(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
海島構造の海部を形成するポリエステル樹脂と海島構造の島部を形成するビニル樹脂とを含む結着樹脂と、前記海部に存在するドメイン状の第1離型剤と、前記島部に存在するドメイン状の第2離型剤と、を含有するトナー粒子を有し、
前記トナー粒子の切断面において、前記第2離型剤の断面面積をA1とし、前記第1離型剤の断面面積をB1としたときに、0.4≦A1/B1≦0.6の関係を満たし、かつ
前記トナー粒子の表面に前記ポリエステル樹脂が80%以上存在している
静電荷像現像用トナー。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0021】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称する)は、海島構造の海部を形成するポリエステル樹脂と海島構造の島部を形成するビニル樹脂とを含む結着樹脂と、海部に存在するドメイン状の第1離型剤と、島部に存在するドメイン状の第2離型剤と、を含有するトナー粒子を有し、前記トナー粒子の切断面において、第2離型剤の断面面積をA1とし、第1離型剤の断面面積をB1としたときに、0.2≦A1/B1≦0.8の関係を満たすことを特徴とする。
【0022】
本実施形態に係るトナーは、上記構成により、表面の凹凸が大きい記録媒体上にハーフトーン画像を形成しても、ハーフトーン画像の画像強度が向上する。
この理由は定かでないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0023】
ハーフトーン画像(例えば、トナー粒子が隙間なく一面に存在している画像を画像濃度100%としたとき、画像濃度1%以上30%以下の画像)は、べた画像に比べ記録媒体上のトナー粒子間の距離が大きく、トナー粒子が孤立した状態であるため、定着時に溶融したトナー粒子同士が接触し難い画像である。
ハーフトーン画像を、表面に平滑化処理(例えば、塗工処理、カレンダ処理)を施していない表面の凹凸の大きい記録部材に、形成する場合、表面に平滑化処理(例えば、塗工処理、カレンダ処理)を施していない表面の凹凸の大きい記録部材の凸部(以下、「記録媒体の凸部」と称する)では、記録媒体の凹部に比べ熱及び圧力を強く受けるので、溶融したトナー粒子の結着樹脂が記録媒体の凸部に染み込み画像強度の高い画像が得られ易くなるものの 、表面に平滑化処理(例えば、塗工処理、カレンダ処理)を施していない表面の凹凸の大きい記録部材の凹部(以下、「記録媒体の凹部」と称する)では、結着樹脂が記録媒体の凹部に染み込む程度の熱及び圧力を受けないので、高い画像強度の画像が得られ難い。そのため手や服でこすったり、記録媒体の上に紙を載せてこすったりしたときに、トナーの一部がはがれて移行して画像欠損や汚れの原因になったりすることがある。
一方、記録媒体の凹部で溶融したトナー粒子の結着樹脂が染み込むのに十分な熱及び圧力を付与すると、記録媒体の凹部では画像強度の高い画像が得られ易くなるものの 、記録媒体の凸部では過剰の熱及び圧力が付与される結果、溶融したトナー粒子の溶融粘度が低下し分子間凝集力が極端に低下するため、定着部材に移行しオフセットが発生し易くなると考えられる。オフセットしたトナーは画像形成装置を汚染して紙詰まりの原因となったり、記録媒体の画像部よりも下側に再移行して記録媒体を汚染したりする原因となることがある。
【0024】
オフセットを抑制するために離型剤をトナー粒子に含有させると、定着時にトナー粒子と定着部材との界面に離型剤が介在するため定着部材へのオフセットを抑制する。このとき表面に平滑化処理を施していない表面の凹凸の大きい記録媒体の凸部(以下、「記録媒体の凸部」と称する)ではトナー粒子が定着部材から十分な熱と圧力を受けるため結着樹脂の溶融粘度が低下して記録媒体に密着したり染み込むと同時に離型剤が定着部材との界面に介在するためオフセットが抑制しつつ画像強度が高くなる。しかし、表面に平滑化処理を施していない表面の凹凸の大きい記録媒体の凹部(以下、「記録媒体の凹部」と称する)ではトナー粒子が定着部材から受ける熱や圧力が不十分でトナー粒子の変形や結着樹脂の溶融が少ない状態となるため、結着樹脂の溶融粘度が高く定着部材へのオフセットは生じにくいが、離型剤の溶融粘度がトナー粒子の結着樹脂の溶融粘度よりも低くなるため、トナー粒子が溶融して記録媒体に染み込む前に離型剤が過剰に記録媒体へ染み込み、溶融したトナー粒子の結着樹脂の記録媒体への染み込みを阻害し易くなり画像強度が低下し易くなる。
【0025】
これに対して、本実施形態に係るトナーは、海島構造の海部を形成するポリエステル樹脂と海島構造の島部を形成するビニル樹脂とを含む結着樹脂と、海部に存在するドメイン状の第1離型剤と、島部に存在するドメイン状の第2離型剤と、を含有するトナー粒子を有し、前記トナー粒子の切断面において、第2離型剤の断面面積をA1とし、第1離型剤の断面面積をB1としたときに、0.2≦A1/B1≦0.8の関係を満たす。
本実施形態に係るトナーは、海島構造の海部を形成するポリエステル樹脂に存在するドメイン状の第1離型剤と海島構造の島部を形成するビニル樹脂に存在するドメイン状の第2離型剤とを所定の割合で含む構成を有する。このため、本実施形態に係るトナーは、比較的弱い圧力を受けると、第1離型剤のみをトナー粒子から染み出し易く、比較的強い圧力を受けると、第1離型剤及び第2離型剤をトナー粒子から染み出しやすいと考えられる。つまり、本実施形態に係るトナーは、本実施形態に係るトナーは、外部刺激(例えば、加圧、加熱)に応じて、離型剤の供給量を調整 するものと考えられる。
【0026】
このため、本実施形態に係るトナーは、表面に平滑化処理(例えば、塗工処理、カレンダ処理)を施していない表面凹凸の大きな記録媒体に画像を形成する場合、記録媒体の凹部では比較的弱い圧力を受けるので第1離型剤のみを供給し易く、記録媒体の凸部では比較的強い圧力を受けるので第1離型剤及び第2離型剤を供給し易いと考えられる。
よって、本実施形態に係るトナーに記録媒体の凹部で結着樹脂を染み込ませる程度の熱及び圧力が付与された場合、本実施形態に係るトナーは、ポリエステル樹脂で形成される海部の内部から第1離型剤のみを染み出させ易い。これは、ポリエステル樹脂の溶融粘度がビニル樹脂に比べ下がり易いためであると考えられる。このため、本実施形態に係るトナーは、記録媒体の凹部へ過剰な量の第1離型剤を供給することにならないため、結着樹脂の記録媒体の凹部への染み込みを阻害し難いと考えられる。
【0027】
また、本実施形態に係るトナーは、記録媒体の凸部では記録媒体の凹部に比べ大きい熱及び圧力が付与されるので、ポリエステル樹脂で形成される海部の内部からの第1離型剤に加え、ビニル樹脂で形成される島部の内部からの第2離型剤も供給される。つまり、記録媒体の凹部よりも多くの離型剤が供給されることになる。このため、本実施形態に係るトナーは、記録媒体の凸部では、定着部材とトナー粒子との界面に介在し、オフセットが抑制されるものと考えられる。
【0028】
