特許第6020186号(P6020186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020186
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ステアリングコラム用支持装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20161020BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B62D1/19
   B62D5/04
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-6139(P2013-6139)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-136500(P2014-136500A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真下 正芳
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲朗
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2012/141233(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2013/073053(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2013/069340(JP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0014606(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0182409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/19
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のカプセルを介し、二次衝突に伴って加わる衝撃荷重に基づいて前方への離脱を可能として、車体に支持されるコラム側ブラケットと、このコラム側ブラケットに支持されたステアリングコラムとを備え、
前記コラム側ブラケットは、前記両カプセルを介して前記車体に支持する為の取付板部と、それぞれこの取付板部の下面の幅方向に離隔した部分から垂下された1対の保持板部とを備え、この取付板部の幅方向両端寄り部分に、それぞれこの取付板部の後端縁に開口する切り欠きを形成したものであり、
前記両カプセルは前記両切り欠きの内側部分に、前記二次衝突時に加わる衝撃荷重により、これら両切り欠きの内側部分から抜け出し可能に保持されたもので、それぞれ上下方向に貫通する取付孔を有し、この取付孔を挿通した固定用杆状部材により前記車体に対し支持固定されるものであり、
前記ステアリングコラムは、前記両保持板部同士の間に保持されている
ステアリングコラム用支持装置に於いて、
前記取付板部の上面と前記車体の下面との間に設置されて、二次衝突時にも前方に変位する事のないガイドプレートを備え、このガイドプレートは、幅方向両端部に設けられた、それぞれが前記両カプセルの上面と前記車体との間に挟持された状態でこの車体に対し支持固定される1対の固定板部と、これら両固定板部のうちで前記両カプセルの取付孔に整合する部分に形成された、前記固定用杆状部材を挿通可能な通孔と、前記両固定板部のうちの少なくとも一方の固定板部の前端縁から下方に折れ曲がった折り曲げ係止部とを備え、
前記両通孔と前記両取付孔とを整合させて前記ガイドプレートと前記コラム側ブラケットとを組み合わせた状態で、前記係止部が前記両カプセルのうちの少なくとも一方のカプセルの前端縁に係合する事を特徴する
ステアリングコラム用支持装置。
【請求項2】
前記ガイドプレートの幅方向中央部に形成された、前記ステアリングコラムの軸方向に長いガイド長孔と、
前記コラム側ブラケットの幅方向中央部上面に、この上面から突出する状態で設けられて、前記ガイド長孔に、このガイド長孔に沿った変位を可能に係合したガイド杆と、
このガイド杆の上端部で前記ガイドプレートの上面から突出した部分に係止された状態で、このガイド杆が前記ガイド長孔から抜け出るのを阻止する抜け止め部材とを備え、
