特許第6020243号(P6020243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020243
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/17 20160101AFI20161020BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20161020BHJP
   B60K 6/24 20071001ALI20161020BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20161020BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20161020BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20161020BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20161020BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20161020BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B60W20/17
   B60W10/06 900
   B60K6/24ZHV
   B60K6/46
   F02D29/06 D
   F02D29/02 321Z
   F02D41/04 305G
   F02D9/02 Q
   B60L11/14
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-29010(P2013-29010)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-156221(P2014-156221A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂園 一保
(72)【発明者】
【氏名】大室 朗
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−144138(JP,A)
【文献】 特開平08−019112(JP,A)
【文献】 特開2003−247442(JP,A)
【文献】 特開平11−264335(JP,A)
【文献】 特開2000−080930(JP,A)
【文献】 特開2007−138854(JP,A)
【文献】 特開2008−081087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/50
B60K 6/20 − 6/547
B60L 11/14
F02D 29/00 − 29/06
F02D 41/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電するジェネレータと、該ジェネレータによる発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの蓄電電力及び上記ジェネレータによる発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータとを備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
上記バッテリの残存容量を検出するバッテリ残存容量検出手段と、
上記車両の車速を検出する車速検出手段と、
上記車両のドライバーの操作によるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
上記ジェネレータ及びエンジンの作動を制御する制御手段であって、上記エンジンの停止中に、上記バッテリ残存容量検出手段により検出されたバッテリの残存容量が所定容量以下に低下したとき、又は、上記走行用モータの駆動要求出力が、予め設定された設定値以上になったときに、上記エンジンの運転により上記ジェネレータを発電させて、該ジェネレータによる発電電力を、上記バッテリに蓄電させるか又は上記走行用モータに供給するように構成された制御手段と、を備え、
上記制御手段は、上記エンジンの運転中において、上記車速検出手段により検出された車速が第1所定速度以下であるとともに上記アクセル開度検出手段より検出されたアクセル開度が所定値以下であるときには、上記エンジンの吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を、所定開度よりも小さい開度に制御するように構成され
更に上記制御手段は、上記車速及び上記アクセル開度により区分された複数の運転領域の該各運転領域で、上記スロットル弁の開度を、該各運転領域毎に予め設定された設定開度に制御するように構成されており、
上記複数の運転領域は、上記車速が上記第1所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値以下である第1運転領域を含み、
上記第1運転領域の上記設定開度が、上記複数の運転領域の上記設定開度の中で最も小さい値に設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項記載のハイブリッド車両の制御装置において、
上記複数の運転領域は、上記車速が上記第1所定速度よりも大きい速度である第2所定速度よりも大きいとともに上記アクセル開度が上記所定値以下である第2運転領域と、上記車速が上記第2所定速度よりも大きい速度である第3所定速度よりも大きいとともに上記アクセル開度が上記所定値よりも大きい第3運転領域とを更に含み、
