特許第6020636号(P6020636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020636
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/06 20060101AFI20161020BHJP
   A01D 69/03 20060101ALI20161020BHJP
   A01F 12/10 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A01D69/06
   A01D69/03
   A01F12/10 K
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-66551(P2015-66551)
(22)【出願日】2015年3月27日
(62)【分割の表示】特願2014-239266(P2014-239266)の分割
【原出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-109880(P2015-109880A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 賢一朗
(72)【発明者】
【氏名】宮本 章史
(72)【発明者】
【氏名】上加 郁朗
(72)【発明者】
【氏名】川口 弘道
(72)【発明者】
【氏名】三宅 達也
(72)【発明者】
【氏名】水島 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 龍介
(72)【発明者】
【氏名】上村 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕也
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−319708(JP,A)
【文献】 特開平05−211817(JP,A)
【文献】 特開2001−112336(JP,A)
【文献】 特開2003−052225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00−69/12
A01F 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1a)に備えたエンジン(E)の出力軸(11)から、脱穀装置(4)の前壁(4a)に支持された筒体(23)に軸受けして該脱穀装置(4)の前側に配置されたカウンタ軸(12)へ伝動し、該カウンタ軸(12)の外側端部から油圧式無段変速装置(15)の入力軸である第2入力軸(16)へ伝動し、該油圧式無段変速装置(15)の出力軸である第1出力軸(53)から、ギアケース(19)内の減速ギア機構(20)を介して、前記脱穀装置(4)の扱室(7a)の一側に配置されるフィードチェン(8)を駆動する構成とし、機体側面視において、前記油圧式無段変速装置(15)を、前記脱穀装置(4)の前壁(4a)と、刈取装置(3)を支持する左右の刈取支持台(5)との間に形成される第1空間内の前方寄りの部位に配置し、該油圧式無段変速装置(15)を、前記左右の刈取支持台(5)を連結する連結部材(25)と前記カウンタ軸(12)を軸受けする筒体(23)とを連結する支持フレーム(24)に、前記ギアケース(19)を介して支持したコンバイン。
【請求項2】
前記エンジン(E)から前記油圧式無段変速装置(15)とは別の無段変速装置へベルト伝動し、この無段変速装置の出力で刈取装置(3)と走行クローラ(2)を駆動して前記刈取装置(3)の駆動速度を機体(1)の走行速度に連動して変速させる構成とし、前記油圧式無段変速装置(15)のトラニオンアームを作動させる変速モータ(26)が、前記刈取装置(3)の駆動速度が増大するほど前記フィードチェン(8)が増速駆動されるように作動する構成とした請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ギアケース(19)の上部を前記油圧式無段変速装置(15)よりも高い位置へ延出させ、該ギアケース(19)の上部に備えた第2出力軸(21)を、前記油圧式無段変速装置(15)よりも上方の部位からフィードチェン(8)側に向けて突設してフィードチェン駆動スプロケット(22)に連結した請求項2に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に穀稈を供給する脱穀フィードチェン(フィードチェン)を有するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀装置の脱穀フィードチェンをHST(油圧式無段変速装置)によって駆動する技術は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−199812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の技術では、HSTから出力された駆動力によって刈取装置と脱穀フィードチェンを駆動するように構成されているため、刈取装置の駆動速度に対する脱穀フィードチェンの駆動速度を変更することができず、脱穀装置への穀稈供給速度を適正化することができないという問題がある。
