特許第6020172号(P6020172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6020172積層体、透明導電性積層体、タッチパネル、および積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020172
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】積層体、透明導電性積層体、タッチパネル、および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20161020BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20161020BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20161020BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   B32B7/02 103
   B05D7/24 303B
   H01B5/14 A
【請求項の数】11
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2012-538524(P2012-538524)
(86)(22)【出願日】2012年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2012069960
(87)【国際公開番号】WO2013021965
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-175661(P2011-175661)
(32)【優先日】2011年8月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 康之
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 倫子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悠
(72)【発明者】
【氏名】高田 育
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−098563(JP,A)
【文献】 特開2011−102977(JP,A)
【文献】 特開2005−041205(JP,A)
【文献】 特開2007−238897(JP,A)
【文献】 特開2009−198863(JP,A)
【文献】 特開2009−274324(JP,A)
【文献】 特開2010−237419(JP,A)
【文献】 特開2007−234356(JP,A)
【文献】 特開2007−183674(JP,A)
【文献】 特開2008−256747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 7/24
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材の少なくとも片面に、屈折率の異なる2層からなる積層膜を有する積層体であって、
積層膜を構成する2層が第1層と第2層とからなり、第1層、第2層、支持基材がこの順に積層され、
第1層は無機粒子Aを含み、無機粒子Aの数平均粒子径(D)が1nm以上40nm以下であり、無機粒子Aの数平均粒子径(D)と第1層の膜厚(T)の関係が、以下の条件を満たすことを特徴とする積層体。
1.05≦(T/D)≦ 1.6
【請求項2】
無機粒子Aによる第2層の表面の被覆率が90%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
以下の(1)から(3)で定義される単位長さAと長さBの比B/Aが、1≦B/A≦ 1.15である、請求項1または2に記載の積層体。
(1) 第1層と第2層とで形成される界面において、直線長さが500nm以上離れた任意の界面上の2点をA、Aする。
(2) AとAを結ぶ直線の長さを単位長さAとする。
(3) AとA間の第1層と第2層とで形成される界面に沿った長さを、長さBとする。
【請求項4】
前記第2層が無機粒子Bを含み、無機粒子Bの数平均粒子径(D)と、無機粒子Aの数平均粒子径(D)との関係が、以下の条件を満たすことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
1≦(D/D)≦5
【請求項5】
前記第1層の膜厚Tが、10nm以上50nm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記無機粒子Aが、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子(これをフッ素処理無機粒子Aとする)であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記無機粒子Aの数平均粒子径(D)が、20nm以上25nm以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の積層体の第1層上に、導電層を有することを特徴とする、透明導電性積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の透明導電性積層体を含むタッチパネル。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかの積層体を製造する方法であって、前記支持基材の少なくとも片面上に、塗料組成物を1回のみ塗布することで屈折率の異なる2層からなる積層膜を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項11】
前記積層体の製造方法において、支持基材の表面エネルギーが40mN/m以上で、JIS−B−0601(2001)に記載の表面粗さが40nm以下であることを特徴とする、請求項10に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層体、透明導電性積層体、タッチパネル、および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、静電容量式のタッチパネルが携帯電話、携帯音楽端末などの各種モバイル機器に搭載されるケースが増えている。このような静電容量式のタッチパネルではパターニングされた導体上に誘電体層を積層した構成を有し、指などでタッチすることにより、人体の静電容量を介して接地される。この際、パターニング電極と接地点との間の抵抗値に変化が生じ、位置入力を認識する。しかしながら従来の透明導電性フィルムを用いた場合、透明導電層を有する部分と除去された部分での光学特性の差が大きいため、パターニングが強調され、液晶ディスプレイ等の表示体の前面に配置した際に視認性が低下するという問題があった。
【0003】
透明導電性フィルムの透過率、色目、さらに、パターニングが強調されないようにするため、反射防止膜等で用いられている屈折率の異なる層を積層させ光の干渉を利用する方法が提案されている。すなわち、透明導電性薄膜層と基材フィルムの間に屈折率の異なる層(屈折率調整層)を設けて光学干渉を利用した方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、「透明プラスチックフィルムからなる基材上に、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電性薄膜層をこの順に積層した構成を有し、高屈折率層の屈折率が1.70〜2.50、膜厚が4〜20nmの範囲にあり、低屈折率層の屈折率が1.30〜1.60、膜厚が20〜50nmの範囲であることを特徴とする透明導電性積層フィルム。」が記載されている。
【0005】
特許文献2には、「有機高分子からなる基板の少なくとも一方の面の最表面に透明導電層が積層されてなる透明導電性積層体において、基板側から順に、(A1)屈折率が1.7から透明導電層の屈折率+0.3の範囲にあり膜厚が20〜90nmの範囲にある層(H1層)、(B1)屈折率が1.35〜1.5の範囲にあり膜厚が30〜110nmの範囲にある層(L1層)(C)膜厚が12〜30nmの範囲にある透明導電層、が積層されており、(D)該3層の光学膜厚の和が180〜230nmの範囲であり、(F)該透明導電層の積層面の波長450〜650nmにおける平均反射率が5.5%以下であって、かつ(G)該積層体の透過光の日本工業規格Z8729号に定めるL表色系のクロマティクネス指数b値が0〜2の範囲にあることを特徴とする透明導電性積層体」で、「H1層および/またはL1層が、主として金属アルコキシドを加水分解および縮合してなる層であることを特徴とする透明導電性積体」が記載されている。
【0006】
また、反射防止部材の製造方法の発明ではあるが、ウェットコート法により、低屈折率層を形成する製造方法として、特許文献3には、「乾燥膜厚0.005〜1μmの塗膜を製造するにあたり、グラビアロールを用いて、固形分の濃度が0.05〜40質量%であるコーティング液を支持体に連続的にコーティングすることを特徴とする塗膜の製造方法。」で、「前記コーティング液中の固形分がさらに無機化合物を含む塗膜の製造方法。」が記載されている。
【0007】
さらに、製造工程の簡略化のため1回の塗布によって2つの層(低屈折率層と高屈折率層)を形成する製造方法として、次のものが提案されている。
【0008】
特許文献4には、「バインダー樹脂中に低屈折率微粒子と中乃至高屈折率微粒子が分散されているコーティング組成物を用いてワンコートにて形成された塗膜を含む反射防止積層体であって、該低屈折率微粒子としてフッ素系化合物により処理されているシリカ微粒子が用いられることにより、比重の差により塗膜の上部乃至中間部において低屈折率微粒子が偏在し、且つ中間部乃至下部において中乃至高屈折率微粒子が偏在していることを特徴とする反射防止積層体」が記載されている。
【0009】
特許文献5には、「支持基材の少なくとも片面に、屈折率の異なる2層を有する反射防止フィルムの製造方法であって、塗料組成物を支持基材の少なくとも片面上に1回塗布乾燥硬化する工程を含み、該塗料組成物が2種類以上の無機粒子を含み、該2種類以上の無機粒子における少なくとも一種類の無機粒子が、フッ素化合物により表面処理された無機粒子であり、さらに金属キレート化合物を含むことを特徴とする、反射防止フィルムの製造方法」、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−15861号公報
【特許文献2】特許3626624号公報
【特許文献3】特許3757467号公報
【特許文献4】特開2007−272132号公報
【特許文献5】特開2009−058954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は次の2つである。
【0012】
第一課題は、屈折率の異なる2層からなる積層膜が支持基材の少なくとも片面にある積層体において、積層膜の最表面に透明導電層を積層した場合に、透明性、導電性が高く、透明導電層の積層膜への密着が良好で、透過光の着色が少なく、また透明導電層のパターニングが強調されない積層体、該積層体に透明導電層を積層した透明導電性積層体、該透明導電性積層体を用いたタッチパネルを提供することである。
【0013】
第二課題は製造工程が簡略化された該積層体の製造方法を提供することである。
【0014】
上記課題に対し前述の公知技術は次の状況にある。
【0015】
特許文献1、2では、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電性薄膜層を積層しているが、特許文献1の明細書によると低屈折率層の積層方法はスパッタリングにより、特許文献2ではアルコキシシランの加水分解物により、いずれも屈折率は1.46程度である。本発明者らが確認したところこの屈折率では、透明導電層のパターニングを見えにくくする効果が不十分であった。