また、本実施形態に係るトナーは、記録媒体の表面の凹凸形状に応じて効率的に離型剤を供給するために、必要以上に離型剤が記録媒体上に染み出し難い。このため、本実施形態に係るトナーは、特に、オフセットが発生しやすい定着時の圧力が高い場合であっても、トナー粒子と定着部材との界面に介在する離型剤の量を少なくなり難くさせると考えられる。その結果、本実施形態に係るトナーは、安定してオフセットを抑止させると考えられる。
また、本実施形態に係るトナーは、上記構成を有するために、定着初期の記録媒体の上端部と定着末期の記録媒体の下端部とで定着時に付与される熱量が異なり易い、プロセス方向に比較的長い(例えば、A3)記録媒体に画像を形成する場合であっても、画像強度にムラのない画像が得られ易い。
【0029】
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について説明する。
【0030】
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0031】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、離型剤と、必要に応じて、着色剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0032】
−結着樹脂−
結着樹脂は、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂を含む。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0033】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0034】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0037】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下より好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・ HLC−8120を用い、東ソー製カラム・ TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0038】
ポリエステル樹脂の製造は、周知の製造方法が挙げられる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法が挙げられる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0039】
[ビニル樹脂]
ビニル樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル樹脂が挙げられる。このうち、スチレン類が好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂及びビニル樹脂は、互いに相溶せず、ポリエステル樹脂を海部としビニル樹脂を島部とする海島構造を形成するものであって、かつ、同一の温度及び圧力を付与した場合に、ポリエステル樹脂の融解温度がビニル樹脂の融解温度に比べ低く、ポリエステル樹脂の溶融粘度の低下がビニル樹脂の溶融粘度の低下に比べ大きければ、特に制限はない。
ポリエステル樹脂及びビニル樹脂の組み合わせとしては、例えば、1)ポリエステル樹脂として不飽和構造や架橋構造を有する非晶性のポリエステル樹脂と、ビニル樹脂としてポリスチレン、アクリル酸及びアクリル酸化合物の重合体、スチレン、アクリル酸及びアクリル酸化合物の単量体のうちを2種以上の共重合体、又は一部に架橋構造を有するビニル樹脂等との組み合わせ、2)ポリエステル樹脂として非晶性ポリエステル樹脂及び飽和脂肪族ポリエステル樹脂等の結晶性ポリエステル樹脂の混合体と、ビニル樹脂としてポリスチレンの重合体、アクリル酸の重合体、アクリル酸化合物の重合体、スチレン、アクリル酸及びアクリル酸化合物の単量体のうち2種以上の共重合体、又は一部に架橋構造を有するビニル樹脂等との組み合わせなどが挙げられる。このうち、ポリエステル樹脂として非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の混合体と、ビニル樹脂としてスチレン及びアクリル酸化合物の単量体のうち2種以上の共重合体との組み合わせが好ましい。
ポリエステル樹脂とビニル樹脂との質量比率(ポリエステル樹脂:ビニル樹脂)は、98:2から60:40の間であることが好ましく、95:5以上70:30以下であることがより好ましい。95:2から60:40の間であると、結着樹脂がポリエステル樹脂を海部とし、ビニル樹脂を島部とする海島構造を形成し易い。
ポリエステル樹脂を海部としビニル樹脂を島部とする海島構造および第1離型剤と第2離型剤のドメイン構造は、次に示す方法で確認する。本実施形態に係るトナーをエポキシ樹脂に混合し包埋し終夜で固化した後、ウルトラミクロトーム装置(UltracutUCT、Leica社製)を用いて、厚み80〜130nmの薄片を作製する。得られた薄片を30℃のデシケータ内で四酸化オスミウムで3時間染色し、染色された薄片を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)にて観察し、トナー粒子の構成を確認する。ここで、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、離型剤の順で四酸化オスミウムに染色され易いので、染色度合いに起因する濃淡で確認される。試料の状態などにより濃淡が判別しにくい場合は、染色時間を調整 することができる。また、観察薄片を四酸化オスミウムによる染色処理を行なって観察したのちに、さらに四酸化ルテニウムによる染色処理を施してから観察してそれぞれの画像を比較することで、樹脂の海島構造や第一離型剤、第二離型剤のドメイン状態を確認することもできる。
【0041】
他の結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジンが挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
−離型剤−
離型剤は、ポリエステル樹脂及びビニル樹脂に比べ、融解温度もしくは溶融粘度が低ければ特に制限はない。
本実施形態に係るトナーにおいて、離型剤には、第1離型剤と第2離型剤とがある。第1離型剤は、海島構造の海部を形成するポリエステル樹脂に存在するドメイン状の離型剤であり、第2離型剤は、海島構造の島部を形成するビニル樹脂に存在するドメイン状の離型剤である。
第1離型剤及び第2離型剤は、同じ種類でも異なる種類でもよい。
【0044】
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・ 石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス;これらを変性した変性ワックス;などが挙げられる。鉱物系もしくは合成したパラフィンワックスがとくに好ましいが、離型剤は、これに限定されるものではない。
