特許第6020163号(P6020163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020163
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】導出装置、導出方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/16 20060101AFI20161020BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G01C21/16
   G01C21/26 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-288609(P2012-288609)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130094(P2014-130094A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 高広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 裕章
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 功育
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−064500(JP,A)
【文献】 特開2009−019992(JP,A)
【文献】 特開2008−215917(JP,A)
【文献】 特開2008−275530(JP,A)
【文献】 特開2009−250778(JP,A)
【文献】 特開2007−107951(JP,A)
【文献】 特開2011−209162(JP,A)
【文献】 特開2009−014732(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0247854(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0076681(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
G08G 1/00 − 99/00
G09B 23/00 − 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された加速度センサからの出力値であって、かつ車両の進行方向についての進行方向出力値と車両の進行方向に対して鉛直方向についての重力加速度方向出力値とが重畳された出力値を順次入力する入力部と、
車両に搭載された距離センサからの移動距離の時間変化を計算することによって速度を導出するとともに、速度から車両の進行方向の加速度を順次計算する取得部と、
前記取得部において順次計算した進行方向の加速度の変化量と、前記入力部において順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量との間の相関値を導出する相関部と、
前記相関部において導出した相関値がしきい値以上である場合に、前記取得部において順次計算した進行方向の加速度の変化量と、前記入力部において順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量とをもとに、車両に対する加速度センサの取付け角の絶対値を導出する導出部と、
を備えることを特徴とする導出装置。
【請求項2】
前記導出部は、前記相関部において相関値を導出するための第1期間よりも短い第2期間であって、かつ第1期間に含まれた第2期間における進行方向の加速度の変化量と進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量とをもとに、車両に対する加速度センサの取付け角の絶対値を導出することを特徴とする請求項1に記載の導出装置。
【請求項3】
前記導出部は、第2期間を変えながら、加速度センサの取付け角の絶対値を仮の絶対値として複数導出するとともに、複数の仮の絶対値を加重平均することによって、加速度センサの取付け角の絶対値を導出しており、前記相関部において導出した相関値が大きくなるほど、加重平均の際の重みを大きくすることを特徴とする請求項2に記載の導出装置。
【請求項4】
前記導出部は、車両の加速度が変化する場合において、前記入力部において順次入力した重力加速度方向出力値の増減に応じて、車両に対する加速度センサの取付け角の符号を導出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導出装置。
【請求項5】
前記取得部は、車両の傾き角を順次取得し、