【0016】
特許文献3の反射防止フィルムの製造方法を用い、本発明の構成を第2層(高屈折率層)次いで第1層(低屈折率層の順で)2回の塗布によって形成すると、透明導電層を積層した後の透過光の着色抑制、透明導電層のパターニング視認抑制効果、および必要な導電性が得られないことがわかった。
【0017】
特許文献4ではワンコート2層を得るもので、反射防止層を形成する低屈折率層と高屈折率層の界面が明瞭ではなく渾然一体としていると記載されている。そのため、干渉効果が不十分となるため、反射率、透明性の低下が予想され、第一課題の達成が難しい。
【0018】
特許文献5は、1回塗布乾燥硬化する工程で2つの異なる屈折率の異なる2層を形成するものであるが、本発明者らが確認した結果、この製造方法では本発明の構成を達成することができない。また、特許文献1から4のいずれにおいても、本発明の構造は着想に至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1)支持基材の少なくとも片面に、屈折率の異なる2層からなる積層膜を有する積層体であって、
積層膜を構成する2層が第1層と第2層とからなり、第1層、第2層、支持基材がこの順に積層され、
第1層は無機粒子Aを含み、無機粒子Aの数平均粒子径(D)が1nm以上40nm以下であり、無機粒子Aの数平均粒子径(D)と第1層の膜厚(T)の関係が、以下の条件を満たすことを特徴とする積層体。
【0020】
1.05≦(T/D)≦ 1.6
2)無機粒子Aによる第2層の表面の被覆率が90%以上であることを特徴とする、前記1)の積層体。
3)以下の(1)から(3)で定義される単位長さAと長さBの比B/Aが、1≦B/A≦ 1.15である、前記1)または2)の積層体。
【0021】
(1) 第1層と第2層とで形成される界面において、直線長さが500nm以上離れた任意の界面上の2点をA、Aする。
【0022】
(2) AとAを結ぶ直線の長さを単位長さAとする。
【0023】
(3) A1とA2間の第1層と第2層とで形成される界面に沿った長さを、長さBとする。
4)前記第2層が無機粒子Bを含み、無機粒子Bの数平均粒子径(D)と、無機粒子Aの数平均粒子径(D)との関係が、以下の条件を満たすことを特徴とする、1)から3)のいずれかの積層体。
【0024】
1≦(D/D)≦5
5)前記第1層の膜厚Tが、10nm以上50nm以下であることを特徴とする、1)から4)のいずれかの積層体。
6)前記無機粒子Aが、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子(これをフッ素処理無機粒子Aとする)であることを特徴とする、1)から5)のいずれかの積層体。
7)前記無機粒子Aの数平均粒子径(D)が、20nm以上25nm以下であることを特徴とする、1)から6)のいずれかの積層体。
8)前記1から7)のいずれかの積層体の第1層上に、導電性領域と非導電性領域からなる透明導電層を有することを特徴とする、透明導電性積層体。
9)一対の透明導電膜付基板が一定間隔をおいて対向配置されたタッチパネルであって、前記透明導電膜付基板の少なくとも一方が、8)の透明導電性積層体であり、該積層体の前記積層膜が他方の透明導電膜付基板に対向するように配設されてなることを特徴とするタッチパネル。
10)1)から7)のいずれかの積層体を製造する方法であって、前記支持基材の少なくとも片面上に、塗料組成物を1回のみ塗布することで屈折率の異なる2層からなる積層膜を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
11)前記積層体の製造方法において、支持基材の表面エネルギーが40mN/m以上で、JIS−B−0601(2001)に記載の表面粗さが40nm以下であることを特徴とする、10)の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、積層体上に透明導電層を形成して透明導電性積層体を形成した場合に、透明性、導電性が高く、透明導電層の密着が良く、透過光の着色が少なく、パターニングが強調されず、かつ製造工程が簡略化された積層体、透明導電性積層体、タッチパネル、および前記積層体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の好ましい積層体の1つの態様の概略断面図
図2図1の積層体の第1層と第2層との界面の形状
図3図1の積層体の概略表面図
図4】(T/D)が0.9よりも小さい積層体の1つの態様の概略断面図
図5図4の積層体の第1層と第2層との界面の形状
図6図4の積層体の概略表面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは上記課題を達成するため、支持基材の少なくとも片面に、屈折率の異なる2層からなる積層膜を有する積層体であり、該積層膜を構成する2層が、第1層と第2層とからなり、第1層、第2層、支持基材がこの順に積層された積層体において、第1層が無機粒子A、好ましくはフッ素化合物により表面処理された無機粒子Aを含み、無機粒子Aの数平均粒子径Dと第1層の膜厚Tの比(T/D)を特定の範囲にすることにより達成できることを見出した。
【0028】
これは上記施策にて、第1層に無機粒子Aを用いることによって透明導電層との密着性を確保し、無機粒子Aの数平均粒子径と第1層の膜厚の比(T/D)を特定の範囲にすることにより、平滑で面内均一な粒子を含む第1層を作成できる。
【0029】
また、上記構成を特許文献3に記載の反射防止フィルムの製造方法を応用して作成した場合に目的の効果が得られない理由は、第1層の完成膜厚が無機粒子Aの平均粒子径に近いため、乾燥時に粒子の配列に作用する横毛管力が、粒子と被塗布物(この場合には先に形成した第2層)の表面の間で生じる摩擦力による抵抗を受け、この結果、粒子の凝集、集積を生じ、面内均一な第1層を形成できないためと考えられる。
【0030】
これに対し、本発明の支持基材の少なくとも片面上に、塗料組成物を1回のみ塗布することで屈折率の異なる2層からなる積層膜を得る製造方法を用いると、第1層と第2層とを1回の塗布工程にて自発的に形成するため、被塗布物(この場合には支持基材)表面との間で生じる摩擦力が無機粒子Aに作用しないため、面内均一に配列させることができ、上記課題を解決できると考えている。さらにこの製造方法は1回の塗布工程にて2つの層が得られるため生産性が高く、本発明の第2課題も解決することができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
【0032】
図1に本発明の好ましい積層体の1つの態様を示す。本発明の積層体1は、支持基材2の少なくとも片面上に積層膜3が積層されている。積層膜3は、屈折率の異なる第1層4と第2層5とからなる。ここで積層膜3は、第1層と第2層との屈折率が異なりさえすれば限定されないが、好ましくは第1層4が第2層5よりも低い屈折率であることが好ましい。つまり第1層が低屈折率層であり、第2層が高屈折率層であることが好ましい。そして本発明の積層体は、第1層、第2層、支持基材がこの順に積層されていることが重要である。
【0033】
第1層4は無機粒子A6を含み、無機粒子Aの数平均粒子径(D)と第1層の膜厚(T)の関係が、式1の条件を満たすことが重要である。無機粒子Aの数平均粒子径(D)と第1層の膜厚(T)の関係は、式2の関係が好ましく、式3の関係がより好ましい。
【0034】
0.9≦(T/D)≦ 2.0 式1
1.0≦(T/D)≦ 1.8 式2
1.1≦(T/D)≦ 1.6 式3
/Dを0.9以上2.0以下とするためには、積層膜を形成するために用いる塗料組成物中の無機粒子Aの濃度、第1層の塗布膜厚、表面処理による無機粒子Aの表面状態の制御により達成可能である。さらに後述する本発明の積層体の製造方法を用い、塗料組成物中の無機粒子Aの濃度、1回塗布の塗布膜厚、表面処理による無機粒子Aの表面状態の制御することによって、より好ましいT/Dの範囲にすることができる。
【0035】
また、第1層の膜厚Tには好ましい範囲があり、10nm以上50nm以下が好ましく、10nm以上40nm以下がより好ましく、10nm以上30nm以下が特に好ましい。
【0036】
ここで無機粒子Aの数平均粒子径(D)、第1層の平均膜厚(T)はいずれも積層体の断面を透過電子顕微鏡(TEM)によって観察して得られる値であり、その測定方法は後述する。ここで数平均粒子径とはJISZ8819−2(2001)記載の個数基準算術平均長さ径を意味する。
【0037】
(T/D)が0.9よりも小さい積層体の1つの態様を図4に示す。この態様では第1層が部分的に途切れたり(11)、第2層が第1層に浸入したり(10)することにより、見かけ上、第1層の膜厚が薄くなっている。この場合には、第1層として、面内均一な低屈折率層を形成できないため、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターニングの視認性低下効果が得られなくなったり、透明導電層を均一に形成できなくなって抵抗率が上昇したり、塗膜の透明性が低下する。
【0038】
(T/D)が2.0よりも大きくなる態様では、第1層の膜厚(T)が厚いことに起因している場合には、後述の弊害が現れ、Dが小さいことに起因している場合には、第1層に占める粒子の割合が過大になった結果、屈折率が高くなり、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターニングの視認性低下効果が得られなくなる。
【0039】
また、第1層の膜厚Tが10nmよりも小さくなると第1層に面内均一な低屈折率層が形成しにくく、また干渉効果が低減し、また第1層の膜厚Tが50nmよりも大きくなっても干渉効果が不十分になり、いずれも透過光の着色低減効果や透明導電層のパターニングの視認性低下効果が得られにくくなる。
【0040】
また,無機粒子Aの数平均粒子径(D)は、1nm以上40nm以下が好ましい。積層体の第1層を面内均一にする上では、40nmよりも大きくなるのは避けたほうが好ましい。また、積層体の第1層を面内均一にする上では、小さい分には特に影響はないが、現実的に安定して得られる粒子の数平均粒子径は1〜5nm程度が下限である。
【0041】
さらに、優れた導電性と、優れた透明導電層のパターニングの視認性低下効果を得るためには、20nm以上25nm以下が特に好ましい。
【0042】
図3に、図1に対応した表面概念図(図1について、第1層側から見た図)を示す。無機粒子A8が、表面に緻密に存在して、第2層9をほぼ被覆している。本発明の積層体は、無機粒子Aによる第2層の表面の被覆率が90%以上であることが好ましい。無機粒子Aによる第2層の表面の被覆率は、95%以上がより好ましい。ここで、無機粒子Aによる第2層の表面の被覆率は、積層体の第1層側の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した画像において、無機粒子Aの占める面積の比率であり、具体的な測定方法は後述する。
【0043】
無機粒子Aによる第2層の表面の被覆率を90%以上にするには、積層膜を形成するために用いる塗料組成物中の無機粒子Aの濃度、第1層の塗布膜厚、表面処理による無機粒子Aの表面状態の制御により達成可能である。さらに後述する本発明の積層体の製造方法を用い、塗料組成物中の無機粒子Aの濃度、1回塗布の塗布膜厚、表面処理による無機粒子Aの表面状態の制御することによって、より好ましい無機粒子Aの被覆率範囲にすることができる。
【0044】
図6に、図4に対応した表面概念図(図4について、第1層側から見た図)を示す。図4の第1層が部分的に途切れたり、第2層が第1層に浸入したりしている部分が開口部として観察されるため、無機粒子Aによる第2層の表面の被覆率は90%に至らない。このときの第1層の膜厚は、後述する本発明で用いている測定方法では、第1層の塗膜が途切れた部分や第2層が浸入した部分の影響で見かけ上薄くなり、Tの値は小さくなる。
【0045】