上記第2及び第3運転領域の上記設定開度が、上記複数の運転領域の上記設定開度の中で最も大きい値に設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項記載のハイブリッド車両の制御装置において、
上記複数の運転領域は、上記車速が上記第1所定速度よりも大きくかつ上記第2所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値以下である第4運転領域と、上記車速が上記第2所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値よりも大きい第5運転領域と、上記車速が上記第2所定速度よりも大きくかつ上記第3所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値よりも大きい第6運転領域とを更に含み、
上記第4乃至第6運転領域の上記設定開度が、上記第1運転領域の上記設定開度と上記第2及び第3運転領域の上記設定開度との間の値に設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
上記制御手段は、上記設定開度がそれぞれ設定された上記複数の運転領域とは別に上記車速及び上記アクセル開度により区分された複数の運転領域の該各運転領域で、上記エンジンの燃焼空燃比を、該各運転領域毎に予め設定された設定空燃比に制御するように構成されており、
上記第1運転領域は、上記設定空燃比がそれぞれ設定された上記複数の運転領域の該設定空燃比の中で最もリーンな空燃比に設定された運転領域内に含まれていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂シリーズ式のハイブリッド車両の制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド車両において、エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電するジェネレータと、該ジェネレータによる発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの蓄電電力及び上記ジェネレータによる発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータとを備えたものが知られている。
【0003】
上記のようなハイブリッド車両において、従来、車両の車速と車両のドライバーによるアクセル操作量(アクセル開度)とに基づいてエンジン回転数を制御することにより、燃費効率を向上させるとともに、アクセルペダルの踏み込み状態に応じたエンジン音が出るようにしてドライバビリティを向上させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、バッテリの残存容量(SOC)が少ない場合に、アクセルペダルの踏み込みにより駆動力を必要とした場合は、エンジンを始動して発電を行い、アクセルペダルを踏み込んだ分だけ、エンジン回転数が上昇することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−144138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1と同様に、上記ハイブリッド車両においては、エンジンの停止中に、バッテリの残存容量(SOC)が所定容量よりも少なくなった場合に、エンジンを始動してジェネレータを発電させ、そのジェネレータによる発電電力を、バッテリに蓄電させるか又は走行用モータに供給して、バッテリの残存容量の回復を図るようにしたり、車両のドライバーによる加速要求に対応できるようにしたりすることが好ましい。
【0006】
この場合、エンジンの運転中は、エンジンの運転状態に関係なく、エンジンの吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を出来る限り大きくすることで、エンジンを出来る限り効率良く運転して燃費を向上させるようにすることが考えられる。
【0007】
しかし、スロットル弁の開度が大きいと、エンジンの気筒内に吸い込まれる吸気の脈動による吸気音が大きくなる。アクセル開度が大きくてエンジンの回転数を高めたときや、車両が高速で走行しているときには、上記吸気音よりもエンジン回転音やロードノイズ音の方が高くなり、上記吸気音は聞こえないが、アクセル開度が小さくてエンジンの回転数が低くかつ車両が低速で走行しているときには、エンジン回転音やロードノイズ音に対して上記吸気音が目立つようになり、車両の乗員に不快感を与えてしまう。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンの運転中の吸気音によりハイブリッド車両の乗員に不快感を与えないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電するジェネレータと、該ジェネレータによる発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの蓄電電力及び上記ジェネレータによる発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータとを備えたハイブリッド車両の制御装置を対象として、上記バッテリの残存容量を検出するバッテリ残存容量検出手段と、上記車両の車速を検出する車速検出手段と、上記車両のドライバーの操作によるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、上記ジェネレータ及びエンジンの作動を制御する制御手段であって、上記エンジンの停止中に、上記バッテリ残存容量検出手段により検出されたバッテリの残存容量が所定容量以下に低下したとき、又は、上