(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空部を有する筒状に形成されるシリンダ(21)と、前記中空部内にて前記シリンダの軸方向に亘って外壁にそれぞれ開口する複数のベーン溝(24a〜24e)を有するロータ(22)と、前記複数のベーン溝内をそれぞれ変位して先端部が前記外壁から突出することが可能に設けられている複数のベーン(25a〜25e)と、前記シリンダの軸方向一方側および他方側に配置されている第1、第2のサイドブロック(26、27)と、前記複数のベーンを押し出して前記外壁から前記先端部を突出させる背圧を発生させる背圧導入通路(39a)と、を備え、
前記複数のベーンのうち2つのベーン、前記シリンダの内周面、前記第1、第2のサイドブロック、および前記ロータの外壁の間には、複数の圧縮室(28a〜28e)が形成されており、
前記ロータの旋回に伴って、前記複数のベーンがそれぞれ前記ベーン溝内を変位して前記先端部を前記シリンダの内周面に摺動させて冷媒入口側から冷媒出口側に前記複数の圧縮室を移動させながら前記複数の圧縮室の容積を変化させることにより、前記複数の圧縮室のうちいずれかの圧縮室にて前記冷媒入口側から吸入した冷媒を圧縮して前記冷媒出口に吐出させるものであり、
前記背圧導入通路は、前記冷媒出口に吐出される冷媒圧力に相当する前記背圧を前記冷媒出口側から前記ベーンの基部側に送り込むようになっており、
前記冷媒の物理情報を検出する検出手段(14、15)と、
前記ロータの旋回に伴って前記ベーンの先端部が前記シリンダの内周面から離れた第1状態と前記ベーンの先端部が前記シリンダの内周面に接触した第2状態とを交互に繰り返すチャタリング現象が生じるか否かについて前記検出手段の検出情報に基づき判定する判定手段(S120)と、
前記ロータの旋回に伴って前記チャタリング現象が生じると前記判定手段が判定したときには、前記ロータを停止させる停止手段(S130)と、を備えることを特徴とするコンプレッサ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るコンプレッサが適用された車両用空調装置の冷凍サイクル装置1の全体構成図である。
【0015】
冷凍サイクル装置1は、コンプレッサ2、放熱器3、膨張弁4、および蒸発器5から構成されている。
【0016】
コンプレッサ2は、エンジン6から電磁クラッチ7を介して与えられる回転駆動力によってロータを駆動させることにより、蒸発器5から冷媒を吸入して圧縮する。本実施形態のコンプレッサ2は、車両エンジンルームに設置されている。
【0017】
電磁クラッチ7は、コンプレッサ2に連結されたプーリ一体型の電磁クラッチである。電磁クラッチ7は、エンジン側プーリ8からVベルト9を介して与えられるエンジン6の回転駆動力をコンプレッサ2に伝達する。エンジン側プーリ8は、エンジン6の回転駆動軸に連結されているものである。電磁クラッチ7は、プーリ10、およびアーマチャ11を備える。プーリ10はエンジン6からのVベルト9を介して与えられる回転駆動力によって回転する。アーマチャ11は、コンプレッサ2の回転軸2aに連結されて、回転軸2aとともに回転する。
【0018】
電磁クラッチ7は、プーリ10およびアーマチャ11の間を連結することにより、エンジン6の回転駆動力をコンプレッサ2に伝達する一方、プーリ10とアーマチャ11とを離すと、エンジン6の回転駆動力がコンプレッサ2に伝達されなくなる。
【0019】
放熱器3は、コンプレッサ2から吐出される冷媒を放熱させる。本実施形態の放熱器3は、車両エンジンルームに設置されている。膨張弁4は、放熱器3から流出される冷媒を減圧膨張させる。蒸発器5は、車室内を空調するための車室内空調ユニットを構成するもので、膨張弁4にて減圧された冷媒を蒸発させて車室内空気から吸熱する作用を発揮させる。本実施形態の冷媒には、潤滑オイルが含まれている。
【0020】
次に、本実施形態のコンプレッサ2の詳細構成について
図2、
図3を用いて説明する。
【0021】