また、第1層と第2層の間の界面の形態には好ましい形態があり、第1層と第2層の間の界面の構造を特性付けるため、図1に示す次の要領で単位長さAと長さBを定義する。
(1)第1層と第2層とで形成される界面において、直線長さが500nm以上離れた任意の界面上の2点をA、Aとする。
(2)AとAを結ぶ直線の長さを、単位長さAとする。
(3)AとA間の第1層と第2層とで形成される界面に沿った長さを、長さBとする。
【0046】
図2図1の第1層と第2層の界面付近の拡大図)に、図1に対応した単位長さAと長さBの関係を示す。この単位長さAと長さBの比は、1≦B/A≦1.15にあることが好ましく、1≦B/A≦1.10にあることがより好ましい。
【0047】
前記B/Aを1以上1.15以下の範囲にするためには、積層膜を形成するために用いる塗料組成物中の無機粒子Aの濃度、第1層の塗布膜厚、第2層の表面粗さの制御により達成可能である。さらに後述する本発明の積層体の製造方法を用い、塗料組成物中の無機粒子Aの濃度、1回塗布の塗布膜厚、表面処理による無機粒子Aの表面状態の制御することによって、より好ましいB/Aの範囲にすることができる。
【0048】
単位長さAと長さBの比B/Aは、単位長さの定義が直線なので最小値は1である。
【0049】
図5は、図4のケースにおける単位長さAと長さBの関係を示す図である。図5から見てとれるように、第2層が第1層に侵入している部分の長さが長くなる。このように、B/Aが1.15を越えると、屈折率調整機能が不十分になり、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターニングの視認性低下効果が得られにくくなる。
【0050】
また、詳しくは後述するが、本発明の積層体の積層膜は、第2層に無機粒子Bを含むことが好ましい。そして、 上記界面形状を達成するに当たり、第1層に存在する無機粒子A(図1の符号6)の数平均粒子径Dと、第2層に存在する無機粒子B(図1の符号7)の数平均粒子径Dの間比には好ましい範囲が存在し、式4の関係が好ましい。さらに式5の関係がより好ましく、式6の関係が特に好ましい。
1≦(D/D)≦5 式4
1≦(D/D)≦4 式5
1≦(D/D)≦3 式6
前記D/Dを1以上5以下にするためには、無機粒子A及び無機粒子Bの粒子径を制御することにより達成可能である。
【0051】
式4の範囲を外れると界面の形状が乱れ、屈折率調整機能が不十分になり、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターニングの視認性低下効果が得られなくなったり、表面の平滑性が失われることにより、透明導電層を均一に形成できなくなって抵抗率が上昇したりする。
【0052】
また、無機粒子Aは、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子(これをフッ素処理無機粒子Aとする)であることが好ましい。フッ素化合物A、およびフッ素処理無機粒子Aの詳細については後述する。
【0053】
無機粒子Aにフッ素処理無機粒子Aを用いることにより、第1層の屈折率を低減することができるため、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターニングの視認性低下効果がよりよく作用し、さらに第1層表面を平滑にすることができるため、第1層上に透明導電層を形成した場合に、導電性を高くすることができる。さらには、フッ素処理無機粒子Aを用いると、後述する積層膜を支持基材の少なくとも片面上に塗料組成物を1回のみ塗布することで2層を得る製造方法を用いる場合に、自発的な層構造の形成に好ましい。
【0054】
本発明の積層体の製造方法としては、支持基材の少なくとも片面上に、塗料組成物を1回のみ塗布することで、屈折率の異なる2層からなる積層膜を得る製造方法が好ましい。
【0055】
この製造方法においては、支持基材の表面エネルギーが40mN/m以上で、JIS−B−0601(2001)に記載の表面粗さが40nm以下であることが好ましい。表面エネルギーが40mN/mよりも小さくなったり、表面粗さが40nmよりも大きくなったりすると、自発的な層構造の形成が不十分になって、膜中で凝集したり、第2層が第1層に浸入するなどして、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターニングの視認性低下効果が得られなくなったり、透明導電層を均一に形成できなくなって抵抗率が上昇したり、塗膜の透明性が低下する。
【0056】
以下発明を要素毎に説明する。
【0057】
[積層体、積層膜]
本発明の対象物である積層体とは、支持基材の少なくとも片面に屈折率の異なる2層からなる積層膜が形成された部材を指し、支持基材がプラスチックフィルムの場合には、屈折率調整フィルムと呼ばれる。
【0058】
第1層と第2層の屈折率は、第1層の方が第2層よりも屈折率が低いことが好ましい。第1層と第2層の屈折率は後述の方法により測定が可能であり、その値には好ましい範囲が存在する。
【0059】
第1層の550nmにおける屈折率は1.45以下が好ましく、1.43以下がより好ましく、1.41以下が特に好ましい。第1層の屈折率は低いほど良いが、第1層上に後述する透明導電性層を形成する場合には、第1層を均一で平坦な層に形成する必要があるため、現実的には1.25程度が下限になる。
【0060】
第2層の550nmにおける屈折率は、1.58以上が好ましく、1.61以上がより好ましく、1.65以上が特に好ましい。第2層の屈折率は光の透過が確保できる範囲で高いほど好ましいが、現実的には2.4程度が上限となる。
【0061】
第1層の屈折率が1.45を超える、または第2層の屈折率が1.58より低くなる場合には、第1層上に透明導電層を積層した場合に、透過光の着色低減効果や透明導電層のパターニングの視認性低下効果が得られなくなる。
【0062】
第1層、第2層の屈折率は、後述する無機粒子A,無機粒子Bの粒子の種類、各層の粒子の含有量、粒子の表面修飾等により調整することが可能である。
【0063】
なお、このような本発明の積層体には、屈折率の異なる2層(第1層と第2層)の間には、明確な界面があることが好ましい。
【0064】
本発明における明確な界面とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより判断することができる界面を表し、後述する方法に従い判断することができる。
【0065】
また、積層体として良好な性質を示すには更に透明性が高いことが望ましい。透明性が低いと画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じやすくなるので、透明性は高いほうが好ましい。
【0066】
本発明の積層体の透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS−K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。積層体のヘイズ値としては好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.2%以下、更に好ましくは1.0%以下であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が2.0%以上であると、画像劣化が生じやすくなるので、ヘイズ値は小さいほうが好ましい。
【0067】
前記積層体がインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電層の屈折率調整材料として機能するには、積層体の第1層、第2層の厚みが特定の範囲であることが望ましい。第1層の厚みは、好ましくは10nm以上50nm以下、さらに好ましくは10nm以上40nm以下であり、特に好ましくは10nm以上30nm以下であることが望ましい。また第2層の厚みは、好ましくは10nm以上200nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下であり、特に好ましくは10nm以上80nm以下であることが望ましい。
【0068】
第1層の厚みが10nmに満たない、あるいは50nmを越える、もしくは第2層の厚みが10nmに満たない、あるいは200nmを越えると屈折率調節層としての機能が不十分で、透明電極層のパターニングを抑制するなどの効果が不十分である。
【0069】
[透明導電性積層体]
本発明の対象物である透明導電性積層体とは、支持基材上に、第2層、第1層、及び透明導電層をこの順に積層した構成、すなわち、前記積層体の第1層の上に透明導電層を積層した構成を有する。
【0070】
透明導電層としては、特に限定されないが、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物などが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物が好適である。
【0071】
透明導電性積層体は、導電性と光線透過率を上げるためにアニール処理をすることが好ましい。アニール処理は、真空または不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。なお、酸素雰囲気でアニールすると透明導電層が熱酸化され、導電性が低下(表面抵抗値の上昇)することがある。アニール温度は結晶性が向上する温度以上を必要とするが、一方で支持基材の観点からすれば低い温度である方が、熱収縮、シワ、カール、基材からのオリゴマーの析出、密着性の低下、着色などの観点から低いほど好ましいため、導電性、光線透過率が得られる範囲でできるだけ低い温度で行うことが好ましい。
【0072】
透明導電性積層体の表面抵抗値は、好ましくは50〜2000Ω/□、更に好ましくは100〜1500Ω/□とすることによって、透明導電性積層体としてタッチパネルなどに使用できる。表面抵抗値が50Ω/□未満であったり、2000Ω/□を超えたりする場合、タッチパネルの位置認識精度が悪くなりやすいので、表面抵抗値は上記の数値範囲内であることが好ましい。
【0073】
透明導電性積層体の透明導電層の膜厚は、4〜30nmの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜25nmである。透明導電層の膜厚が4nm未満の場合、連続した薄膜になりにくく、良好な導電性が得られにくくなる。一方、透明導電層の膜厚が30nmよりも厚い場合、透明導電性薄膜層をパターニングした際、透明導電層を有する部分と有しない部分の光学特性を近づけることが困難となる。
【0074】
[粒子]
本発明の積層体の積層膜は、少なくとも第1層が無機粒子(無機粒子A)を含むことが重要である。さらに、本発明の積層体の積層膜は、第1層及び第2層にそれぞれ無機粒子A、無機粒子Bを含むことが好ましい。なお、無機粒子Aと無機粒子Bの粒子の種類は異なることが好ましい。
【0075】
ここで無機粒子とは無機化合物による粒子を指し、何らかの表面処理がなされていても良い。
【0076】
また無機粒子の「種類」とは、粒子を構成する元素の種類によって決まる。(後述するフッ素処理粒子においては、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。)。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。無機粒子A,無機粒子Bの詳細については後述する。
【0077】
[塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法に好適に用いられる塗料組成物は、少なくとも無機粒子Aを含む塗料組成物であり、より好ましくは無機粒子Aと無機粒子Bを含む塗料組成物であり、より好ましくはフッ素処理無機粒子Aと無機粒子Bを含む塗料組成物である。本発明の製造方法では、塗料組成物を支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる積層膜を形成することが可能であり、それにより本発明の目的に適した積層体を形成することができる。
