特許第6020531号(P6020531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6020531高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020531
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20161020BHJP
   F27D 3/18 20060101ALI20161020BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C21B5/00 319
   F27D3/18
   F27D21/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-209915(P2014-209915)
(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公開番号】特開2015-98647(P2015-98647A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2015年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-215026(P2013-215026)
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀 隆行
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−226609(JP,A)
【文献】 特開2003−226427(JP,A)
【文献】 特開昭61−153218(JP,A)
【文献】 特開昭60−106720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 5/00−7/24,
B65G 53/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭を蓄えたインジェクションタンク及び当該インジェクションタンクに接続された輸送配管を有する上流気送系と、前記輸送配管に接続されるとともに高炉に連結された吹込本管を有する下流気送系と、を備える高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まりを検知する方法であって、
前記上流気送系内の圧力測定値と前記下流気送系内の圧力測定値との間の差圧の絶対値を算出する差圧算出ステップと、
当該算出された差圧の絶対値の大きさが予め設定された上流側閾値以上であり、かつ、前記下流気送系内の圧力測定値が予め設定された第1の下流側圧力閾値以下のときは、前記上流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定し、
前記算出された差圧の絶対値の大きさが予め設定された下流側閾値以上であり、かつ、前記下流気送系内の圧力測定値が予め設定された第2の下流側圧力閾値より大きいときは、前記下流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定して、前記配管の詰まりを検知する詰まり検知ステップと、
を含むことを特徴とする高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法。
【請求項2】
前記詰まり検知ステップは、前記差圧の絶対値の大きさが前記上流側閾値以上であり、かつ、前記下流気送系内の圧力測定値が前記第1の下流側圧力閾値以下となる状態が、予め設定された上流側基準時間以上継続したときに、前記上流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定することを特徴とする請求項1に記載の高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法。
【請求項3】
前記詰まり検知ステップは、前記差圧の絶対値の大きさが前記下流側閾値以上であり、かつ、前記下流気送系内の圧力測定値が前記第2の下流側圧力閾値より大きい状態が、予め設定された下流側基準時間以上継続したときに、前記下流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉へ微粉炭を吹込む設備における配管に、微粉炭の詰まりが発生したことを検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉操業においては、高価なコークスの使用量を減らすために、コークスの一部代替として、石炭を微粉砕した微粉炭を、高炉の内部に吹き込む方法が実施されている。微粉炭は、熱風が送り込まれた乾燥雰囲気下で石炭を石炭破砕機で破砕して形成され、バグフィルターで捕集された後、篩分装置で選別された所定粒度以下のものが、微粉炭ホッパーに貯留され、更にその後、吹込み用のインジェクションタンクに供給される。インジェクションタンクは、輸送配管によって吹込本管と接続されるとともに、吹込本管は途中で分岐して複数の分岐管となり、高炉羽口に至る。