前記導出部は、傾き角の第1値に対応した重力加速度方向出力値の第1値と、傾き角の第2値に対応した重力加速度方向出力値の第2値との大小関係に応じて、車両に対する加速度センサの取付け角の符号を導出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導出装置。
【請求項6】
車両に搭載された加速度センサからの出力値であって、かつ車両の進行方向についての進行方向出力値と車両の進行方向に対して鉛直方向についての重力加速度方向出力値とが重畳された出力値を順次入力するステップと、
車両に搭載された距離センサからの移動距離の時間変化を計算することによって速度を導出するとともに、速度から車両の進行方向の加速度を順次計算するステップと、
順次計算した進行方向の加速度の変化量と、順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量との間の相関値を導出するステップと、
導出した相関値がしきい値以上である場合に、順次計算した進行方向の加速度の変化量と、順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量とをもとに、車両に対する加速度センサの取付け角の絶対値を導出するステップと、
を備えることを特徴とする導出方法。
【請求項7】
入力部、取得部、相関部、導出部が含まれたコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記入力部が、車両に搭載された加速度センサからの出力値であって、かつ車両の進行方向についての進行方向出力値と車両の進行方向に対して鉛直方向についての重力加速度方向出力値とが重畳された出力値を順次入力するステップと、
前記取得部が、車両に搭載された距離センサからの移動距離の時間変化を計算することによって速度を導出するとともに、速度から車両の進行方向の加速度を順次計算するステップと、
前記相関部が、順次計算した進行方向の加速度の変化量と、順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量との間の相関値を導出するステップと、
前記導出部が、導出した相関値がしきい値以上である場合に、順次計算した進行方向の加速度の変化量と、順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量とをもとに、車両に対する加速度センサの取付け角の絶対値を導出するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導出技術に関し、特に加速度センサの取付け角を導出する導出装置、導出方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたナビゲーション装置では、車両の現在位置を検出するために、例えば、加速度センサ等のセンサからの出力を使用する。このような加速度センサの検出軸が傾斜すれば、水平時角速度センサ感度が変化するので、加速度センサの出力から道路傾斜角を算出する場合に誤差が含まれる。このような誤差を低減するためには、センサの傾斜角、特に車両への取付け角を導出する必要がある。これまでは、例えば、加速度センサにより検出される加速度、加速度センサ以外の手段によって導出される加速度、重力加速度、傾斜角、取付け角の間で成立する関係式から、取付け角が導出されている。その際、車両が移動しても同一地点に戻るのであれば、経路内の上りと下りの傾斜が長期的に相殺されるので、傾斜角の平均値はゼロになるという仮定が使用される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−243494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が移動しても同一地点に戻るという仮定を前提とした場合、取付け角を導出するための期間が長くなる。導出するための期間が長くなるほど、加速度センサのオフセットは、温度変化の影響を受けて変動する。加速度センサのオフセットが変動すると、導出された取付け角に含まれる誤差が大きくなり、導出精度が悪化する。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、取付け角を短期間に導出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の導出装置は、車両に搭載された加速度センサからの出力値であって、かつ車両の進行方向についての進行方向出力値と車両の進行方向に対して鉛直方向についての重力加速度方向出力値とが重畳された出力値を順次入力する入力部と、車両に搭載された距離センサからの移動距離の時間変化を計算することによって速度を導出するとともに、速度から車両の進行方向の加速度を順次計算する取得部と、取得部において順次計算した進行方向の加速度の変化量と、入力部において順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量との間の相関値を導出する相関部と、相関部において導出した相関値がしきい値以上である場合に、取得部において順次計算した進行方向の加速度の変化量と、入力部において順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量とをもとに、車両に対する加速度センサの取付け角の絶対値を導出する導出部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、導出方法である。