特許第6020546号(P6020546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6020546ハロゲン化パーフルオロポリエーテル基含有化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020546
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ハロゲン化パーフルオロポリエーテル基含有化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/337 20060101AFI20161020BHJP
   C07C 43/12 20060101ALI20161020BHJP
   C07C 41/06 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C08G65/337
   C07C43/12CSP
   C07C41/06
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-261744(P2014-261744)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-108308(P2016-108308A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2015年11月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-245454(P2014-245454)
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】三橋 尚志
(72)【発明者】
【氏名】並川 敬
(72)【発明者】
【氏名】田枝 真由子
(72)【発明者】
【氏名】平賀 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 明平
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−161531(JP,A)
【文献】 特表2011−526896(JP,A)
【文献】 特開2004−002302(JP,A)
【文献】 特開2014−055246(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/099085(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00−67/04
C07B 31/00−61/00
C07B 63/00−63/04
C07C 1/00−409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、以下の式(i)〜(iv)のいずれか:
−(OCFCFCF− (i)
[式中、bは1〜200の整数である。]
−(OCF(CF)CF− (ii)
[式中、bは1〜200の整数である。]
−(OCFCFCFCF−(OCFCFCF−(OCFCF−(OCF− (iii)
[式中、aおよびbは、それぞれ独立して、0または1〜30の整数であり、cおよびdは、それぞれ独立して、1〜200の整数であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
または
−(OC−R− (iv)
[式中、Rは、OC、OCおよびOCから選択される基であり;
eは、2〜100の整数である。]
で表される基であり;
Qは、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3の整数であり;
lは、0または1である:ただし、Rがフッ素原子である場合、lは1である。]
で表される化合物、
ただし、CF(OCFCF20(OCF16OCFCHOCFCHFOCFCFIは除く。
【請求項2】
Rfが、炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
lが1であり;
Qが、下記式:
−(CH−O−CR−CR−Q’−CFR
[式中:
Q’は、2価の有機基であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が、フッ素原子である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Q’が、下記式:
−(R11−(R12
[式中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、−NR13−(式中、R13は、水素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)または2価の極性基であり;
12は、各出現においてそれぞれ独立して、−CR14−(式中、R14は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)であり;
pは、1〜6の整数であり;
qは、0〜20の整数であり;
添字pまたはqを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項3または4に記載の化合物。
【請求項6】
11が酸素原子であり、R12が、各出現においてそれぞれ独立して、−CF−または−CF(CF)−である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Qが、
−CHOCFCHFOCF−、
−CHOCFCHFOCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCFCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCF−、
−CHOCHCHFCFOCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCFCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCF−、
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCF−、および
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCFCF
から選択される基である、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Yがヨウ素である、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
下記一般式(Ia):
【化2】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q’は、2価の有機基であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは、0〜3の整数であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物。
【請求項10】
が、フッ素原子である、請求項に記載の化合物。
【請求項11】
下記構造:
CF(OCFCF20(OCF16OCFCHOCFCHFOCFCF
を有する化合物。
【請求項12】
下記一般式(I’):
【化3】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3であり;
lは、0または1である。]
で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(A):
【化4】
[式中、Rf、PFPE、Rおよびmは、上記と同意義であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物と、下記式(B):
【化5】
[式中、Yは、上記と同意義であり;
Q’は、2価の有機基であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子である。]
で表される化合物とを反応させることを含む方法。
【請求項13】
式(B)で表される化合物が、下記式(C):
【化6】
[式中、R、R、R、Q’およびYは、式(B)の記載と同意義であり;
Xは、ハロゲン原子である。]
で表される化合物から得られることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一般式(I’)で表される化合物が、下記一般式(I−a):