【0003】
そして、インジェクションタンクに窒素等の圧縮ガスが供給されることで、微粉炭は輸送配管に送り出され、吹込本管及び分岐管を介して高炉の羽口まで搬送される。高炉羽口におけるそれぞれの分岐管の先端には微粉炭吹込み用のランスが設けられており、微粉炭はこの複数のランスによって高炉内部へ吹き込まれる。インジェクションタンク内の圧力は、高炉の内圧よりも高くされているが、インジェクションタンク内の圧力は、通常、吹込本管よりも低い。よってインジェクションタンクからの送出圧のみでは、微粉炭を複数の高炉羽口から均一且つ十分な圧力で炉内に吹き込むのは困難であるため、吹込本管に微粉炭希釈用のガスを兼ねて加圧された空気が送り込まれて混合されることが多い。
【0004】
このように微粉炭とキャリヤガスとを含む固気2相流が形成され、微粉炭は高炉羽口部まで気送される。尚、以下の説明において、輸送配管と吹込本管との合流部より上流側で微粉炭を気送する流路を形成する一群の装置及び配管をまとめて上流気送系と称するとともに、合流部より下流側で高炉羽口まで微粉炭を気送する流路を形成する一群の装置及び配管を下流気送系と称する。上記したインジェクションタンク及び輸送配管は上流気送系に属する。また吹込本管、分岐管、ランス等の配管は下流気送系に属する(図1参照)。
【0005】
ここで、微粉炭は、上記のようにバグフィルターによる捕集及び篩分装置による篩分け処理において、木片や糸屑その他の異物が除去された上で所定の粒度以下のものが選別されている。しかし、高炉の炉内圧力の変化やその他の操業要因の変化により、上流気送系又は下流気送系の配管に微粉炭が詰まることがある。これらの配管に詰まりが発生すると、高炉周壁方向の微粉炭吹込量の低下や不均一な吹込みが生じるため、操業の予定に則った微粉炭吹込みができなくなり、高炉の炉況を悪化させる。
このように、高炉への微粉炭吹込設備の配管における微粉炭の詰まりは、高炉操業に多大な損失を与える。よって微粉炭吹込み操業においては、微粉炭が配管に付着したり閉塞したりすることなくスムーズに流れることが要請されるとともに、詰まりが発生した場合には速やかにこれを検知することが望まれている。
【0006】
そこで、こうした配管の詰まりの発生を検知する方法を見てみると、特許文献1〜3に記載の技術がある。特許文献1の技術は、微粉炭を供給する配管の外側に音響センサを設け、その出力信号から配管内の詰まりを検出するものである。特許文献2の技術は、高炉羽口部における微粉炭の未燃焼領域に着目し、高炉羽口部に放射温度カメラを設置し、その高炉羽口内の温度分布を画像解析して、ランスの詰まりを推定するものである。特許文献3の技術は、微粉炭が80℃程度の温度を有しており、微粉炭が配管に詰まった場合詰まった部位の配管の表面温度が変化することに着目し、周辺設備から温度の影響を受けにくい位置の配管の表面に熱電対を取り付けて配管の表面温度を連続的に測定し、その温度変化量から詰まりの発生の有無を判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−067605号公報
【特許文献2】特開平06−093317号公報
【特許文献3】特開2001−040404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献1の技術では、高炉の近傍に配置される各種の設備や装置から生じる音の影響(ノイズ)を排除することが現実的には難しい場合がある。また特許文献2の技術では、放射温度カメラの前方にブローパイプの湾曲部等が配置される場合があり、こうしたブローパイプがランスの先端部を放射温度カメラの視野角から遮り、画像解析を十分に行えない場合がある。また特許文献3の技術では、配管に熱電対を取り付ける位置とされる、周辺設備から温度の影響を受けにくい位置として高炉鉄皮より1m以上離れ、且つ熱風環状管及び送風支管のいずれからも1m以上離れた、分岐配管の表面が用いられている。しかし、分岐配管の表面上における周辺設備から温度の影響を受けにくい位置は、季節、時間帯、周辺設備の稼働状況等により変動することが多く、現実的には位置を特定することが難しい。
すなわち、特許文献1〜3の技術を用いても、配管の周辺に配置された設備の影響を完全に除外できないという問題がある。加えて特許文献3の技術の場合、測温される配管は比熱を有するため、配管の表面温度が変化するとともにその温度変化を熱電対が捕捉して安定した測定温度として表示するまでにある程度の時間がかかるという問題も生じる。
【0009】