この方法は、車両に搭載された加速度センサからの出力値であって、かつ車両の進行方向についての進行方向出力値と車両の進行方向に対して鉛直方向についての重力加速度方向出力値とが重畳された出力値を順次入力するステップと、車両に搭載された距離センサからの移動距離の時間変化を計算することによって速度を導出するとともに、速度から車両の進行方向の加速度を順次計算するステップと、順次計算した進行方向の加速度の変化量と、順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量との間の相関値を導出するステップと、導出した相関値がしきい値以上である場合に、順次計算した進行方向の加速度の変化量と、順次入力した進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが重畳された出力値の変化量とをもとに、車両に対する加速度センサの取付け角の絶対値を導出するステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取付け角を短期間に導出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る加速度センサを搭載した車両を示す図である。
図2】本発明の実施例に係る導出装置の構成を示す図である。
図3図2の導出装置において処理対象となる角度を示す図である。
図4図4(a)−(b)は、図2の相関部における処理概要を示す図である。
図5図5(a)−(b)は、図2の符号計算部における処理概要を示す図である。
図6図2の導出装置による傾き角の導出手順を示すフローチャートである。
図7図2の符号計算部による符号の導出手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の変形例に係る取得部の構成を示す図である。
図9】本発明の変形例の符号計算部における処理概要を示す図である。
図10】本発明の変形例の符号計算部による符号の導出手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、車両等に搭載された加速度センサの取付け角を導出する導出装置に関する。取付け角を短期間に導出するために、本実施例に係る導出装置は、次の処理を実行する。導出装置は、加速度センサからの進行方向出力値であって、かつ車両の進行方向についての進行方向出力値(以下、「加速度センサY軸出力値」という)を入力する。また、導出装置は、距離センサからの速度パルスをもとに加速度を取得する。ここで、道路の傾斜角が変化しない期間において、加速度センサY軸出力値の時間変化と、加速度の時間変化とをもとに、取付け角の絶対値が導出される。道路の傾斜角が変化しない期間を検出するために、導出装置は、加速度センサY軸出力値と加速度との相関値を計算し、相関値がしきい値以上の期間を特定する。加速度センサY軸出力値の時間変化と、加速度の時間変化とを検出ための期間を短縮することによって、導出装置は、短期間であっても取付け角を導出できる。
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る加速度センサ12を搭載した車両10を示す。車両10は、図中の車両進行方向へ移動する。加速度センサ12は、車両10に搭載されている。加速度センサ12が加速度を検出する軸は、車両進行方向に一致せず、車両進行方向からずれている。軸と車両進行方向との間の角が、前述の取付け角に相当し、ここではこれをθと示す。一般的に取付け角が大きくなるほど、加速度センサ12の出力から道路傾斜角を算出する場合の誤差が大きくなる。
【0013】
図2は、本発明の実施例に係る導出装置100の構成を示す。導出装置100は、入力部20、取得部22、相関部24、導出部26、制御部28を含み、取得部22は、速度計算部30、加速度計算部32を含み、導出部26は、絶対値計算部34、符号計算部36を含む。導出装置100には、加速度センサ12、距離センサ14が接続される。
【0014】
