(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)として、電子機器を電子式卓上計算機に適用した構造について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0011】
(電子式卓上計算機の全体構成)
まず、実施形態の電子式卓上計算機10の全体構成を
図1〜
図3に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すように、実施形態の電子式卓上計算機10は、四則演算や、その混合、応用計算などを行う略平板型のいわゆる電卓であり、表示部11を有する本体部20と、この本体部20の前下部に入力部として設けられる押圧キー部材40とによって構成される。
【0013】
表示部11は、液晶表示素子やEL(エレクトロルミネッセンス)表示素子などの平面型の表示素子からなる表示画面を有する。表示画面は、押圧キー部材40からの入力情報及び演算処理結果などを表す数字や文字、記号を電気光学的に表示する。なお、表示部11の上側には、外部光を受光して発電するソーラーパネル12を設けることができる。
【0014】
図2に示すように、本体部20は、筐体30を備え、筐体30は、開口部31aを有する前側筐体31と、この前側筐体31に合わさることで筐体30全体を構成する後側筐体32とからなる。そして、筐体30は、その下部に、開口部31aの下辺側に設けられたロック部33を備える。
【0015】
さらに、
図3に示すように、本体部20は、前側筐体31と後側筐体32の間に挟まれるパッキン部材21と、筐体30内に設けられる基板22と、開口部31aをシールするように設けられ、複数の接点部23aを有する接点部材23とを備える。
【0016】
また、電子式卓上計算機10において、押圧キー部材40は、キー操作部としてフランジ部41aを有する複数の押圧キー41と、前側半体42及び後側半体43とにより構成される。複数の押圧キー41、前側半体42及び後側半体43は、ビス13などで締結された1つのユニットであり、開口部31aに着脱可能に取付けられている。また、ロック部33は、開口部31a方向に摺動可能で、押圧キー部材40の下辺40aをロックする機能を有し、係止片33a、Oリング33b及びロックカバー33cで構成される。
【0017】
(電子式卓上計算機の各部の構成)
次に、電子式卓上計算機10の各部の構成を
図4〜
図14に基づいて説明する。
図4(a)及び(b)に示すように、前側筐体31は、略四角形の開口部31aを有し、この開口部31aの上辺縁部に左右一対の係合部31bを有する。この係合部31bは、押圧キー部材40の後側半体43の凸部43a(後述)を開口部31aの上辺縁部に係合する。また、前側筐体31は、開口部31aの下側縁部に形成された凹部31cと、この凹部31cの左右両側に設けられた一対の長孔部31dとを有する。各長孔部31dは、Oリング33b(
図3参照)を受ける縁部31eを有する。
【0018】
また、前側筐体31には、開口部31aの周囲に断面コの字状(U字形状ともいう)の溝31fが形成されている。さらに、前側筐体31の周縁部には、パッキン部材21(
図3参照)の嵌め込まれる溝31gが形成されている。前側筐体31においてパッキン部材21の露出する部分21a(後述)に対応する位置(この例では、前側筐体31の上部全体及び前側筐体31の下部の両端部)では、溝31gが複数層形成されている。
【0019】
図5(a)及び(b)に示すように、後側筐体32は、前側筐体31(
図3参照)に後側から合わされる形状に形成される。後側筐体32の周縁部には、パッキン部材21の嵌め込まれる溝32gが形成されている。後側筐体32においてパッキン部材21の露出する部分21a(後述)に対応する位置(この例では、後側筐体32の上部全体及び後側筐体32の下部の両端部)では、前側筐体31(
図4(b)参照)と同様に、溝32gが複数層形成されている。後側筐体32は、前側筐体31との間でパッキン部材21(
図3参照)を挟持するように前側筐体31の裏側にビス13(
図3参照)で締結される。
【0020】
図6(a)及び(b)に示すように、パッキン部材21は、筐体30(