【0045】
トナー粒子の切断面において、第1離型剤の断面面積B1と第2離型剤の断面面積A1との比率A1/B1は、0.2以上0.8以下であり、0.3以上0.7以下が好ましく、0.4 以上0.6以下がより好ましい。A1/B1が0.2以上0.8以下であると、表面凹凸の大きな記録媒体にハーフトーン画像を形成する場合、記録媒体の凸部及び記録媒体の凹部において、トナー粒子が受ける熱及び圧力に応じて、トナー粒子から第1離型剤及び第2離型剤の染み出しを調整 し、オフセットを抑制し、高い画像強度の画像を形成し易くなる。
なお、トナー粒子の切断面における第1離型剤の断面面積B1及び第2離型剤の断面面積A1は、次のようにして算出する。
超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)にて観察した画像を電子化し、三谷商事株式会社製の画像解析ソフト(Wim ROOF)に取り込み例えば次の手順でトナー粒子の切断面における第1離型剤の断面面積B1及び第2離型剤の断面面積A1を求める。
トナー断面領域を選択対象として選択後、「2値化処理」コマンドの「自動2値化-判別分析法」を用い、2値化処理を行ない、抽出された離型剤ドメイン一つ一つに対し、ポリエステル樹脂の海部の中に直接存在する離型剤ドメインを第1離型剤として選択して総面積を計測して断面積B1、離型剤ドメインがポリエステル樹脂の海部及びポリエステル樹脂の海部の中に直接存在する離型剤ドメインとも異なる領域(ビニル樹脂の島部)に囲まれているものを第2離型剤として選択して断面面積A1を計測する。
離型剤ドメインの一部がポリエステル樹脂の海部の中に直接存在する離型剤ドメインとも異なる領域(ビニル樹脂の島部)に囲まれているが、一部はポリエステル樹脂の海部に接触している場合は、その離型剤ドメインの周囲長とポリエステル樹脂の海部に接触している距離を測定し、離型剤ドメイン周囲長に対して3割以上ポリエステル樹脂の海部が接触している場合は第1離型剤と判定して断面積B1に加算し、ポリエステル樹脂の海部との接触部分が3割未満の場合は第2離型剤と判定して断面積A1に加算する。
写真の撮影濃度やノイズなどにより 自動2値化が正常に行なえない場合は「フィルタ-メディアン」処理やエッジ抽出処理を行なうことにより画像を鮮明化したり、手動の2値化コマンドにおいて画像を確認しながら手動で敷位置を設定してから、断面積B1、断面積A1を計測してもよい。
得られた第1離型剤の断面面積B1及び第2離型剤の断面面積A1から、A1/B1を算出する。
【0046】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7921−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0047】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0048】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0050】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0051】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0052】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・ シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・ シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0053】
トナー粒子は、表面にポリエステル樹脂が60%以上存在していることが好ましく、80%以上存在していることがより好ましい。
ポリエステル樹脂がトナー粒子の表面に60%以上存在することにより、トナー粒子の表面には、結着樹脂であるビニル樹脂に比べ極性の大きいポリエステル樹脂が存在することになり、記録媒体(例えば、紙)となじみ易く、比較的低い温度や圧力でも記録媒体に付着し易い。このため、トナー粒子は、定着初期に記録媒体の表面で移動し難くなり、その状態で定着後期を迎えるため、例えば、記録媒体の凹部への移行による画像ムラが生じ難くなる。
【0054】
トナー粒子の表面に存在するポリエステル樹脂の割合は、例えば次のようにして算出する。日本電子株式会社製の光電子分光装置JSP9000MXを用い、トナー粒子を粉体用のサンプルホルダに平らに敷き詰め、印加電圧8kV、エミッション電流8mA、パスエネルギー8eV、スキャン回数100回の条件で測定を行ないC1sピークについてポリエステル樹脂由来分子構造からなるピークとビニル樹脂由来の分子構造からなるピークを分離し、それぞれのピーク面積から、ポリエステル樹脂の割合を算出する。ポリエステル樹脂単体の測定値やビニル樹脂単体の測定値などをもちいてC1sピーク分離する波形を求めてもよい。また、トナー粒子がポリエステル樹脂とビニル樹脂を含むことは次のようにして確認することができる。
トナー粒子 約20mgをサンプル瓶に秤量し、これに溶媒である重クロロホルムを1ml加えて充分溶解し、その溶液をNMR(核磁気共鳴)試料管(φ5mm)に移してNMRスペクトル測定を行う。
測定装置: 日本電子株式会社製JNM−AL400 FT−NMR
測定条件:
試料容器:Φ5mmNMR用試料管
溶媒: 重クロロホルム溶液
試料温度: 20℃
観測核 : 1H
積算回数: 128回
基準:テトラメチルシラン(TMS)
測定結果のスペクトル解析を実施し、9〜7ppm範囲のポリエステル樹脂成分に起因するピーク積分値が検出されること、4〜3ppmのビニル樹脂成分に起因するピーク積分値が検出されることで、それぞれの樹脂がトナー粒子に含まれていることが確認できる。
トナー粒子中にポリエステル樹脂に対するビニル樹脂の比率もそれぞれのピーク積分値から算出することができる。
【0055】
トナー粒子の体積粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0056】
なお、トナー粒子の各種粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積粒径D50v、数粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0057】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0058】
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML
2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0059】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2 、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・ SiO
