(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、可曉性を有する部材としては樹脂が広く用いられている。またこのような可曉性を有する樹脂としてはプラスチックなどの比較的硬いものを用いることができる。よって特許文献1においてカーペット留め具としてこのような樹脂を採用すれば、このカーペット留め具が他の部材と衝突することで騒音を招く。特に、車体の下部では路面の凹凸に伴う振動が伝わりやすいので、騒音が生じやすい。また比較的硬い樹脂との衝突は、留め具や他の部材の磨耗を招く。
【0007】
そこで、本発明は、騒音および磨耗を抑制できるケーブル付きカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第1の態様は、車内の床に設けられるカーペットと、前記車内とは反対側で前記カーペットに沿って配索され
ているケーブルと、
不織布に含まれる基本繊維同士が接着樹脂により結合した状態とされた、凹部と一対の羽部とを含
む取付部材とを備え、前記一対の羽部は前記ケーブルの中心軸を挟む位置で前記カーペットにそれぞれ固定されており、前記凹部は前記一対の羽部と一体的に連結しており、前記カーペットとは反対側から前記ケーブルを覆っており、前記ケーブルは前記凹部の内部に配置されており、前記カーペットは前記ケーブルと対面する部分において平坦である。
【0009】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第2の態様は、第1の態様にかかるケーブル付きカーペットであって、前記カーペッ
トは、前記ケーブルの前記中心軸を挟む位置
において貫通孔
を有しており、前記凹部の両端部はそれぞれ前記一対の貫通孔を貫通し
ており、前記車内側で前記一対の羽部とそれぞれ連結し
ており、前記一対の羽部は前記車内側で前記カーペットに固定され
ている。
【0010】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第3の態様は、第1の態様にかかるケーブル付きカーペットであって、前記一対の羽部は前記車内とは反対側で前記カーペットに固定され
ている。
【0011】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかるケーブル付きカーペットであって、
前記接着樹脂は熱可塑性の接着樹脂であり、前記一対の羽部を前記カーペットに固定している。
【0012】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第5の態様は、第4の態様にかかるケーブル付きカーペットであって、前記カーペットは
、前記一対の羽部に固定している熱可塑性の第2接着樹脂を含
む。
【0013】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの
製造方法の第
1の態様は、第4または第5の態様にかかるケーブル付きカーペット
を製造する方法であって、前記一対の羽部
を超音波溶着により前記カーペットに固定
する。
【0014】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの製造方法
の第2の態様は、第1から第
5のいずれか一つの態様にかかるケーブル付きカーペットを製造する方法であって、前記凹部が前記ケーブルを覆う状態で、前記ケーブルを前記取付部材に仮固定する第1工程と、前記第1工程の実行後に、前記一対の羽部を前記カーペットに固定する第2工程とを備える。
【0015】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの製造方法の第3の態様は、車内の床に設けられるカーペットと、前記車内とは反対側で前記カーペットに沿って配索されるケーブルと、凹部と一対の羽部とを含み、前記一対の羽部は前記ケーブルの中心軸を挟む位置で前記カーペットにそれぞれ固定され、前記凹部は前記一対の羽部と一体的に連結し、前記カーペットとは反対側から前記ケーブルを覆う、取付部材とを備え、前記ケーブルは前記凹部の内部に配置されており、前記カーペットは前記ケーブルと対面する部分において平坦である、ケーブル付きカーペットの製造方法であって、不織布に対してホットプレスを行なうことで、前記凹部と前記一対の羽部とを成型する。
【0016】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの製造方法の第4の態様は、第3の態様にかかるケーブル付きカーペットの製造方法であって、前記カーペットは、前記ケーブルの前記中心軸を挟む位置において貫通孔を有しており、前記凹部の両端部はそれぞれ前記一対の貫通孔を貫通しており、前記車内側で前記一対の羽部とそれぞれ連結しており、前記一対の羽部は前記車内側で前記カーペットに固定されている。