記走行用モータの駆動要求出力が、予め設定された設定値以上になったときに、上記エンジンの運転により上記ジェネレータを発電させて、該ジェネレータによる発電電力を、上記バッテリに蓄電させるか又は上記走行用モータに供給するように構成された制御手段と、を備え、上記制御手段は、上記エンジンの運転中において、上記車速検出手段により検出された車速が第1所定速度以下であるとともに上記アクセル開度検出手段より検出されたアクセル開度が所定値以下であるときには、上記エンジンの吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を、所定開度よりも小さい開度に制御するように構成され、更に上記制御手段は、上記車速及び上記アクセル開度により区分された複数の運転領域の該各運転領域で、上記スロットル弁の開度を、該各運転領域毎に予め設定された設定開度に制御するように構成されており、上記複数の運転領域は、上記車速が上記第1所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値以下である第1運転領域を含み、上記第1運転領域の上記設定開度が、上記複数の運転領域の上記設定開度の中で最も小さい値に設定されている、という構成とした。
【0010】
上記の構成により、車速検出手段により検出された車速が第1所定速度以下であるとともにアクセル開度検出手段より検出されたアクセル開度が所定値以下であるときには、スロットル弁の開度が所定開度よりも小さい開度に制御されるので、吸気音が抑制される。この結果、エンジン回転音やロードノイズが低くても、吸気音が目立つことはない。一方、上記車速が上記第1所定速度よりも大きいか又は上記アクセル開度が上記所定値よりも大きいときには、上記吸気音がエンジン回転音やロードノイズ音に対して目立ち難くなり、スロットル弁の開度が大きくても、上記吸気音は聞こえ難くなる。したがって、エンジンの運転中の吸気音により車両の乗員に不快感を与えないようにすることができる。
【0011】
また、上記制御手段は、上記車速及び上記アクセル開度により区分された複数の運転領域の該各運転領域で、上記スロットル弁の開度を、該各運転領域毎に予め設定された設定開度に制御するように構成されており、上記複数の運転領域は、上記車速が上記第1所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値以下である第1運転領域を含み、上記第1運転領域の上記設定開度が、上記複数の運転領域の上記設定開度の中で最も小さい値に設定されていることにより、エンジン回転音やロードノイズ音の大小に応じて吸気音を適切に抑制することができる。
【0012】
上記複数の運転領域は、上記車速が上記第1所定速度よりも大きい速度である第2所定速度よりも大きいとともに上記アクセル開度が上記所定値以下である第2運転領域と、上記車速が上記第2所定速度よりも大きい速度である第3所定速度よりも大きいとともに上記アクセル開度が上記所定値よりも大きい第3運転領域とを更に含み、上記第2及び第3運転領域の上記設定開度が、上記複数の運転領域の上記設定開度の中で最も大きい値に設定されている、ことが好ましい。
【0013】
このことで、第2及び第3運転領域では、吸気量を確保して高効率でエンジンを運転することができる。一方、第2及び第3運転領域では、吸気音は大きくなるが、吸気音よりもエンジン回転音やロードノイズ音の方が高くなるので、吸気音はドライバーを含む乗員には聞こえない。
【0014】
上記複数の運転領域は、上記車速が上記第1所定速度よりも大きくかつ上記第2所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値以下である第4運転領域と、上記車速が上記第2所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値よりも大きい第5運転領域と、上記車速が上記第2所定速度よりも大きくかつ上記第3所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値よりも大きい第6運転領域とを更に含み、上記第4乃至第6運転領域の上記設定開度が、上記第1運転領域の上記設定開度と上記第2及び第3運転領域の上記設定開度との間の値に設定されている、ことが好ましい。
【0015】
こうすることで、第1運転領域から第2又は第3運転領域に移行する際に、吸気量の急激な変化を防止することができる。
【0016】
上記ハイブリッド車両の制御装置において、上記制御手段は、上記設定開度がそれぞれ設定された上記複数の運転領域とは別に上記車速及び上記アクセル開度により区分された複数の運転領域の該各運転領域で、上記エンジンの燃焼空燃比を、該各運転領域毎に予め設定された設定空燃比に制御するように構成されており、上記第1運転領域は、上記設定空燃比がそれぞれ設定された上記複数の運転領域の該設定空燃比の中で最もリーンな空燃比に設定された運転領域内に含まれている、ことが好ましい。
【0017】
このことにより、第1運転領域では、吸気音を抑制しながら、燃費やエミッションを向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のハイブリッド車両の制御装置によると、エンジンの運転中において、車速検出手段により検出された車速が第1所定速度以下であるとともにアクセル開度検出手段より検出されたアクセル開度が所定値以下であるときには、エンジンの吸気通路に設けられたスロットル弁の開度を、所定開度よりも小さい開度に制御し、更に上記車速及び上記アクセル開度により区分された複数の運転領域の該各運転領域で、上記スロットル弁の開度を、該各運転領域毎に予め設定された設定開度に制御し、上記複数の運転領域は、上記車速が上記第1所定速度以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値以下である第1運転領域を含み、上記第1運転領域の上記設定開度が、上記複数の運転領域の上記設定開度の中で最も小さい値に設定されるようにしたことにより、エンジンの運転中の吸気音により車両の乗員に不快感を与えないようにすることができる。また、エンジン回転音やロードノイズ音の大小に応じて吸気音を適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る制御装置が搭載されたハイブリッド車両を示す概略構成図である。