2、K
2O・ (TiO
2 )n、Al
2O
3・ 2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4、SrTiO
3等が挙げられる。
【0060】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下である。
【0061】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、脂肪酸、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0062】
樹脂粒子やクリーニング滑剤などの外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0063】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0064】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。
これらの中も、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0065】
具体的には、例えば、混練粉砕法により製造する場合、ビニル樹脂と離型剤を連続混練機などを用いて高いせん断をかけて混練しビニル樹脂中に離型剤を分散した離型剤分散ビニル樹脂を用意し、この離型剤分散ビニル樹脂とポリエステル樹脂と離型剤と、必要に応じて着色剤や帯電制御剤などをそれぞれ、破砕、予備混合したものを2軸混練エクストリューダなどで溶融混練したのちに、粉砕と分級を行ない、混合体粒子を得る。この混合体粒子を水中に分散したのちに、混合体粒子の粒子径と比較して10分の1から1000分の1の粒子径であるポリエステル樹脂粒子分散液を撹拌しながら滴下し、凝集剤や界面活性剤の極性などを利用して混合体粒子表面にポリエステル樹脂粒子を付着させ、撹拌しながらポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度以上に維持して混合粒子表面にポリエステル樹脂粒子を固着させ、ポリエステル樹脂粒子被覆混合体粒子を得る。このポリエステル樹脂粒子被覆混合体粒子を洗浄、乾燥することで、トナー粒子を得ることができる。
トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液(ポリエステル樹脂分散液、ビニル樹脂粒子分散液)を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する工程(離型剤粒子分散液準備工程)と、離型剤粒子分散液とビニル樹脂粒子分散液を混合し、樹脂及び離型剤を複合した複合粒子(以下、「複合粒子」と称する)が分散された複合粒子混合液を準備する工程(混合液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、ポリエステル樹脂粒子とビニル樹脂凝集粒子と離型剤粒子と(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・ 合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・ 合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0066】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0067】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液を準備する。ここで、樹脂粒子分散液には、少なくともポリエステル樹脂分散液及びビニル樹脂分散液がある。
【0068】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、単量体を合成して得た樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0069】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0072】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μmがさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50pとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0073】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0074】
−離型剤粒子分散液準備工程−
樹脂粒子分散液と同様にして、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤分散液中に分散する着色剤粒子についても同様である。
【0075】
−混合液準備工程−
離型剤粒子分散液とビニル樹脂粒子分散液を混合し、樹脂及び離型剤を複合した複合粒子が分散された複合粒子混合液を準備する工程(混合液準備工程)では、ビニル樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合し凝集剤を滴下することで複合粒子混合液を調製する。かかる場合、離型剤粒子とビニル樹脂粒子が凝集した複合粒子を得る。
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、例えば無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
【0076】
混合液準備工程では、上記に限らず、離型剤粒子分散液にビニル樹脂粒子分散液を滴下し、加熱しても、複合粒子混合液は調製される。かかる場合、離型剤粒子の表面にビニル樹脂粒子が付着した複合粒子を得る。さらに、ビニル樹脂粒子を分散させる界面活性剤の帯電性と、離型剤粒子を分散させる界面活性剤の帯電性と、が対となる界面活性剤を用いて、静電気力により離型剤の表面にビニル樹脂粒子を付着させてもよい。
【0077】
−凝集粒子形成工程−
次に、ポリエステル樹脂粒子分散液、混合液、離型剤粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子とビニル樹脂凝集粒子と離型剤粒子と着色剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子とビニル樹脂凝集粒子と離型剤粒子と着色剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0078】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整 し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整 し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0079】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、例えば無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0080】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0081】
