特許第6020706号(P6020706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6020706ジペプチド合成酵素(バリアント)をコードするDNA、エシェリヒア属に属する細菌、およびそれらを用いるジペププドの生産方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020706
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ジペプチド合成酵素(バリアント)をコードするDNA、エシェリヒア属に属する細菌、およびそれらを用いるジペププドの生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20161020BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20161020BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20161020BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
   C12N1/21ZNA
   C12N9/00
   C12P21/02 B
   !C12N15/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2015-501974(P2015-501974)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公表番号】特表2015-525561(P2015-525561A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】JP2013069712
(87)【国際公開番号】WO2014010755
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】2012129311
(32)【優先日】2012年7月11日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100113103
【弁理士】
【氏名又は名称】香島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,セルゲイ ヴァシリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフ,パーヴェル ミハイロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇敬
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/076477(WO,A1)
【文献】 DATABASE UniProt [online] 16 May 2012 "SubName: Full=Putative uncharacterized protein;" Accession No.C0Z5R1,2015年11月18日検索 <http://www.uniprot.org/uniprot/C0Z5R1.txt?version=21>
【文献】 DATABASE UniProt [online] 16 May 2012 "SubName: Full=Argininosuccinate lyase 2-like protein;" Accession No.E3FE26,2015年11月18日検索 <http://www.uniprot.org/uniprot/E3FE26.txt?version=9>
【文献】 DATABASE UniProt [online] 16 May 2012 "SubName: Full=Pyridoxal-phosphate dependent enzyme;" Accession No.F5SLP0,2015年11月18日検索 <http://www.uniprot.org/uniprot/F5SLP0.txt?version=5>
【文献】 Biosci. Biotechnol. Biochem.,2010年,Vol.74, No.2,p.415-418
【文献】 Appl Microbiol Biotechnol,2008年,Vol.81,p.13-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00−9/99
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エシェリヒア属に属するジペプチド生産細菌であって、
ペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードする1以上の遺伝子の改変により、ペプチダーゼ活性が減弱または不活化されるように改変されており、
エシェリヒア属に属するジペプチド生産細菌におけるペプチダーゼ活性の減弱または不活化の比較基準が、エシェリヒア属に属する同じジペプチド生産細菌の野生型株におけるペプチダーゼ活性であり、かつ
以下(A)〜(E)からなる群より選ばれるDNAを含むように改変された、エシェリヒア属に属するジペプチド生産細菌:
(A)配列番号1、3または5の塩基配列を有するDNA;
(B)配列番号1、3または5で示される配列に相補的な塩基配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズするDNA;
(C)配列番号2、4または6のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA;
(D)配列番号2、4または6のアミノ酸配列に対して1〜30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含み、かつジペプチド合成活性を有するバリアントタンパク質をコードするDNA;
(E)配列番号2、4または6のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつジペプチド合成活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項2】
前記細菌が、エシェリヒア・コリ種に属する、請求項1記載の細菌。
【請求項3】
ペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードする前記遺伝子が、pepA、pepB、pepD、pepE、pepP、pepQ、pepN、pepT、iadA、iaaA(ybiK)、およびdapEからなる群より選ばれる、請求項1または2記載の細菌。
【請求項4】
下記:
(F)配列番号2、4または6のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(G)配列番号2、4または6のアミノ酸配列に対して1〜30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含み、かつジペプチド合成活性を有するバリアントタンパク質;
(H)配列番号2、4または6のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつジペプチド合成活性を有するタンパク質、
からなる群より選ばれるタンパク質の生産方法であって、
以下を含む、生産方法:
(a)培養培地中で請求項1〜3のいずれか一項記載の細菌を培養して、前記タンパク質を生産すること;
(b)前記細菌または培養培地中、あるいはその双方に前記タンパク質を蓄積させること;および、必要に応じて
(c)前記細菌または培養培地から前記タンパク質を回収すること。
【請求項5】
以下の工程を含む、N末端側が酸性アミノ酸残基または酸性L−アミノ酸残基の誘導体であるジペプチドまたはその塩の生産方法:
(a)下記:
(F)配列番号2、4または6のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(G)配列番号2、4または6のアミノ酸配列に対して1〜30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含み、かつジペプチド合成活性を有するバリアントタンパク質;
(H)配列番号2、4または6のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつジペプチド合成活性を有するタンパク質、
からなる群より選ばれるタンパク質の存在下における適切な条件下でL−アミノ酸またはその誘導体、あるいはそれらの塩を反応させること;
(b)適切な溶媒中に前記ジペプチドまたはその塩を蓄積させること;および、必要に応じて
(c)適切な溶媒から前記ジペプチドまたはその塩を回収すること
〔ただし、配列番号6のアミノ酸配列に関連するタンパク質が用いられる場合、生産されるジペプチドはL−Asp−L−Pheである〕。
【請求項6】
N末端側が酸性アミノ酸残基または酸性L−アミノ酸残基の誘導体であるジペプチドまたはその塩の生産方法であって、以下の工程:
(a)培養培地中で細菌を培養すること;
(b)前記細菌または培養培地中、あるいはその双方に前記ジペプチドを蓄積させること;および、必要に応じて
(c)前記細菌または培養培地から前記ジペプチドを回収すること、
を含み、
前記細菌が、以下(A)〜(E)からなる群より選ばれるDNAを含むように改変された、エシェリヒア属に属するジペプチド生産細菌である、生産方法:
(A)配列番号1、3または5の塩基配列を有するDNA;
(B)配列番号1、3または5で示される配列に相補的な塩基配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズするDNA;
(C)配列番号2、4または6のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA;
(D)配列番号2、4または6のアミノ酸配列に対して1〜30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含み、かつジペプチド合成活性を有するバリアントタンパク質をコードするDNA;
(E)配列番号2、4または6のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつジペプチド合成活性を有するタンパク質をコードするDNA
〔ただし、配列番号6のアミノ酸配列に関連するタンパク質が用いられる場合、生産されるジペプチドはL−Asp−L−Pheである〕。
【請求項7】
前記L−アミノ酸またはその誘導体が、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、およびL−フェニルアラニンの低級アルキルエステルからなる群より選ばれる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記ジペプチドが、式:R1−R2により表され、
R1が、酸性L−アミノ酸残基、または酸性L−アミノ酸残基の誘導体であり、
R2が、L−アミノ酸残基、またはL−アミノ酸残基の誘導体であり、
前記L−アミノ酸残基が、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、およびL−フェニルアラニンの低級アルキルエステルからなる群より選ばれる、請求項5または6のいずれか記載の方法。
【請求項9】
R1が、L−アスパラギン酸またはL−グルタミン酸残基であり、
R2が、L−グルタミン酸、L−イソロイシン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−バリン、またはL−フェニルアラニン残基の低級アルキルエステルである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
R1が、L−アスパラギン酸残基であり、
R2が、L−フェニルアラニン、またはL−フェニルアラニン残基の低級アルキルエステルである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記L−フェニルアラニン残基の低級アルキルエステルが、L−フェニルアラニンのメチル、エチルまたはプロピルエステルである、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物工学産業、具体的には、新規ジペプチド合成酵素、およびジペプチド、特に、酸性L−アミノ酸残基をN末端に有するジペプチドの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジペプチドは、医薬・食品分野、および種々の他分野で用いられる。例えば、ジペプチドAsp−Gluは、利尿およびナトリウム利尿性医薬組成物の調製に用いられている(特許文献1)。NMDA受容体のNR1/NR2AおよびNR1/NR2Bサブタイプに対するアゴニスト効果を有するジペプチドを含む医薬組成物が知られている(特許文献2)。多数のジペプチドの味覚特性が研究されている。例えば、ジペプチドAsp−Valは、酸味を有する(非特許文献1)。Glu−Ala、Glu−Asp、Glu−Glu、Glu−Ile、Asp−Glu、His−Glu、Trp−Glu等のグルタミン酸含有ジペプチドを用いることにより得られる優れた塩味強化剤が知られている(特許文献3)。
【0003】
タンパク質加水分解物からの抽出、保護および/または活性化アミノ酸からの化学合成、ならびにペプチダーゼおよび保護アミノ酸を用いる酵素合成を含む、種々のジペプチド生産方法が知られている(非特許文献2、3)。反復アミノ酸配列(Asp−Phe)nを含むペプチドをコードするクローニング媒体がジペプチドAsp−Pheのベンジル化およびメチル化誘導体の生産に有用であることが報告されている(特許文献4)。
【0004】
化学および/または化学−酵素アプローチを用いるジペプチド合成は、連結されるアミノ酸の官能基に対する保護基の導入および脱離、ならびにラセミ混合物からの所望の生成物の単離を必要とする。したがって、このプロセスは、費用、効率、および有機溶媒、塩等の付随化学品の廃棄の必要性などの観点から不利であると考えられる。
【0005】
ジペプチドおよびその誘導体の酵素合成のための幾つかのアプローチが報告されている。このようなものとして、L−アミノ酸エステルおよびL−アミノ酸からペプチドを生産する能力を有するプロリンイミノペプチダーゼの逆反応を用いる方法(特許文献5)、非リボソームペプチドシンテターゼ(NRPS)を用いる方法(特許文献6、7、非特許文献4、5)、アミノアシルtRNAシンテターゼを用いる方法(特許文献8〜10)、ならびにペプチド合成活性を有する変異タンパク質を用いる方法(特許文献11)が挙げられる。
【0006】
ATP依存性カルボキシレート−アミン/チオールαリガーゼスーパーファミリーに属する酵素が、2つのL−アミノ酸間にαペプチド結合を有するジペプチドの生産のため広く用いられている。例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)168のゲノムDNAのデータベースであるSubtiList(http://genolist.pasteur.fr/SubtiList/)の相同性検索機能、およびバチルス・サブチリス 168由来のD−Ala−D−Alaリガーゼ遺伝子のアミノ酸配列を用いることにより、特にL−Ala、L−Gly、L−Met、L−Ser、およびL−Thr等のL−アミノ酸をN末端に有するジペプチドを合成し得る酵素をコードするywfE遺伝子が見出された(特許文献12、13、非特許文献6)。YwfEタンパク質(バチリシン(bacilysin)シンテターゼ、酵素分類番号(EC)6.3.2.28)は非常に広範な基質特異性を有するにもかかわらず、この酵素は、L−Lys、L−Arg、L−Glu、およびL−Asp等の高度に荷電したアミノ酸、ならびにL−Pro等の二級アミンを許容しない(非特許文献6)。また、リゾクチシン(rhizocticin)シンテターゼ遺伝子によりコードされ、L−アミノ酸Glyおよびβ−Alaを基質として利用する、ジペプチド合成活性を有するタンパク質が記載されている(特許文献14)。遊離リン酸(Pi)、ならびにTOFMSおよびNMR解析により確認されるように、この酵素は、ジペプチドのN末端にL−ArgおよびL−Lysを配置する。隠れマルコフモデル(HMM)に基づくプロフィール解析により、リン酸の放出により証明されるように、種々のペプチジル化合物をL−アミノ酸から生成し得る、トレポネマ・デンチコラ(Treponema denticola) ATCC 35405、フォトラビダス・ルミネッセンス亜種・ラウモンジー(Photorhabdus luminescence subsp. Laumondii) TTO1、ストレプトコッカス・ミュータンツ(Streptococcus mutants) UA159、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae) TIGR4、およびアクチノバチルス・プレウロニューモニエ・セロバル1株(Actinobacillus pleuropneumoniae serovar 1 str.) 4074を由来とする5つのL−アミノ酸αリガーゼ(Lal)が明らかにされた(非特許文献7)。如何なるジペプチド生成も、L−GluまたはL−Aspの他のL−アミン酸との組合せでは確認されなかった。ペプチド合成活性を有する変異タンパク質が、標品試料を用いるHPLCにより、L−MetをN末端に保持するジペプチドを生成することが確認された(特許文献11)。NCBIのBLASTサービス(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)の支援で行われた、バチルス・サブチリス由来のLal(BsLal)のアミノ酸配列に基づくインシリコ・スクリーニングにより、リン酸の放出により確認されたように、ジペプチド結合を生成し得る、ラルストニア・ソラナセアラム(Ralstonia solanacearum)由来のタンパク質RSp1486aが明らかとなった(特許文献15、非特許文献8)。NMRを用いた構造解析により、L−Ser、L−Met、L−Gln、L−Phe、L−His、L−Ala、およびL−CysをN末端に有するジペプチドの生成が確認された。RSp1486aならびにL−AspおよびL−Phe、L−His、L−Met、L−Cys、またはL−Ala、あるいはRSp1486aならびにL−GluおよびL−Phe、L−His、L−Met、L−Cys、L−Ser、またはL−Alaを含む混合液において無機リン酸の放出が確認されたにもかかわらず、反応生成物の構造解析は行われなかった。バックグランドレベルを超える如何なる追加的なリン酸放出も、RSp1486aおよびL−AspまたはL−Gluを含む反応混合液において観察されなかった。新たに発見されたL−アミノ酸リガーゼである、バチルス・サブチリス NBRC3134由来のRizBは、2〜5個のアミノ酸残基からなる分岐鎖アミノ酸の種々のヘテロペプチドおよびホモオリゴマーを合成することが見出された(非特許文献9)。例えば、L−Valの二量体、三量体、および四量体の生成が、RizB、L−Val、およびL−GluまたはL−Aspを含む混合液において、LC−ESI−MS解析により証明された。如何なるヘテロペプチドも明らかにされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2662359号明細書