前記折り曲げ係止部を前記両カプセルのうちの少なくとも一方のカプセルの前端縁に係合させた状態で、前記ガイド杆が前記ガイド長孔の後端部に位置し、前記ガイドプレートと前記コラム側ブラケットとが前後方向に相対変位するのを阻止する、請求項1に記載したステアリングコラム用支持装置。
【請求項3】
前記両固定板部の前端縁にそれぞれ前記折り曲げ係止部を設け、これら両折り曲げ係止部に前記両カプセルの前端縁を押圧する弾性を付与する事により、前記ガイド杆若しくはこのガイド杆に外嵌した部材の外周面を前記ガイド長孔の後端部内周縁に弾性的に当接させた、請求項2に記載したステアリングコラム用支持装置。
【請求項4】
前記ガイド杆が、少なくとも上端部に雄ねじ部を設けた、ボルト若しくはスタッドであり、前記抜け止め部材がこの雄ねじ部に螺合したナットである、請求項2〜3のうちの何れか1項に記載したステアリングコラム用支持装置。
【請求項5】
前記ガイド杆に、外径が前記ガイド長孔の幅寸法以下であり、内径がこのガイド杆の外径以上であり、上端部にこのガイド長孔の幅寸法よりも大きな鍔部を設けたガイドスリーブを外嵌し、このガイドスリーブの上端面を前記ナットにより抑え付けている、請求項4に記載したステアリングコラム用支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衝突事故の際に運転者の身体からステアリングホイールに加わった衝撃エネルギを吸収しつつ、このステアリングホイールの前方への変位を可能とすべく、ステアリングコラムを車体に対し前方への変位を可能に支持する為のステアリングコラム用支持装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ステアリング装置は、図9に示す様に構成する事により、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きして、前車輪に舵角を付与する様にしている。前記ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定されており、このステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持されている。又、前記ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続し、この中間シャフト8の前端部を、別の自在継手9を介して、前記入力軸3に接続している。尚、前記中間シャフト8は、トルクを伝達可能に、且つ、衝撃荷重により全長を収縮可能に構成している。そして、衝突事故の際(次述する一次衝突の際)に、前記ステアリングギヤユニット2の後方への変位に拘らず、前記ステアリングシャフト5を介して前記ステアリングホイール1が後方に向けて変位する(運転者の身体に向けて突き上げられる)事を防止できる様に構成している。尚、図示の例では、電動式パワーステアリング装置を構成する為に、前記ステアリングコラム6の前端部を、減速機やトルクセンサ等を収納したハウジング10に結合固定している。又、このハウジング10に、補助操舵力の動力源となる、電動モータ11を支持固定している。
【0003】
上述の様な自動車用ステアリング装置は、衝突事故の際に、衝撃エネルギを吸収しつつ、ステアリングホイール1を前方に変位させる構造にする事が、運転者の保護の為には必要である。即ち、衝突事故の際には、自動車が他の自動車等にぶつかる一次衝突に続いて、運転者の身体が前記ステアリングホイール1に衝突する二次衝突が発生する。この二次衝突の際に、運転者の身体に加わる衝撃を緩和して、運転者の保護を図る為に、前記ステアリングホイール1を支持したステアリングコラム6を車体に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への変位を可能に支持する事が、従来から広く実施されている。
【0004】
又、衝突事故後にもステアリング装置の機能を保持すべく、二次衝突に伴ってステアリングコラムが前方に変位した場合にも、車体に対するこのステアリングコラムの支持力が完全に喪失するのを防止する構造も、従来から各種知られている。例えば、特許文献1には、図10に示す様な、ステアリングコラム用支持装置の構造が記載されている。この図10に示した構造では、車体側に支持固定する車体側ブラケット12に、前方が開口した係止切り欠き13を形成している。そして、この係止切り欠き13の奥端部(後端部)に係止カプセル14を、それぞれが合成樹脂製である複数本のピンにより、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への脱落を可能に組み付けている。更に、この係止カプセル14の下面にコラム側ブラケット15を、複数組のボルト・ナットにより結合固定し、このコラム側ブラケット15に、ステアリングコラム6aを支持している。
