【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0060】
下記の実施例、比較例および参考例における各測定値は、それぞれ3点測定しその平均値である。
【0061】
参考例1 試料として使用するバイオマス
バイオマスである稲わらおよび麦わらを、カッター連続式ミル(IKA製、MF10 basicS1)を用いて、2mm〜3mmの大きさまで粉砕処理した粉砕バイオマスを得た。
【0062】
参考例2 含水率の測定方法
含水率については、赤外線水分計(ケット科学研究所製、FD−720)を使用して、試料を120℃の温度に保持し、蒸発後の安定値と初期値の差分から得られる値を測定した。
【0063】
参考例3 濁度の測定方法
液(ろ過前とろ過後)の濁度については、携帯用濁度計(HACH製2100P)を使用して測定した。
【0064】
参考例4 バイオマス組成の測定方法
NRELが発行しているLAP法(“Determination of Structural Carbohydrates and Lignin in Biomass, Laboratory Analytical Procedure(LAP)”)を参考に、次に示す方法で組成を分析した。
【0065】
試料の適量を分取し、上記の参考例2の方法で含水率を測定した。次に、参考例2の含水率を算定後、得られた乾燥試料を、600℃の温度で強熱し灰分率を求めた。
【0066】
また、試料をステンレス型バットに移し、実験室雰囲気でおおよそ平衡状態になるまで風乾し、これをウィレーミルにより粉砕し、ふるいにより粒径を約200〜500μm」に調整した。本状態調節後の試料を60℃の温度で真空乾燥し、絶乾質量を補正することによって、各成分の絶乾ベースでの含有量を算定した。この分析用試料0.3gを天秤でビーカーにはかりとり、これに濃度72%の硫酸3mLを加え、30℃の温度でときどき攪拌しながら1時間放置した。この反応液を、精製水84mLで耐圧瓶に完全に移した後、120℃の温度で1時間オートクレーブで加熱分解した。加熱分解後、分解液と残渣を、ろ別し、ろ液と残渣の洗液に加えて100mLに定容したものを検液とした。また、加熱分解時、糖の過分解を補正するために単糖を用いた添加回収試験を並行して行った。検液中の単糖(キシロース・アラビノース・マンノース・グルコース・ガラクトース)については、高速液体クロマトグラフ法(GLサイエンス製GL−7400、蛍光検出)により定量を行った。得られた分解液の単糖濃度と試料分解量から、試料中の構成糖量を算定した。
【0067】
単糖の添加回収試験より構成糖量を求めた。加熱分解時の糖過分解補正係数(Sf:サバイバルファクター)を用いて、構成糖量を補正した。
【0068】
参考例5 酵母液サンプルの作成
酵母株(OC2、サッカロマセス・セレビシエ、ワイン酵母)を用いて、酵母液を作成した。培地は、表1の組成の培地をフィルター滅菌(ミリポア、ステリカップ0.22μm)したものを発酵に用いた。
【0069】
OC2株を、試験管で5mLの発酵用培地(前培養培地)で一晩振とう培養した(前培養)。得られた前培養液から酵母を遠心分離により回収し、滅菌水15mLでよく洗浄した。洗浄した酵母を、表1の培地100mLに植菌し、500mL容坂口フラスコで24時間振とう培養した(本培養)。このようにして得られた酵母液を所定量得られるように複数本培養した。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1 希硫酸処理・酵素処理で得られたろ過助剤