【0078】
[無機粒子A]
本発明の積層体の第1層に含まれる無機粒子Aに関して説明する。無機粒子Aは、Si,Na,K,Ca,MgおよびAlから選択される半金属元素、または金属元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物、フッ素化物が好ましく、シリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物類(NaF,KF,NaAlFなど)、およびアルカリ土類金属のフッ化物(CaF、MgFなど)がより好ましく、耐久性、屈折率、コストなどの点からシリカ粒子が特に好ましい。
【0079】
このシリカ粒子とは、ケイ素化合物又は有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含む粒子を指し、一般例としてSiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。無機粒子Aに好適な粒子の形状は、特に限定されないが、本発明の積層体の各層の屈折率や光学異方性の観点から球状粒子、もしくは中空の球状粒子が好ましい。
【0080】
また,無機粒子Aの数平均粒子径(D)は、1nm以上40nm以下が好ましい。積層体の第1層を面内均一にする上では,40nmよりも大きくなるのは避けた方が好ましい。また、積層体の第1層を面内均一にする上では、Dが小さい分には特に影響はないが、現実的に安定して得られる粒子の数平均粒子径は1〜5nm程度が下限である。
【0081】
さらに,優れた導電性と,優れた透明導電層のパターニングの視認性低下効果を得るためには、Dは20nm以上25nm以下が特に好ましい。
【0082】
次に本発明のより好ましい形態のフッ素処理無機粒子Aを得るための表面処理について説明する。前述の粒子、特にシリカなどの無機粒子Aに対するフッ素表面処理とは、無機粒子Aを化学的に修飾して、無機粒子Aにフッ素化合物Aを導入する工程を指し、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階でフッ素化合物Aを用いても良いし、一つの段階のみでフッ素化合物Aを用いても良い。ここで導入とは、フッ素化合物Aが、無機粒子の表面に化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)している状態を指す。
【0083】
このフッ素化合物Aは、次の一般式(II)で表される化合物である。
【0084】
フッ素化合物A: R−R−R 一般式(II)
ここで、Rは、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、及びフルオロオキシアルカンジイル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基を有する。
【0085】
は、反応性部位。
【0086】
は、炭素数1から6のアルキレン基又はそれらから導出されるエステル構造。
【0087】
、R、Rは、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
【0088】
ここで、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基とは、アルキル基、オキシアルキル基、アルケニル基、アルカンジイル基、オキシアルカンジイル基が持つ水素の一部、あるいは全てがフッ素に置き換わった置換基であり、いずれも主にフッ素原子と炭素原子から構成される置換基であり、構造中に分岐があってもよく、これらの部位が複数連結したダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー構造を形成していてもよい。
【0089】
フッ素化合物Aは、より好ましくは、次の一般式(II−2)であらわされる化合物である。
【0090】
フッ素化合物A: R−O−R42−R 一般式(II−2)
ここで、R42は、炭素数1から6のアルキレン基を示す。
【0091】
反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位をさす。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる、反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
【0092】
このフッ素化合物Aを導入する処理法の一つは、このフッ素化合物Aとして、前記一般式(II)にて、Rがアルコキシシリル基、シリルエーテル基、シリルエーテル基になったフルオロアルコキシシラン化合物を少なくとも1種類以上と、無機粒子A、もしくは無機粒子Aの粒子分散物と溶媒、触媒等とを共に撹拌、場合によっては加熱、または脱アルコール処理をし、無機粒子A表面の水酸基と縮合させることにより成される方法である。
【0093】
ここでいう無機粒子Aの粒子分散物とは、前記無機粒子Aが溶媒中に分散された状態のものを指し、ゾル、サスペンジョン、スラリー、コロイド溶液ともよばれることもあり、無機粒子、溶媒のほかに、分散剤、界面活性剤、表面処理剤等、安定化剤等を含んでもよい。粒子を微細に分散した状態で扱う観点から、分散物の状態で表面処理を行うことが好ましい。
【0094】
この場合のフッ素化合物Aの具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリイソシアネートシラン、2−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、2−パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、2−パーフルオロオクチルイソシアネートシラン等が挙げられる。
【0095】
フッ素化合物Aによる無機粒子Aの処理の別の方法には、無機粒子A、もしくは無機粒子Aの粒子分散物を化合物Dにて処理し、次いでフッ素化合物Aとつなぎ合わせる方法がある。
【0096】
この化合物Dは、分子内にフッ素は無いが、フッ素化合物Aと反応可能な反応性部位と、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位を少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を指す。化合物Dにおける無機粒子と反応可能な部位としては、反応性の観点からアルコキシシリル基、シリルエーテル基、及びシラノール基であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
【0097】
この方法は具体的には、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)などの無機粒子Aを、下記一般式(III)で示される化合物Dと前述の一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理するものであり、より好ましくは、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)などの無機粒子Aを、下記一般式(III)で示される化合物Dで処理し、次いで前述の一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理するものである。
【0098】
化合物D: R−R−SiRn2(OR3−n2 一般式(III)
は、反応性部位を示す。
【0099】
は、炭素数1から6のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示す。
【0100】
、Rは、水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、n2は0から2の整数を示す。
【0101】
、R、R、Rは、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。
【0102】
化合物Dは、より好ましくは、次の一般式(III−2)であらわされる化合物である。
【0103】
化合物D: R−O−R62−SiRn2(OR3−n2 一般式(III−2)
ここで、R62は、炭素数1から6のアルキレン基を示す。
【0104】
上記一般式中の特に好ましい形態は、一般式(II)(または(II−2))のRと一般式(III)(または(III−2))のRで表される反応性部位が、反応性二重結合基の態様である。
【0105】
反応性二重結合基とは、光または熱などのエネルギーをうけて発生したラジカルなどにより化学反応する官能基であり、具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。つまり、反応性二重結合とは、反応性部位の一部である。
【0106】
この化合物Dの具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
【0107】
また、この場合のフッ素化合物Aの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリアクリロイル−ヘプタデカフルオロノネニル−ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0108】
分子中にフルオロアルキル基Rを有さない一般式(III)や(III−2)で表される化合物Dを用いることにより、簡便な反応条件で中空シリカなどの無機粒子A表面を修飾することが可能となるばかりではなく、シリカ粒子表面に反応性を制御しやすい官能基を導入することが可能となり、その結果、反応性二重結合基及びフルオロアルキル基Rを有するフッ素化合物Aを、シリカ粒子などの無機粒子A表面で反応させることが可能になる。
【0109】
[無機粒子B、および処理無機粒子B]
本発明の積層体の第2層は、少なくとも1種類以上の無機粒子を含むことが好ましく、第2層が有する無機粒子を無機粒子Bとする。無機粒子Bは、無機粒子Aとは異なる種類の無機粒子が好ましい。無機粒子Bは特に限定されないが、金属元素、半金属元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物であることが好ましく、Ga、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素Bの酸化物粒子であることがさらに好ましい。
【0110】
また無機粒子Bは、無機粒子Aよりも屈折率が高いことが好ましい。無機粒子Bは、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、およびインジウムスズ酸化物から選ばれる少なくとも一つ、あるいはこれらの間の固溶体、および一部元素を置換、または一部元素が格子間に侵入、一部元素が欠損した固溶体、またはこれら無機化合物粒子が接合した粒子である。無機粒子Bは、特に好ましくはリン含有酸化スズ(PTO)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)や酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)である。
【0111】
無機粒子Bの屈折率は、好ましくは1.55〜2.80、より好ましくは1.58〜2.50である。無機粒子Bの屈折率が1.55よりも小さくなると、得られる積層体に形成された第2層の屈折率が低下し、無機粒子Aを含む第1層との屈折率差が小さくなるため、透過光の着色抑制効果や、透明導電層のパターニング抑制効果が不十分になり、無機粒子Bの屈折率が2.80よりも大きくなると、第1層上に形成される透明導電層との屈折率差、及び第2層と支持基材との屈折率差が上昇するため、同様に透過光の着色抑制効果や、透明導電層のパターニング抑制効果が不十分になる。
【0112】