【0005】
二次衝突時には、ステアリングホイール1(図9参照)からステアリングシャフト5a、前記ステアリングコラム6aを介して前記コラム側ブラケット15に、前方に向いた衝撃荷重が加わる。すると、このコラム側ブラケット15を支持している、前記係止カプセル14と前記車体側ブラケット12との間に掛け渡した前記各ピンが裂断し、この係止カプセル14が、前記係止切り欠き13に沿って前方に移動する。これにより、前記ステアリングホイール1に衝突した運転者の身体に加わる衝撃を緩和する。
【0006】
上述の図10に示した従来構造は、二次衝突の進行に伴って前記ステアリングコラム6aを、前記係止切り欠き13に沿って前方に変位させられるので、運転者の保護充実の面から有利である。又、ステアリング装置を車体に組み付ける以前の状態でも、前記車体側ブラケット12及び前記コラム側ブラケット15を含む構成各部材を、正規の位置関係に保持したまま、不用意に分離しない様にできる。この為、車体に対してステアリング装置を組み付ける作業の容易化を図る面からも有利である。
但し、前記従来構造の場合には、前記コラム側ブラケット15を前記車体側ブラケット12に対し、幅方向中央部の1箇所のみで支持している為、前記ステアリングコラム6aの支持剛性、特に幅方向の支持剛性を確保する面からは不利になる。
【0007】
ステアリングコラムの幅方向に関する支持剛性を確保する為には、特許文献2、3に記載された構造の様に、車体に対してコラム側ブラケットを、ステアリングコラムを幅方向両側から挟む2箇所位置で支持する事が好ましい。但し、前記特許文献2、3に記載された従来構造の場合には、ステアリング装置を車体に組み付ける以前の状態で構成各部材を正規の位置関係に保持したままにする機能が十分でないだけでなく、二次衝突の進行に伴ってステアリングコラムを正しく前方に案内する機能を備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−101731号公報
【特許文献2】特開2003−170837号公報
【特許文献3】特開2011−084133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ステアリング装置を車体に組み付ける以前の状態で、構成各部材を正規の位置関係に保持し易く、更に必要に応じて、二次衝突の進行に伴ってステアリングコラムを正しく前方に案内する事ができるステアリングコラム用支持装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のステアリングコラム用支持装置は、ガイドプレートに設けた固定板部の前端縁から下方に曲げ形成した折り曲げ係止部と、コラム側ブラケットに装着したカプセルの前端縁との係合により、前記ガイドプレートとこのコラム側ブラケットとの位置決めを図れる様にしている。
【0011】
具体的には、本発明のステアリングコラム用支持装置は、コラム側ブラケットとステアリングコラムとを備える。
このうちのコラム側ブラケットは、1対のカプセルを介し、二次衝突に伴って加わる衝撃荷重に基づいて前方への離脱を可能として、車体に支持される。この為に前記コラム側ブラケットは、前記両カプセルを介して前記車体に支持する為の取付板部と、それぞれこの取付板部の下面の幅方向に離隔した部分から垂下された1対の保持板部とを備える。そして、この取付板部の幅方向両端寄り部分に、それぞれこの取付板部の後端縁に開口する切り欠きを形成している。
又、前記両カプセルは前記両切り欠きの内側部分に、前記二次衝突時に加わる衝撃荷重により、これら両切り欠きの内側部分から抜け出し可能に保持されたもので、それぞれ上下方向に貫通する取付孔を有する。そして、この取付孔を挿通した固定用杆状部材により、前記車体に対し支持固定される。
又、前記ステアリングコラムは、前記両保持板部同士の間に保持された状態で、前記コラム側ブラケットに支持されている。
【0012】
特に、本発明のステアリングコラム用支持装置に於いては、前記取付板部の上面と前記車体の下面との間に設置されて、二次衝突時にも前方に変位する事のないガイドプレートを備える。
