特許第6020171号(P6020171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020171
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ろ過助剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/24 20060101AFI20161020BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20161020BHJP
   B01D 37/02 20060101ALI20161020BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20161020BHJP
   C07G 99/00 20090101ALN20161020BHJP
【FI】
   B01J20/24 CZAB
   B01J20/30
   B01D37/02 G
   B09B3/00 Z
   B09B3/00 304Z
   !C07G99/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-535498(P2012-535498)
(86)(22)【出願日】2012年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2012069109
(87)【国際公開番号】WO2013018678
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-167541(P2011-167541)
(32)【優先日】2011年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088546
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英次郎
(72)【発明者】
【氏名】南野 淳
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏征
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝成
(72)【発明者】
【氏名】岸本 淳平
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−088365(JP,A)
【文献】 特開2008−150719(JP,A)
【文献】 特開平05−049924(JP,A)
【文献】 特開平11−323752(JP,A)
【文献】 特開昭55−075715(JP,A)
【文献】 特開昭61−038611(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0014260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
B01D 25/12
B01D 37/02
B09B 3/00
C07G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース含有バイオマスを粉砕処理および/または熱化学処理して、前処理バイオマスを得る工程(A)、前記工程(A)で得られた前処理バイオマスをセルラーゼで処理してセルラーゼ処理産物を得る工程(B)、および前記工程(B)のセルラーゼ処理産物の固形分を得る工程(C)を含む、ろ過助剤の製造方法であって、
前記セルロース含有バイオマスが草本系バイオマスであり、
前記セルラーゼが、セロビオハイドロダーゼを含むセルラーゼである、ろ過助剤の製造方法
【請求項2】
前記固形分のNRELのLAP法を用いた分解残渣率が、セルラーゼ処理前に比べて1.5倍以上である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
熱化学処理が、酸処理、水熱処理、水熱爆砕処理、アルカリ処理及びアンモニア処理から成る群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
高濁質液を、請求項1からのいずれか1項に記載のろ過助剤の製造方法で得られるろ過助剤と共にろ過処理することを含む、ろ過方法。
【請求項5】
ろ過処理方法がフィルタプレスである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
ろ過助剤の乾燥物添加量が、ろ過処理される液に対して0.5質量%以上25質量%未満である、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系ろ過助剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
濁質性の高い液体から清澄な液を得る工程は、食品工業や排水処理において重要な工程のひとつである。このようにした濁質性の高い液体からその液体に含まれる濁質物質を除去する方法としては、遠心法が知られている。
【0003】
この遠心法で用いられている遠心分離機としては、スクリューデカンタ型の遠心分離機が知られている。しかしながら、この遠心分離機は、処理速度とスケールアップには定評があるが、2000〜3000G程度の遠心力しかかからず、濁質成分を効率的に除去するには難があった。また別に、8000G程度の遠心力の高速連続型遠心分離機としてデラバル型の遠心分離機があるが、この遠心分離機の場合、高い固形分濃度では処理できず、また微粒子成分を完全に除去することができず、一部残存するという課題があった。また他に、シャープレス型の圧力20000G相当の超高速遠心分離機があるが、この遠心分離機の場合、排出がバッチ式であり、強度上の問題から大型化が難しいという課題がある。
【0004】
このようにした濁質性の高い液体の清澄度を上げる手法としては、遠心法のほかにろ過法が有効であり、食品工業や排水処理などでは、目的の濁質性の高い液体を、ろ過助剤を用いてプレコートフィルタなどの吸引濾過装置や、フィルタプレスなどの加圧濾過装置でろ過する手法があり、珪藻土やパーライト、特に珪藻土をろ過助剤として使用する方法が知られている(非特許文献1参照。)。しかしながら、珪藻土のろ過助剤では、使用済み後の廃棄方法や珪藻土そのものの安全性の問題が提起されている(非特許文献2参照。)。
【0005】
これらの課題を解決するため、セルロース等の有機物を用いたろ過助剤が開発されてきた。しかしながら、セルロース由来のろ過助剤は、濁質性の高い液体の処理に対して珪藻土よりもろ過液の清澄度が上がらず、ろ過速度も遅いという課題があった。
【0006】
このような課題に対し、セルロース粉末の粒度分布等を制御してろ過助剤として使用する方法(特許文献1参照。)や、ろ過助剤中のセルロースの含有率を制御する方法(特許文献2参照。)が提案されている。しかしながら、これらの方法では、前記の濁質性の高い液体のろ過には十分なろ過液の清澄性と、ろ過速度を得る効果が限定的であり、やはり珪藻土並みの性能が得られるには至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−173728号公報
【特許文献2】特開昭58−40145号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】デレック・B.パ−チェス、白戸紋平『固液分離技術』技報堂出版(1979)
【非特許文献2】村瀬 敏朗 / 赤塚 栄吉郎 / 柴田 正人『固液分離』光琳(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、上述した課題、すなわち濁質性の高い液体から清澄な液を得るという課題において、従来よりも濁質除去能力が高いセルロース系ろ過助剤とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、難ろ過性液体をろ過処理で効率的にろ過するためのろ過助剤として、セルロース含有バイオマスをセルラーゼ処理して得られるろ過助剤が、前記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)の構成を有する。
