特許第6020575号(P6020575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6020575-組電池 図000002
  • 特許6020575-組電池 図000003
  • 特許6020575-組電池 図000004
  • 特許6020575-組電池 図000005
  • 特許6020575-組電池 図000006
  • 特許6020575-組電池 図000007
  • 特許6020575-組電池 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020575
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M2/10 Y
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-536676(P2014-536676)
(86)(22)【出願日】2013年8月9日
(86)【国際出願番号】JP2013071619
(87)【国際公開番号】WO2014045757
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2014年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-205738(P2012-205738)
(32)【優先日】2012年9月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】雨谷 竜一
(72)【発明者】
【氏名】八田 健太郎
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−023266(JP,A)
【文献】 実開昭63−093275(JP,U)
【文献】 実開昭63−074514(JP,U)
【文献】 特開2010−014233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
F16B 39/24
F16B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単電池を収容した筐体をそれぞれ備え、相互に積層された複数の電池モジュールと、
前記電池モジュールの積層方向に沿って前記筐体に形成された貫通孔に挿通され、前記電池モジュール同士を連結するボルトと
記貫通孔に圧入されることにより当該貫通孔の開口部に保持された筒状部材と、を備え、
前記筒状部材は、
前記筒状部材の先端に向かうに従って内径が漸次的に小さくなる第1のテーパ部と、
前記第1のテーパ部の後端に形成され、当該後端の内径と同じ一定の内径を有する筒部と、
前記筒状部材を径方向に弾性変形可能とするスリットと、を有する組電池。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池であって、
前記筒状部材は、前記貫通孔の両方の開口部にそれぞれ独立して挿入されている組電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組電池であって、
前記ボルトの軸部の外径の最大値は、前記第1のテーパ部の内径の最小値よりも大きい組電池。
【請求項4】
請求項1〜の何れか一項に記載の組電池であって、
前記筒状部材は、前記筒状部材の後端に向かうに従って内径が大きくなる第2のテーパ部を有する組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池モジュールを備えた組電池に関するものである。
本出願は、2012年9月19日に出願された日本国特許出願の特願2012―205738に基づく優先権を主張するものであり、文献の参照による組み込みが認められる指定国については、上記の出願に記載された内容を参照により本出願に組み込み、本出願の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
薄形電池用の組電池用スペーサーの枠体に設けられた孔に、通しボルトを通すことによって小組電池を一体化した組電池が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−272234公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の組電池では、小組電池の積層数が増加した場合に、小組電池同士の位置が少しでもずれていると、通しボルトが孔に通り難くなり組電池の組立作業性が低下する場合があるという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、組立作業性が向上した組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電池モジュールの積層方向に沿って当該電気モジュールの筐体に形成された貫通孔に、圧入されることにより当該貫通孔の開口部に保持され、先端に向かうに従って内径が漸次的に小さくなる第1のテーパ部と、第1のテーパ部の後端に形成され、当該後端の内径と同じ一定の内径を有する筒部と、当該筒状部材を径方向に弾性変形可能とするスリットとを有する筒状部材を備えることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池モジュールの貫通孔にボルトを挿通する際に、第1のテーパ部によってボルトの挿通位置が貫通孔の中心付近に修正されるので、組電池の組立作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態における組電池を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態における組電池を示す部分分解斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態における電池モジュールに組み込まれている単電池を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態における挿通補助部材を示す斜視図である。
図5図5は、図2のV−V線に沿う断面図である。
図6図6は、図5におけるVI部の拡大図である。