−融合・ 合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・ 合一し、トナー粒子を形成する。
【0082】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・ 合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0083】
上記凝集粒子の表面を付着するように凝集する樹脂粒子としては、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0084】
ここで、融合・ 合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0085】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0086】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0087】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・ 配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;マトリックス樹脂に導電性粒子が分散・ 配合された樹脂分散型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、樹脂含浸型キャリア、及び導電性粒子分散型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0088】
磁性粉としては、例えば、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0089】
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0090】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電材料等、その他添加剤を含ませてもよい。
【0091】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0092】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0093】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0094】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0095】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0096】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0097】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0098】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0099】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0100】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0101】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0102】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0103】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0104】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0105】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0106】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0107】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0108】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0109】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0110】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0111】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0112】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0113】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0114】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0115】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0116】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0117】
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
但し、実施例3〜8及び10は参考例である。なお以下の説明において、特に断りがない限り、「部」「%」は全て「質量部」「質量%」を意味する。
【0118】
[トナー粒子の作製]
(トナー粒子(1)の作製)
−スチレン樹脂粒子分散液(1)の調製−
・ スチレン :190部
・ アクリル酸 :10部
・ アニオン性界面活性剤(ダウファックス:ダウケミカル(株)製):5部
・ イオン交換水 :735部
スチレンモノマー190部、アクリル酸10部を、混合溶解し、混合溶液を調製した。
他方、アニオン性界面活性剤5部をイオン交換水700部に溶解したものを2Lフラスコ中に収容し、上記混合溶液を添加して分散し乳化して、半月型の撹拌翼を10rpmで撹拌、混合しながら、過硫酸アンモニウム溶液を35部/60分の速度で投入し、スチレン樹脂粒子分散液(1)を調製した。ここで、過硫酸アンモニウム溶液は、過硫酸アンモニウム5部をイオン交換水35部に溶解して調製した。
