(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Y軸回転角が、0°ではなく、かつ90°の整数倍ではない圧電単結晶からなり、互いに対向する上面と下面とを有する第1の圧電基板と、前記第1の圧電基板上に設けられた第1のIDT電極とを有する第1の弾性表面波チップと、
前記第1の圧電基板の前記下面と対向し、前記第1の弾性表面波チップが搭載されるチップ搭載面を有するパッケージ基板と、
前記チップ搭載面に前記第1の弾性表面波チップを接合している接合材とを備え、
前記チップ搭載面を平面視した場合、前記第1の弾性表面波チップの実装位置が前記チップ搭載面の中央部から外側に偏って配置されており、
前記第1の圧電基板の結晶Z軸の向きが、前記第1の圧電基板の前記下面から前記上面に向かうに従って前記チップ搭載面の前記中央部から前記外側に向かうように傾斜している、弾性波装置。
前記パッケージ基板の前記チップ搭載面に複数の弾性表面波チップが搭載されており、該複数の弾性表面波チップのうち少なくとも1つの弾性表面波チップが前記第1の弾性表面波チップである、請求項1に記載の弾性波装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0016】
(結晶Z軸の向き)
本願発明者らは、従来の弾性波装置において、温度変化が加わった際の熱変形による破壊現象につき検討した。その結果、LiTaO
3や
LiNbO3などの異方性を有する圧電基板を用いた弾性表面波チップでは、結晶Z軸の向きが2通り存在し、この向きを考慮すれば、熱変形を緩和し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
図1〜
図3を参照して、まず、この結晶Z軸の向きを説明する。
【0018】
図1は、圧電単結晶のX軸、Y軸及びZ軸と、圧電基板のカット角との関係を示す模式図である。
図1に示す圧電基板1は、X軸、Y軸及びZ軸を有する圧電単結晶から、Y軸回転角がα、すなわちカット角がαとなるように切り出されている。いま、X軸方向が弾性表面波伝搬方向となる。X軸方向は、
図1の紙表と紙背とを結ぶ方向である。
【0019】
圧電基板1では、弾性表面波を励振させるためにIDT電極が圧電基板1の主面に形成されている。従って、弾性表面波伝搬方向は、IDT電極の電極指と直交する方向である。よって、弾性表面波伝搬方向は圧電基板1の主面と平行な方向となる。
【0020】
図2は、第1の参考例の弾性表面波チップにおける弾性表面波伝搬方向Aと結晶Z軸の向きZ1との関係を説明するための斜視図である。第1の参考例の弾性表面波チップ2では、図示されている圧電基板上にIDT電極が形成されている。なお、
図2及び
図3では、IDT電極等の図示は省略してある。以下、弾性表面波伝搬方向を矢印Aで示すこととする。弾性表面波伝搬方向Aは、IDT電極の電極指と直交する方向である。
【0021】
他方、Y軸回転角α、すなわちカット角αとなるように切り出された圧電単結晶からなる圧電基板においては、Z軸方向の向きには、
図2に示す第1の参考例の向きZ1と、
図3に示す第2の参考例の向きZ2が存在する。結晶Z軸の向きは方向性を有する。従って、結晶Z軸の向きは、カット角αが0°や90°の整数倍の場合には、一通りしか存在しないが、カット角αが0°でなく、かつ90°の整数倍でない場合には、結晶Z軸の向きは2通り存在することとなる。
【0022】
他方、LiTaO
3やLiNbO
3の線膨張係数は、X軸方向及びY軸方向と、Z軸とで異なる。従って、圧電基板を有する弾性表面波チップをパッケージ基板に接合した構造に温度変化が加わると、上記Z軸の向きによって発生する変位量が異なることとなる。以下、結晶Z軸の向きZ1,Z2を考慮して構成した実施形態を比較例とともに説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図4(a)は、第1の実施形態で用意した第1の弾性表面波チップの模式的平面図であり、(b)は該弾性表面波チップに設けられている弾性表面波共振子の電極構造を示す略図的平面図である。第1の弾性表面波チップ11は、第1の圧電基板である圧電基板12を有する。圧電基板12は、LiTaO
