特許第6020703号(P6020703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020703
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】太陽光発電モジュール用接続構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20161020BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20161020BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20161020BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01L31/04 120
   C08L71/12
   C08L21/00
   C08K3/04
   C08K3/30
   C08K5/521
   C08K3/26
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-236337(P2015-236337)
(22)【出願日】2015年12月3日
(62)【分割の表示】特願2010-286344(P2010-286344)の分割
【原出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-94614(P2016-94614A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2015年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】新居 祐介
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5875225(JP,B2)
【文献】 特許第5447362(JP,B2)
【文献】 特開2008−274035(JP,A)
【文献】 特開2009−242803(JP,A)
【文献】 特開2010−123933(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/111628(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/176798(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
H01L 51/44
C08K 3/04
C08K 3/26
C08K 3/30
C08K 5/521
C08L 21/00
C08L 71/12
・DB
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対して、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル系難燃剤であって、下記一般式(1)において、n=1のものが80重量%以上のリン酸エステル系難燃剤2〜19.7重量部と、離型剤0.1〜3重量部とを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を成形してなることを特徴とする太陽光発電モジュール用接続構造体。
【化1】
(式中、R、Rは水素原子を表し、nは1〜5の数を表す。)
【請求項2】
請求項1において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対してエラストマーを1〜20重量部含有することを特徴とする太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対してカーボンブラックを0.01〜5重量部含有することを特徴とする太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対して難燃助剤を0.01〜3重量部含有することを特徴とする太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対してアルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩を0.1〜20重量部含有することを特徴とする太陽光発電モジュール用接続構造体。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項において、ジャンクションボックスであることを特徴とする太陽光発電モジュール用接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を射出成形してなる太陽光発電モジュール用接続構造体に関する。詳しくは、難燃性及び耐熱性に優れると共に、成形時のガス発生の問題がなく、金型汚染や成形品の応力腐食割れを防止することができるポリフェニレンエーテル系樹脂製太陽光発電モジュール用接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や省エネルギーの要請から、建物の屋根等の外被部分に、太陽の光エネルギーを電気に変換する太陽光発電モジュールを設置し、自然エネルギーである太陽光のエネルギーを電力に変換して、当該建物内の電力源として利用するとともに、余剰の電力を売電する技術が実用化されている。
【0003】
太陽光発電モジュールには、その電気を有用な形で取り出すため、モジュール間のケーブルを接続するためのジャンクションボックスやコネクタといった接続構造体が、モジュール毎に設けられている。この太陽光発電モジュール用接続構造体には、構造体としての機械的強度はもちろんのこと、更に、次のような特性が要求される。
【0004】
(1) 耐熱性に優れる。
ジャンクションボックス内には、バイパスダイオード等が配置され、太陽光発電モジュールの表面に部分的な影がかかったり、電池セルが故障してモジュールの出力が低下したりする場合でも、その影響を最小限に抑える工夫がなされているが、その際、バイパスダイオードが発熱するため、ジャンクションボックス全体が耐熱性を有することが求められる。
【0005】
(2) 難燃性に優れる。
ジャンクションボックス等の太陽光発電モジュール部品は、建物等に設置されるため、建物火災時等の更なる延焼を防止するために高い難燃性が要求される。また、ジャンクションボックス内の配線のショート等による発火による火災防止のためにも、難燃性に優れることが求められる。
【0006】
(3) 耐衝撃性に優れる。
ジャンクションボックスは、太陽光発電モジュールの付属部品として、屋根上等の屋外に設置されることもあるため、飛来物に対する耐衝撃性を有することが求められ、特に低温時においても耐衝撃性を有することが求められる。太陽光発電モジュール用コネクタについてもジャンクションボックスと同様に耐衝撃性が求められている。
【0007】
(4) 耐候性に優れる。
ジャンクションボックス等の太陽光発電モジュール部品は、屋外に設けられる場合が多く、紫外線や風雨、外気温の変化に対する耐候性、耐久性が求められる。
【0008】
(5) 耐トラッキング性に優れる。
ジャンクションボックス内の配線のショート等を防止するために耐トラッキング性(絶縁性)に優れることが求められる。
【0009】
また、太陽光発電モジュール用接続構造体は建物に設置されることから、これらの構造体の存在を目立ち難くし、また、耐候性向上のために、一般的には黒色であること、更には工業製品であることから、成形時の金型汚染や成形歩留りも重要である。
【0010】
ところで、ポリフェニレンエーテル樹脂は、耐熱性、電気特性、耐酸、耐アルカリ性等に優れ、しかも低比重、低吸水性である等の優れた特性を有する樹脂であることから、各種の構造体の成形材料として広く用いられており、ポリフェニレンエーテル系樹脂製太陽光発電モジュール用接続構造体も提案されている(特許文献1)。この特許文献1には、難燃性の向上を目的としてリン酸エステル系難燃剤を配合することが記載され、具体的に、下記式(III)又は(IV)で表される縮合リン酸エステルを用いるとされている。
【0011】
【化1】
【0012】
また、一般に、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に用いる難燃剤として、特許文献2には、汎用のリン酸エステル系難燃剤、具体的にはフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・レゾルシン・ポリホスフェート、キシリル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル−p−tert−ブチルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、クレジル・キシレル・レゾルシン・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・レゾルシン・ポリホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等の縮合リン酸エステル類;リン酸トリフェニル(トリフェニルホスフェート)、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル2エチルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリブチル等が記載されている。また、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などが用いられている例もある。
【0013】
なお、本発明で難燃剤として用いる特定のリン酸エステル系難燃剤は、特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−123933号公報
【特許文献2】特開2006−143958号公報
【特許文献3】特開2008−202009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、本発明者による検討により、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に特許文献1,2に記載されるような通常のポリフェニレンエーテル系樹脂用リン酸エステル系難燃剤を配合すると、耐熱性が損なわれ、ジャンクションボックス等の太陽光発電モジュール用接続構造体に要求される高い耐熱性を満足し得なくなる問題があった。
【0016】
また、これらの難燃剤を配合したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に特有の問題として、成形時のガス発生による金型汚染及び成形品の応力腐食割れの問題もある。