この点、本発明者が特許文献3の技術を検証したところ、実際に配管に詰まりが発生した後、詰まりの発生が検知されるまでに一分以上かかることが判明した。詰まり発生後も高炉への微粉炭の吹込みが一分以上継続されると、微粉炭吹込量の低下や不均一な吹込みが生じ、炉況が悪化する可能性が非常に高くなる。このように、特許文献3の技術を用いても、詰まりが生じてから、詰まりの発生を検知するまでに相当の時間がかかるため、配管から微粉炭を除去する復旧作業の開始が遅れ、炉況の悪化を十分に抑制できないという問題が生じていた。
本発明は、上記した未解決の問題を解決するために案出されたものであって、高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まりを検知する方法において、配管周辺に配置された設備の影響を受けることがないとともに、配管に微粉炭の詰まりが生じてから詰まりの発生を検知するまでの時間を、従来に比し短縮できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の観点から試験研究を重ねた結果、微粉炭吹込設備における配管に微粉炭が詰まった際の配管内の圧力に関し、次のような知見を得た。
まず、微粉炭が上流気送系で詰まっている場合の上流気送系内の圧力測定値及び下流気送系内の圧力測定値の変化を図2に、また、微粉炭が下流気送系で詰まっている場合の同変化を図3に示す。これらはいずれも溶銑1トン当たり130〜150kgの微粉炭を高炉に吹き込んだ場合に得られたものである。
【0011】
微粉炭は、上記した石炭破砕機、バグフィルター、篩分装置及び微粉炭ホッパーによる処理を施された後にインジェクションタンクに蓄えられ、輸送配管、吹込本管及び分岐管等によって高炉羽口まで気送されるものである。尚、図2図3いずれの場合も、上流気送系内の圧力測定値としてインジェクションタンク内の圧力測定値を、下流気送系内の圧力測定値として吹込本管内の圧力測定値を用いている。
【0012】
図2中に示した640kPaの値は、上流気送系で詰まりが発生する前の吹込本管内の圧力測定値の代表値の具体例を示す。代表値としては、例えば所定時間内の平均値や中間値、又は最頻値等を用いることができる。尚、以下の説明で用いる「代表値」の意味も、同様である。また図2中に示した450kPaの値は、上流気送系で詰まりが発生した後の吹込本管内の圧力測定値の代表値の具体例を示す。また図2中に示した628kPaの値は、上流気送系で詰まりが発生する前のインジェクションタンク内の圧力測定値の代表値の具体例を示す。
【0013】
同様に、図3中に示した640kPaの値は、下流気送系で詰まりが発生する前の吹込本管内の圧力測定値の代表値の具体例を示す。また図3中に示した686kPaの値は、下流気送系で詰まりが発生した後の吹込本管内の圧力測定値の代表値の具体例を示す。また図3中に示した628kPaの値は、下流気送系で詰まりが発生する前のインジェクションタンク内の圧力測定値の代表値の具体例を示す。
【0014】
また上流気送系内の圧力測定値と、下流気送系内の圧力測定値と、これら2つの圧力測定値の差圧の絶対値の大きさの変化とを、表1に示す。
【表1】
【0015】
図2に示すように、t=t0の時点において、微粉炭が上流気送系で詰まった場合、微粉炭は下流気送系の吹込本管中に存在しないので、下流気送系の配管内の圧力損失は小さくなる。これにより、詰まり前は640kPa程度であった吹込本管(下流気送系)内の圧力は急減し、インジェクションタンク(上流気送系)内の圧力より小さい圧力となり、比較的速やかに450kPa程度まで下降するという減少傾向を示す。一方、インジェクションタンク(上流気送系)内の628kPa程度の圧力は大きく変化しない。すなわち上流気送系と下流気送系との差圧の絶対値の大きさは、一旦縮小するがその後は経時的に拡大増加変化する(表1参照)。
【0016】
また図3に示すように、t=t0の時点において、微粉炭が下流気送系で詰まっている場合、微粉炭は上流気送系内を移動しないので、インジェクションタンク(上流気送系)内の628kPa程度の圧力は大きく変化しない。一方、詰まり前は640kPa程度であった吹込本管(下流気送系)内の圧力は、t=t0の時点以降、比較的緩やかに686kPa程度まで上昇するという増加傾向を示す。すなわち、上流気送系と下流気送系との差圧の絶対値の大きさは、徐々に拡大増加変化する(表1参照)。
【0017】
本発明は上記知見に基づきなされたものである。