上記の参考例1で得られた稲わらの粉砕バイオマスを硫酸の1%水溶液に浸し、150℃の温度で30分間オートクレーブ処理(日東高圧社製オートクレーブを使用。)した。処理後、固液分離を行い、硫酸水溶液(以下、希硫酸処理液とする。)と硫酸処理セルロースに分離した。次に、硫酸処理セルロースと固形分濃度が10質量%となるように、希硫酸処理液と攪拌混合した後、水酸化ナトリウムによってpHを5付近に調整し混合液を得た。この混合液に、セルラーゼとしてアクセルレース デュエット(トリコデルマ・リーセイ由来、ダニスコ・ジャパン社製)を添加し、50℃の温度で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行い、硫酸・酵素処理スラリー液を得た。その後、スクリューデカンタ装置の模擬条件として遠心分離(1500G)を1分間行い、固形分として含水率76.4質量%の非水溶性セルラーゼ処理物(以下、酵素処理助剤とする。)を得た。
【0072】
前記の酵素処理助剤500gを、前記の希硫酸処理液1Lに添加して合計1.5kgとし、攪拌して均一なスラリー液になってから、フィルタプレス処理を行った(薮田産業社製、小型濾過装置MO−4を使用。)。初期のろ過液は濁質性が高いので、ろ過開始から1分間で得られたろ過液は原水槽に戻した。ろ布はT2731Cを使用し、ろ過処理時間は24分であった。フィルタプレス処理前の希硫酸処理液は300NTUであったが、フィルタプレス処理後の液は5NTUであった。処理後の希硫酸処理液100mLを用いて、精密ろ過膜(ミリポア社製“ステリカップHV”0.45μm(登録商標))によるデッドエンドろ過運転を実施した。吸引圧は、80kPaの定圧ろ過運転とした。ろ過時間を、それぞれ表2(処理液の濁度と精密ろ過膜処理を指標とした液性の違い(希硫酸処理液))に示す。
【0073】
比較例1
実施例1の希硫酸処理液(液Aとする。)、希硫酸処理液を何も添加せずにフィルタプレス処理した液(液Bとする。)、さらに実施例1の硫酸処理セルロースを希硫酸処理液に混合して実施例1と同様のフィルタプレス処理した液(液Cとする。)、および希硫酸処理液をデラバル型遠心分離機(GEAウエストファリア製)により8000Gで遠心処理した液(液Dとする。)を、それぞれ100mL準備した。それぞれの濁度とさらに実施例1と同様の精密ろ過膜処理した結果を、まとめて表2に示す。実施例1記載の判明事項のほかに、比較例1の液Dとの比較から、濁度が12NTUと低い場合においても精密ろ過膜のろ過速度が遅いことから、濁度と精密ろ過膜のろ過速度は必ずしも一致しないことも判明した。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例2 本発明で得られたろ過助剤(フィルタプレスで得た場合)
実施例1で得られた硫酸・酵素処理スラリー液を、フィルタプレス処理(圧搾圧力:0.5MPa)をし、固形分として含水率52.1%の非水溶性セルラーゼ処理物を得た。
【0076】
得られた酵素処理助剤は流動性が無く固化しているため、手で砕いたこの酵素処理助剤250gを希硫酸処理液1.8Lに添加して、合計約2kgとして攪拌して均一なスラリー液にした後、再びフィルタプレス処理を行った。ろ過処理時間は30分であった。この処理液の濁度とさらに実施例1と同様の精密ろ過膜処理した結果を、表3(フィルタプレスによって酵素処理助剤を得た場合)に示す。
【0077】
実施例1との比較から、酵素処理を行う前の固液分離方法は特に限定されずろ過法でも遠心分離法のいずれでもよいことが判明した。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例3 水熱処理・酵素処理で得られたろ過助剤
稲の籾殻を水に浸し、撹拌しながら180℃の温度で20分間オートクレーブ処理(日東高圧社製)した。その際の圧力は、7MPaであった。オートクレーブ処理後は、溶液成分(以下、水熱処理液とする。)と固形分(以下、水熱処理バイオマスとする。)成分に遠心分離機(1500G)を用いて固液分離した。この水熱処理バイオマス成分に固形分10質量%になるようにして水を添加し、pHが5になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加してスラリー液を調整し、アクセルレース デュエットをスラリー液総量の40分の1添加した。次いでこれを、50℃の温度に保温して攪拌しながら、24時間反応させた。反応後のスラリー液を1500Gの圧力で1分間遠心分離し非水溶性セルラーゼ処理物を得た。得られた酵素処理助剤の含水率は、78.1%であった。
