(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、含フッ素ポリマー鎖の末端にヨウ素を導入するには、末端に酸フルオライド基(−COF)を有する含フッ素ポリマーの−COF基を、アルカリ条件下でヨウ素と反応させて、−I基に置換する方法が用いられてきた(特許文献1および3)。
【0007】
しかしながら、特許文献1および3に記載のようなヨウ素化は、含フッ素ポリマー鎖が−(OCF
2CF
2CF
2)−で表される繰り返し単位を有する場合には、好適に利用できるが、含フッ素ポリマー鎖が−(OCF
2CF
2)−および−(OCF
2)−で表される繰り返し単位を有する場合には、含フッ素ポリマー鎖の分解が生じ、副生成物が生成する等、ヨウ素化が難しかった。
【0008】
本発明は、含フッ素ポリマー(即ち、パーフルオロポリエーテル基)の構造に拘わらず、末端にハロゲン原子を有するパーフルオロポリエーテル基含有化合物を好適に製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を合成するための新規な構造を有する合成中間体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコールと、一方の端にハロゲン原子を有し、他端に二重結合を有する化合物を反応させることにより、パーフルオロポリエーテル基がいずれの構造を有する場合であっても、末端にハロゲン原子を有するパーフルオロポリエーテル基含有化合物を好適に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第1の要旨によれば、下記一般式(I):
【化2】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Qは、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
R
1は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3の整数であり;
lは、0または1である:ただし、R
1がフッ素原子である場合、lは1である。]
で表される化合物が提供される。
【0011】
本発明の第2の要旨によれば、下記一般式(I’):
【化3】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
R
1は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3であり;
lは、0または1である。]
で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(A):
【化4】
[式中、Rf、PFPE、R
1およびmは、上記と同意義であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物と、下記式(B):
【化5】
[式中、Yは、上記と同意義であり;
Q’は、2価の有機基であり;
R
2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
R
3は、水素原子またはフッ素原子であり;
R
4は、水素原子またはフッ素原子である。]
で表される化合物とを反応させることを含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、新規なハロゲン化パーフルオロポリエーテル基含有化合物を合成することが可能になる。また、このハロゲン化パーフルオロポリエーテル基含有化合物は、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の製造中間体として用いることができ、種々の構造を有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合成を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の化合物について説明する。
【0014】
本発明は、下記一般式(I):
【化6】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Qは、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
R
1は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3の整数であり;
lは、0または1である:ただし、R
1がフッ素原子である場合、lは1である。]
で表される化合物を提供する。
【0015】
上記式(I)中、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0016】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基における「炭素数1〜16のアルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0017】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されている炭素数1〜16のアルキル基であり、より好ましくはCF
2H−C
1−15フルオロアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基である。
【0018】
該炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、具体的には−CF
3、−CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
3である。
【0019】
上記式(I)中、PFPEは、一般式:
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
を表し、パーフルオロ(ポリ)エーテル基に該当する。ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0または1以上の整数であって、a、b、cおよびdの和が少なくとも1であれば特に限定されるものではない。好ましくは、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0以上200以下の整数、例えば1以上200以下の整数であり、より好ましくは、それぞれ独立して0以上100以下の整数、例えば1以上100以下の整数である。さらに好ましくは、a、b、cおよびdの和は、10以上、好ましくは20以上であり、200以下、好ましくは100以下である。また、a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。また、−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0020】
一の態様において、PFPEは、−(OC
3F
6)
b−(式中、bは1以上200以下、好ましくは10以上100以下の整数である)であり、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)
b−(式中、bは上記と同意義である)である。
【0021】
別の態様において、PFPEは、
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
(式中、aおよびbは、それぞれ独立して0以上または1以上30以下、好ましくは0以上10以下の整数であり、cおよびdは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは10以上100以下の整数である。a、b、cおよびdの和は、10以上、好ましくは20以上であり、200以下、好ましくは100以下である。添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であり、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
a−(OCF
2CF
2CF
2)
b−(OCF
2CF
2)
c−(OCF
2)
d−(式中、a、b、cおよびdは上記と同意義である)である。例えば、PFPEは、−(OCF
