特許第6020217号(P6020217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020217
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】交通情報提供システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20161020BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20161020BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G01C21/26 A
   G08G1/00 D
   G08G1/09 F
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-19552(P2013-19552)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-149784(P2014-149784A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石黒 洋介
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−242424(JP,A)
【文献】 特開2005−258539(JP,A)
【文献】 特開2008−96445(JP,A)
【文献】 特開2008−286803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 − 21/36
G08G 1/00 − 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から提供される交通情報に基づいて取得された、ある道路区間の移動所要時間と、当該道路区間を車両が実際に通行して計測された実測の移動所要時間との差分に関する情報を、当該実測の移動所要時間の計測に係る車両のドライバと当該道路区間とに対応する差分データとして蓄積する記憶手段(13)と、
外部装置から提供される交通情報に基づいて、対象の道路区間の移動所要時間を取得する第1取得手段(15,S10,S11)と、
前記記憶手段に蓄積されている、対象のドライバに関する前記対象の道路区間の差分データに対して、所定の統計処理を行うことで差分統計量を算出する差分算出手段(14,S20,S22,S21,S23)と、
前記第1取得手段により取得された移動所要時間に対して、前記差分算出手段により算出された差分統計量に基づいて補正をした差分付所要時間を算出する補正手段(15,S12,28,S33)と、
前記補正手段により算出された差分付所要時間に関する提示用情報を、前記対象のドライバに対して提示する提示手段(28,S32,S35)と、
を備えることを特徴とする交通情報提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の交通情報提供システムにおいて、
ある道路区間を車両が実際に通行して計測された実測の移動所要時間を取得する第2取得手段(23,S40,S41)と、
前記第2取得手段により取得された実測の移動所要時間と、外部装置から提供される交通情報に基づいて取得された当該道路区間の移動所要時間との差分に関する前記差分データを生成し、前記記憶手段に記録する記録手段(12,S50,S52,S51,S53)と、
を更に備えることを特徴とする交通情報提供システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の交通情報提供システムにおいて、
前記第1取得手段は、前記対象の道路区間として、車両の目的地までの予定経路上の道路区間に関する移動所要時間を取得し、
前記差分算出手段は、当該車両のドライバに関する当該予定経路上の道路区間の差分データに対して、所定の統計処理を行うことで差分統計量を算出すること、
を特徴とする交通情報提供システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の交通情報提供システムにおいて、
前記差分データは、当該道路区間の道路種別を示す情報と対応付けられて前記記憶手段に蓄積されており、
前記差分算出手段は、前記対象のドライバに関する前記対象の道路区間の差分データが不足している場合、前記対象の道路区間と同じ道路種別に該当の他の道路区間における前記対象のドライバに関する差分データを用いて差分統計量を算出すること、