即ち、難燃剤を配合した樹脂組成物では、一般に、成形時の加熱で高温にさらされることにより、組成物中の難燃剤が熱分解して分解ガスが発生し、
・発生したガスにより金型が汚染され、この汚染が得られる成形品の品質不良の原因となる。
・発生ガス量が特に多い場合には、金型汚染で成形を継続し得なくなり、連続成形が不可能となる。
・発生ガスが成形品の残留応力の大きい部分、例えば、エッジ部等に付着することで、成形品の割れ等の欠陥の原因となる。
といった問題が生じていた。
【0017】
なお、本発明で用いる特定のリン酸エステル系難燃剤は特許文献3に記載されて公知の難燃剤であり、特許文献3には、このリン酸エステル系難燃剤をポリフェニレンエーテル樹脂に添加し得る旨の記載もある。しかしながら、特許文献3には、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物、特に、太陽光発電モジュール用接続構造体用ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に特有の上記課題、即ち、難燃剤配合による耐熱性の低下の問題や、成形時のガス発生の問題についての認識は全くなく、また、実際にポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に配合した例もなく、そもそも、特許文献3には、このリン酸エステル系難燃剤が樹脂成形時の加熱における耐熱分解性に優れるとの認識もない。
即ち、特許文献1等で用いられているリン酸エステル系難燃剤によるガス発生の問題は、ポリフェニレンエーテル系樹脂系特有の問題であり、他の樹脂成分系ではこのようなガス発生の問題はないことが本出願人により確認されている(特願2009−146480)。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂にリン酸エステル系難燃剤を配合した場合の耐熱性の低下の問題は、本発明者により初めて見出されたものである。
【0018】
本発明は上記従来の問題点を解決し、難燃剤配合による耐熱性の低下や、難燃剤に起因する成形時のガス発生の問題がなく、難燃性及び耐熱性に優れ、かつ製品歩留りに優れた太陽光発電モジュール用接続構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の難燃剤を用いることにより、耐熱性の低下、成形時のガス発生の問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
即ち、本発明(請求項1)の太陽光発電モジュール用接続構造体は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対して、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル系難燃剤であって、下記一般式(1)において、n=1のものが80重量%以上のリン酸エステル系難燃剤2〜19.7重量部と、離型剤0.1〜3重量部とを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、R、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、nは1〜5の数を表す。)
【0026】
請求項の太陽光発電モジュール用接続構造体は、請求項1において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対してエラストマーを1〜20重量部含有することを特徴とする。
【0027】
請求項の太陽光発電モジュール用接続構造体は、請求項1又は2において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対してカーボンブラックを0.01〜5重量部含有することを特徴とする。
【0028】
請求項の太陽光発電モジュール用接続構造体は、請求項1ないしのいずれか1項において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対して難燃助剤を0.01〜3重量部含有することを特徴とする。
【0029】
請求項の太陽光発電モジュール用接続構造体は、請求項1ないしのいずれか1項において、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、前記ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対してアルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩を0.1〜20重量部含有することを特徴とする。
【0030】
請求項の太陽光発電モジュール用接続構造体は、請求項1ないしのいずれか1項において、ジャンクションボックスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明で難燃剤として用いる前記一般式(1)で表されるリン酸エステル系難燃剤は、これを含有するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の耐熱性を低下させることがなく、従って、耐熱性に優れた太陽光発電モジュール用接続構造体を成形することができる。しかも、このリン酸エステル系難燃剤は、耐熱性(耐熱分解性)に優れ、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の成形時の加熱温度で殆ど分解することはない。このため、難燃剤として、この特定のリン酸エステル系難燃剤を用いた難燃性ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物によれば、成形時の加熱による分解ガスの発生、それによる金型汚染や、応力腐食による成形品の割れの問題を解決して、高品質の太陽光発電モジュール用接続構造体を歩留り良く製造することができる。なお、このリン酸エステル系難燃剤は、ポリフェニレンエーテル系樹脂の成形加工性の改善にも有効に機能し、このため、本発明においては、本来、成形加工性に劣るため各種の樹脂と混合して用いられるポリフェニレンエーテル樹脂のみを樹脂成分として用いることも可能である。
【0034】
また、本発明に係るポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル100重量部に対してさらにエラストマー1〜20重量部、カーボンブラック0.01〜5重量部、難燃助剤0.01〜3重量部、アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩0.1〜20重量部を含有することが好ましい(請求項)。
【0035】
本発明の太陽光発電モジュール用接続構造体は、特に、太陽光発電モジュール用ジャンクションボックスとして有用である(請求項)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0037】
〔ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物〕
まず、本発明の太陽光発電モジュール用接続構造体の成形材料である、ポリフェニレンエーテル系樹脂と特定のリン酸エステル系難燃剤を含有するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称す場合がある。)について説明する。
【0038】
[ポリフェニレンエーテル系樹脂]
本発明の樹脂組成物の樹脂成分としてのポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とし、必要に応じてさらにスチレン系樹脂等の他の樹脂成分を含むものである。なお、ここで、主成分とは、その成分中最も多く含有されている成分をさす。
【0039】
<ポリフェニレンエーテル樹脂>
本発明の樹脂組成物に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂は、下記一般式(2)で表される構造単位を主鎖に有する重合体であって、単独重合体又は共重合体の何れであっても良い。
【0040】
【化3】
【0041】
(式中、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、又はハロ炭化水素オキシ基を表し、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基、又はハロ炭化水素オキシ基を表す。ただし、2つのRがともに水素原子になることはない。)
【0042】
及びRとしては、水素原子、第1級若しくは第2級アルキル基、アリール基が好ましい。第1級アルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−、3−若しくは4−メチルペンチル基又はヘプチル基が挙げられる。第2級アルキル基の好適な例としては、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基又は1−エチルプロピル基が挙げられる。特に、Rは第1級若しくは第2級の炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であることが好ましい。Rは水素原子であることが好ましい。
【0043】
好適なポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−メチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)等の2,6−ジアルキルフェニレンエーテルの重合体が挙げられる。共重合体としては、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリエチルフェノール共重合体、2,6−ジエチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジプロピルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体等の2,6−ジアルキルフェノール/2,3,6−トリアルキルフェノール共重合体、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
【0044】
本発明におけるポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノールランダム共重合体が好ましい。また、特開2005−344065号公報に記載されているような末端基数と銅含有率を規定したポリフェニレンエーテル樹脂も好適に使用できる。
【0045】
ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量は、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.2〜0.8dl/gのものが好ましく、0.3〜0.6dl/gのものがより好ましい。固有粘度を0.2dl/g以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度が向上する傾向にあり、0.8dl/g以下とすることにより、流動性が向上し、成形加工が容易になる傾向にある。また、固有粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテル樹脂を併用して、この固有粘度の範囲としてもよい。
【0046】
本発明に使用されるポリフェニレンエーテル樹脂の製造法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って、例えば、2,6−ジメチルフェノール等のモノマーをアミン銅触媒の存在下、酸化重合する方法を採用することができ、その際、反応条件を選択することにより、固有粘度を所望の範囲に制御することができる。固有粘度の制御は、重合温度、重合時間、触媒量等の条件を選択することにより達成できる。
【0047】
本発明において、ポリフェニレンエーテル樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0048】
<スチレン系樹脂>
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の重合体、スチレン系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体及びスチレン系グラフト共重合体等が挙げられる。
【0049】
本発明で使用されるスチレン系樹脂としては、より具体的には、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン・IPN型ゴム共重合体等の樹脂、又は、これらの混合物が挙げられる。さらにシンジオタクティクポリスチレン等のように立体規則性を有するものであってもよい。これらの中でも、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が好ましい。
【0050】
スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、50,000以上であり、好ましくは100,000以上であり、より好ましくは150,000以上であり、また、上限は、通常、500,000以下であり、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは300,000以下である。
【0051】
このようなスチレン系樹脂の製造方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいは塊状重合法等の公知の方法が挙げられる。
【0052】
本発明において、スチレン系樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0053】
<含有割合>
本発明の樹脂組成物の樹脂成分であるポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂75〜100重量%と、スチレン系樹脂25〜0重量%からなることが好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂85〜100重量%と、スチレン系樹脂15〜0重量%からなることがより好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂が75重量%以上であることにより、難燃性、荷重撓み温度及び機械的強度が良好なものとなる。特に、薄肉成形品で高い難燃性が求められる場合は、ポリフェニレンエーテル樹脂が85重量%以上であることが好ましい。
【0054】
<他の樹脂成分>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン系樹脂以外のその他の樹脂を、樹脂成分の一部として用いてもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらその他の樹脂の含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂中の50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
[リン酸エステル系難燃剤]
本発明で用いるリン酸エステル系難燃剤は、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物である。
【0056】
【化4】
【0057】
(式中、R、Rは各々独立に水素原子又はメチル基、好ましくは水素原子を表し、nは1〜5の数を表す。)
【0058】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル系難燃剤としては、好ましくは以下の一般式(1A),(1B)で表されるリン酸エステル化合物が挙げられる。
【0059】
【化5】
【0060】
【化6】
【0061】
前記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の合成方法は特に制限されず、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとフェノールとオキシ塩化リンを塩化マグネシウムなどの触媒の存在下に反応させ脱塩酸するか、トリフェニルホスフェイトと4,4’−ジヒドロキシビフェニルをエステル交換反応することで合成可能である。
【0062】
本発明で用いるリン酸エステル系難燃剤においては、前記一般式(1)におけるn=1であるリン酸エステル化合物が90重量%未満であることが好ましい。但し、この割合が、80重量%未満では製造工程において実用的ではないため、80重量%以上が好ましい。
【0063】
本発明の樹脂組成物中の上記リン酸エステル系難燃剤の含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して2〜35重量部、好ましくは3〜30重量部、特に好ましくは5〜25重量部である。リン酸エステル系難燃剤が上記下限より少ないと難燃効果が小さく、上記上限より多いと耐衝撃性が低下し、発生ガスによる成形品割れの問題が発生するので好ましくない。
【0064】
[エラストマー]
本発明の樹脂組成物は、主に耐衝撃性を向上させる目的で、エラストマーの1種又は2種以上を含有してもよい。
【0065】
エラストマーとしては、オレフィン系重合体、オレフィン−ビニル系共重合体、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体及びその水素添加物、並びにシリコーン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマーを用いることができる。
これらのエラストマーは、従来から知られている製造方法によって製造することができる。該エラストマーは、ガラス転移温度が0℃以下であるものが好ましく、−5℃以下がより好ましい。エラストマーのガラス転移温度を0℃以下とすることにより、低温時の耐衝撃性を良好とすることができる。
【0066】
<オレフィン系重合体>
エラストマーとして用いられるオレフィン系重合体とは、好ましくは炭素数2〜20のオレフィン系単量体を重合して得られる単独重合体又は共重合体である。
オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。これらの中でもより好ましくは2〜10の直鎖状のオレフィン系単量体であり、さらに好ましいのはエチレン、プロピレン、1−ブテンである。
【0067】
オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−ブテン共重合体(EBR)などが挙げられる。
【0068】
これらのオレフィン系重合体は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0069】
<オレフィン−ビニル系共重合体>
エラストマーとして用いられるオレフィン−ビニル系共重合体とは、オレフィン単量体とビニル系単量体を重合してなる共重合体である。
オレフィン系単量体としては、例えば、上記<オレフィン系重合体>で使用されるものと同様の単量体を使用することができる。
【0070】
ビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和グリシジル基含有化合物、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸及びその金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜20のアルキルエステル等の不飽和カルボン酸エステル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリアルキル酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のビニル芳香族化合物等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、不飽和グリシジル基含有化合物、不飽和カルボン酸である。
上記のオレフィン系単量体及びビニル系単量体は、2種以上を併用してもよい。
【0071】
オレフィン−ビニル系共重合体の具体例としては、例えば、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−プロピレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−g−ポリメタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−g−ポリスチレン共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−g−ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−g−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−g−ポリメタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−g−ポリスチレン共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−g−ポリアクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−g−ポリメタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる(なお、「−g−」はグラフト共重合であることを示し、以下同様である)。中でも、靭性の点から、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましい。