このガイドプレートは、1対の固定板部と、1対の通孔と、少なくとも1個の折り曲げ係止部とを備える。このうちの両固定板部は、前記ガイドプレートの幅方向両端部に設けられており、それぞれが前記両カプセルの上面と前記車体との間に挟持された状態でこの車体に対し支持固定される。又、前記両通孔は、前記両固定板部のうちで前記両カプセルの取付孔に整合する部分に形成されたもので、前記固定用杆状部材を挿通可能である。更に、前記折り曲げ係止部は、前記両固定板部のうちの少なくとも一方の固定板部の前端縁から下方に折れ曲がっている。
そして、前記両通孔と前記両取付孔とを整合させて前記ガイドプレートと前記コラム側ブラケットとを組み合わせた状態で、前記折り曲げ係止部が前記両カプセルのうちの少なくとも一方のカプセルの前端縁に係合する。そして、前記ガイドプレートが前記コラム側ブラケットに対し後方に相対変位するのを阻止する。
【0013】
この様な本発明のステアリングコラム用支持装置を実施する場合に、より具体的には、請求項2に記載した発明の様に、ガイド長孔と、ガイド杆と、抜け止め部材とを備える。
このうちのガイド長孔は、前記ガイドプレートの幅方向中央部に形成されたもので、前記ステアリングコラムの軸方向に長い。
又、前記ガイド杆は、前記コラム側ブラケットの幅方向中央部上面に、この上面から突出する状態で設けられたもので、前記ガイド長孔に、このガイド長孔に沿った変位を可能に係合している。
又、前記抜け止め部材は、前記ガイド杆の上端部で前記ガイドプレートの上面から突出した部分に係止された状態で、このガイド杆が前記ガイド長孔から抜け出るのを阻止する。
そして、前記折り曲げ係止部を前記両カプセルのうちの少なくとも一方のカプセルの前端縁に係合させた状態で、前記ガイド杆が前記ガイド長孔の後端部に位置し、前記ガイドプレートと前記コラム側ブラケットとが前後方向に相対変位するのを阻止する。
【0014】
この様な請求項2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記両固定板部の前端縁にそれぞれ前記折り曲げ係止部を設ける。そして、これら両折り曲げ係止部に前記両カプセルの前端縁を押圧する弾性を付与する事により、前記ガイド杆の外周面を前記ガイド長孔の後端部内周縁に弾性的に当接させる。
【0015】
又、上述の様な請求項2〜3に記載した発明を実施する場合に、より具体的には、例えば請求項4に記載した発明の様に、前記ガイド杆を、少なくとも上端部に雄ねじ部を設けた、ボルト若しくはスタッドとする。そして、前記抜け止め部材を、この雄ねじ部に螺合したナットとする。
更に、この様な請求項4に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記ガイド杆に、外径が前記ガイド長孔の幅寸法以下であり、内径がこのガイド杆の外径以上であり、上端部にこのガイド長孔の幅寸法よりも大きな鍔部を設けたガイドスリーブを外嵌する。そして、このガイドスリーブの上端面を前記ナットにより抑え付ける。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に構成する本発明のステアリングコラム用支持装置によれば、ステアリング装置を車体に組み付ける以前の状態で、構成各部材を正規の位置関係に保持し易い。
即ち、ガイドプレートとコラム側ブラケットとを組み合わせ、このうちのガイドプレートに設けた1対の通孔と、同じくコラム側ブラケットに装着した1対のカプセルに形成した取付孔とを整合させた状態で、前記ガイドプレートに形成した折り曲げ係止部とこのカプセルの前端縁との係合に基づいて、このガイドプレートが前記コラム側ブラケットに対して後方に相対変位する事がなくなる。従って、構成各部材を正規の位置関係に保持し易くなる。
【0017】
更に、請求項2に記載した発明の場合には、ガイド長孔にガイド杆を係合させると共に、抜け止め部材によりこのガイド杆がこのガイド長孔から抜け出ない様に、しかも、このガイド杆をこのガイド長孔の後端部に位置させているので、前記構成各部材を非分離に、しかも前後左右位置を規制した状態に保持できる。且つ、二次衝突の進行に伴ってステアリングコラムを正しく前方に案内する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態の第1例を、ガイドプレートとコラム側ブラケットとを組み合わせた状態で右後上方から見た斜視図。
図2図1のA−A断面図。
図3図2のB部拡大図。
図4図1のC−C断面図。
図5】ガイドプレートとコラム側ブラケットとを組み合わせる以前の状態で、図1と同方向から見た斜視図。