【0080】
前記の酵素処理助剤500gを水熱処理液1Lに添加して合計1.5kgとし、これを攪拌して均一なスラリー液になってから、実施例1と同様のフィルタプレス処理を行った。フィルタプレス処理前の水熱処理液は1000NTU以上であったが、フィルタプレス処理後の液は5NTUであった。処理後の水熱処理液100mLを用いて、実施例1と同様の精密ろ過膜によるデッドエンドろ過処理を行った。結果を、表4(精密ろ過膜処理したときの結果(水熱処理液))に示す。比較例2との比較結果から、実施例1と同様、稲の籾殻、さらに熱化学処理が水熱処理においても水熱処理を前処理として行った後、酵素処理したろ過助剤として用いたことによって、他の場合と比べて処理液の濁度が低下し、濁質成分の除去効果が高いことが判明した。さらに、精密ろ過膜でのろ過速度も大幅に向上することが判明した。
【0081】
比較例2
実施例3の水熱処理液(液Eとする。)、水熱処理液をそのままフィルタプレス処理した液(液Fとする。)、および水熱処理バイオマスを添加しフィルタプレス処理した液(液Gとする。)について、実施例3と同様の精密ろ過膜によるデッドエンド濾過試験処理を行った。結果を、表4に示す。なお、水熱処理液をそのままフィルタプレス処理を行ったところ、5分後にろ布が目詰まりして処理液がほとんど得られず、120mLしか得られなかった。得られたうち100mLを、液Fとして同様の精密ろ過膜処理に供した。
【0082】
【表4】
【0083】
実施例4 蒸煮爆砕処理で得られたろ過助剤
水熱爆砕装置(日本電熱社製、30Lサイズ)に、稲わらの粉砕バイオマスを投入して蒸気を導入し、2.5MPaを2.5分間維持して爆砕処理を行った。運転時には、排液(空打ち排液)が発生した。この爆砕したバイオマスの含水率は、84.4%であった。爆砕バイオマスを固形分10質量%になるようにして水を添加し、pHが5になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加しスラリー液を調整し、アクセルレース デュエットをスラリー液総量の40分の1添加した。50℃の温度に保温して攪拌しながら、24時間反応させた。反応後のスラリー液をフィルタプレス処理し、含水率50.9%の非水溶性セルラーゼ処理物を得た。
【0084】
得られた酵素処理助剤は流動性が無く固化しているため、手で砕いた酵素処理助剤100gを爆砕排液1.8Lに添加して、合計約2kgとして攪拌して均一なスラリー液にした後、再び実施例1と同様のフィルタプレス処理を行った。ろ過処理時間は、20分であった。フィルタプレス処理前の爆砕排液は1000NTU以上であったが、フィルタプレス処理後の液は2NTUであった。前記処理後の爆砕排液100mLを用いて、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。結果を、表5(精密ろ過膜処理したときの結果(爆砕排水))に示す。比較例3との比較結果から、実施例1と同様、爆砕処理においても爆砕処理を物理化学処理として行った後、酵素処理したろ過助剤として用いたことによって、他の場合と比べて処理液の濁度が低下し、濁質成分の除去効果が高いことが判明した。さらに精密ろ過膜でのろ過速度も大幅に向上することが判明した。
【0085】
比較例3
爆砕排水(液Hとする。)、爆砕排水を助剤を添加せずにフィルタプレス処理を行った液(液Iとする。)、および爆砕バイオマスをそのまま添加後、フィルタプレス処理した液(液Jとする。)について、実施例4と同様にそれぞれ濁度および精密ろ過処理試験を行った結果を表5に示す。爆砕バイオマスを添加後、フィルタプレス処理した液