を特徴とする交通情報提供システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の交通情報提供システムにおいて、
前記差分データは、外部装置から提供される交通情報に基づいて当該道路区間の移動所要時間が取得されたときの、当該道路区間の混雑度合を示す情報と対応付けられて前記記憶手段に蓄積されており、
前記差分算出手段は、前記対象のドライバに関する前記対象の道路区間の差分データが不足している場合、前記対象のドライバに関する差分データのうち、外部装置から提供される交通情報により示される前記対象の道路区間の現在の混雑度合に該当の差分データを用いて差分統計量を算出すること、
を特徴とする交通情報提供システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の交通情報提供システムにおいて、
前記差分算出手段は、前記記憶手段に蓄積されている、対象のドライバに関する全ての差分データを用いて差分統計量を算出すること、
を特徴とする交通情報提供システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の交通情報提供システムにおいて、
前記差分算出手段は、前記対象のドライバに関する前記対象の道路区間の差分データが不足している場合、当該対象のドライバと差分データの特性が類似する他のドライバの前記対象の道路区間の差分データを用いて差分統計量を算出すること、
を特徴とする交通情報提供システム。
【請求項8】
請求項1に記載の交通情報提供システムにおいて、
互いに情報通信を行うセンタ側配信装置(10)と、車両側情報提供装置(20)とを備え、
前記センタ側配信装置が、前記記憶手段と、前記第1取得手段と、前記差分算出手段と、前記補正手段とを備え、
前記車両側情報提供装置が、前記提示手段を備えること、
を特徴とする交通情報提供システム。
【請求項9】
請求項1に記載の交通情報提供システムにおいて、
互いに情報通信を行うセンタ側配信装置(10)と、車両側情報提供装置(20)とを備え、
前記センタ側配信装置が、
前記記憶手段と、前記第1取得手段と、前記差分算出手段とを備え、
前記車両側情報提供装置が、
前記補正手段と、前記提示手段とを備えること
を特徴とする交通情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の移動所要時間に関する交通情報を提供する交通情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通状況を予測するものとして、特許文献1に記載の先行技術が知られている。この先行技術では、提供された交通情報をドライバがどの程度信頼するかの度合を示す情報信頼度と、情報信頼度に応じてドライバの行動がどの程度変化するかを示す行動変化率とが定義される。そして、ドライバの情報信頼度による行動変化率を用いることで、交通状況の予測を修正する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−164262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路の移動所要時間に関する交通情報を提供するために、予測された移動所要時間を上記先行技術のような情報信頼度及び行動変化率を用いて補正することを想定した場合、次のような問題がある。提供された情報をドライバが信頼するか、あるいは提供された情報に基づいてドライバが行動を変化させるかといった判断は、運転当時のドライバの心理状態に大きく左右される。そのため、運転時の心理状態によっては、交通情報の補正に用いる情報信頼度及び行動変化率が、必ずしもドライバの判断と一致するとは限らず、予測が不確実になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記問題を鑑みなされたものである。その目的は、ドライバの通行経験に基づく運転特性を考慮した態様にて、道路の移動所要時間に関する交通情報を提供するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の交通情報提供システムは、記憶手段、第1取得手段、差分算出手段、補正手段、及び提示手段を備える。