図2図1に示すハイブリッド車両のエンジン及び制御システムを示す図である。
図3】スロットル弁の開度を制御するための第1制御マップを示す図である。
図4】燃焼空燃比を制御するための第2制御マップを示す図である。
図5】空気過剰率λ=2.3でかつスロットル弁の開度Ta=60%の場合、λ=2.1でかつTa=60%の場合、及び、λ=2.3でかつTa=20%の場合の、エンジン回転数と、エンジンに駆動されることによるモータジェネレータの発電電力との関係を示すグラフである。
図6】コントロールユニットによる処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置が搭載されたハイブリッド車両1(以下、単に車両1という)を示す。この車両1は、所謂シリーズ式のハイブリッド車両であって、車両1に搭載されたエンジン10と、回転軸が該エンジン10の出力軸(後述のエキセントリックシャフト13)に連結されていて、エンジン10を駆動して始動させかつ該始動後のエンジン10により駆動されて発電するモータジェネレータ20と、このモータジェネレータ20によって発電された電力が蓄電(充電)される高電圧・大容量のバッテリ30と、エンジン10に駆動されることによるモータジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の蓄電電力(放電電力)の少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータ40とを備えている。
【0022】
モータジェネレータ20、バッテリ30及び走行用モータ40の間には、インバータ50が設けられている。このインバータ50を介して、モータジェネレータ20の発電電力が、バッテリ30及び/又は走行用モータ40に供給されるとともに、バッテリ30からの放電電力が、モータジェネレータ20及び/又は走行用モータ40に供給される。
【0023】
走行用モータ40は、モータジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30からの放電電力の少なくとも一方が供給されることにより駆動される。この走行用モータ40の駆動力が、デファレンシャル装置60を介して、駆動輪としての左右の前輪61に伝達され、これにより、車両1が走行する。尚、走行用モータ40は、車両1の減速時には、ジェネレータとして作動して、その発電した電力がバッテリ30に充電される。また、バッテリ30は、車両1の外部の電源による外部充電が可能である。
【0024】
エンジン10は、モータジェネレータ20による発電用にのみ使用される。エンジン10は、本実施形態では、水素タンク70に貯留されている水素ガスが、燃料として供給される水素エンジンである。
【0025】
図2に示すように、エンジン10は、ツインロータ式(2気筒)のロータリピストンエンジンであって、2つの繭状のロータハウジング11内(気筒内)に形成されるロータ収容室11aに、概略三角形状のロータ12がそれぞれ収容されて構成されている。2つのロータハウジング11は、3つのサイドハウジング(図示せず)の間に挟み込むようにして該サイドハウジングと一体化されてなり、各ロータハウジング11とその両側のサイドハウジングとで各ロータ収容室11aが形成される。尚、図2では、2つのロータハウジング11(2つの気筒)を展開した状態で図示しており、2つのロータハウジング11内の中央部にそれぞれ描いているエキセントリックシャフト13は、同じものである。
【0026】
上記各ロータ12は、その三角形の各頂部に図示しないアペックスシールを有し、これらアペックスシールがロータハウジング11のトロコイド内周面に摺接しており、このことで、各ロータ12により各ロータ収容室11a(各気筒内)に3つの作動室(燃焼室に相当)が画成される。そして、各ロータ12は、該ロータ12の3つのアペックスシールが各々ロータハウジング11のトロコイド内周面に当接した状態でエキセントリックシャフト13の周りを自転しながら、該エキセントリックシャフト13の軸心の周りに公転するようになっている。ロータ12が1回転する間に、該ロータ12の各頂部間にそれぞれ形成された作動室が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がロータ12を介して出力軸としてのエキセントリックシャフト13から出力される。
【0027】
上記各ロータ収容室11aには、吸気行程にある作動室に連通するように吸気通路14が連通しているとともに、排気行程にある作動室に連通するように排気通路15が連通している。吸気通路14は、上流側では1つであるが、下流側では、2つの分岐路に分岐してそれぞれ上記各ロータ収容室11aに連通している。吸気通路14の上記分岐部よりも上流側には、ステッピングモータ等のスロットル弁アクチュエータ90により駆動されて吸気通路14の断面積(弁開度)を調節するスロットル弁16が配設されている。吸気通路14の上記分岐部よりも下流側の各分岐路には、上記水素タンク70から供給された水素(燃料)を吸気通路14内に噴射する予混合用インジェクタ17が配設されている。この予混合用インジェクタ17により噴射された水素は空気と混合された状態(予混合状態)で、吸気行程にある作動室に供給される。