【0072】
これらのオレフィン−ビニル系共重合体は、2種以上併用することもできる。
【0073】
<ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体及びその水素添加物(以下、「ブロック共重合体及びその水素添加物」と略記することがある。)>
エラストマーとして用いられるブロック共重合体とは、前記スチレン系樹脂以外のエラストマーであって、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体である。また、ブロック共重合体の水素添加物とは、ブロック共重合体に水素添加することによりブロックbの脂肪族不飽和基が減少したブロック共重合体を意味する。ブロックa及びブロックbの配列構造は、線状構造、分岐構造等いずれの構造であってもよい。また、これらの構造のうちで、一部にビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これら構造の中では、線状構造のものが好ましく、a−b−a型のトリブロック構造のものがより好ましい。上記a−b−a型のブロック共重合体中には、a−b型のジブロック構造のものを含んでいてもよい。これらのブロック共重合体及びその水素添加物は2種以上併用してもよい。
【0074】
ビニル芳香族化合物重合体ブロックaを構成するビニル芳香族化合物としては、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられ、より好ましくは、スチレンである。共役ジエン系化合物ブロックbを構成する共役ジエン系化合物としては、好ましくは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0075】
ブロック共重合体及びその水素添加物におけるビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜70重量%の範囲が好ましく、10〜40重量%の範囲がより好ましく、15〜25重量%の範囲がさらに好ましい。10重量%未満であると、熱安定性が低下するため、樹脂組成物製造及び成形時に酸化劣化を受けやすくなる。70重量%を超えると、耐衝撃性が低下する傾向にある。
【0076】
また、ブロック共重合体の水素添加物における脂肪族鎖部分のうち、共役ジエン系化合物に由来し、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合は、水素添加されていてもよいが、水素添加された芳香族性不飽和結合の割合は、25重量%以下であることが好ましい。
【0077】
ブロック共重合体及びその水素添加物としては、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaを構成する単量体がスチレンであり、共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体である共役ジエン系化合物が、1,3−ブタジエンであるスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)や、共役ジエン系化合物が2−メチル−1,3−ブタジエンであるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等の種々のa−b−a型トリブロック構造のものが市販されており、容易に入手可能である。
【0078】
これらブロック共重合体及びその水素添加物の数平均分子量は、好ましくは50,000〜300,000の範囲である。数平均分子量を50,000以上とすることにより、最終的に得られる樹脂組成物の耐衝撃性と寸法安定性が優れ、さらに、該樹脂組成物から得られる成形品の外観の良好とすることができる。また、数平均分子量を300,000以下とすることにより、最終的に得られる樹脂組成物の流動性が維持され、成形加工が容易になるので好ましい。数平均分子量のより好ましい範囲は55,000〜250,000であり、中でも特に好ましいのは55,000〜220,000である。
【0079】
<シリコーン系エラストマー>
本発明で用いるシリコーン系エラストマーとしては、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとを含むシリコーン−アクリル複合ゴムに、1種以上のビニル系化合物単量体から構成されるビニル系重合体をグラフトさせたグラフト共重合体(以下、単に「グラフト共重合体」と略記する場合がある。)が好ましい。ここで、「アルキル(メタ)アクリレート」は「アルキルアクリレート」と「アルキルメタクリレート」の一方又は双方をさす。
【0080】
その基本的な重合体構造としては、ガラス転移温度の低い架橋成分であるポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが相互に絡み合った構造から成る内核層と、1種以上のビニル系化合物単量体から構成されるビニル系重合体からなる外殻層とを有する多層構造重合体である。外殻層を構成するビニル系重合体は、樹脂組成物のマトリックス成分との接着性を改善する効果を有する。このようなグラフト共重合体は、例えば、特開2004−359889号公報に開示された方法で製造することができる。
【0081】
シリコーン−アクリル複合ゴムの製造に用いるポリオルガノシロキサンは、特に限定されないが、例えば、ジメチルシロキサン単位を構成単位として含有する重合体が好ましい。ポリオルガノシロキサンを構成するジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いられる。これらの中でも、粒子径分布の制御しやすさから、主成分がオクタメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0082】
ポリオルガノシロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有するシロキサンを構成成分として含有するものが好ましい。ここで、ビニル重合性官能基を含有するシロキサンとは、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものである。ビニル重合性官能基を含有するシロキサンの中でも、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。これらビニル重合性官能基を含有するシロキサンは単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。
【0083】
また、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン系架橋剤によって架橋されていてもよい。シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0084】
ポリオルガノシロキサンの製造方法としては特に制限はなく、例えば、以下の製造方法を採用できる。まず、ジメチルシロキサンと、必要に応じてビニル重合性官能基含有シロキサンとを含む混合物または、さらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させてラテックスを調製し、そのラテックスを微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和してポリオルガノシロキサンラテックスを得る。ラテックスの調製には、ホモジナイザーを使用する方法が、粒子径分布が狭くなる傾向にあり好ましい。
【0085】
上記製造方法で使用される乳化剤としてはジメチルシロキサンを乳化できれば特に制限されないが、アニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0086】
ポリオルガノシロキサンの重合に用いられる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ミセル形成能のない硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸を使用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径分布を狭くすることができ、さらに、ポリオルガノシロキサンラテックス中の乳化剤成分に起因する成形品の外観不良を低減させることができるという点で好ましい。
【0087】
ポリオルガノシロキサンの数平均粒子径は、10nm以上であることが好ましく、50nm〜5μmであることがより好ましく、100nm〜3μmであることがさらに好ましい。ポリオルガノシロキサンの数平均粒子径を10nm以上とすることにより、シリコーン−アクリル複合ゴム中のポリアルキル(メタ)アクリレート量が多くなりすぎず、耐衝撃性の低下を抑制することができる。
【0088】
シリコーン−アクリル複合ゴムの製造に用いるポリアルキル(メタ)アクリレートとは、アルキル(メタ)アクリレート単位と、好ましくは多官能性単量体単位とを構成成分として含有する重合体である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、及び、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上併用して用いることができる。特に、シリコーン系エラストマーを含む樹脂組成物の耐衝撃性及び成形品外観を考慮すると、n−ブチルアクリレートが好ましい。
【0089】
また、シリコーン−アクリル複合ゴムの製造に用いる多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上併用して用いることができる。
【0090】
多官能性単量体を使用する場合の含有量には特に制限はないが、ポリアルキル(メタ)アクリレート100重量%中の0.1〜2重量%であることが好ましく、0.3〜1重量%であることがより好ましい。多官能性単量体の含有量を0.1重量%以上とすることにより、複合ゴムのモルフォロジーの変化による衝撃強度の低下を抑制できる傾向にあり、また、多官能性単量体の含有量を2重量%以下とすることにより、衝撃強度がより向上する傾向にある。
【0091】