図6】ガイドプレートとコラム側ブラケットとを取り出して組み合わせる以前の状態で、図1と同方向から見た斜視図。
図7】ガイドプレートを取り出して図1と同方向から見た斜視図。
図8】二次衝突後の状態を示す、図1と同様の図。
図9】従来から知られているステアリング装置の1例を示す、部分切断側面図。
図10】従来から知られているステアリングコラム用支持装置の具体的構造の1例を、左後上方から見た状態で示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜8は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の構造は、ステアリングホイール1(図9参照)の上下位置を調節する為のチルト機構と、同じく前後位置を調節する為のテレスコピック機構との両方を備えた、チルト・テレスコピック式ステアリング装置に本発明を適用した場合に就いて示している。このうちのテレスコピック機構を構成する為に、ステアリングコラム6bとして、前側のインナコラム16の後部を後側のアウタコラム17の前部に内嵌して全長を伸縮可能とした、テレスコープ状のものを使用している。そして、前記ステアリングコラム6bの内径側にステアリングシャフト5bを、回転自在に支持している。
【0020】
このステアリングシャフト5bは、前側に配置した円杆状のインナシャフトの後部に設けた雄スプライン部と、後側に配置した円管状のアウタシャフト18の前部に設けた雌スプライン部とをスプライン係合させる事により、トルクの伝達を可能に、且つ、伸縮を可能に構成している。前記アウタシャフト18は、後端部を前記アウタコラム17の後端開口よりも後方に突出させた状態でこのアウタコラム17の内径側に、単列深溝型の玉軸受等、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支承可能な軸受により、回転のみ自在に支持している。前記ステアリングホイール1は、前記アウタシャフト18の後端部に支持固定する。このステアリングホイール1の前後位置を調節する際には、このアウタシャフト18と共に前記アウタコラム17が前後方向に変位し、前記ステアリングシャフト5b及び前記ステアリングコラム6bが伸縮する。
【0021】
又、このステアリングコラム6b(を構成する前記インナコラム16)の前端部に、電動式パワーステアリング装置を構成する減速機等を収納する為のハウジング10aを、結合固定している。このハウジング10aの上面には、前記電動式パワーステアリング装置の補助動力源となる電動モータ11aを支持固定している。そして、前記チルト機構を構成する為に、前記ハウジング10aを車体に対し、横軸を中心とする揺動変位を可能に支持する。この為に本例の場合には、前記ハウジング10aの上部前端に支持筒19を、左右方向に設けている。そして、この支持筒19の中心孔に挿通したボルト等の横軸により、前記ステアリングコラム6bの前端部を前記車体に対し、このステアリングコラム6bの後部を昇降させる方向の揺動変位を可能に支持する。
【0022】
又、前記ステアリングコラム6bの中間部乃至後部を構成する、前記アウタコラム17の前半部の内径を、弾性的に拡縮可能としている。この為に、このアウタコラム17の前部下面にスリット20を、軸方向に形成している。このスリット20の前端部は、このアウタコラム17の前端縁、又は、このアウタコラム17の前端寄り部分の上端部を除いた部分に形成した周方向透孔(前記特許文献1の図2中の符号54参照)に開口させている。又、前記スリット20を幅方向両側から挟む部分に、それぞれが厚肉平板状の1対の被支持板部21、21を設けている。これら両被支持板部21、21が、前記ステアリングホイール1の位置調節時に、前記アウタコラム17と共に変位する、変位側ブラケットとして機能する。
【0023】
そして、前記両被支持板部21、21をコラム側ブラケット15aに対し、上下位置及び前後位置の調節を可能に支持している。このコラム側ブラケット15aは、通常時には車体に対し支持されているが、衝突事故の際には、二次衝突の衝撃に基づいて、前方に離脱し、前記アウタコラム17の前方への変位を許容する様にしている。この為に、前記コラム側ブラケット15aを、左右1対のカプセル22、22とガイドプレート39とを介して車体23に対し、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、前方への離脱を可能に支持している。
【0024】