図2は、電磁クラッチ7の軸方向断面図である。この軸方向断面図は、電磁クラッチ7においてコンプレッサ2の回転軸の軸線を含んで、かつ軸線に沿う断面図である。
図3は、
図2中のIII−III断面図である。
【0022】
図2のコンプレッサ2は、ハウジング20を備える。ハウジング20は、軸線方向一方側に開口部を有する円筒状に形成されている。ハウジング20の中空部内には、筒状に形成されるシリンダ21が配置されている。シリンダ21は、その軸線方向がハウジング20の軸線方向に一致するように配置されている。
シリンダ21には、その軸線方向に直交する断面が楕円形になる中空部が形成されている(
図3参照)。
【0023】
シリンダ21の中空部内には、ロータ22が配置されている。ロータ22は、円筒状に形成されている。ロータ22は、その軸線方向がハウジング20の軸線方向に一致するように配置されている。ロータ22の中空部には、回転軸23が嵌め込まれている。ロータ22は、回転軸23によって支持されている。ロータ22の軸芯に対して回転軸23の軸芯がオフセットして配置されている。つまり、ロータ22は、回転軸23の軸芯に対して偏心して配置されていることになる。
【0024】
ロータ22には、ベーン溝24a、24b、24c、24d、24e(
図3参照)が設けられている。ベーン溝24a、24b、24c、24d、24eは、それぞれ、径方向に伸びるように形成されている。ベーン溝24a、24b、24c、24d、24eは、軸線方向に亘って形成されている。このことにより、ベーン溝24a、24b、24c、24d、24eは、それぞれ、ロータ22の外周面に軸線方向に亘って開口することになる。
【0025】
ここで、
図3に示すように、ベーン溝24a内には、板状に形成されているベーン25aが収納されている。ベーン25aは、その先端部がロータ22
の外周面から突出することが可能に設けられている。ベーン溝24b内には、板状に形成されているベーン25bが収納されている。ベーン25bは、その先端部がロータ22
の外周面から突出することが可能に設けられている。ベーン溝24c内には、板状に形成されているベーン25cが収納されている。ベーン25cは、その先端部がロータ22
の外周面から突出することが可能に設けられている。ベーン溝24d内には、板状に形成されているベーン25dが収納されている。ベーン25dは、その先端部がロータ22
の外周面から突出することが可能に設けられている。ベーン溝24e内には、板状に形成されているベーン25eが収納されている。ベーン25eは、その先端部がロータ22の外周面から突出することが可能に設けられている。
【0026】
図2のハウジング20のうちシリンダ21に対して軸線方向一方側にはサイドブロック26が配置されている。ハウジング20のうちロータ22に対して軸線方向他方側にはサイドブロック27が配置されている。
【0027】
このことにより、シリンダ21の中空部は、サイドブロック26、27の間に挟まれていることになる。サイドブロック26、27は、ハウジング20によって支持されている。回転軸23は、軸受けを介してハウジング20によって支持されている。
【0028】
図3に示すように、ロータ22の外周面、シリンダ21の内周面、サイドブロック26、27、およびベーン25a、25bの間には、圧縮室28aが形成されている。ロータ22の外周面、シリンダ21の内周面、サイドブロック26、27、およびベーン25b、25cの間には、圧縮室26bが形成されている。ロータ22の外周面、シリンダ21の内周面、サイドブロック26、27、およびベーン25c、25dの間には、圧縮室28cが形成されている。ロータ22の外周面、シリンダ21の内周面、サイドブロック26、27、およびベーン25d、25eの間には、圧縮室28dが形成されている。ロータ22の外周面、シリンダ21の内周面、サイドブロック26、27、およびベーン25e、25aの間には、圧縮室28eが形成されている。
【0029】
サイドブロック26には、冷媒入口30、31が設けられている。冷媒入口30、31は、ハウジング20の軸心を中心とする円周方向にずれて配置されている。冷媒入口30、31は、それぞれハウジング20の冷媒入口20aに連通されている。冷媒入口20aは、蒸発器5の冷媒出口に接続されている。