加速度センサ12は、車両10の主たる移動方向、例えば、車両の前後方向に生じる加速度を検出する。ここでは、加速度を説明するために図3を使用する。図3は、導出装置100において処理対象となる角度を示す。水平面方向がY軸として規定されるとともに、Y軸に対する鉛直方向がZ軸として規定される。重力加速度は、Z軸に重なる。道路面204は、Y軸に対して傾き角θだけ傾いている。道路面204の方向は、図1の車両進行方向に相当する。前述のごとく、加速度センサ12は、車両進行方向に対して取付け角θずれて搭載されている。加速度センサ12の検出軸は、加速度センサY軸200として示されている。また、加速度センサY軸200に鉛直の軸が加速度センサZ軸202として示されている。加速度センサY軸200には、道路面204方向の加速度成分と、重力加速度成分とが重畳されている。以下では、車両10の進行方向についての出力値を「進行方向出力値」といい、車両10の進行方向に対して鉛直方向についての出力値を「重力加速度方向出力値」という。図1に戻る。加速度センサ12は、検出した出力値を入力部20へ順次出力する。
【0015】
入力部20は、加速度センサ12に接続されており、加速度センサ12からの出力値を順次受けつける。このような出力値には、進行方向出力値と重力加速度方向出力値とが含まれている。入力部20は、相関部24および導出部26へ出力値を順次出力する。
【0016】
距離センサ14は、車両10の移動距離を検出する。例えば、距離センサ14は、所定の期間の速度パルスを加算することによって移動距離を導出する。距離センサ14は、検出した移動距離に関する情報(以下、「距離情報」という)を取得部22へ順次出力する。また、GPSから出力される速度情報に時間を乗算することによって、移動距離が導出されてもよい。GPSから出力される速度情報は図3のY軸における速度であるので、例えば、GPSから出力される高度情報等から道路傾斜θを算出し、速度をcos(θ)で除算することで道路面204方向の移動距離として導出する。
【0017】
速度計算部30は、距離センサ14に接続されており、距離センサ14から距離情報を順次受けつける。速度計算部30は、距離情報に含まれた移動距離の時間変化を計算することによって、速度を導出する。速度計算部30は、導出した速度を加速度計算部32へ順次出力する。加速度計算部32は、速度計算部30から速度を順次受けつける。加速度計算部32は、速度の時間変化を計算することによって、加速度を導出する。この加速度は、進行方向出力値とは別に導出されており、道路の傾き方向についての加速度といえる。加速度計算部32は、相関部24および導出部26へ導出した加速度を順次出力する。このように取得部22は、車両10の加速度を順次取得する。
【0018】
相関部24は、加速度計算部32から加速度を順次受けつけ、入力部20から出力値を順次受けつける。相関部24は、加速度と、出力値、特に進行方向出力値との間の相関値を導出する。ここでは、相関部24での相関処理を説明する前に、取付け角θを導出するための処理の概要を説明する。図3に示された角度が規定される状況下において、加速度センサ12によって検出される加速度は、次のように示される。
【数1】
ここで、Kは、加速度センサY軸感度[m/(s・V)]であり、aYOutは、加速度センサY軸出力[V]であり、aYLOfsは、加速度センサY軸水平時オフセット[V]であり、aは、加速度[m/s]であり、gは、重力加速度[m/s]である。また、aYOutは、前述の進行方向出力値に相当し、aは、加速度計算部32において導出される。
【0019】
式(1)について、時刻nでの加速度と時刻n+1での加速度との連立式は、次のように示される。
【数2】
式(2)において、θ[n]とθ[n+1]とが等しければ、次の関係が成立する。
【数3】
ここで、式(3)の右辺が一定値であれば、取付け角θの絶対値が導出される。また、式(3)の右辺が一定値になることは、式(2)の右辺の重力項が消去できることに相当する。
【0020】
このような状況は、(i)aYLOfsの温度特性による変化が微小である場合、かつ(ii)aYOutとaとの相関が高い場合に成立する。条件(i)は、時刻nと時刻n+1との時間間隔が微少であるようにすれば満たされる。ここで、微少な時間間隔は、例えば、1秒である。条件(ii)が成立しているかを検出するために、前述のごとく、相関部24は相関値Cを次のように計算する。
【数4】
【数5】
【0021】
図4(a)−(b)は、相関部24における処理概要を示す。図4(a)は、時間経過に対する加速度センサY軸出力210、加速度212との関係を示しており、相関が高い場合に相当する。図4(b)は、図4(a)と同様の関係を示しているが、相関が低い場合に相当する。図2に戻る。相関部24は、相関値Cとしきい値とを比較し、相関値Cがしきい値以上であれば、その旨を導出部26へ通知する。例えば、式(4)において、N=4、しきい値=0.99である場合、相関部24は、相関値Cが0.99以上であれば、導出部26への通知を出力する。
【0022】