前記両カプセル22、22は、前記コラム側ブラケット15aを構成する取付板部24の幅方向両端部に形成した1対の切り欠き25、25に対し、前記衝撃荷重により後方に抜け出し可能に係止している。前記コラム側ブラケット15aは、鋼板等の十分な強度及び剛性を有する金属板に曲げ加工、打ち抜き加工を含むプレス加工を施した複数(図示の例では3枚)の部材を溶接により接合して成るもので、前記取付板部24の下面中央寄り部分に1対の保持板部26、26を、幅方向に互いに間隔を開けた状態で垂下している。前記両切り欠き25、25は、前記取付板部24のうちで、前記両保持板部26、26よりも幅方向両端寄り部分に、それぞれこの取付板部24の後端縁に開口する状態で形成している。そして、前記両カプセル22、22を前記両切り欠き25、25の内側に、これら両カプセル22、22の両側縁に形成した溝部で前記取付板部24の一部を上下両側から挟持する状態で装着し、更に、合成樹脂やアルミニウム合金等の破断し易い軟質材により造られた複数本のピンにより、前記両切り欠き25、25からの抜け止めを図っている。これら各ピンは、二次衝突時の衝撃荷重により裂断し、前記両カプセル22、22が前記両切り欠き25、25から抜け出るのを許容する。尚、これら両カプセル22、22を前記両切り欠き25、25に係止する部分の構造に就いては、従来から周知であるから、詳しい図示並びに説明は省略する。
【0025】
又、前記取付板部24の幅方向中央部は、前記両切り欠き25、25を形成した両端部よりも上方に向けオフセットしており、幅方向中央部の前寄り部分に、ガイド杆であるボルト27を突設している。そして、このボルト27を、前記ガイドプレート39の幅方向中央部に形成した、前記アウタコラム17の軸方向に長いガイド長孔28に、このガイド長孔28に沿った変位を可能に係合させている。前記ガイドプレート39は、後部の幅方向両端部に、前記両カプセル22、22の上面と前記車体23の下面との間に挟持した状態でこの車体23に対し支持固定する為の、1対の固定板部29、29を設けている。そして、これら両固定板部29、29に、それぞれ前記両カプセル22、22を前記車体23に支持固定する為の固定用杆状部材であるスタッド30、30を挿通可能な通孔31、31を形成している。
【0026】
又、前記ガイドプレート39の幅方向中央部は、前記取付板部24の幅方向中央部と干渉しない様に、前記両固定板部29、29よりも上方に向けオフセットすると共に、これら両固定板部29、29よりも前方に延びている。即ち、前記ガイドプレート12の幅方向中央部に、前後方向寸法が長いガイド板部32を設け、このガイド板部32の幅方向中央部に、前記ガイド長孔28を形成している。尚、このガイド板部32の前端縁部に、上方に向け折れ曲がった曲げ起こし部33を形成して、このガイド板部32の幅方向に関する曲げ剛性を確保している。
【0027】
即ち、本例の場合には、図2に示す様に、前記両カプセル22、22を前記車体23に対し、前記ガイドプレート39の後端左右両端部に設けた前記両固定板部29、29を挟持する状態で固定する。従って、前記ガイドプレート39に要求される強度及び剛性は、前記従来構造の車体側ブラケット12の場合程は大きくない。この為に本例の場合には、前記ガイドプレート39を、例えば厚さが0.2〜2mm程度の、ステンレスのばね鋼により造っている。但し、前記ガイド板部32には、二次衝突の際に前記ボルト27を安定して案内すると共に、二次衝突後にも前記ステアリングコラム6bが過度に下降しない様にする為に、或る程度の剛性が必要になる。そこで、前記ガイド板部32の断面形状を屈曲させて、このガイド板部32の前後方向の曲げ剛性を確保すると共に、前記曲げ起こし部33により、前記ガイド板部32の幅方向の曲げ剛性を確保している。
【0028】
前記ボルト27を前記ガイド長孔28に、このガイド長孔28に沿った変位を可能に係合させる為に本例の場合には、前記ボルト27に、ガイドスリーブ34を外嵌している。このガイドスリーブ34は、金属又は合成樹脂製で、円筒部35と鍔部36とから成る。このうちの円筒部35の外径は、前記ガイド長孔28の幅寸法以下であり、同じく内径はこの前記ボルト27の外径以上である。又、前記円筒部35のうちで前記鍔部36よりも下側部分の軸方向寸法は前記ガイドプレート39の厚さ寸法以上、若しくはこの厚さよりも大きい。更に、前記ガイド板部32の下面の形状及び寸法は、前記取付板部24の上面中央部の形状及び寸法よりも少し大きい。従って、前記ガイド板部32の下面と前記取付板部24の上面中央部との間には隙間が介在する。この隙間の存在に基づき、二次衝突時に前記取付板部24が、前記ガイドプレート39の下側で、前方に向け円滑に変位する。尚、図示の例では、前記ガイド長孔28の幅寸法を、通常時に前記ガイドスリーブ34が存在する後端部で狭く、中間部乃至前端部でこの後端部よりも僅かに広くしている。従って、前記円筒部35は前記ガイド長孔28の後端部に、幅方向のがたつきなく係合する。これに対して、二次衝突時には前記ガイドスリーブ34が前記ガイド長孔28に沿って前方に、円滑に変位する。