シリコーン−アクリル複合ゴムは、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下に、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート、更に必要に応じて用いられる多官能性単量体を乳化重合することによって調製することができる。
【0092】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0093】
シリコーン系エラストマーは、以上説明したシリコーン−アクリル複合ゴムに、1種以上のビニル系化合物単量体から構成されるビニル系重合体をグラフト重合させることにより得られる。
【0094】
上記ビニル系化合物単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等のマレイミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有化合物、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の窒素含有化合物、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、窒素含有化合物の1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0095】
このグラフト共重合体の具体的な製造方法としては、例えば、シリコーン−アクリル複合ゴムのラテックスに、ビニル系化合物単量体を加え、ラジカル重合法により一段であるいは多段で乳化グラフト重合する方法が挙げられる。グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。また、グラフト重合において用いる単量体中には、グラフト共重合体の分子量やグラフト率を調整するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
【0096】
グラフト重合には、重合ラテックスを安定化させ、さらにグラフト共重合体の平均粒子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。この乳化剤は特に限定されないが、カチオン系乳化剤、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤が好ましく、スルホン酸塩乳化剤あるいは硫酸塩乳化剤とカルボン酸塩乳化剤を併用することが特に好ましい。
【0097】
グラフト共重合体の数平均粒子径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上である。グラフト共重合体の数平均粒子径の上限は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に定めるものではないが通常、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。グラフト共重合体の数平均粒子径が50nm未満の場合、得られる樹脂組成物からなる成形品の低温時の耐衝撃性とのバランスが低下してしまう。また、数平均粒子径を10μm以下とすることにより、得られる樹脂組成物からなる成形品の耐衝撃性および表面外観がより向上する傾向にある。なお、本発明におけるグラフト共重合体の数平均粒子径とは、走査透過電子顕微鏡(STEM)観察により、マトリックスのポリフェニレンエーテル系樹脂中に分散した、グラフト共重合体の1次粒子径を測定して求めた値である。
【0098】
グラフト共重合体中の複合ゴム含有量は、グラフト共重合体100重量%中、70〜90重量%であることが好ましい。複合ゴムの含有量を70重量%以上とすることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にあり、90重量%以下とすることにより、耐衝撃性を良好に保ちつつ、分散性がより向上する傾向にある。
【0099】
また、グラフト共重合体中のSi含有量は、ICP/AES法で検出される値として、0.1〜25重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、1〜15重量%がさらに好ましい。Si含有量を0.1重量%以上とすることにより、耐衝撃性、難燃性が向上する傾向にあり、Si含有量を25重量%以下とすることにより、成形品外観を良好に保つことができる。
【0100】
シリコーン系エラストマーの上記グラフト共重合体は、ラテックスとして得られる場合は、アセトン溶媒に対する可溶分を取り除いた重合体成分を指す。実際の乳化重合法では上記溶媒の可溶分すなわちグラフトしていないビニル系化合物単量体又はその重合体が共に得られることが多い。本発明において、シリコーン系エラストマーとしてのグラフト共重合体は、このビニル系化合物単量体又はその重合体との混合物として用いても良いし、単独で用いても良い。
【0101】
本発明おいて、シリコーン系エラストマーとしては、ポリオルガノシロキサン−ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムに、メタクリル酸アルキル重合体をグラフト重合させたグラフト重合体、ポリオルガノシロキサン−ポリアルキル(メタ)アクリレート複合ゴムに、アクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフト重合させたグラフト共重合体が好ましく、これらは、三菱レイヨン社から「メタブレンSシリーズ」として上市されている。
【0102】
また、シリコーン系エラストマーとしての上記グラフト共重合体は、1種を単独で用いてもよく、シリコーン−アクリル複合ゴムの種類や、シリコーン−アクリル複合ゴムにグラフト重合する単量体組成などの異なるものを2種以上併用してもよい。
【0103】
また、本発明においては、上記エラストマーを、変性剤で変性して用いてもよく、さらにラジカル発生剤を変性剤と同時に配合して変性してもよい。
【0104】
変性剤として用いられる不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はその誘導体としては、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、クロロ(無水)マレイン酸、(無水)シトラコン酸、ブテニル(無水)コハク酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、ならびに、これらの酸ハライド、アミド、イミド、炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステルが挙げられ、具体的には、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等があげられる。ここで「(無水)」とは、無水不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸であることを示す。これらの中で好ましくは不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物であり、(無水)マレイン酸又は(無水)イタコン酸がより好ましい。これらの不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はその誘導体は、2種以上併用してもよい。
【0105】
ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシオクタン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
【0106】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられる。
【0107】
これらのラジカル発生剤の中でも特に好ましいのは、寸法安定性や耐衝撃性の点で、10時間での半減期温度が120℃以上のラジカル発生剤である。
【0108】
また、エラストマーとしては、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)も好ましく用いることができる。MBSとは、ジエン系ゴム、例えば、ポリブタジエンやブタジエン−スチレン共重合体などのブタジエン系重合体に、メタクリル酸エステル成分および芳香族ビニル成分、さらには所望によりシアン化ビニル成分を、例えば、塊状重合、懸濁重合、塊状・懸濁重合、溶液重合または乳化重合などの方法でグラフト重合させたものである。特に、乳化重合法でグラフト重合させたものが好ましい。ここにブタジエン系重合体の使用量は通常10〜85重量%、好ましくは30〜70重量%であり、ブタジエン系重合体中のブタジエン成分の割合は50重量%以上が好ましい。ブタジエン系重合体の使用量が10重量%未満の場合は、得られる樹脂組成物からの成形品の耐衝撃性が低く、85重量%を超えると樹脂組成物の成形性が低下し好ましくない。
【0109】
MBSを構成するメタクリル酸エステルとしては、炭素数1〜4のアルキルエステルが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましい。また芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、ハロゲン化スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどが例示されるが、特にスチレンが好ましい。またシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、α−ハロゲン化アクリロニトリルなどが例示され、特にアクリロニトリルが好適である。
【0110】
また、MBSは、MBS100重量部に対し、フェノール系熱安定剤とチオエーテル系熱安定剤とを、フェノール系熱安定剤及びチオエーテル系熱安定剤の合計量が0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜3重量部、かつ重量比が1/0〜1/1となるよう含有してなるものも好ましい。MBS中でフェノール系熱安定剤の配合率よりチオエーテル系熱安定剤の配合率が高くなると、耐熱着色性、耐熱劣化性が低下する場合がある。
【0111】
MBSに配合されるフェノール系熱安定剤としては、フェノール系化合物のOH基の性質を隠蔽した分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物が好ましい。特に、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジターシャリーブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3’ターシャリーブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0112】