【0005】
また、HSTからの駆動力を脱穀フィードチェンへ伝達するギアケースの出力軸が、ギアケースの内側面から機外内側へ向けて突設されているため、ギアケースから脱穀フィードチェンに至る伝動機構をコンパクトに配置できず、コンバインの機体が大型化するという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、上記の問題を解消することであり、次なる課題は、HSTの支持剛性を高くすることで脱穀フィードチェンの伝動効率を高く維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、機体フレーム(1a)に備えたエンジン(E)の出力軸(11)から、脱穀装置(4)の前壁(4a)に支持された筒体(23)に軸受けして該脱穀装置(4)の前側に配置されたカウンタ軸(12)へ伝動し、該カウンタ軸(12)の外側端部から油圧式無段変速装置(15)の入力軸である第2入力軸(16)へ伝動し、該油圧式無段変速装置(15)の出力軸である第1出力軸(53)から、ギアケース(19)内の減速ギア機構(20)を介して、前記脱穀装置(4)の扱室(7a)の一側に配置されるフィードチェン(8)を駆動する構成とし、機体側面視において、前記油圧式無段変速装置(15)を、前記脱穀装置(4)の前壁(4a)と、刈取装置(3)を支持する左右の刈取支持台(5)との間に形成される第1空間内の前方寄りの部位に配置し、該油圧式無段変速装置(15)を、前記左右の刈取支持台(5)を連結する連結部材(25)と前記カウンタ軸(12)を軸受けする筒体(23)とを連結する支持フレーム(24)に、前記ギアケース(19)を介して支持したコンバインである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記エンジン(E)から前記油圧式無段変速装置(15)とは別の無段変速装置へベルト伝動し、この無段変速装置の出力で刈取装置(3)と走行クローラ(2)を駆動して前記刈取装置(3)の駆動速度を機体(1)の走行速度に連動して変速させる構成とし、前記油圧式無段変速装置(15)のトラニオンアームを作動させる変速モータ(26)が、前記刈取装置(3)の駆動速度が増大するほど前記フィードチェン(8)が増速駆動されるように作動する構成とした請求項1に記載のコンバインである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記ギアケース(19)の上部を前記油圧式無段変速装置(15)よりも高い位置へ延出させ、該ギアケース(19)の上部に備えた第2出力軸(21)を、前記油圧式無段変速装置(15)よりも上方の部位からフィードチェン(8)側に向けて突設してフィードチェン駆動スプロケット(22)に連結した請求項2に記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、脱穀装置(4)の前側に配置されたカウンタ軸(12)の外側端部から油圧式無段変速装置(15)の入力軸である第2入力軸(16)へ伝動し、この油圧式無段変速装置(15)の出力軸である第1出力軸(53)から、ギアケース(19)内の減速ギア機構(20)を介してフィードチェン(8)を駆動することができる。
【0012】
また、機体側面視において、脱穀装置(4)の前壁(4a)と、刈取装置(3)を支持する左右の刈取支持台(5)との間に形成される第1空間内の前方寄りの部位に配置された油圧式無段変速装置(15)を、この左右の刈取支持台(5)を連結する連結部材(25)とカウンタ軸(12)を軸受けする筒体(23)とを連結する支持フレーム(24)に、ギアケース(19)を介して支持することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果に加えて、フィードチェン(8)駆動用の油圧式無段変速装置(15)のトラニオンアームを作動させる変速モータ(26)を、上記油圧式無段変速装置(15)とは別の無段変速装置で駆動される刈取装置(3)の駆動速度が増大するほどフィードチェン(8)が増速駆動されるように作動させることができる。