3やLiNbO
3のような異方性を有する圧電単結晶からなる。圧電基板12は、圧電単結晶からY軸回転角がαとなるように切り出されている。ここで、αは0°ではなく、90°の整数倍でもない。
【0024】
上記圧電基板12の主面上に、弾性表面波共振子13a〜13dが形成されている。弾性表面波共振子13a〜13dにより第1の帯域通過型フィルタが構成されている。
【0025】
他方、第1の帯域通過型フィルタが構成されている領域の側方には、弾性表面波共振子14a,14b,14c,14dと縦結合共振子型弾性表面波フィルタ15が構成されている。縦結合共振子型弾性表面波フィルタ15と、弾性表面波共振子14a〜14dとにより、第2の帯域通過型フィルタが構成されている。
【0026】
図4では、各弾性表面波共振子や縦結合共振子型弾性表面波フィルタ15の電極構造は模式的に示している。具体的には、
図4(b)に示すように、例えば弾性表面波共振子13aは、第1のIDT電極であるIDT電極13a1と、IDT電極13a1の弾性表面波伝搬方向両側に配置された反射器13a2,13a3とを有する。
図4(a)において、弾性表面波伝搬方向Aは、上記圧電基板12の長辺の延びる方向となる。
【0027】
図4(b)に示したIDT電極13a1における電極指の延びる方向は、上記弾性表面波伝搬方向Aと直交する方向となる。
【0028】
なお、全ての弾性表面波共振子13a〜13d、弾性表面波共振子14a〜14d及び縦結合共振子型弾性表面波フィルタ15における弾性表面波伝搬方向は同一とされている。
【0029】
上記第1の弾性表面波チップ11では、圧電基板12の周囲に接合材としてのバンプ16a〜16jが設けられている。AuまたはAu合金、半田などをバンプの材料として用いることができる。圧電基板12は、互いに対向する第1及び第3の辺と、第1及び第3の辺に接続され、互いに対向する第2及び第4の辺を有する矩形の形状を有する。圧電基板12の第1と第2の辺、第2と第3の辺、第3と第4の辺、第4と第1の辺のそれぞれのコーナー部に、順にバンプ16a、バンプ16c、バンプ16f、バンプ16hが配置される。第1、第2、第3、第4の辺のそれぞれの中間部には、バンプ16i、16j、バンプ16b、バンプ16d、16e、バンプ16gが配置されている。
【0030】
これらのバンプ16a〜16jは、図示しない配線により弾性表面波共振子13a〜13d、弾性表面波共振子14a〜14d、または、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ15に電気的に接続されている。そして、バンプ16a〜16jを利用して
図4(c)に示すように、第1の弾性表面波チップ11の下面をパッケージ基板17のチップ搭載面に向けて、第1の弾性表面波チップ11がチップ搭載面にフリップチップボンディングにより接合される。それによって、弾性表面波チップ11がパッケージ基板17に接合された弾性波装置18が得られる。
【0031】
第1の実施形態の弾性波装置18では、上記第1の弾性表面波チップ11において、圧電基板12の結晶Z軸の向きZ1は、チップ搭載面と対向する圧電基板12の下面から上面に向かうに従って圧電基板12の中央部から外側に向かって傾斜している方向とされている。ここで、圧電基板12の下面12aがパッケージ基板17と対向するものとする。圧電基板12の下面12a及び上面12bにおける上下は、パッケージ基板17の上方に第1の弾性表面波チップ11を搭載した状態の上下方向を基準としている。従って、
図4(a)では、パッケージ基板17のチップ搭載面と対向する圧電基板12の下面12a側が図示されている。なお、IDT電極は圧電基板12の上面及び下面の一面または両面に設けることができる。好ましくは、圧電基板12の下面12aに設けられる。
【0032】