Jについては、フィルタプレスが困難で処理開始3分程度でろ布が目詰まりして200mLしか得られなかった。うち、100mLを精密ろ過処理に供した。
【0086】
【表5】
【0087】
実施例5 アルカリ処理・酵素処理で得られたろ過助剤
麦わらの粉砕バイオマスを水酸化ナトリウム5%水溶液に浸し、150℃の温度で10分間オートクレーブ処理(日東高圧社製のオートクレーブを使用。)した。処理後、固液分離を行い、水酸化ナトリウム処理後の排水(以下、アルカリ処理液とする。)とアルカリ処理セルロースに分離した。次に、アルカリ処理セルロースと固形分濃度が10質量%となるようにアルカリ処理液と攪拌混合した後、希硫酸によって、pHを5付近に調整し混合液を得た。この混合液に、セルラーゼとしてアクセルレース デュエットを添加し、50℃の温度で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行い、酵素処理スラリー液を得た。その後、スクリューデカンタ装置の模擬条件として遠心分離(1500G)を1分間行い、固形分として含水率77.5%の非水溶性セルラーゼ処理物を得た。
【0088】
前記の酵素処理助剤500gをアルカリ処理液1Lに添加して合計1.5kgとして、攪拌して均一なスラリー液になってから、実施例1と同様のフィルタプレス処理を行った。フィルタプレス処理前の水熱処理液は630NTUであったが、フィルタプレス処理後の液は6NTUであった。処理後の水熱処理液100mLを用いて、実施例1と同様の精密ろ過膜(によるデッドエンドろ過処理を行った。結果を、表6(処理液の濁度と精密ろ過膜処理を指標とした液性の違い(アルカリ処理液))に示す。
【0089】
比較例4
アルカリ処理液(液Kとする。)、アルカリ排水を助剤を添加せずに、フィルタプレス処理を行った液(液Lとする。)およびアルカリ処理セルロースをそのまま添加後、フィルタプレス処理した液(液Mとする。)について、実施例5と同様にそれぞれ濁度および精密ろ過処理試験を行った結果を、表6に示す。実施例5との比較結果から、実施例1と同様、原料が麦わら、さらにアルカリ処理を物理化学処理として行った後、酵素処理したろ過助剤として用いたことによって、他の場合と比べて処理液の濁度が低下し、濁質成分の除去効果が高いことが判明した。さらに精密ろ過膜でのろ過速度も大幅に向上することが判明した。
【0090】
【表6】
【0091】
実施例6 アンモニア水処理・酵素処理で得られたろ過助剤
稲わらの粉砕バイオマス300gを1.5規定のアンモニア水溶液2.7kgに浸し、180℃の温度で20分間オートクレーブ処理(日東高圧社製のオートクレーブを使用。)した。処理後、固液分離を行い、アンモニア水処理後の排水(以下、アンモニア処理液とする。)とアンモニア処理セルロースに分離した。次に、アンモニア処理セルロースと固形分濃度が10質量%となるようにアンモニア処理液と攪拌混合した後、希硫酸によって、pHを5付近に調整し混合液を得た。この混合液に、セルラーゼとしてアクセルレース デュエットを添加し、50℃の温度で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行い、酵素処理スラリー液を得た。その後、スクリューデカンタ装置の模擬条件として遠心分離(1500G)を1分間行い、固形分として含水率76.4%の非水溶性セルラーゼ処理物を得た。
【0092】
前記の酵素処理助剤500gを水熱処理液1Lに添加して合計1.5kgとして、攪拌して均一なスラリー液になってから、実施例1と同様のフィルタプレス処理を行った。フィルタプレス処理前の水熱処理液は360NTUであったが、フィルタプレス処理後の液は3NTUであった。処理後の水熱処理液100mLを用いて、実施例1と同様の精密ろ過膜によるデッドエンドろ過処理を行った。結果を、表7(処理液の濁度と精密ろ過膜処理を指標とした液性の違い(アンモニア処理液))に示す。