記憶手段は、外部装置から提供される交通情報に基づいて取得された、ある道路区間の移動所要時間と、当該道路区間を車両が実際に通行して計測された実測の移動所要時間との差分に関する情報を、当該実測の移動所要時間の計測に係る車両のドライバと当該道路区間とに対応する差分データとして蓄積する。第1取得手段は、外部装置から提供される交通情報に基づいて、対象の道路区間の移動所要時間を取得する。
【0007】
差分算出手段は、記憶手段に蓄積されている、対象のドライバに関する対象の道路区間の差分データに対して、所定の統計処理を行うことで差分統計量を算出する。補正手段は、第1取得手段により取得された移動所要時間に対して、差分算出手段により算出された差分統計量に基づいて補正をした差分付所要時間を算出する。提示手段は、補正手段により算出された差分付所要時間に関する提示用情報を、対象のドライバに対して提示する。
【0008】
本発明によれば、ドライバの通行経験に基づいて蓄積された差分データを用いて、外部から提供される移動所要時間に関する交通情報の補正を行うことができる。例えば、ドライバがある道路区間を通行するときに、その道路区間の移動所要時間に関する交通情報が提供されたとする。その際、交通情報として提供された当該道路区間の移動所要時間と実際に通行際に計測された移動所要時間との差分を蓄積しておく。そして、ドライバが同じ道路区間を再び通行する際、過去の通行経験によって蓄積された差分データを統計的に処理した統計量を、現在の交通情報として提供された移動所要時間に加味することで、ドライバの運転特性を反映した移動所要時間の情報を予測できる。このように、ドライバの実際の通行経験に基づく運転特性を移動所要時間の予測に適用することで、ドライバの心理状態によらない確実性の高い予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】交通情報提供システムの構成を示すブロック図。
図2】差分データの構造を示す説明図。
図3】交通情報提供システムが実行する処理の手順を示すフローチャート1。
図4】交通情報提供システムが実行する処理の手順を示すフローチャート2。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[交通情報提供システムの構成の説明]
図1に示すように、交通情報提供システム1は、広域の車両に対して交通情報を配信するセンタに設備される交通情報配信装置10と、ドライバの運転する車両で用いられる情報提供装置20とを備える。なお、図1においては、説明を簡潔にするため、1つの情報提供装置20のみを図示しているが、複数の情報提供装置20がそれぞれの車両において用いられてもよい。
【0011】
交通情報配信装置10は、サーバ機能を有する情報処理装置で構成される。交通情報配信装置10は、通信部11、情報蓄積部12、差分データベース13、差分量算出部14、制御部15を備える。
【0012】
通信部11は、無線通信網やインターネット等の通信ネットワークを介して、情報提供装置20、交通情報センタ30、通信装置40等の、様々な外部装置との間で通信を行うための通信装置である。通信部11は、情報提供装置20との間で、道路の移動所要時間に関する情報をドライバに提供するための各種情報を送受信する。
【0013】
また、通信部11は、例えば、VICS(Vehicle Information Communication System、登録商標)の交通情報センタ30や種々の通信装置40から配信される道路交通情報、タクシー等のプローブ車両から送信されるプローブの情報等といった最新の交通情報を受信する。通信部11を介して外部から受信する交通情報としては、例えば、移動所要時間、渋滞、交通障害、交通規制、天候、風向き、路面状況、渋滞予測情報における経路探索に有用なデータ等がある。
【0014】
情報蓄積部12は、通信部11を介して外部の交通情報センタ30や通信装置40から受信した交通情報を蓄積する。また、情報蓄積部12は、蓄積している交通情報に基づいて取得された、ある道路区間の移動所要時間と、当該道路区間を車両が実際に通行して計測された実測の移動所要時間との差分を算出する。そして、実測の移動所要時間の計測に係る車両のドライバと当該道路区間とに対応する差分データとして、差分データベース13に蓄積する。
【0015】
差分データベース13は、車両のドライバごとに対応する差分データ群を蓄積する記憶装置である。差分データベース13に蓄積される差分データの詳細な内容について、図2を参照しながら説明する。図2に示すように、差分データは、ドライバ固有の識別情報(ドライバID)に対応付けた、道路区間ごとの移動所要時間の差分に関する情報で構成されている。差分データベース13には、複数のドライバに関する差分データが、個々のドライバごとに分類されて蓄積されるようになっている。