【化7】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q’は、2価の有機基であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは、0〜3の整数であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
Q’が、下記式:
−(R11−(R12
[式中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、−NR13−(式中、R13は、水素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)または2価の極性基であり;
12は、各出現においてそれぞれ独立して、−CR14−(式中、R14は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)であり;
pは、1〜6の整数であり;
qは、0〜20の整数であり;
添字pまたはqを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
が、フッ素原子である、請求項12〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
Q”が、
−CHOCFCHFOCF−、
−CHOCFCHFOCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCFCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCF−、
−CHOCHCHFCFOCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCFCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCF−、
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCF−、および
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCFCF
から選択される基であり、
Q’が、
−O−、
−OCF−、
−OCFCF−、
−OCFCF(CF)O−
−OCFCF(CF)OCF
−OCFCF(CF)OCFCF
−CFO−、
−CFOCF−、
−CFOCFCF−、
−CFOCF(CF)CFO−、
−CFOCF(CF)CFOCF−、および
−CFOCF(CF)CFOCFCF−、
から選択される基である、請求項12〜16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化パーフルオロポリエーテル基含有化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の含フッ素シラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層(以下、「表面処理層」とも言う)は、いわゆる機能性薄膜として、例えばガラス、プラスチック、繊維、建築資材など種々多様な基材に施されている。
【0003】
そのような含フッ素シラン化合物として、パーフルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、Si原子に結合した加水分解可能な基を分子末端または末端部に有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物が知られている。例えば、特許文献1には、下記一般式:
【化1】
[式中、Rfは、パーフルオロアルキル基であり、Zは、フッ素またはトリフルオロメチル基であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して、0または1以上の整数であり、Yは、水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは、水素、臭素またはヨウ素であり、Rは、水酸基または加水分解可能な置換基であり、Rは、水素または1価の炭化水素基であり、lは0、1または2であり、mは、1、2または3であり、nは2以上の整数である。]
で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物が記載されている。
【0004】
上記の化合物は、ヨウ素移動重合法(特許文献2参照)により合成することができる。具体的には、特許文献1では、含フッ素ポリマー鎖の末端にヨウ素を導入し、得られた含フッ素ポリマー鎖の末端にヨウ素を有する化合物に、エチレン性二重結合を有するシラン化合物を、ラジカルリビング重合(ヨウ素移動重合)させることにより合成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第97/07155号
【特許文献2】特開平01−294709号公報
【特許文献3】特開平09−263728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、含フッ素ポリマー鎖の末端にヨウ素を導入するには、末端に酸フルオライド基(−COF)を有する含フッ素ポリマーの−COF基を、アルカリ条件下でヨウ素と反応させて、−I基に置換する方法が用いられてきた(特許文献1および3)。
【0007】
しかしながら、特許文献1および3に記載のようなヨウ素化は、含フッ素ポリマー鎖が−(OCFCFCF)−で表される繰り返し単位を有する場合には、好適に利用できるが、含フッ素ポリマー鎖が−(OCFCF)−および−(OCF)−で表される繰り返し単位を有する場合には、含フッ素ポリマー鎖の分解が生じ、副生成物が生成する等、ヨウ素化が難しかった。
【0008】
本発明は、含フッ素ポリマー(即ち、パーフルオロポリエーテル基)の構造に拘わらず、末端にハロゲン原子を有するパーフルオロポリエーテル基含有化合物を好適に製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を合成するための新規な構造を有する合成中間体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコールと、一方の端にハロゲン原子を有し、他端に二重結合を有する化合物を反応させることにより、パーフルオロポリエーテル基がいずれの構造を有する場合であっても、末端にハロゲン原子を有するパーフルオロポリエーテル基含有化合物を好適に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第1の要旨によれば、下記一般式(I):
【化2】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Qは、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3の整数であり;
lは、0または1である:ただし、Rがフッ素原子である場合、lは1である。]
で表される化合物が提供される。
【0011】
本発明の第2の要旨によれば、下記一般式(I’):
【化3】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3であり;
lは、0または1である。]
で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(A):
【化4】
[式中、Rf、PFPE、Rおよびmは、上記と同意義であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物と、下記式(B):
【化5】
[式中、Yは、上記と同意義であり;
Q’は、2価の有機基であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子である。]
で表される化合物とを反応させることを含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、新規なハロゲン化パーフルオロポリエーテル基含有化合物を合成することが可能になる。また、このハロゲン化パーフルオロポリエーテル基含有化合物は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の製造中間体として用いることができ、種々の構造を有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合成を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の化合物について説明する。
【0014】
本発明は、下記一般式(I):