【0012】
(1) セルロース含有バイオマスを粉砕処理および/または熱化学処理して、前処理バイオマスを得る工程(A)、前記工程(A)で得られた前処理バイオマスをセルラーゼで処理してセルラーゼ処理産物を得る工程(B)、および前記工程(B)のセルラーゼ処理産物の固形分を得る工程(C)を含む、ろ過助剤の製造方法であって、前記セルロース含有バイオマスが草本系バイオマスであり、前記セルラーゼが、セロビオハイドロダーゼを含むセルラーゼである、ろ過助剤の製造方法
(2) 非水溶性セルラーゼ処理物のNRELのLAP法を用いた分解残渣率が、セルラーゼ処理前に比べて1.5倍以上である、(1)に記載の方法。
(3) 熱化学処理が、アルカリ処理、アンモニア処理、酸処理、水熱処理および水熱爆砕処理から成る群より選ばれる少なくとも1種である、(1)または(2)のいずれか1項に記載の方法。
(4) 高濁質液を、(1)から(3)のいずれか1項に記載のろ過助剤の製造方法で得られるろ過助剤と共にろ過処理することを含む、ろ過方法。
(5) ろ過処理方法がフィルタプレスである、(4)に記載の方法。
(6) ろ過助剤の乾燥物添加量が、ろ過処理される液に対して0.5質量%以上25質量%未満である、(4)または(5)に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも濁質除去能力が高いセルロース系ろ過助剤が得られ、この濁質除去能力が高いろ過助剤により、濁質性の高い液体から清澄な液を得ることができる。具体的に、本発明のろ過助剤によって、難ろ過性液体から清澄なろ過液を効率的に得ることが可能になり、バイオマス由来の廃液処理や微生物由来の処理というこれまでろ過に難を要していたろ過処理を、有機物であるセルロース由来のろ過助剤で実現することができ、低環境負荷でかつ低コストの液処理が可能になる。
【0014】
具体的に、発明者らは、濁質性の高い液体から清澄な液を得るという課題において、特定の酵素処理を行った本発明のセルロース系ろ過助剤が、従来のセルロース系ろ過助剤に比べて、濁質除去効果が極めて高いことを発見した。また、本発明のろ過助剤は、従来の珪藻土型ろ過助剤よりもさらに濁質除去効果が高かった。さらに驚くべきことに、本発明のろ過助剤は、従来のセルロース系ろ過助剤を用いた場合よりもろ過する廃液の処理速度も大幅に改善することが見出された。また、本発明のろ過助剤を使用したろ過液の清澄性の度合いを精密ろ過膜のろ過性として評価したところ、本発明に該当したろ過助剤を使用した液に限り、ろ過性が飛躍的に向上させることができることも判明した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、微粉砕処理を行ったセルロース含有バイオマスのSEM写真である。
図2図2は、セルラーゼ(アクセルレースデュエット)のSDS−PAGE結果を示す写真である。
図3図3は、非水溶性セルラーゼ処理物の吸着酵素のSDS−PAGE結果を示す写真である。
図4図4は、水熱処理の酵素処理前後の状態を示す光学顕微鏡写真である。
図5図5は、アンモニア水処理の酵素処理前後の状態を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0017】
本発明のろ過助剤の製造方法の第1工程である工程(A)は、セルロース含有バイオマスを粉砕処理および/または熱化学処理して、前処理バイオマスを得る工程である。
【0018】
ここで用いられるセルロース含有バイオマスとは、セルロースを5質量%以上含む生物由来の資源を言い、バガス(サトウキビ搾りかす)、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー(トウモロコシの茎葉)、イモ類残渣、稲わら、籾殻、および麦わらなどの草本系バイオマスである。上記のようなセルロースの含量は、水分を除いた状態で好ましくは10%以上100%以下であり、より好ましくは20%以上100%以下である。
【0019】
これらのセルロース含有バイオマスは、芳香族高分子化合物であるリグニンおよびセルロース・ヘミセルロースを含有していることから、リグノセルロースとも呼ばれる。セルロース含有バイオマスは、主にセルロース成分、ヘミセルロース成分、リグニン成分、および無機成分に大別され、それぞれの成分比率は、バイオマス種や生育条件により大きく異なる。
【0020】
本発明のろ過助剤の製造方法における工程(A)では、セルロース含有バイオマスに、粉砕処理および/または熱化学処理を施す。粉砕処理と熱化学処理の両方を行う場合、粉砕処理と熱化学処理の処理順序は特に限定されない。同時に行っても良く、粉砕処理と熱化学処理を繰り返し行っても良い。
【0021】
本発明において粉砕処理とは、カッターミル、ハンマーミルおよびグラインダーなどを用いて、機械的に繊維を切断する微粉砕処理などが例示される。粉砕処理する理由は2点あり、1点目は、反応させる際のかさ密度を低下させ、容器内でなるだけ多くのセルロース含有バイオマスを反応させる効果があることである。2点目は、粉砕処理することによって熱化学処理あるいは酵素処理が反応しやすくなることである。通常、粉砕処理は、ハンマーミルやカッターミルを用いることが多く、ここでの平均粒子径は分級するメッシュサイズに影響するが約0.1mm以上10mm以下である。また、微粉砕処理はボールミル処理などが例示でき、ジルコニアなどのセラミックスビース間で衝突されることで粉砕処理よりも微粉砕化された粉体をえることができ、平均粒子径はボールミル時間に大きく影響を受けるが、約10ミクロン以上100ミクロン以下である。
【0022】
また、本発明において熱化学処理とは、熱的処理および/または化学的処理をセルロース含有バイオマスに施すものである。より具体的な前処理としては、高温高圧の希硫酸や亜硫酸塩等で処理する酸処理、水酸化カルシウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ性水溶液で処理するアルカリ処理、液体アンモニアまたはアンモニアガスまたはアンモニア水溶液で処理するアンモニア処理、加圧熱水で処理する水熱処理、および水蒸気によって短時間蒸煮し、瞬時に圧力を開放して体積膨張により粉砕する蒸煮爆砕処理などが挙げられる。
【0023】
熱化学処理のうち、酸処理は、硫酸や亜硫酸塩などの酸性水溶液とセルロース含有バイオマスを、高温高圧の条件下で処理して前処理物を得る処理方法である。酸処理は、一般に、リグニンを溶解させ、さらにまず結晶性の低いヘミセルロース成分から加水分解が起き、次いで結晶性の高いセルロース成分が分解されるという特徴を有する。また、2段階以上の工程を設定することにより、それぞれの溶出成分を目的に応じて分けることもできる。
【0024】
酸処理において用いられる酸は、加水分解を起こすもので、例えば、クエン酸、酢酸、硝酸およびリン酸などがあるが、経済性の観点から硫酸が望ましい。酸の濃度は、0.1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。反応温度は、好ましくは100〜300℃の温度範囲で設定することができる。また、反応時間は、好ましくは1秒〜60分の範囲で設定することができる。処理回数は、1回以上行えばよい。
この熱化学処理で得られる溶出成分側の液は、リグニンの他にヘミセルロース由来のキシロース成分を多く含み、キシロースまたはキシロースから製造されるキシリトールなどの製造に利用できる可能性がある。しかしながら、リグニンもヘミセルロース同様に溶出されてしまうため、ろ過処理を減る工程においてリグニン成分が目詰まりを起こしやすい傾向にある。また、遠心分離を試みても、リグニンは芳香族系の有機ポリマーであることから比重が軽く、微粒子化したものまで効率的に除去することは実質不可能である。上記のことからこのような微粒子成分も高効率で除去するために、ろ過法を安定的にろ過する技術が求められている。