図2参照)の上側及び下側の一部(この例では、パッキン部材21の上部全体及び筐体30の下部の両端部)では、外部から目視できるように露出しており、この露出する部分21aに対応する部分の厚みt1は、露出しない部分の厚みt2よりも厚くされる。また、パッキン部材21の厚みt1が厚くされる部分には、前側筐体31及び後側筐体32において複数層形成される溝31g(
図4(b)参照)及び溝32g(
図5(a)参照)に対応した複数の線状リブ21bが形成されている。
【0021】
図7(a)及び(b)に示すように、基板22は、略正方形の外形を有する。基板22には、複数の電極部(図示省略)が設けられており、基板22では、接点部材23の接点部23a(後述)が電極部に押し付けられることにより、電極部が通電して、押圧キー41(
図3参照)のいずれのキーが押されたかが検知される。また、基板22の裏側には、補助用電池15(
図3参照)が保持部材16(
図3参照)によって保持されている。補助用電池15は、ソーラーパネル12(
図1参照)が機能しにくい暗い場所(例えば、建築中の建物の中など)で使用されるバックアップ用の電池として機能する。このように構成される基板22は、その前面に接点部材23(
図3参照)が取り付けられた後、前側筐体31(
図3参照)との間で接点部材23を挟持するように前側筐体31の裏側にビス13(
図3参照)で締結される。
【0022】
図8(a)及び(b)に示すように、接点部材23は、基板22(
図7参照)の外形に対応した略正方形の外形を有する。接点部材23は、基板22(
図7参照)の電極部に対応する複数の接点部23aを有し、開口部31a(
図3参照)をシールするように設けられる。複数の接点部23aのそれぞれは、前側に突出して設けられる。また、接点部材23は、外周部の周囲に形成される外周リブ23bを備える。外周リブ23bは、前側筐体31のコの字状の溝31f(
図4(b)参照)に挿入される。なお、接点部材23の構成材料には、ゴムなどの弾性材料を好適に用いることができる。
【0023】
図9(a)に示すように、外周リブ23bは、先端部が断面視で球形状の一部を成すような形状として、その基端側より幅が広くなるように形成されている。これにより、
図9(b)に示すように、外周リブ23bは3方向から圧縮された状態で、コの字状の溝31fとの隙間をシールする。
【0024】
これに対し、
図9(c)に示すように、外周リブ23cの端面のみを凸曲面状に形成することで、外周リブ23cとコの字状の溝31fとの隙間をシールすることも可能である。しかし、この場合、
図9(d)に示すように、外周リブ23cが1方向のみから圧縮された状態で、外周リブ23cとコの字状の溝31fとの間をシールするため、高いシール性を得ることが難しい。
【0025】
この点、外周リブ23bでは、
図9(b)に示すように、外周リブ23bを3方向から圧縮することができるので、外周リブ23bとコの字状の溝31fとの間に生じる隙間をより減らすことができる。その結果、高いシール性を得ることができる。
【0026】
図10(a)及び(b)に示すように、複数の押圧キー41は、複数の接点部23a(
図8(a)参照)に対応して配置されるものであり、複数の押圧キー41のそれぞれは、後端側にフランジ部41aを有する。
【0027】
図11(a)及び(b)に示すように、前側半体42は、押圧キー41のフランジ部41a(
図10参照)を受ける縁部42aと、押圧キー41の先端側が挿入される前側開口42bと、前側開口42bの周囲に設けられ、押圧キー41の押圧時のストロークを確保するリブ42cとを有する。
【0028】
図12(a)及び(b)に示すように、後側半体43は、その上辺に左右一対の凸部43aを有する。この凸部43aは、係合部31b(
図4(b)参照)によって開口部31a(
図4(b)参照)の上辺縁部に係合される。後側半体43は、前側半体42(
図3参照)に対して押圧キー41(
図3参照)の後端側から取付けられており、押圧キー41の後端を受ける。また、後側半体43は、接点部材23の接点部23a(
図3参照)が押圧キー41の後端に当接可能に挿入できる後側開口43bを有する。
【0029】
なお、複数の押圧キー41、前側半体42及び後側半体43の構成材料には、各種の樹脂材料を好適に用いることができる。