【0030】
サイドブロック27には、冷媒出口33、34が設けられている。冷媒出口33、34は、ハウジング20の軸心を中心とする円周方向にずれて配置されている。冷媒出口33、34は、遠心分離式のオイル分離機構38の入口に連通されている。オイル分離機構38は、ハウジング20のうち軸線方向他方側に配置されている。オイル分離機構38は、冷媒出口33、34から吐出される高圧冷媒の渦流を
図2中矢印Ybの如く発生させて、この高圧冷媒から潤滑オイルを分離するとともに、この潤滑オイルを除いた高圧冷媒をハウジング20の冷媒出口20bに導く。冷媒出口20bは、放熱器3の冷媒入口に接続されている。
【0031】
なお、本実施形態のハウジング20、シリンダ21、ロータ22、ベーン25a、25b、25c、25d、25e、およびサイドブロック26、27は、例えば、アルミニウムなどの金属材料から形成されている。
【0032】
オイル分離機構38の下側には、オイル溜め部39が形成されている。オイル溜め部39は、オイル分離機構38により高圧冷媒から分離された潤滑オイルを一時的に貯める。オイル溜め部39とベーン溝24a、24b、24c、24d、24eとの間には、背圧導入通路39aが設けられている。背圧導入通路39aは、ベーン溝24a〜24eの径方向内側にオイル溜め部39から潤滑オイルを
図2中の矢印Yaの如く導く通路を構成している。背圧導入通路39aは、冷媒出口33、34から吐出される高圧冷媒圧力に相当する背圧をベーン25a、25b、25c、25d、25eの基部側に送り込む役割を果たす。ベーン25a〜25eの基部側とは、径方向において先端部と反対側のことである。
【0033】
図2の電磁クラッチ7は、ハウジング20に対して軸線方向一方側に設けられている。電磁クラッチ7は、プーリ10およびアーマチャ11以外に、電磁コイル40を備える。
【0034】
プーリ10は、軸受け10aを介してハウジング20に対して回転軸2aの軸線を中心線として回転自在に支持されている。プーリ10には、Vベルト9(
図1参照)が掛けられるV溝が形成されている。アーマチャ11は、プーリ10に対して軸線方向一方側に配置されている。アーマチャ11は、回転軸2aの軸心を中心とする環状に形成されている。アーマチャ11は、ハブ43によって回転軸2aに連結されている。ハブ43およびアーマチャ11の間には、ゴム、板バネ等の弾性部材44が連結されている。弾性部材44は、その弾性力によってプーリ10およびアーマチャ11の間を離す方向に作用する。
【0035】
電磁コイル40は、回転軸2aの軸心を中心とする回巻きされている。電磁コイル40は、ハウジング20によって支持されている。電磁コイル40の電磁力は、プーリ10およびアーマチャ11の間を連結させる役割を果たす。プーリ10およびアーマチャ11は、鉄等の磁性材から形成されている。
【0036】
次に、本実施形態の冷凍サイクル装置1の電気的構成について説明する。
【0037】
冷凍サイクル装置1は、
図1の制御装置13を備える。制御装置13は、温度センサ14の検出温度、および圧力センサ15の検出圧力に基づいて、電磁コイル40への通電を制御する。
【0038】
温度センサ14は、蒸発器5の表面温度(具体的には、蒸発器5を構成するフィンの表面の温度)を検出する。つまり、温度センサ14は、蒸発器5内の冷媒(すなわち、低圧側冷媒)の温度を冷媒の物理情報として検出することになる。
【0039】
圧力センサ15は、コンプレッサ2の冷媒出口と膨張弁4の冷媒入口との間の高圧冷媒の圧力を検出するためのセンサである。本実施形態の圧力センサ15は、放熱器3の冷媒出口側の冷媒圧力を検出する。つまり、圧力センサ15は、高圧側冷媒の圧力を冷媒の物理情報として検出することになる。
【0040】
次に、本実施形態の冷凍サイクル装置1の作動について説明する。
【0041】