【化6】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Qは、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3の整数であり;
lは、0または1である:ただし、Rがフッ素原子である場合、lは1である。]
で表される化合物を提供する。
【0015】
上記式(I)中、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0016】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基における「炭素数1〜16のアルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0017】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されている炭素数1〜16のアルキル基であり、より好ましくはCFH−C1−15フルオロアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基である。
【0018】
該炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、具体的には−CF、−CFCF、または−CFCFCFである。
【0019】
上記式(I)中、PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
を表し、パーフルオロ(ポリ)エーテル基に該当する。ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0または1以上の整数であって、a、b、cおよびdの和が少なくとも1であれば特に限定されるものではない。好ましくは、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0以上200以下の整数、例えば1以上200以下の整数であり、より好ましくは、それぞれ独立して0以上100以下の整数、例えば1以上100以下の整数である。さらに好ましくは、a、b、cおよびdの和は、10以上、好ましくは20以上であり、200以下、好ましくは100以下である。また、a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、−(OCF(CF)CF(CF))−、−(OCF(C)CF)−および−(OCFCF(C))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−および−(OCFCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCF)−である。また、−(OC)−は、−(OCFCF)−および−(OCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
【0020】
一の態様において、PFPEは、−(OC−(式中、bは1以上200以下、好ましくは10以上100以下の整数である)であり、好ましくは−(OCFCFCF−(式中、bは上記と同意義である)である。
【0021】
別の態様において、PFPEは、
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、aおよびbは、それぞれ独立して0以上または1以上30以下、好ましくは0以上10以下の整数であり、cおよびdは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは10以上100以下の整数である。a、b、cおよびdの和は、10以上、好ましくは20以上であり、200以下、好ましくは100以下である。添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であり、好ましくは−(OCFCFCFCF−(OCFCFCF−(OCFCF−(OCF−(式中、a、b、cおよびdは上記と同意義である)である。例えば、PFPEは、−(OCFCF−(OCF−(式中、cおよびdは上記と同意義である)であってもよい。
【0022】
さらに別の態様において、PFPEは、−(OC−R−で表される基である。式中、Rは、OC、OCおよびOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。OC、OCおよびOCから独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、−OCOCOC−、および−OCOCOC−等が挙げられる。上記eは、2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数である。上記式中、OC、OCおよびOCは、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、PFPEは、好ましくは、−(OC−OC−または−(OC−OC−である。
【0023】
上記式(I)中、Qは、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基である。
【0024】
本明細書において用いられる場合、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、炭化水素から2個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい2価の炭素数1〜20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0025】
本明細書において用いられる場合、上記炭化水素基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6−10アリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0026】
好ましい態様において、Qは、下記式:
−(CH−O−CR−CR−Q’−CFR
[式中:
Q’は、2価の有機基であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される基である。
【0027】
上記Q中、Q’は、2価の有機基である。好ましい態様において、Q’は、下記式:
−(R11−(R12
で表される基である。この式中、添字pまたはqを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0028】
上記Q’中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、−NR13−(式中、R13は、水素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)または2価の極性基である。ここに、低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。好ましい態様において、R11は酸素原子である。
【0029】
上記Q’における「2価の極性基」としては、特に限定されないが、−C(O)−、−C(=NR13)−、および−C(O)NR13−(これらの式中、R13は、上記と同意義であり、水素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)が挙げられる。ここに、低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0030】
上記Q’中、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、−CR14−(式中、R14は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)である。ここに、低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。好ましい態様において、R12は、−CF−または−CF(CF)−である。
【0031】
一の態様において、Q’は、R11が酸素原子であり、R12は、それぞれ独立して、−CF−または−CF(CF)−である。
【0032】
上記Q’中、pは、1〜6の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。また、qは、0〜20の整数であり、好ましくは0〜10の整数、より好ましくは0〜6の整数である。
【0033】
上記Q’の具体的な例としては、特に限定されないが、以下の基:
−O−、
−OCF−、
−OCFCF−、
−OCFCFCF
−OCFCF(CF)O−
−OCFCF(CF)OCF
−OCFCF(CF)OCFCF
−CFO−、
−CFOCF−、
−CFOCFCF−、