【0119】
−離型剤粒子分散液(1)の調製−
・ パラフィンワックス(HNP0190:日本精蝋(株)製、融解温度85℃):200部
・ カチオン性界面活性剤(サニゾールB50:花王(株)製) :10部
・ イオン交換水 :800部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液(1)を調製した。
【0120】
−スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)の調製−
・ スチレン樹脂粒子分散液(1) :800部
・ 離型剤粒子分散液(1) :900部
離型剤粒子分散液(1)900部を60℃に加熱、撹拌した状態で、スチレン樹脂粒子分散液(1)800部を1時間かけて滴下した。滴下終了後に温度を85℃に下げて30分間撹拌し続け、その後冷却してスチレン樹脂粒子と離型剤との混合液(1)を得た。
【0121】
−ポリエステル樹脂粒子分散液(1a)の調製−
テレフタル酸80mol%及びフマル酸10mol%からなる酸成分と、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物45mol%及びビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物45mol%からなるアルコール成分と、を1:1のmol比で、攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5Lのフラスコに仕込み、窒素雰囲気化で2時間を要して80℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した。その後、前記混合物100部に対しジブチル錫オキサイド0.5部を投入し、さらに生成する水を留去しながら同温度から2時間を要して210℃まで温度を上げ、210℃でさらに4時間脱水縮合反応を継続してポリエステル樹脂(1a)を得た。
次いで、得られたポリエステル樹脂(1a)を溶融状態のまま、キャビトロンCD1010((株)ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で95℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記ポリエステル樹脂(1a)溶融体と同時にキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に移送した。回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm
2の条件でキャビトロンを運転した。その後、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.5に調整 し45℃で5時間処理した後、硝酸水溶液でpHを7.5に調整 し、さらに固形分量を調整 して、ポリエステル樹脂粒子(1a)が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液(1a)を得た。
【0122】
−ポリエステル樹脂粒子分散液(1b)の調製−
・ 1,10−デカンジカルボン酸 :33部
・ 1,4−ブタンジオール :25部
・ ジメチルスルホキシド :30部
・ エチレングリコール :5部
・ ジブチル錫オキサイド :0.5部
上記組成を乾燥した3口フラスコに入れたのち、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて185℃で8時間攪拌を行った。減圧下、ジメチルスルホキシドを留去し、その後、減圧下にて210℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、ポリエステル樹脂(1b)を合成した。
ポリエステル樹脂(1b)170部と、酢酸エチル150部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.5N)0.05部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌してポリエステル樹脂混合液(1b)を調製した。このポリエステル樹脂混合液(1b)を撹拌しながら、徐々に水酸化ナトリウム水溶液(0.05N)500部を加え、転相乳化させた。この転送乳化液をバットに移し風通りの良いところで撹拌しながら48時間撹拌し続けることで脱溶剤することにより、ポリエステル樹脂粒子(1b)が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液(1b)を調製した。
【0123】
−着色剤分散液(K)の調製−
・ カーボンブラック(モーガルL:キャボット製) :55部
・ ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製):5部
・ イオン交換水 :220部
上記成分を混合して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後アルティマイザーにて分散処理して平均粒子径が320nmである着色剤(カーボンブラック)粒子が分散された着色剤分散剤(K)を調製した。
【0124】
−トナー粒子(1)の作製−
ポリエステル樹脂粒子分散液(1b)及びポリエステル樹脂粒子分散液(1a)を固形分の比率で15:70の割合で混合し、混合樹脂粒子分散液(1)を得た。得られた混合樹脂粒子分散液(1)100部と、着色剤分散液(K)10部と、離型剤粒子分散液(1)10部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)10部と、ポリ水酸化アルミニウム(Paho2S、浅田化学社製)5部と、イオン交換水600部と、を丸型ステンレス鋼鉄フラスコ中でホモジナイザー(ウルトタラックスT50、IKA社製)を用いて混合し、分散した。その後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら、45℃まで加熱した。45℃で30分間保持した後、さらに温度を上げて50℃で2時間保持し、凝集粒子を含む分散液を得た。その後、得られた凝集粒子を含む分散液にポリエステル樹脂粒子分散液(1a)20部を追加した後、加熱用オイルバスの温度を62℃まで上げて30分間保持した。さらに、1N水酸化ナトリウム水溶液を追加して、フラスコ内の溶液のpHを8.5に調製した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁気シールを用いて撹拌を継続しながら85℃まで加熱し、2時間保持した。氷水で冷却後、フラスコ内のトナー粒子を45μmのメッシュで濾別し、25℃のイオン交換水2500部で5回洗浄した後、冷結乾燥してトナー粒子(1)を得た。