【0028】
上記排気通路15は、上流側では、各ロータ収容室11にそれぞれ連通するように2つ設けられているが、下流側では、1つに合流されている。この排気通路15の該合流部よりも下流側には、排気ガスを浄化するための排気ガス浄化触媒80が配設されている。この排気ガス浄化触媒80は、本実施形態では、NOx吸蔵還元触媒とされている。尚、図2において吸気通路14及び排気通路15に図示した矢印は、吸気及び排気の流れを示している。
【0029】
上記各ロータハウジング11(各気筒)には、上記水素タンク70から供給された水素(燃料)をロータ収容室11内(気筒内)に直接噴射する直噴用インジェクタ18と、上記予混合用インジェクタ17又は直噴用インジェクタ18より噴射された水素の点火を行う点火プラグ19とが設けられている。
【0030】
予混合用インジェクタ17は、後述のエンジン水温センサ106により検出されたエンジン冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度よりも低いときに作動する。一方、直噴用インジェクタ18は、上記エンジン水温が上記所定温度以上であるときに作動する。これは、上記エンジン水温が上記所定温度よりも低いときには、燃料(水素)が燃焼した際に生じる水蒸気が直噴用インジェクタ18の噴口において氷結して該噴口が塞がれる場合があるからである。また、ロータハウジング11のトロコイド内周面に付着した氷が、ロータ12のアペックスシールによって直噴用インジェクタ18の噴口内に掻き込まれ、このことによっても直噴用インジェクタ18の噴口が塞がれる場合がある。このように直噴用インジェクタ18の噴口が塞がれると、ロータ収容室11内に供給される燃料量が不足する。そこで、上記氷結によるロータ収容室11内への供給燃料量の不足を防止するべく、上記エンジン水温が、直噴用インジェクタ18の噴口で氷結が生じるような温度にあるときには、予混合用インジェクタ17により燃料の噴射を行う。上記エンジン水温が上記所定温度以上になれば、直噴用インジェクタ18の噴口内の氷が溶けるとともに、燃料(水素)が燃焼した際に生じる水蒸気が氷結することもないので、空気の充填率を高めて高トルクが得られるように直噴用インジェクタ18から水素を噴射する。
【0031】
ここで、エンジン10の始動時においては、その前のエンジン停止直前のエンジン水温が、通常は、上記所定温度以上であり、そのエンジン停止直前に発生した水蒸気は蒸発しているので、始動時における上記エンジン水温が上記所定温度よりも低くても、直噴用インジェクタ18の噴口内に氷が存在する可能性は低い。そこで、エンジン10の始動性を高めるべく、直噴用インジェクタ18から燃料を噴射する。そして、エンジン10の始動後においても、上記エンジン水温が上記所定温度よりも低い場合には、直噴用インジェクタ18から予混合用インジェクタ17に切り換えることになる。
【0032】
尚、本実施形態では、予混合用インジェクタ17は各分岐路において1つしか設けられていないが、直噴用インジェクタ18は、各ロータハウジング11において、エキセントリックシャフト13の軸方向(図2の紙面に垂直な方向)に2つ並んで配設されている(図2では、1つしか見えていない)。
【0033】
車両1には、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧を検出するバッテリ電流・電圧センサ101と、車両1のドライバーによるアクセルペダルの踏み込み量(ドライバーの操作によるアクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102(アクセル開度検出手段)と、車両1の車速を検出する車速センサ103(車速検出手段)と、エキセントリックシャフト13に設けられ、エキセントリックシャフト13の回転角度位置を検出する回転角センサ104(エンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサを兼ねる)と、エンジン10の排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ105と、ロータハウジング11の内部に形成されたウォータジャケット(図示せず)に臨んで該ウォータジャケット内を流れる冷却水の温度(エンジン水温)を検出するエンジン水温センサ106と、水素タンク70内の圧力(つまり水素タンク70内の水素残量)を検出するタンク圧力センサ107と、エンジン10の作動制御や、インバータ50の作動制御(つまりモータジェネレータ20及び走行用モータ40の作動制御)等を行うコントロールユニット100(制御手段)とが設けられている。
【0034】
コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。コントロールユニット100には、バッテリ電流・電圧センサ101、アクセル開度センサ102、車速センサ103、回転角センサ104、空燃比センサ105、エンジン水温センサ106、タンク圧力センサ107等からの各種信号が入力されるようになっている。
【0035】
そして、コントロールユニット100は、上記入力信号に基づいて、スロットル弁アクチュエータ90、ポート噴射用インジェクタ17、直噴用インジェクタ18、点火プラグ19に対して制御信号を出力してエンジン10を制御するとともに、インバータ50に対して制御信号を出力してモータジェネレータ20及び走行用モータ40を制御する。
【0036】
コントロールユニット100は、インバータ50を制御することにより、モータジェネレータ20の作動状態を、バッテリ30からの電力供給によりエンジン10を駆動する駆動状態と、エンジン10による駆動により発電して該発電電力をバッテリ30や走行用モータ40に供給する発電状態とに切り換えることが可能になっている。そして、コントロールユニット100は、エンジン10の始動時には、モータジェネレータ20の作動状態を上記駆動状態としてエンジン10を始動し、エンジン10の始動後には、上記発電状態に切り換える。