絶対値計算部34は、相関部24において導出した相関値がしきい値以上である場合に、相関部24から通知を受けつける。絶対値計算部34は、通知を受けた場合に、式(3)を計算することによって、cos(θ)を計算する。cosは偶関数であるので、これは、車両10に対する加速度センサ12の取付け角θの絶対値を導出することに相当する。なお、式(3)の計算は、取得部22において順次取得した加速度の変化と、入力部20において順次入力した進行方向出力値の変化とをもとに、車両10に対する加速度センサの取付け角θの絶対値を導出することである。
【0023】
なお、絶対値計算部34は、相関部24において相関値を導出するための期間(以下、「第1期間」という)よりも短い期間(以下、「第2期間」という)において式(3)を計算する。例えば、式(3)において、第1期間はN=4であり、n=2と3のときの値が使用される。その際、第2期間は「2」であり、かつ第1期間に含まれている。絶対値計算部34は、取付け角θの絶対値を符号計算部36に出力してもよいし、外部に出力してもよい。
【0024】
符号計算部36は、入力部20から出力値を順次受けつける。符号計算部36は、絶対値計算部34が絶対値を算出した後、道路面204が水平に近ければ、車両10に対する加速度センサの取付け角の符号を導出する。ここで、道路面204が水平に近いことは、例えば、GPSセンサによって検出された高度から導出される。具体的に説明すると、符号計算部36は、車両10が進行状態から停止状態に変わる場合において、入力部20において順次入力した重力加速度方向出力値の増減に応じて、車両10に対する加速度センサの取付け角θの符号を導出する。ここで、車両10が進行状態から停止状態に変わる場合は、速度計算部30において導出される速度の変化によって検出される。なお、車両10が進行状態から停止状態に変わる場合は、車両10が停止状態から進行状態に変わる場合であってもよい。これらは、車両の加速度が変化する場合に相当する。
【0025】
図5(a)−(b)は、符号計算部36における処理概要を示す。図5(a)は、加速度センサの取付け角θの符号が「正」である場合に相当する。図5(a)では、図3と同様に、加速度センサY軸200、加速度センサZ軸202が示されている。このような状況において、取付け角θは、加速度センサZ軸202において、加速度センサZ軸出力変化量214と示される。加速度センサZ軸出力変化量214の方向は、重力加速度方向と逆である。そのため、符号計算部36は、重力加速度方向出力値の減少を検出すれば、取付け角θの符号「正」を導出する。
【0026】
図5(b)は、加速度センサの取付け角θの符号が「負」である場合に相当する。加速度センサZ軸出力変化量214の方向は、重力加速度方向と同一である。そのため、符号計算部36は、重力加速度方向出力値の増加を検出すれば、取付け角θの符号「負」を導出する。図2に戻る。絶対値計算部34において導出された取付け角θの絶対値と、符号計算部36において導出された取付け角θの符号との組合せが、取付け角θに相当する。制御部28は、導出装置100の動作を制御する。
【0027】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0028】
以上の構成による導出装置100の動作を説明する。図6は、導出装置100による傾き角の導出手順を示すフローチャートである。相関部24は、相関値を計算する(S10)。相関値がしきい値以上であれば(S12のY)、絶対値計算部34は、取付け角の絶対値を導出し(S14)、符号計算部36は、取付け角の符号を導出する(S16)。一方、相関値がしきい値以上でなければ(S12のN)、ステップ14、16はスキップされる。
【0029】
図7は、符号計算部36による符号の導出手順を示すフローチャートである。水平に近く(S20のY)、車両10が進行状態から停止状態に変化し(S22のY)、重力加速度方向出力値が減少すれば(S24のY)、符号計算部36は、符号「−」を導出する(S26)。重力加速度方向出力値が減少しなければ(S24のN)、符号計算部36は、符号「+」を導出する(S28)。水平に近くない場合(S20のN)、あるいは車両10が停止状態から進行状態に変化しない場合(S22のN)、処理は終了される。
【0030】
次に、本発明の変形例を説明する。本発明の変形例は、実施例と同様に、車両に対する加速度センサの取付け角を導出することに関する。変形例では、実施例とは異なった処理によって、取付け角の符号を導出する。実施例では、停止状態から進行状態に変化するひとつのタイミングにおいて、取付け角の符号が導出される。変形例では、ふたつのタイミングにおいて、取付け角の符号が導出される。変形例に係る導出装置100は、図2と同様のタイプである。以下では、実施例との差異を中心に説明する。
【0031】