【0025】
熱化学処理のうち、水熱処理は、好適には100〜400℃の温度の加圧熱水で1秒〜60分処理する方法である。通常、処理後の25℃の常温で水に不溶であるセルロース含有バイオマスが、セルロース含有バイオマスと水の合計総重量に対して、好適には0.1〜50質量%の濃度になるように行われる。圧力は、処理温度に依存されるが、好ましくは0.01〜10MPaである。水熱処理では、加圧熱水の温度により熱水への溶出成分が異なる。一般に、加圧熱水の温度を上昇させていくと、セルロース含有バイオマスからは、最初にタンニンとリグニンの第1グループが流出し、次に140〜150℃以上の温度でヘミセルロースの第2グループが流出し、更に約230℃の温度を超えるとセルロースの第3グループが流出する。また、流出と同時に、ヘミセルロースおよびセルロースの加水分解反応が起こることもある。
【0026】
処理後の固体物は、水熱処理前のセルロース含有バイオマスよりも上記水熱処理の分解反応によって細かく湿潤した粉体または粘土状態にある。このような比較的高温高圧状態で反応させることにより、セルラーゼによる酵素反応が積極的に起こりやすい状態になり、ろ過助剤の性能向上効果が高くなる。また、これらの液成分は、酸処理での記述同様ヘミセルロース由来のキシロース成分が多く含まれており有用である。しかしながら、これらの液成分は、加圧熱水に溶出したヘミセルロース、リグニン、タンニンおよび一部のセルロース成分を含む水溶物である。したがって、沈殿状態のリグニンおよび繊維成分の他に、リグニン由来の疎水性コロイドや不溶性多糖のコロイドなどがあり、濁質性が強く、織布や精密ろ過膜などのろ過処理を行ってもろ過が極めて難しいという特徴がある。
【0027】
熱化学処理のうち、水熱爆砕処理は、セルロース含有バイオマスに蒸気を吹き込み高温にして、約1MPaから4MPaの範囲で約30秒以上10分以下蒸気にさらし、一気に大気に開放して細かく破砕する方法である。この水熱爆砕処理により、バイオマスの結晶状態が破壊されると同時にリグニンが熱により分解されるため、酵素反応が起こりやすく、所望の非水溶性セルラーゼ処理物を得ることができる。このようにして得られた処理物と同時に蒸気由来の溶液成分や爆砕時に壁面に付着したリグニン成分を流すため空運転したときに発生する排液などが発生し、排液の粘性が高く付着物も多いため排液処理が困難である。
【0028】
熱化学処理のうち、アルカリ処理は、アルカリ水溶液、通常は水酸化物塩(但し、水酸化アンモニウムを除く)の水溶液で、セルロース含有バイオマスを反応させる処理方法ある。アルカリ処理により、主にセルロース・ヘミセルロースのセルラーゼによる反応を阻害するリグニンを除去することができる。水酸化物塩としては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムが好ましく用いられる。
【0029】
アルカリ水溶液の濃度は、0.1〜60質量%の範囲が好ましく、これをセルロース含有バイオマスに添加し、通常100〜200℃の温度、好ましくは110℃〜180℃の温度範囲で処理する。処理回数は、1回または複数回行ってもよい。アルカリ処理を2回以上行う場合は、各回の処理を異なる条件で実施してもよい。アルカリ処理によって得られるセルロース含有バイオマスは、アルカリにより極めて選択的にリグニンが除去されるため、脱色などの観点からも酸処理と並んで助剤製造として好ましい方法である。また、熱をかけていることによりヘミセルロースも分解が積極的に起こり、セルロース成分のみを多く残すことができるという特徴を有する。
【0030】
一方、液成分はリグニンを多く含むため、常温に戻るとリグニン由来の沈殿成分とコロイド上のリグニン成分が浮遊し濁質性が強い液が発生する。これはいわゆる黒液と呼ばれるものであるが、通常は遠心分離、蒸発して燃焼剤として利用されるが粘性が高く濁質もたかいため、ろ過工程を経て清澄性を高めるには困難であるという特徴を有する。
【0031】
熱化学処理のうち、アンモニア処理は、アンモニア水溶液またはアンモニア(液体または気体)をセルロース由来バイオマスと反応させる処理方法である。例えば、特開2008−161125号公報(純アンモニアを用いた方法)または特開2008−535664号公報(アンモニア水溶液を用いた方法)に記載の方法を用いることができる。
【0032】
アンモニア処理では、アンモニアがセルロース成分と反応することにより、セルロースの結晶性が崩れると共に、リグニンとヘミセルロースの結合状態を切り離す。この反応は、好ましくは40℃以上180℃以下の温度、より好ましくは60℃以上150℃以下の他の熱化学処理と比較して低温で反応を行うことが可能である。したがって、得られる固形分は、他の前処理に比べてヘミセルロース成分の液成分側への溶出が少なく、ヘミセルロースを多く含む特徴を有する。そのため、本発明のろ過助剤を得るための酵素には、よりヘミセルロースを分解しやすい酵素剤を用いることが好ましい傾向にある。一方、液成分は前記のとおり、ろ過を妨げる因子が他の熱化学処理に比べて少ない傾向にはあるが、リグニンの分解反応は熱およびアンモニアにより発生するため、リグニン由来のコロイド状態の濁質成分は存在する。
【0033】
上記のように熱化学処理工程において発生する液成分には、高温高圧をかけるために、セルロース・ヘミセルロースのまわりにマトリックスとして存在するリグニンが分解されコロイド状になる。このリグニンが、例えば、織布や精密ろ過膜などでろ過して液成分を清澄化させるのに際し、清澄性を阻害する不溶成分を除去することができない、またはろ過中に織布や精密ろ過膜などの膜がすぐに目詰まりするという課題がある。
【0034】
続く工程(B)では、工程(A)で得られた前処理バイオマスをセルラーゼで処理してセルラーゼ処理産物を得る。
【0035】
本発明において、セルラーゼとは、セロビオハイドロダーゼを含むセルラーゼであり、セルロース含有バイオマス中のセルロース成分を分解する活性を有する、あるいはセルロース分解を補助する酵素成分のことを指す。その他の具体的な酵素成分としては、例えば、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、バイオマス膨潤酵素、βグルコシダーゼ、キシラナーゼおよびキシロシダーゼなどを例示することができる。例えば、セルロース成分の加水分解は、このような複数の酵素成分の協奏効果あるいは補完効果により効率よく実施することができるため、本発明において好ましく使用される。
【0036】
本発明において、セルラーゼは微生物により産生されるものを好ましく用いることができる。例えば、一種の微生物が産生する複数の酵素成分を含むセルラーゼであってもよく、また複数の微生物から産生される酵素成分の混合物であってもよい。
【0037】
セルラーゼを産生する微生物は、セルラーゼを細胞内または細胞外に産生する微生物であって、好ましくは細胞外にセルラーゼを産生する微生物である。細胞外に産生する微生物の方が、セルラーゼ回収が容易だからである。
【0038】
セルラーゼを産生する微生物は、上記の酵素成分を産生するものである。特に、トリコデルマ属とアクレモニウム属に分類される糸状菌は、細胞外に、多種のセルラーゼを大量に分泌するので、セルラーゼを産生する微生物として特に好ましく用いることができる。
【0039】