上記のように、圧電基板12の結晶Z軸の向きが上記特定の方向とされているため、以下に述べるように、PAの稼働やIDTの励振を要因とする発熱などの影響による弾性波装置の周波数温度特性(TCF)の変動を抑制することができる。IDT電極が設けられた圧電基板の変位は、IDT電極の電極指間のピッチ変化を要因とする波長の変化や互いに挿入し合う一対のくし歯電極の対向距離変化を要因とする静電容量の変化を発生させる。そのため、弾性波装置の周波数が変動する。従って、圧電基板の変位量を小さくできれば、周波数温度特性(TCF)の変動を抑制することができるため好ましい。さらに、圧電基板のコーナー部に発生する変位量を小さくできれば、比較的損傷しやすい圧電基板のコーナー部に設けられたバンプ接合部における、圧電基板の損傷を抑制でき、好ましい。これを、
図5〜
図8を参照して説明する。
【0033】
図5及び
図6は、第1及び第2の参考例の弾性波装置の弾性表面波伝搬方向と、結晶Z軸の向きと、変位量の分布との関係を示す図である。
【0034】
上記変位量の分布は、弾性波装置101に常温25℃を基準として+100℃の温度変化を加えた場合の変位量(変位の大きさ:単位μm)を有限要素法による熱応力解析により求めた結果である。
【0035】
第1の参考例に係る弾性波装置101では、矩形のパッケージ基板102のチップ搭載面上に弾性表面波チップ103が搭載されている。ここでは、チップ搭載面を平面視した場合、パッケージ基板102の中心と弾性表面波チップ103の中心とが一致している。ここで中心とは、平面視した場合の中心とする。すなわち弾性表面波チップ103の実装位置がパッケージ基板102の外側に偏ることなく中央部に実装されている。弾性表面波伝搬方向Aは、矩形の弾性表面波チップ103の長さ方向と平行とされている。結晶Z軸の向きZ1は、圧電基板12の下面から上面に向かうに従って、パッケージ基板102のチップ搭載面の中央部から外側に向かう方向に傾斜している。
【0036】
他方、
図6に示す第2の参考例の弾性波装置104では、パッケージ基板102上に、弾性表面波チップ105が搭載されている。この弾性表面波チップ105では、結晶Z軸の向きZ2は、第1の参考例の向きZ1とは異なる方向である。しかしながら、第1の参考例の弾性波装置101及び第2の参考例の弾性波装置104では、Z軸の向きZ1,Z2による変位量の差はほとんどないことがわかる。例えば、コーナー部103aにおける変位量の大きさ及びコーナー部105aにおける変位量の大きさはほぼ同一である。これは、弾性表面波チップ103,105の中心と、パッケージ基板102の中心とが一致しているため、対称性により結晶Z軸の向きZ1,Z2による変位量に差が生じていないためと考えられる。
【0037】
図7以下の各図中の変位量の分布も同様にして求めたものである。
図7は、第1の実施形態の弾性波装置10の弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きZ1と、変位量の分布との関係を示す図である。
図7に示すように、弾性波装置10では、チップ搭載面を平面視した場合、パッケージ基板17の中心と、第1の弾性表面波チップ11の中心とがずれている。より具体的には、第1の弾性表面波チップ11は、パッケージ基板17の長方形の上面において、一方の短辺側に寄せられて搭載されている。
【0038】
他方、
図8は、第1の比較例の弾性波装置111における弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きZ2と、変位量の分布との関係を示す図である。
【0039】
第1の比較例の弾性波装置111では、パッケージ基板17上に、弾性表面波チップ112が搭載されている。弾性表面波チップ112の結晶Z軸の向きが向きZ2であることを除いては、弾性波装置10と同様に構成されている。この場合、向きZ2は、結晶Z軸の向きが圧電基板の下面から上面に向かうに従って、パッケージ基板17のチップ搭載面の中央部から外側に向かうように傾斜している。
【0040】
図7と
図8とで変位量を対比する。圧電基板の変位量が最小となる変位量0.4μm以上、0.6μm未満の領域は、
図7の方が
図8より圧電基板の中央部に広く分布していることが分かる。IDT電極は圧電基板の中央部に設けられる設計が一般的に採用されている。圧電基板の中央部の熱変形を低減できれば、弾性波装置の周波数温度
