近ければ、車両10に対する加速度センサの取付け角の符号を導出する。ここで、道路面204が水平に近いことは、例えば、GPSセンサによって検出された高度から導出される。具体的に説明すると、符号計算部36は、車両10が進行状態から停止状態に変わる場合において、入力部20において順次入力した重力加速度方向出力値の増減に応じて、車両10に対する加速度センサの取付け角θ
sの符号を導出する。ここで、車両10が進行状態から停止状態に変わる場合は、速度計算部30において導出される速度の変化によって検出される。なお、車両10が進行状態から停止状態に変わる場合は、車両10が停止状態から進行状態に変わる場合であってもよい。これらは、車両の加速度が変化する場合に相当する。
【0025】
図5(a)−(b)は、符号計算部36における処理概要を示す。
図5(a)は、加速度センサの取付け角θ
sの符号が「正」である場合に相当する。
図5(a)では、
図3と同様に、加速度センサY軸200、加速度センサZ軸202が示されている。このような状況において、取付け角θ
sは、加速度センサZ軸202において、加速度センサZ軸出力変化量214と示される。加速度センサZ軸出力変化量214の方向は、重力加速度方向と逆である。そのため、符号計算部36は、重力加速度方向出力値の減少を検出すれば、取付け角θ
sの符号「正」を導出する。
【0026】
図5(b)は、加速度センサの取付け角θ
sの符号が「負」である場合に相当する。加速度センサZ軸出力変化量214の方向は、重力加速度方向と同一である。そのため、符号計算部36は、重力加速度方向出力値の増加を検出すれば、取付け角θ
sの符号「負」を導出する。
図2に戻る。絶対値計算部34において導出された取付け角θ
sの絶対値と、符号計算部36において導出された取付け角θ
sの符号との組合せが、取付け角θ
sに相当する。制御部28は、導出装置100の動作を制御する。
【0027】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0028】
以上の構成による導出装置100の動作を説明する。
図6は、導出装置100による傾き角の導出手順を示すフローチャートである。相関部24は、相関値を計算する(S10)。相関値がしきい値以上であれば(S12のY)、絶対値計算部34は、取付け角の絶対値を導出し(S14)、符号計算部36は、取付け角の符号を導出する(S16)。一方、相関値がしきい値以上でなければ(S12のN)、ステップ14、16はスキップされる。
【0029】
図7は、符号計算部36による符号の導出手順を示すフローチャートである。水平に近く(S20のY)、車両10が進行状態から停止状態に変化し(S22のY)、重力加速度方向出力値が減少すれば(S24のY)、符号計算部36は、符号「−」を導出する(S26)。重力加速度方向出力値が減少しなければ(S24のN)、符号計算部36は、符号「+」を導出する(S28)。水平に近くない場合(S20のN)、あるいは車両10が停止状態から進行状態に変化しない場合(S22のN)、処理は終了される。
【0030】
次に、本発明の変形例を説明する。本発明の変形例は、実施例と同様に、車両に対する加速度センサの取付け角を導出することに関する。変形例では、実施例とは異なった処理によって、取付け角の符号を導出する。実施例では、停止状態から進行状態に変化するひとつのタイミングにおいて、取付け角の符号が導出される。変形例では、ふたつのタイミングにおいて、取付け角の符号が導出される。変形例に係る導出装置100は、
図2と同様のタイプである。以下では、実施例との差異を中心に説明する。
【0031】
図8は、本発明の変形例に係る取得部22の構成を示す。取得部22は、速度計算部30、加速度計算部32、傾き角計算部40を含む。傾き角計算部40は、車両10の傾き角θ
pを順次取得する。傾き角θ
pの導出には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、傾き角計算部40には、距離センサ14からの入力だけではなく、図示しないGPS等からの入力がなされてもよい。
【0032】
図2の符号計算部36は、傾き角計算部40からの傾き角θ