【特許文献2】特開2009−209131号
【特許文献3】国際公開2009/113563号公報
【特許文献4】欧州特許出願第0036258号
【特許文献5】露国特許第2279440号明細書
【特許文献6】米国特許第5,795,738号明細書
【特許文献7】米国特許第5,652,116号明細書
【特許文献8】特開昭58−146539号(1983)
【特許文献9】特開昭58−209992号(1983)
【特許文献10】特開昭59−106298号(1984)
【特許文献11】露国特許出願第2007127719号明細書
【特許文献12】米国特許第7,514,243号明細書
【特許文献13】米国特許第7,939,302号明細書
【特許文献14】米国特許第7,939,294号明細書
【特許文献15】欧州特許出願第1870454号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sogame S.およびMatsushita I.,New Food Ind.,1996,38(12):44−49(Japanese)
【非特許文献2】Akabori S.ら,Bull.Chem.Soc.Japan,1961,34:739
【非特許文献3】Monter B.ら,Biotechnol.Appl.Biochem.,1991,14(2):183−191
【非特許文献4】Doekel S.およびMarahiel M.A.,Chem.Biol.,2000,7:373−384
【非特許文献5】Dieckmann R.ら,FEBS Lett.,2001,498:42−45
【非特許文献6】Tabata K.ら,J.Bacteriol.,2005,187(15):5195−5202
【非特許文献7】Senoo A.ら,Biosci.Biotechnol.Biochem.,2010,74(2):415−418
【非特許文献8】Kino K.ら,Biochem.Biophys.Res.Comm.,2008,371:536−540
【非特許文献9】Kino K.,Yakugaku Zasshi,2010,130(11):1463−1469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在までに、L−アミノ酸αリガーゼ(Lal)を用いて、L−GluまたはL−Asp残基等の酸性L−アミノ酸残基をN末端に有し、かつ任意の他のL−アミノ酸またはその誘導体をC末端に有するジペプチドの合成を実証する如何なるデータも報告されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の局面は、アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP)またはその塩等の高エネルギー分子を含む反応混合液において、L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有し、かつ任意の他のL−アミノ酸またはその誘導体をC末端に有するジペプチドを合成し得るL−アミノ酸αリガーゼ(Lal)をコードするDNAを提供することである。
【0011】
本発明の別の局面は、本明細書中に記載される、LalをコードするDNAを含むように改変されたエシェリヒア属、例えばエシェリヒア・コリ種に属する細菌を提供することである。
【0012】
本発明の別の局面は、本明細書中に記載されるLal酵素、または本明細書中に記載される、Lal酵素をコードするDNAを含むように改変されたエシェリヒア属の細菌を用いて、アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP)またはその塩等の高エネルギー分子を含む反応混合液における、L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有し、かつ任意の他のL−アミノ酸またはその誘導体をC末端に有するジペプチドの生産方法を提供することである。
【0013】
これらの目的は、L−AspまたはL−Glu残基等の酸性L−アミノ酸残基をN末端に有するジペプチドの生成を触媒する、新規に見出された細菌性L−アミノ酸αリガーゼ(Lal)により達成される。
【0014】
本発明の局面は、ジペプチド合成活性を有するタンパク質をコードするDNAを提供することであり、ここで、DNAは、以下からなる群より選ばれる:
(A)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15および17の塩基配列を有するDNA;
(B)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15および17で示される配列に相補的な塩基配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズするDNAであって、ストリンジェント条件が、1×SSC、0.1% SDSまたは0.1×SSC、0.1% SDSの塩濃度を含む溶液中での60℃または65℃での1以上の洗浄を含む、DNA;
(C)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA;
(D)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列を有するが、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含み、かつ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列のジペプチド合成活性を有するバリアントタンパク質をコードするDNA;
(E)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列に対する128以上、142以上、162以上、175以上、182以上、196以上、または233以上の|Log10(E値)|値、ならびに配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列のジペプチド合成活性により規定される、相同性を有するタンパク質をコードするDNA。
【0015】
本発明の局面は、上記DNAを含む、上記DNAの発現用組換えDNAを提供することである。
【0016】
本発明の局面は、上記組換えDNAを含むように改変された、エシェリヒア属に属するジペプチド生産細菌を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる局面は、エシェリヒア・コリ種に属する上記細菌を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる局面は、ペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードする1以上の遺伝子が改変されて減弱または不活化されている上記細菌を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる局面は、ペプチダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、pepA、pepB、pepD、pepE、pepP、pepQ、pepN、pepT、iadA、iaaA(ybiK)、およびdapEからなる群より選ばれる、上記細菌を提供することである。
【0020】
本発明の局面は、ジペプチド合成活性を有するタンパク質を提供することである。ここで、タンパク質は、以下からなる群より選ばれる:
(F)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(G)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列を有するが、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含み、かつ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列のジペプチド合成活性を有するバリアントタンパク質;
(H)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列に対する128以上、142以上、162以上、175以上、182以上、196以上、または233以上の|Log10(E値)|値、ならびに配列番号2、4、6、8、10、12、14、16および18のアミノ酸配列のジペプチド合成活性により規定される、相同性を有するタンパク質。
【0021】
本発明の局面は、以下を含む、上記タンパク質の生産方法を提供することである:
(a)培養培地中で上記細菌を培養して、タンパク質を生産すること;
(b)細菌または培養培地中、あるいはその双方にタンパク質を蓄積させること;および、必要に応じて
(c)細菌または培養培地からタンパク質を回収すること。
【0022】
本発明の局面は、以下の工程を含む、ジペプチドまたはその塩の生産方法を提供することである:
(a)上記タンパク質の存在下における適切な条件下でL−アミノ酸またはL−アミノ酸誘導体、あるいはそれらの塩を反応させること;
(b)適切な溶媒中にジペプチドまたはその塩を蓄積させること;および、必要に応じて
(c)適切な溶媒からジペプチドまたはその塩を回収すること。
【0023】
本発明の局面は、以下の工程を含む、ジペプチドまたはその塩の生産方法を提供することである:
(a)培養培地中で上記細菌を培養すること;
(b)細菌または培養培地中、あるいはその双方にタンパク質を蓄積させること;および、必要に応じて
(c)細菌または培養培地からタンパク質を回収すること。
【0024】
本発明のさらなる局面は、L−アミノ酸またはその誘導体が、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、およびL−フェニルアラニンの低級アルキルエステルである、上記方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる局面は、ジペプチドが、式:R1−R2により表され、
R1が、酸性L−アミノ酸残基、または酸性L−アミノ酸残基の誘導体であり、
R2が、L−アミノ酸残基、またはL−アミノ酸残基の誘導体であり、
L−アミノ酸残基が、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、およびL−フェニルアラニンの低級アルキルエステルからなる群より選ばれる、上記方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる局面は、R1が、L−アスパラギン酸またはL−グルタミン酸残基であり、R2が、L−グルタミン酸、L−イソロイシン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−バリン、またはL−フェニルアラニン残基の低級アルキルエステルである、上記方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらなる局面は、R1が、L−アスパラギン酸残基であり、R2が、L−フェニルアラニン、またはL−フェニルアラニン残基の低級アルキルエステルである、上記方法を提供することである。
【0028】
本発明のさらなる局面は、L−フェニルアラニン残基の低級アルキルエステルが、L−フェニルアラニンのメチル、エチルまたはプロピルエステルである、上記方法を提供することである。
【0029】
本発明は、以下に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、L−アミノ酸リガーゼ(Lal)により触媒される連結反応についてのスキームを示す。RおよびRは、同種または異種であり得る側鎖基である。ATPはアデノシン 5’−トリホスフェートを示し、ADPはアデノシン 5’−ジホスフェートを示し、Piは無機ホスフェート、リン酸、またはそれらの塩を示す。
図2図2は、同種の標準L−アミノ酸の連結におけるBBR47_51900の活性を示す。
図3図3は、異なる2種の標準L−アミノ酸(ここで1種はL−Gluである)の連結におけるBBR47_51900の活性を示す。Cnt:コントロール(L−Asp)。
図4図4は、異なる2種の標準L−アミノ酸(ここで1種はL−Aspである)の連結におけるBBR47_51900の活性を示す。Cnt:コントロール(L−Asp)。
図5図5は、異なる2種の標準L−アミノ酸(ここで1種はL−Aspである)の連結におけるStaur_4851の活性を示す。
図6図6は、TLC解析により決定された、L−AspおよびL−Pheの連結におけるStaur_4851の活性を示す。1−(Tris−HCl pH9.0 50mM,MgCl 10mM,L−Asp 10mM,L−Phe 10mM,ATP 10mM,Staur_4851 2μg);2−(Tris−HCl pH8.0 50mM,MgCl 10mM,L−Asp 10mM,L−Phe 10mM,ATP 10mM,Staur_4851 2μg);3−(Tris−HCl pH8.0 50mM,MgCl 10mM,L−Asp 20mM,L−Phe 0mM,ATP 10mM,Staur_4851 2μg);4−(Tris−HCl pH8.0 50mM,MgCl 10mM,L−Asp 0mM,L−Phe 20mM,ATP 10mM,Staur_4851 2μg);5−(Tris−HCl pH8.0 50mM,MgCl 10mM,L−Asp 10mM,L−Phe 10mM,ATP 0mM,Staur_4851 2μg);6−(Tris−HCl pH8.0 50mM,MgCl 10mM,L−Asp 10mM,L−Phe 10mM,ATP 10mM,Staur_4851 0μg)。
図7図7は、LC−QTOF/MS/MS解析により決定されたL−AspおよびL−Pheの連結におけるBBR47_51900の活性を示す。SP:サンプル;ST:標品(αAsp−PheおよびβAsp−Phe)。
図8図8は、LC−QTOF/MS/MS解析により決定されるL−AspおよびL−Valの連結におけるBBR47_51900の活性を示す図である。SP:サンプル;ST:標品(αAsp−Val)。
図9図9は、LC−QTOF/MS/MS解析により決定されるL−GluおよびL−Valの連結におけるBBR47_51900の活性を示す図である。SP:サンプル;ST:標品(αGlu−ValおよびγGlu−Val)。
図10図10は、BBR47_51900およびStaur_4851のアライメントを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図11-1】図11−1は、BBR47_51900およびStaur_4851のアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の49ヒットを提示する)(その1)。
図11-2】図11−2は、BBR47_51900およびStaur_4851のアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の49ヒットを提示する)(その2)。
図11-3】図11−3は、BBR47_51900およびStaur_4851のアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の49ヒットを提示する)(その3)。
図12図12は、BBR47_51900およびStaur_4851のアライメント(図10を参照)を用いたHMM検索プログラムにより得られた|Log10(E値)|値の分布図を示す。以下のヒットに、実線の矢印を付す:1−BBR47_51900,2−Staur_4851,3−DES,4−BCE,5−BMY,13−BTH,17−BUR,47−AME,49−SFL。
図13図13は、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEのアライメントを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図14-1】図14−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その1)。
図14-2】図14−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その2)。
図14-3】図14−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その3)。
図14-4】図14−4は、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その4)。
図15図15は、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEのアライメント(図13を参照)を用いたHMM検索プログラムにより得られた|Log10(E値)|値の分布図を示す。以下のヒットに、実線の矢印を付す:1−BBR47_51900,2−DES,3−BCE,4−Staur_4851,5−BMY,8−BTH,18−BUR,33−AME,62−SFL。
図16-1】図16−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメントにおける整列したBBR47_51900, Staur_4851およびDESを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図16-2】図16−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメントにおける整列したBCEおよびBMYを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図17-1】図17−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その1)。
図17-2】図17−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その2)。
図17-3】図17−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その3)。
図17-4】図17−4は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その4)。
図17-5】図17−5は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その5)。