【0037】
また、コントロールユニット100は、バッテリ電流・電圧センサ101により検出された、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧に基づいて、バッテリ30の残存容量(SOC)を検出する。このことで、バッテリ電流・電圧センサ101及びコントロールユニット100は、バッテリ30の残存容量を検出するバッテリ残存容量検出手段を構成することになる。
【0038】
さらに、コントロールユニット100は、インバータ50を制御することにより、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様と、モータジェネレータ20からの発電電力のみでもって行う態様と、バッテリ30及びモータジェネレータ20の両方からの電力でもって行う態様とに切換え可能に構成されている。そして、コントロールユニット100は、バッテリ電流・電圧センサ101により検出された、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧に基づいて、バッテリ30の残存容量(SOC)を検出し、この検出されたバッテリ30の残存容量と、タンク圧力センサ107による水素タンク70内の水素残量とに基づいて、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様か、又は、モータジェネレータ20からの発電電力のみでもって行う態様にする。上記バッテリ30の残存容量が、予め決められた基準容量(使用下限容量と後述の第1所定容量C1との間の容量)よりも多くかつ上記水素残量が、予め決められた基準値(燃料の補給が必要である旨の警告をするような値)よりも多い場合には、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様、及び、モータジェネレータ20からの発電電力のみでもって行う態様のいずれの態様にしてもよく、この場合に、車両1の乗員が操作する操作スイッチ(図示せず)による選択により、いずれの態様にするかを決定する。
【0039】
コントロールユニット100は、上記操作スイッチの操作により、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様にしている場合において、エンジン10の停止中に、上記検出されたバッテリ30の残存容量が第1所定容量C1以下に低下したとき、又は、走行用モータ40の駆動要求出力が、予め設定された設定値以上になったときに、エンジン10を始動してその運転によりモータジェネレータ20を発電させて、モータジェネレータ20による発電電力を、バッテリ30に蓄電させるか又は走行用モータ40に供給する。本実施形態では、後述の第2及び第3運転領域では、走行用モータ40の駆動要求出力が上記設定値以上となるので、モータジェネレータ20による発電電力を走行用モータ40に供給して、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30及びモータジェネレータ20の両方からの電力でもって行う態様にする。一方、他の運転領域では、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様にするとともに、モータジェネレータ20による発電電力によってバッテリ30を充電する。
【0040】
コントロールユニット100は、バッテリ30の残存容量が回復して、上記第1所定容量C1よりも多い第2所定容量C2を超えると、エンジン10を停止し、エンジン10を停止した状態で、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様にする。そして、バッテリ30の残存容量が、再び第1所定容量C1以下に低下したとき、又は、走行用モータ40の駆動要求出力が上記設定値以上となったときには、上記の如くエンジン10を始動する。このようにバッテリ30の残存容量又は走行用モータ40の駆動要求出力に応じて、エンジン10の始動及び停止を繰り返す。
【0041】
上記第1所定容量C1は、例えば、バッテリ30のフル容量の半分よりも少し低い容量に設定され、上記第2所定容量C2は、例えば、バッテリ30のフル容量の半分よりも少し高い容量に設定されている。
【0042】
図3は、上記スロットル弁16の開度(全開を100%とし、全閉を0%とする)を制御するための第1制御マップを示す。この第1制御マップは、コントロールユニット100の上記メモリに予め記憶されたものである。この第1制御マップでは、車両1の車速とアクセル開度(アクセルペダルをフルに踏み込んだときのアクセル開度を100%とし、踏み込んでいないときのアクセル開度を0%とする)とにより区分された第1乃至第6運転領域A1〜A6が設定されている。これら各運転領域A1〜A6毎に、スロットル弁16の開度としてコントロールユニット100が制御すべき設定開度が予め設定されている。コントロールユニット100は、車速センサ103により検出された車速と、アクセル開度センサ102により検出されたアクセル開度とに決まる運転領域の上記設定開度でもって、スロットル弁16の開度を制御する。
【0043】