本発明のある態様に係る高炉への微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法は、微粉炭を蓄えたインジェクションタンク及びこのインジェクションタンクに接続された輸送配管を有する上流気送系と、輸送配管に接続されるとともに高炉に連結された吹込本管を有する下流気送系と、を備える高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まりを検知する方法であって、上流気送系内の圧力測定値と下流気送系内の圧力測定値との間の差圧の絶対値を算出する差圧算出ステップと、この算出された差圧の絶対値の大きさが予め設定された上流側閾値以上であり、かつ、下流気送系内の圧力測定値が予め設定された第1の下流側圧力閾値以下のときは、上流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定し、算出された差圧の絶対値の大きさが予め設定された下流側閾値以上であり、かつ、下流気送系内の圧力測定値が予め設定された第2の下流側圧力閾値より大きいときは、下流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定して、配管の詰まりを検知する詰まり検知ステップと、を含むことを要旨とする。
【0018】
本発明によれば、上流気送系内の圧力測定値と下流気送系内の圧力測定値との間の差圧を求め、この差圧の絶対値の大きさが予め設定された上流側閾値以上でありかつ前記下流気送系内の圧力測定値が下流側圧力閾値以下のときは上流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定し、詰まりを検知する。また差圧の絶対値の大きさが予め設定された下流側閾値以上でありかつ前記下流気送系内の圧力測定値が下流側圧力閾値以上のときは、下流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定し、詰まりを検知する。
【0019】
このように、詰まりの測定にあたり、配管内の圧力測定値を用いればよいので、配管の近傍にブローパイプのような装置が配設されていても影響を受けることがない。また配管内の圧力の変化は、熱や音といった外乱に影響されることが殆どない。
また、圧力測定値は、配管の詰まりの発生によって上流気送系内の圧力又は下流気送系内の圧力が変化するのと略同じタイミングで変化するので、これに連動して差圧も略同じタイミングで変化する。そのため詰まりの発生後、配管の詰まりを検知するまでの時間が、大きく短縮される。
【0020】
また、前記詰まり検知ステップは、前記差圧の絶対値の大きさが前記上流側閾値以上であり、かつ、前記下流気送系内の圧力測定値が前記下流側圧力閾値以下となる状態が、予め設定された上流側基準時間以上継続したときに、前記上流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定することとしてもよい。
また、前記詰まり検知ステップは、前記差圧の絶対値の大きさが前記下流側閾値以上であり、かつ、前記下流気送系内の圧力測定値が下流側圧力閾値より大きい状態が、予め設定された下流側基準時間以上継続したときに、前記下流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定することとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
従って、本発明に係る高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法によれば、配管周辺に配置された設備の影響を受けることがないとともに、配管に詰まりが生じた後、詰まりの発生を検知するまでの時間を従来に比し大きく短縮できる。また、詰まりが上流気送系で発生したか下流気送系で発生したかを判定することができる。これにより、その後の復旧動作を速やかに開始することが可能となり、微粉炭吹込量の低下や不均一な吹込みによる炉況の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法が用いられる微粉炭吹込設備の概略を模式的に説明する構成図である。
図2】微粉炭が上流気送系で詰まっている場合における上流気送系内及び下流気送系内のそれぞれの圧力測定値の変化を説明するグラフ図である。
図3】微粉炭が下流気送系で詰まっている場合における上流気送系内及び下流気送系内のそれぞれの圧力測定値の変化を説明するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る高炉の微粉炭吹込設備における配管の詰まり検知方法(以下、単に「詰まり検知方法」ともいう)は、微粉炭を高炉へ気送するために用いられる、上流気送系に属する配管及び下流気送系に属する配管の各々の管内圧力を測定し、測定された圧力値の間の差圧に基づいて、微粉炭が上流気送系又は下流気送系のいずれかの配管に詰まったことを検知するものである。以下、その構成を、図面を参照して説明する。なお、図中に示された詰まり検知方法において用いられる各設備及び各装置の形状、大きさ又は比率は適宜簡略化及び誇張して示されている。
【0024】
(微粉炭吹込設備)