図18-1】図18−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメントにおける整列したStaur_4851、BBR47_51900およびBCEを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図18-2】図18−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメントにおける整列したDES、BMYおよびBTHを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図19-1】図19−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の73ヒットを提示する)(その1)。
図19-2】図19−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の73ヒットを提示する)(その2)。
図19-3】図19−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の73ヒットを提示する)(その3)。
図19-4】図19−4は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の73ヒットを提示する)(その4)。
図19-5】図19−5は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の73ヒットを提示する)(その5)。
図20-1】図20−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントにおける整列したStaur_4851およびBBR47_51900を示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図20-2】図20−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントにおける整列したBCEおよびDESを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図20-3】図20−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントにおける整列したBMYおよびBTHを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図20-4】図20−4は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントにおける整列したBURを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図21-1】図21−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の104ヒットを提示する)(その1)。
図21-2】図21−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の104ヒットを提示する)(その2)。
図21-3】図21−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の104ヒットを提示する)(その3)。
図21-4】図21−4は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の104ヒットを提示する)(その4)。
図21-5】図21−5は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の104ヒットを提示する)(その5)。
図21-6】図21−6は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の104ヒットを提示する)(その6)。
図21-7】図21−7は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の104ヒットを提示する)(その7)。
図22-1】図22−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメントにおける整列したStaur_4851およびBBR47_51900を示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図22-2】図22−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメントにおける整列したBCEおよびDESを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図22-3】図22−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメントにおける整列したBMYおよびBTHを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図22-4】図22−4は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメントにおける整列したBURおよびAMEを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図23-1】図23−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その1)。
図23-2】図23−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その2)。
図23-3】図23−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その3)。
図23-4】図23−4は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の65ヒットを提示する)(その4)。
図24-1】図24−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメントにおける整列したStaur_4851およびBBR47_51900を示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図24-2】図24−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメントにおける整列したBCEおよびDESを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図24-3】図24−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメントにおける整列したBMYおよびBTHを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図24-4】図24−4は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメントにおける整列したBURおよびAMEを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図24-5】図24−5は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメントにおける整列したSFLを示す(ClustalW,PIR形式で出力)。
図25-1】図25−1は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の38ヒットを提示する)(その1)。
図25-2】図25−2は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の38ヒットを提示する)(その2)。
図25-3】図25−3は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメントを用いたHMM検索プログラムにより得られた出力データを示す(最初の38ヒットを提示する)(その3)。
図26図26は、HMMプロフィール(モデル1〜7)を用いた同機能Lalの解析を示す。*E値=0(図21、23、および25)。BBRはBBR47_51900を示し、STAはStaur_4851を示す。
図27図27は、E.coli 4−5Δ株における特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解(DP3−加水分解)活性のTLC解析を示す。5−フルオロトリプトファン(標品)の溶液(1μL)を、検量のため用いた(1)3mM、(2)2mM、(3)1mM、および(4)0.5mM。Mn2+(5,6)またはZn2+(7,8)を含む反応混合液1μLを、TLCプレート上にロードした。略語:5FTは5−フルオロトリプトファン、DP3はL−Asp−L−5−フルオロトリプトファンジペプチド、AspはL−アスパラギン酸。
図28図28は、E.coli 1−5Δ株における特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性に起因するDP3毒性の試験についての模式図である。E.coli株を、DP3ジペプチドの存在下で増殖させる。ペプチダーゼ+株(E.coli P)により受容されると、DP3は加水分解されて、L−アスパラギン酸および5−フロオロトリプトファン(5FT)を生成する。5FTは、細胞に対して有毒であり、増殖の停止をもたらす。DP3ジペプチドは安定であり、ペプチダーゼ欠損株において、または低いペプチダーゼ活性を有する株(E.coli P)において菌体の増殖に影響しない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.酵素
「酵素」という語句は、高エネルギー分子依存性様式でアミノ酸を連結して、アミノ酸残基間でペプチド結合を生成する活性を有するL−アミノ酸αリガーゼ(Lal)を意味し得る。
【0032】
本発明の酵素は、BBR47_51900(機能未知タンパク質)、Staur_4851 (アルギニノスクシネート・リアーゼ2様タンパク質)、DES(ピリドキサール−ホスフェート依存性酵素)、BUR (推定リアーゼ)、BCE(アルギニノスクシネート・リアーゼ・ドメイン・タンパク質)、BTH(機能未知タンパク質YBT020_25570)、AME(保存された機能未知タンパク質)、SFL(機能未知DUF201のタンパク質)、およびBMY(アルギニノスクシネート・リアーゼ・ドメイン・タンパク質)からなる群より選ばれるL−アミノ酸αリガーゼであり得るが、これは上述のタンパク質に限定されない。
【0033】
ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis) NBRC 100599(NCBI分類ID:358681)由来の遺伝子(NCBI参照番号:YP_002774671.1;ヌクレオチドの位置:5464162〜5465418,相補体;遺伝子ID:7721040)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるBBR47_51900のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号1および配列番号2に示される。
スチグマテラ・アウランチアカ(Stigmatella aurantiaca) DW4/3−1(NCBI分類ID:378806)由来の遺伝子(NCBI参照配列:ADO72629.1;ヌクレオチドの位置:5973963〜5975216,相補体;遺伝子ID:9878344)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるStaur_4851のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号3および配列番号4に示される。
デスモスポラ・エスピー(Desmospora sp.) 8437(NCBI分類ID:997346)由来の遺伝子(GenBankアクセッション番号EGK06810.1,GI:332967701)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるDESのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号5および配列番号6に示される。
バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei) 305(NCBI分類ID:425067)由来の遺伝子(GenBankアクセッション番号EBA51208.1,GI:134251129)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるBURのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号7および配列番号8に示される。
バチルス・セレウス(Bacillus cereus) AH621(NCBI分類ID:526972)由来の遺伝子(GenBankアクセッション番号EEK72190.1,GI:228615090)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるBCEのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号9および配列番号10に示される。
バチルス・スリンギエンシス亜種・フィニチムス(Bacillus thuringiensis subsp.Finitimus)(株YBT−020)(NCBI分類ID:930170)の遺伝子(GenBankアクセッション番号ADY24341.1,GI:324329081)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるBTHのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号11および配列番号12に示される。
アルカリフィラス・メタリレヂゲンス(Alkaliphilus metalliredigens) QYMF(NCBI分類ID:293826)由来の遺伝子(GenBankアクセッション番号ABR48216.1,GI:149949688)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるAMEのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号13および配列番号14に示される。
ストレプトマイセス・フラボグリゼウス(Streptomyces flavogriseus) ATCC 33331(NCBI分類ID:591167)由来の遺伝子(GenBankアクセッション番号ADW01942.1,GI:320007092)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるSFLのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号15および配列番号16に示される。
バチルス・ミコイデス(Bacillus mycoides) Rock3−17(NCBI分類ID:526999)由来の遺伝子(NCBI参照配列:ZP_04160564.1,GI:229002475)の塩基配列、および本遺伝子によりコードされるBMYのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号17および配列番号18に示される。
【0034】
属、または当該属の種および株の間のDNA配列には幾らかの差異があり得るため、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYをコードする遺伝子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、または17に示される遺伝子に限定されず、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、または17のバリアント塩基配列、またはそれらのホモログであり、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質のバリアントをコードする遺伝子が含まれていてもよい。さらに、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYをコードする遺伝子は、バリアント塩基配列であってもよい。
【0035】
「バリアント塩基配列」という語句は、「バリアントタンパク質」をコードする塩基配列を意味し得る。
「バリアント塩基配列」という語句は、標準的な遺伝暗号表(例えば、Lewin B.,「Genes VIII」,2004,Pearson Education, Inc.,Upper Saddle River,NJ 07458参照)による任意の同義アミノ酸コドンを用いて「バリアントタンパク質」をコードする塩基配列を意味し得る。
【0036】
「バリアント塩基配列」という語句はまた、それが機能的L−アミノ酸αリガーゼをコードする限り、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、または17に示される配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、またはストリンジェントな条件下でその塩基配列から作製することができるプローブを意味し得る。「ストリンジェントな条件」は、特異的ハイブリッド、例えば、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の類似性を有するハイブリッドが形成され、非特異的ハイブリッド、例えば、上記より低い相同性を有するハイブリッドが形成されない条件である。洗浄時間は、ブロッティングに用いられるメンブレンの種類に依存し、原則としてメーカーが推奨する時間であり得る。例えば、正に帯電したナイロンメンブレンであるAmersham Hybond(商標)−N+(GE Healthcare)にストリンジェントな条件下で推奨される洗浄時間は15分である。洗浄ステップは2〜3回行うことができる。プローブとして、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、または17に示される配列に相補的な配列の一部を用いてもよい。そのようなプローブは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、または17に示される配列に基づいて作製されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして、およびそのような塩基配列を含むDNA断片を鋳型として用いるPCRにより作製することができる。プローブの長さは50bpを超えることが推奨され、これはハイブリダイゼーション条件に基づいて好適に選択することができ、通常、100bp〜1kbpである
【0037】
BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質をコードする遺伝子は、既に明らかにされているので(上記参照)、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質のバリアントタンパク質をコードするバリアント塩基配列は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYをコードする遺伝子の塩基配列に基づいて調製されたプライマーを利用して、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応;White T.J.ら,Trends Genet.,1989,5:185−189を参照)により得ることができる。BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質、または他の微生物のそれらのバリアントタンパク質をコードする遺伝子は、同様の様式で得ることができる。
【0038】
「バリアントタンパク質」という語句は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18と比較して、配列中に1または数個の変化(これらはアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加のいずれかである)を有するが、それぞれ、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質の活性と同様の活性を依然として維持するか、またはBBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質の三次元構造が野生型もしくは非改変タンパク質と比べて顕著に変化していないタンパク質を意味し得る。バリアントタンパク質中の変化の数は、タンパク質の三次元構造中のアミノ酸残基の位置または種類に依存する。それは、厳密に限定されるものではないが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18において、1〜45個、または1〜30個、または1〜15個、または1〜10個、または1〜5個であり得る。
【0039】
1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加の例は、バリアントタンパク質の活性および特性が維持されており、かつそれらがBBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質のものと同様である保存的変異であり得る。代表的な保存的変異は保存的置換である。保存的置換は、置換部位が芳香族アミノ酸であれば、Phe、Trp、およびTyr間;置換部位が疎水性アミノ酸であれば、Ala、Leu、Ile、およびVal間;置換部位が親水性アミノ酸であれば、Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、His、およびThr間;置換部位が極性アミノ酸であれば、GlnおよびAsn間;置換部位が塩基性アミノ酸であれば、Lys、Arg、およびHis間;置換部部位が酸性アミノ酸であれば、AspおよびGlu間;置換部位がヒドロキシル基を有するアミノ酸であれば、SerおよびThr間、で相互に起こる置換であり得る。保存的置換の例としては、SerまたはThrによるAlaの置換、Gln、His、またはLysによるArgの置換、Glu、Gln、Lys、His、またはAspによるAsnの置換、Asn、Glu、またはGlnによるAspの置換、SerまたはAlaによるCysの置換、Asn、Glu、Lys、His、Asp、またはArgによるGlnの置換、Asn、Gln、Lys、またはAspによるGluの置換、ProによるGlyの置換、Asn、Lys、Gln、Arg、またはTyrによるHisの置換、Leu、Met、Val、またはPheによるIleの置換、Ile、Met、Val、またはPheによるLeuの置換、Asn、Glu、Gln、His、またはArgによるLysの置換、Ile、Leu、Val、またはPheによるMetの置換、Trp、Tyr、Met、Ile、またはLeuによるPheの置換、ThrまたはAlaによるSerの置換、SerまたはAlaによるThrの置換、PheまたはTyrによるTrpの置換、His、Phe、またはTrpによるTyrの置換、およびMet、Ile、またはLeuによるValの置換が含まれる。バリアントタンパク質中のこれらの変化は、タンパク質の機能に重要でないタンパク質領域中で生じ得る。これは、幾つかのアミノ酸は別のものと高い相同性を有する結果、三次元構造または活性がこのような変化により影響されないためである。したがって、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、または17に示される遺伝子によりコードされるタンパク質バリアントは、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質の機能が維持される限り、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18に示されるアミノ酸配列全体に関して、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の類似性または同一性を有していてもよい。あるいは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、または17に示される遺伝子によりコードされるタンパク質バリアントは、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質の機能が維持される限り、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18に示されるアミノ酸配列全体に関して、実施例6で以下に記載されるような、HMM検索プログラムに基づく隠れマルコフモデルプロフィール(HMMプロフィール)を構築した場合にそのプログラムにより算出される|Log10(E値)|値(Finn R.D.ら,HMMER web server:interactive sequence similarity searching,Nucleic Acids Res.,2011,39(ウェブサーバー発行):W29−37)を用いて規定することができる128以上、142以上、162以上、175以上、182以上、196以上、または233以上の相同性を有していてもよい。
【0040】
1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加の例はまた、アミノ酸配列の異なる位置における1以上の二次的変異によって変異が補償されることによりバリアントタンパク質の活性および特性が維持されており、かつそれらがBBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質のものと同様である非保存的変異であり得る。
【0041】
タンパク質またはDNAの相同性の程度を評価するために、BLAST検索、FASTA検索、およびClustalW法等の幾つかの計算方法を用いることができる。BLAST(Basic Local Alignment Search Tool, www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)検索は、プログラムblastp、blastn、blastx、megablast、tblastn、およびtblastxに採用されている発見的サーチアルゴリズムであり、これらのプログラムは、Samuel K.およびAltschul S.F.(「Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoring schemes」 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990,87:2264−2268;「Applications and statistics for multiple high−scoring segments in molecular sequences」.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1993,90:5873−5877)の統計学的方法を用いてそれらの発見に有意性を付与する。コンピュータープログラムBLASTは、スコア、同一性、および類似性の3つのパラメーターを計算する。FASTA検索法は、Pearson W.R.(「Rapid and sensitive sequence comparison with FASTP and FASTA」,Methods Enzymol.,1990,183:63−98)に記載されている。ClustalW法はThompson J.D.ら.(「CLUSTAL W:improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting,position−specific gap penalties and weight matrix choice」,Nucleic Acids Res.,1994,22:4673−4680)に記載されている。
【0042】
「L−アミノ酸αリガーゼ(Lal)の活性」という語句は、高エネルギー分子依存性様式でアミノ酸を連結して、アミノ酸残基間でペプチド結合を生成する反応を触媒する酵素の活性を意味し得る。ジペプチド、トリペプチド、または3つを超えるアミノ酸残基、もしくはその誘導体からなる線状もしくは分岐状のペプチドが、Lalにより触媒される反応の生成物であり得る。Lal触媒反応についての反応スキームは、アミノ酸またはその誘導外の種類および以下の非限定的な実施例で用いられる反応条件に限定されず、図1に示されるように記載され得る。Lalの活性は、例えば、実施例3、またはTabata K.ら,J.Bacteriol.,2005,187(15):5195−5202に記載されるアッセイにより測定することができる。「L−アミノ酸αリガーゼ(Lal)の活性」という語句は、特に「ジペプチド合成活性」という語句と同義であり得る。
【0043】
さらに、アミノ酸配列が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18のアミノ酸配列における1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含む場合、それは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、および18のアミノ酸配列を有するタンパク質の10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、および90%以上、L−アミノ酸αリガーゼの活性を保持し得る。
【0044】
「同機能タンパク質」という語句は、上記したようなL−アミノ酸αリガーゼ(Lal)の活性を有するタンパク質を意味し得る。例を示すと、同機能タンパク質は、L−GluまたはL−Asp等の酸性L−アミノ酸をN末端に有し、かつ任意の他のL−アミノ酸またはその誘導体をC末端に有するジペプチドを合成し得る。
【0045】
2.細菌
「ジペプチド生産細菌」という語句は、その細菌が培地中で培養される場合に、培養培地においてジペプチドを生産し、その蓄積を引き起こす能力を有する、エシェリヒア属に属する細菌等の腸内細菌科の細菌を意味し得る。ジペプチド生産能は、細菌が培地中で培養される場合に培地または菌体からジペプチドを回収できる程度に、細菌が培地または菌体中にジペプチドを生産し、かつジペプチドの蓄積を引き起こす能力を意味し得る。
【0046】
本細菌は、ジペプチド生産能を固有に有し得るか、または変異方法もしくはDNA組換え技術を用いることによりジペプチド生産能を有するように改変され得る。
【0047】
腸内細菌科に属する細菌は、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、エシェリヒア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、モルガネラ(Morganella)、パントエア(Pantoea)、フォトラブダス(Photorhabdus)、プロビデンシア(Providencia)、サルモネラ(Salmonella)、エルシニア(Yersinia)等の属に由来し得、ジペプチド生産能を有し得る。具体的には、NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)データベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=543)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されるものが用いられ得る。改変することができる腸内細菌科に由来する株の例としては、エシェリヒア属、エンテロバクター属、またはパントエア属の細菌が挙げられる。
【0048】
本開示の主題に係るエシェリヒア細菌を得るために改変できるエシェリヒア細菌の株は特に限定されず、具体的には、ナイトハルトらの著書(Bachmann,B.J.,Derivations and genotypes of some mutant derivatives of E.coli K−12,p.2460−2488.In F.C.Neidhardtら(編),E.coli and Salmonella:cellular and molecular biology(第2版) ASM Press,Washington,D.C.,1996)に記載されているものが用いられ得る。E.coli種が好適な例である。E.coliの具体例としては、プロトタイプの野生型株であるK−12株に由来する、E.coli W3110(ATCC27325)、E.coli MG1655(ATCC 47076)等が含まれる。これらの株は、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(P.O.Box 1549,マナサス,VA 20108,米国)から入手可能である。すなわち、各株に登録番号が付与されており、これらの登録番号を用いて株を注文することができる(www.atcc.org参照)。株の登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに列挙されている。
【0049】
エンテロバクター細菌の例としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられる。パントエア細菌の例としては、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)等が挙げられる。エンテロバクター・アグロメランスの幾つかの株が、近年、16S rRNAの塩基配列分析等に基づいて、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・アナナティス、又はパントエア・ステワルティイ(Pantoea stewartii)に再分類された。エンテロバクター属又はパントエア属のいずれかに属する細菌は、腸内細菌科に分類される細菌である限り、用いられ得る。パントエア・アナナティス株を遺伝子工学技術により育種する場合、パントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP−6614)、AJ13356株(FERM BP−6615)、AJ13601株(FERM BP−7207)、及びこれらの誘導体を用いることができる。これらの株は、それらが単離されたときにエンテロバクター・アグロメランスとして同定され、エンテロバクター・アグロメランスとして寄託された。しかし、上記のように、最近、16S rRNAの塩基配列等に基づきパントエア・アナナティスに再分類された。
【0050】
本明細書中で上記したようなジペプチド生産細菌は、ペプチダーゼ、すなわち、タンパク質分解活性を有する1種以上のタンパク質をコードする1以上の遺伝子が減弱または不活化され、その結果、ペプチダーゼの活性が減少するように改変され得る。例えば、pepA(KEGG(京都遺伝子ゲノム百科事典),エントリー番号b4260)、pepB(KEGG,エントリー番号b2523)、pepD(KEGG,エントリー番号b0237)、pepE(KEGG,エントリー番号b4021)、pepP(KEGG,エントリー番号b2908)、pepQ(KEGG,エントリー番号b3847)、pepN(KEGG,エントリー番号b0932)、pepT(GenBankアクセッション番号AAC74211)、iadA(KEGG,エントリー番号b4328)、iaaA(ybiK)(KEGG,エントリー番号b0828)、dapE(KEGG,エントリー番号b2472)等の遺伝子をコードする1以上のプロテアーゼが、減弱および/または不活化され得る。
【0051】
本明細書中で上記したようなジペプチド生産細菌はまた、ジペプチドパーミアーゼ(dpp)活性を有する1種以上のタンパク質をコードする1以上の遺伝子が減弱または不活化され、その結果、ペプチドパーミアーゼの活性が減少するように改変され得る。例えば、dppA(KEGG,エントリー番号b3544)、dppB(KEGG,エントリー番号b3543)、dppC(KEGG,エントリー番号b3542)、dppD(KEGG,エントリー番号b3541)、dppF(KEGG,エントリー番号b3540)等の遺伝子をコードする1以上のジペプチドパーミアーゼが、減弱および/または不活化され得る。dpp遺伝子オペロン全体(dppA、dppB、dppC、dppDおよびdppF)の欠失もまた、ジペプチド生産細菌では好ましくあり得る。
【0052】
本明細書中で上記したようなジペプチド生産細菌はまた、芳香族アミノ酸の生合成に関与する1種以上のタンパク質をコードする1以上の遺伝子が減弱または不活化され、その結果、タンパク質の活性が減少するように改変され得る。例えばtyrR(KEGG,エントリー番号b1323)、tryA(KEGG,エントリー番号b2600)等の遺伝子をコードする1以上のタンパク質が、減弱および/または不活化され得る。
【0053】
「ペプチダーゼをコードする減弱された遺伝子」または「タンパク質をコードする減弱された遺伝子」という語句は、それぞれ、「発現が減弱したペプチダーゼをコードする遺伝子」または「発現が減弱したタンパク質をコードする遺伝子」という語句と同義である。本明細書中以降、「ペプチダーゼ」という用語は、「タンパク質をコードする減弱された遺伝子」という語句の解釈のため、上記のように「タンパク質」(例、ジペプチドパーミアーゼ(dpp)活性を有するタンパク質、または芳香族アミノ酸の生合成に関与するタンパク質)と交換され得る。したがって、このような交換された語句は、本発明を特定するための要件として記載され得る。
【0054】