特性の安定に有効である。
図8に示す弾性表面波チップ112のコーナー部112aでは、熱変形による変位量は1.6μm以上、1.8μm未満の領域である。これに対して、
図7に示す弾性表面波チップ11のコーナー部11aの変位量は、1.4μm以上、1.6μm未満と
図8に比べて小さくなっている。変位量の最大値は、
図7が
図8より小さいことが分かる。これは、
図7に示すように、結晶Z軸の向きZ1が、弾性波装置10では、圧電基板の下面から上面に向かうに従って、パッケージ基板17のチップ搭載面の中央部から外側に向かうように傾斜している構成による。詳細な構成として、長方形の
チップ実装面を有するパッケージ基板17の一方短辺側に偏った位置に実装された第1の弾性表面波チップ11において、結晶Z軸の向きZ1がパッケージ基板17の長辺の伸びる方向と平行に、中央部から一方短辺側に向いている。また、圧電基板の下面に結晶Z軸を投影した向きとIDT電極によって励振される弾性波の弾性波伝搬の向きとは直交している。
【0041】
図7及び
図8から明らかなように、結晶Z軸の向きが、向きZ1であるか、向きZ2であるかによって、弾性表面波チップ11,112のコーナー部において生じる変位量の大きさが異なることがわかる。すなわち、第1の実施形態のように、結晶Z軸の向きが、圧電基板の下面から上面に
向かうに従って圧電基板12の中央から外側に向かうように傾斜している場合に、変位量を効果的に減少し得ることができる。
【0042】
上記のように、チップ搭載面を平面視した場合に、第1の弾性表面波チップ11の中心と、パッケージ基板17の中心とがずれている場合には、第1の比較例の結果から明らかなように、Z軸の向きZ1,Z2により変位量の差が生じる。これに対して、第1の実施形態では、第1の弾性表面波チップをチップ搭載面の中央部から外側に寄って配置した構成において、結晶Z軸の向きが圧電基板の下面から上面に
向かうに従って圧電基板の中央部から外側に向かうように傾斜する構成を備えているため、圧電基板のコーナー部における変位量を減少することができることが分かる。
【0043】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る弾性波装置21の弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きZ1と、変位量の分布とを示す図である。
【0044】
第2の実施形態の弾性波装置21では、パッケージ基板17上に、第1の弾性表面波チップ11に加えて、さらにもう1つの第1の弾性表面波チップ22が搭載されている。第1の弾性表面波チップ22が搭載されていることを除いては、弾性波装置21は弾性波装置10と同様に構成されている。第1の弾性表面波チップ22の中心もまた、パッケージ基板17の中心からずれている。
【0045】
従って、第1の弾性表面波チップ22においても、結晶Z軸の向きによって、温度変化が加わった際の変位量が異なる。本実施形態では、第1の弾性表面波チップ22においても、結晶Z軸の向きが向きZ1とされている。すなわち、圧電基板の下面から上面に向かうに従って、パッケージ基板17の中央部から外側に向かうように傾斜している。従って、第1の弾性表面波チップ22においても、コーナー部22aにおいて、熱変形による変位量を緩和することができる。バンプが接合されたコーナー部の変位量を小さくすることで、リフローなどの急激な温度変化で発生するバンプ接合部の破損を抑制できる。
【0046】
図9から、第1の弾性表面波チップ11ともう1つの第1の弾性表面波チップ22の変位量0.4μm以上、0.8μm未満の領域が、2つの圧電基板の中央部に広く分布していることが分かる。
【0047】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る弾性波装置23の弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きと、変位量の分布との関係を示す図である。第3の実施形態の弾性波装置23では、パッケージ基板17上に第1の弾性表面波チップ11と、第2の弾性表面波チップ24とが搭載されている。第2の弾性表面波チップ24が搭載されていることを除いては、弾性波装置23は弾性波装置10と同様である。ここでは、第2の弾性表面波チップ24は、結晶Z軸の向きが向きZ2である。その他の点については、弾性波装置23は弾性波装置21と同様である。