まず本発明の実施形態に係る詰まり検知方法が実施される高炉の微粉炭吹込設備について、図1を用いて説明する。微粉炭吹込設備は、上記した石炭破砕機(不図示)、バグフィルター(不図示)、篩分装置(不図示)、微粉炭ホッパー(不図示)を備えるとともに、吹込み用のインジェクションタンク3を備える。また、微粉炭吹込設備は、インジェクションタンク3に接続された輸送配管4と、輸送配管4に接続された吹込本管5とを有する。輸送配管4は吹込本管5と合流部6で合流する。吹込本管5は、中途に設けられた分岐部7で分岐して複数の分岐管8となる。複数の分岐管8の先端には高炉10の羽口11に開口した微粉炭吹込み用のランス9がそれぞれ設けられ、吹込本管5が高炉10の羽口11に連結されている。
【0025】
微粉炭吹込設備は、図1中の左側に位置する囲みで示された、合流部6より上流側で微粉炭を吹込本管5側に気送する上流気送系と、図1中の中央から右側に位置する囲みで示された、合流部6より下流側で微粉炭を高炉10の羽口11に気送する下流気送系とを備える。インジェクションタンク3には、インジェクションタンク3の内圧を測定する上流気送系側圧力計1が配設されている。また吹込本管5には、合流部6を挟んで高炉10の反対側に、吹込本管5内の圧力を測定する下流気送系側圧力計2が配設されている。上流気送系側圧力計1はインジェクションタンク3内の圧力を、また下流気送系側圧力計2は吹込本管5内の圧力を各々連続して経時的に測定する。
【0026】
微粉炭の高炉10への吹込みに際しては、図1中の左側上段の矢印で示すように、まず微粉炭を蓄えたインジェクションタンク3に圧縮窒素が供給されて固気2送流が形成され、その後、固気2送流は輸送配管4を介して合流部6に送り出される。一方、図1中の左側下段の矢印で示すように、合流部6には別の上流側の経路から微粉炭希釈用の圧縮空気が供給され、上流気送系から気送された固気2送流と合流する。またインジェクションタンク3内の圧力は高炉10の内圧より高いとともに、吹込本管5内の圧力は、インジェクションタンク3内の圧力より高く設定されている。微粉炭を含む固気2送流は、吹込本管5、複数の分岐管8、ランス9を経由して、高炉10に吹き込まれる。
【0027】
(詰まり検知方法)
次に、上記した微粉炭吹込設備において用いられる詰まり検知方法を説明する。まず、上流気送系側圧力計1を用いてインジェクションタンク3内の圧力を測定するとともに下流気送系側圧力計2を用いて吹込本管5内の圧力を測定する。そして、インジェクションタンク3及び吹込本管5の経時的な圧力測定値を得るとともにこれらの差圧の絶対値を算出する(差圧算出ステップ)。上流気送系又は下流気送系に属する配管に微粉炭の詰まりが発生すると、インジェクションタンク3内の圧力測定値、吹込本管5内の圧力測定値及びインジェクションタンク3内の圧力測定値と吹込本管5内の圧力測定値との間の差圧に、図2及び図3に示すような特徴的な変化が生じる。
【0028】
次に、微粉炭が上流気送系の配管で詰まったか、又は下流気送系の配管で詰まったかを判定する。具体的には、差圧算出ステップで算出された差圧の絶対値の大きさが上流側閾値P1以上であり、かつ、下流気送系内の圧力測定値が下流側圧力閾値B1以下である状態が上流側基準時間T1以上継続したときに、上流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定して配管の詰まりを検知する。また、上記算出された差圧の絶対値の大きさが下流側閾値P2以上であり、かつ、下流気送系内の圧力測定値が下流側圧力閾値B2以上である状態が下流側基準時間T2以上継続したときに、下流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定して配管の詰まりを検知する。(詰まり検知ステップ)。
【0029】
(上流側閾値P1、上流側基準時間T1及び第1の下流側圧力閾値B1)
上流側閾値P1、上流側基準時間T1及び第1の下流側圧力閾値B1は、いずれも上流気送系での詰まりを判定するために用いられる。上流側閾値P1は、変化する差圧の絶対値の大きさに関して予め設定された圧力用の閾値であり、上流側基準時間T1は、上流側閾値P1以上の大きさの差圧(絶対値)が継続する時間に関して予め設定された基準時間であり、第1の下流側圧力閾値B1は、下流気送系内の圧力の値に関して設定された閾値である。
【0030】
図2に示すように、例えばt=t0の時点において、上流気送系内の配管で詰まりが発生した場合、略一定であった下流気送系内の圧力測定値は急減して、上流気送系内の圧力測定値を下回る。そして図2中に実線のグラフと破線のグラフとの上下方向の間隔で表される差圧の絶対値の大きさは、一旦縮小した後に拡大変化する。例えば図2の場合、上流気送系内の圧力測定値(640kPa程度)と下流気送系内の圧力測定値(628kPa程度)との差圧の絶対値の大きさは、通常操業時は12kPa程度である。また下流気送系の圧力測定値の方が、上流気送系の圧力測定値より高い。
【0031】
