【実施例】
【0012】
図1は本発明の実施例1のステアリング装置の全体斜視図であり、コラムアシスト型ラックピニオン式パワーステアリング装置である。
図1に示すコラムアシスト型ラックピニ
オン式パワーステアリング装置は、ステアリングホイール101の操作力を軽減するため
に、コラム105に取付けた電動アシスト機構102の操舵補助力をステアリングシャフ
トに付与し、中間シャフト106を介して、ラックピニオン式のステアリングギヤ103
のラックを往復移動させ、タイロッド104を介して舵輪を操舵する方式のパワーステア
リング装置である。
【0013】
図2は本発明の実施例1のステアリング装置の要部を車体上方側から見た斜視図、
図3はガイドブラケット単体の斜視図である。
図4は組み付けされたガイドブラケットの正面図である。
図5は本発明の実施例のステアリング装置の要部の正面図である。
図6は
図4のP矢視図である。
図7は
図4のQ矢視図である。
図8は
図4のA−A断面図である。
図9は二次衝突してコラムが車体前方側のコラプス移
動端までコラプス移動した状態を示す
図7相当図である。
【0014】
図2から
図9に示すように、コラム105は、アウターコラム42と、アウターコラム
42の車体前方側(
図5の左側)のインナーコラム46で構成され、車体後方側にステア
リングホイール101が装着されたステアリングシャフト41が、円筒状のアウターコラ
ム42に回転可能に軸支されている。アウターコラム42は、上部車体取付けブラケット
(車体取付けブラケット)21のチルト調整用長溝26、26に案内されて、チルト調整
可能である。チルト調整用長溝26、26は、上部車体取付けブラケット21の側板21b、21bに形成されている。
【0015】
アウターコラム42の車体前方側(
図5の左側)には、インナーコラム46が軸方向に
テレスコピック移動可能に内嵌し、インナーコラム46の車体前方側には、電動アシスト
機構(電動パワーステアリング)102が取付けられている。この電動アシスト機構10
2は、車体11に固定された下部車体取付けブラケット44に、チルト中心軸45を中心
としてチルト可能に軸支されている。
【0016】
また、アウターコラム42の下面には、アウターコラム42の内周面(
図8参照)42
1に貫通するスリット422が形成されている。さらに、アウターコラム42は、長軸方
向がアウターコラム42の軸心に平行(
図8の紙面に直交する方向)に延在するように形
成されたテレスコピック調整用長溝423、423を備えている。
【0017】
チルト調整用長溝26、26、及び、テレスコピック調整用長溝423、423には、
図8の左側から締付けロッド51が挿通されている。この締付けロッド51の左側(
図8の左側)の外周には、固定カム52、可動カム53、操作レバー54がこの順で外嵌されている。この締付けロッド51の右端(
図8の右側)には、調整ナット55が外嵌され、調整ナット55の内径部に形成された雌ねじが、締付けロッド51の右端に形成された雄ねじ56にねじ込まれて、調整ナット55の左端面が右側の側板21bの外側面に当接している。
【0018】
可動カム53の左端面に操作レバー54が固定され、この操作レバー54によって一体的に操作される可動カム53と固定カム52によって、カムロック機構が構成されている。
【0019】
操作レバー54の揺動操作で、上部車体取付けブラケット21の側板21b、21bで、アウターコラム42の側面を締付ける。この締付け操作によって、アウターコラム42を上部車体取付けブラケット21にクランプ/アンクランプし、アンクランプ時にアウターコラム42のチルト位置の調整を行う。また、この締付け操作によって、アウターコラム42の内周面421が縮径して、アウターコラム42をインナーコラム46の外周面にクランプ/アンクランプし、アンクランプ時にアウターコラム42のテレスコピック位置の調整を行う。
【0020】
電動アシスト機構102の車体前方側の出力軸(
図4参照)43は、中間シャフト106を介して、ステアリングギヤ103のラック軸に噛み合うピニオンに連結されて、ステアリングホイール101の回転操作を操舵装置に伝達している。
【0021】
上部車体取付けブラケット21は車体11に固定される。車体11と上部車体取付けブラケット21との取付け構造は、上部車体取付けブラケット21の上部のフランジ部21a、フランジ部21aに形成された左右一対の二個の切欠き溝(