また、MBSに配合されるチオエーテル系熱安定剤としては、例えば、ジアルキル−3,3’−チオジプロピオネート、テトラキス[メチレン−3(アルキルチオ)プロピオネート]メタン、ビス[2−メチル−4(3−アルキル−チオプロピオニルオキシ)−5−ターシャリーブチルフェニル]スルフィドが好ましい。
【0113】
フェノール系熱安定剤とチオエーテル系熱安定剤とを特定量、特定比率で含有してなるMBSが乳化重合法で製造される場合には、これらの熱安定剤を同時に或いは別個に乳化分散させ、重合終了時に投入しても良いし、凝固、脱水或いは乾燥工程中に配合してもよい。
【0114】
本発明の樹脂組成物が、上述のようなエラストマーを含有する場合、その含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して1〜20重量部が好ましく、1〜15重量部がより好ましく、1.5〜12重量部がさらに好ましい。エラストマーの含有量を上記下限以上とすることにより耐衝撃性が優れる傾向にあり、上記上限以下とすることにより難燃性、荷重たわみ温度や硬度の低下を抑制しやすい傾向にある。
【0115】
[カーボンブラック]
本発明の樹脂組成物は、黒色の着色を付与すると共に、耐候性を高めるための成分としてカーボンブラックを含むことが好ましい。
【0116】
カーボンブラックとしては、平均一次粒子径が5〜30nm、さらには10〜25nm、特に10〜20nmで、DBP吸油量が20〜90cm/100g、さらには20〜60cm/100g、特に40〜60cm/100gのものが好ましい。
カーボンブラックの粒子径が上記上限以下であることにより、後述のL値が小さく黒色性が良好となり、成形性、機械的特性が良好なものとなり、耐トラッキング性の低下を抑制しやすい傾向にある。一方、粒子径が上記下限以上であることにより、耐トラッキング性が改善され、また溶融混練時の吐出性が良好となる傾向にある。
また、カーボンブラックのDBP吸油量が上記上限以下であることにより、耐トラッキング性が良好となり、上記下限以上であることにより、L値が小さく黒色性が良好となる傾向にある。
このように、適切な平均一次粒子径、DBP吸油量を有するカーボンブラックを選択することにより、得られるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物のL値と耐トラッキング性をバランスよく良好なものとすることができる。
【0117】
なお、カーボンブラックの平均一次粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法−電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して得られた値であり、DBP吸油量はJIS K6217規格に準拠して測定された値である。
【0118】
カーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、平均一次粒子径やDBP吸油量の異なるものを2種以上併用してもよい。
【0119】
本発明の樹脂組成物がカーボンブラックを含有する場合、その含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、特に好ましくは0.2〜1重量部である。カーボンブラックの含有量が上記下限以上であることにより、カーボンブラック配合による黒色性、耐候性を高めることができ、上記上限以下であることにより、耐トラッキング性の低下を抑制すると共に、成形性、機械的特性の低下を防止することができる。
【0120】
[難燃助剤]
本発明の樹脂組成物には、難燃性をさらに向上させるために、難燃助剤の1種又は2種以上を配合しても良い。難燃助剤としては、フッ素樹脂、特にポリフルオロエチレンが好ましく、ポリフルオロエチレンの中でもフィブリル形成能を有するもので、樹脂成分中に容易に分散し、且つ樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものが好ましい。
【0121】
また、ポリフルオロエチレンを含有した樹脂組成物を溶融成形した成形品の外観を向上させるためには、有機系重合体で被覆された被覆ポリフルオロエチレンを用いることが好ましい。この被覆ポリフルオロエチレンとしては、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%、中でも43〜80重量%、更には45〜70重量%、特には47〜60重量%であるものが好ましい。
【0122】
このような被覆ポリフルオロエチレンを配合することにより、良好な難燃性を維持しつつ、成形品表面の白色異物の発生を抑制することができる。被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が上記下限以上であると、難燃性の向上効果に優れ、上記上限以下であると、白点異物を低減しやすい傾向にある。
【0123】
また、有機系重合体により被覆されるポリフルオロエチレンとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、中でも、重合体中に容易に分散し、重合体同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すため、フィブリル形成能を有するものが好ましい。
【0124】
このような被覆ポリフルオロエチレンは、公知の種々の方法により製造することができ、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固又はスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
【0125】
ポリフルオロエチレンを被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではないが、樹脂に配合する際の分散性の観点から、ポリフェニレンエーテル系樹脂との親和性が高いものが好ましい。
【0126】
この有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。これらの単量体は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0127】
これらの単量体の中でも、ポリフェニレンエーテル系樹脂との親和性の観点から、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体が好ましく、特に(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく、これらの単量体を10重量%以上含有する単量体が好ましい。
【0128】
本発明で好ましく使用される被覆ポリフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン(株)製のメタブレン「A−3800」、「KA−5503」や、PIC社製の「Poly TS AD001」等がある。
【0129】
本発明の樹脂組成物が難燃助剤を含む場合、その含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部、さらには0.05〜1重量部、特に0.1〜0.7重量部であることが好ましい。難燃助剤の含有量が上記下限以上であると難燃性の改良効果を十分に得ることができ、上記上限以下であると、成形品外観の低下を防止しやすい傾向にある。
【0130】
また、本発明の樹脂組成物中の前記一般式(1)で表されるリン酸エステル系難燃剤と難燃助剤の配合比率(リン酸エステル系難燃剤/難燃助剤の重量比)は、バランスの良い性能を有する樹脂組成物を得るという点から、通常0.1〜1000であり、更には1〜700、特には5〜500である。
【0131】
[その他の添加剤]
本発明の樹脂組成物には、上記の成分以外に他の各種樹脂添加剤を含有させることができる。
【0132】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型性を向上させる目的で、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、ポリオレフィン系ワックス、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、シリコーンオイル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン系ワックスが好ましい。
【0133】
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0134】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0135】
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0136】
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0137】
ポリオレフィン系ワックスとしては、オレフィンの単独重合体及び共重合体等が挙げられる。オレフィンの単独重合体としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等及びこれらの部分酸化物又はこれらの混合物等が挙げられる。オレフィンの共重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、2−メチルブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィン等の共重合体、これらのオレフィンと共重合可能なモノマー、例えば、不飽和カルボン酸又はその酸無水物(無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸等)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステル等)等の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。また、これらの共重合体には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体が含まれる。オレフィン共重合体は、通常、エチレンと、他のオレフィン及び重合性モノマーから選択された少なくとも1種のモノマーとの共重合体である。これらのポリオレフィン系ワックスのうち、ポリエチレンワックスが最も好ましい。なお、ポリオレフィンワックスは、線状又は分岐構造であってよい。