【0048】
弾性波装置23では、第2の弾性表面波チップ24において、結晶Z軸の向きがZ2であるため、すなわち結晶Z軸の向きは圧電基板の下面から上面に向かうに従いパッケージ基板の外側から中央部に向かうように傾斜している。
【0049】
そのため、第2の弾性表面波チップ24のコーナー部24aにおいて1.8μm以上、2.0μm未満の変位量が生じている。従って、弾性波装置23では、温度変化によって、第2の弾性表面波チップ24側において大きな変位量が生じる。もっとも、第1の弾性表面波チップ11側においては、変位量の大きさを効果的に減少することができる。
図10から、第1の弾性表面波チップ11の変位量0.4μm以上、0.8μm未満の領域が、圧電基板の中央部に広く分布していることが分かる。
【0050】
従って、第2の実施形態の弾性波装置21に比べて機械的強度に劣るものの、第3の実施形態の弾性波装置23においても、一方の第1の弾性表面波チップ11において熱変形による変位量を減少することができ、機械的強度を高めることが可能とされている。
【0051】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態に係る弾性波装置の弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きZ1と、変位量の分布との関係を示す図である。
図12は、第2の比較例の弾性波装置における弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きZ2と、変位量の分布とを示す図である。
【0052】
第4の実施形態の弾性波装置25では、パッケージ基板17上に2つの第1の弾性表面波チップ26,27と、第2の弾性表面波チップ28とが搭載されている。すなわち、パッケージ基板17の一方の短辺側の領域に、短辺方向に第1の弾性表面波チップ26,27が搭載されている。そして、パッケージ基板17の他方の短辺側に、第2の弾性表面波チップ28が搭載されている。パッケージ基板17を平面視した場合、
長辺方向に二分割した一方の領域に第1の弾性表面波チップ26,27が搭載されている。他方の領域に第2の弾性表面波チップ28が搭載されている。従って、第1,第2の弾性表面波チップ26〜28の中心は、パッケージ基板17の中心とずれている。
【0053】
第1の弾性表面波チップ26,27の弾性表面波伝搬方向Aは、パッケージ基板17の短辺と平行な方向である。他方、第2の弾性表面波チップ28の弾性表面波伝搬方向Aは、パッケージ基板17の長辺を平行な方向とされている。このように、第2の弾性表面波チップ28の弾性表面波伝搬方向は、他の第1の弾性表面波チップ26,27の弾性表面波伝搬方向と異なる方向であってもよい。
【0054】
本実施形態では、第1の弾性表面波チップ26,27の結晶Z軸は向きZ1である。すなわち、圧電基板の下面から上面に向かう方向であり、パッケージ基板17の中央部から外側に向かうように傾斜している。そのため、第1の弾性表面波チップ26,27のコーナー部26a,27aの変位量が、1.8μm以上、2.0μm未満であるが、この変位量の大きい領域が非常に狭い。他方、第2の弾性表面波チップ28では、パッケージ基板17の短辺に沿う側において、大きな変位量が生じている。
【0055】
図12は、第2の比較例の弾性波装置における弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きZ2と、変位量の分布とを示す図である。第2の比較例の弾性波装置121では、パッケージ基板17上に、第2の弾性表面波チップ122,123が搭載されている。また、第2の弾性表面波チップ28が搭載されている。弾性波装置121は、第1の弾性表面波チップ26,27に代えて、第2の弾性表面波チップ122,123が搭載されていることを除いては、弾性波装置25と同様である。