−CFOCF(CF)CFO−、
−CFOCF(CF)CFOCF−、または
−CFOCF(CF)CFOCFCF−、
が挙げられる。
【0034】
好ましくは、Q’は、
−O−
−OCF−、
−OCFCF−、または
−OCFCFCF
である。
【0035】
上記Q中、Rは、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子である。一の態様において、Rの少なくとも1つは水素原子である。
【0036】
上記Q中、Rは、水素原子またはフッ素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
【0037】
上記Q中、nは、1〜6の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
【0038】
上記Qの具体的な例としては、特に限定されないが、以下の基:
−CHOCFCHFOCF−、
−CHOCFCHFOCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCFCF−、
−CHOCFCHFOCFCF(CF)OCFCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCF−、
−CHOCHCHFCFOCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCFCFCF−、
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCF−、
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCF−、または
−CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCFCF
が挙げられる。
【0039】
上記式(I)中、Rは、水素原子またはフッ素原子である。一の態様において、Rはフッ素原子である。上記式(I)において、lが0である場合、即ちQが存在しない場合、Rは水素原子である。
【0040】
上記式(I)中、Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、好ましくはヨウ素原子である。
【0041】
上記式(I)中、mは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、例えば0または1である。
【0042】
上記式(I)中、lは、0または1である。上記式(I)において、Rがフッ素原子である場合、lは1である。
【0043】
一の態様において、上記式(I)で表される化合物は、下記一般式(Ia):
【化7】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q’は、2価の有機基であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは、0〜3の整数であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物であり得る。
【0044】
一の態様において、上記式(I)および式(Ia)で表される化合物は、CF(OCFCF20(OCF16OCFCHOCFCHFOCFCFI以外の化合物である。即ち、上記式(I)および式(Ia)で表される化合物には、CF(OCFCF20(OCF16OCFCHOCFCHFOCFCFIは含まれない。
【0045】
別の態様において、本発明は、CF(OCFCF20(OCF16OCFCHOCFCHFOCFCFIを提供する。
【0046】
本発明の化合物は、撥水撥油剤として有用なパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合成中間体として用いられる。
【0047】
例えば、式(I)で示される化合物を、下記式:
【化8】
[式中:
21は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し;
sは、任意の整数であり、例えば1〜20の整数であり;
tは、1〜3の整数である。]
で表される化合物と反応させることにより、下記式:
【化9】
[式中、Rf、PFPE、R、Q、Y、m、l、R21、R22、sおよびtは、上記と同意義であり、uは、1〜10の整数である。]
で表される化合物を得ることができる。
【0048】
本発明は、一の要旨において、下記一般式(I’):
【化10】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC−(OC−(OC−(OCF
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3であり;
lは、0または1である。]
で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(A):
【化11】
[式中、Rf、PFPE、Rおよびmは、上記と同意義であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物と、下記式(B):
【化12】
[式中、Yは、上記と同意義であり;
Q’は、2価の有機基であり;
は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子であり;
は、水素原子またはフッ素原子である。]
で表される化合物とを反応させることを含む方法を提供する。
【0049】
この本発明の方法は、撥水撥油剤として有用なパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合成中間体の合成に用いることができる。
【0050】
上記式(I’)中、Rf、PFPE、R、Y、mおよびlは、上記式(I)における同じ記号に対応し、それと同意義である。式(I’)におけるRf、PFPE、R、Y、mおよびlの態様は、上記式(I)におけるこれらの基の態様と同様である。
【0051】
上記式(I’)中、Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基である。
【0052】
一の態様において、Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり、上記式(I)におけるQに対応する。この態様において、式(I’)におけるQ”の態様は、上記式(I)におけるQの態様と同様である。
【0053】
一の態様において、上記式(I’)で表される化合物は、上記した式(I)で表される化合物であり得る。
【0054】
また、一の態様において、上記式(I’)で表される化合物は、上記した式(I−a)で表される化合物であり得る。この態様において、式(I’)中のQ”は、式(I−a)中の−(CH−O−CR−CR−Q’−CFR−に対応する。
【0055】
本発明の方法において、下記一般式(A):
【化13】
で表される化合物と、下記一般式(B):
【化14】
で表される化合物を反応させる。
【0056】
この反応において、式(A)で表される化合物の−OH基が、式(B)で表される化合物の不飽和結合に付加し、下記式(I−a):
【化15】
で表される化合物が得られる。
【0057】
当業者であれば、用いる反応物および目的の生成物に応じて、適当な溶媒、反応温度、反応時間、触媒等の条件を選択することができる。例えば、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤中で、アルカリ条件下、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどを添加して、50〜100℃で加熱することにより、容易に目的の化合物を得ることができる。
【0058】
上記式(A)および式(B)における、Rf、PFPE、Q’、R、R、R、R、Y、mおよびnは、上記の式(I)および式(I−a)の記載と同意義である。式(A)および式(B)における、Rf、PFPE、Q’、R、R、R、R、Y、mおよびnの態様は、上記式(I)または式(I−a)におけるこれらの基の態様と同様である。
【0059】
上記式(A)および式(B)で表される化合物は、当該分野で公知の化合物であり、市販されているか、あるいは当業者であれば合成することができる。例えば、式(A)で表される化合物は、パーフルオロポリエーテル基含有末端酸フロライド体もしくは末端カルボン酸体を、NaBHなどの還元剤で還元させる方法により合成することができ、式(B)で表される化合物は、WO2005/090270に記載の方法により合成することができる。
【0060】