【0014】
請求項に記載の発明によれば、上記請求項に記載の発明の効果に加えて、ギアケース(19)の上部を油圧式無段変速装置(15)よりも高い位置へ延出させ、このギアケース(19)の上部に備えた第2出力軸(21)を、油圧式無段変速装置(15)よりも上方の部位からフィードチェン(8)側に向けて突設してフィードチェン駆動スプロケット(22)に連結することで、この出力軸(21)からフィードチェン(8)までの距離を短縮することができ、フィードチェン(8)の駆動部を更にコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】コンバインの側面図
図2】コンバインの平面図
図3】コンバイン要部の動力伝達機構を示す概略図
図4】コンバインの要部の側面図
図5】コンバインの要部の側面図
図6】コンバインの要部の正面図
図7】コンバインの要部の正面図
図8】コンバインの要部の拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0017】
コンバインは、植立穀稈を刈り取って搬送する走行クローラ(走行装置)2を具備した機体1前部の刈取装置3と、刈取装置3から搬送供給される穀稈を脱穀及び選別処理する機体後部の脱穀装置4と、脱穀装置4から移送される穀粒を一時的に貯留するグレンタンク36と、このグレンタンク36に貯留された穀粒を機外へ排出する排出装置37を備えている。
【0018】
刈取装置3は、機体1に対して上下に昇降可能に構成されている。
【0019】
すなわち、機体1の機体フレーム1aから上方に突設された左右の刈取支持台5の上部に、横方向の伝動軸を内装した横伝動筒34が回転自在支持されている。そして、この横伝動筒34における、伝動軸の入力プーリが存在する側の部位から前方に突設した刈取支持フレーム6が、横伝動筒34と共に回動することで、刈取支持フレーム6に支持された刈取装置3が上下に昇降する。
【0020】
刈取装置3の刈刃装置37で刈取られた穀稈は株元側搬送装置31と穂先側搬送装置32を有する搬送装置30により搬送され、前記脱穀装置4の脱穀フィードチェン(フィードチェン)8に引継がれる。
【0021】
脱穀フィードチェン8は、扱胴7を備える扱室7aの左側部に形成された前後方向の扱口7cに沿って設けられる。
【0022】
脱穀フィードチェン8の搬送始端部の内側(右側)には、穀稈の穂先側の部位を下側から支持する穀稈支持体33が配置されており、この穀稈支持体33の後端部は前記扱室7aの前面、すなわち脱穀装置4の前壁4aに形成された穀稈供給口7bに臨んでいる。
【0023】
また、脱穀フィードチェン8の搬送作用域の上側には、脱穀フィードチェン8側に弾性部材により付勢された挟扼杆51が配置されている。
【0024】
搬送装置30の搬送終端部(後端部)と側面視において前後にオーバーラップする脱穀フィードチェン8の搬送始端部(前端部)に引継がれた穀稈は、株元側の部位が、脱穀フィードチェン8と挟扼杆51により挟持され、穂先側の部位は穀稈支持体33により支持されて穀稈供給口7bから扱室7a内に進入し、扱胴7の脱粒作用を受けながら後方へ搬送される。
【0025】
次に、エンジンEより脱穀装置4へ動力を伝達する動力伝達機構について説明すると、図3に示す如く、エンジンEの出力軸11からプーリとベルトを介して脱穀カウンタ軸12に連動する。更に、該脱穀カウンタ軸12からプーリとベルトを介して扱胴7への扱胴入力軸(第1入力軸)14に連動すると共に、カウンタプーリ13とHST入力プーリ(第1入力プーリ)17及びHST伝動ベルト(第1伝動ベルト)18を介して油圧式無段変速装置(HST)15へのHST入力軸(第2入力軸)16に連動している。また、前記脱穀カウンタ軸12からはプーリとベルトを介して処理胴28、揺動選別棚や唐箕等の選別装置へ動力伝達すべく連動構成している。
【0026】
なお、ベルト55からは、エンジンEの駆動力が、前記HST15とは別の無段変速装置へ伝動され、その無段変速装置から出力された駆動力によって、刈取装置3及び走行クローラ2が駆動される。すなわち、刈取装置3の駆動速度は、走行クローラ2による機体1の走行速度に連動する。
【0027】
HST15に入力された動力は、このHST15内の油圧ポンプから油圧モータに伝達される過程で回転速度が無段階に変速してHST出力軸(第1出力軸)53から出力される。HST出力軸53からは減速ギアケース(ギアケース)19内の減速ギア機構20、減速出力軸(第2出力軸)21及びフィードチェン駆動スプロケット22を介して脱穀フィードチェン8を回転駆動するように連動構成している。なお、フィードチェン駆動スプロケット22は、減速出力軸21の先端部(外側端部)に備えるカップリングギア21aに嵌り込むことで減速出力軸21に連動される。