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第5の態様は、第3の態様にかかるケーブル付きカーペットであって、前記一対の羽部は前記車内とは反対側で前記カーペットに固定されている。
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第6の態様は、第3から第5のいずれか一つの態様にかかるケーブル付きカーペットであって、
前記不織布に含まれる基本繊維同士を結合する接着樹脂は熱可塑性の接着樹脂であり、前記一対の羽部を前記カーペットに固定している。
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第7の態様は、第6の態様にかかるケーブル付きカーペットであって、前記カーペットは、前記一対の羽部に固定している熱可塑性の第2接着樹脂を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第1の態様
およびその製造方法の第3の態様によれば、取付部材を用いてケーブルがカーペットに取り付けられる。車体の下部は路面の凹凸による振動が伝わりやすいところ、取付部材は不織布で形成されるので、当該振動によって取付部材が他の部材に衝突したとしても騒音になりにくい。また振動も吸収しやすいので振動を車内に伝達しにくい。さらに取付部材と他の部材との磨耗も招きにくい。また不織布自体にも耐摩耗性がある。
【0018】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第2の態様
およびその製造方法の第4の態様によれば、ケーブルとは反対側で取付部材がカーペットに固定されるので、取付部材をより強固にカーペットに固定できる。
【0019】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第3の態様
およびその製造方法の第5の態様によれば、取付部材がカーペットに対して車内側に存在する必要はないので、美観を損ねることがない。
【0020】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第4の態様
およびその製造方法の第6の態様によれば、別途に接着剤で羽部とカーペットを固定する場合に比して、製造コストを低減できる。
【0021】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの第5の態様
およびその製造方法の第7の態様によれば、羽部の接着樹脂のみならずカーペットの第2接着樹脂も用いている。よって接着時において、接着樹脂がカーペットに染み込まなくても、接着樹脂と第2接着樹脂と混ざることで固定できる。したがって固定に要する時間を短縮できる。
【0022】
本発明にかかるケーブル付きカーペット
の製造方法の第
1の態様によれば、溶着サイクルが短く、また消費電力も小さい点などで有利である。
【0023】
本発明にかかるケーブル付きカーペットの製造方法
の第2の態様によれば、仮固定により、ケーブルと取付部材とを一体に取り扱うことができるので第2工程が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の実施の形態.
<ワイヤハーネスの配索状況>
図1は、自動車におけるワイヤハーネスの配索状況の一例を模式的に示している。
図1では、鉛直上方から見た自動車1の外形が略長方形状に模式的に示されており、また自動車1のタイヤが破線で示されている。
図1の例示では自動車1は紙面上方に前進し、紙面下方に後進する。また
図1の例示では、ワイヤハーネス10と、このワイヤハーネス10を固定する取付部材20とが示されており、自動車1に設けられる他の構成要素については本願の本質とは異なるため図示を省略している。
【0026】
ワイヤハーネス10は例えば複数の電線が束ねられて形成される。ワイヤハーネス10は自動車1に設けられる電子機器同士(不図示)を接続するものであり、自動車1の内部において適宜に配索される。
図1の例示では、ワイヤハーネス10は適宜に分岐/合流しており、例えば前部座席側において車幅方向に延在するとともに、その車幅方向における両側および中央において車長方向の後方側(後部座席側)へと延在している。ワイヤハーネス10は、例えば一端側において前部座席側に設けられる電子機器(不図示)に接続され、また他端側において他の電子機器(例えばドアロック、ドアノブなど、不図示)と接続される。
【0027】