【0056】
第2の弾性表面波チップ122,123では、結晶Z軸の向きはZ2であり、その他の点については、第1の弾性表面波チップ26,27と同様である。
【0057】
図11では、変位量0.4μm以上、1.2μm未満の領域が、2つの第1の弾性表面波チップ26,27と第2の弾性表面波チップ28の中央部を含み広く分布している。
【0058】
図12では、変位量0.6μm以上、1.6μm未満の領域が、2つの第2の弾性表面波チップ122,123と第2の弾性表面波チップ28の中央部を含み広く分布している。
【0059】
図12のコーナー部123aにおいて、変位量が1.8μm以上、2.0μm未満の領域が
図11のコーナー部27aに比べて非常に大きいことがわかる。すなわち、結晶Z軸の向きZ2である弾性表面波チップ123では、
図11に示した第1の弾性表面波チップ27の場合に比べて、変位量が大きな領域が広い範囲で発生することがわかる。従って、3個の弾性表面波チップ26,27,28をパッケージ基板17上に搭載した第4の実施形態の弾性波装置25においても、温度変化が加わった際におけるバンプで接合される圧電基板のコーナー部の変位量を緩和し得ることがわかる。
【0060】
(第5の実施形態及び第3の比較例)
図13は、第5の実施形態に係る弾性波装置31における弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きZ1と、変位量の分布との関係を示す図である。
図14は、第3の比較例に係る弾性波装置131における弾性表面波伝搬方向Aと、結晶Z軸の向きZ1,Z2と、変位量の分布との関係を示す図である。
【0061】
弾性波装置31では、パッケージ基板17上に、第1の弾性表面波チップ32〜35が搭載されている。すなわち、矩形のパッケージ基板17の一方の短辺側の領域に第1の弾性表面波チップ32,33が搭載されている。他方の短辺側の領域に、第1の弾性表面波チップ34,35が搭載されている。本実施形態では、第1の弾性表面波チップ32〜35の弾性表面波伝搬方向Aは、パッケージ基板17の短辺方向と平行な方向である。第1の弾性表面波チップ32〜35は、いずれも、結晶Z軸の向きは向きZ1方向である。従って、第1の弾性表面波チップ32〜35のコーナー部における変位量を効果的に緩和することができる。例えば、第1の弾性表面波チップ33のコーナー部33aを例にとると、1.8μm以上、2.0μm未満の変位量が大きい領域が非常に狭い。
【0062】
第3の比較例の弾性波装置131では、パッケージ基板17上に、第2の弾性表面波チップ132〜135が搭載されている。第2の弾性表面波チップ132〜135は、いずれも、結晶Z軸の向きが向きZ2であることを除いては、第1の弾性表面波チップ32〜35と同様に構成されている。
【0063】
第3の比較例の弾性波装置131では、第2の弾性表面波チップ132〜135の結晶Z軸の向きが向きZ2であるため、第5の実施形態に係る弾性波装置31と比較して、第2の弾性表面波チップ132〜135の中央部の変位量が大きく、また、第2の弾性表面波チップ132〜135のコーナー部において変位量の大きな領域が広くなっている。例えば、第2の弾性表面波チップ133のコーナー部133aを例にとると、1.8μm以上、2.0μm未満の変位量が大きい領域が、
図13に示したコーナー部33aと比べて遙かに広いことがわかる。
【0064】
従って、第3の比較例の弾性波装置131に比べて、第5の実施形態の弾性波装置31によれば、機械的強度を効果的に高め得ることがわかる。
【0065】
なお、本発明においては、パッケージ基板上に搭載される弾性表面波チップの数は任意である。少なくとも1つの弾性表面波チップが、圧電基板の中心がパッケージ基板の中心からずらされて配置されており、該弾性表面波チップにおいて結晶Z軸の向きがZ2であればよい。
【0066】
また、各弾性表面波チップに形成される電極構造も特に限定されず、上記第1の実施形態の電極構造に限定されるものではない。