2CF
2)
c−(OCF
2)
d−(式中、cおよびdは上記と同意義である)であってもよい。
【0022】
さらに別の態様において、PFPEは、−(OC
2F
4−R
8)
e−で表される基である。式中、R
8は、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば−OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
3F
6−、−OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
3F
6OC
2F
4−、および−OC
4F
8OC
2F
4OC
2F
4−等が挙げられる。上記eは、2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数である。上記式中、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、PFPEは、好ましくは、−(OC
2F
4−OC
3F
6)
e−または−(OC
2F
4−OC
4F
8)
e−である。
【0023】
上記式(I)中、Qは、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基である。
【0024】
本明細書において用いられる場合、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、炭化水素から2個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい2価の炭素数1〜20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0025】
本明細書において用いられる場合、上記炭化水素基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−10シクロアルキル基、C
3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C
6−10アリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0026】
好ましい態様において、Qは、下記式:
−(CH
2)
n−O−CR
22−CR
32−Q’−CFR
4−
[式中:
Q’は、2価の有機基であり;
R
2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
R
3は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
R
4は、水素原子またはフッ素原子であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される基である。
【0027】
上記Q中、Q’は、2価の有機基である。好ましい態様において、Q’は、下記式:
−(R
11)
p−(R
12)
q−
で表される基である。この式中、添字pまたはqを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0028】
上記Q’中、R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、−NR
13−(式中、R
13は、水素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)または2価の極性基である。ここに、低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。好ましい態様において、R
11は酸素原子である。
【0029】
上記Q’における「2価の極性基」としては、特に限定されないが、−C(O)−、−C(=NR
13)−、および−C(O)NR
13−(これらの式中、R
13は、上記と同意義であり、水素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)が挙げられる。ここに、低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0030】
上記Q’中、R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、−CR
142−(式中、R
14は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、または1つまたはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい低級アルキル基を表す)である。ここに、低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。好ましい態様において、R
12は、−CF
2−または−CF(CF
3)−である。
【0031】
一の態様において、Q’は、R
11が酸素原子であり、R
12は、それぞれ独立して、−CF
2−または−CF(CF
3)−である。
【0032】
上記Q’中、pは、1〜6の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。また、qは、0〜20の整数であり、好ましくは0〜10の整数、より好ましくは0〜6の整数である。
【0033】
上記Q’の具体的な例としては、特に限定されないが、以下の基:
−O−、
−OCF
2−、
−OCF
2CF
2−、
−OCFCF
2CF
2−
−OCF
2CF(CF
3)O−
−OCF
2CF(CF
3)OCF
2−
−OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−
−CF
2O−、
−CF
2OCF
2−、
−CF
2OCF
2CF
2−、
−CF
2OCF(CF
3)CF
2O−、
−CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、または
−CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
が挙げられる。
【0034】
好ましくは、Q’は、
−O−
−OCF
2−、
−OCF
2CF
2−、または
−OCF
2CF
2CF
2−
である。
【0035】
上記Q中、R
2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、R
3は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子である。一の態様において、R
3の少なくとも1つは水素原子である。
【0036】
上記Q中、R
4は、水素原子またはフッ素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
【0037】
上記Q中、nは、1〜6の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。
【0038】
上記Qの具体的な例としては、特に限定されないが、以下の基:
−CH
2OCF
2CHFOCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF(CF
3)OCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、または
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−
が挙げられる。
【0039】
上記式(I)中、R
1は、水素原子またはフッ素原子である。一の態様において、R
1はフッ素原子である。上記式(I)において、lが0である場合、即ちQが存在しない場合、R
1は水素原子である。
【0040】
上記式(I)中、Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、好ましくはヨウ素原子である。
【0041】
上記式(I)中、mは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、例えば0または1である。
【0042】
上記式(I)中、lは、0または1である。上記式(I)において、R