さらに本発明の積層体において、無機粒子Aがシリカ粒子の場合は、無機粒子Bが該シリカ粒子よりも屈折率が高いことが特に好ましく、このような屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が20nm以下で、かつ屈折率が1.60から2.80の無機化合物が好ましく用いられる。そのような無機化合物Bの具体例としては、アンチモン酸化物、アンチモン含有酸化亜鉛、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、及び/または酸化チタン(TiO)が挙げられ、特に屈折率が高い酸化チタン、酸化ジルコニウムがより好ましい。
【0113】
〔塗料組成物のバインダー原料〕
本発明の積層体の積層膜は、1種類以上のバインダーを含むことが好ましい。そのため本発明の積層体の好適な製造方法において用いられる塗料組成物は、1種類以上のバインダー原料を含むことが好ましい。ここで本発明において、塗料組成物中に含まれるバインダーを「バインダー原料」、積層体の積層膜中に含まれるバインダーを「バインダー」と表すが、バインダーとしては、バインダー原料がそのままバインダーとして存在する場合もある(つまり、塗料組成物のバインダー原料が、そのままの形で積層膜中のバインダーとして存在する態様も含む。)。
【0114】
バインダー原料としては特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー原料であることが好ましく、バインダー原料は一種類であっても良いし、二種類以上を混合して用いても良い。また無機粒子を膜中に保持する観点より、分子中にアルコキシシランやアルコキシシランの加水分解物や反応性二重結合を有しているバインダー原料であることが好ましい。
【0115】
このようなバインダー原料として、成分中に多官能アクリレートを用いるのが好ましく、代表的なものを以下に例示する。1分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名”デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名”UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0116】
[有機溶媒]
本発明の積層体の製造方法に用いる塗料組成物は、前述の無機粒子、バインダー原料に加えて、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒を含むことにより、塗布時に適度な流動性を与え、また粒子の運動性を確保できるため積層膜の自発的な層形成が容易となり、良好な特性を発現できるため好ましい。
【0117】
有機溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が250℃以下の溶媒が好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類、含フッ素化合物類等が用いられる。これらは、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0118】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、イソブタノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。芳香族類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0119】
[塗料組成物のその他成分]
本発明の製造方法に用いる塗料組成物としては、更に重合開始剤や硬化剤を含むことが好ましい。重合開始剤及び硬化剤は、表面処理無機粒子とバインダー原料との反応を促進したり、バインダー間の反応を促進したりするために用いられる。
【0120】
該重合開始剤、硬化剤は種々のものを使用できる。また、複数の重合開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0121】
なお、該重合開始剤、硬化剤、触媒の含有割合は、塗料組成物中のバインダー成分量100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
【0122】
その他として、本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させても良い。
【0123】
[塗料組成物中の各成分の含有量]
本発明の製造方法に用いる塗料組成物は、無機粒子A/(無機粒子Bを含む他の無機粒子)(質量比率)が、1/30〜1/1であることが好ましい。無機粒子A/(無機粒子Bを含む他の無機粒子)=1/30〜1/1とすることで、得られる積層体の第1層の厚みと第2層の厚みの比を一定にすることができる。このため1回の塗布で第1層と第2層の厚みを同時に必要な厚みとすることが容易であるため好ましい。
【0124】
無機粒子A/(無機粒子Bを含む他の無機粒子)(質量比率)として、1/29〜1/5、さらに好ましくは1/26〜1/10、特に好ましくは1/23〜1/15である。
【0125】
また好ましくは、塗料組成物100質量%において、(フッ素処理無機粒子Aを含む)全ての無機粒子(ここでいう全ての無機粒子には、フッ素化合物Aによる表面処理によって、フッ素処理無機粒子A中の無機粒子と結合したフッ素化合物Aなど有機化合物も含めたフッ素処理無機粒子A全体の質量も含める。)の合計が0.2質量%以上40質量%以下、有機溶媒を40質量%以上98質量%以下、バインダー、開始剤、硬化剤、及び触媒などのその他の成分を0.1質量%以上20質量%以下を含む態様であり、より好ましくは、(フッ素処理無機粒子Aを含む)全ての無機粒子の合計が1質量%以上35質量%以下、有機溶媒を50質量%以上97質量%以下、その他の成分を1質量%以上15質量%以下含む態様である。
【0126】
さらに好ましい態様としては、2種類以上の無機粒子が金属酸化物粒子とフッ素処理シリカ粒子であり、これらの合計が本発明の塗料組成物100質量%において2質量%以上30質量%以下、有機溶媒が60質量%以上95質量%以下、その他の成分が2質量%以上10質量%以下の態様である。
【0127】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法としては、支持基材の少なくとも片面に、塗料組成物を1回のみ塗布することによりして、屈折率の異なる2層からなる積層膜を形成する方法であることが望ましい。この製造方法は、塗布工程で2つの層を形成できるため経済性の面で好ましい。
【0128】
ここで、支持基材の少なくとも片面に塗料組成物を1回のみ塗布するとは、支持基材に対して1回の塗布工程にて1種類の塗料組成物からなる1層の液膜を形成することを指し、1回の塗布工程にて複数層からなる液膜を同時に1回塗布する多層同時塗布や、1回の塗布時に1層の液膜を複数回の塗布、乾燥工程を有する連続逐次塗布、1回の塗布時に1層の液膜を複数回塗布し、次いで乾燥する、ウェットオンウェット塗布などを行わないことを指す。
【0129】
まず、本発明の塗料組成物を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許2681294号明細書参照)などにより支持基材上に塗布する。
【0130】
これらの塗布方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗布方法として好ましい。グラビアコート法は本発明の積層膜のような塗布量の少ない塗料組成物を均一な膜厚で塗布することに優れており、グラビアコート法の中でもダイレクトグラビア法で、グラビアロール直径の小さい小径グラビアロールを用いることが、メニスカス部の安定性確保の面からより好ましい。
【0131】
またダイコート法は、屈折率調整層のような塗布量の少ない場合には、ビード背圧の印加など工夫を要するが、前計量方式のためコーティングダイへの供給液量にて膜厚の制御が可能であり、また、原理的に塗料組成物の滞留部、蒸発部がないため、塗料組成物の安定性の面からも優れている。
【0132】
次いで、支持基材上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去する事に加え、自発的に層構造を形成させるために液膜中での粒子の運動を促進するという観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥初期においては0.1g/(m.s)以上1.4g/(m.s)以下の範囲の乾燥速度が得られるならば、特に特定の風速、温度に限定されない。
【0133】
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向で乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましく、さらに恒率乾燥期間においては、幅方向で均一な乾燥速度を達成するため、対流伝熱による乾燥の場合には、制御可能な風速を維持しつつ、乾燥時の総括物質移動係数を下げることが可能な方法として、支持基材に対して平行で、基材の搬送方向に対して平行、あるいは垂直な方向に熱風を送風する方式が望ましい。
【0134】
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の積層膜に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
【0135】
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3000mW/cm、好ましくは200〜2000mW/cm、さらに好ましくは300〜1500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3000mJ/cm、好ましく200〜2000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0136】
硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。
【0137】
[透明導電性積層体の製造方法]
本発明の透明導電性積層体は、前記積層体の第1層上に透明導電層を形成して得られる。透明導電層の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0138】
本発明の透明導電性積層体は、タッチパネルに好適に適用できる。本発明の透明導電性積層体を含むタッチパネルは、例えば、一対の透明導電膜付基板が一定間隔をおいて対向配置されたタッチパネルであって、前記透明導電膜付基板の少なくとも一方が、本発明の透明導電性積層体であり、該積層体の前記積層膜が他方の透明導電膜付基板に対向するように配設されてなることを特徴とするタッチパネルである。
【実施例】
【0139】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0140】
[第2層構成成分の調製]
[第2層構成成分No.(1)の調製]
下記材料を混合し、第2層構成成分No.(1)を得た。
二酸化チタン粒子イソプロピルアルコール分散物 8.2質量部
(ELCOM 日揮触媒化成株式会社製: 固形分30質量%、数平均粒子径 8nm)
バインダー原料 1.1質量部
(PET−30: 日本化薬株式会社製 固形分100質量%)
2−プロパノール 90.7質量部。
【0141】
[第2層構成成分No.(2)の調製]
下記材料を混合し、第2層構成成分No.(2)を得た。
酸化ジルコニウム粒子メチルエチルケトン分散物 8.2質量部
(株式会社ソーラー製 固形分30質量%、数平均粒子径 15nm)
バインダー原料 1.1質量部
(PET−30: 日本化薬株式会社 固形分100質量%)
2−プロパノール 90.7質量部。
【0142】
[第2層構成成分No.(3)の調製]
下記材料を混合し、第2層構成成分No.(3)を得た。
酸化ジルコニウム粒子メチルイソブチルケトン分散物 8.2質量部