【0016】
道路区間ごとの情報には、道路区間の識別情報(道路ID)及び道路種別(高速道路、一般道等)を示す情報に対応付けて、差分時間、タイムスタンプ及び混雑度の各情報からなる差分データのレコードが蓄積されている。
【0017】
差分時間は、当該道路区間を当該ドライバが運転する車両が通行したときに計測された実測の移動所要時間と、その当時に外部から提供の交通情報に基づいて取得された移動所要時間との時間差を示す情報である。タイムスタンプは、当該実測の移動所要時間が計測された日時を示す情報である。混雑度は、その当時に外部から提供の交通情報で示される当該道路区間の混雑の度合(例えば、渋滞、混雑、順調等)を示す情報である。差分データのレコードは、情報提供装置20から実測の移動所要時間が通知される度に、当該実測の移動所要時間の計測に係る車両のドライバに関する差分データとして、差分データベース13に蓄積される。
【0018】
図1のブロック図の説明に戻る。差分量算出部14は、差分データベース13に蓄積されている、対象のドライバに関する対象の道路区間の差分データ群を統計的に処理し、その道路区間におけるドライバの運転特性を示す差分統計量を算出する。この差分統計量は、ドライバがある道路区間を通行した際に、外部の交通情報に基づく移動所要時間とどの程度の時間差が生じると予測されるかを示す指標であり、当該道路区間全体における時間差、若しくは、単位距離あたりの時間差又は速度差等の物理量で表される。
【0019】
制御部15は、交通情報の配信に関する各種情報処理を実行する機能を有する。制御部15は、通信部11を介して情報提供装置20から車両の現在地及び目的地、目的地までの予定経路、ドライバの識別情報等のデータを受信する。制御部15は、交通情報センタ30や種々の通信装置40等から受信した交通情報に基づき、情報提供装置20から受信したデータに基づく周辺道路や予定経路上の道路区間を対象の道路区間として、その対象の道路区間の移動所要時間を取得する。そして、取得した移動所要時間に対し、差分量算出部14によって算出された差分統計量を加味して補正した差分付移動所要時間を、送信元の情報提供装置20に対して送信する。
【0020】
情報提供装置20は、例えば、車両に搭載されるナビゲーションシステム、あるいは車両のドライバが所持する携帯型の情報通信端末等で具現化される。情報提供装置20は、通信部21、地図データベース22、所要時間算出部23、自車位置特定部24、表示部25、操作部26、音声出力部27、制御部28を備える。
【0021】
通信部21は、無線通信網やインターネット等の通信ネットワークを介して、交通情報配信装置10との間で、現在地及び目的地周辺や予定経路上の道路区間の移動所要時間に関する各種情報を送受信する。通信部21としては、例えば、携帯電話機、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、無線RAN等の様々な通信方式のものを採用できる。
【0022】
地図データベース22は、光ディスクやハードディスクドライブ、不揮発性の半導体メモリ等の大容量の情報記憶媒体に記憶された、ナビゲーション用の地図データに関するデータベースである。この地図データとしては、地図表示のための地図描画用データ、マップマッチングや経路探索、経路誘導等の処理に必要な道路データ、交差点データ、地名等を表示するための地名データ等が挙げられる。なお、情報提供装置20が地図データベース22を備える代わりに、情報提供装置20が、通信部21を介して交通情報配信装置10から経路案内に必要な地図データを取得するような構成であってもよい。
【0023】
所要時間算出部23は、自車位置特定部24によって特定された現在地に基づいて、自車両がある道路区間を通行したときの移動所要時間を計測する。所要時間算出部23により計測された移動所要時間は、通信部21を介して交通情報配信装置10に送信される。
【0024】
自車位置特定部24は、GPS受信機や速度センサ、ジャイロスコープ等の各種センサを用いて、自車両の現在地を特定する。また、地図データベース22に収録された地図データを用いるマップマッチングにより、自車両が道路上のどこにいるかを特定する。
【0025】
表示部25は、制御部28から入力される映像信号に基づき各種画像情報を表示する表示装置であり、例えば、車両の運転席近傍に設置されるディスプレイ等からなる。この表示部25には、例えば、現在地周辺の地図画像や、現在地を示すマーク、現在地から目的地までの予定経路、差分付所要時間に基づいて算出された目的地への到着予定時刻、道路の混雑状況等の画像情報が表示される。