【0138】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪族エステル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル等が挙げられる。 シリコーンオイルの動粘度としては、25℃における動粘度が、50,000cSt以上であることが好ましく、150,000cSt以上であることがより好ましく、更に好ましくは500,000cSt以上である。動粘度の上限は、通常10,000,000cSt程度である。
【0139】
これらの離型剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0140】
本発明の樹脂組成物が離型剤を含有する場合、その含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部、さらには0.15〜2.5重量部、特に0.2〜2重量部であることが好ましい。離型剤の含有量が上記下限以上であることにより、その離型効果を十分に得ることができ、上記上限以下であることにより、耐熱性の低下、金型汚染、可塑化不良といった問題を防止しやすい傾向にある。
【0141】
<熱安定剤>
本発明の樹脂組成物には、組成物の製造及び成形工程における溶融混練時や使用時の熱安定性を向上させる目的で、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、硫黄系化合物、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種の熱安定剤を配合してもよい。
【0142】
ヒンダードフェノール系化合物の具体例として、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)等が挙げられる。これらの中で、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンが好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0143】
ホスファイト系化合物の具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノ及びジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)等が挙げられ、好ましくは、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0144】
ホスホナイト系化合物の具体例としては、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリメチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3−ジメチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−5−エチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,3,4−トリブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられ、好ましくは、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトである。
【0145】
硫黄系化合物の具体例としては、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリチルテトラキス(3−テトラデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリチルテトラキス(3−トリデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイト等が挙げられる。特に、チオエーテル構造を有するチオエーテル系酸化防止剤は、酸化された物質から酸素を受け取って還元するため、好適に用いることができる。 硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3000である。
【0146】
酸化亜鉛としては、例えば、平均粒子径が0.02〜1μmのものが好ましく、平均粒子径が0.08〜0.8μmのものがより好ましい。
【0147】
本発明の樹脂組成物にこれらの熱安定剤を配合する場合、その含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜3重量部、より好ましくは0.05〜2重量部である。熱安定剤の配合量が上記下限以上であることにより、熱安定性の改善効果を十分に得ることができ、上記上限以下であることにより金型汚染の発生、機械的強度の低下などを防止することができる。
【0148】
<充填材>
本発明においては、主に、樹脂組成物を補強し、剛性、耐熱性、寸法精度等を向上させる目的で充填材の1種又は2種以上を配合してもよい。充填材の形状等に特に制限はなく、有機充填材でも無機充填材でもよい。その具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩又は硫酸塩、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ミルドファイバー、アルミナ繊維、炭素繊維、アラミド繊維、酸化チタン、酸化マグネシウム、窒化硼素、チタン酸カリウィスカー、シリカ、マイカ、タルク、ワラストナイト等が挙げられるが、これらの中でも、機械的強度の点からガラス繊維が、耐トラッキング性の点からアルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩、特に、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましい例として挙げられる。
【0149】
本発明で好ましく使用されるガラス繊維は、平均直径が20μm以下のものが好ましく、さらに1〜15μmのものが、物性バランス(耐熱剛性、衝撃強度)をより一層高める点、並びに成形反りをより一層低減させる点で好ましい。
【0150】
ガラス繊維の長さは特定されるものでなく、長繊維タイプ(ロービング)や短繊維タイプ(チョップドストランド)等から選択して用いることができる。この場合の集束本数は、100〜5,000本程度であることが好ましい。また、樹脂組成物混練後の樹脂組成物中のガラス繊維の長さが平均0.1mm以上で得られるならば、いわゆるミルドファイバー、ガラスパウダーと称せられるストランドの粉砕品でもよく、また、連続単繊維系のスライバーのものでもよい。原料ガラスの組成は、無アルカリのものも好ましく、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラス等が挙げられるが、本発明では、Eガラスが好ましく用いられる。
【0151】
本発明で好ましく使用されるアルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩は、耐トラッキング性改善のために配合される成分であり、本発明においては、アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩の配合による耐衝撃性の低下が少なく、耐トラッキング性を向上させることができる。
【0152】
アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩のアルカリ土類金属は、周期表第IIa族に含まれる元素の少なくとも1種であるが、好ましくはカルシウム、バリウム、ストロンチウム、マグネシウムであり、カルシウム、バリウムがより好ましい。
【0153】
アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩としては、特に、耐トラッキング性及び耐衝撃性の改善効果、黒色度の保持等の点から炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましい。
【0154】
アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩の平均粒子径については特に制限はなく、平均粒子径0.1〜5μm程度の市販品を用いることができる。好ましい平均粒子径は、0.1〜3μmである。なお、炭酸カルシウムについては、粒子径の大きいものを使用すると、耐衝撃性の低下、成形品の白化、成形品表面の凹凸といった問題が生じる恐れがあるため、これらの問題を防止するために、炭酸カルシウムの粒子径は、平均粒子径として1μm以下、例えば0.1〜1μmであることが好ましい。なお、アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩の平均粒子径とは、粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均粒子径をいう。
【0155】
アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0156】
本発明の樹脂組成物に、これらの充填材を配合する場合、その配合量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは5〜60重量部である。充填材の配合量を上記下限以上とすることにより機械的強度を効果的に改良できる傾向にあり、上記上限以下とすることにより流動性及び成形品外観をより良好なものとすることができる。
【0157】
アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩を配合する場合は、その含有量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜12重量部である。アルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は硫酸塩の含有量が上記下限以上であることにより、耐トラッキング性、更には耐衝撃性の改善効果を十分に得ることができ、上記上限以下であることにより、黒色度の低下を抑制することができる。
【0158】
<その他>
その他、本発明の樹脂組成物には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カーボンブラック以外の耐侯性改良剤、造核剤、発泡剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、分散剤、導電剤、帯電防止剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0159】
なお、本発明で用いる前記一般式(1)で表されるリン酸エステル系難燃剤以外の難燃剤を併用することも可能であるが、本発明に係るリン酸エステル系難燃剤以外の難燃剤を併用する場合は、成形時にガスが発生しないように、また、耐熱性の低下が起きないように、配合量を調整する必要がある。