上記に記載した方法で、トナー粒子(1)の構造を確認したところ、ポリエステル樹脂を海部とし、ビニル樹脂を島部とする海島構造を形成していることが確認された。また、上記に記載した方法で、トナー粒子(1)のA1/B1を算出したところ、0.56であった。
【0125】
−離型剤粒子分散液(2)の調製−
離型剤粒子分散液(1)の調製において、カチオン性界面活性剤(サニゾールB50、花王社製)の代わりにアニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル社製)10部を用いた以外は、同様にして、離型剤粒子分散液(2)を得た。
【0126】
−スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(2)の調製−
離型剤粒子分散液(2)900部とスチレン樹脂粒子分散液(1)800部とを混合した後、丸型鋼鉄フラスコ中でホモジナイザー(ウルトタラックスT50、IKA社製)を用いて混合しながら、ポリ水酸化ナトリウム(Paho2S、浅田化学社製)3部を滴下して、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(2)を得た。
【0127】
−トナー粒子(2)〜(10)の作製−
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)10部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)10部と、の代わりに、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(2)20部を用いた以外は、同様にしてトナー粒子(2)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)10部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)10部と、の代わりに、離型剤粒子分散液(1)6部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)17部と、を用いた以外は、同様にしてトナー粒子(3)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)10部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)10部と、の代わりに、離型剤粒子分散液(1)4部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)23部と、を用いた以外は、同様にしてトナー粒子(4)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、50℃で2時間保持して凝集粒子を含む分散液を得たのちに、得られた凝集粒子を含む分散液に追加するポリエステル樹脂粒子分散液(1a)を5部に変更した以外は、同様にしてトナー粒子(5)を得た。
【0128】
トナー粒子(1)の作製において、50℃で2時間保持して凝集粒子を含む分散液を得たのちに、得られた凝集粒子を含む分散液に追加する樹脂分散液を、ポリエステル樹脂粒子分散液(1a)12部と、スチレン樹脂粒子分散液(1)10部と、に変更した以外は、同様にしてトナー粒子(6)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)10部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)10部と、の代わりに、離型剤粒子分散液(1)17部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)7部と、を用いた以外は、同様にしてトナー粒子(7)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)10部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)10部と、の代わりに、離型剤粒子分散液(1)18部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)4部と、を用いた以外は、同様にしてトナー粒子(8)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)の代わりに、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(2)を用いた以外は、同様にしてトナー粒子(9)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、50℃で2時間保持して凝集粒子を含む分散液を得たのちに、得られた凝集粒子を含む分散液に追加する樹脂分散液を、スチレン樹脂粒子分散液(1)25部に変更した以外は、同様にしてトナー粒子(10)を得た。
【0129】
−トナー粒子(11)の作製−
・ スチレンアクリル樹脂(分子量Mw20000、ガラス転移温度80℃):100部
・ パラフィンワックス(HNP0190):50部
上記材料を予備混合後、バンバリーミキサー(90rpm、ラム圧4kgf、混練時間20分)を用いて混練後に圧延して冷却し、フィッツミルを用いて破砕して、スチレンアクリル樹脂とパラフィンワックスの混合物(1)を得た。
・ スチレンアクリル樹脂とパラフィンワックスの混合物(1):20部
・ パラフィンワックス(HNP0190):3部
・ ポリエステル樹脂(1a):70部
・ ポリエステル樹脂(1b):15部
・ カーボンブラック(モーガルL):5部
上記材料を予備混合後、エクストリューダミキサ(上記材料100部に対し水を2部添加しながら、バレル温度105℃)で混練し、圧延して冷却後にフィッツミルを用いて疎粉砕し、100AFG(粉砕圧力0.4MPa、粉砕ノズル径φ2mm)を用いて粉砕したものを、エルボージェット分級装置をもちいて平均粒径8.5μmの着色粒子(1)を得た。この着色粒子(1)100部をカチオン性界面活性剤(サニゾールB50)10部、イオン交換水1000部を撹拌混合し、着色粒子分散液(1)を得た。
着色粒子分散液(1)100部にポリエステル樹脂分散液(1a)を15部、ポリ硫酸ナトリウム(Paho2S)2部をホモジナイザー(ウルトラタラックスT50)を用いて混合したのちに、半月型撹拌翼を有する密閉型反応容器に移し撹拌しながら50℃で2時間混合したのちに、80℃に昇温して2時間撹拌を保持した。氷水で冷却後、密閉型反応容器の着色粒子を45μmのメッシュで濾別し、25℃のイオン交換水2500部で5回洗浄した後、冷結乾燥してトナー粒子(11)を得た。
【0130】
−トナー粒子(R1)〜(R4)の作製−