【0026】
操作部26は、ユーザから受付けた操作に関するコマンド等を制御部28に与えるための入力装置であり、表示部25の周辺に配設されたメカニカルスイッチや、表示部25の表示面上に形成されたタッチパネル等からなる。音声出力部27は、制御部28からの音声信号に基づく音声情報を出力する出力装置である。これによって、表示部25による表示と音声出力部27による音声出力との両方でユーザに対して各種情報の提示を行うことができる。
【0027】
制御部28は、ナビゲーションに関する各種情報処理を行う機能を有する。制御部28が実行するナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理が挙げられる。地図表示処理では、地図データベース22から読込んだ現在地周辺の地図データに基づいて地図画像を生成し、表示部25に表示させる。また、制御部29は、自車位置特定部24において検出された自車両の現在地を示すマークを、表示部25に表示させる地図画像上に重ね合わせて表示し、自車両の移動に伴って現在地のマークを移動させたり、地図画像をスクロールさせる。
【0028】
経路案内処理では、ユーザが操作部26を操作して目的地を設定すると、制御部28は自車両の現在地を出発地とし、出発地から目的地までの最適経路を地図データベース22から読込んだ道路データを用いて探索する。そして、経路探索によって得られた経路を予定経路として、その予定経路を地図画像上に重ね合わせて表示部25に表示させる。そして、制御部29は自車両の移動に伴って、経路上の分岐点等の特定の案内ポイント手前で、進行方向等の案内情報を表示又は音声で出力し、自車両が目的地までの予定経路に沿って走行できるように案内する。
【0029】
また、制御部28は、車両の現在地及び目的地、目的地までの予定経路、ドライバの識別情報等のデータを、通信部21を介して交通情報配信装置10に送信する。そして、制御部28は、交通情報配信装置10において演算された、予定経路上の道路区間に対応する差分付所要時間に関する情報を受信する。制御部28は、受信した差分付所要時間や、差分付所要時間を反映して算出した目的地への到着予想時刻や道路の混雑度合を地図画像上に重ね合わせて表示部25に表示させる。これにより、ドライバは、自身の運転特性が反映された所要時間や到着予想時刻を知ることができるようになっている。
【0030】
[交通情報提供システムが実行する処理の説明:第1実施形態]
交通情報提供システム1における交通情報配信装置10と情報提供装置20とが実行する一連の処理の第1実施形態について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。交通情報配信装置10と情報提供装置20とが実行する処理は、所要時間情報提供処理と差分データ蓄積処理とに分類される。
【0031】
まず、所要時間情報提供処理について説明する。交通情報配信装置10において、制御部15は、情報蓄積部12に蓄積されている外部装置から提供の最新の交通情報に基づいて、対象の道路区間の移動所要時間を取得する(S10)。ここでいう対象の道路区間とは、通信部11を介して情報提供装置20から受信したデータに基づく、車両の現在地及び目的地周辺の道路区間や、目的地までの予定経路上の道路区間である。
【0032】
また、差分量算出部14は、差分データベース13に蓄積されている差分データ群の中から、情報提供装置20から受信したデータに基づく、対象のドライバに関する対象の道路区間に該当する差分データ群を抽出し、抽出された差分データ群を統計的に処理する(S20)。ここでは、例えば、複数の差分データにおける差分時間の平均値、中央値、又は最頻値等を算出する。そして、統計的処理の結果から、対象のドライバに関する対象の道路区間における差分統計量を算出する(S22)。差分統計量は、対象の道路区間全体における時間差、若しくは、単位距離あたりの時間差又は速度差等の物理量で表される。
【0033】
なお、S20,S22における差分データの統計的処理による差分統計量の算出方法として、以下の(1)〜(4)に示す工夫を適用してもよい。