図8は、本発明の変形例に係る取得部22の構成を示す。取得部22は、速度計算部30、加速度計算部32、傾き角計算部40を含む。傾き角計算部40は、車両10の傾き角θを順次取得する。傾き角θの導出には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、傾き角計算部40には、距離センサ14からの入力だけではなく、図示しないGPS等からの入力がなされてもよい。
【0032】
図2の符号計算部36は、傾き角計算部40からの傾き角θも受けつける。符号計算部36は、ふたつのタイミングにおける傾き角をθp1とθp2とする。なお、θp1<θp2であるとする。|θp1|>θthまたは|θp2|>θthであれば、符号計算部36は、処理を停止する。|θp1|>θthまたは|θp2|>θthでなければ、符号計算部36は、処理を続行する。ここで、0<θth<θとなるように、θthが設定される。
【0033】
符号計算部36は、傾き角の第1値θp1に対応した重力加速度方向出力値の第1値aZOut1と、傾き角の第2値θp1に対応した重力加速度方向出力値の第2値aZOut2とする。符号計算部36は、重力加速度方向出力値の第1値aZOut1と重力加速度方向出力値の第2値aZOut2との大小関係に応じて、車両10に対する加速度センサ12の取付け角θの符号を導出する。
【0034】
図9は、本発明の変形例の符号計算部36における処理概要を示す。縦軸は重力加速度方向出力値aZOutを示し、横軸は角度Θを示す。ここで、角度Θは、θ+θまたはθ−θに相当する。図示のごとく、傾き角が増加する場合に、重力加速度方向出力値が増加すれば、符号計算部36は、取付け角θの符号が「負」であると判定する。なお、重力加速度方向出力値が増加することは、重力加速度方向出力値の第2値aZOut2>重力加速度方向出力値の第1値aZOut1に相当する。一方、傾き角が増加する場合に、重力加速度方向出力値が減少すれば、符号計算部36は、取付け角θの符号が「正」であると判定する。なお、重力加速度方向出力値が減少することは、重力加速度方向出力値の第2値aZOut2<重力加速度方向出力値の第1値aZOut1に相当する。
【0035】
図10は、本発明の変形例の符号計算部36による符号の導出手順を示すフローチャートである。|θ|−θth<|θp1|<|θ|+θth、|θ|−θth<|θp2|<|θ|+θthであり(S40のY)、aZOut2>aZOut1であれば(S42のY)、符号計算部36は、符号「−」を導出する(S44)。aZOut2>aZOut1でなければ(S42のN)、符号計算部36は、符号「+」を導出する(S46)。|θ|−θth<|θp1|<|θ|+θth、|θ|−θth<|θp2|<|θ|+θthでなければ(S40のN)、処理は終了される。
【0036】
本発明の実施例によれば、加速度と進行方向出力値との間の相関が高い場合に、加速度の変化と進行方向出力値の変化とをもとに取付け角の絶対値を導出するので、変化が生じる程度の短期間に取付け角を導出できる。また、取付け角が短期間に導出されるので、導出精度を向上できる。また、加速度と進行方向出力値との間の相関値を導出するので、加速度の変化と進行方向出力値の変化とをもとに取付け角の絶対値を導出できる。また、相関値を導出ための期間中における加速度の変化と進行方向出力値の変化とを使用するので、取付け角の導出精度を向上できる。
【0037】
また、傾斜角が水平に近い場合であって、車両が進行状態から停止状態に変わる場合において、重力加速度方向出力値の増減に応じて取付け角の符号を導出するので、取付け角の符号を簡易に導出できる。また、ふたつの重力加速度方向出力値の大小関係に応じて取付け角の符号を導出するので、取付け角の符号を簡易に導出できる。また、ふたつの重力加速度方向出力値の相対的な関係を使用するので、取付け角の符号の導出精度を向上できる。
【0038】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0039】
本発明の実施例において、絶対値計算部34は、一度の計算で取付け角の絶対値を導出している。しかしながらこれに限らず例えば、絶対値計算部34は、第2期間を変えながら、加速度センサ12の取付け角の絶対値を仮の絶対値として複数導出するとともに、複数の仮の絶対値を加重平均することによって、加速度センサ12の取付け角の絶対値を導出してもよい。その際、絶対値計算部34は、相関部24において導出した相関値が大きくなるほど、加重平均の際の重みを大きくする。本変形例によれば、加重平均を実行するので、取付け角の絶対値の導出精度を向上できる。
【符号の説明】
【0040】
10 車両、 12 加速度センサ、 14 距離センサ、 20 入力部、 22 取得部、 24 相関部、 26 導出部、 28 制御部、 30 速度計算部、 32 加速度計算部、 34 絶対値計算部、 36 符号計算部、 100 導出装置。
図1
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図9
図10