「発現が減弱した遺伝子をコードするペプチダーゼ」という語句は、改変細菌(ここで、ペプチダーゼをコードする遺伝子の発現が減弱されている)におけるペプチダーゼの量が非改変細菌、例えば、腸内細菌科、またはより具体的には、E.coli K−12株等のエシェリヒア属に属する細菌の野生型株と比較して減少しているものを意味し得る。
【0055】
「発現が減弱したペプチダーゼをコードする遺伝子」という語句はまた、改変細菌が、野生型タンパク質と比較して減少した活性を有する変異タンパク質をコードする改変遺伝子を含むか、またはプロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、リボソーム結合部位(RBS)、シャイン−ダルガノ(SD)配列等の遺伝子発現制御配列を含む、遺伝子に作動可能に連結される領域が改変されてペプチダーゼをコードする遺伝子の発現レベルが減少すること、および他の例(例えば、WO95/34672;Carrier T.A.およびKeasling J.D.,Biotechnol. Prog.,1999,15:58−64を参照)を意味し得る。
【0056】
ペプチダーゼをコードする遺伝子の発現は、染色体DNA上のプロモーター等の遺伝子発現制御配列をより弱いものと交換することにより減弱させることができる。プロモーターの強度は、RNA合成の初期作用の頻度により規定される。プロモーター強度の評価方法および強いプロモーターの例は、Goldsteinら,Prokaryotic promoters in biotechnology,Biotechnol.Annu.Rev.,1995,1:105−128)等に記載されている。さらに、国際公開公報WO00/18935に開示されるように、標的遺伝子のプロモーター中の数個のヌクレオチドにヌクレオチド置換を導入し、それによりプロモーターが弱くなるように改変することもまた可能である。さらに、RBS間のSD配列と開始コドンとの間のスペーサー、特に、開始コドンの直ぐ上流の配列における数個のヌクレオチドの置換が、mRNAの翻訳効率に大きく影響することが知られている。RBSのこの改変は、ペプチダーゼをコードする遺伝子の転写の減少と組み合せられ得る。
【0057】
ペプチダーゼをコードする遺伝子の発現もまた、遺伝子のコーディング領域中へのトランスポゾンもしくはIS因子の挿入により(米国特許第5,175,107号)、または紫外線照射(UB)の照射もしくはニトロソグアニジン(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)による変異誘発等の従来法により減弱させることができる。さらに、上記したような相同組換えを用いる遺伝子置換による部位特異的変異の導入もまた、宿主中で複製し得ないプラスミドで行うことができる。
【0058】
「酵素活性が減少された」という語句は、ペプチダーゼの酵素活性が、非改変株、例えば、腸内細菌科、またはより具体的には、エシェリヒア属に属する細菌の野生型株におけるものよりも低いことを意味し得る。例えば、遺伝子をコードするペプチダーゼの酵素活性は、遺伝子不活化により消失させることができる。
【0059】
「ペプチダーゼの活性が減少された」という語句はまた、ペプチド分解活性が、pepA、pepB、pepD、pepE、pepP、pepQ、pepN、pepT、iadA、iaaA(ybiK)、dapE等の野生型遺伝子によりコードされる野生型ペプチダーゼと比較して減少することを意味し得る。
【0060】
改変細菌において、ペプチダーゼの活性は、腸内細菌科、より具体的にはエシェリヒア属に属する非改変細菌における野生型遺伝子によりコードされるペプチダーゼと比較して、少なくとも10%以上、少なくとも30%以上、少なくとも50%以上、少なくとも70%以上、少なくとも90%以上減少させることができる。
【0061】
「ペプチダーゼ活性」または「タンパク質分解活性」という語句は、ペプチド結合の分子内消化の反応を触媒する酵素の活性を意味し得る(R.Beynon(編)およびJ.S.Bond(編),“Proteolytic Enzymes:A Practical Approach”,第2版,Oxford University Press,USA(2001))。
【0062】
微生物のペプチド分解活性は、基質としてのペプチドおよび微生物菌体を培地中に共存させ、次いで、既知の方法(例えば、HPLC解析)により、またはKristjansson M.M.,Activity measurements of proteinases using synthetic substrates (UNIT C2.1) or Akpinar O.およびPenner M.H.,Peptidase activity assays using protein substrates(UNIT C2.2) in Current Protocols in Food Analytical Chemistry(UNIT C2,Proteolytic Enzymes),John Wiley & Sons,Inc.(2002)に記載されるように、ペプチドの残存量を決定することにより測定することができる。
【0063】
ペプチダーゼの酵素活性は、ペプチダーゼの細胞内活性が非改変株と比較して減少するように、染色体中に変異を導入することにより、減少させることができる。遺伝子、またはオペロン構造中の遺伝子上流に対するこのような変異は、遺伝子によりコードされるタンパク質においてアミノ酸置換を生じさせる1個以上の塩基の交換(ミスセンス変異)、停止コドンの導入(ナンセンス変異)、フレームシフトを引き起こす1または2個の塩基の欠失、薬物耐性遺伝子および/または転写終結シグナルの挿入、遺伝子の一部の欠失、あるいは遺伝子全体の欠失であり得る(Qiu Z.およびGoodman M.F.,J.Biol.Chem.,1997,272:8611−8617;Kwon D.H.ら,J.Antimicrob.Chemother.,2000,46:793−796)。
【0064】
「ペプチダーゼをコードする不活化された遺伝子」という語句は、改変遺伝子が完全に不活性である、または非機能的であるペプチダーゼをコードすることを意味し得る。改変DNA領域が、遺伝子の一部または全体の欠失、遺伝子の読み枠の変更、ミスセンス/ナンセンス変異の導入、またはプロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、リボソーム結合部位等を含む遺伝子隣接領域の改変に起因して、遺伝子を天然に発現し得ないこともまた可能である。遺伝子の不活化はまた、UV照射もしくはニトロソグアニジン(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)、部位特異的変異誘発、相同組換えを用いる遺伝子破壊、または/および「Red駆動性組込み」または「λRed媒介組込み」とも呼ばれる挿入−欠失変異誘発(Yu D.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97(12):5978−83;Datsenko K.A.およびWanner B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97(12):6640−45)を用いる変異誘発処理等の従来法により行うことができる。
【0065】
「組換えDNAを含むように改変された細菌」という語句は、例えば、形質転換、トランスフェクション、感染、結合(conjugation)、および接合伝達(mobilization)等の従来法により、外因性DNAを含むように改変された細菌を意味し得る。タンパク質をコードするDNAによる細菌の形質転換、トランスフェクション、感染、結合、または接合伝達は、DNAによりコードされるタンパク質の合成能を細菌に付与することができる。形質転換、トランスフェクション、感染、結合、および接合伝達の方法としては、報告されている任意の既知の方法が挙げられる。例えば、DNAに対するエシェリヒア・コリ K−12菌体の透過性を向上させるために受容細胞を塩化カルシウムで処理する方法が、効率的なDNA形質転換およびトランスフェクションのために報告されている(Mandel M.およびHiga A.,Calcium−dependent bacteriophage DNA infection,J.Mol.Biol.,1970,53:159−162)。特化および/または一般化した形質導入の方法が記載されている(Morse M.L.ら,Transduction in Escherichia coli K−12,Genetics,1956,41(1):142−156;Miller J.H.,Experiments in Molecular Genetics.Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor La.Press,1972)。例えば、「Mu駆動性組込み/増幅」(Akhverdyanら,Appl.Microbiol.Biotechnol.,2011,91:857−871)、「Red/ET駆動性組込み」または「λRed/ET媒介組込み」(Datsenko K.A.およびWanner B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2000,97(12):6640−45;Zhang Y.,ら,Nature Genet.,1998,20:123−128)といった、宿主ゲノム中へのDNAの無作為および/または標的化組込みのための方法を適用することができる。さらに、Mu駆動性複製転移(Akhverdyanら,Appl.Microbiol.Biotechnol.,2011,91:857−871)および所望の遺伝子の増幅を生じるrecA依存組換えに基づく化学誘導染色体進化(Tyo K.E.J.ら,Nature Biotechnol.,2009,27:760−765)に加えて、所望の遺伝子を複数挿入するために、転移、部位特異的および/または相同Red/ET媒介組換え、ならびに/あるいはP1媒介汎用形質導入の異なる組合せを利用する別の方法を用いることができる。(例えば、Minaevaら,BMC Biotechnology,2008,8:63;Koma D.ら,Appl.Microbiol.Biotechnol.,2012,93(2):815−829を参照)。
【0066】
本発明の細菌は、L−アミノ酸α−リガーゼ(Lal)をコードする遺伝子、またはフェニルアラニンの生合成に関与する1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルが向上する様式において、さらに改変することができる。このようなタンパク質の例としては、コリスミ酸ムターゼ−プレフェン酸デヒドラターゼ(CM−PD)、3−デオキシ−D−アラビノヘプツロソン酸−7−リン酸シンテターゼ(DAHPシンテターゼ)、およびシキミ酸キナーゼ(SK)をそれぞれコードするpheA、aroG4、およびaroLが挙げられる(例、日本特許第3225597号を参照)。本明細書中以降、「Lal」という用語は、「フェニルアラニンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子」等の解釈のために、フェニルアラニンの生合成に関与するタンパク質と交換され得る。したがって、このような交換された語句は、本発明を特定するための要件として記載され得る。
【0067】
「Lalをコードする遺伝子の増強された発現」という語句は、野生型または親株等の非改変株と比較して、一細胞当たりの、Lal−コーディング遺伝子によりコードされる分子数が、増加すること、またはこれらの遺伝子によりコードされるタンパク質の一分子当たりの活性(比活性として参照され得る)が、改善することを、意味し得る。上記比較のための参照として供する非改変株の例としては、E.coli MG1655株(ATCC 47076)、W3110株(ATCC 27325)、パントエア・アナナティス AJ13335株(FERM BP−6614)等の腸内細菌科に属する微生物の野生型株が挙げられる。
【0068】
「Lalをコードする遺伝子の増強された発現」という語句はまた、Lalコーディング遺伝子の発現レベルが、非改変株、例えば、野生型または親株におけるレベルよりも高いことを意味し得る。
【0069】
Lalコーディング遺伝子の発現を増強させるために用いることができる方法としては、これらに制限されないが、当業者に既知である遺伝子工学的方法による、細菌ゲノム中(染色体中および/または自己複製プラスミド中)のLalコーディング遺伝子コピー数の増加、ならびに/あるいはエシェリヒア属の細菌におけるLalコーディング遺伝子のコピー数および/または発現レベルを増加させることができるベクター中へのLalコーディング遺伝子の導入が挙げられる。
【0070】
ベクターの例としては、これらに制限されないが、pCM110、pRK310、pVK101、pBBR122、pBHR1等の広範な宿主範囲のベクターが挙げられる。複数コピーのLalコーディング遺伝子もまた、例えば、相同組換え、Mu駆動性組込み等により、細菌の染色体DNA中に導入することができる。相同組換えは、染色体DNAにおいて、配列の複数コピーを用いて行うことができる。染色体DNAにおける複数コピーを有する配列としては、これらに制限されないが、転位エレメントの末端に存在する反復DNAまたは反転DNAが挙げられる。また、Lalコーディング遺伝子をトランスポゾン中に組込み、それを転移させて、染色体DNA中に複数コピーのLalコーディング遺伝子を導入することもまた可能である。Mu駆動性組込みを用いることにより、3コピーを超える遺伝子を、単一動作の間に、染色体DNA中に導入することができる(Akhverdyan V.Z.ら,Biotechnol.(ロシア),2007,3:3−20)。
【0071】
Lalコーディング遺伝子発現の増強はまた、Lalコーディング遺伝子の隣接調節領域の改変、またはネイティブおよび/または改変外来性調節領域の導入により、Lalコーディング遺伝子の発現レベルを増加させることにより達成することができる。調節領域または配列としては、プロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、および転写終結シグナル、抗終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)および他の発現制御エレメント(例、リプレッサーまたはインデューサーが結合する領域、および/または転写および翻訳調節タンパク質のための、例えば、転写されたmRNA中の結合部位)を例示することができる。このような調節配列は、例えば、Sambrook J.,Fritsch E.F.およびManiatis T.,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている。遺伝子発現を制御する領域の改変は、既知の方法(例えば、Akhverdyan V.Z.ら,Appl.Microbiol.Biotechnol.,2011,91:857−871;Tyo K.E.J.ら,Nature Biotechnol.,2009,27:760−765を参照)を用いる、細菌ゲノム中の改変遺伝子のコピー数の増加と組み合わせることができる。
【0072】
Lalコーディング遺伝子発現を増強させるプロモーターの例は、強力なプロモーターであり得る。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージのPまたはPプロモーターは全て、強力なプロモーターであることが知られている。腸内細菌科に属する細菌において高レベルの遺伝子発現を提供する強力なプロモーターを用いることができる。あるいは、プロモーターの効果は、例えば、Lalコーディング遺伝子のプロモーター領域中に変異を導入して強力なプロモーター機能を実現し、それによりプロモーターの下流に位置するLalコーディング遺伝子の転写レベルの増加を生じさせることにより、増強させることができる。さらに、リボソーム結合部位(RBS)、特に開始コドンの直ぐ上流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳能に顕著に影響することが知られている。例えば、開始コドンの前にある3個のヌクレオチドの性質に依存して、発現レベルに20倍の幅が見出された(Gold L.ら,Annu.Rev.Microbiol.,1981:35,365−403;Hui A.ら,EMBO J.,1984:3,623−629)。
【0073】
宿主微生物におけるLalコーディング遺伝子の異種発現の増強は、希少および/または低使用頻度コドンを同義の中および/または高使用頻度コドンに置換することにより、達成することができ、ここで、コドン使用頻度は、生物の細胞における単位時間当たりに翻訳される回数(頻度)、または生物のシークエンスされたタンパク質コーディング読み枠の平均コドン頻度として定義することができる(Zhang S.P.ら,Gene,1991,105(1):61−72)。生物におけるコドン使用頻度は、CUTG(Codon Usage Tabulated from GenBank)の拡張ウェブ版であるコドン使用頻度データベース(Codon Usage Database)において見出すことができる(http://www.kazusa.or.jp/codon/; Nakamura Y.ら,Codon usage tabulated from the international DNA sequence databases:status for the year 2000,Nucl.AcidsRes.,2000,28(1):292)。E.coliでは、このような変異としては、制限されないが、希少ArgコドンAGA、AGG、CGG、CGAのCGTまたはCGCへの置換、希少IleコドンATAのATCまたはATTへの置換、希少LeuコドンCTAのCTG、CTC、CTT、TTAまたはTTGへの置換、希少ProコドンCCCのCCGまたはCCAへの置換、希少SerコドンTCGのTCT、TCA、TCC、AGCまたはAGTへの置換、希少GlyコドンGGA、GGGのGGTまたはGGCへの置換などが挙げられる。低使用頻度コドンの同義の高使用頻度コドンへの置換が好ましい。希少および/または低使用頻度コドンの同義の中または高使用頻度コドンへの置換は、希少コドンを認識する希少tRNAをコードする遺伝子の共発現と組み合わせてもよい。
【0074】
遺伝子および/またはオペロン遺伝子のコピー数、存在または非存在は、例えば、染色体DNAの制限処理、続いて遺伝子配列に基づくプローブを用いるサザンブロッティング、蛍光インサイチュ・ハイブリダイゼーション(FISH)等により、測定することができる。遺伝子および/またはオペロン遺伝子発現のレベルは、ノザンブロッティング、定量的RT−PCT等を含む種々の既知の方法により、測定することができる。また、遺伝子発現のレベルは、ノザンブロッティング、定量的RT−PCR等を含む種々の周知の方法を用いて、遺伝子から転写されるmRNA量を測定することにより、決定することができる。遺伝子によりコードされるタンパク質の量は、SDS−PAGE、続いてイムノブロッティングアッセイ(ウエスタンブロッティング解析)、またはタンパク質試料の質量分光解析等を含む既知の方法により、測定することができる。