pも受けつける。符号計算部36は、ふたつのタイミングにおける傾き角をθ
p1とθ
p2とする。なお、θ
p1<θ
p2であるとする。|θ
p1|>θ
thまたは|θ
p2|>θ
thであれば、符号計算部36は、処理を停止する。|θ
p1|>θ
thまたは|θ
p2|>θ
thでなければ、符号計算部36は、処理を続行する。ここで、0<θ
th<θ
sとなるように、θ
thが設定される。
【0033】
符号計算部36は、傾き角の第1値θ
p1に対応した重力加速度方向出力値の第1値a
ZOut1と、傾き角の第2値θ
p1に対応した重力加速度方向出力値の第2値a
ZOut2とする。符号計算部36は、重力加速度方向出力値の第1値a
ZOut1と重力加速度方向出力値の第2値a
ZOut2との大小関係に応じて、車両10に対する加速度センサ12の取付け角θ
sの符号を導出する。
【0034】
図9は、本発明の変形例の符号計算部36における処理概要を示す。縦軸は重力加速度方向出力値a
ZOutを示し、横軸は角度Θを示す。ここで、角度Θは、θ
p+θ
sまたはθ
p−θ
sに相当する。図示のごとく、傾き角が増加する場合に、重力加速度方向出力値が増加すれば、符号計算部36は、取付け角θ
sの符号が「負」であると判定する。なお、重力加速度方向出力値が増加することは、重力加速度方向出力値の第2値a
ZOut2>重力加速度方向出力値の第1値a
ZOut1に相当する。一方、傾き角が増加する場合に、重力加速度方向出力値が減少すれば、符号計算部36は、取付け角θ
sの符号が「正」であると判定する。なお、重力加速度方向出力値が減少することは、重力加速度方向出力値の第2値a
ZOut2<重力加速度方向出力値の第1値a
ZOut1に相当する。
【0035】
図10は、本発明の変形例の符号計算部36による符号の導出手順を示すフローチャートである。|θ
s|−θ
th<|θ
p1|<|θ
s|+θ
th、|θ
s|−θ
th<|θ
p2|<|θ
s|+θ
thであり(S40のY)、a
ZOut2>a
ZOut1であれば(S42のY)、符号計算部36は、符号「−」を導出する(S44)。a
ZOut2>a
ZOut1でなければ(S42のN)、符号計算部36は、符号「+」を導出する(S46)。|θ
s|−θ
th<|θ
p1|<|θ
s|+θ
th、|θ
s|−θ
th<|θ
p2|<|θ
s|+θ
thでなければ(S40のN)、処理は終了される。
【0036】
本発明の実施例によれば、加速度と進行方向出力値との間の相関が高い場合に、加速度の変化と進行方向出力値の変化とをもとに取付け角の絶対値を導出するので、変化が生じる程度の短期間に取付け角を導出できる。また、取付け角が短期間に導出されるので、導出精度を向上できる。また、加速度と進行方向出力値との間の相関値を導出するので、加速度の変化と進行方向出力値の変化とをもとに取付け角の絶対値を導出できる。また、相関値を導出ための期間中における加速度の変化と進行方向出力値の変化とを使用するので、取付け角の導出精度を向上できる。
【0037】
また、傾斜角が水平に近い場合であって、車両が進行状態から停止状態に変わる場合において、重力加速度方向出力値の増減に応じて取付け角の符号を導出するので、取付け角の符号を簡易に導出できる。また、ふたつの重力加速度方向出力値の大小関係に応じて取付け角の符号を導出するので、取付け角の符号を簡易に導出できる。また、ふたつの重力加速度方向出力値の相対的な関係を使用するので、取付け角の符号の導出精度を向上できる。
【0038】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0039】
本発明の実施例において、絶対値計算部34は、一度の計算で取付け角の絶対値を導出している。しかしながらこれに限らず例えば、絶対値計算部34は、第2期間を変えながら、加速度センサ12の取付け角の絶対値を仮の絶対値として複数導出するとともに、複数の仮の絶対値を加重平均することによって、加速度センサ12の取付け角の絶対値を導出してもよい。その際、絶対値計算部34は、相関部24において導出した相関値が大きくなるほど、加重平均の際の重みを大きくする。本変形例によれば、加重平均を実行するので、取付け角の絶対値の導出精度を向上できる。