一の態様において、上記式(A)で表される化合物と式(B)で表される化合物との反応で得られた式(I−a)で表される化合物は、他の式(I−a)で表される化合物に変換してもよい。また、別の態様において、上記式(A)で表される化合物と式(B)で表される化合物との反応で得られた式(I−a)で表される化合物は、フッ素化反応、置換反応等に付すことにより、式(I)または式(I’)で表される化合物に変換することができる。
【0061】
例えば、反応器内温が5〜100℃で、Fガス濃度が1〜20vol%に調整したF/N混合ガスを5〜200ml/minで1〜48時間流通させる方法等のフッ素化法により、炭素に結合した水素原子の一部または全部をフッ素原子に置換することができる。
【0062】
一の態様において、式(B)で表される化合物は、下記式(C):
【化16】
[式中、R、R、R、Q’およびYは、式(B)の記載と同意義であり;
Xは、ハロゲン原子である。]
で表される化合物から得ることができる。
【0063】
上記式において、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選択されるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子である。
【0064】
当業者であれば、用いる反応物および目的の生成物に応じて、適当な溶媒、反応温度、反応時間、触媒等の条件を選択することができる。
【0065】
また、式(C)で表される化合物は、別途式(B)で表される化合物に変換して用いてもよく、あるいは、式(A)で表される化合物と共に同じ系内に存在させ、式(B)で表される化合物への変換と式(A)で表される化合物との反応を連続的に行ってもよい。
【実施例】
【0066】
・実施例1
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、平均組成CF(OCFCF20(OCF)16OCFCHOH(ただし、混合物中には(OCFCFCFCF)および/または(OCFCFCF)の繰り返し単位を微量含む化合物も微量含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性アルコール体(150g)1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(100ml)、水酸化ナトリウム(5.2g)を仕込み、70℃で2時間撹拌した。その後、CF=CFOCFCFI(26.0g)を加え、85℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、パーフルオロヘキサン(220g)を加えて不溶物をろ過し、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、末端にヨウ素を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物(134g)を得た。
・パーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物:
CF(OCFCF20(OCF)16OCFCHOCFCHFOCFCF
内部標準物質として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(8.00ppm:C(CF)を用いて、H NMRを測定した。
H NMR:δ=4.35(m, -CH2O-), 5.97 (d, -CHF-)
【0067】
・実施例2
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、平均組成CF(OCFCF19(OCF)14OCFCHOH(ただし、混合物中には(OCFCFCFCF)および/または(OCFCFCF)の繰り返し単位を微量含む化合物も微量含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性アルコール体(150g)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(100ml)、水酸化ナトリウム(5.0g)を仕込み、70℃で2時間撹拌した。その後、CF=CFOCFCFI(25.2g)を加え、85℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、パーフルオロヘキサン(220g)を加えて不溶物をろ過し、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、末端にヨウ素を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物(135g)を得た。
・パーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物:
CF(OCFCF19(OCF)14OCFCHOCFCHFOCFCF
内部標準物質として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(8.00ppm:C(CF)を用いてH NMRを測定した。
H NMR:δ=4.35 (m, -CH2O-), 5.97 (d, -CHF-)
【0068】
・実施例3
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、平均組成CF(OCFCF18(OCF)30OCFCHOH(ただし、混合物中には(OCFCFCFCF)および/または(OCFCFCF)の繰り返し単位を微量含む化合物も微量含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性アルコール体(150g)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(100ml)、水酸化ナトリウム(6.2g)を仕込み、70℃で2時間撹拌した。その後、CF=CFOCFCFI(31.2g)を加え、85℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、パーフルオロヘキサン(220g)を加えて不溶物をろ過し、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、末端にヨウ素を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物(132g)を得た。
・パーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物:
CF(OCFCF18(OCF)30OCFCHOCFCHFOCFCF
内部標準物質として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(8.00ppm:C(CF)を用いて、H NMRを測定した。
H NMR:δ=4.33 (m, -CH2O-), 5.96 (d, -CHF-)
【0069】
・実施例4
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、平均組成CFCFCF(OCFCFCF22OCFCFCHOHで表されるパーフルオロポリエーテル変性アルコール体(150g)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(100ml)、水酸化ナトリウム(5.9g)を仕込み、70℃で2時間撹拌した。その後、CF=CFOCFCFI(29.6g)を加え、85℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、パーフルオロヘキサン(220g)を加えて不溶物をろ過し、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、末端にヨウ素を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物(140g)を得た。
・パーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物:
CFCFCF(OCFCFCF22OCFCFCHOCFCHFOCFCF
内部標準物質として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(8.00ppm:C(CF)を用いて、H NMRを測定した。
H NMR:δ=4.44 (m, -CH2O-), 6.00 (d, -CHF-)
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、種々多様なパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の製造するために好適に利用され得る。