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)とスチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)10部の代わりに、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)25部を用いた以外は、同様にしてトナー粒子(R1)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)とスチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)の代わりに、離型剤粒子分散液(1)を20部用いた以外は、同様にしてトナー粒子(R2)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)20部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)2部用いた以外は、同様にしてトナー粒子(R3)を得た。
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)2部と、スチレン樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液との混合液(1)25部用いた以外は、同様にしてトナー粒子(R4)を得た。
【0131】
[実施例1]
・ トナー粒子(1) :100部
・ 疎水性シリカ(RX50:日本アエロジル社製):0.5部
・ 疎水性シリカ(R972:日本アエロジル社製):1.5部
上記成分をヘンシェルミキサーを用い周速20m/s×15分間ブレンドをおこなった後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、トナー(1)を得た。
【0132】
[実施例2〜11、比較例1〜4]
トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)を各々トナー粒子(2)〜(11)、(R1)〜(R4)に変更した以外は、同様にして、各々トナー(2)〜(11)、(R1)〜(R4)を作製した。
【0133】
[静電荷像現像剤の作製]
−キャリアの作製−
スチレン−アクリル樹脂(スチレン:メチルメタクリレート=10:90、Mw:3.5万)2.5部をトルエン45部に投入し、樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液にカーボンブラック0.2部を投入し、この混合液をサンドミルを用いて30分間微分散して分散液を作製した。この分散液25部を、体積平均粒径30μmのフェライト粒子100部と混合した。さらにこの混合物を真空脱気型ニーダーに入れ、80℃に加熱しながら30分間撹拌し、さらに減圧しながら撹拌して溶剤を除去した。溶剤除去後、75μmのメッシュで篩分を行い凝集物を除去してキャリアを得た。
【0134】
−静電荷像現像剤の作製−
得られた各トナー10部と、キャリア90部と、をV−ブレンダーを用い20rpmで20分間攪拌し、212μmの網目を有するシーブで篩うことにより静電荷像現像剤(以下、「現像剤」と称する)(1)〜(11)、(R1)〜(R4)を得た。
【0135】
−オフセット−
各例で得られた静電荷像現像剤を市販の電子写真複写機(DocuCentreColor450(富士ゼロックス社製)改造機)の現像器に充填し、PREMIER 80 A4 WHITE PAPEER(ゼロックスコーポレーション製坪量80g/m
2)の上端1cmの位置に画像濃度100%時にトナーの載り量を5g/m
2に調整 した状態で画像濃度50%、大きさ3×3cmの未定着画像を出力した。
次にDocuCentreColor450に使用されている定着器を取り出し、外部駆動と温度制御ができるように改造したものを用い、用紙突入時の定着部材表面温度200℃、定着速度50mm/secの駆動条件で未定着画像を定着した。この定着画像の下側の白紙部を観察し、トナー汚れ(トナーオフセット)の発生有無を目視および50倍のルーペを用いて確認した。
評価基準は以下の通りである。
A:トナーオフセットによる汚れは確認されなかった。
B:トナーオフセットによる汚れが目視では確認できないが、ルーペ観察ではごく軽微な汚れが確認された。
C:トナーオフセットによる汚れが目視でもごく軽微に確認された。
D:トナーオフセットによる汚れが目視でもはっきりと確認された。
【0136】
−画像強度−
各例で得られた静電荷像現像剤を市販の電子写真複写機(DocuCentreColor450(富士ゼロックス社製)改造機)の現像器に充填し、PREMIER 80 A4 WHITE PAPEER(ゼロックスコーポレーション製坪量80g/m
2)の上端3cmの位置に画像濃度20%のハーフトーン画像、大きさ3×3cmの未定着画像を出力した。
次にDocuCentreColor450に使用されている定着器を取り出し、外部駆動と温度制御ができるように改造したものを用い、用紙突入時の定着部材表面温度140℃、定着速度200mm/secの駆動条件で未定着画像を定着した。
この定着画像を表面性試験機トライボギア14DR(新東科学株式会社製)を用い、画像上に未使用のPREMIER80紙を載せて100gの垂直荷重で、こすり速度10mm/sec、こすり往復幅5cm、こすり往復回数10回で、定着画像表面を未使用紙でこすり、こすったあとの未使用紙の汚れを目視および50倍ルーペを用いて観察した。
評価基準は以下の通りである。
A:トナーによる汚れは確認されなかった。
B:トナーによる汚れは目視では確認できないが、ルーペ観察では軽微な汚れが確認された。
C:トナーによる汚れが目視でごく軽微に確認された。
D:トナーによる汚れが目視で顕著に確認された。
【0137】
−画像ムラ−
各例で得られた静電荷像現像剤を、富士ゼロックス社製画像形成装置「DocuCentre450改造機」の現像器に充填した。
この画像形成装置を用いて、画像濃度35%のハーフトーンをPREMIER 80 A4 WHITE PAPEER(ゼロックスコーポレーション製坪量80g/m
2)A4紙の上部3cmの位置に大きさ10×10cmの未定着画像を出力した。
次にDocuCentreColor450に使用されている定着器を取り出し、外部駆動と温度制御ができるように改造したものを用い、用紙突入時の定着部材表面温度160℃、定着速度300mm/secの駆動条件で未定着画像を定着した。
その後、定着後のハーフトーン画像について、目視観察を行ないハーフトーン画像の均質性、ムラの程度を評価した。
評価基準は以下の通りである。
A:ハーフトーン画像の濃度ムラは観察されない。
B:ハーフトーン画像の濃度ムラが画像の一部に軽微にみられる。
C:ハーフトーン画像の濃度ムラが画像のほぼ全面にみられる。
【0138】
以下、各例の詳細と共に、評価結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
上記結果から、実施例は、比較例に比べ、表面凹凸の大きい記録媒体上にハーフトーン画像を形成しても、ハーフトーン画像の画像強度が向上し、オフセットの発生が抑制されることがわかった。溶融したトナー粒子がオフセット及び画像強度について良好な結果を得た。