【0160】
[製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造は、特定の方法に限定されるものではないが、好ましくは溶融混練によるものであり、熱可塑性樹脂について一般に実用化されている混練方法が適用できる。例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、リン酸エステル系難燃剤及び必要に応じて用いられるその他の成分等を、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等により均一に混合した後、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー、ラボプラストミル(ブラベンダー)等で混練することができる。各成分は混練機に一括でフィードしても、順次フィードしてもよく、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合したものを用いてもよい。また、特にカーボンブラックについては、予め、スチレン系樹脂等の樹脂成分とマスターバッチ化されたものを用いてもよい。
【0161】
混練温度と混練時間は、所望とする樹脂組成物や混練機の種類等の条件により任意に選ぶことができるが、通常、混練温度は200〜350℃、好ましくは220〜320℃、混練時間は20分以下が好ましい。この温度が高過ぎると、ポリフェニレンエーテル樹脂やスチレン系樹脂の熱劣化が問題となり、成形品の物性の低下や外観不良を生じることがある。
【0162】
〔太陽光発電モジュール用接続構造体〕
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、すなわち射出成形、射出圧縮成形、中空成形、押出成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形、プレス成形等の各種成形法に適用可能であるが、本発明の太陽光発電モジュール用接続構造体の成形に際しては、射出成形、射出圧縮成形が行われることが好ましい。
【0163】
本発明の樹脂組成物を射出成形して得られる本発明の太陽光発電モジュール用接続構造体は、前記一般式(1)で表されるリン酸エステル系難燃剤の配合により、以下のような優れた難燃性と耐熱性を有し、また、成形時のガス発生の問題もなく、製品歩留りに優れる。
(a)UL94規格に準拠して測定される、厚み0.8mmにおける難燃性がV−0である。
(b)ISO75規格に準拠して測定される荷重たわみ温度が120℃以上である。
【実施例】
【0164】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の例で使用した材料、得られた樹脂組成物の評価法及び試験片の成形条件は次の通りである。
【0165】
[材料]
ポリフェニレンエーテル樹脂:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(ポリキシレノールシンガポール社製「PX100L」、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度0.47dl/g)
【0166】
スチレン系樹脂:ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、PSジャパン社製「HT478」、重量平均分子量(Mw)200,000、MFR3.2g/10分
【0167】
リン系難燃剤−1(実施例用):ADEKA社製リン酸エステル系難燃剤「FP−800」(前記一般式(1)において、n=1のものが86重量%、R,Rは水素原子)
リン系難燃剤−2(比較例用):レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(大八化学工業社製「CR−733S」)
リン系難燃剤−3(比較例用):トリフェニルホスフェート(大八化学工業社製「TPP」)
【0168】
カーボンブラック:レジノカラー工業社製カーボンブラックマスターバッチ「BLACK SBF−M8800」(カーボンブラック(三菱化学(株)製「MCF88」)含有量45重量%のポリスチレンベースマスターバッチ)
【0169】
アクリル系エラストマー:ローム・アンド・ハース・ジャパン社製「パラロイドEXL2315」(ポリブチルアクリレート(コア)/ポリメチルメタクリレート(シェル)からなるコア・シェア型エラストマー)
ブタジエン系エラストマー:ローム・アンド・ハース・ジャパン社製「パラロイドEXL2603」(ポリブタジエン(コア)/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合物(シェル)からなるコア・シェル型エラストマー)
シリコーン系エラストマー:三菱レイヨン社製「メタブレンS−2030」(ポリアクリル酸アルキル−ポリジメチルシロキサン複合ゴム/ポリメタクリル酸アルキルグラフト共重合体)
SEBS:クラレプラスチックス社製「セプトン8006」
【0170】
難燃助剤:三菱レイヨン社製ポリテトラフルオロエチレン「メタブレンA−3800」
離型剤:三洋化成社製酸化型ポリエチレンワックス「サンワックス151P」
熱安定剤−1:ADEKA社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤「アデカスタブAO−80」
熱安定剤−2:ADEKA社製ホスファイト系酸化防止剤「アデカスタブPEP−36」
熱安定剤−3:ADEKA社製チオエーテル系酸化防止剤「アデカスタブAO−412S」
【0171】
炭酸カルシウム:白石工業社製「Vigot−15」、平均粒子径0.15μm 硫酸バリウム:堺化学工業社製「B−55」、平均粒子径0.8μm
【0172】
<評価法>
(1)難燃性
下記記載の方法で得られた樹脂組成物ペレットを80℃で2時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J50EP」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で127mm×12.7mmで、厚が0.8mmの試験片を作製し、UL94規格に準拠して測定を行った。
【0173】
(2)荷重たわみ温度
下記記載の方法で得られた樹脂組成物ペレットを80℃で2時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製「EC160NII」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件でISO試験片を作製し、ISO75規格に準じて、荷重1.8MPaにおける荷重たわみ温度を測定し、耐熱性の指標とした。
【0174】
(3)発生ガス量
下記(4)エッジクラック試験用の箱形成形品を射出成形する際の発生ガスの状態を目視観察した。発生ガスの多いものを「×」、ガス発生が殆どないものを「○」とした。
【0175】
(4)エッジクラック試験
下記記載の方法で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で2時間乾燥後、射出成形機(東芝機械社製「EC160NII」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出圧力80MPaの条件で射出成形を行い、縦55mm、横35mm、深さ30mm、平均肉厚1.5mmの箱形成形品を作製した。得られた成形品を各10個、80℃の乾燥機に2時間保存した後成形品を取り出し、成形品外側のエッジ部のクラックの有無を観察した。クラックのない成形品1個を0点、クラックのある成形品1個を−1点とし、10個の合計点数で評価した。成形品のエッジ部は、残留応力が大きく、発生ガスの付着により応力腐食割れが発生しやすい部分である。従って、エッジ部での割れが多いほど、ガスが多く発生していると考えられる。
【0176】
(5)落鍾試験
下記記載の方法で得られた樹脂組成物ペレットを、80℃で2時間乾燥後、射出成形機(日本製鋼所社製「J75ED」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形を行い、150mm×100mm×厚み2.6mmの大きさの試験片を作製し、この試験片を直径70mmの筒状サンプル台に取り付け、鍾(先端R6.35mm)に重り(重さ2kg)を2m上方より落下させた。落鍾が試験片を完全に貫通しない場合を合格「○」とし、それ以外を不合格「×」とした。
【0177】
(6)耐トラッキング性
下記記載の方法で得られた樹脂組成物ペレットを80℃で2時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製「EC160NII」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、大きさが100mm×100mmで、厚みが3mmの試験片を作製し、IEC60112規格に準拠して比較トラッキング指数(CTI)を測定した。なお、印加電圧は25V単位で行った。
【0178】
[実施例1〜12、比較例1〜9]
表1〜3に示す配合成分を、表1〜3に示す割合でタンブラーミキサーにて均一に混合し、得られた混合物を、池貝社製二軸押出機「PCM−30」にて、バレル温度280℃、回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランド状に押出して冷却し、切断してペレットを作製した。
【0179】
[評価結果]
評価結果を表1〜3に示す。
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
【表3】
【0183】
表1〜3より次のことが分かる。
本発明で用いるリン酸エステル系難燃剤とは異なる難燃剤を用いた比較例1〜9は、いずれも難燃性は優れるが、それぞれ難燃剤を同程度配合した実施例と対比した場合、荷重たわみ温度が低く、ガス発生の問題があることから、エッジ部での応力腐食割れが多い。
なお、比較例1,2,4,6,8,9で用いたリン系難燃剤−2は、前掲の特許文献1の[0051]段落に好適な市販品として記載されたものであり、これらの結果から、特許文献1に記載される樹脂組成物では、耐熱性の低下、ガス発生の問題があることが分かる。
【0184】
これに対して、本発明で規定される前記一般式(1)で表される特定のリン酸エステル系難燃剤を用いた実施例1〜12では、いずれも、難燃性、耐熱性に優れ、ガス発生の問題もなく、耐衝撃性等の機械的特性にも優れる。
また、炭酸カルシウム又は硫酸バリウムを配合した実施例7〜10では、耐トラッキング性が向上することがわかる。