【0030】
図13(a)に示すように、係止片33aは、凹部31c(
図4(a)参照)に配置される部品であり、その中間部に側方に突出する係止突起部33a1を有する。係止突起部33a1は、係止片33aの左右両側に設けてもよいし、左右の一側のみに設けてもよい。
図13(b)に示すように、Oリング33bは、長孔部31d(
図4(a)参照)の形状に合わせた楕円状に形成されている。
【0031】
図14(a)及び(b)に示すように、ロックカバー33cは、係止片33a及びOリング33b(
図13(a)及び(b)参照)を覆うカバー体であり、裏面側に左右一対のネジ取付け部33c1(ボス部)が設けられる。また、左右一対のネジ取付け部33c1の間であって係止突起部33a1(
図13(a)参照)に対応した位置には、少なくとも1つの係止リブ33c2(この例では、1つの係止リブ33c2)が設けられる。
【0032】
ロックカバー33cは、そのネジ取付け部33c1がOリング33b(
図3参照)内に挿入されるとともに、長孔部31d(
図4(a)参照)にワッシャー13a(
図3参照)を介してビス13(
図3参照)でネジ止めされる。この際、ネジ取付け部33c1は、開口部31a(
図3参照)方向に移動可能にネジ止めされる。このようにネジ止めされたロックカバー33cは、開口部31a方向に移動させられたときに、押圧キー部材40の下辺40aをロックするとともに、係止リブ33c2が係止突起部33a1に係止される(
図13(a)参照)ことにより、戻る方向に移動することが規制されている。
【0033】
(実施形態の効果)
以上、説明した実施形態の効果について述べる。
図15に示すように、電子式卓上計算機10では、ロックカバー33cを開口部31aから離れる方向に摺動させることにより、押圧キー部材40を本体部20から容易に取り外すことができる。具体的には、ロックカバー33cを、係止リブ33c2が係止突起部33a1を乗り越えるように開口部31aから離れる方向に摺動させ、ロックカバー33cによるロックから押圧キー部材40の下辺40aを解放した後、押圧キー部材40を、その上辺を支点に回動させながら、凸部43aを係合部31bから外す。これにより、押圧キー部材40を本体部20(この例では、前側筐体31)から引き抜くことができる。
【0034】
したがって、本実施形態では、電子式卓上計算機10を本体部20と押圧キー部材40とに分解し、押圧キー部材40を洗浄したり接点部材23の表面を拭いたりすることで、簡単に掃除することができ、内部に浸入したゴミ等を容易に取り除くことができる。
【0035】
また、外周リブ23bを3方向から圧縮することができるので、外周リブ23bとコの字状の溝31fとの間に生じる隙間をより減らすことができる。その結果、高いシール性を得ることができ、より確実な防水性能及び防塵性能を実現することができる。
【0036】
また、パッキン部材21の厚みt1が厚くされる部分では、前側筐体31及び後側筐体32の複数層形成される溝31g,32gと、パッキン部材21の複数の線状リブ21bとを嵌め合せるため、複雑に形成される迂回構造によって高い防水性能及び防塵性能が得られ、しかもパッキン部材21が前側筐体31及び後側筐体32から外れにくくなる効果が得られる。また、上記では電子式卓上計算機を例にして説明したが、キーを有する電子辞書、携帯電話等の他の電子機器に適用できることは言うまでもない。更に、着脱可能な押圧キー部材40は、個別にキーを備えたものではなく、キー操作部が弾性変形するシート状の構成としたキー部材とすることも可能である。
【0037】
以上、本発明の実施形態及びその変形例を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲をその均等の範囲を含む。
【0038】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
<請求項1>
開口部を有する筐体と、
前記筐体内に設けられる複数の電極部を有する基板と、
前記電極部に対応する複数の接点部を有し、前記開口部をシールするように設けられる接点部材と、
前記開口部に設けられ、複数の前記接点部に対応したキー操作部を有するキー部材と、を備え、