1がフッ素原子である場合、lは1である。
【0043】
一の態様において、上記式(I)で表される化合物は、下記一般式(Ia):
【化7】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q’は、2価の有機基であり;
R
1は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
R
2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
R
3は、水素原子またはフッ素原子であり;
R
4は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは、0〜3の整数であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物であり得る。
【0044】
一の態様において、上記式(I)および式(Ia)で表される化合物は、CF
3(OCF
2CF
2)
20(OCF
2)
16OCF
2CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2I以外の化合物である。即ち、上記式(I)および式(Ia)で表される化合物には、CF
3(OCF
2CF
2)
20(OCF
2)
16OCF
2CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2Iは含まれない。
【0045】
別の態様において、本発明は、CF
3(OCF
2CF
2)
20(OCF
2)
16OCF
2CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2Iを提供する。
【0046】
本発明の化合物は、撥水撥油剤として有用なパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合成中間体として用いられる。
【0047】
例えば、式(I)で示される化合物を、下記式:
【化8】
[式中:
R
21は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し;
sは、任意の整数であり、例えば1〜20の整数であり;
tは、1〜3の整数である。]
で表される化合物と反応させることにより、下記式:
【化9】
[式中、Rf、PFPE、R
1、Q、Y、m、l、R
21、R
22、sおよびtは、上記と同意義であり、uは、1〜10の整数である。]
で表される化合物を得ることができる。
【0048】
本発明は、一の要旨において、下記一般式(I’):
【化10】
[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、一般式:
−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり;
R
1は、水素原子またはフッ素原子であり;
Yは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり;
mは0〜3であり;
lは、0または1である。]
で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(A):
【化11】
[式中、Rf、PFPE、R
1およびmは、上記と同意義であり;
nは、1〜6の整数である。]
で表される化合物と、下記式(B):
【化12】
[式中、Yは、上記と同意義であり;
Q’は、2価の有機基であり;
R
2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;
R
3は、水素原子またはフッ素原子であり;
R
4は、水素原子またはフッ素原子である。]
で表される化合物とを反応させることを含む方法を提供する。
【0049】
この本発明の方法は、撥水撥油剤として有用なパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合成中間体の合成に用いることができる。
【0050】
上記式(I’)中、Rf、PFPE、R
1、Y、mおよびlは、上記式(I)における同じ記号に対応し、それと同意義である。式(I’)におけるRf、PFPE、R
1、Y、mおよびlの態様は、上記式(I)におけるこれらの基の態様と同様である。
【0051】
上記式(I’)中、Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基である。
【0052】
一の態様において、Q”は、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子および少なくとも1つのフッ素原子を含む2価の有機基であり、上記式(I)におけるQに対応する。この態様において、式(I’)におけるQ”の態様は、上記式(I)におけるQの態様と同様である。
【0053】
一の態様において、上記式(I’)で表される化合物は、上記した式(I)で表される化合物であり得る。
【0054】
また、一の態様において、上記式(I’)で表される化合物は、上記した式(I−a)で表される化合物であり得る。この態様において、式(I’)中のQ”は、式(I−a)中の−(CH
2)
n−O−CR
22−CR
32−Q’−CFR
4−に対応する。
【0055】
本発明の方法において、下記一般式(A):
【化13】
で表される化合物と、下記一般式(B):
【化14】
で表される化合物を反応させる。
【0056】
この反応において、式(A)で表される化合物の−OH基が、式(B)で表される化合物の不飽和結合に付加し、下記式(I−a):
【化15】
で表される化合物が得られる。
【0057】
当業者であれば、用いる反応物および目的の生成物に応じて、適当な溶媒、反応温度、反応時間、触媒等の条件を選択することができる。例えば、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンなどのフッ素系溶剤中で、アルカリ条件下、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどを添加して、50〜100℃で加熱することにより、容易に目的の化合物を得ることができる。
【0058】
上記式(A)および式(B)における、Rf、PFPE、Q’、R
1、R
2、R
3、R
4、Y、mおよびnは、上記の式(I)および式(I−a)の記載と同意義である。式(A)および式(B)における、Rf、PFPE、Q’、R
1、R
2、R
3、R
4、Y、mおよびnの態様は、上記式(I)または式(I−a)におけるこれらの基の態様と同様である。
【0059】
上記式(A)および式(B)で表される化合物は、当該分野で公知の化合物であり、市販されているか、あるいは当業者であれば合成することができる。例えば、式(A)で表される化合物は、パーフルオロポリエーテル基含有末端酸フロライド体もしくは末端カルボン酸体を、NaBH
4などの還元剤で還元させる方法により合成することができ、式(B)で表される化合物は、WO2005/090270に記載の方法により合成することができる。
【0060】
一の態様において、上記式(A)で表される化合物と式(B)で表される化合物との反応で得られた式(I−a)で表される化合物は、他の式(I−a)で表される化合物に変換してもよい。また、別の態様において、上記式(A)で表される化合物と式(B)で表される化合物との反応で得られた式(I−a)で表される化合物は、フッ素化反応、置換反応等に付すことにより、式(I)または式(I’)で表される化合物に変換することができる。
【0061】
例えば、反応器内温が5〜100℃で、F
2ガス濃度が1〜20vol%に調整したF
2/N
2混合ガスを5〜200ml/minで1〜48時間流通させる方法等のフッ素化法により、炭素に結合した水素原子の一部または全部をフッ素原子に置換することができる。
【0062】
一の態様において、式(B)で表される化合物は、下記式(C):
【化16】
[式中、R
2、R
3、R
4、Q’およびYは、式(B)の記載と同意義であり;
Xは、ハロゲン原子である。]
で表される化合物から得ることができる。
【0063】