これらのワイヤハーネス10は車内から視認されないように自動車1の内部で配索されており、例えば床下で配索される。すなわち、自動車1のボディ床面(パネル)にはフロアカーペット(不図示)が設けられており、ワイヤハーネス10がこのフロアカーペットに対して車内とは反対側(即ち鉛直下方側)に設けられる。フロアカーペットは、例えば繊維状のもの、或いはゴムまたは塩化ビニルなどの高分子材料で形成されたものを採用することができる。
【0028】
本実施の形態では、ワイヤハーネス10は適宜の位置で取付部材20によってフロアカーペットに固定される。以下に、ワイヤハーネス10の取付構造について詳述する。
【0029】
<ワイヤハーネスの取付構造>
図2はワイヤハーネス10の取付構造の概念的な一例を示す斜視図であり、ワイヤハーネス10および取付部材20を鉛直下方側(つまり床下側)から見た図である。よって
図2では紙面下側が車内側である。
図3はワイヤハーネス10の長手方向に垂直な断面における取付構造の概念的な一例を示す断面図であり、
図4は鉛直下方から見た取付構造の概念的な一例を示す平面図である。
【0030】
ワイヤハーネス10は複数の電線が束ねて形成されるものの、
図2〜4においては、このワイヤハーネス10を模式的に円柱で示している。これは、以下で参照するほかの図面のおいても同様である。
図2〜4に示すとおり、ワイヤハーネス10はフロアカーペット30に対して車内とは反対側で、フロアカーペット30に沿って配索される。
【0031】
取付部材20は不織布で形成される。取付部材20はこの不織布をホットプレスすることにより形成されている。不織布としては、互いに絡み合う基本繊維と接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、摂氏110度〜115度)を有する樹脂を利用することができる。
【0032】
このような不織布が、基本繊維の融点よりも低く、かつ、接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱されると、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染みこんでいく。その後、不織布の温度が接着樹脂の融点よりも低い温度になることにより、基本繊維同士が結合された状態で接着樹脂が硬化する。これにより、不織布が加熱前の状態よりも硬化して、所要の成型形状に維持されるようになる。
【0033】
上記基本繊維としては、接着樹脂の融点で繊維状態を保つことができればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。
【0034】
基本繊維と接着樹脂の組合せとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)、の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点はおよそ摂氏250度であり、接着樹脂の融点はおよそ摂氏110度〜150度である。このため、不織布が摂氏110度〜250度の温度に加熱されると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染みこむ。そして、不織布が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、接着樹脂が基本繊維同士を結合した状態で固化する。これにより、不織布は硬化して所定の成型形状を維持する。
【0035】
また、ホットプレスとは、加工対象物である不織布を金型間に挟み込み、加熱状態で金型に圧力を加えて不織布を成型加工することをいう。
【0036】
取付部材20は上記ホットプレスにより凹部21と一対の羽部22とからなる形状に成型される。
【0037】
図4を参照して(即ちフロアカーペット30に対して垂直に見て)、一対の羽部22はワイヤハーネス10の中心軸Qを挟む位置で、フロアカーペット30にそれぞれ固定される。
図2〜4の例示では、一対の羽部22は略長方形の板状形状を有しており、その長辺がワイヤハーネス10の長手方向D1に沿うように配置されている。また一対の羽部22は比較的広い面でフロアカーペット30に接している。この一対の羽部22とフロアカーペット30との固定方法は任意であるものの、例えば接着剤を羽部22とフロアカーペット30との間に介在させて、これらを固定することができる。
【0038】
凹部21は一対の羽部22と一体的に連結され、フロアカーペット30とは反対側からワイヤハーネス10の長手方向D1における一部を覆う。
図3を参照して(即ち長手方向D1に垂直な断面で見て)、凹部21は例えば略U字状の形状を有している。