(1)ドライバの通行履歴が少ない、又は初めて走行する道路区間においては、差分データの統計的処理に用いるデータの数が不足するため、ドライバの運転特性を的確に把握できない可能性がある。そこで、対象の道路区間に該当する差分データの数が規定数に満たない場合、当該ドライバに関する差分データ群の中で、対象の道路区間の道路種別と同じ道路種別が割当てられた他の道路区間の差分データ群を用いて、統計的処理を行うようにしてもよい。例えば、道路種別ごとに蓄積されている差分データ群に基づき、差分時間を速度差に変換した差分統計量を算出する。そして、対象の道路区間の移動所要時間に、同じ道路種別の他の道路区間での通行履歴に基づく差分速度から換算される時間差を加えることで、対象の道路区間と類似する環境におけるドライバの運転特性が反映された差分付所要時間を算出できる。
【0034】
(2)差分データに付された混雑度別に統計的処理を行うようにしてもよい。具体的には、対象の道路区間に該当する差分データが規定数に満たない場合、当該ドライバに関する差分データ群の中から、外部の交通情報等から把握される対象の道路区間の現在の混雑度と同じ混雑度に該当する差分データ群を抽出して、差分統計量の算出に用いる。例えば、混雑度別に蓄積されている差分データ群に基づき、差分時間を速度差に変換した差分統計量を算出する。そして、対象の道路区間の移動所要時間に対して、同じ混雑度の道路区間での通行履歴に基づく差分速度から換算される時間差を加えることで、現在の混雑度と類似する環境におけるドライバの運転特性が反映された差分付所要時間を算出できる。なお、上記(1)及び(2)の手法を組み合わせて、差分統計量を算出してもよい。
【0035】
(3)道路区分に関わらず、対象のドライバに関して蓄積された全ての差分データ群を用いて差分統計量を算出してもよい。
(4)対象のドライバと運転特性が類似する、他のドライバに関する差分データを用いて差分統計量を算出することで、対象のドライバに関する差分統計量の代替としてもよい。例えば、対象のドライバに関する対象の道路区間の差分データが規定数に満たない場合、対象のドライバと差分データの特性が類似する、他のドライバに関する対象の道路区間の差分データを用いて差分統計量を算出する。運転特性が類似する他のドライバを特定する方法としては、ドライバごとの差分データの要約統計量が対象のドライバのものと近似する相手を特定することが例示される。
【0036】
制御部15は、S10で取得した対象の道路区間の現在の移動所要時間と、S22で差分量算出部14において算出された差分統計量とに基づいて、対象の道路区間に関する差分付所要時間を算出する(S12)。例えば、差分統計量が対象の道路区間全体における時間差として算出された場合、その時間差を外部の交通情報に基づく現在の移動所要時間に加減することで、差分付所要時間を算出する。あるいは、差分統計量が単位距離あたりの時間差又は速度差として算出された場合、それらを対象の道路区間の距離に応じた時間差に換算し、外部の交通情報に基づく現在の移動所要時間に加減することで、差分付所要時間を算出する。制御部15は、算出した差分付所要時間を含む差分付所要時間情報を、通信部11を介して対象のドライバに属する情報提供装置20に対して送信する(S14)。
【0037】
これに対し、情報提供装置20の制御部28は、交通情報配信装置10から送信された差分付所要時間情報を、通信部21を介して受信する(S30)。そして、制御部28は、受信した差分付所要時間情報に基づき、対象のドライバに対する情報提示を行う(S32)。例えば、制御部28は、周辺道路や予定経路上の道路区間に関する差分付所要時間を用いて、目的地への到着予測時間を算出し、表示部25におけるナビゲーション画面上に表示させる。また、非混雑時における通常の移動速度から推測される移動所要時間と差分付所要時間との差から計算した混雑度合を、地図画像上の道路に重ね合わせたものを表示部25に表示させてもよい。
【0038】
つぎに、差分データ蓄積処理について説明する。制御部28は、所定の道路区間を通行するごとに、所要時間算出部23において算出された当該道路区間の移動所要時間の実測値を抽出する(S40)。そして、抽出した実測の移動所要時間、当該道路区間、日時、及びドライバの識別等に関する情報を、通信部21を介して交通情報配信装置10に対して送信する(S42)。
【0039】
交通情報配信装置10では、情報提供装置20から実測の移動所要時間等に関する情報を受信すると、制御部15が、情報蓄積部12に蓄積されている外部装置から提供の交通情報に基づいて、当該道路区間における実測当時の移動所要時間及び道路の混雑度を取得する(S15)。情報蓄積部12は、交通情報に基づいて取得された移動所要時間と、受信した実測の移動所要時間との差分を算出する(S50)。そして、算出された差分に基づいて差分データを生成し、対応するドライバID及び道路IDに紐付けて差分データベース13に蓄積する(S52)。この差分データには、差分時間、タイムスタンプ、混雑度等の情報が含まれる(図2参照)。