図9参照)23、23、切欠き溝23、23の左右両側縁部に嵌め込まれたカプセル24、24から構成され、アウターコラム42の軸心に対して、車幅方向(
図6、
図7の上下方向)に対称な構造を有している。フランジ部21aの車体前方側端面211には、車幅方向の全幅にわたって、車体下方側にL字形に折り曲げた折り曲げ部21cが形成されて、上部車体取付けブラケット21の剛性を大きくしている。
【0022】
上部車体取付けブラケット21及びアウターコラム42は、金属等の導電性材料で構成されており、切欠き溝23、23は、フランジ部21aの車体後方側に開口している。切欠き溝23、23には、金属(アルミニウム、亜鉛合金ダイカスト等の軽合金)等の導電性材料で構成されたカプセル24、24が嵌め込まれ、カプセル24、24は、各々4本の剪断ピン(連結手段)24cによって、フランジ部21aに結合されている。また、カプセル24、24は、長溝状のボルト孔24dに挿通したボルト25、及び、ナット(
図8参照)27によって、車体11に固定されている。
【0023】
二次衝突時の衝撃で運転者がステアリングホイール101に衝突し、車体前方側に強い衝撃力が加わると、剪断ピン24cが剪断し、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aがカプセル24から離脱して、車体前方側(
図4、6、7の左側)にコラプス移動する。すると、アウターコラム42がインナーコラム46に沿って車体前方側にコラプス移動し、衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。
図4に示すコラプス移動距離L1だけアウターコラム42がコラプス移動すると、アウターコラム42の車体前方側端面424が、電動アシスト機構102の車体後方側端面102aに当接して、コラプス移動が終了する。
【0024】
図8に示すように、カプセル24には、上側挟持板24aと下側挟持板24bが形成され、上側挟持板24aと下側挟持板24bとの間にフランジ部21aが挿入されて、切欠き溝23、23の左右両側縁部を、上側挟持板24aと下側挟持板24bが挟持する。
【0025】
カプセル24には、上側挟持板24aと下側挟持板24bとを連結する連結部24eが
形成されている。連結部24eの車幅方向の両側面が、切欠き溝23の車幅方向の両側面
に挟み込まれている。上側挟持板24aと下側挟持板24bの車幅方向の寸法よりも、連
結部24eの車幅方向の寸法は小さく形成されている。連結部24eの車幅方向の外側面
241は、車体後方側(
図7の右方)がアウターコラム42の軸心に平行で、車体前方側
(
図7の左方)がアウターコラム42の軸心に接近する方向に傾斜した傾斜面に形成され
ている。
【0026】
また、連結部24eの車幅方向の内側面242は、車体後方側(
図7の右方)がアウターコラム42の軸心に平行で、車体前方側(
図7の左方)がアウターコラム42の軸心から離反する方向に傾斜した傾斜面に形成されている。すなわち、連結部24eの車幅方向の寸法は、車体前方側(
図7の左方)の幅が最も狭く、車体後方側(
図7の右方)に向かって幅が徐々に広くなり、その後、一定の幅に形成されている。
【0027】
フランジ部21aには、連結部24e、24eの車幅方向の外側面241、241の形状に沿って、切欠き溝23、23の車幅方向の外側面231、231が形成されている。またフランジ部21aには、連結部24e、24eの車幅方向の内側面242、242の形状に沿って、切欠き溝23、23の車幅方向の内側面232、232が形成されている。
【0028】
そのため、上部車体取付けブラケット21のコラプス移動時には、切欠き溝23、23の車幅方向の外側面231、231、車幅方向の内側面232、232は、連結部24e、24eの車幅方向の外側面241、241、車幅方向の内側面242、242から離脱して、車体前方側に移動する。
【0029】
図3に示すように、ガイドブラケット70は、車体前方延長部72が離脱したコラム105を支えることが可能な厚さの平板をプレス成形したものであり、ボルト挿通孔71a、及び略直角に曲げられた折り曲げ部73を有し、折り曲げ部73とボルト挿通孔71aの間には、円筒部74が設けられている。