【0075】
プラスミドDNAの調製、消化、DNAの連結および形質転換、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドの選択等のための方法は、当業者に周知である通常の方法であり得る。これらの方法は、例えば、Sambrook J.,Fritsch E.F.およびManiatis T.,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、またはGreen M.R.およびSambrook J.R.,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,第4版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012)に記載されている。分子クローニングおよび異種遺伝子発現のための方法は、Bernard R.Glick,Jack J.PasternakおよびCheryl L.Patten,“Molecular Biotechnology:principles and applications of recombinant DNA”,第4版,Washington,D.C:ASM Press(2009);Evans Jr.,T.C.およびXu M.−Q.,“Heterologous gene expression in E. coli”,第1版,Humana Press(2011)に記載されている。
【0076】
「遺伝子に作動可能に連結された」という語句は、調節領域が、目的の核酸分子または遺伝子の塩基配列に、塩基配列の発現、好ましくは塩基配列にコードされる遺伝子産物の発現(例えば、増強された、上昇した、構成的な、基本的な、減弱した、低減された、または抑圧された発現)が可能であるように連結されていることを意味し得る。
【0077】
本明細書中に記載の細菌は、ペプチドの生産能を固有に有する細菌に必要な特性を付与することにより、得ることができる。あるいは、細菌は、既に必要な特性を有する細菌に、ジペプチドの生産能を付与することにより、得ることができる。
【0078】
細菌は、既に述べた特性に加えて、種々の栄養要求性、薬物耐性、薬物感受性、および薬物依存性等の他の特異的な特性を、本発明の範囲を逸脱することなく、有することができる。
【0079】
3.ジペプチドの製造方法
本発明の方法は、酵素法および発酵法とそれぞれ呼ばれる、L−アミノ酸αリガーゼ(Lal)、または当該Lalを含むように改変された腸内細菌科に属する細菌を用いる、ジペプチド、より具体的には、酸性L−アミノ酸をN末端に有するジペプチドの製造方法であり得る。
【0080】
「アミノ酸」という語句は、当業者に既知の通常のアミノ酸、アミノ酸の誘導体、またはそれらの塩を意味し得る。アミノ酸の例は、アミノ基、カルボキシ基、および側鎖基が結合しているCαまたはCβキラル炭素原子をそれぞれ有するα−アミノ酸およびβ−アミノ酸であり得る。β−アミノ酸としては、βAlaを例示することができる。α−アミノ酸としては、タンパク質材料または非タンパク質材料のアミノ酸を例示することができる。タンパク質材料のアミノ酸としては、Cαキラル炭素原子を有する、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、グリシン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、およびL−バリン等のL−アミノ酸、またはその塩を例示することができる。アミノ酸は、保護または未保護形態で用いることができる。保護形態のアミノ酸とは、未保護形態とは対照的に、アミノ基、カルボキシ基、および/または側鎖基に結合した1以上の置換基を有するアミノ酸を意味し得る。結合した置換基を有するアミノ酸は、アミノ酸誘導体と呼ぶことができる。アミノ酸誘導体としては、L−フェニルアラニン低級アルキルエステル等のアミノ酸低級アルキルエステルを例示することができる。低級アルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、およびプロピルエステル等を挙げることができる。
【0081】
「アミノ酸」という語句は、「Lal触媒反応の基質」、または簡素化の理由のため「基質」という語句と同義であり得る。
【0082】
「酸性L−アミノ酸」という語句は、L型のアスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu)、またはそれらの塩を意味し得る。
【0083】
「ジペプチド」という語句は、ペプチド結合を介して連結した、2つのアミノ酸残基、もしくは2つのアミノ酸残基の誘導体、またはそれらの組合せからなる有機分子またはその塩を意味し得る。ジペプチドは、先に特定したアミノ酸またはその誘導体から構成され得る。例えば、「ジペプチド」という語句は、L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸残基がジペプチドのN末端に位置し、かつ同種または異種の別のL−アミノ酸残基がジペプチドのC末端に位置する様式において、2つのタンパク質材料のL−アミノ酸残基により生成するジペプチドを意味し得る。アミノ酸の誘導体、例えば、L−Pheメチルエステル等のL−アミノ酸低級アルキルエステルが、ジペプチドのC末端に位置し得ることもまた、許容される。
【0084】
上記のようなジペプチドは、酸性アミノ酸残基をN末端に有するジペプチドに限定されない。ジペプチドは、式R1−R2により表すことができる。ここで、R1およびR2は、ジペプチドのNおよびC末端にそれぞれ位置し、かつペプチド結合を介して連結されたアミノ酸残基またはその誘導体を意味し得る。R1およびR2としては、L−Ala、L−Arg、L−Asp、L−Asn、L−Cys、Gly、L−Glu、L−Gln、L−His、L−Ile、L−Leu、L−Lys、L−Met、L−Phe、L−Pro、L−Ser、L−Thr、L−Trp、L−Tyr、およびL−Val等のL−アミノ酸、もしくはL−PheOMe等のその誘導体、またはそれらの塩を例示することができる。R1およびR2は、同種または異種のものであってもよい。
【0085】
「ペプチド結合」という語句は、カルボキシ成分と呼ばれる、ある分子のカルボキシ部分が、アミノ成分と呼ばれる、別分子のアミノ部分と反応し、分子の放出を生じた場合に、2つの分子間で生成する共有化学結合−C(O)NH−を意味し得る。例えば、アミノ酸は、水分子の放出と共に、ペプチド結合を生成することができる。
【0086】
任意のカルボキシ成分が、アミン成分の形態における他の基質との縮合によりペプチドを生成し得る限り、使用されてもよい。カルボキシ成分の例としては、L−アミノ酸エステル、D−アミノ酸エステル、L−アミノ酸アミド、およびD−アミノ酸アミド、ならびに未保護のアミノ基を有しない有機酸エステルが挙げられる。また、アミノ酸エステルの例としては、天然に存在するアミノ酸に対応するアミノ酸エステルのみならず、天然に存在しないアミノ酸に対応するアミノ酸エステル、またはそれらの塩が挙げられる。また、アミノ酸エステルの例としては、α−アミノ酸エステル、ならびに異なるアミノ基結合部位を有するβ−、γ−およびω−アミノ酸エステル等が挙げられる。アミノ酸エステルの典型例としては、アミノ酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、iso−プロピルエステル、n−ブチルエステル、iso−ブチルエステル、およびtert−ブチルエステルが挙げられる。また、カルボキシ成分のカルボキシ部分としては、カルボキシル基COOH、またはその誘導体COR(式中、Rは、置換フェニル基、またはクロロ基等のハロゲニル基を意味し得る)を例示することができる。
【0087】
任意のアミン成分が、カルボキシ成分の形態における他の基質との縮合によりペプチドを生成し得る限り、使用されてもよい。アミン成分の例としては、L−アミノ酸、C−保護L−アミノ酸、D−アミノ酸、C保護D−アミノ酸、およびアミンが挙げられる。また、アミンの例としては、天然に存在するアミンのみならず、非天然に存在するアミン、またはそれらの誘導体が挙げられる。また、アミノ酸の例としては、天然に存在するアミノ酸のみならず、非天然に存在するアミノ酸またはそれらの誘導体が挙げられる。これらとしては、α−アミノ酸、ならびに異なるカルボキシ基結合部位を有するβ−、γ−またはω−アミン酸等が挙げられる。
【0088】
3.1.酵素法
酵素法は、上記のようなLalの活性により反応生成物を得る適切な条件下で、L−アミノ酸αリガーゼまたはLal含有物を、同種または異種の1以上のアミノ酸、もしくはその誘導体、またはそれらの塩と接触させる工程を少なくとも含むことができる。
【0089】
本発明で用いられるLalまたはLal含有物をカルボキシ成分およびアミノ成分に作用させる方法は、LalまたはLal含有物、カルボキシ部分を有する分子、およびアミノ部分を有する分子を互いに混合することであってもよい。より具体的には、LalまたはLal含有物を、ジペプチドを生成するカルボキシおよびアミノ成分を含む溶液に加え、それらを反応させる方法を用いてもよい。あるいは、Lal生産細菌を用いる場合には、Lal生成細菌を培養し、細菌または培養培地中にLalを生産および蓄積させ、次いで、カルボキシ成分を有する分子およびアミン成分を有する分子を培地に加える方法を用いてもよい。次いで、生産されたペプチドは、定法により回収し、必要に応じて精製することができる。
【0090】
「Lal含有物」という語句は、Lalを含有する任意の物質を意味し得、その具体的形態の例としては、当該Lal生産細菌の培養物、当該培養物から分離された菌体、菌体処理物(「細菌の菌体処理物」とも呼ばれる)が挙げられる。細菌の培養物とは、細菌を培養して得られるもの、より具体的には、菌体、細菌の培養に用いた培地、および培養された細菌により生成された物質の混合物等を意味し得る。また、菌体は、洗浄し、洗浄菌体として用いてもよい。また、細菌の菌体処理物としては、細菌の菌体を破砕、溶菌、または凍結乾燥したものなどが挙げられ、また、細菌の菌体などを処理して回収される粗酵素、および粗酵素の精製により得られる精製酵素などが挙げられる。精製処理された酵素としては、各種精製法によって得られる部分精製酵素等を使用してもよいし、これらを共有結合法、吸着法、捕捉法等によって固定化した固定化酵素を使用してもよい。また、幾つかの細菌は、その菌によっては、培養中に部分的に溶菌するため、この場合には、培養液上清もまた、Lal含有物として用いることができる。
【0091】
また、野生株を、Lalを含む細菌として用いてもよく、またはLalを発現する遺伝子組換え株を、上記として用いてもよい。細菌は、インタクトな菌体に限られず、アセトン処理菌体、凍結乾燥菌体等の菌体処理物を使用してもよい。共有結合法、吸着法、捕捉法等によって菌体または細菌の菌体処理物を固定化した固定化菌体、ならびに細菌の固定化菌体処理物を使用してもよい。
【0092】
さらに、培養物、培養菌体、洗浄菌体、または菌体を破砕あるいは溶菌させることにより得られる細菌の菌体処理物を用いる場合、ペプチドの生成に関与せずに生成ペプチドを分解する酵素が存在することがしばしばある。この場合、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属プロテアーゼ阻害剤を添加するほうが好ましい場合がある。添加量は、0.1mM〜300mMの範囲内、好ましくは1mM〜100mMの範囲内である。
【0093】
本発明の酵素法の形態例は、本明細書中に記載される形質転換菌体を培地中で培養し、ペプチド精製酵素(Lal)を培地および/または形質転換菌体中に蓄積させる方法である。形質転換体を用いることによりペプチド生成酵素を簡便に大量生産できるため、ジペプチドを、大量かつ迅速に製造することができる。
【0094】
LalまたはLal含有物の量は、目的の効果を発揮する量(有効量)に十分であればよく、この有効量は、当業者であれば簡単な予備実験により容易に決定することができる。Lalを用いる場合、例えば、使用量は、約0.1g/L〜10g/Lであり得るが(例えば、実施例3を参照)、洗浄菌体を用いる場合、使用量は、菌体におけるLal量に応じて、より多くあり得る。
【0095】
「適切な条件」という語句は、Lal触媒反応が進行する(すなわち、反応生成物、例えば、ジペプチドを、カルボキシ成分およびアミノ成分から生成することができる)条件を意味し得る。「適切な条件」という語句は、制限されないが、「酵素」、「アミノ酸」、「基質」、「適切な溶媒」、「高エネルギー分子」、「適切な温度条件」等を含むことができる。
【0096】
「高エネルギー分子」という語句は、Lal触媒反応が適切な条件下で進行するために必要とされる任意の有機または無機分子を意味し得る。通常、高エネルギー分子として、補因子を例示し得る。より具体的には、高エネルギー分子としては、アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP)またはその塩を例示することができる。ナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等の任意の組合せを用いることができる。
【0097】
「適切な溶媒」という語句は、Lal触媒反応が進行できる、すなわち、反応生成物、例えば、ジペプチドを生成することができる任意の溶媒を意味し得る。有機および水性溶媒、または種々の割合のそれらの混合液が適切な溶媒であり得る。適切な溶媒は、本発明のLal酵素;ATP等の補因子;ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムイオン等の金属イオン;サルフェート、クロリド、ホスフェートイオン等のアニオン;L−アミノ酸αリガーゼの活性に必要とされる他の無機および/または有機分子を含有していてもよい。Carmody W.R.J.Chem.Educ.,1961,38(11):559−560に記載されるようなトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、またはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)等を、緩衝剤として、反応混合液中に加えることができる。反応混合液の酸性度(pH)は、6.5〜10.5の間、または7.0〜10.0の間、あるいは7.5〜9.5の間、または8〜9の間に維持してもよい。適切な溶媒は、適切な温度条件に付されてもよい。
【0098】
「適切な温度条件」という語句は、Lal触媒反応が進行できる、すなわち、反応生成物、例えば、ジペプチドを生成できる温度条件を意味し得る。適切な温度条件は、0〜60℃の間、または20〜40℃の間、あるいは25〜37℃の間、または28〜35℃の間であってもよい。
【0099】
出発原料であるカルボキシ成分およびアミン成分の濃度は各々、1mM〜10M、好ましくは0.05M〜2Mであるが、カルボキシ成分に対してアミン成分を等量以上添加したほうが好ましい場合がある。また、基質が高濃度だと反応を阻害するような場合には、反応中にこれらを阻害しない濃度にして逐次添加することができる。
【0100】
ジペプチドが生産され、適切な溶媒中に必要量で蓄積した後、菌体、菌屑および変性タンパク質等の固体を、遠心分離または膜ろ過により培地から除去することができ、次いで、目的のジペプチドを、濃縮、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、晶出等の従来技術の任意の組合せにより、適切な溶媒から回収することができる。
【0101】
酵素の回収および精製
L−アミノ酸αリガーゼは、エシェリヒア属、例えば、E.coli種に属する細菌から精製することができる。細菌からLalを蓄積、回収および精製する方法は、当業者に既知の通常の方法であり得る。
【0102】
細菌は、Lalを生産する本明細書中の以降に記載されるような培養培地中で増殖される。菌体抽出物は、超音波破砕等の物理法、または細胞壁溶解酵素を用いる酵素法を用いて菌体を破砕し、遠心分離により不溶性画分を除去すること等により、菌体から調製することができる。次いで、ペプチド生成酵素は、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィー等の通常のタンパク質精製法を組み合わせることにより、上記様式で得られた菌体抽出溶液を分画することにより、精製することができる。
【0103】
陰イオン交換クロマトグラフィーにおける使用のための担体の例は、Q−セファロース HPまたはDEAE(ジエチルアミノエチル)アガロース(GE healthcare)等であり得る。酵素は、酵素を含有する菌体抽出液を担体充填カラムを介して通過させる場合、7〜8等の中性pH条件下で、非吸着画分において回収することができる。種々の溶出液を、担体に応じて用いることができる。例えば、MonoS HR(GE healthcare)を用いて陽イオン交換クロマトグラフィーを行う場合、酵素を含有する菌体抽出液を、担体充填カラムを介して通過させる。酵素を溶出させるため、カラムを、高い塩濃度を有する緩衝溶液で洗浄することができる。そのとき、塩濃度を逐次増加させてもよいし、または濃度勾配を適用してもよい。生理食塩水溶液として、約0〜0.5MのNaClを適用することができる。必要な場合、酵素は、ゲル濾過クロマトグラフィーにより精製することができる。ゲル濾過クロマトグラフィーにおける使用のための担体の例は、Superdex 200 HRまたはSephadex 200(GE Healthcare)であり得る。
【0104】
上述の精製法では、酵素含有画分は、以降に記載される実施例に示される方法により、各画分のLal活性をアッセイすることにより、検証することができる。
【0105】
3.2.発酵法
本発明の方法はまた、本発明の細菌を培養培地中で培養して、ジペプチドを生産、分泌、培養培地中に蓄積せしめ、培養培地からジペプチドを回収することによる、ジペプチド、より具体的には、酸性L−アミノ酸をN末端に有するジペプチドの製造方法であり得る。
本発明の細菌の培養、培地からのジペプチドの回収および精製等は、微生物を用いてジペプチドまたはアミノ酸を生産する従来の発酵法と同様の様式で行われてもよい。ジペプチド生産用の培養培地は、炭素源、窒素源、無機イオン、および必要とされる他の有機成分を含有する典型的な培地であってもよい。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボース等の糖質、および澱粉の加水分解物;グリセロール、マンニトール、およびソルビトール等のアルコール;グルコン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、およびコハク酸等の有機酸等を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびリン酸アンモニウム等のアンモニウム塩;大豆加水分解物のもの等の有機窒素;アンモニアガス;水性アンモニア等を用いることができる。ビタミンB1等のビタミン、必要物質、例えば、アデニンおよびRNA等の核酸等の有機栄養素、または酵母抽出物等が、たとえ微量であっても適切な量で存在していてもよい。これら以外に、少量のリン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等を、必要に応じて、加えてもよい。