図7図7は、図6におけるVII部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本実施形態における組電池1を示す斜視図であり、図2は本実施形態における組電池1を示す部分分解斜視図であり、図3は本実施形態における電池モジュール2に組み込まれている単電池21を示す斜視図である。
【0011】
本実施形態における組電池1は、図1に示すように、積層された複数の電池モジュール2と、それら複数の電池モジュール2を連結して固定するための通しボルト4と、を備えている。
【0012】
電池モジュール2は、図2及び図3に示すように、例えば相互に積層された単電池21と、単電池21の間に介装されたスペーサ26と、これら単電池21及びスペーサ26を収容するケース27と、を備えている。
【0013】
単電池21は、例えば、リチウムイオン2次電池等のラミネート電池であり、図3に示すように、扁平形状を有している。この単電池21は、セパレータを介して正極板と負極板を交互に積層してなる積層体(不図示)と、当該積層体を電解液と共に封止するラミネートフィルム211と、を有しており、正極板に接続された正極タブ22が導出していると共に、負極板に接続された負極タブ23がラミネートフィルム211の反対側の端部から導出している。なお、単電池21は、ニッケル水素電池、鉛電池等で構成してもよい。
【0014】
本実施形態では、図3に示すように、隣り合う単電池21の正極タブ22と負極タブ23の向きを交互に反転させて単電池21を積層した後、当該正極タブ22と負極タブ23を直接接合することで各単電池21を直列に接続している。そして、このように電気的に接続された複数の単電池21の一端には正極側出力端子24が電気的に接続され、その他端には負極側出力端子25が電気的に接続されている。なお、単電池21の電気的な接続関係は、特にこれに限定されない。
【0015】
因みに、図3では、隣接する2つの単電池21のみを示しているが、実際は8個の単電池21が積層された状態でケース27内に収容されている。なお、ケース27内に積層される単電池21の数は特に限定されない。例えば、1個の単電池21をケース27に収めてもよい。
【0016】
ケース27は、図2に示すように、箱形状を有するロアケース271及びアッパーケース272から構成され、これらロアケース271及びアッパーケース272は、例えばアルミ板から形成されている。
【0017】
単電池21は、図3に示すように、隣接する単電池21同士の絶縁性を保つためのスペーサ26が介装された状態でロアケース271に入れられ、アッパーケース272をロアケース271にかぶせることにより、単電池21等はケース27内に収容されている。
【0018】
本実施形態では、図2に示すように、ケース27の四隅に貫通孔28がそれぞれ形成されている。この貫通孔28は、後述する通しボルト4の軸部41が挿入可能な大きさを有しており、それぞれの貫通孔28におけるロアケース271側及びアッパーケース272側の開口部29(図6参照)には、挿通補助部材3がそれぞれ取り付けられている。なお、ケース27に形成される貫通孔28の数は特に限定されない。
【0019】
図4は本実施形態における挿通補助部材3を示す斜視図であり、図5図2のV−V線に沿った断面図であり、図6図5のVI部の拡大図であり、図7図6のVII部の拡大図である。
【0020】
挿通補助部材3は、図4に示すように、挿入部31及び係止部32を有しており、例えば鉄やステンレス等の鋼材、或いは、耐熱性プラスチック樹脂等から形成される。
【0021】
挿入部31は、筒部311と、テーパ部312と、を有している。筒部311は、電池モジュール2の貫通孔28の開口部29に取り付けられる前の状態において、貫通孔28の径よりも僅かに大きな外径の円筒形状を有している。一方、テーパ部312は、先端に向かって徐々に内径が小さくなっており、筒部311の図4中の下端につながっている。
【0022】
係止部32は、挿入部31と同軸状に設けられ、挿入部31における図4中の上端部から径方向外側に向かって広がるように形成されており、図4に示すように、扁平ドーナツ状を有している。
【0023】
挿通補助部材3は、挿入部31のテーパ部312を貫通孔28の開口部29内に挿入した後に当該貫通孔28内に圧入することにより、貫通孔28の開口部29に取り付けられている。この際に係止部32が、図6に示すように、当該貫通孔28における開口部29の周縁に係止し、挿通補助部材3は当該開口部29に保持される。
【0024】
本実施形態における挿通補助部材3の側面の一部には、図4に示すように、当該挿通補助部材3の軸心方向に対して実質的に平行なスリット33が形成されており、これにより挿通補助部材3は径方向に弾性変形可能となっている。なお、スリット33の形状は特に上記に限定されない。また、径方向に挿通補助部材3を弾性変形可能にする方法は特に限定されない。
【0025】
なお、本実施形態では、1枚の鋼材をプレス加工することによって挿入部31と係止部32とを一体的に形成しているが、特にこれに限定されない。例えば、挿入部31と係止部32とをそれぞれ独立した部材で形成した後、それらを接合することにより挿通補助部材3を形成してもよい。
【0026】
なお、本実施形態において挿通補助部材3は、図5に示すように、貫通孔28における図中の上下両方の開口部29に取り付けているが、特にこれに限定されず、貫通孔28の上下何れか一方の開口部29のみに挿通補助部材3を取り付けてもよい。
【0027】
また、本実施形態における挿通補助部材3には、図7に示すように、係止部32の内側に、係止部32の上面321に向かうに従って内径が徐々に大きくなるテーパ部322を設けている。
【0028】
電池モジュール2を連結する通しボルト4は、図2に示すように、頭部40と、軸部41と、を備えている。
【0029】
軸部41は、ナット5と螺合するネジ部42、及び円筒部43から構成されており、貫通孔28の開口部29に取り付けられた挿通補助部材3の筒部311に挿通可能な直径を有している。また、軸部41の長さは、組電池1が有する複数の電池モジュール2の積層方向の長さよりも若干長くなっている。
【0030】