まず、制御装置13が電磁コイル40への通電を開始すると、電磁コイル40から電磁力が発生する。このとき、電磁コイル40から発生する電磁力は、弾性部材44の弾性力よりも大きい。このため、電磁コイル40の電磁力によってプーリ10およびアーマチャ11の間を連結させる。つまり、電磁クラッチ7をオンさせる。このため、エンジン6の回転駆動力が、Vベルト9、プーリ10、およびアーマチャ11を通して回転軸2aに伝達される。よって、エンジン6の回転駆動力によって回転軸2aが回転することになる。
【0042】
このとき、回転軸2aの回転に伴って、ロータ22が旋回する。このとき、ベーン25a〜25eは、背圧導入通路39aを通して与えられる背圧によって、シリンダ21の内周面側に押し出される。
【0043】
このとき、ベーン25a〜25eのそれぞれの先端部がシリンダ21の内周面に摺動しながら、ベーン25a〜25eは、それぞれ対応するベーン溝に沿って変位する。この際、圧縮室28a〜28eが冷媒入口30側から冷媒出口33側(或いは、冷媒入口31側から冷媒出口34側)に移動しながら、圧縮室28a〜28eの容積を変化させる。
【0044】
このことにより、圧縮室28a〜28eは、順次、ハウジング20の冷媒入口20aから冷媒入口30を通して低圧冷媒を吸入してこの吸入した冷媒を圧縮して冷媒出口33側に吐出する。さらに、圧縮室28a〜28eは、順次、冷媒入口31側から低圧冷媒を吸入してこの吸入した冷媒を圧縮して冷媒出口34側に吐出する。
【0045】
このように圧縮室28a〜28eから冷媒出口33、34側に吐出される高圧冷媒は、オイル分離機構38に導かれる。このオイル分離機構38は、高圧冷媒から潤滑オイルを分離するとともに、この潤滑オイルを除いた高圧冷媒をハウジング20の冷媒出口20bに導く。
【0046】
ここで、オイル分離機構38において高圧冷媒から分離された潤滑オイルは、オイル溜め部39に一時的に貯められる。そして、オイル溜め部39内の潤滑オイルは、背圧導入通路39aによって、ベーン溝24a〜24eの径方向内側に導かれる。つまり、オイル分離機構38において高圧冷媒から分離された潤滑オイルは、背圧導入通路39aによってベーン25a〜25eの基部側(
図3参照)に導かれることになる。このため、ベーン25a〜25eの基部側には、圧縮室28a〜28eから冷媒出口33、34側に吐出される高圧冷媒の圧力に相当する背圧が与えられる。したがって、ロータ22の外周面(外壁)からベーン25a〜25eをシリンダ21の内周面側(或いは、圧縮室28a〜28e側)に押し出す力が与えられることになる。
【0047】
このように電磁クラッチ7のオンに伴って、コンプレッサ2は、エンジン6の回転駆動力によってロータ22を駆動してハウジング20の冷媒入口20aから吸入した冷媒を圧縮して高圧冷媒をハウジング20の冷媒出口20bから吐出する。
【0048】
この冷媒出口20bから吐出される高圧冷媒は、放熱器3で車室外に放熱される。この放熱器3を通過した冷媒は、膨張弁4で減圧膨張される。この膨張弁4で膨張減圧された低圧冷媒は、蒸発器5において、蒸発することにより、車室内空気から吸熱する。このことにより、蒸発器5において車室内空気を冷却することができる。その後、蒸発器5を通過した冷媒は、コンプレッサ2のハウジング20の冷媒入口20aに吸入される。
【0049】
このように作動する冷凍サイクル装置1のコンプレッサ2の圧縮作動には、ベーン25a〜25eをシリンダ21の内周面側に押し出すために十分な背圧をベーン25a〜25eに与えられることが必要になる。つまり、低圧冷媒の圧力と高圧冷媒の圧力との間の差圧が十分な圧力となることが必要になる。
【0050】
例えば、
図4中のベーン25aに加わる背圧が低いとき、ベーン25aをシリンダ21の内周面側に押し出す力(図中矢印Yb参照)が弱く、ベーン25aの先端部がシリンダ21の内周面に当たってもベーン25aが戻ってしまう(図中矢印Yc参照)。このため、ロータ22の旋回に伴ってベーン25aの先端部がシリンダ21の内周面から離れた第1状態とベーン25aの先端部がシリンダ21の内周面に接触した第2状態とを交互に繰り返すチャタリング現象が生じることになる。よって、ベーン25a〜25eとシリンダ21との間でチャタリング音が発生する。
【0051】