(CIKナノテック株式会社製 固形分30質量%、数平均粒子径 40nm)
バインダー原料 1.1質量部
(PET−30: 日本化薬株式会社 固形分100質量%)
2−プロパノール 90.7質量部。
【0143】
[第2層構成成分No.(4)の調製]
下記材料を混合し、第2層構成成分No.(4)を得た。
酸化ジルコニウム粒子メチルイソブチルケトン分散物 8.2質量部
(CIKナノテック株式会社製 固形分30質量%、数平均粒子径 20nm)
バインダー原料 1.1質量部
(PET−30: 日本化薬株式会社 固形分100質量%)
2−プロパノール 90.7質量部。
【0144】
[第1層構成成分の調製]
[第1層構成成分No.(1)の調製]
イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製コロイダルシリカゾル(PL−2L IPA):固形分濃度30質量%、数平均粒子径18nm )15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、HC=CH−COO−CH−(CFF 1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の第1層構成成分No.(1)とした。
【0145】
[第1層構成成分No.(2)の調製]
前記第1層構成成分No.(1)に対し、イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカを、中空シリカイソプロピルアルコール分散物(日揮触媒化成株式会社製中空シリカ:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 40nm)に変えた以外は同様にして、第1層構成成分No.(2)を得た。
【0146】
[第1層構成成分No.(3)の調製]
前記第1層構成成分No.(1)に対し、イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカを、中空シリカイソプロピルアルコール分散物(日揮触媒化成株式会社製中空シリカ:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 60nm)に変えた以外は同様にして、第1層構成成分No.(3)を得た。
【0147】
[第1層構成成分No.(4)の調製]
前記第1層構成成分No.(1)に対し、イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカの種類(日産化学工業株式会社製 コロイダルシリカ IPA−ST:固形分濃度30質量%、数平均粒子径 12.5nm)に変えた以外は同様にして、第1層構成成分No.(4)を得た。
【0148】
[第1層構成成分No.(5)の調製]
前記第1層構成成分No.(1)に対し、イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカを、フッ化マグネシウムイソプロピルアルコール分散物(CIKナノテック株式会社製:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 20nm)に変えた以外は同様にして、第1層構成成分No.(5)を得た。
【0149】
[第1層構成成分No.(6)の調製]
中空シリカイソプロピルアルコール分散物(日揮触媒化成株式会社製中空シリカ:固形分濃度20質量%、数平均粒子径 40nm)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで90℃にて1時間加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の第1層構成成分No.(6)とした。
【0150】
[第1層構成成分No.(7)の調製]
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで90℃にて1時間加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分3.5質量%の第1層構成成分No.(7)とした。
【0151】
[第1層構成成分No.(8)の調製]
前記第1層構成成分No.(1)に対し、イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカの種類を変更(日産化学工業株式会社製 イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(IPA−ST−MA):固形分濃度30質量%、数平均粒子径 25nm)した以外は同様にして、第1層構成成分No.(8)を得た。
【0152】
[第1層構成成分No.(9)の調製]
前記第1層構成成分No.(1)に対し、イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカの種類を変更(扶桑化学工業株式会社製 イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(PL−3L IPA):固形分濃度30質量%、数平均粒子径 35nm)した以外は同様にして、第1層構成成分No.(9)を得た。
【0153】
[第1層構成成分No.(10)の調製]
前記第1層構成成分No.(1)に対し、IPAイソプロピルアルコール分散コロイダルシリカの種類を変更(日揮触媒化成株式会社製 イソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ:固形分濃度30質量%、数平均粒子径 30nm)した以外は同様にして、第1層構成成分No.(10)を得た。
【0154】
[ハードコート組成物の調製]
[ハードコート組成物No.1の調製]
下記材料を混合しハードコート組成物No.1を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部。
【0155】
[ハードコート組成物No.2の調製]
下記材料を混合しハードコート組成物No.2を得た。
ハードコート塗料組成物 50.0質量部
(XAFF−201 DHマテリアル株式会社製)
メチルイソブチルケトン 50.0質量部。
【0156】
[ハードコート組成物No.3の調製]
下記材料を混合しハードコート組成物No.3を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 5質量部
(ELCOM TO−1024SIV 日揮触媒化成株式会社
30質量% 数平均粒子径:45nm)
イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部。
【0157】
[ハードコート組成物No.4の調製]
下記材料を混合しハードコート組成物No.4を得た。
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30.0質量部
コロイダルシリカ粒子分散物 20質量部
(ELCOM TO−1025SIV 日揮触媒化成株式会社
30質量% 数平均粒子径:120nm)
イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社製) 1.5質量部
メチルイソブチルケトン 73.5質量部。
【0158】
[塗料組成物の調整]
[塗料組成物No.1の調製]
下記材料を混合し塗料組成物No.1を得た。
第1層構成成分No.(1) 13質量部
第2層構成成分No.(1) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 46.3質量部。
【0159】
[塗料組成物No.2]
塗料組成物No.1に対し、第2層構成成分No.(1)を第2層構成成分No.(2)に置き換えた以外は同様にして、塗料組成物No.2を得た。
【0160】
[塗料組成物No.3]
下記材料を混合し塗料組成物No.3を得た。
第1層構成成分No.(2) 20質量部
第2層構成成分No.(1) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 39.3質量部。
【0161】
[塗料組成物No.4]
下記材料を混合し塗料組成物No.4を得た。
第1層構成成分No.(3) 30質量部
第2層構成成分No.(1) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 29.3質量部。
【0162】
[塗料組成物No.5]
塗料組成物No.1に対し、第1層構成成分No.(1)を第1層構成成分No.(4)に置き換えた以外は同様にして、塗料組成物No.5を得た。
【0163】
[塗料組成物No.6]
下記材料を混合し塗料組成物No.6を得た。
第1層構成成分No.(2) 22質量部
第2層構成成分No.(2) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 37.3質量部。
【0164】
[塗料組成物No.7]
下記材料を混合し塗料組成物No.7を得た。
第1層構成成分No.(5) 17質量部
第2層構成成分No.(1) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 42.3質量部。
【0165】
[塗料組成物No.8]
下記材料を混合し塗料組成物No.8を得た。
第2層構成成分No.(1) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 60質量部。
【0166】
[塗料組成物No.9]
下記材料を混合し塗料組成物No.9を得た。
第1層構成成分No.(2) 19質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 70.3質量部。
【0167】
[塗料組成物No.10]
塗料組成物No.9に対し、第1層構成成分No.(2)を第1層構成成分No.(6)に置き換えた以外は同様にして、塗料組成物No.10を得た。
【0168】
[塗料組成物No.11]
下記材料を混合し塗料組成物No.11を得た。
第1層構成成分No.(2) 17質量部
第2層構成成分No.(1) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 42.3質量部。
【0169】
[塗料組成物No.12]
下記材料を混合し塗料組成物No.12を得た。
第1層構成成分No.(4) 29質量部
第2層構成成分No.(1) 29質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 31.3質量部。
【0170】
[塗料組成物No.13]
下記材料を混合し塗料組成物No.13を得た。
第1層構成成分No.(7) 13質量部
第2層構成成分No.(1) 29質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 47.3質量部。
【0171】
[塗料組成物No.14]
下記材料を混合し塗料組成物No.14を得た。
第1層構成成分No.(8) 22質量部
第2層構成成分No.(1) 45質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 22.5質量部。
【0172】
[塗料組成物No.15]
下記材料を混合し塗料組成物No.15を得た。
第1層構成成分No.(8) 21質量部
第2層構成成分No.(1) 43質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 25.8質量部。
【0173】
[塗料組成物No.16]
下記材料を混合し塗料組成物No.16を得た。
第1層構成成分No.(8) 18質量部
第2層構成成分No.(1) 38質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 33.3質量部。
【0174】
[塗料組成物No.17]