本発明で使用するセルラーゼは、好ましくはトリコデルマ属菌に由来するセルラーゼである。具体的にはトリコデルマ・リーセイQM9414(Trichoderma reesei QM9414)、トリコデルマ・リーセイQM9123(Trichoderma reeseiQM9123)、トリコデルマ・リーセイRutC−30(Trichoderma reeseiRut C−30)、トリコデルマ・リーセイPC3−7(Trichoderma reesei PC3−7)、トリコデルマ・リーセイCL−847(Trichoderma reeseiCL−847)、トリコデルマ・リーセイMCG77(Trichoderma reesei MCG77)、トリコデルマ・リーセイMCG80(Trichoderma reeseiMCG80)、およびトリコデルマ・ビリデQM9123(Trichoderma viride9123)などのトリコデルマ属菌由来のセルラーゼであることがより好ましく、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)に由来するセルラーゼであることがさらに好ましい。
【0040】
また、トリコデルマ属糸状菌を変異剤または紫外線照射などで変異処理を施し、セルラーゼの生産性を向上させた変異株由来のセルラーゼであってもよい。例えば、トリコデルマ属糸状菌を一部の酵素成分が多く発現するように改変した変異株に由来する、セルラーゼの組成比率が変更されたセルラーゼであってもよい。
【0041】
本発明では、市販されているトリコデルマ属菌由来のセルラーゼを用いることができる。市販品として、例えば、ノボザイム社の“セリック・シーテック”(登録商標)、“セリック・シーテック2”(登録商標)や、ダニスコ・ジャパン社の“アクセルレース”(登録商標)1000、“アクセルレース”(登録商標)1500、“アクセルレース”(登録商標)デュエットや、シグマ・アルドリッチ社の“セルラーゼ from Trichoderma reesei ATCC 26921”、“セルラーゼ from Trichoderma viride”、および“Cellulase from Trichoderma longibrachiatum”などを例示することができる。
【0042】
また、本発明では、前記のセルラーゼに他属菌の酵素を混ぜて使用しても良い。このような酵素の市販品として、例えば、ノボザイム社のアスペルギルス・ニガー由来の「ノボザイムズ188」などを例示することができる。その他、セルラーゼの働きを補助する酵素を添加した酵素であっても構わない。
【0043】
トリコデルマ属菌由来のセルラーゼは、酵素成分を産生するように調製された培地中で、任意の期間、トリコデルマ属菌を培養することにより得ることができる。使用する培地成分としては、セルラーゼの産生を促進するために、セルロースを添加した培地が好ましく用いられる。また、培養液をそのまま、またはトリコデルマ菌体を除去した培養上清が好ましく使用される。さらに、酵素安定化のために、添加剤として、プロテアーゼ阻害剤、分散剤、溶解促進剤および安定化剤などを添加したものであってもよい。
【0044】
セルラーゼ処理物を得る方法については、まず、好ましくは固形分濃度40質量%以下、より好ましくは20質量%以下になるよう水を加えスラリー化する。被処理物の固形分濃度の下限は特に限定されないが、少なすぎると効率が悪いので、通常、5質量%以上、好ましくは8質量%以上である。次に、さらにpHを好ましくは3から7の間に調整し、糖化酵素であるセルラーゼを重量換算で熱化学処理および酵素処理前のセルロース含有バイオマスの乾燥重量に対して1000分の1以上10分の1以下の範囲で反応させることが好ましい。セルラーゼが1000分の1以下であると分解する効果が低く、10分の1以上で効果が変化しなくなるため、経済性の観点から効果が頭打ちする10分の1以下である。反応温度は、20℃以上100℃以下が好ましいが、より好ましくは30℃以上70℃以下である。反応温度が20℃以下であると酵素の分解反応速度が遅く、100℃以上であると酵素が容易に失活してしまうからである。反応時間は、反応温度、被処理物の固形分濃度、セルラーゼの活性や使用量に基づき適宜設定されるが、通常、6時間〜96時間、好ましくは、12時間〜48時間程度である。
【0045】
続く工程(C)では、工程(B)のセルラーゼ処理産物の固形分(非水溶性セルラーゼ処理物)を得る。
【0046】
本発明でいうセルラーゼ処理産物の固形分、すなわち、非水溶性セルラーゼ処理物とは、前記工程(B)におけるセルラーゼ処理により、水に溶出した成分を固液分離して固体分として得られる非水溶性のものである。
【0047】
ここで、「非水溶性」とは、水に溶解しないことを指し、すなわち、水中で存在する際に光を散乱させる成分を指す。具体的には10000Gの超高速遠心状態で沈降する物質、および超高速遠心状態で沈降はしないが上清部分がコロイド状態を形成している場合そのコロイド成分物質を指す。
【0048】
セルラーゼ処理産物からの固形分の分離は、遠心分離やろ過により行うことができる。遠心分離の加速度は、特に限定されないが、低い加速度でも目的が達成できるので、実施容易性やコストの観点から、500G〜4000G程度が好ましく、さらに好ましくは1000G〜3000G程度である。ろ過により固形分を分離する場合、ろ過方法は特に限定されないが、この時点ではまだ高濁度であるので、実施容易性の観点から、フィルタプレスによることが好ましい。フィルタプレスは、織布または不織布を用いたろ布を用いたろ過処理方法であり、市販のろ布及び装置を用いて容易に行うことができる。フィルタプレスを行う場合の圧搾圧力は、特に限定されないが、0.01MPa〜2MPa程度、好ましくは、0.05MPa〜1MPa程度である。また、フィルタプレスの種類は縦型であっても横型であっても良い。また送液方法についてもポンプで行っても良く、圧縮気体で圧送しても良い。例えばFLSmith製の「PNEUMAPRESS」(登録商標)、石垣製の「ラースフィルタ」(登録商標)、アタカ大機製の「AUTOPAC」(登録商標)などを例示できる。
【0049】
上記本発明の方法により得られる非水溶性セルラーゼ処理物の粒径は、限定されない。それは、本発明で用いられる非水溶性セルラーゼ処理物を光学顕微鏡、電子顕微鏡写真を撮影したところ、粒径が数十ナノメートルから数百ミクロンまで様々に分散した粒子が存在していたり、粒としては規定できないリグニン製由来の付着性成分が混ざった状態であるからである。
【0050】
本発明の方法により得られる非水溶性セルラーゼ処理物の組成は、セルロースの組成が好ましくは10%以上95質量%以下であり、より好ましくは20%以上90質量%以下である。多くのセルロース系ろ過助剤はセルロース組成を高めているため95質量%以上である製品が多いが、本発明の非水溶性セルラーゼ処理物は、当該セルロース系ろ過助剤とは別物である。また、セルロース成分が10%未満までセルラーゼで加水分解するのは難しく、反応時間が極めて長くかかるため経済的にも非効率であるからである。
【0051】
組成を大きく限定できない理由は、熱化学処理を経る場合があるため、含有するリグニン・へミセルロース成分が異なるからである。しかしながら、酵素処理前後の組成については、酵素により多糖成分が積極的に分解されるため規定ができ、酵素処理後の分解残渣率(NRELのLAP法により規定、参考例4参照。)が酵素処理前に比べて1.5倍以上であることが好ましい。セルロース成分が選択的に分解されて一部の繊維状粒子が微細化されると同時にセルロース成分のみが分解されて表面積が増大し、濁質成分の付着率が大幅に向上するからであると推察している。好ましい分解残渣率は1.5倍以上、より好ましくは1.7倍以上50倍以下である。分解残渣率は、セルラーゼとの反応によって時間をかければ分解が進むが経済的な観点から反応時間24時間の場合として実施例の値から好ましくは1.5倍以上と設定した。また、分解反応は平衡反応であるため、全てのセルロースを分解することは難しい。そこで、上限を好ましくは50倍以下と設定した。
【0052】