【0106】
本発明の細菌のジペプチド生産能を向上させるため、培養培地にさらに、アミノ酸またはアミノ酸誘導体、補因子、および他の(生物)化学品を補充することができる。例えば、細菌がAsp−Pheジペプチドを生産する能力を向上させるため、培養培地に、さらなる量のL−PheおよびL−Aspを補充してもよい。
【0107】
培養は、好気性条件下で16〜72時間行うことができる。培養中の培養温度は、15〜45℃の範囲、または28〜37℃の範囲内で制御することができる。酸性度(pH)は、無機または有機の酸性またはアルカリ性物質、ならびにアンモニアガスを用いることにより、5〜6の間、または6.5〜7.2の間に調整することができる。
【0108】
培養後、菌体および菌屑等の固体は、遠心分離または膜ろ過により、液体培地から除去することができ、次いで、目的のジペプチドを、濃縮、イオン交換クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、晶出等の従来技術の任意の組合せにより、発酵液から回収することができる。
【実施例】
【0109】
下記の非限定的な実施例を参照しつつ、本発明をより詳細に以下に説明する。
【0110】
実施例1.ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis) NBRC 100599由来のBBR47_51900およびスチグマテラ・アウランチアカ(Stigmatella aurantiaca)DW4/3−1由来のStaur_4851のクローニング
機能未知タンパク質BBR47_51900およびStaur_4851をコードする遺伝子の一次構造を、E.coliでの発現のために最適化した。ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis) NBRC 100599由来のBBR47_51900およびスチグマテラ・アウランチアカ(Stigmatella aurantiaca)DW4/3−1由来のStaur_4851をコードする遺伝子を、SlonoGeneTM遺伝子合成サービス(http://www.sloning.com/)により合成し、最適化配列を有する標的遺伝子を含む合成XbaI−EcoRIフラグメントを保持するpSlo.Xプラスミドセットとして移入した。BBR47_51900およびStaur_4851タンパク質をコードする最適化配列の遺伝子を保持するXbaI−EcoRIフラグメントを、それぞれ、配列番号19および20に示す。
【0111】
pET−HT−BBRおよびpET−HT−STAプラスミドを構築するために、対応するpSlo.XプラスミドのXbaI−EcoRIフラグメントを、XbaIおよびEcoRIでの消化により切り出し、次いで、同じ制限酵素により消化されたpET15(b+)ベクター(Novagen,USA)に連結した。
【0112】
実施例2.His6タグ付加BBR47_51900およびStaur_4851の発現および精製
プラスミドpET−HT−BBRおよびpET−HT−STAを、Ca2+依存性形質転換により、BL21(DE3)株(Novagen,USA)に導入して、BL21(DE3)[pET−HT−BBR]およびBL21(DE3)[pET−HT−STA]株を構築した。製造業者の使用説明書にしたがい、“Bio−Rad”電気穿孔器(USA)(番号165−2098,バージョン2−89)を用いて、電気形質転換を行った。BL21(DE3)[pET−HT−BBR]およびBL21(DE3)[pET−HT−STA]株の菌体を各々、37℃および150rpmでLBブロス中でOD540約1まで増殖させた(Sambrook,J.およびRussell,D.W.(2001) Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版).Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される溶原性ブロスとも呼ばれる)中で増殖させた。イソプロビル−β−D−チオ−ガラクトシド(IPTG)を1mMの終濃度で加え、細胞培養物を37℃および150rpmで2時間インキュベートした。誘導された細胞を1Lの培養ブロスから採取し、60〜80mLのHT−1緩衝液(20mM NaHPO,0.5M NaCl,20mM イミダゾール,pH7.4,NaOHで調整)中に再懸濁し、フレンチ−プレス(Thermo Spectronic)を用いて2000Psi(約140バール)下で破砕した。破砕屑を4℃および13000rpmで2回遠心分離し、続いて0.45μmフィルター(CHROMAFIL Xtra CA−45/25,MACHEREY−NAGEL GmbH)を通じて濾過することにより除去した。粗タンパク質溶液を、総容量1mlの固定金属アフィニティー・クロマトグラフィー(IMAC)に予め充填し、かつHT−I緩衝液で平衡化したHiTrapキレートカラム(GE Healthcare)にロードした。製造業者の推奨にしたがい、IMACを行った。活性画分を回収し、合わせて、SB緩衝液(20mM Tris−HCl,120mM NaCl,1mM β−メルカプトエタノール,15%グリセロール,pH7.5)で平衡化したPD10カラム(GE Healthcare)を用いて脱塩した。タンパク質調製物を一定分量(200μL)に分け、−70℃で保存した。BIO−RADタンパク質 ASSAY(BIO−RAD,USA)を用いて、タンパク質濃度を決定した。
【0113】
実施例3.BBR47_51900およびStaur_4851の基質特異性の予備解析
BBR47_51900およびStaur_4851の基質特異性を、酵素含有反応混合液、ならびにL−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、グリシン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、およびL−バリン等の標準L−アミノ酸、またはその塩(同種または異なる2種)において試験した。総容量50μLの反応混合液の組成は、他に指摘しない限り、以下のとおりであった。
【0114】
BBR47_51900またはStaur_4851 4μg
Tris−HCl,pH8.0 50mM
第1L−アミノ酸 10mM
第2L−アミノ酸 10mM
アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP) 10mM
MgSOx7HO 10mM
50μLにする
【0115】
反応を、32℃で15分間行った。反応混合液のうち1〜2μLを、2−プロパノール:アセトン:250mM アンモニア:HOの100:100:12:28混合液を移動相として用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。ニンヒドリンのアセトン溶液(0.3%,w/v)を可視化試薬として用いた。検出を540nmで行った。反応混合液の展開後に、TLCプレート上の新たなスポットを検出した。これは、以下を含んでいた:
1)BBR47_51900およびL−Glu/L−Glu、またはL−Glu/L−Asp、またはL−Glu/L−Val、またはL−Glu/L−Ile、またはL−Asp/L−Ile、またはL−Asp/L−Val(図2−4);
2)Staur_4851およびL−Asp/L−Phe、またはL−Asp/L−Trp、またはL−Asp/L−Thr)(図5および6)。
【0116】
得られた結果は、BBR47_51900およびStaur_4851が、L−GluおよびL−Asp等の酸性アミノ酸の他のL−アミノ酸との連結を触媒できることを示す。
【0117】
実施例4.BBR47_51900およびStaur_4851により合成されたジペプチドのHPLC解析による決定
BBR47_51900およびStaur_4851により合成されたジペプチドを、総容量400μLの反応混合液のHPLC解析を用いて決定した。反応混合液は、以下を含んでいた:
BBR47_51900またはStaur_4851 160μg
Tris−HCl,pH9.0 50mM
L−AspまたはL−Glu 10mM
L−PheまたはL−PheOMe、L−Val、L−Trp 10mM
アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP) 10mM
MgSOx7HO 10mM
ここで、Meはメチル基を示す。
【0118】
反応を、32℃で15分間行った。次いで、0.5mLの反応混合液を、Amicon Ultra−0.5mL,3K遠心分離フィルター(Millipore,#UFC500396)を通じて濾過し、HPLC解析に供した。
【0119】
条件は、以下のとおりであった:
装置:HITACHI L−2000 シリーズ
カラム:Inertsil ODS−3 4.6x250mm,5mm(GL Sciences Inc.)
温度:40℃
緩衝液:
A(混合物L−Asp/L−ValおよびL−Glu/L−Val):0.1M KHPO(pH2.2)+5mM オクタンスルホネート,ナトリウム塩:CHCN=4:1(v/v)
B(混合物L−Asp/L−Phe):0.1M KHPO(pH2.2)+5mM オクタンスルホネート,ナトリウム塩:CHCN=7:3(v/v)
C(混合物L−Asp/L−PheOMe、L−Asp/L−Trp、およびL−Val/L−Val):0.1M KHPO(pH2.2)+5mM オクタンスルホネート,ナトリウム塩:CHCN=3:2(v/v)
D(混合物L−Phe/L−Phe):0.1M KHPO(pH2.2)+5mM オクタンスルホネート,ナトリウム塩:CHCN=1:1(v/v)
勾配プロフィール:均一
流速:1.5mL/min
注入量:10μL
検出:UV210nm
【0120】
HPLCに用いた化学物質は、以下のとおりであった:
L−Asp(L−アスパラギン酸,ナトリウム塩):ナカライテスク株式会社 #03504−75
L−Phe(L−フェニルアラニン):ナカライテスク株式会社 #26901−35
L−Val(L−バリン):味の素株式会社 #317LG13
L−Trp(L−トリプトファン): 味の素株式会社 #0000002205
L−PheOMe(L−フェニルアラニン,メチルエステル塩酸塩):東京化成工業株式会社 #P1278
ATP:オリエンタル酵母工業株式会社 #45142000
MgSOx7HO:純正化学株式会社 #83580−0301
αAsp−Phe(H−Asp−Phe−OH):Bachem G−1620
βAsp−Phe(H−Asp(Phe−OH)−OH):Bachem G−4750
αAsp−Asp(H−Asp−Asp−OH):Bachem G−1565
Phe−Asp(H−Phe−Asp−OH):Bachem G−2870
Phe−Phe(H−Phe−Phe−OH):Bachem G−2925
αAsp−Val(H−Asp−Val−OH):Bachem G−1635
Val−Asp(H−Val−Asp−OH):Bachem G−3510
Val−Val(H−Val−Val−OH):Bachem G−3595
αGlu−Val(H−Glu−Val−OH):Bachem G−2010
γGlu−Val(H−Glu(Val−OH)−OH):Bachem G−2015
Val−Glu(H−Val−Glu−OH):Bachem G−3520
αGlu−Glu(H−Glu−Glu−OH):Bachem G−1915
αAspartame(H−Asp−Phe−OMe):Bachem G−1545
βAspartame:(H−Asp(Phe−OMe)−OH):Bachem G−3725
Asp−Trp(H−Asp−Trp−OH):Bachem G−3705
【0121】
αGlu−Val、γGlu−Val、αAsp−Val溶液(各々10mM)、およびαAsp−Phe、βAsp−Phe溶液(各々5mM)を、HPLC解析のために調製した。生成したジペプチドの濃度を、対応する検量線を用いて決定した。標準試料の各溶液を、LC−QTOF/MS/MS解析のために50倍または100倍に希釈した(実施例5)。
【0122】
反応混合液のHPLC解析の結果を表1に示す。表1から分かるように、BBR47_51900およびStaur_4851は、L−AspおよびL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有するジペプチドの生成を触媒する。
【0123】
実施例5.BBR47_51900により合成されたジペプチドについて、LC−QTOF/MS/MS解析による決定
実施例4に記載されるようにして得られた反応混合液および標準溶液の試料を、LC−QTOF/MS/MS解析に供した。
【0124】
条件は、以下のとおりであった:
装置:LC(Agilent1200SL),MS(Micromass Q−TOF Premier)
LC条件:
カラム:Develosil C30 2.0x250mm,3μm(野村化学)
温度:20℃
緩衝液:
A:HO(0.025%ギ酸)、
B:CHCN(0.025%ギ酸)。
勾配プロフィール:
時間(分) B(%)
0 0
20 2.5
20.1 100
25 100
流速:0.3mL/分
注入量:2〜5μL
【0125】
MS条件:
キャピラリー電圧:3.0kV
コーン電圧:20V
衝突電圧:4V(MS/MS 12V)
ソース温度:80℃
脱溶剤温度:120℃
コーンガス流速:50L/時間
脱溶剤ガス流速:700L/時間。
【0126】
反応混合液のLC−QTOF/MS/MS解析の結果を、図7〜9に示す。図7〜9から分かるように、BBR47_51900は、αAsp−Phe、αAsp−Val、およびαGlu−Valジペプチドの生成を触媒する。
【0127】
実施例6.BBR47_51900およびStaur_4851と同機能である酵素の検索
タンパク質配列のホモログについて配列データベース中で検索するため、およびタンパク質配列のアライメントのため、HMMER法を用いた。この方法は、隠れマルコフモデルプロフィール(HMMプロフィール)と呼ばれる確率モデルを使用する(Finn R.D.ら,HMMER web server:interactive sequence similarity searching,Nucleic Acids Res.,2011,39(ウェブサーバー発行):W29−37)。
【0128】
より古いスコア付け方法論に基づくBLAST、FASTA、および他の配列アライメントおよびデータベース検索ツールと比較して、HMMERは、その根底にある数学的モデルの強みのため、同機能タンパク質等の遠縁ホモログをより優位な精度および信頼性で検出することを目指している。過去には、この強みは、高額なコンピュータ費用を伴ったが、新たなHMMER3プロジェクトでは、HMMERは、BLASTと本質的に同等の速さになった(Finn R.D.ら,HMMER web server: interactive sequence similarity searching, Nucleic Acids Res.,2011,39(ウェブサーバー発行):W29−37)。
【0129】
BBR47_51900およびStaur_4851と同機能である酵素を検索するため、BBR47_51900およびStaur_4851のアライメント(図10)を、タンパク質配列データベース(http://hmmer.janelia.org/)に対する1以上のプロフィールについて検索を可能にする、HMMER3 suiteのHMM検索プログラムに供した。BBR47_51900およびStaur_4851に対する配列アライメントに基づいて、相同性検索に用いられるHMMプロフィールを構築した(モデル1)。見出された最も近い同機能タンパク質の一覧表(ヒット)を、図11)に示す。|Log(E値)|値の分布図の解析より、グループ間の値よりも低いグループのメンバー間で|Log(E値)|値を共有するタンパク質の5つのグループが明らかとなった(図12)。第1のグループはBBR47_51900およびStaur_4851を含み、第2のグループはDESおよびBCEを含み、第3のグループはBMYを含み、第4のグループはBTHを含み、第5のグループはBURを含む。残りのタンパク質は、推測|Log(E値)|値を有する未分類ホモログである。AMEおよびSFLタンパク質を、ネガティブコントロールとして、このような未分類ホモログから選んだ。
【0130】
第1(BBR47_51900、Staur_4851)ならびに第2(DESおよびBCE)グループのタンパク質が同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEのアライメント(図13)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル2)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成することができる(図14)。この一覧表は、|Log10(E値)|値の分布図により記載されており、最初の図とは異なる(図15)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEを含む第1のグループ;BMYおよびBTHを含む第2のグループ;ならびにBURを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得、ここで、AMEは、第1のグループにより近く(番号47(図12)から番号33(図15)への位置の変更)、SFLは、第1のグループよりも離れている(番号49(図12)から番号62(図15)への位置の変更)。
【0131】
第1(BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCE)ならびに第2(BMY等)グループが同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメント(図13)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル3)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(図17)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYを含む第1のグループ;BTHを含む第2のグループ;ならびにBURを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得、ここで、AMEは番号37の位置にあり、SFLは番号65の位置にある(図17)。
【0132】