【0028】
HST15は、脱穀装置4よりも前方であって、刈取装置3を支持する刈取支持台5より後方に設置してある。すなわち、側面視において脱穀装置4の前壁4aと刈取支持台5の間に形成される空間(第1空間)内に配置してある。
【0029】
そして、この空間の前寄りの部位にHST15を配置し、空間の後寄りの部位には、前記前記脱穀カウンタ軸12を配置している。
【0030】
脱穀カウンタ軸12は、筒体(支持部材)23に軸受けされ、この筒体23はステー23aによって前記前壁4aに支持されている。
【0031】
HST15は、前記左右の刈取支持台5を連結する連結部材25と、脱穀カウンタ軸12の筒体23とを結ぶ支持フレーム(第1支持フレーム)24に減速ギアケース19を介して装着支持している。また、HST15は、脱穀フィードチェン8の右側(扱胴側)近くに配置すると共に、該フィードチェンの始端部(即ちフィードチェン始端スプロケット9及びテンションスプロケット10)よりも後方位置に設定している。
【0032】
前記HST15は、図例では支持フレーム24に取り付けた減速ギアケース19に対して着脱自在に装着しているが、支持フレーム24にHST15を直接取り付けるように構成してもよく、また、減速ギアケース19は機体フレーム1a側から突設する別の支持部材に取り付けるように構成してもよい。かかる構成によると、機体フレーム1a側の強度のある支持部材に減速ギアケース19を取り付けることで、HST15側と減速ギアケース19側とに荷重が分担され、強度の低い部材であっても、自重を支えるだけでなく、ベルトやチェンに引っ張られても確実に固定維持することができる。
【0033】
また、減速ギアケース19の上部側は、HST15よりも上方に高く延出して減速出力軸21を脱穀フィードチェン8側に向けて突設してあり、HST15よりも上方に高く位置させたフィードチェン駆動スプロケット22に連動連結している。すなわち、HST入力軸16とHST出力軸53及び減速出力軸21が鉛直方向の直線状に配置されているため、HST15を機体フレーム1aに近接して低い位置に配置しながら、フィードチェン駆動スプロケット22を高い位置することで、脱穀フィードチェン8の屈曲を少なくし、伝動効率を向上させて、駆動負荷を低減することができる。
【0034】
また、前記脱穀フィードチェン8は、その前端部近傍のオープン軸54を中心として回動可能に構成している。具体的には、脱穀フィードチェン8のチェンレール50、フィードチェン駆動スプロケット22等を支持フレーム(第2支持フレーム)52に支持し、この支持フレーム52の前端部が、左側の刈取支持台5のオープン軸54まわりに回動可能となっている。
【0035】
そして、支持フレーム52の後側の部位を機体左側方へ回動させることで、前記カップリングギア21aからフィードチェン駆動スプロケット22が離脱する。
【0036】
また、前記HST15は、脱穀フィードチェン8のみ単独で変速制御する構成であるが、これはHSTトラニオンアームを変速モータ26により作動させることで、脱穀フィードチェンを任意に増減速制御することができる。この変速モータ26は、刈取装置3の駆動速度が増大するほど脱穀フィードチェン8が増速して駆動されるように作動する。
【0037】
図例のように、HST15を脱穀カウンタ軸12よりも下方位置に設置することで、カウンタプーリ13からHST入力プーリ17へのベルト伝動が容易に行え、しかも、脱穀カウンタ軸12よりHST15の駆動力を取ることができるので、脱穀装置4が駆動されているときのみHST15の油圧ポンプが作動することになり、非作業時にはHST15の無負荷馬力ロスが解消されることになる。
【符号の説明】
【0038】
機体
1a 機体フレーム
走行クローラ
刈取装置
4 脱穀装置
4a 前壁
刈取支持台
7a 扱室
8 脱穀フィードチェン(フィードチェン)
11 出力軸
12 脱穀カウンタ軸(カウンタ軸)
15 HST(油圧式無段変速装置)
16 HST入力軸(第2入力軸)
19 減速ギアケース(ギアケース)
20 減速ギア機構
21 減速出力軸(第2出力軸)
22 フィードチェン駆動スプロケット
23 筒体
24 支持フレーム
25 連結部材
26 変速モータ
53 HST出力軸(第1出力軸)
E エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8