しかし詰まりが生じると下流気送系内の圧力測定値は減少し、上流気送系の圧力測定値と同じとなり、更に時間が経過すると上流気送系の圧力測定値を下回る。そしてt=tの時点において、差圧の絶対値の大きさは上流側閾値P1に至った後も、下流気送系内の圧力測定値は更に減少する。このとき上流側閾値P1以上の差圧の絶対値の大きさが、上流側基準時間T1(t〜t1)の間継続する。また下流気送系の圧力測定値は、t=t1の時点で、第1の下流側圧力閾値B1以下の状態である。よってt=t1の時点において、上流気送系での詰まりの発生条件をすべて満たしたと判定し、微粉炭の詰まりを検知する。
【0032】
上流気送系で詰まりが発生した場合、下流気送系の圧力は図2に示すように、450kPa程度まで減少し、差圧の絶対値の大きさは178kPa程度と、詰まり前の差圧の絶対値の約15倍にまで拡大する。すなわち上流気送系内における詰まり発生時の差圧の絶対値の大きさは、通常操業時の差圧の絶対値の大きさより非常に大きい。このとき、下流気送系内圧力の測定値は、詰まり発生時(t=t0)の前後に亘って全体的に減少する傾向となり、増加傾向には転じない。
【0033】
よって、この場合の上流側閾値P1は例えば100kPa、第1の下流側圧力閾値B1は630kPa、上流側基準時間T1は3秒とそれぞれ設定することができる。尚、上流側基準時間T1は、過去において詰まりが発生した際のデータや、シミュレーションに基づき設定すればよい。一般的に好適な上流側閾値P1の値は、50kPa〜150kPa程度であり、上流側基準時間T1の値は、1秒〜10秒程度である。また上流側閾値P1の値は、通常操業時の差圧の絶対値を基準として、通常操業時の差圧の絶対値+20kPaを下限値、+150kPaを上限値とした範囲の値とするように定めることもできる。例えば通常操業時の差圧の絶対値が12kPaの場合、32kPa≦P1≦162kPaである。下限値の設定のために通常操業時の差圧の絶対値に付加する値が20kPaより小さいと、通常操業時に生じうる差圧の変動状態を、上流気送系内の詰まりと誤判定する可能性が高まる。また上限値の設定のために通常操業時の差圧の絶対値に付加する値が150kPaより大きいと、上流気送系内の詰まりの判定が遅れる可能性が高まる。
【0034】
下流側圧力閾値B1は、下流気送系内の圧力が通常操業時よりも低下することを検出するために設定されるものであり、通常操業時の下流気送系内の圧力よりも小さい値に設定することが好ましい。また、第1の下流側圧力閾値B1は、下流気送系内の圧力の測定値が急減した時点(図2中のt=t0)の上流気送系内圧力の測定値とすることもできる。また、第1の下流側圧力閾値B1は、微粉炭詰まりが発生していない状態における上流気送系内圧力の測定値とすることもできる。また、第1の下流側圧力閾値B1は、通常操業時の下流側圧力測定時の値(下流気送系の圧力測定値、例えば640kPa)よりも1kPa〜20kPa小さい値とするように定めることもできる。
【0035】
(下流側閾値P2、下流側基準時間T2及び第2の下流側圧力閾値B2)
下流側閾値P2、下流側基準時間T2及び第2の下流側圧力閾値B2は、いずれも下流気送系での詰まりを判定するために用いられる。下流側閾値P2は、変化する差圧の絶対値の大きさに関して予め設定された圧力用の閾値であり、下流側基準時間T2は、下流側閾値P2以上の大きさの差圧(絶対値)が継続する時間に関して予め設定された基準時間であり、第2の下流側圧力閾値B2は、下流気送系内の圧力の値に関して設定された閾値である。
【0036】
図3に示すように、例えばt=t0の時点において、下流気送系内の配管で詰まりが発生した場合、略一定であった下流気送系内の圧力測定値は徐々に増加し、図2の場合と同様に2本のグラフの上下方向の間隔で表される差圧の絶対値の大きさは、緩やかに拡大変化する。例えば図3の場合、上流気送系内の圧力測定値(640kPa程度)と下流気送系内の圧力測定値(628kPa程度)との差圧の絶対値の大きさは、図2の場合と同様に、通常操業時は12kPa程度である。しかし詰まりが生じると下流気送系内の圧力測定値は増加し、t=tの時点において、差圧の絶対値の大きさは下流側閾値P2に至った後、下流気送系内の圧力測定値はt=t2の時点まで更に増加する。このとき下流側閾値P2以上の差圧の絶対値が、下流側基準時間T2(t〜t1)の間継続する。また下流気送系の圧力測定値は、t=t1の時点で、第2の下流側圧力閾値B2より大きい状態である。よってt=t2の時点において、下流気送系での詰まりの発生条件をすべて満たしたと判定し、微粉炭の詰まりを検知する。
下流気送系で詰まりが発生した場合、下流気送系の圧力は図3に示すように、686kPa程度まで増加し、差圧の絶対値の大きさは58kPa程度まで拡大する。このとき、下流気送系内の圧力測定値の上昇開始から差圧の絶対値の拡大が収束するまでの平均時間は、過去のデータに基づき算出したところ、約30秒であった。
【0037】