例えば、冬期の朝一番でエンジン始動に伴ってコンプレッサ2の作動を開始する場合、或いは、冬季高速走行後、サービスエリアなどで30分程度休憩後、再度エンジン始動(エアコンON)する場合には、低圧冷媒の圧力と高圧冷媒の圧力との間の差圧が不十分になる場合がある。
【0052】
特に、差圧が低いときに、コンプレッサ2を起動する場合において、背圧導入通路39a内の潤滑オイルに高圧ガスからなる気泡が混入すると、ベーン25a〜25eをそれぞれシリンダ21の内周面側に押し出す力がさらに一層弱くなる。
【0053】
そこで、本実施形態では、制御装置13は、次のように、
図5のフローチャートにしたがって、コンプレッサ2のオン/オフを制御する。
図5のフローチャートは、制御装置13の制御処理を示す。以下、制御装置13の制御処理について説明する。
【0054】
まず、ステップS100において、温度センサ14によって蒸発器5の表面温度を検出する。次のステップS110において、圧力センサ15によって、放熱器3の冷媒出口側の冷媒圧力(すなわち、高圧冷媒の圧力)を検出する。
【0055】
次のステップS120において、ロータ22の旋回に伴ってチャタリング現象が発生するか否かについて、
図6のマップを用いて判定する。
【0056】
図6のマップは、放熱器3の冷媒出口側の冷媒圧力(図中ガス圧と記す)を縦軸とし、蒸発器5の表面温度(図中エバ温と記す)を横軸として、放熱器3の冷媒出口側の冷媒圧力および蒸発器5の表面温度の関係を示す。
図6中の太線は、放熱器3の冷媒出口側の冷媒圧力の閾値Kを示している。
【0057】
蒸発器5の表面温度(エバ温度)が、低温域に入っているとき、閾値Kは最低値になる。蒸発器5の表面温度(エバ温度)が高温域に入っているときには、閾値Kは最高値になる。そして、蒸発器5の表面温度(エバ温度)が中間温度に入っているときには、蒸発器5の表面温度(エバ温度)が高くなるほど、閾値Kが高くなる。
【0058】
なお、蒸発器5の表面温度の低温域として、例えば、零度から約2.5℃までの温度域が設定されている。蒸発器5の表面温度の高温域として、例えば、約15℃から20℃までの温度域が設定されている。蒸発器5の表面温度の中間温度として、例えば、約2.5℃から約15℃までの温度域が設定されている。
【0059】
上記ステップS120では、圧力センサ15の検出圧力が閾値Kよりも低いときには、低圧冷媒の圧力と高圧冷媒の圧力との間の差圧が不十分でチャタリング現象が発生するとして、YESと判定する。この場合、ステップS130において、電磁クラッチ7をオフした状態を維持する。
【0060】
このため、圧力センサ15の検出圧力が閾値Kよりも低いときには、ステップS120のYESとステップS130の電磁クラッチ7のオフ処理とを繰り返すことになる。これにより、コンプレッサ2がオフしてロータ22が停止した状態が継続される。
【0061】
その後、蒸発器5の表面温度(エバ温)が低下して、圧力センサ15の検出圧力が閾値Kよりも高くなる。
【0062】
そして、上記ステップS120において、低圧冷媒の圧力と高圧冷媒の圧力との間の差圧が十分でチャタリング現象が発生しないとして、NOと判定する。この場合、ステップS140において、電磁クラッチ7をオンする。つまり、電磁クラッチ7の電磁コイル40への通電を開始する。プーリ10およびアーマチャ11の間が連結して、エンジン6の回転駆動力によってロータ22が旋回することになる。これにより、コンプレッサ2による冷媒の圧縮作動が開始される。
【0063】
なお、
図6において、コンプレッサ2の起動直後(図中ACオン直後)に外気温が3℃、5℃、10℃、14度、20℃であった場合に、蒸発器5の表面温度(エバ温度)の変化を示している。
【0064】
以上説明した本実施形態によれば、制御装置13は、温度センサ14の検出温度と圧力センサ15の検出圧力とに基づいて、ロータ22の旋回に伴ってチャタリング現象が発生するか否かについて判定する。そして、圧力センサ15の検出圧力が閾値Kよりも高いときには、ロータ22の旋回に伴ってチャタリング現象が発生しないとして、電磁クラッチ7をオンしてロータ22の旋回を開始させる。一方、圧力センサ15の検出圧力が閾値Kよりも低いときには、ロータ22の旋回に伴ってチャタリング現象が発生するとして、電磁クラッチ7をオフしてロータ22を停止させる。したがって、チャタリング現象の発生を抑制することができる。