【0093】
比較例5
アンモニア処理液(液Nとする。)、アンモニア処理液を助剤を添加せずにフィルタプレス処理を行った液(液Oとする。)、およびアンモニア処理セルロースをそのまま添加後、フィルタプレス処理した液(液Pとする。)について、実施例6と同様にそれぞれ濁度および精密ろ過処理試験を行った結果を、表7に示す。
【0094】
実施例6との比較結果から実施例1と同様、アンモニア処理を物理化学処理として行った後、酵素処理したろ過助剤として用いたことによって、他の場合と比べて処理液の濁度が低下し、濁質成分の除去効果が高いことが判明した。さらに、精密ろ過膜でのろ過速度も大幅に向上することが判明した。
【0095】
【表7】
【0096】
比較例6 珪藻土系ろ過助剤を用いた場合
珪藻土2種(昭和化学工業社製、“ラジオライト”(登録商標)#300)を使用して、実施例1の希硫酸処理液と、実施例3の水熱処理液と、参考例5の酵母液の濁質成分を除去した液を用意した。まず、各液1Lにラジオライト“#300”を50g添加した後、フィルタプレス処理を行った。さらにこれらの液について、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表8(各種濁質液に対する珪藻土ろ過助剤の効果)に示す。
【0097】
実施例1および実施例3などとの比較から、従来のろ過助剤である珪藻土系ろ過助剤よりも本発明で得たろ過助剤の方が、濁質除去効果および処理液の精密ろ過膜へのろ過速度効果の観点で優れることが判明した。
【0098】
【表8】
【0099】
(比較例7)市販セルロース系濾過助剤を用いた濾過(希硫酸処理液・水熱C5液・酵母液)
市販セルロース系ろ過助剤であるKCフロック(日本製紙社製)と、“アルボセル”(登録商標)(レッテンマイヤー社製)を、希硫酸処理液、水熱処理液、および酵母液に、それぞれ乾燥固形分濃度が5%となるように添加して、フィルタプレスによるろ過処理を行った。さらにこれらの液について、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表9(各種濁質液に対するKCフロックの効果)、および表10(各種濁質液に対するアルボセルの効果)に示す。
【0100】
【表9】
【0101】
【表10】
【0102】
実施例7 市販ろ過助剤を酵素処理して得た濾過助剤
KCフロック(日本製紙社製)、“アルボセル”(登録商標)(レッテンマイヤー社製)を用いて、アクセルレース デュエットで実施例1と同様の酵素処理を行い、それぞれの酵素処理物を、希硫酸処理液、水熱処理液、酵母液にそれぞれ乾燥固形分濃度が5%となるように添加して、フィルタプレスによるろ過処理を行った。さらにこれらの液について、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表11(各種濁質液に対するKCフロック・酵素処理後の効果)、および表12(各種濁質液に対するアルボセルの効果)に示す。このように、比較例7と比較して市販のセルロースろ過助剤においてもセルラーゼによる酵素処理を行うことによってろ剤の濁質除去性能が向上していることが示唆される。
【0103】
【表11】
【0104】
【表12】
【0105】
比較例8 微粉砕バイオマスを用いた場合(微粉砕のみ)
遊星ボールミル「PLANET H」(GOKIN PLANETARING社製)を用いて、微粉砕処理を行った。稲わらの粉砕バイオマス30gに対してと同時に、容器にジルコニアビーズ(東レ社製“トレセラム”(登録商標)、粒径Φ0.05mmΦ)30g入れて、20時間微粉砕処理を行った。これを30μmのふるいにかけてジルコニアビーズを除去して、微粉砕セルロースを得た。この微粉砕バイオマスを、ろ過助剤として使用した。使用前の微粉砕セルロースを、SEM(日立ハイテクノロジー社製S−4800)で観察したところ、