【0029】
又、前記鍔部36は、前記円筒部35の上端部に設けられており、前記ガイド長孔28の幅寸法よりも大きな外径を有する。この様な前記ガイドスリーブ34と、前記コラム側ブラケット15aの上面に突設したボルト27とを組み合わせるには、このボルト27を前記ガイド長孔28に下方から挿通した状態で、前記ガイドスリーブ34をこのボルト27に、前記鍔部36を上にした状態で外嵌する。又、このガイドスリーブ34の円筒部35を、前記ガイド長孔28に係合させる。そして、このガイドスリーブ34よりも上方に突出した、前記ボルト27の上端部に、抜け止め部材であるナット37を螺合し更に締め付けて、このナットにより前記ガイドスリーブ34の上端面を抑え付ける。
【0030】
又、前記両固定板部29、29の前端縁の幅方向中央部に、下方に向け折れ曲がった折り曲げ係止部38、38を形成している。これら両折り曲げ係止部38、38は、前記両固定板部29、29に対し90度よりも少し大きく(例えば100〜130度程度)折り曲げて、先端縁部に、後方に向いた弾性を持たせている。図1に示した、ステアリングコラム用支持装置の構成各部材の組み立て状態で、前記両折り曲げ係止部38、38の先端縁は、前記両カプセル22、22の前端面に弾性的に当接する。又、前記ボルト27は前記ガイド長孔28の後端部に位置し、このボルト27に外嵌した前記ガイドスリーブ34の円筒部35の外周面(後側面)は、このガイド長孔28の後端部内周面に当接する。即ち、前記組み立て状態で、前記ガイドプレート39が前記コラム側ブラケット15aに対し後方に変位する事は、前記両折り曲げ係止部38、38と前記カプセル22、22の前端縁との係合により阻止される。又、同じく前方に変位する事は、前記ガイドスリーブ34の円筒部35と前記ガイド長孔28との係合により阻止される。更に、前記ガイドプレート39と前記コラム側ブラケット15aとが分離する事は、このガイドプレート39の上面と前記ガイドスリーブ34の鍔部36の下面との係合により阻止される。この結果、ステアリングコラム用支持装置の構成各部材を非分離に、しかも前後位置を規制した状態に保持できる。又、これら構成各部材の幅方向(左右方向)の位置決めは、前記ガイド長孔28と前記ガイドスリーブ34との係合により図られる。
【0031】
前記ステアリングコラム6bは、上述の様にして前記ガイドプレート39と組み合わされた、前記コラム側ブラケット15aを構成する1対の保持板部26、26同士の間に、上下位置及び前後位置の調節を可能に保持している。このうちの上下位置を調節する為に、前記両保持板部26、26の互いに整合する位置に、前記支持筒19を中心とする部分円弧状の、上下方向長孔40、40を形成している。又、前記両被挟持板部21、21の互いに整合する位置に、前記アウタコラム17の軸方向に長い、前後方向長孔41、41を形成している。そして、これら各長孔40、41に調節ロッド42を挿通すると共に、この調節ロッド42の両端部に設けたアンカ部と押圧部との間隔を、調節レバー43の操作により拡縮可能としている。これらアンカ部と押圧部との間隔を拡げた状態で前記ステアリングホイール1の上下前後位置を、前記調節ロッド42が前記各長孔40、41内で変位できる範囲内で調節可能になる。又、前記アンカ部と前記押圧部との間隔を縮めた状態で前記ステアリングホイール1の上下前後位置を、調節後の位置に保持できる。又、前記調節ロッド42及び前記調節レバー43を装着した状態で、前記ステアリングコラム6bは前記コラム側ブラケット15aに対して、不用意に分離しない状態で保持される。尚、上述の様にステアリングホイール1の上下前後位置を調節する為の、チルト・テレスコピック機構に就いては、従来から各種知られており、又、本発明の要旨でもないので、詳しい図示並びに説明は省略する。
【0032】