本発明は、上記した方法により製造することができる、セルロース含有バイオマスの非水溶性セルラーゼ処理物を含む、セルロース系ろ過助剤をも提供する。ここで、セルロース系ろ過助剤とは、前記のセルロース含有バイオマスが原料であるろ過助剤である。セルロース系ろ過助剤の市販品としては、例えば、レッテンマイヤー社製の“ビタセル”(登録商標)600/30、600/20、600/10、600/05、“アルボセル”(登録商標)600/30、600/20、600/10、“リグノセル”(登録商標)、“ビバピュア”(登録商標)、ジョンス・マンビル社製の“ファイブラセル”(登録商標)BH40、BH100、SW10、ダイセル化学社製の“セリッシュ”(登録商標)、“パルプフロック”(登録商標)、日本製紙社製の“KCフロック”(登録商標)などを例示することができる。
【0053】
本発明で用いられる非水溶性セルラーゼ処理物がろ過助剤として高効率に機能する理由は、セルラーゼ分解による微粒子性成分と粉砕熱化学処理を経ても酵素反応で殆ど分解反応が見られない成分も存在している混合物であること、さらに酵素反応中に発生するリグニン製由来の付着成分が濁質成分を吸着すること、これらの効果が複合的に作用しているものと推察している。
【0054】
本発明のろ過助剤の用途としては、上水処理、中水処理、下水処理、排水処理、化学工業、食品工業、および医薬品精製などが挙げられる。中でも好ましい用途は、濁度低下に難を要する下水処理、排水処理、食品工業、化学工業および医薬品工業用途である。より好ましい用途は、前記の粉砕処理や熱化学処理で発生したバイオマス由来廃液や、酵母や菌等のような微生物を含んだ発酵由来廃液で等の濁質性液体対象のろ過である。
【0055】
バイオマス由来廃液には、リグニン由来の疎水性物質が多数存在しており、発酵由来廃液には数ミクロンサイズの酵母や菌等のような微生物が多数存在しており、ともに比重の低く付着性の高い有機系物質が濁質物質である特徴を有している。これらは、ろ過処理において織布や精密ろ過膜を目詰まりさせやすい因子である。
【0056】
特に本発明のろ過助剤で処理したろ過液については、後段で膜処理をする際に発生するファウリング成分を大幅に低減できるという特徴を有することが本発明で判明した。本発明で使用したろ過助剤を使用することによって、後処理特に精密ろ過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜および逆浸透膜などの濾過工程の前処理として適用性が高い。さらに、ろ過対象液の中で有機系排液であることが膜目詰まりのしやすさに起因していることから、膜の材質は、高分子化合物由来のものである場合に本発明のろ過助剤が特に有効である。
【0057】
本発明のろ過助剤を用いたろ過処理方法については特に限定されないが、より好ましくは織布または不織布を用いたろ布を用いたろ過処理方法である。ろ布には、精密ろ過膜レベルの製膜がろ布上に行われていても構わない。より好ましくは、前記のろ布を用いた真空ろ過または加圧濾過である。真空ろ過には、ヌッチェ式、ベルトフィルタ式およびベルトプレス式などのろ過方法を例示することができる。加圧ろ過には、遠心ろ過式、フィルタプレス式、ロータリープレス式などのろ過方法を例示することができる。中でも、本発明のろ過方式は、加圧ろ過が好ましい。すなわち、本発明のろ過助剤を用いた場合、酵素処理により微粒子化した粒子があるため、ろ過助剤による圧力損失が大きいため、1次側と2次側に圧力差が大きくすることが可能な加圧ろ過が好ましいからである。特に、加圧ろ過の中でも、フィルタプレスは使用したろ過助剤と処理液の固形分の混合物を圧搾機能により含水率を大幅に低減することができ、フィルタプレスにより得られた固形分は容易に燃焼することができ、低含水率から燃焼効率も大きいため、固形分からエネルギー回収するなどの副次的効果も得ることができるからである。なお、ろ過の方法自体は、本発明のろ過助剤と共にろ過を行う点を除き、公知のろ過方法により行うことができる。
【0058】
なお、本発明のろ過助剤では、被処理物であるセルロース含有バイオマスにセルラーゼが付着しており、例えば、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を非水溶性セルラーゼ処理物と反応させて、SDS−PAGE分析にかけることにより、セルラーゼ処理を行ったか否かを判別することが可能である。セルロース含有バイオマスへの付着成分として、セルラーゼの中でも特にセルビオハイドロラーゼの付着量が多いという特徴を有する。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0060】
下記の実施例、比較例および参考例における各測定値は、それぞれ3点測定しその平均値である。
【0061】
参考例1 試料として使用するバイオマス
バイオマスである稲わらおよび麦わらを、カッター連続式ミル(IKA製、MF10 basicS1)を用いて、2mm〜3mmの大きさまで粉砕処理した粉砕バイオマスを得た。
【0062】
参考例2 含水率の測定方法
含水率については、赤外線水分計(ケット科学研究所製、FD−720)を使用して、試料を120℃の温度に保持し、蒸発後の安定値と初期値の差分から得られる値を測定した。
【0063】
参考例3 濁度の測定方法
液(ろ過前とろ過後)の濁度については、携帯用濁度計(HACH製2100P)を使用して測定した。
【0064】
参考例4 バイオマス組成の測定方法
NRELが発行しているLAP法(“Determination of Structural Carbohydrates and Lignin in Biomass, Laboratory Analytical Procedure(LAP)”)を参考に、次に示す方法で組成を分析した。
【0065】
試料の適量を分取し、上記の参考例2の方法で含水率を測定した。次に、参考例2の含水率を算定後、得られた乾燥試料を、600℃の温度で強熱し灰分率を求めた。
【0066】
また、試料をステンレス型バットに移し、実験室雰囲気でおおよそ平衡状態になるまで風乾し、これをウィレーミルにより粉砕し、ふるいにより粒径を約200〜500μm」に調整した。本状態調節後の試料を60℃の温度で真空乾燥し、絶乾質量を補正することによって、各成分の絶乾ベースでの含有量を算定した。この分析用試料0.3gを天秤でビーカーにはかりとり、これに濃度72%の硫酸3mLを加え、30℃の温度でときどき攪拌しながら1時間放置した。この反応液を、精製水84mLで耐圧瓶に完全に移した後、120℃の温度で1時間オートクレーブで加熱分解した。加熱分解後、分解液と残渣を、ろ別し、ろ液と残渣の洗液に加えて100mLに定容したものを検液とした。また、加熱分解時、糖の過分解を補正するために単糖を用いた添加回収試験を並行して行った。検液中の単糖(キシロース・アラビノース・マンノース・グルコース・ガラクトース)については、高速液体クロマトグラフ法(GLサイエンス製GL−7400、蛍光検出)により定量を行った。得られた分解液の単糖濃度と試料分解量から、試料中の構成糖量を算定した。
【0067】
単糖の添加回収試験より構成糖量を求めた。加熱分解時の糖過分解補正係数(Sf:サバイバルファクター)を用いて、構成糖量を補正した。
【0068】
参考例5 酵母液サンプルの作成
酵母株(OC2、サッカロマセス・セレビシエ、ワイン酵母)を用いて、酵母液を作成した。培地は、表1の組成の培地をフィルター滅菌(ミリポア、ステリカップ0.22μm)したものを発酵に用いた。
【0069】
OC2株を、試験管で5mLの発酵用培地(前培養培地)で一晩振とう培養した(前培養)。得られた前培養液から酵母を遠心分離により回収し、滅菌水15mLでよく洗浄した。洗浄した酵母を、表1の培地100mLに植菌し、500mL容坂口フラスコで24時間振とう培養した(本培養)。このようにして得られた酵母液を所定量得られるように複数本培養した。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1 希硫酸処理・酵素処理で得られたろ過助剤