上記式において、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選択されるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子である。
【0064】
当業者であれば、用いる反応物および目的の生成物に応じて、適当な溶媒、反応温度、反応時間、触媒等の条件を選択することができる。
【0065】
また、式(C)で表される化合物は、別途式(B)で表される化合物に変換して用いてもよく、あるいは、式(A)で表される化合物と共に同じ系内に存在させ、式(B)で表される化合物への変換と式(A)で表される化合物との反応を連続的に行ってもよい。
【実施例】
【0066】
・実施例1
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、平均組成CF
3(OCF
2CF
2)
20(OCF
2)
16OCF
2CH
2OH(ただし、混合物中には(OCF
2CF
2CF
2CF
2)および/または(OCF
2CF
2CF
2)の繰り返し単位を微量含む化合物も微量含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性アルコール体(150g)1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(100ml)、水酸化ナトリウム(5.2g)を仕込み、70℃で2時間撹拌した。その後、CF
2=CFOCF
2CF
2I(26.0g)を加え、85℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、パーフルオロヘキサン(220g)を加えて不溶物をろ過し、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、末端にヨウ素を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物(134g)を得た。
・パーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物:
CF
3(OCF
2CF
2)
20(OCF
2)
16OCF
2CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2I
内部標準物質として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(8.00ppm:C
6H4(CF
3)
2)を用いて、
1H NMRを測定した。
1H NMR:δ=4.35(m, -C
H2O-), 5.97 (d, -C
HF-)
【0067】
・実施例2
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、平均組成CF
3(OCF
2CF
2)
19(OCF
2)
14OCF
2CH
2OH(ただし、混合物中には(OCF
2CF
2CF
2CF
2)および/または(OCF
2CF
2CF
2)の繰り返し単位を微量含む化合物も微量含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性アルコール体(150g)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(100ml)、水酸化ナトリウム(5.0g)を仕込み、70℃で2時間撹拌した。その後、CF
2=CFOCF
2CF
2I(25.2g)を加え、85℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、パーフルオロヘキサン(220g)を加えて不溶物をろ過し、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、末端にヨウ素を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物(135g)を得た。
・パーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物:
CF
3(OCF
2CF
2)
19(OCF
2)
14OCF
2CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2I
内部標準物質として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(8.00ppm:C
6H4(CF
3)
2)を用いて
1H NMRを測定した。
1H NMR:δ=4.35 (m, -C
H2O-), 5.97 (d, -C
HF-)
【0068】
・実施例3
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、平均組成CF
3(OCF
2CF
2)
18(OCF
2)
30OCF
2CH
2OH(ただし、混合物中には(OCF
2CF
2CF
2CF
2)および/または(OCF
2CF
2CF
2)の繰り返し単位を微量含む化合物も微量含まれる)で表されるパーフルオロポリエーテル変性アルコール体(150g)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(100ml)、水酸化ナトリウム(6.2g)を仕込み、70℃で2時間撹拌した。その後、CF
2=CFOCF
2CF
2I(31.2g)を加え、85℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、パーフルオロヘキサン(220g)を加えて不溶物をろ過し、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、末端にヨウ素を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物(132g)を得た。
・パーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物:
CF
3(OCF
2CF
2)
18(OCF
2)
30OCF
2CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2I
内部標準物質として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(8.00ppm:C
6H4(CF
3)
2)を用いて、
1H NMRを測定した。
1H NMR:δ=4.33 (m, -C
H2O-), 5.96 (d, -C
HF-)
【0069】
・実施例4
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、平均組成CF
3CF
2CF
2(OCF
2CF
2CF
2)
22OCF
2CF
2CH
2OHで表されるパーフルオロポリエーテル変性アルコール体(150g)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(100ml)、水酸化ナトリウム(5.9g)を仕込み、70℃で2時間撹拌した。その後、CF
2=CFOCF
2CF
2I(29.6g)を加え、85℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、パーフルオロヘキサン(220g)を加えて不溶物をろ過し、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作を行った。続いて、揮発分を留去することにより、末端にヨウ素を有する下記のパーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物(140g)を得た。
・パーフルオロポリエーテル基含有ヨウ素化合物:
CF
3CF
2CF
2(OCF
2CF
2CF
2)
22OCF
2CF
2CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2I
内部標準物質として1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(8.00ppm:C
6H4(CF
3)
2)を用いて、
1H NMRを測定した。
1H NMR:δ=4.44 (m, -C
H2O-), 6.00 (d, -C
HF-)