下記材料を混合し塗料組成物No.17を得た。
第1層構成成分No.(8) 14質量部
第2層構成成分No.(1) 36質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 38.8質量部。
【0175】
[塗料組成物No.18]
下記材料を混合し塗料組成物No.18を得た。
第1層構成成分No.(8) 12質量部
第2層構成成分No.(1) 29質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 48.4質量部。
【0176】
[塗料組成物No.19]
下記材料を混合し塗料組成物No.19を得た。
第1層構成成分No.(5) 20質量部
第2層構成成分No.(1) 38質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 32質量部。
【0177】
[塗料組成物No.20]
下記材料を混合し塗料組成物No.20を得た。
第1層構成成分No.(5) 14質量部
第2層構成成分No.(1) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 45.1質量部。
【0178】
[塗料組成物No.21]
下記材料を混合し塗料組成物No.21を得た。
第1層構成成分No.(5) 11質量部
第2層構成成分No.(1) 26質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 51.7質量部。
【0179】
[塗料組成物No.22]
下記材料を混合し塗料組成物No.22を得た。
第1層構成成分No.(8) 11質量部
第2層構成成分No.(1) 26質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 51.7質量部。
【0180】
[塗料組成物No.23]
下記材料を混合し塗料組成物No.23を得た。
第1層構成成分No.(4) 8 質量部
第2層構成成分No.(1) 17質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 64.6質量部。
【0181】
[塗料組成物No.24]
下記材料を混合し塗料組成物No.24を得た。
第1層構成成分No.(9) 22質量部
第2層構成成分No.(1) 42質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 25.2質量部。
【0182】
[塗料組成物No.25]
下記材料を混合し塗料組成物No.25を得た。
第1層構成成分No.(10) 27質量部
第2層構成成分No.(1) 58質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 4.4質量部。
【0183】
[塗料組成物No.26]
下記材料を混合し塗料組成物No.26を得た。
第1層構成成分No.(10) 19質量部
第2層構成成分No.(1) 40質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 30.9質量部。
【0184】
[塗料組成物No.27]
下記材料を混合し塗料組成物No.27を得た。
第1層構成成分No.(5) 10質量部
第2層構成成分No.(3) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 49.0質量部。
【0185】
[塗料組成物No.28]
下記材料を混合し塗料組成物No.28を得た。
第1層構成成分No.(10) 10質量部
第2層構成成分No.(3) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 49.0質量部。
【0186】
[塗料組成物No.29]
下記材料を混合し塗料組成物No.29を得た。
第1層構成成分No.(5) 10質量部
第2層構成成分No.(4) 30質量部
エチレングリコールモノブチルエーテル 10質量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 0.7質量部
2−プロパノール 49.0質量部。 [支持基材の作成]
以下、支持基材の作成方法を示す。各サンプルの構成については、表1にまとめる。
【0187】
[支持基材No.1〜3の作成]
支持基材No.1〜3として、PET("PET"は"ポリエチレンテレフタレート"を示す)樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗布されている易接着PETフィルムU48、U46、U34(東レ株式会社製)をそれぞれ用いた。
【0188】
[支持基材No.4の作成]
支持基材1の易接着塗料が塗布されている面上に、前述のハードコート組成物No.1をバーコーター(#10)を用いて塗布後、下記に示す乾燥を行った。
【0189】
熱風温度 70℃
熱風風速 3m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 1.5分間
次いで160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させ、これを支持基材4とした。
【0190】
[支持基材No.5、6および7の作成]
前記支持基材No.4の製造方法に対して、ハードコート組成物No.1の代わりにハードコート組成物No.2、3および4を用いた以外は同様にして、支持基材No.5、6および7を作成した。
【0191】
[支持基材の評価]
本発明の製造方法にて用いる支持基材について、積層膜を塗布する面の表面粗さと表面エネルギーの評価を実施し、得られた結果を表に示す。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた
[支持基材の表面粗さRa(nm)]
表面粗さ計(SURFCORDER ET4000A:(株)小坂研究所製)を用い、JIS−B−0601(2001)に基づき、下記測定条件にて測定を行った。Ra(表面粗さ)とは、測定される断面曲線から、カットオフ値λの高域フィルタによって長波長成分を遮断して得られた輪郭曲線(粗さ曲線)を求め、その曲線の基準長さにおける高さ(平均線から測定曲線までの距離)の絶対値の平均値のことである。
【0192】
なお測定は、支持基材の積層膜を形成する側の面について行った。
<測定条件>
測定速度 :0.1mm/S
評価長さ :10mm
カットオフ値λ:0.1mm
フィルタ:ガウシアンフィルタ低域カット。
【0193】
[支持基材の表面自由エネルギー]
支持基材の積層膜を塗布する面の表面自由エネルギーは、水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの接触角を協和界面科学製自動接触角計DM−501を用いて測定し、その平均値を用いて同装置付属の解析ソフトソフト「FAMAS」を用いて算出した。算出原理はOwensの方法(J.Appl.Polym.Sci.,13,1741(1969)に基づくものである。測定は各サンプルについて4点行った。
【0194】
[実施例1]
[積層体の作成方法(塗布回数1回)]
支持基材として前記支持基材1を用いた。この支持基材の易接着塗料が塗布されている面上に、塗料組成物No.1をバーコーター(#6)で塗布後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
【0195】
第一段階
熱風温度 50℃
熱風風速 1.5m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 0.5分間
第二段階
熱風温度 100℃
熱風風速 5m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 1分間
なお、熱風の風速は吹き出し部に設置された差圧計による測定値から換算した。
【0196】
乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させ、積層体を得た。
【0197】
[実施例2〜21参考例1〜2、参考例5〜10、比較例1〜4]
表1−1、1−2に示す支持基材と塗料組成物の組み合わせを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例21、参考例1〜2、参考例5〜10、比較例1〜4の積層体を作成した。
【0198】
参考例3および] [積層体の作成方法(塗布回数2回)]
支持基材として、表1−1に記載の支持基材を用いた。
【0199】
<1回目の塗布>
この支持基材の易接着塗料が塗布されている面上に、表1−1に記載の塗料組成物をバーコーター(#6)で塗布後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
【0200】
第一段階
熱風温度 50℃
熱風風速 1.5m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 0.5分間
第二段階
熱風温度 100℃
熱風風速 5m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 1分間
なお、熱風の風速は吹き出し部に設置された差圧計による測定値から換算した。
【0201】
乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させた。
【0202】
<2回目の塗布>
上記塗料組成物を硬化させた後、当該硬化物の上に、表1−1に記載の塗料組成物をバーコーター(#6)で塗布後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
【0203】
第一段階
熱風温度 50℃
熱風風速 1.5m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 0.5分間
第二段階
熱風温度 100℃
熱風風速 5m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 1分間
なお、熱風の風速は吹き出し部に設置された差圧計による測定値から換算した。
【0204】
乾燥後、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させて、積層体を得た。
【0205】
[積層体の評価]
作製した積層体について次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表に示す。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
【0206】
また、透明導電性積層体の全光線透過率、透明導電性積層体の表面抵抗値、透明導電層の密着性、透明導電性積層体のカラーb値、パターニングの視認性の評価においては、下記の要領で積層体の第1層上に透明導電層を形成し、次いでパターニング処理を行ったサンプルにて行った。
【0207】
[透明導電層の形成]
前記積層体の第1層上にインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄膜を成膜した。このとき、スパッタリング前の圧力を0.0001Paとし、ターゲットとして酸化スズを36質量%含有した酸化インジウム(住友金属鉱山株式会社製、密度6.9g/cm)に用いて、2W/cmのDC電力を印加した。また、Arガスを130sccm、Oガスを表面抵抗値が最小となる流速で流し、0.4Paの雰囲気下でDCマグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した。ただし、通常のDCではなく、アーク放電を防止するために、日本イーエヌアイ製RPG−100を用いて5μs幅のパルスを50kHz周期で印加した。また、センターロール温度は10℃として、スパッタリングを行った。
【0208】