よって、この場合の下流側閾値P2は例えば40kPaと設定するとともに、下流側基準時間T2は20秒と設定することができる。下流側閾値P2の値は、25kPa〜50kPa程度に設定することが好ましく、下流側基準時間T2の値は、3秒〜30秒程度に設定することが好ましい。また、下流側閾値P2の値は、通常操業時の差圧の絶対値を基準として、通常操業時の差圧の絶対値+10kPaを下限値、+50kPaを上限値とした範囲の値とするように定めることもできる。例えば通常操業時の差圧の絶対値が12kPaの場合、22kPa≦P2≦62kPaである。下限値の設定のために通常操業時の差圧の絶対値に付加する値が10kPaより小さいと、通常操業時に生じうる差圧の変動状態を、下流気送系内の詰まりと誤判定する可能性が高まる。また上限値の設定のために通常操業時の差圧の絶対値に付加する値が50kPaより大きいと、下流気送系内の詰まりの判定が遅れる可能性が高まる。
【0038】
下流気送系で詰まりが発生する場合、上述のように、下流気送系内圧力は通常操業時よりも増加する傾向となるので、第2の下流側圧力閾値B2として通常操業時の下流気送系内圧力と同程度の値、例えば代表値と同じ値を設定しておけば、下流気送系内圧力が第2の下流側圧力閾値B2より大きくなることを検知できる。尚、第1の下流側圧力閾値B1と第2の下流側圧力閾値B2とは、例えば同じ640kPaの値を用いてB1=B2と設定してもよいが、第1の下流側圧力閾値B1は、詰まり発生時に減少する下流気送系内の圧力測定値に関して設定されるので、第2の下流側圧力閾値B2を上回ることはない。すなわちB1≦B2となる。本発明の実施形態においては、算出された差圧の絶対値の大きさが、上流側閾値P1を超えるとともに下流側閾値P2を超える値であっても、第1の下流側圧力閾値B1及び第2の下流側圧力閾値B2を用いることにより、詰まりが上流気送系で生じたか下流気送系で生じたかを判定し分けることが可能となる。
【0039】
このように上流側閾値P1、上流側基準時間T1、下流側閾値P2、下流側基準時間T2、第1の下流側圧力閾値B1及び第2の下流側圧力閾値B2をそれぞれ設定する。但し、上記したように、上流気送系の配管で詰まりが発生した場合に、差圧の絶対値の大きさが一旦縮小する時間帯がある。よって上流側基準時間T1は、過去において上流気送系で配管が詰まった際の上記縮小時間の長さを求めておき、求められた時間の長さよりも長い時間に設定することが望ましい。
【0040】
上記したステップによって、本発明の実施形態に係る詰まり検知方法が構成される。そして、微粉炭の詰まりが検知され、詰まりが生じた配管が特定された後、特定された配管を復旧する作業が開始される。また本発明の実施形態に係る詰まり検知方法を用いれば、特に、溶銑1トン当たり130〜150kg程度の微粉炭を吹き込む微粉炭吹込設備において、好適な詰まり検知方法とすることができる。
【0041】
本発明の実施形態に係る詰まり検知方法を用いた場合、微粉炭の詰まりが発生した後、配管の詰まりを実際に検知するまでの時間が数秒オーダで済んだ。また本発明の実施形態に係る微粉炭吹込設備と同様の設備において、上記した特許文献3における熱電対を用いた配管の表面温度の変化量から詰まりを検知する方法を用いた場合、詰まりの発生後、詰まりを検知するまで一分以上かかった。よって本発明の実施形態に係る詰まり検知方法により、詰まりの検知時間を大きく短縮することができた。
【0042】
(効果)
本発明の実施形態に係る詰まり検知方法によれば、上流気送系内の圧力測定値と下流気送系内の圧力測定値との間の差圧を求め、この差圧の絶対値の大きさが予め設定された上流側閾値P1以上であり、かつ、下流気送系内の圧力測定値が予め設定された第1の下流側圧力閾値B1以下のときは上流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定し、詰まりを検知する。また差圧の絶対値の大きさが予め設定された下流側閾値P2以上であり、かつ、下流気送系内の圧力測定値が予め設定された第2の下流側圧力閾値B2より大きいときは、下流気送系の配管に微粉炭の詰まりが生じたと判定し、詰まりを検知する。このように、熱や音といった外乱に影響されることが殆どない配管内の圧力の変化を用いて詰まりを測定するので、配管の近傍にブローパイプのような装置が配設されていても影響を受けることがない。
【0043】
また、圧力測定値は、配管の詰まりの発生によって上流気送系内の圧力又は下流気送系内の圧力が変化するのと略同じタイミングで変化し、圧力測定値の変化に連動して差圧も略同じタイミングで変化する。そのため詰まりの発生後、速やかに差圧の変化をとらえて配管の詰まりを検知するので、詰まりを検知するまでの時間を、大きく短縮できる。通常の操業条件では、詰まりが発生すると、詰まりのない定常状態の圧力から、数秒以内に圧力が変化を始め比較的短時間で、本発明の実施形態に記載した、差圧の絶対値および下流気送系内の圧力測定値が詰まりが検知される圧力条件を満たす状態が生じ始めるので、この定常状態から詰まりが検知される圧力条件を満たす状態が生じるまでの時間を、詰まりの判定条件に加えることもできる。一般に、定常状態から詰まりと判定される圧力条件を満たす状態に至るまで(図2中のt0〜t、又は図3中のt0〜t)の時間が短時間であるほど、重大な障害が発生していることが予測されるため、早期に対策をとる必要がある。そのため、定常状態から詰まりと判定される圧力条件に至るまでの時間や、圧力の変化速度を考慮した判定基準とすることも好ましい。例えば、定常状態から詰まりと判定される圧力条件に至るまでの時間が0.5秒〜15秒であることを詰まりの判定基準に加えることができる。