上記第1運転領域A1は、上記車速が第1所定速度V1以下であるとともに上記アクセル開度が所定値K以下である運転領域である。上記第1所定速度V1は、例えば15km/h〜25km/hであり、上記所定値Kは、例えば35%〜45%である。第1運転領域A1の上記設定開度は、所定開度よりも小さい開度であって、上記第1乃至第6運転領域A1〜A6の上記設定開度の中で最も小さい値(例えば20%)に設定されている。第1運転領域A1の上記設定開度は、該第1運転領域A1の中では一定である。第1運転領域A1では、スロットル弁16の開度を大きくすると、エンジン回転音やロードノイズ音に対して、エンジン10の気筒内に吸い込まれる吸気の脈動による吸気音が目立つようになり、車両1のドライバーを含む乗員に不快感を与えることになる。そこで、エンジン回転音やロードノイズ音に対して、上記吸気音が目立たない程度にまでスロットル弁16の開度を小さくする。尚、エンジン10の回転数は、基本的に、アクセル開度が大きくなるほど、高くなるようになされており、第1運転領域A1では低回転となる。
【0044】
上記第2運転領域A2は、上記車速が上記第1所定速度V1よりも大きい速度である第2所定速度V2よりも大きいとともに上記アクセル開度が上記所定値K以下である運転領域である。上記第2所定速度V2は、例えば30km/h〜40km/hである。また、上記第3運転領域A3は、上記車速が上記第2所定速度V2よりも大きい速度である第3所定速度V3よりも大きいとともに上記アクセル開度が上記所定値Kよりも大きい運転領域である。上記第3所定速度V3は、例えば45km/h〜55km/hである。上記第2及び第3運転領域A2,A3の上記設定開度は、上記第1乃至第6運転領域A1〜A6の上記設定開度の中で最も大きい値(例えば60%〜80%)に設定されている。第2及び第3運転領域A2,A3の上記設定開度は、エンジン10の回転数によって変化し、エンジン10の回転数が大きいほど、大きくなる。
【0045】
上記第4運転領域A4は、上記車速が上記第1所定速度V1よりも大きくかつ上記第2所定速度V2以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値K以下である運転領域である。また、上記第5運転領域A5は、上記車速が上記第2所定速度V2以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値Kよりも大きい運転領域である。さらに、上記第6運転領域A6は、上記車速が上記第2所定速度V2よりも大きくかつ上記第3所定速度V3以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値Kよりも大きい運転領域である。これら第4乃至第6運転領域A4〜A6の上記設定開度は、上記第1運転領域A1の上記設定開度と上記第2及び第3運転領域A2,A3の上記設定開度との間の値に設定されている。また、第5運転領域A5の上記設定開度は、第4及び第6運転領域A4,A6の上記設定開度よりも小さい値に設定されている。例えば、第4及び第6運転領域A4,A6の上記設定開度は35%に設定され、第5運転領域A5の上記設定開度は25%に設定されている。第4乃至第6運転領域A4〜A6の上記設定開度は、当該各運転領域A4〜A6の中ではそれぞれ一定である。
【0046】
本実施形態では、コントロールユニット100は、エンジン10の始動時には、燃焼空燃比が燃料リッチになるように上記燃料の噴射を行うことで、始動性を向上させる一方、エンジン10の始動後は、燃焼空燃比が燃料リーンになるように上記燃料の噴射を行うことで、燃費やエミッションを出来る限り向上させるようにしている。
【0047】
図4は、燃焼空燃比を制御するための第2制御マップを示す。この第2制御マップも、第1制御マップと同様に、コントロールユニット100の上記メモリに予め記憶されたものである。この第2制御マップでは、上記第1乃至第6運転領域A1〜A6とは別に上記車速及び上記アクセル開度により区分された第1乃至第3運転領域B1〜B3が設定されている。これら各運転領域B1〜B3毎に、コントロールユニット100が制御すべき設定空燃比(空気過剰率λ)が予め設定されている。コントロールユニット100は、車速センサ103により検出された車速と、アクセル開度センサ102により検出されたアクセル開度とに決まる運転領域の上記設定空燃比(空気過剰率λ)になるように、エンジン10を制御する。
【0048】
上記第1運転領域B1は、上記車速が上記第3所定速度V3よりも大きい速度である第4所定速度V4以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値K以下である運転領域である。上記第4所定速度V4は、例えば75km/h〜85km/hである。上記第1制御マップの第1運転領域A1は、上記第1運転領域B1内に含まれている。この第1運転領域B1の上記設定空燃比は、上記第1乃至第3運転領域B1〜B3の中で最もリーンな空燃比(例えばλ=2.3)に設定されている。
【0049】
上記第2運転領域B2は、上記車速が上記第4所定速度V4よりも大きくかつ第5所定速度V5(第4所定速度V4よりも大きい速度)以下であるとともに上記アクセル開度が上記所定値K以下である運転領域である。上記第5所定速度V5は、例えば85km/h〜95km/hである。この第2運転領域B2では、例えば、λ=2.2に設定されている。
【0050】
上記第3運転領域B3は、上記車速が上記第5所定速度V5よりも大きいか又は上記アクセル開度が上記所定値Kよりも大きい運転領域である。この第3運転領域B3では、上記第1乃至第3運転領域B1〜B3の中で最もリッチな空燃比(例えばλ=2.1)に設定されている。
【0051】
図5は、エンジン10の回転数と、エンジン10に駆動されることによるモータジェネレータ20の発電電力との関係を示す。実線で示すラインは、空気過剰率λ=2.3でかつスロットル弁16の開度Ta=60%の場合のものであり、破線で示すラインは、λ=2.1でかつTa=60%の場合のものであり、一点鎖線で示すラインは、λ=2.3でかつTa=20%の場合のものである。
【0052】