上述の様な本例のステアリングコラム用支持装置によれば、前述した様に、前記車体23に対する組み付け以前の状態でも、前記ガイドプレート39と前記コラム側ブラケット15aとを、非分離に、且つ前後左右方向の位置関係を規制された状態で組み合せた状態にできる。特に、前記車体23に対してステアリング装置を組み付けるべく、前記両スタッド30、30を挿通する為、前記両固定板部29、29に形成した通孔31、31と、前記両カプセル22、22の中央部に形成した取付孔44、44とが整合したままの状態となる。この為、前記両スタッド30、30をこれら各孔31、44に挿通する作業を行い易く、前記車体23に対する前記ステアリング装置を組み付け作業を容易に行える。
【0033】
二次衝突の際には、前記ステアリングコラム6bから前記コラム側ブラケット15に加わる、前方に向いた衝撃荷重に基づいて、このコラム側ブラケット15が前方に変位する傾向になる。すると、前記両固定板部29、29と前記両カプセル22、22とを結合しているピンが裂断し、これら両カプセル22、22が前記両切り欠き25、25から後方に抜け出る。尚、実際には、これら両カプセル22、22が従前の位置に止まったまま、前記両切り欠き25、25を設けた前記コラム側ブラケット15が、図1に示した状態から図8に示した状態にまで、前方に変位する。この変位は、このコラム側ブラケット15の上面に設けた、前記ガイドスリーブ34と、車体側に固定された、前記ガイドプレート39のガイド長孔28との係合に基づき、前記ステアリングコラム6bの軸方向に行われる。従って、二次衝突の進行に伴って前記ステアリングホイール1を所望通り前方に変位させる事ができて、このステアリングホイール1の後側で開いたエアバッグと運転者の身体との位置関係を所望通りにできる等、運転者の保護を図り易い。
【0034】
又、図8に示した、二次衝突が進行した状態でも、前記ボルト27の上端部に螺着したナット37の働きにより、前記コラム側ブラケット15aが過度に下方に変位(脱落)する事はない。又、二次衝突後に、ステアリングホイール1を後方に引っ張っても、前記ガイドスリーブ34と前記ガイド長孔28との係合に基づき、前記インナコラム16が前記アウタコラム17から抜け出る事はない。従って、比較的軽い衝突事故の場合には、前記ステアリングホイール1が床面まで落下する様な事態を防止する事により、ステアリング装置の操作を可能なままにできて、事故車両を、自走により、或いは押しながら路肩に寄せる事が可能になり、事故に伴う交通渋滞の緩和に寄与できる。
【0035】
尚、前記両折り曲げ係止部38、38は、前記カプセル22の前端面との係合に基づき、前記両通孔31、31と前記両取付孔44、44とを、これら各孔31、44に前記両スタッド30、30を挿通できる程度に整合させられるものであれば足りる。従って、前記両折り曲げ係止部38、38の折り曲げ角度は、必ずしも90度を超える必要はなく、90度以下(例えば50〜70度程度)とする事もできる。又、組立時の状態で、前記両折り曲げ係止部38、38と前記カプセル22の前端面との間に多少の隙間があっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ステアリングホイールの位置調節機構の有無に関係なく実施できる。即ち、図示の例は、本発明をチルト・テレスコピック式ステアリング装置で実施する場合に就いて示したが、チルト式ステアリング装置やテレスコピック式ステアリング装置で実施できる事は勿論、ステアリングホイールの位置固定式の構造で実施する事もできる。
【符号の説明】
【0037】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングギヤユニット
3 入力軸
4 タイロッド
5、5a、5b ステアリングシャフト
6、6a、6b ステアリングコラム
7 自在継手
8 中間シャフト
9 自在継手
10、10a ハウジング
11、11a 電動モータ
12 車体側ブラケット
13 係止切り欠き
14 係止カプセル
15、15a コラム側ブラケット
16 インナコラム
17 アウタコラム
18 アウタシャフト
19 支持筒
20 スリット
21 被支持板部
22 カプセル
23 車体
24 取付板部
25 切り欠き
26 保持板部
27 ボルト
28 ガイド長孔
29 固定板部
30 スタッド
31 通孔
32 ガイド板部
33 曲げ起こし部
34 ガイドスリーブ
35 円筒部
36 鍔部
37 ナット
38 折り曲げ係止部
39 ガイドプレート
40 上下方向長孔
41 前後方向長孔
42 調節ロッド
43 調節レバー
44 取付孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10