図2〜4の例示では、凹部21はこのU字形状が長手方向D1に沿って一様に延在した形状を有している。そしてワイヤハーネス10の当該一部がこのU字形状の凹部21の内部に配置されることで、凹部21はワイヤハーネス10の当該一部を覆う。
【0039】
また凹部21は、U字形状の両端部212において、それぞれ一対の羽部22と一体的に連結している。
図3を参照して(即ち長手方向D1に垂直な断面において)、一対の羽部22は、凹部21から互いに遠ざかるようにフロアカーペット30に沿って延在している。一対の羽部22と両端部212とは略L字状となるように連結されている。
【0040】
このような構造により、取付部材20はフロアカーペット30と共にワイヤハーネス10の当該一部を囲むこととなる。よって、ワイヤハーネス10は取付部材20によってフロアカーペット30に取り付けられる。
【0041】
しかも取付部材20が不織布で形成される。自動車1の下部では路面の凹凸に伴う振動が伝わりやすいところ、その下部に設けられる取付部材20が不織布で形成されているので、たとえ振動により取付部材20が他の部材に衝突したとしても騒音が生じくい。不織布は繊維部材であり、衝突音を発生しにくいからである。また不織布はプラスチックなどの樹脂に比べて柔らかく振動を吸収しやすい。したがって、この衝突による当該他の部材に対する磨耗も招きにくく、また振動を車内に伝えにくい。また不織布自体にも耐摩耗性があるので、取付部材20は耐摩耗性が高い。
【0042】
また取付部材20は不織布に対してホットプレスを行なうことで成型している。よって不織布に対してなんらプレス加工しない場合に比べると、取付部材20を硬くすることができる。よって、振動に伴うワイヤハーネス10のぐらつきを抑制して、より強固に保持することができる。つまり樹脂に比べては騒音を抑制しつつ、プレス加工しない不織布に比べて保持力を向上するのである。
【0043】
ワイヤハーネス10はこの取付部材20の複数を用いて複数の位置でフロアカーペット30に取り付けられてもよい。例えば
図1のように配索されたワイヤハーネス10を、複数の位置でフロアカーペット30に取り付けることができる。これにより、配索されたワイヤハーネス10とフロアカーペット30とを一体的に取り扱うことができる。よって例えば所定の第1工場で取付部材20を用いてワイヤハーネス10とフロアカーペット30とを上述のように固定し、第2工場においてワイヤハーネス10付きのフロアカーペット30を車体に取り付けることができる。この場合、第2工場においてワイヤハーネス10を改めて配索して固定する必要がないので、第2工場における作業工程を低減できる。これは第2工場が取引先である場合に有用である。
【0044】
なお取付部材20の位置および個数は
図1に限らず、適宜に設定することができる。またワイヤハーネス10をどのように配索するかも任意に設定できる。また
図2〜4の例示では、取付部材20(より詳細には凹部21)はワイヤハーネス10の長手方向D1における一部を覆っているものの、ワイヤハーネス10の全体を覆っても構わない。
【0045】
また凹部21の深さ(フロアカーペット30に垂直な方向の深さ)はワイヤハーネス10の外径よりも浅くても構わない。この場合、取付部材20とフロアカーペット30とがワイヤハーネス10を押圧しつつ保持することができる。よってワイヤハーネス10の保持力を向上できる。
【0046】
あるいは、凹部21の深さはワイヤハーネス10の外径よりも深くても構わない。この場合、ワイヤハーネス10によるフロアカーペット30の盛り上がりを回避することができる。よって美観を損ねない。
【0047】
またこの場合、凹部21とフロアカーペット30とはワイヤハーネス10を遊挿可能に保持することとなる。よってワイヤハーネス10が長手方向に移動しえる。したがって、この場合は、ワイヤハーネス10とフロアカーペット30とが、ワイヤハーネス10の端部に設けられるコネクタと引っかかることが望ましい。これにより、ワイヤハーネス10が取付部材20から抜け落ちることを防止できる。
【0048】
また凹部21の幅(長手方向D1に垂直、かつ、フロアカーペット30に平行な方向の幅)は、ワイヤハーネス10の外径よりもわずかに小さくても構わない。これにより、ワイヤハーネス10を幅方向に押圧して保持することができる。
【0049】
また
図2〜
図4では、一対の羽部22の長手方向D1における長さが凹部21の長手方向D1における長さと等しく設定されている。ただしこれに限らず、異なっていても構わない。例えば羽部22の各々が、長手方向D1において凹部21の全体に設けられず、部分的に設けられても構わない。例えば