上記第1運転領域A1では、スロットル弁16の開度が小さくてエンジン10の回転数が低く、しかも、エンジン10の燃焼空燃比がリーンであるため、図5の一点鎖線で示すラインのように、上記発電電力としては小さくなるが、大きな発電電力が必要な運転領域ではないので、問題はない。この第1運転領域A1では、上記吸気音による乗員への不快感を防止することを優先して、スロットル弁16の開度を小さくする。これにより、エンジン10の運転効率は少し低下することになるが、エンジン10の燃焼空燃比をリーンにすることで、燃費やエミッションの向上を図ることができる。
【0053】
上記第2及び第3運転領域A2,A3では、スロットル弁16の開度が大きく、これにより、吸気量を確保して高効率でエンジン10を運転することができ、大きな発電電力を発生させることができる。特に第3運転領域A3では、エンジン10の回転数が高く、燃焼空燃比が第1運転領域A1よりもリッチであるので、ドライバーの加速要求に対応することができるようになる。第2及び第3運転領域A2,A3では、吸気音は大きくなるものの、吸気音よりもエンジン回転音やロードノイズ音の方が高くなり、吸気音は乗員には聞こえない。
【0054】
上記第4乃至第6運転領域A4〜A6では、スロットル弁16の開度が、上記第1運転領域A1と上記第2及び第3運転領域A2,A3との間の値に制御される。これにより、第1運転領域から第2又は第3運転領域に移行する際に、吸気量の急激な変化を防止することができる。尚、第5及び第6運転領域A5,A6では、加速要求があるにも関わらず、スロットル弁16の開度が比較的小さいために吸気量が不足気味になるが、加速度が大きいために第5及び第6運転領域A5,A6から直ぐに第3運転領域A3に移行することになり、大きな問題は生じない。
【0055】
ここで、コントロールユニット100が、上記操作スイッチの操作により、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様にしている場合の、該コントロールユニット100による処理動作について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
最初のステップS1で、上記操作スイッチを含む各種スイッチや各種センサからの情報を入力し、次のステップS2で、バッテリ30の残存容量(SOC)が第1所定容量C1以下であるか否かを判定する。このステップS2の判定がYESであるときには、ステップS3に進む一方、ステップS2の判定がNOであるときには、ステップS8に進む。
【0057】
上記ステップS3では、上記入力情報に中から車速及びアクセル開度を読み込み、次のステップS4で、車速及びアクセル開度に応じた運転領域(第1及び第2制御マップの運転領域)を算出する。次のステップS5では、上記ステップS4で算出した第1制御マップの運転領域に応じたスロットル開度(上記設定開度)を取得し、次のステップS6では、上記ステップS4で算出した第2制御マップの運転領域に応じた燃焼空燃比(上記設定空燃比(空気過剰率λ))を取得する。
【0058】
次のステップS7では、上記取得したスロットル開度及び燃焼空燃比(λ)に応じてエンジン10を運転する(スロットル16の開度、燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期等を制御する)。ステップS7の後は、リターンする。
【0059】
尚、エンジン10の停止中に、バッテリ30の残存容量(SOC)が第1所定容量C1以下に低下したときには、モータジェネレータ20によりエンジン10を始動させる動作がある。
【0060】
上記ステップS2の判定がNOであるときに進むステップS8では、バッテリ30の残存容量(SOC)が第2所定容量C2よりも大きいか否かを判定する。このステップS8の判定がNOであるときには、上記ステップS3に進む一方、ステップS8の判定がYESであるときには、ステップS9に進んで、エンジン10を停止させ、しかる後にリターンする。
【0061】
以上のように、本実施形態では、エンジン10の運転中において、検出された車速及びアクセル開度が第1運転領域A1にあるとき(検出された車速が第1所定速度V1以下であるとともに検出されたアクセル開度が所定値K以下であるとき)に、スロットル弁16の開度を、所定開度よりも小さい開度であって、第1乃至第6運転領域A1〜A6の上記設定開度の中で最も小さい値に制御するようにしたので、エンジン10の運転中の吸気音により車両1の乗員に不快感を与えないようにすることができる。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、エンジン10を、水素を燃料とするロータリピストンエンジンとしたが、往復動型エンジンであってもよく、水素以外の燃料(例えばガソリン)用いるエンジンであってもよい。
【0064】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電するジェネレータと、該ジェネレータによる発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの蓄電電力及び上記ジェネレータによる発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータとを備えたハイブリッド車両の制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 ハイブリッド車両
10 エンジン
20 モータジェネレータ
30 バッテリ
40 走行用モータ
100 コントロールユニット(制御手段)(バッテリ残存容量検出手段)
101 バッテリ電流・電圧センサ(バッテリ残存容量検出手段)
103 車速センサ(車速検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6