上記の参考例1で得られた稲わらの粉砕バイオマスを硫酸の1%水溶液に浸し、150℃の温度で30分間オートクレーブ処理(日東高圧社製オートクレーブを使用。)した。処理後、固液分離を行い、硫酸水溶液(以下、希硫酸処理液とする。)と硫酸処理セルロースに分離した。次に、硫酸処理セルロースと固形分濃度が10質量%となるように、希硫酸処理液と攪拌混合した後、水酸化ナトリウムによってpHを5付近に調整し混合液を得た。この混合液に、セルラーゼとしてアクセルレース デュエット(トリコデルマ・リーセイ由来、ダニスコ・ジャパン社製)を添加し、50℃の温度で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行い、硫酸・酵素処理スラリー液を得た。その後、スクリューデカンタ装置の模擬条件として遠心分離(1500G)を1分間行い、固形分として含水率76.4質量%の非水溶性セルラーゼ処理物(以下、酵素処理助剤とする。)を得た。
【0072】
前記の酵素処理助剤500gを、前記の希硫酸処理液1Lに添加して合計1.5kgとし、攪拌して均一なスラリー液になってから、フィルタプレス処理を行った(薮田産業社製、小型濾過装置MO−4を使用。)。初期のろ過液は濁質性が高いので、ろ過開始から1分間で得られたろ過液は原水槽に戻した。ろ布はT2731Cを使用し、ろ過処理時間は24分であった。フィルタプレス処理前の希硫酸処理液は300NTUであったが、フィルタプレス処理後の液は5NTUであった。処理後の希硫酸処理液100mLを用いて、精密ろ過膜(ミリポア社製“ステリカップHV”0.45μm(登録商標))によるデッドエンドろ過運転を実施した。吸引圧は、80kPaの定圧ろ過運転とした。ろ過時間を、それぞれ表2(処理液の濁度と精密ろ過膜処理を指標とした液性の違い(希硫酸処理液))に示す。
【0073】
比較例1
実施例1の希硫酸処理液(液Aとする。)、希硫酸処理液を何も添加せずにフィルタプレス処理した液(液Bとする。)、さらに実施例1の硫酸処理セルロースを希硫酸処理液に混合して実施例1と同様のフィルタプレス処理した液(液Cとする。)、および希硫酸処理液をデラバル型遠心分離機(GEAウエストファリア製)により8000Gで遠心処理した液(液Dとする。)を、それぞれ100mL準備した。それぞれの濁度とさらに実施例1と同様の精密ろ過膜処理した結果を、まとめて表2に示す。実施例1記載の判明事項のほかに、比較例1の液Dとの比較から、濁度が12NTUと低い場合においても精密ろ過膜のろ過速度が遅いことから、濁度と精密ろ過膜のろ過速度は必ずしも一致しないことも判明した。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例2 本発明で得られたろ過助剤(フィルタプレスで得た場合)
実施例1で得られた硫酸・酵素処理スラリー液を、フィルタプレス処理(圧搾圧力:0.5MPa)をし、固形分として含水率52.1%の非水溶性セルラーゼ処理物を得た。
【0076】
得られた酵素処理助剤は流動性が無く固化しているため、手で砕いたこの酵素処理助剤250gを希硫酸処理液1.8Lに添加して、合計約2kgとして攪拌して均一なスラリー液にした後、再びフィルタプレス処理を行った。ろ過処理時間は30分であった。この処理液の濁度とさらに実施例1と同様の精密ろ過膜処理した結果を、表3(フィルタプレスによって酵素処理助剤を得た場合)に示す。
【0077】
実施例1との比較から、酵素処理を行う前の固液分離方法は特に限定されずろ過法でも遠心分離法のいずれでもよいことが判明した。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例3 水熱処理・酵素処理で得られたろ過助剤
稲の籾殻を水に浸し、撹拌しながら180℃の温度で20分間オートクレーブ処理(日東高圧社製)した。その際の圧力は、7MPaであった。オートクレーブ処理後は、溶液成分(以下、水熱処理液とする。)と固形分(以下、水熱処理バイオマスとする。)成分に遠心分離機(1500G)を用いて固液分離した。この水熱処理バイオマス成分に固形分10質量%になるようにして水を添加し、pHが5になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加してスラリー液を調整し、アクセルレース デュエットをスラリー液総量の40分の1添加した。次いでこれを、50℃の温度に保温して攪拌しながら、24時間反応させた。反応後のスラリー液を1500Gの圧力で1分間遠心分離し非水溶性セルラーゼ処理物を得た。得られた酵素処理助剤の含水率は、78.1%であった。
【0080】
前記の酵素処理助剤500gを水熱処理液1Lに添加して合計1.5kgとし、これを攪拌して均一なスラリー液になってから、実施例1と同様のフィルタプレス処理を行った。フィルタプレス処理前の水熱処理液は1000NTU以上であったが、フィルタプレス処理後の液は5NTUであった。処理後の水熱処理液100mLを用いて、実施例1と同様の精密ろ過膜によるデッドエンドろ過処理を行った。結果を、表4(精密ろ過膜処理したときの結果(水熱処理液))に示す。比較例2との比較結果から、実施例1と同様、稲の籾殻、さらに熱化学処理が水熱処理においても水熱処理を前処理として行った後、酵素処理したろ過助剤として用いたことによって、他の場合と比べて処理液の濁度が低下し、濁質成分の除去効果が高いことが判明した。さらに、精密ろ過膜でのろ過速度も大幅に向上することが判明した。
【0081】
比較例2
実施例3の水熱処理液(液Eとする。)、水熱処理液をそのままフィルタプレス処理した液(液Fとする。)、および水熱処理バイオマスを添加しフィルタプレス処理した液(液Gとする。)について、実施例3と同様の精密ろ過膜によるデッドエンド濾過試験処理を行った。結果を、表4に示す。なお、水熱処理液をそのままフィルタプレス処理を行ったところ、5分後にろ布が目詰まりして処理液がほとんど得られず、120mLしか得られなかった。得られたうち100mLを、液Fとして同様の精密ろ過膜処理に供した。
【0082】
【表4】
【0083】
実施例4 蒸煮爆砕処理で得られたろ過助剤
水熱爆砕装置(日本電熱社製、30Lサイズ)に、稲わらの粉砕バイオマスを投入して蒸気を導入し、2.5MPaを2.5分間維持して爆砕処理を行った。運転時には、排液(空打ち排液)が発生した。この爆砕したバイオマスの含水率は、84.4%であった。爆砕バイオマスを固形分10質量%になるようにして水を添加し、pHが5になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加しスラリー液を調整し、アクセルレース デュエットをスラリー液総量の40分の1添加した。50℃の温度に保温して攪拌しながら、24時間反応させた。反応後のスラリー液をフィルタプレス処理し、含水率50.9%の非水溶性セルラーゼ処理物を得た。
【0084】
得られた酵素処理助剤は流動性が無く固化しているため、手で砕いた酵素処理助剤100gを爆砕排液1.8Lに添加して、合計約2kgとして攪拌して均一なスラリー液にした後、再び実施例1と同様のフィルタプレス処理を行った。ろ過処理時間は、20分であった。フィルタプレス処理前の爆砕排液は1000NTU以上であったが、フィルタプレス処理後の液は2NTUであった。前記処理後の爆砕排液100mLを用いて、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。結果を、表5(精密ろ過膜処理したときの結果(爆砕排水))に示す。比較例3との比較結果から、実施例1と同様、爆砕処理においても爆砕処理を物理化学処理として行った後、酵素処理したろ過助剤として用いたことによって、他の場合と比べて処理液の濁度が低下し、濁質成分の除去効果が高いことが判明した。さらに精密ろ過膜でのろ過速度も大幅に向上することが判明した。
【0085】
比較例3