図1のようにほぼ全ての微粉砕セルロースは20μm前後の流刑を有している非繊維状の形状であった。
【0106】
フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表13に示す。比較例7(表9、表10)と比べると、微粉砕セルロースが市販のセルロース系ろ過助剤に比べて、ろ過性能が改善することが分かる。これは特開平9−173728号公報に記載されているとおりである。
【0107】
【表13】
【0108】
実施例8 本発明で得られたろ過助剤を得た場合(微粉砕+酵素処理・水熱処理液、酵母液)
比較例8で得られた微粉砕バイオマスをアクセルレース デュエットで、実施例1と同様の酵素処理を行い、それぞれの酵素処理物を、希硫酸処理液、水熱処理液、および酵母液に、それぞれ乾燥固形分濃度が5%となるように添加して、フィルタプレスによるろ過処理を行った。さらに、これらの液について、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表14(各種濁質液に対する微粉砕バイオマス・酵素処理後の効果)に示す。このように、比較例8(表13)と比較して、市販のセルロースろ過助剤よりもろ過性能が向上した微粉砕セルロースにおいても、セルラーゼによる酵素処理を行うことによって、ろ剤の濁質除去性能が飛躍的に向上していることが示唆される。
【0109】
【表14】
【0110】
実施例9 ベルトフィルタ(プレコート・ボディフィード)を使用した場合(フィルタプレスよりも劣る)
真空水平ベルトフィルタ(アタカ大機社製 ADPEC)を用いて、真空ろ過により清澄液を得ることを試みた。ろ材としては、希硫酸処理液に対して硫酸処理セルロースの酵素処理物、水熱処理液に対して水熱処理バイオマスの酵素処理物、酵母液に対して、爆砕バイオマスの酵素処理物を固形分濃度5質量%となるように添加して、ベルトフィルタによるろ過処理を行った。結果を、表15(各種濁質液に対する各ろ過助剤添加時の効果)に示す。表15のとおり、加圧ろ過法であるフィルタプレスに比べて、ろ過速度の面で真空ろ過であるベルトフィルタは劣るが、得られるろ液の濁度や精密ろ過膜の処理速度の面では効果が現れることが判明した。
【0111】
比較例9
同様の真空水平ベルトフィルタを用いた実験を、ろ材としては希硫酸処理液に対して硫酸処理セルロース、水熱処理液に対して水熱処理バイオマス、酵母液に対して爆砕バイオマスを固形分濃度5%となるように添加して、ベルトフィルタによるろ過処理を行った。結果を、表15に示す。実施例9との比較から、バイオマスを酵素処理しないバイオマスをろ過助剤として使用してもろ過助剤としての効果は低いことが判明した。
【0112】
【表15】
【0113】
比較例10 ヘミセルラーゼを反応させた場合
実施例1で得られた硫酸処理セルロースに水を加え、pHを6に調整した後、ヘミセルラーゼとしてオプチマーゼCX(ダニスコ・ジャパン社製)を60℃の温度で2時間反応させた後、遠心分離機で固形分を得た。上記で得られたヘミセルラーゼ処理物をろ過助剤として、希硫酸水溶液に添加し、攪拌して均一なスラリー液にした後、フィルタプレス処理を行った。ろ過処理時間は90分であった。この処理液の濁度とさらに実施例1と同様の精密ろ過膜処理した結果を、表16(ヘミセルラーゼ処理行った場合)に示す。
【0114】
上記の結果から、ヘミセルラーゼを反応させた場合、分解される多くがヘミセルロースのみでセルロース含有バイオマスの多くを構成するセルロースを分解するセルラーゼによって処理しなければ、本効果が低いことが判明した。すなわち、本発明のろ過助剤を製造するためには、ヘミセルラーゼが含有されていても構わないが、セルラーゼによる処理は必須であることが判明した。特開2001−55679号公報には、リグノセルロースの漂白方法として記載されているが、この方法では本発明のろ過助剤のろ過性能は出ないことが分かった。
【0115】
【表16】
【0116】