【0065】
本実施形態では、蒸発器5の表面温度が中間温度に入っているときには、蒸発器5の表面温度が高くなるほど、閾値Kが高くなる。ここで、低圧冷媒の温度が高くなると、低圧冷媒の圧力が高くなる。蒸発器5の表面温度は、低圧冷媒の温度を示している。このため、低圧冷媒の圧力が高くなるほど、閾値Kが高くなることになる。したがって、閾値Kは、ロータ22を旋回させる際に、低圧冷媒と高圧冷媒との間の差圧が十分であるか否かを正確に判定することができる。すなわち、チャタリング現象が発生するか否かを正確に判定することができる。
【0066】
本実施形態では、チャタリング現象が生じるか否かを判定する際に、蒸発器5の表面温度を検出する温度度センサ14の検出温度と放熱器3の冷媒出口側の冷媒圧力を検出する圧力センサ15の検出圧力とを用いている。一般的な車両用空調装置の冷凍サイクル装置1では、温度度センサ14の検出温度と圧力センサ15とを用いている。このため、チャタリング現象が生じるか否かを判定する際に新たなセンサを追加することが不要になる。
【0067】
また、コンプレッサ2が作動を開始後に、コンプレッサ2に生じる振動・音を検出するセンサの出力に基づいてチャタリング現象が発生したと判定した場合に、コンプレッサ2を停止させることも考えられる。しかし、この場合、エンジンのノッキングセンサがチャタリング現象に伴って生じる振動を誤検出してエンジンの点火タイミングを誤って遅らせてしまう恐れがある。
【0068】
これに対して、本実施形態では、制御装置13が温度度センサ14の検出温度と圧力センサ15の検出圧力とを用いてチャタリング現象が発生するか否かを判定する。このため、エンジンの点火タイミングを誤って遅らせてしまう恐れは無い。
【0069】
なお、本実施形態では、エンジン6の始動後において、ステップS120でYESと判定して電磁クラッチ7をオフしてから、その後ステップS120でNOと判定して電磁クラッチ7をオンするまでの期間に、車室内の空調に問題が生じる場合には、電磁クラッチ7のオンタイミング等を実車でチューニングしてもよい。
【0070】
(他の実施形態)
上記実施形態では、エンジン6の駆動力によってコンプレッサ2を駆動した例について説明したが、これに代えて、電動モータの回転力によってコンプレッサ2を駆動してもよい。
【0071】
上記実施形態では、チャタリング現象が発生するか否かを判定する際に、蒸発器5の表面温度と放熱器3の冷媒出口側の冷媒圧力とを用いた例について説明したが、これに代えて、次の(1)、(2)、(3)、(4)のようにしてもよい。
(1)コンプレッサ2内の低圧側冷媒の温度とコンプレッサ2内の高圧側冷媒の圧力とに基づいて、チャタリング現象が発生するか否かを判定する。
(2)コンプレッサ2内の低圧側冷媒の圧力とコンプレッサ2内の高圧側冷媒の圧力との間の圧力差に基づいて、チャタリング現象が発生するか否かを判定する。
(3)放熱器3の冷媒出口側の冷媒圧力に代えて、コンプレッサ2の冷媒出口と放熱器3の冷媒出口との間の高圧側冷媒の圧力を用いる。
(4)蒸発器5の表面温度に代えて、蒸発器5から吹き出される空気温度を用いてもよく、蒸発器5を構成するチューブの表面温度を用いてもよい。
【0072】
上記実施形態では、制御装置13において、コンプレッサ2が作動する前に、チャタリング現象が発生するか否かを判定した例について説明したが、これに代えて、コンプレッサ2が作動を開始後にチャタリング現象が発生したか否かを判定して、チャタリング現象が発生したと判定した場合にコンプレッサ2を停止させてもよい。この場合、制御装置13は、チャタリング現象の発生に伴う振動(或いは、音)をセンサにより検出し、この検出される振動が所定値以上であるとき、チャタリング現象が発生したと判定する。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。