【0030】
カプセル24はアルミニウム、亜鉛合金ダイカスト等の軽合金で成型される。ボルト孔24dの車両後方側に、カプセル24の底面に開口しているテーパー状の孔24fを有しダイカスト成形で一体的に成形している。
【0031】
図10に示すように、ガイドブラケット70に設けられた円筒部74は、カプセル24に設けられた孔24fに挿入され、圧入もしくはカシメによってカプセル24に固定される。
【0032】
孔24fはガイドブラケット70側が小径孔のテーパー状に成形されているので、円筒部74を圧入もしくはカシメで孔24fに固定されるので脱落し難くなり、製品輸送時の外力による脱落防止を確実なものにしている。
【0033】
図2から
図7に示すように、ガイドブラケット70、70には、フランジ部21aの車体前方側端面211よりも車体前方側に長く伸びる車体前方側延長部72、72が形成されている。車体前方側延長部72は、アウターコラム42の軸心に平行で、フランジ部21aの車体前方側端面211よりも車体前方側に、長さL2だけ突出して形成されている。車体前方側延長部72の長さL2は、
図4のコラプス移動距離L1よりも若干長く形成されている。
【0034】
図8に示すように、フランジ部21aの車体前方側端面211の折り曲げ部21cには、車体前方側延長部72が挿通可能な矩形の切欠き孔21dが形成され、この欠き孔21dを通して、車体前方側端面211から車体前方側延長部72が車体前方側に突出している。
【0035】
従って、上部車体取付けブラケット21がコラプス移動距離L1だけ移動して、車体前方側のコラプス移動端に達するまで、車体前方側延長部72、72に沿って、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aが案内される。そのため、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aは、カプセル24、24から脱落することなく、コラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができる。
【0036】
二次衝突時の衝撃で運転者がステアリングホイール101に衝突し、車体前方側に強い衝撃力が加わると、上部車体取付けブラケット21が車体前方側にコラプス移動して、剪断ピン24cが剪断する。剪断ピン24cが剪断すると、カプセル24とガイドブラケット70は車体11側に残り、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aが車体前方側にコラプス移動する。
【0037】
すると、
図9に示すように、フランジ部21aの車幅方向の外側面231、231及び車幅方向の内側面232、232は、連結部24e、24eの車幅方向の外側面241、241及び車幅方向の内側面242、242から離脱する。しかし、上部車体取付けブラケット21のフランジ部21aは、車体前方側延長部
72、
72に沿って、車体前方側のコラプス移動端に達するまで案内される。
【0038】
そのため、上部車体取付けブラケット21はガイドブラケット70、70から脱落することなく、コラプス移動距離L1だけ、コラプス移動端まで円滑にコラプス移動することができる。従って、図示しない衝撃エネルギー吸収部材が塑性変形して、衝突時の衝撃エネルギーを円滑に吸収し、運転者の安全を確実に確保することができる。また、上部車体取付けブラケット21がガイドブラケット70、70から脱落しないため、二次衝突後においても、ステアリングホイール101の操作が可能となるため、車を操縦して、安全な場所に退避する等の運転操作を行うことができる。
【0039】
上記実施例では、車体前方側への所定の衝撃力でカプセルから離脱可能に、フランジ部をカプセルに連結する連結手段として剪断ピンを使用しているが、剪断ピンの代わりに、カプセルとフランジ部を圧入によって結合し、フランジ部がこの圧入部でカプセルから離脱し、車体前方側にコラプス移動するようにしてもよい。また、上記実施例では、チルト/テレスコピック式のステアリング装置に本発明を適用した例について説明したが、テレスコピック位置だけの調整が可能なテレスコピック式のステアリング装置、チルト位置もテレスコピック位置も調整できないステアリング装置に適用してもよい。