前記押圧キー部材が、前記開口部に着脱可能に取付けられていることを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記キー部材が、上辺に凸部を有し、
前記筐体が、前記開口部の上辺縁部に前記凸部を係合する係合部と前記開口部の下辺側に設けられた前記開口部方向に摺動可能な前記キー部材の下辺をロックするロック部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記筐体には、前記開口部の下側縁部に形成された凹部と前記凹部の左右両側に設けられたOリングを受ける縁部を有する長孔部とが形成され、
前記ロック部が
前記凹部に配置される係止片と、
前記長孔部に配置される前記Oリングと、
前記係止片及び前記Oリングを覆うように配置され、前記Oリング内に挿入されるネジ取付け部で前記開口部方向に移動可能に前記筐体の前記長孔部にネジ止めされる、前記キー部材の下辺をロックするロックカバーと、からなり、
前記係止片が、中間部に係止突起部を有し、
前記ロックカバーが、前記開口部方向に移動させられたときに、戻る方向に移動するのを規制する前記係止片の前記係止突起部に係止される係止リブを有することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
<請求項4>
前記キー部材が
前記キー操作部に設けられる後端側にフランジ部を有する押圧キーと、
前記押圧キーのフランジ部を受ける縁部が設けられた前記押圧キーの先端側が挿入される前側開口と前記押圧キーの押圧時のストロークを確保するリブが前記前側開口の周囲に設けられた前側半体と、
前記前側半体に対して前記押圧キーの後端側から取付けられ、前記押圧キーの後端を受けるとともに、前記接点部材の前記接点部が前記押圧キーの後端に当接可能に挿入できる後側開口を有する後側半体とからなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器。
<請求項5>
前記筐体は、前記開口部を有する前側筐体と前記前側筐体と合わせることで前記筐体を構成する後側筐体とからなり、
前記前側筐体には、前記開口部の周囲に断面コの字状の溝が形成され、
前記接点部材は、外周部の周囲に形成される前記コの字状の溝に挿入される外周リブを備え、
前記外周リブは、先端部が断面視で球形状の一部を成すような形状として前記外周リブの基端側より幅が広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器。
<請求項6>
前記前側筐体及び前記後側筐体の外周に沿って設けられ、前記前側筐体と前記後側筐体の間に挟まれるパッキン部材を備え、
前記前側筐体及び前記後側筐体には、外周に沿って形成された前記パッキン部材の嵌め込まれる溝が形成されており、
前記筐体の上側及び下側の一部では、前記パッキン部材が外部から目視できるように露出しており、
前記前側筐体及び前記後側筐体は、前記露出する部分に対応する位置に設けられる前記パッキン部材を嵌め込む溝が、複数層形成され、
前記パッキン部材が、前記露出する部分に対応する部分の厚みが露出しない部分の厚みよりも厚くされるとともに、前記パッキン部材の前記厚みが厚くされる部分は、前記前側筐体及び前記後側筐体の複数層形成される前記パッキン部材を嵌め込む溝に対応した複数の線状リブが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
<請求項7>
周囲に溝が形成されている開口部を有する筐体と、
前記筐体内に設けられる複数の電極部を有する基板と、
前記電極部に対応する複数の接点部を有し、前記開口部の周囲に形成された前記溝に挿入される外周リブを備え、前記開口部をシールするように設けられる接点部材と、
前記開口部に設けられ、複数の前記接点部に対応した押圧キーを有する押圧キー部材と、を備えたことを特徴とする電子機器。
<請求項8>
前記筐体の前記開口部の下辺側に設けられ、前記押圧キー部材をロックするロック部を備え、
前記ロック部によるロックが解除されることにより、前記押圧キー部材が前記開口部に着脱可能となっていることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。