【0040】
[交通情報提供システムが実行する処理の説明:第2実施形態]
交通情報提供システム1における交通情報配信装置10と情報提供装置20とが実行する一連の処理の第2実施形態について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。第2実施形態の処理は、差分付所要時間の算出を交通情報配信装置10側ではなく情報提供装置20側で実行する点で、第1実施形態の処理と異なる。
【0041】
所要時間情報提供処理において、交通情報配信装置10の制御部15は、情報蓄積部12に蓄積されている外部装置から提供の最新の交通情報に基づいて、対象の道路区間の現在の移動所要時間を取得する(S11)。ここでいう対象の道路区間とは、通信部11を介して情報提供装置20から受信したデータに基づく、車両の現在地及び目的地周辺の道路区間や、目的地までの予定経路上の道路区間である。制御部15は、取得した移動所要時間を含む所要時間情報を、通信部11を介して対象のドライバに属する情報提供装置20に対して送信する(S13)。
【0042】
また、差分量算出部14は、差分データベース13に蓄積されている差分データ群に基づいて、対象のドライバに関する対象の道路区間の差分統計量を算出する(S21,S23)。この処理内容は、上述の第1実施形態(図3参照)におけるS20,S22の処理内容と同様である。そして、算出された差分統計量を含む情報が、通信部11を介して対象のドライバに属する情報提供装置20に対して送信される(S25)。
【0043】
一方、情報提供装置20の制御部28は、交通情報配信装置10から送信された所要時間情報及び差分統計量を、通信部21を介して受信する(S31)。制御部28は、受信した移動所要時間及び差分統計量に基づき、対象の道路区間に関する差分付所要時間を算出する(S33)。例えば、差分統計量が対象の道路区間全体における時間差として算出された場合、その時間差を外部の交通情報に基づく移動所要時間に加減することで、差分付所要時間を算出する。あるいは、差分統計量が単位距離あたりの時間差又は速度差として算出された場合、それらを対象の道路区間の距離に応じた時間差に換算し、外部の交通情報に基づく移動所要時間に加減することで、差分付所要時間を算出する。
【0044】
そして、制御部28は、算出した差分付所要時間情報に基づき、対象のドライバに対する情報提示を行う(S35)。この情報提示の内容は、上述の第1実施形態(図3参照)におけるS32と同様である。なお、差分データ蓄積処理の手順については、上述の第1実施形態(図3参照)の手順と同様であるので説明を省略する。
【0045】
[効果]
実施形態の交通情報提供システム1によれば、以下の効果を奏する。
ドライバの通行経験に基づいて蓄積された差分データを統計的に処理して得られた差分統計量を、現在の交通情報として提供された移動所要時間に加味することで、ドライバの運転特性を反映した差分付所要時間の情報を予測できる。このように、ドライバの実際の通行経験に基づく運転特性を移動所要時間の予測に適用することで、ドライバの心理状態によらない確実性の高い予測を行うことができる。
【0046】
情報提供装置20が実測の移動所要時間を取得して交通情報配信装置10に通知することで、交通情報配信装置10が、交通情報に基づく移動所要時間と実測の移動所要時間との差に関する差分データ生成し、差分データベース13に蓄積することができる。
【0047】
[変形例]
上記実施形態においては、交通情報配信装置10と情報提供装置20とが連携して、差分付所要時間の提供に関する一連の処理を実行する事例について説明した。これに限らず、上記実施形態における交通情報配信装置10と情報提供装置20とが実行する各種処理機能を併せ持つ単独の情報処置装置等によっても、本発明を実施可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…交通情報提供システム、10…交通情報配信装置、11…通信部、12…情報蓄積部、13…差分データベース、14…差分量算出部、15…制御部、20…情報提供装置、21…通信部、22…地図データベース、23…所要時間算出部、24…自車位置特定部、25…表示部、26…操作部、27…音声出力部、28…制御部、30…交通情報センタ、40…通信装置。
図1
図2
図3
図4