この通しボルト4は、図2に示すように、各電池モジュール2のケース27に形成された4つの貫通孔28にそれぞれ挿通された後、ナット5で締結することによって、当該複数の電池モジュール2を連結し、固定する。なお、図2では、3つの電池モジュール2のみを示し、積層された他の電池モジュール2は省略している。また、図2では、電池モジュール2のケース27に形成された4つの貫通孔28にそれぞれ挿通される通しボルト4のうちの1つのみを示しており、他の3つの通しボルト4は省略している。
【0031】
本実施形態において通しボルト4のネジ部42は、図6に示すように、貫通孔28の開口部29に取り付けられた挿通補助部材3のテーパ部312が有する内径の最小値D1よりも大きな直径D2を有している(D2>D1)。なお、ネジ部42を円筒部43よりも小さくして円筒部43が直径D2を有していてもよいし、或いは、ネジ部42及び円筒部43の両方が直径D2を有していてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0033】
本実施形態における組電池1では、図1及び図2に示すように、積層された複数の電池モジュール2のケース27にそれぞれ設けられた貫通孔28に通しボルト4を挿通し、その後ナット5で締結することによって、当該複数の電池モジュール2を連結して固定している。
【0034】
組電池1を組立てる際は、図2に示すように、それぞれの電池モジュール2が有する貫通孔28同士が重なるよう複数の電池モジュール2のおおよその位置決めを行い、その後、各電池モジュール2の貫通孔28に通しボルト4を順次挿通する。
【0035】
本実施形態では、図6に示すように、各貫通孔28の開口部29に挿通補助部材3を取り付けており、この挿通補助部材3の挿入部31における下端部の周囲には、当該端部に向かって徐々に内径が小さくなるテーパ部312を設けている。このため、通しボルト4を挿通する際に当該通しボルト4が貫通孔28に押し込まれると、通しボルト4がテーパ部312の傾斜を介して挿通補助部材3を径方向に押圧し、当該通しボルト4が貫通孔28の中心付近に位置するよう電池モジュール2の位置が修正される。
【0036】
これにより、通しボルト4の挿通時に複数の電池モジュール2間でそれぞれ僅かな位置ずれが生じていたとしても、当該複数の電池モジュール2の貫通孔28に通しボルト4を容易に挿通することができ、組電池1の組立作業性の向上を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、図5に示すように、貫通孔28における図中の上側及び下側の両方の開口部29に挿通補助部材3を取り付けている。このため、貫通孔28の上下何れの開口部29から通しボルト4を挿通する場合においても、組電池1の組立作業性の向上を図ることができる。
【0038】
さらに、本実施形態における挿通補助部材3の側面には、図4に示すように、スリット33を形成しており、挿通補助部材3が径方向に弾性変形可能となっている。このため、挿通補助部材3を貫通孔28の開口部29に圧入して取り付けた際、当該挿通補助部材3を当該開口部29に安定保持することができる。
【0039】
また、スリット33を形成して挿通補助部材3が径方向に弾性変形可能であることにより、テーパ部312の形状に沿って通しボルト4が挿入される際の当該通しボルト4と当該テーパ部312との間の遊びを減少させることができる。このため、通しボルト4の挿通時における電池モジュール2の位置合わせ精度が向上し、組電池1の組立作業性の更なる向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態における通しボルト4のネジ部42は、図6に示すように、貫通孔28の開口部29に取り付けられた挿通補助部材3のテーパ部312が有する内径の最小値D1よりも大きな直径D2を有している(D2>D1)。これにより、テーパ部312の形状に沿って通しボルト4を挿入させる際の当該通しボルト4と当該テーパ部312との間の遊びがさらに減少し、通しボルト4の挿通時における電池モジュール2の位置合わせ精度がさらに向上するため、組電池1の組立作業性をより向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態における挿通補助部材3には、図7に示すように、係止部32の内側に、係止部32の上面321に向かうに従って内径が徐々に大きくなるテーパ部322を設けている。このため、貫通孔28の開口部29から多少ずれて通しボルト4が挿入されようとした場合においても、テーパ部322の形状に沿って当該ボルト4は貫通孔28に挿入されるため、通しボルト4の挿入作業における作業性が向上する。
【0042】
さらに、通しボルト4の挿通時に電池モジュール2間で位置ずれが生じていた場合においても、通しボルト4が貫通孔28に押し込まれる際に当該通しボルト4がテーパ部322の傾斜を介して挿通補助部材3を径方向に押圧するため、当該通しボルト4が貫通孔28の中心付近に位置するよう電池モジュール2の位置が修正される。これにより、通しボルト4を貫通孔28に挿通する際に許容される電池モジュール2の位置ずれ幅は拡大し、複数の電池モジュール2の貫通孔28に通しボルト4をさらに容易に挿通することができるため、組電池1の組立作業性をより一層向上させることができる。
【0043】
本実施形態におけるケース27が本発明における筐体の一例に相当し、本実施形態における挿通補助部材3が本発明における筒状部材の一例に相当し、本実施形態における挿通補助部材3の挿入部31の下端部が本発明における筒状部材の先端の一例に相当し、本実施形態におけるテーパ部312が本発明における第1のテーパ部の一例に相当し、本実施形態における通しボルト4のネジ部42の直径D2が本発明におけるボルトの軸部の外径の最大値の一例に相当し、本実施形態におけるテーパ部312が有する内径の最小値D1が本発明の第1のテーパ部の内径の最小値の一例に相当し、本実施形態における挿通補助部材3の係止部32の上面321が本発明の筒状部材の後端の一例に相当し、本実施形態におけるテーパ部322が本発明における第2のテーパ部の一例に相当する。
【0044】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・組電池
2・・・電池モジュール
21・・・単電池
27・・・ケース
28・・・貫通孔
3・・・挿通補助部材
311・・・テーパ部
322・・・テーパ部
4・・・通しボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7