また、雰囲気の酸素分圧をスパッタプロセスモニター(LEYBOLD INFICON社製、XPR2)にて常時観測しながら、インジウム−スズ複合酸化物薄膜中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量計及びDC電源にフィートバックした。
【0209】
スパッタリング後、真空度0.01Pa以下、温度160℃の条件下で10分間アニールを行い厚さ30nm、屈折率1.96のインジウム−スズ複合酸化物からなる導電層を堆積させて透明導電性積層体を作成した。
【0210】
[透明導電性積層体の透明導電層のパターニング]
前記透明導電性積層体にエッチングレジストを印刷した後、1N塩酸中に浸漬、次いでアルカリ浸漬により、1×3cmのパターンを形成した。
【0211】
[第1層、第2層の屈折率]
第1層、第2層の個々の屈折率は、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名[FE−3000])により、300〜800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用い、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、550nmにおける屈折率を求めた。
【0212】
屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(数式1)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C、C、C)を計算し、550nmにおける屈折率を測定した。
【0213】
【数1】
【0214】
[第1層と第2層とで形成される界面の状態]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、積層膜中の第1層と第2層とで形成される界面の有無を判断した。界面の有無の判断は以下の方法に従い判断した。
【0215】
積層膜の超薄切片に対し、TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整した。さらに界面が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。 このとき1つの層と他の層との間に明確な境界を引くことができる場合を、明確な界面があるとみなし、A、Bを合格とした。
明確な境界を引くことができる場合 「A」
明確な境界を引くことができるが、やや乱れがある場合。 「B」
明確な境界を引くことができない場合 「C」
[第1層と第2層の厚み(T,T)]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の第1層と第2層の厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。積層膜の断面の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて各層の厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して平均値とした。
【0216】
この30点の層の厚みの測定箇所はランダムに設定するため、選択した部分が図4の符号10の部分のように第2層が浸透したために第1層が存在しない場合には、第1層の厚みがないので厚みをゼロとして扱い、図4の符号11の部分のように第1層が欠損して薄くなっている場合にはその部分の実際の第1層の厚みを測定し、それらを集計して平均化することで反映した。
【0217】
[B/Aの算出]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、前述の方法で区別した界面に対し、画像処理ソフトにより単位長さA、長さBを求め、その比B/Aを求めた。
【0218】
具体的には次の手順で行った。積層膜の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整し、さらに2種類の粒子が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。次いで、第1層と第2層とで形成される界面上に、直線距離が500nm以上になるように2点(A、A)を決め、その2点を結ぶ直線長さ(単位長さA)を求めた。
【0219】
次いで、この2点(A、A)、の間の第1層と第2層とで形成される界面に沿った長さを、object検出モードにて、閾値の調節によって界面を検出させ、その境界線の長さを計測することにより、長さBを求めた。これらの結果から得られた単位長さA、長さBから、B/Aを求めた。
【0220】
[数平均粒子径(D、D)]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、[第1層と第2層とで形成される界面の状態]に記載の方法で区別した第1層、第2層に対し、同画像から第1層に含まれる粒子100個について、その外径を画像処理ソフトによって計測し、その値をJISZ8819−2(2001)記載の個数基準算術平均長さ径に基づいて平均化することでDを求め、第2層についても同様にしてDを求めた。
【0221】
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
【0222】
[無機粒子Aによる第2層の被覆率]
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて表面を観察することにより、前述の定義に基づき無機粒子Aによる第2層の被覆率を求めた。具体的には、画面中に粒子が100個以上観測される条件で倍率を設定し、ソフトウェア(画像処理ソフトEasyAccess)にて、撮影した画像のホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整し、さらに2種類の粒子が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。次いで同画像を2値化した後、ヒストグラムから第2層に該当する部分の画素数を求め、これを総画素数で除することにより、無機粒子Aによる第2層の被覆率を求めた。
【0223】
[積層体の透明性]
透明性はヘイズ値を測定することにより判定した。測定はJIS−K7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製ヘイズメーターを用いて、積層体サンプルの支持基材とは反対側(積層膜側)から光を透過するように装置に置いて測定を行い、ヘイズ値が1.2%以下を合格とした。
【0224】
[透明導電性積層体の全光線透過率]
JIS−K7136(2000)に準拠し、日本電色工業(株)製、NDH−1001DPを用いて、透明導電性積層体の透明導電層のある部分の全光線透過率(%)を測定し、1.5%以下を合格とした。
【0225】
[透明導電性積層体の表面抵抗値]
JIS−K7194(1994)に準拠し、4端子法にて表面抵抗値を測定した。測定器は、ダイアインスツルメンツ製ロレスタ−EPを用いた。
【0226】
[透明導電層の密着性]
常態下(23℃、相対湿度65%)で、透明導電層を有する面に1cmのクロスカットを100個入れ、ニチバン株式会社製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、透明導電層の残存した個数により3段階評価(A:81個〜100個、B:61個〜80個、C:0個〜60個)した。AとBを密着性合格とした。
【0227】
[透明導電性積層体のカラーb値]
透明導電層のある部分と透明導電層のない部分のカラーb値を、JIS−K7105(1981)に準拠した色差計(日本電色工業製、ZE−2000)を用いて、標準の光C/2にて、それぞれ測定し、透明導電層のある部分のカラーb値をb、透明導電層のない部分のカラーb値をbとし、bとbの差が1.0以下を合格とした。
【0228】
[パターニングの視認性]
透明導電層側に、屈折率1.52のアクリル系粘着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして貼り合わせた。富士通社製FMV−BIBLOLOOX T70M/Tを用いて画面を白色表示にし、保護フィルムを貼り合わせたフィルムをその前に置いて、様々な角度からパターニングの見え方を評価し、下記の判断基準でAA、AおよびBを合格とした。
【0229】
AA: パターニングが見えない
A: パターニングがほとんどみえない。
【0230】
B: パターニングが少しみえるが、気にならない。
【0231】
C: パターニングが強くみえて、気になる。
【0232】
表2−1、2−2に積層体の評価結果を、表3に透明導電性積層体の評価結果をまとめた。
【0233】
評価項目において1項目でも合格とならないものについて、課題未達成と判断した。
【0234】
表2−1、2−2、3に示すように本発明の実施例は、本発明が解決しようとする第一、第二課題の両方を達成している。
【0235】
該積層体の第2層の厚みが、本発明の好ましい範囲より厚く、B/Aの値が大きく、DA/DBの値が大きい参考例1の積層体、およびそれを用いた透明導電性積層体では、表面抵抗値と密着性、透過光の着色抑制(カラーb値)、視認性がやや劣るが許容できる範囲であった。
【0236】
参考例9および実施例21は、該積層体のDA/DBの値が本発明の好ましい範囲より小さい例である。そして、参考例9実施例21の積層体およびそれを用いた透明導電性積層体は、表面抵抗値、密着性、透過光の着色抑制(カラーb値)および視認性にやや劣るが許容できる範囲のものであった。
【0237】
該積層体の製造方法が本発明の好ましい方法とは異なる参考例3の積層体、およびそれを用いた透明導電性積層体では、積層体の透明性、透明導電性積層体の全光線透過率、表面抵抗値と密着性、透過光の着色抑制(カラーb値)、視認性がやや劣るが許容できる範囲であった。
該積層体の無機粒子Aがフッ素表面処理粒子ではなく、製造方法が本発明の好ましい方法とは異なる参考例4の積層体、およびそれを用いた透明導電性積層体では、積層体の透明性、透明導電性積層体の全光線透過率、表面抵抗値と密着性、透過光の着色抑制(カラーb値)、視認性がやや劣るが許容できる範囲であった。
該積層体の製造方法において、支持基材の表面エネルギーが本発明の好ましい範囲とは異なる実施例の積層体、およびそれを用いた透明導電性積層体では、積層体の透明性、透明導電性積層体の全光線透過率、表面抵抗値と密着性、透過光の着色抑制(カラーb値)、視認性がやや劣るが許容できる範囲であった。
該積層体の製造方法において、支持基材の表面粗さが本発明の好ましい範囲とは異なる実施例の積層体、およびそれを用いた透明導電性積層体では、積層体の透明性、透明導電性積層体の全光線透過率、表面抵抗値と密着性、透過光の着色抑制(カラーb値)、視認性がやや劣るが許容できる範囲であった。
【0238】
【表1-1】
【0239】
【表1-2】
【0240】
【表1-3】
【0241】
【表2-1】
【0242】
【表2-2】
【0243】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0244】
本発明は、透明性、導電性が高く、透明導電層の密着が良く、透過光の着色が少なく、パターニングが強調されず、かつ製造工程が簡略化された積層体、透明導電性積層体、タッチパネル、および前記積層体の製造方法に関する。本発明にかかる積層体、透明導電性積層体またはタッチパネルは、静電容量式のタッチパネル用途に特に好ましく供せられる。また、かかる静電容量式のタッチパネルは、好ましくは、携帯電話や携帯音楽端末などの各種モバイル機器に搭載される。
【符号の説明】
【0245】
1 積層体
2 支持基材
3 積層膜
4 第1層
5、9 第2層
6、8、14 無機粒子A
7 無機粒子B
10、12 第2層の第1層への浸入部
11、13 第1層の途切れている部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6