爆砕排水(液Hとする。)、爆砕排水を助剤を添加せずにフィルタプレス処理を行った液(液Iとする。)、および爆砕バイオマスをそのまま添加後、フィルタプレス処理した液(液Jとする。)について、実施例4と同様にそれぞれ濁度および精密ろ過処理試験を行った結果を表5に示す。爆砕バイオマスを添加後、フィルタプレス処理した液については、フィルタプレスが困難で処理開始3分程度でろ布が目詰まりして200mLしか得られなかった。うち、100mLを精密ろ過処理に供した。
【0086】
【表5】

【0087】
実施例5 アルカリ処理・酵素処理で得られたろ過助剤
麦わらの粉砕バイオマスを水酸化ナトリウム5%水溶液に浸し、150℃の温度で10分間オートクレーブ処理(日東高圧社製のオートクレーブを使用。)した。処理後、固液分離を行い、水酸化ナトリウム処理後の排水(以下、アルカリ処理液とする。)とアルカリ処理セルロースに分離した。次に、アルカリ処理セルロースと固形分濃度が10質量%となるようにアルカリ処理液と攪拌混合した後、希硫酸によって、pHを5付近に調整し混合液を得た。この混合液に、セルラーゼとしてアクセルレース デュエットを添加し、50℃の温度で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行い、酵素処理スラリー液を得た。その後、スクリューデカンタ装置の模擬条件として遠心分離(1500G)を1分間行い、固形分として含水率77.5%の非水溶性セルラーゼ処理物を得た。
【0088】
前記の酵素処理助剤500gをアルカリ処理液1Lに添加して合計1.5kgとして、攪拌して均一なスラリー液になってから、実施例1と同様のフィルタプレス処理を行った。フィルタプレス処理前の水熱処理液は630NTUであったが、フィルタプレス処理後の液は6NTUであった。処理後の水熱処理液100mLを用いて、実施例1と同様の精密ろ過膜(によるデッドエンドろ過処理を行った。結果を、表6(処理液の濁度と精密ろ過膜処理を指標とした液性の違い(アルカリ処理液))に示す。
【0089】
比較例4
アルカリ処理液(液Kとする。)、アルカリ排水を助剤を添加せずに、フィルタプレス処理を行った液(液Lとする。)およびアルカリ処理セルロースをそのまま添加後、フィルタプレス処理した液(液Mとする。)について、実施例5と同様にそれぞれ濁度および精密ろ過処理試験を行った結果を、表6に示す。実施例5との比較結果から、実施例1と同様、原料が麦わら、さらにアルカリ処理を物理化学処理として行った後、酵素処理したろ過助剤として用いたことによって、他の場合と比べて処理液の濁度が低下し、濁質成分の除去効果が高いことが判明した。さらに精密ろ過膜でのろ過速度も大幅に向上することが判明した。
【0090】
【表6】
【0091】
実施例6 アンモニア水処理・酵素処理で得られたろ過助剤
稲わらの粉砕バイオマス300gを1.5規定のアンモニア水溶液2.7kgに浸し、180℃の温度で20分間オートクレーブ処理(日東高圧社製のオートクレーブを使用。)した。処理後、固液分離を行い、アンモニア水処理後の排水(以下、アンモニア処理液とする。)とアンモニア処理セルロースに分離した。次に、アンモニア処理セルロースと固形分濃度が10質量%となるようにアンモニア処理液と攪拌混合した後、希硫酸によって、pHを5付近に調整し混合液を得た。この混合液に、セルラーゼとしてアクセルレース デュエットを添加し、50℃の温度で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行い、酵素処理スラリー液を得た。その後、スクリューデカンタ装置の模擬条件として遠心分離(1500G)を1分間行い、固形分として含水率76.4%の非水溶性セルラーゼ処理物を得た。
【0092】
前記の酵素処理助剤500gを水熱処理液1Lに添加して合計1.5kgとして、攪拌して均一なスラリー液になってから、実施例1と同様のフィルタプレス処理を行った。フィルタプレス処理前の水熱処理液は360NTUであったが、フィルタプレス処理後の液は3NTUであった。処理後の水熱処理液100mLを用いて、実施例1と同様の精密ろ過膜によるデッドエンドろ過処理を行った。結果を、表7(処理液の濁度と精密ろ過膜処理を指標とした液性の違い(アンモニア処理液))に示す。
【0093】
比較例5
アンモニア処理液(液Nとする。)、アンモニア処理液を助剤を添加せずにフィルタプレス処理を行った液(液Oとする。)、およびアンモニア処理セルロースをそのまま添加後、フィルタプレス処理した液(液Pとする。)について、実施例6と同様にそれぞれ濁度および精密ろ過処理試験を行った結果を、表7に示す。
【0094】
実施例6との比較結果から実施例1と同様、アンモニア処理を物理化学処理として行った後、酵素処理したろ過助剤として用いたことによって、他の場合と比べて処理液の濁度が低下し、濁質成分の除去効果が高いことが判明した。さらに、精密ろ過膜でのろ過速度も大幅に向上することが判明した。
【0095】
【表7】
【0096】
比較例6 珪藻土系ろ過助剤を用いた場合
珪藻土2種(昭和化学工業社製、“ラジオライト”(登録商標)#300)を使用して、実施例1の希硫酸処理液と、実施例3の水熱処理液と、参考例5の酵母液の濁質成分を除去した液を用意した。まず、各液1Lにラジオライト“#300”を50g添加した後、フィルタプレス処理を行った。さらにこれらの液について、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表8(各種濁質液に対する珪藻土ろ過助剤の効果)に示す。
【0097】
実施例1および実施例3などとの比較から、従来のろ過助剤である珪藻土系ろ過助剤よりも本発明で得たろ過助剤の方が、濁質除去効果および処理液の精密ろ過膜へのろ過速度効果の観点で優れることが判明した。
【0098】
【表8】
【0099】
(比較例7)市販セルロース系濾過助剤を用いた濾過(希硫酸処理液・水熱C5液・酵母液)
市販セルロース系ろ過助剤であるKCフロック(日本製紙社製)と、“アルボセル”(登録商標)(レッテンマイヤー社製)を、希硫酸処理液、水熱処理液、および酵母液に、それぞれ乾燥固形分濃度が5%となるように添加して、フィルタプレスによるろ過処理を行った。さらにこれらの液について、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表9(各種濁質液に対するKCフロックの効果)、および表10(各種濁質液に対するアルボセルの効果)に示す。
【0100】
【表9】
【0101】
【表10】
【0102】
実施例7 市販ろ過助剤を酵素処理して得た濾過助剤
KCフロック(日本製紙社製)、“アルボセル”(登録商標)(レッテンマイヤー社製)を用いて、アクセルレース デュエットで実施例1と同様の酵素処理を行い、それぞれの酵素処理物を、希硫酸処理液、水熱処理液、酵母液にそれぞれ乾燥固形分濃度が5%となるように添加して、フィルタプレスによるろ過処理を行った。さらにこれらの液について、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表11(各種濁質液に対するKCフロック・酵素処理後の効果)、および表12(各種濁質液に対するアルボセルの効果)に示す。このように、比較例7と比較して市販のセルロースろ過助剤においてもセルラーゼによる酵素処理を行うことによってろ剤の濁質除去性能が向上していることが示唆される。
【0103】
【表11】
【0104】
【表12】
【0105】
比較例8 微粉砕バイオマスを用いた場合(微粉砕のみ)
遊星ボールミル「PLANET H」(GOKIN PLANETARING社製)を用いて、微粉砕処理を行った。稲わらの粉砕バイオマス30gに対してと同時に、容器にジルコニアビーズ(東レ社製“トレセラム”(登録商標)、粒径Φ0.05mmΦ)30g入れて、20時間微粉砕処理を行った。これを30μmのふるいにかけてジルコニアビーズを除去して、微粉砕セルロースを得た。この微粉砕バイオマスを、ろ過助剤として使用した。使用前の微粉砕セルロースを、SEM(日立ハイテクノロジー社製S−4800)で観察したところ、図1のようにほぼ全ての微粉砕セルロースは20μm前後の流刑を有している非繊維状の形状であった。