図5では、羽部22の各々が2つの羽部221によって形成されており、この2つの羽部221が長手方向D1で離間している。つまり羽部221は部分的に設けられている。これよれば、取付部材20を成型するのに必要な不織布の量を低減することができる。
【0050】
<固定方法>
一対の羽部22はフロアカーペット30と任意の方法で固定される。例えばフロアカーペット30と羽部22との間に接着剤を別途に介在させて、この接着剤を介してこれらを固定してもよい。
【0051】
或いは、フロアカーペット30の耐熱温度よりも低い融点を有するバインダ樹脂を、取付部材20のバインダ樹脂として採用する場合には、このバインダ樹脂を用いてフロアカーペット30と羽部22とを固定してもよい。即ち、羽部22に対して熱を加えることで羽部22のバインダ樹脂を溶融させてこれをフロアカーペット30に接触させ、その後に加熱を終了させて当該バインダ樹脂を硬化させることで、フロアカーペット30と羽部22とを固定する。これによれば、別途に接着剤を用いる場合に比して製造コストを低減することができる。
【0052】
またフロアカーペット30が熱可塑性のバインダ樹脂を有する繊維状部材であって、そのバインダ樹脂の融点が羽部22の基本繊維の融点よりも低い場合には、このバインダ樹脂を利用してもよい。すなわち、フロアカーペット30のバインダ樹脂の融点よりも高い温度でフロアカーペット30を加熱することで、このバインダ樹脂を用いてフロアカーペット30と羽部22とを固定する。
【0053】
或いは、羽部22とフロアカーペット30のバインダ樹脂の両方を利用してもよい。すなわち、これらのバインダ樹脂の両方の融点よりも高い温度で羽部22とフロアカーペット30とを加熱して、両方のバインダ樹脂を溶融させることで、この両方を用いて羽部22とフロアカーペット30とを固定する。これによれば、羽部22およびフロアカーペット30の一方のバインダ樹脂が他方の基本繊維間に完全に染み込まなくても、フロアカーペット30と羽部22とのバインダ樹脂が十分に接触し合えば固定できるので、固定に要する時間を短縮することができる。
【0054】
またバインダ樹脂を加熱する方法は任意であるものの、いわゆる超音波溶着により熱を加えてもよい。超音波溶着とは、超音波振動による圧力をフロアカーペット30および羽部22に加えてこれらに摩擦熱を発生させ、これにより融点を超える温度をバインダ樹脂に与えるものである。このような超音波溶着によれば、溶着サイクルが短く、また消費電力も小さい点などで有利である。
【0055】
<製造方法の一例>
まず所定の不織布に対してホットプレスを行なって、この不織布を凹部21と一対の羽部22とからなる形状に成型する。より具体的に説明すると、合わせ面の一部に略U字状の凹部が形成された下側金型と、合わせ面の一部により小さい略U字状の突部が形成された上側金型とを、凹部および突部が互いに向かい合うように配置する。そして、この下側金型と上側金型との間に平板状の不織布を配置し、加熱を行ないつつ下側金型および上側金型を互いに近づけることで、この不織布を凹部21と一対の羽部22とを有する形状へと成型する。これにより取付部材20を形成することができる。
【0056】
なお、このように上側金型と下側金型とによる一度のホットプレスで取付部材20を成型できるので、凹部21と一対の羽部22とを有する取付部材20はホットプレスによる成型に適している。
【0057】
次にワイヤハーネス10を凹部21に挿入しつつ、ワイヤハーネス10を取付部材20に仮固定する。この仮固定は任意の方法によって実行されればよく、例えば両面に粘着剤が塗布されたテープを、凹部21とワイヤハーネス10との間に介在させることで、これらを仮固定することができる。この両面テープの基材としては例えば紙またはポリ塩化ビニルなどを採用することができる。
【0058】
次に、ワイヤハーネス10が仮固定された取付部材20をフロアカーペット30に配置して固定する。より詳細には、フロアカーペット30によって凹部21の開口部が塞がれるように取付部材20を配置し、一対の羽部22とフロアカーペット30とを互いに固定する。この固定方法の一例は上述のとおりである。
【0059】
このような製造方法によれば、ワイヤハーネス10と取付部材20とを仮固定するので、以後の工程においてワイヤハーネス10と取付部材20とを一体で取り扱うことができる。よって、ワイヤハーネス10と取付部材20をフロアカーペット30に対して配置しやすい。したがって作業性を向上することができる。したがって、例えば所定の第1工場において取付部材20をワイヤハーネス10に仮固定し、第2工場において取付部材20を用いてワイヤハーネス10をフロアカーペット30に取り付ける場合、第2工場においける作業性を向上できる。これは第2工場が取引先である場合に有利である。
【0060】
第2の実施の形態.