【0044】
本発明の実施形態に係る詰まり検知方法によれば、配管周辺に配置された設備の影響を受けることがないとともに、配管に詰まりが生じた後、詰まりの発生を検知するまでの時間を従来に比し大きく短縮できる。また、詰まりが上流気送系で発生したか下流気送系で発生したかを判定することができる。これにより、その後の復旧作業の動作を速やかに開始することが可能となり、微粉炭吹込量の低下や不均一な吹込みによる炉況の悪化を抑制することができる。
【0045】
また、本発明の実施形態に係る詰まり検知方法によれば、上流側基準時間T1を用いて、差圧の発生時間が一定時間未満の場合を除外する。これにより誤測定の影響を除去して詰まりの発生を判定するので、上流気送系の配管の詰まりをより正確に検知することができる。また、本発明の実施形態に係る詰まり検知方法によれば、下流側基準時間T2を用いて、差圧の発生時間が一定時間未満の場合を除外するので、上流側基準時間T1と同様に、誤測定の影響を除去して詰まりの発生を判定し、下流気送系の配管の詰まりもより正確に検知することができる。
【0046】
(その他)
尚、本発明の実施形態に係る詰まり検知方法においては、インジェクションタンク3内の圧力測定値と吹込本管5内の圧力測定値との間の差圧を用いたが、差圧を導くために圧力が測定される部位はこれらに限定されるものではない。一般的には、上流気送系における圧力測定は、インジェクションタンク又はそれより上流側で、また下流気送系における圧力測定は、合流部6よりも上流側の圧縮空気ラインで行うことが好ましいが、輸送配管4や分岐管8で行われてもよい。例えば、図1中に示した、合流部6より上流側に配置された下流気送系側圧力計2に替えて、分岐管8に圧力計を設けて下流気送系における圧力測定を行ってもよい。ただしこのとき、圧力計の位置よりも上流側での詰まりを検知することとなるので、仮に図2に示すような圧力測定値の変化が生じても、微粉炭の詰まりが上流気送系内の配管でなく、下流気送系の吹込本管5で発生している場合もある。
【0047】
また本発明の実施形態では、2つの圧力測定値間の差圧を用いる場合を説明したが、これに限定されず、複数の圧力測定値を用いて、これらの間の差圧を複数算出し、上記した知見に基づき、それぞれの差圧の絶対値の大きさの変化から、詰まりを検知する方法を行えば、どの配管において微粉炭が詰まったかを特定することを効率的に行うことができる。
また、本実施形態に係る微粉炭吹込設備における詰まり検知方法に加え、上流気送系内又は下流気送系内の配管に熱電対や音響センサを付加的に配設してもよい。例えば複数の熱電対を配管の表面に所定の間隔で配設して表面温度の変化を求める方法と、本実施形態に係る詰まり検知方法と組み合わせることにより、詰まりの発生部位をより効率的に特定することができ、復旧動作を速やかに行うことが可能となる。
【0048】
また、詰まりの進行が原因となり、微粉炭吹込設備の下流気送系の配管(例えば吹込本管)が破損した場合、吹込本管内の圧力が急激に低下するとともに、差圧の絶対値の大きさは急激に拡大する。よって、吹込本管内の圧力の急激な低下と差圧の絶対値の大きさの急激な拡大とを組み合わせて、詰まりの検知だけでなく、更に吹込本管の破損を検知するように構成してもよい。例えば、吹込本管が破損したかどうかを検知する破損検知用閾値Pz及び破損検知用基準時間Tzを各々予め設定しておく。そして、吹込本管内の圧力が所定の圧力にまで急激に低下するとともに、破損検知用閾値Pz以上の大きさの差圧(絶対値)が破損検知用基準時間Tz以上継続した場合に、吹込本管が破損したことを検知するようにしてもよい。一般的には差圧の絶対値が500kPa以上であれば、配管の破損の可能性が高い。詰まりの検知に加え吹込本管の破損を速やかに検知することにより、微粉炭吹込設備の復旧動作を、より迅速に開始することができる。
【0049】
本発明は上記のとおり開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。本発明は、本明細書及び図面に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 上流気送系側圧力計
2 下流気送系側圧力計
3 インジェクションタンク
4 輸送配管
5 吹込本管
6 合流部
10 高炉
B1 第1の下流側圧力閾値
B2 第2の下流側圧力閾値
P1 上流側閾値
P2 下流側閾値
T1 上流側基準時間
T2 下流側基準時間
図1
図2
図3