参考例6 非水溶性セルラーゼ処理物であることの特定方法
前記の非水溶性セルラーゼ処理物(酵素処理助剤)であるか否かの特定について、前記の非水溶性セルラーゼ処理物(酵素処理助剤)の付着した酵素の分析方法を、次に示す。
【0117】
すなわち、非水溶性セルラーゼ処理物を界面活性剤であるSDS(ドデシル硫酸ナトリウム水溶液)に懸濁させて、遠心分離8000Gの圧力で5分間非水溶性セルラーゼ処理物を沈殿させて上清を回収する。
【0118】
得られた上清に関して、同量のサンプル処理バッファー(ATTO EzApply)を混合し,100℃の温度で10分間処理して処理サンプルを得た。得られた処理サンプルを、15質量%電気泳動用ゲル(ATTO e−PAGEL)へ5μLアプライし電気泳動を行った(40mA 30min)。ゲルを取り出し、クマシーブリリアントブルーで染色後(Bio−Rad Bio−safe CBB)、蒸留水で脱色を行った。
図2に、市販セルラーゼであるアクセルレースデュエットの酵素液そのもののSDS−PAGEの結果を示す。また、
図3に爆砕処理バイオマスの酵素(アクセルレースデュエット使用)処理後の非水溶性セルラーゼ処理物のSDS処理した、前記の上清のSDS−PAGEの結果を示す。
【0119】
このような手法で、セルラーゼに特徴的な特定分子量の群が見つけられることによってろ過助剤に酵素処理したか否かを判別することが可能になる。
図2と
図3において、
図2の右と
図3の左に該当するのが、分子量が判明している着色タンパクを多数含んだ秤品液を電気泳動したものである。秤品液の分子量75kDaから100kDaに該当位置するピークがセロビオハイドロダーゼに該当する。従って、吸着した酵素のうち、セロビオハイドロダーゼの吸着量が多いことが、
図2と
図3の比較から言える。すなわち、本発明のろ過助剤を特定するには、本発明のろ過助剤に前記の処理を行ってセロビオハイドロダーゼが付着しているかを行えば、本発明のろ過助剤に該当するか否かが特定できる。
【0120】
参考例10 固形分添加率
水熱処理液に対して水熱処理バイオマスを酵素処理した非水溶性セルラーゼ処理物、および、酵母液に対してアンモニア処理セルロースを酵素処理した非水溶性セルラーゼ処理物を用いて、どの程度の固形分濃度で投入するのが好ましいか検討を行った。ここで固形分濃度とは、それぞれのろ過助剤の含水率を測定し、乾燥重量を測定し、対するろ過助剤と処理対象液との総量で割った値とする。それぞれ添加後、フィルタプレス処理して得られた濁度を、表17(各処理時の濁度[単位:NTU])に示す。固形分濃度が25%のときは、フィルタプレス処理をするためのスラリー液の送液も難しい状態でろ液を得ることができなかった。
【0121】
【表17】
【0122】
参考例11 酵素処理前後のバイオマス組成分析
参考例4に記載の方法で、実施例3(水熱処理)と実施例6(アンモニア処理)の酵素処理前後の組成比について分析した結果を、表18(水熱処理バイオマスの酵素処理前後組成)と表19(アンモニア水処理バイオマスの酵素処理前後組成)にそれぞれ示す。酵素処理物は、酵素処理前に比べて分解残渣率が1.5倍以上増加していることが分かる。これは、セルロース成分が主に分解された分、相対的に分解残渣率が増加していると推察している。
【0123】
【表18】
【0124】
【表19】
【0125】
参考例12 粒径の変化
実施例3(水熱処理)と実施例6(アンモニア処理)の酵素処理前後の状態について、実施例3の顕微鏡写真および実施例6の精密ろ過膜上で撮影したSEM写真を、
図4および
図5にそれぞれ示す。
図4および
図5から、酵素処理によって大きさが小さくなっていることが分かる。得られた処理物の大きさは、
図4から200μmのものが多数存在している。そのため、比較例8や特開平9−173728号公報のように、粒径を小さくするだけでは説明できない濁質除去のメカニズムが、本発明のろ過助剤には働いていると推察される。