以下、第2の実施の形態にかかるワイヤハーネス取付構造について説明する。ここでは主として第1の実施の形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0061】
図6,7は、第2の実施の形態にかかるワイヤハーネス10の取付構造の概念的な構成の一例を示す図である。
図6は長手方向D1に垂直な断面における取付構造を示し、
図7は鉛直下方から見た取付構造の概念的な一例を示す平面図である。
【0062】
フロアカーペット30には一対の貫通孔31が形成されている。
図7を参照して(即ちフロアカーペット30に垂直に見て)、この一対の貫通孔31はワイヤハーネス10の中心軸Qを挟む位置にそれぞれ形成される。貫通孔31は例えばワイヤハーネス10の長手方向D1に沿って延在する長尺状の形状を有する。
【0063】
凹部21は第1の実施の形態と同様にワイヤハーネス10をフロアカーペット30とは反対側から覆う。一方で第1の実施の形態とは違って、凹部21の両端部212はそれぞれ一対の貫通孔31を貫通して車内側(ワイヤハーネス10とは反対側)に延在している。そして両端部212は車内側で一対の羽部22と一体的に連結されている。
【0064】
一対の羽部22はフロアカーペット30に対して車内側に設けられており、両端部212からフロアカーペット30に沿って延在する。そして、一対の羽部22は車内側においてフロアカーペット30に固定される。
【0065】
このような取付構造によれば、凹部21と一対の羽部22とがフロアカーペット30に係止される。よって取付部材20とフロアカーペット30との固定力を向上することができる。
【0066】
<取付部材の取付方法の一例>
取付部材20は弾性変形可能な公知の不織布で形成されることが望ましい。このような不織布としては、例えばバインダ樹脂として、硬化した状態で弾性を示す弾性樹脂(合成ゴムなど)を採用したものを用いることができる。
図8は取付部材20を弾性変形させた状態の一例を示す概念的な図である。即ち、羽部22と、これと連結する端部212との一組が略直線状に近づくように、羽部22と端部212とが弾性変形している。つまり、羽部22と端部212とがなす角度(<180度)が180度に近づくように、羽部22および端部212とが弾性変形する。
【0067】
このような取付部材20をフロアカーペット30に取り付ける方法に当たって、例えばまず一方の羽部22を一方の貫通孔31に貫通させて、その一方の羽部22の全体を車内側に通す。次に他方の羽部22と、これと連結する端部212との一組を、直線状に近づけるように弾性変形させて、その姿勢で他方の羽部22を他方の貫通孔31に貫通させる。そして、他方の羽部22の全体を車内側に通し、この状態で外力を消失させる。これにより、他方の羽部22が元の角度で端部212に連結する形状に戻り、一対の羽部22が車内側でフロアカーペット30と対面することとなる。よって、取付部材20がフロアカーペット30に係止される。
【0068】
なお、一対の羽部22を一つずつ貫通孔31に通す必要はなく、一対の羽部22の両方をほぼ同時にそれぞれ一対の貫通孔31に通してもよい。例えば、取付部材20が全体的にU字形状となるように一対の羽部22の両方を弾性変形させ、この姿勢で、一対の羽部22の両方をほぼ同時にそれぞれ一対の貫通孔31に通してもよい。
【0069】
第2の実施の形態では、上述のとおり、一対の羽部22をフロアカーペット30に対して車内側に設け、一対の羽部22と両端部212とでフロアカーペット30に係止させることで、取付部材20とフロアカーペット30との固定力を向上させた。一方で第1の実施の形態では、一対の羽部22がワイヤハーネス10側でフロアカーペット30に固定されており、取付部材20の全体がフロアカーペット30よりもワイヤハーネス10側に設けられる。これによれば、取付部材20が乗員から見られることはない。よって美観を損ねない点では第1の実施の形態の取付構造が望ましい。
【0070】
またフロアカーペット30が乗員に踏まれることによって、フロアカーペット30は鉛直下方へと押圧される。これに伴ってワイヤハーネス10も鉛直下方へと押圧されるものの、ワイヤハーネス10が自動車1のボディ床面に当接すれば、ワイヤハーネス10はこのボディ床面で支持されることになる。この状態でフロアカーペット30が鉛直下方に押圧されると、第2の実施の形態の取付部材20では、羽部22とフロアカーペット30とが離間するように力が作用してしまう。そして、仮に固定が破れれば、羽部22が車内側に突出することになる。一方で第1の実施の形態の取付構造によれば、たとえフロアカーペット30が乗員に踏まれても、このように羽部22が車内側に突出することがない。
【0071】
また第1及び第2の実施の形態では、フロアカーペット30に取り付ける取付対象を、複数の電線が束ねて形成されるワイヤハーネス10として説明した。しかるに、取付対象は1本の電線であってもよく、また電線に限らず光ファイバであってもよく、あるいは電線および光ファイバの集合体であってもよい。要するに、取付対象は電子機器を繋ぐためのケーブルであればよい。
【0072】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。