【0106】
フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表13に示す。比較例7(表9、表10)と比べると、微粉砕セルロースが市販のセルロース系ろ過助剤に比べて、ろ過性能が改善することが分かる。これは特開平9−173728号公報に記載されているとおりである。
【0107】
【表13】
【0108】
実施例8 本発明で得られたろ過助剤を得た場合(微粉砕+酵素処理・水熱処理液、酵母液)
比較例8で得られた微粉砕バイオマスをアクセルレース デュエットで、実施例1と同様の酵素処理を行い、それぞれの酵素処理物を、希硫酸処理液、水熱処理液、および酵母液に、それぞれ乾燥固形分濃度が5%となるように添加して、フィルタプレスによるろ過処理を行った。さらに、これらの液について、実施例1と同様の精密ろ過膜処理を行った。フィルタプレス処理後の濁度と精密ろ過膜処理時のろ過時間の結果を、表14(各種濁質液に対する微粉砕バイオマス・酵素処理後の効果)に示す。このように、比較例8(表13)と比較して、市販のセルロースろ過助剤よりもろ過性能が向上した微粉砕セルロースにおいても、セルラーゼによる酵素処理を行うことによって、ろ剤の濁質除去性能が飛躍的に向上していることが示唆される。
【0109】
【表14】
【0110】
実施例9 ベルトフィルタ(プレコート・ボディフィード)を使用した場合(フィルタプレスよりも劣る)
真空水平ベルトフィルタ(アタカ大機社製 ADPEC)を用いて、真空ろ過により清澄液を得ることを試みた。ろ材としては、希硫酸処理液に対して硫酸処理セルロースの酵素処理物、水熱処理液に対して水熱処理バイオマスの酵素処理物、酵母液に対して、爆砕バイオマスの酵素処理物を固形分濃度5質量%となるように添加して、ベルトフィルタによるろ過処理を行った。結果を、表15(各種濁質液に対する各ろ過助剤添加時の効果)に示す。表15のとおり、加圧ろ過法であるフィルタプレスに比べて、ろ過速度の面で真空ろ過であるベルトフィルタは劣るが、得られるろ液の濁度や精密ろ過膜の処理速度の面では効果が現れることが判明した。
【0111】
比較例9
同様の真空水平ベルトフィルタを用いた実験を、ろ材としては希硫酸処理液に対して硫酸処理セルロース、水熱処理液に対して水熱処理バイオマス、酵母液に対して爆砕バイオマスを固形分濃度5%となるように添加して、ベルトフィルタによるろ過処理を行った。結果を、表15に示す。実施例9との比較から、バイオマスを酵素処理しないバイオマスをろ過助剤として使用してもろ過助剤としての効果は低いことが判明した。
【0112】
【表15】
【0113】
比較例10 ヘミセルラーゼを反応させた場合
実施例1で得られた硫酸処理セルロースに水を加え、pHを6に調整した後、ヘミセルラーゼとしてオプチマーゼCX(ダニスコ・ジャパン社製)を60℃の温度で2時間反応させた後、遠心分離機で固形分を得た。上記で得られたヘミセルラーゼ処理物をろ過助剤として、希硫酸水溶液に添加し、攪拌して均一なスラリー液にした後、フィルタプレス処理を行った。ろ過処理時間は90分であった。この処理液の濁度とさらに実施例1と同様の精密ろ過膜処理した結果を、表16(ヘミセルラーゼ処理行った場合)に示す。
【0114】
上記の結果から、ヘミセルラーゼを反応させた場合、分解される多くがヘミセルロースのみでセルロース含有バイオマスの多くを構成するセルロースを分解するセルラーゼによって処理しなければ、本効果が低いことが判明した。すなわち、本発明のろ過助剤を製造するためには、ヘミセルラーゼが含有されていても構わないが、セルラーゼによる処理は必須であることが判明した。特開2001−55679号公報には、リグノセルロースの漂白方法として記載されているが、この方法では本発明のろ過助剤のろ過性能は出ないことが分かった。
【0115】
【表16】
【0116】
参考例6 非水溶性セルラーゼ処理物であることの特定方法
前記の非水溶性セルラーゼ処理物(酵素処理助剤)であるか否かの特定について、前記の非水溶性セルラーゼ処理物(酵素処理助剤)の付着した酵素の分析方法を、次に示す。
【0117】
すなわち、非水溶性セルラーゼ処理物を界面活性剤であるSDS(ドデシル硫酸ナトリウム水溶液)に懸濁させて、遠心分離8000Gの圧力で5分間非水溶性セルラーゼ処理物を沈殿させて上清を回収する。
【0118】
得られた上清に関して、同量のサンプル処理バッファー(ATTO EzApply)を混合し,100℃の温度で10分間処理して処理サンプルを得た。得られた処理サンプルを、15質量%電気泳動用ゲル(ATTO e−PAGEL)へ5μLアプライし電気泳動を行った(40mA 30min)。ゲルを取り出し、クマシーブリリアントブルーで染色後(Bio−Rad Bio−safe CBB)、蒸留水で脱色を行った。図2に、市販セルラーゼであるアクセルレースデュエットの酵素液そのもののSDS−PAGEの結果を示す。また、図3に爆砕処理バイオマスの酵素(アクセルレースデュエット使用)処理後の非水溶性セルラーゼ処理物のSDS処理した、前記の上清のSDS−PAGEの結果を示す。
【0119】
このような手法で、セルラーゼに特徴的な特定分子量の群が見つけられることによってろ過助剤に酵素処理したか否かを判別することが可能になる。図2図3において、図2の右と図3の左に該当するのが、分子量が判明している着色タンパクを多数含んだ秤品液を電気泳動したものである。秤品液の分子量75kDaから100kDaに該当位置するピークがセロビオハイドロダーゼに該当する。従って、吸着した酵素のうち、セロビオハイドロダーゼの吸着量が多いことが、図2図3の比較から言える。すなわち、本発明のろ過助剤を特定するには、本発明のろ過助剤に前記の処理を行ってセロビオハイドロダーゼが付着しているかを行えば、本発明のろ過助剤に該当するか否かが特定できる。
【0120】
参考例10 固形分添加率
水熱処理液に対して水熱処理バイオマスを酵素処理した非水溶性セルラーゼ処理物、および、酵母液に対してアンモニア処理セルロースを酵素処理した非水溶性セルラーゼ処理物を用いて、どの程度の固形分濃度で投入するのが好ましいか検討を行った。ここで固形分濃度とは、それぞれのろ過助剤の含水率を測定し、乾燥重量を測定し、対するろ過助剤と処理対象液との総量で割った値とする。それぞれ添加後、フィルタプレス処理して得られた濁度を、表17(各処理時の濁度[単位:NTU])に示す。固形分濃度が25%のときは、フィルタプレス処理をするためのスラリー液の送液も難しい状態でろ液を得ることができなかった。
【0121】
【表17】
【0122】
参考例11 酵素処理前後のバイオマス組成分析
参考例4に記載の方法で、実施例3(水熱処理)と実施例6(アンモニア処理)の酵素処理前後の組成比について分析した結果を、表18(水熱処理バイオマスの酵素処理前後組成)と表19(アンモニア水処理バイオマスの酵素処理前後組成)にそれぞれ示す。酵素処理物は、酵素処理前に比べて分解残渣率が1.5倍以上増加していることが分かる。これは、セルロース成分が主に分解された分、相対的に分解残渣率が増加していると推察している。
【0123】
【表18】
【0124】
【表19】
【0125】
参考例12 粒径の変化
実施例3(水熱処理)と実施例6(アンモニア処理)の酵素処理前後の状態について、実施例3の顕微鏡写真および実施例6の精密ろ過膜上で撮影したSEM写真を、図4および図5にそれぞれ示す。図4および図5から、酵素処理によって大きさが小さくなっていることが分かる。得られた処理物の大きさは、図4から200μmのものが多数存在している。そのため、比較例8や特開平9−173728号公報のように、粒径を小さくするだけでは説明できない濁質除去のメカニズムが、本発明のろ過助剤には働いていると推察される。
図1
図2
図3
図4
図5