第1(BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMY)ならびに第2(BTH)グループが同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメント(図18)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル4)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(図19)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHを含む第1のグループ;BURを含む第2のグループ;AMEを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得、ここで、SFLは番号73の位置にある(図19)。
【0133】
第1(BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTH)ならびに第2(BUR)グループが同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメント(図20)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル5)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(図21)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BURを含む第1のグループ;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHを含む第2のグループ;AMEを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得、ここで、SFLは番号104の位置にある(図21)。
【0134】
第1(BUR)、第2(BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTH)、ならびに第3(AME)グループが同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメント(図22)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル6)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(図23)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BURを含む第1のグループ;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびAMEを含む第2のグループ等の2つのグループを含み得、ここでSFLは番号65の位置にある(図23)。
【0135】
第1(BUR)、第2(BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびAME)グループ、ならびにSFLタンパク質が同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメント(図24)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル7)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(図25)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BURを含む第1のグループ;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびAMEを含む第2のグループ;ならびに番号38の位置にあるSFLを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得る(図25)。
【0136】
同様の様式において、L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有し、かつ任意の他のL−アミノ酸またはその誘導体をC末端に有するジペプチドを合成し得る同機能L−アミノ酸αリガーゼの一覧表を作成することができる。BBR47_51900およびStaur_4851タンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル1)を構築する場合、|Log10(E値)|≧233を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル2)を構築する場合、|Log10(E値)|≧196を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル3)を構築する場合、|Log10(E値)|≧182を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル4)を構築する場合、|Log10(E値)|≧175を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル5)を構築する場合、|Log10(E値)|≧162を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル6)を構築する場合、|Log10(E値)|≧142、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル7)を構築する場合、|Log10(E値)|≧128を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる(図26)。ここで、E値は、HMM検索プログラムのパラメータである(Finn R.D.ら,HMMER web server:interactive sequence similarity searching,Nucleic Acids Res.,2011,39(ウェブサーバー発行):W29−37)。
【0137】
実施例7.DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMY酵素のクローニング、発現および精製
DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質をコードする遺伝子の一次構造を、遺伝子デザイナー・プログラムの「バック翻訳」機能(Villalobos A.ら,Gene Designer:a synthetic biology tool for constructing artificial DNA segments,BMC Bioinformatics,2006,7:285)を用いて、E.coliにおける発現のために最適化した。全てのコンストラクトは、SlonoGeneTM遺伝子合成サービス(http://www.sloning.com/)により合成し、最適化配列を有する標的遺伝子を含む合成XbaI−EcoRIフラグメントを保持するpSlo.Xのセットとして移入した。DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYをコードする最適化配列を有する遺伝子を保持するXbaI−EcoRIフラグメントを、それぞれ、配列番号21、22、23、24、25、26および27に示す。
【0138】
DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質をE.coliで発現・精製することができ、そして実施例1−5においてBBR47_51900およびStaur_4851について記載したように、それらの活性を調べることができる。
【0139】
実施例8.E.coliペプチダーゼ欠損1−6Δ株の構築
8.1.E.coliペプチダーゼ欠損1−5Δ株の構築
ΔpepB変異を有するE.coli BW25113株(E.coli BW25113株:Keioコレクション,株番号ME9062)(ΔpepB変異を有するE.coli BW25113株:Keioコレクション,株番号JW2507;E.coli遺伝子保存センター,エール大学,ニュー・ヘヴン,米国,アクセッション番号CGSC9995)において、iadA遺伝子を欠失させた(E.coli 1Δ株)。この目的のため、λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP1(配列番号28)およびP2(配列番号29)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattL(Katashkina Zh.I.ら.,Mol.Biol.(Mosk.),2005,39(5):823−831)を鋳型として用いて、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により増幅した。得られたDNAフラグメントを、製造業者の使用説明書にしたがい、「Bio−Rad」電気穿孔器(米国)(番号165−2098,バージョン2−89)を用いる電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB)/pKD46株中に導入した。組換えプラスミドpKD46(Datsenko K.A.およびWanner B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97:6640−6645)を温度感受性レプリコンとともに、λRed媒介組換え系を担うλファージ由来遺伝子のドナーとして用いた。pKD46プラスミドを、上記の方法(Datsenko K.A.およびWanner B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97:6640−6645)により、E.coli BW25113(ΔpepB)中に組み込んで、E.coli BW25113(ΔpepB)/pKD46株を得ることができる。あるいは、組換えプラスミドpKD46を含むE.coli BW25113(ΔpepB)株を、E.coli遺伝子保存センター、エール大学,ニュー・ヘヴン,米国,アクセション番号CGSC7739から得ることができる。
【0140】
E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattR−cat−λattL)形質転換体は、cat遺伝子によりコードされるクロラムフェニコール(Cm)に耐性であり、かつiadAの代わりに「切出し可能」なクロラムフェニコール耐性マーカー(Cmマーカー)を染色体中に保持する。Cmマーカーを、(Katashkina Zh.I.ら,Mol.Biol.(Mosk.),2005,39(5):823−831)に記載されるように切り出して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB)株(E.coli 2Δ株)株を構築した。
【0141】
pepE遺伝子を、BW25113(ΔpepB, iadA::λattB)株において欠失させた。λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP3(配列番号30)およびP4(配列番号31)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattLプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したような電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattR−cat−λattL)形質転換体から切り出して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB)株(E.coli 3Δ株)を構築した。
【0142】
ybiK遺伝子を、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB)株において欠失させた。λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP5(配列番号32)およびP6(配列番号33)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattLを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したような電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB)/pKD46株に導入した。Cmマーカーを、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattR−cat−λattL)形質転換体から切り出して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB)株(E.coli 4Δ株)を構築した。
【0143】
dapE遺伝子を、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB)株において欠失させた。λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP7(配列番号34)およびP8(配列番号35)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattLプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したような電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattR−cat−λattL)形質転換体中に導入して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB)株(E.coli 5Δ株)を構築した。
【0144】
このようにして、1〜5個の欠失したペプチダーゼをコードする遺伝子を有するE.coli株(E.coli 1−5Δ株)を構築した。
【0145】
8.2.E.coli 5Δ株における特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性の解析
特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を解析するため、人工ジペプチドDP3(L−Asp−L−5−フルオロトリプトファン)を合成した(ロシア科学アカデミーの生物有機化学研究所部門(BIBCh),プーシチノ,ロシア連邦)。ペプチド加水分解活性を、インビトロおよびインビボで試験した。
【0146】
インビトロ研究については、E.coli BW25113およびE.coli 5Δの菌体を、OD595nm 約1の菌体密度になるまで、LBおよびM9塩+グルコース(0.2%,w/v)培地(Sambrook, J.およびRussell,D.W.(2001) Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版) Cold Spring Harbor Laboratory Press)で37℃にて増殖させた。増殖菌体を、遠心分離(4℃,10000rpm)により採取し、緩衝液E(50mM Tris−HCl pH8.0,20mM NaCl)中に再懸濁し、超音波処理により破砕し、続いて遠心分離(14000g,4℃,20分)して、細胞屑を除去した。粗タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンを標品として用いて、Bradfordタンパク質アッセイ(Bradford M.M.,Anal. Biochem.,1976,72:248−254)を用いて決定することができる。得られた粗タンパク質調製物を用いて、DP3加水分解活性を試験した。
【0147】
反応混合液は、以下を含んでいた:
50mM Tris−HCl pH8.0、
20mM NaCl、
5mM DP3ジペプチド、
1mM ZnSOまたはMnCl
24μg粗タンパク質調製物、
O 総容量10μLまで。
【0148】
反応混合液を、37℃で異なる時間インキュベートした。DP3加水分解活性を、放出される5−フルオロトリプトファンの定量的TLC解析により測定した(図27,表4)。移動相として2−プロパノール:アセトン:HOの25:25:4の混合液を用いた。ニンヒドリンのアセトン溶液(0.3%,w/v)を、可視化試薬として用いた。得られた結果は、アスパラギン酸ペプチド加水分解活性を5Δ株において測定できることを示す。このことは、E.coli 5Δ株におけるDP3加水分解活性を有する未知のペプチダーゼが存在することを示す。
【0149】
インビボ研究については、構築したペプチダーゼ欠損E.coli 5Δ株に対するDP3ジペプチドの毒性を試験した(図28)。E.coli BW25113およびE. coli 5Δ株の菌体を、OD555nm 約2の菌体密度になるまで、D−グルコースまたはグリセロール(0.4%,w/v)を補充したM9塩培地で増殖させた。菌体バイオマスを希釈し、約106菌体を、D−グルコースまたはグリセロール(0.4%,w/v)、およびDP3ジペプチドを補充したM9塩寒天上に撒いた。プレートを、37℃で48時間(D−グルコースに対する)または72時間(グリセロールに対する)インキュベートした(表5)。可視化解析は、pepB、iadA、pepE、ybiKおよびdapE遺伝子によりコードされる5個の既知のアスパラギン酸ペプチド加水分解酵素の欠失が、E.coli 5Δ株に対するDP3毒性を減少させることを示した(M9塩+D−グルコース培地で増殖した、BW25113に対する6μMから5Δ株に対する30μMまで)。50μMまでDP3濃度を上昇させると、E.coli 5Δ株の増殖が停止した。このことは、細胞内DP3ペプチダーゼ活性が残存していることを示唆する。
【0150】
8.3.特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を有するE.coli Δ5株における残存ペプチダーゼの同定
特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を有する残存細胞内ペプチダーゼを同定するため、以下の手法を用いた。E.coli 5Δ株の菌体を、D−グルコース(0.4%,w/v)を補充したM9塩培地4L中で37℃で一晩増殖させた。増殖した菌体を、遠心分離(4℃,10000rpm)により採取し、100mLの緩衝液F(20mM Tris−HCl pH7.5,20mM NaCl)中に再懸濁した。
【0151】
精製プロトコルは、以下のとおりであった:
工程1.フレンチ−プレス(Termo Spectronic)を2回通し、続いて遠心分離(14000g,4℃,20分)により、菌体を破砕して菌体屑を除去した。得られた粗タンパク質調製物を、緩衝液F(20mM Tris−HCl pH7.5,20mM NaCl)で平衡化したDEAE FF 16/10カラム(20mL)(GE Healthcare)に充填した。緩衝液F(各々10mL)において線形勾配のNaCl(20カラム容量において20〜600mM)により流速1mL/分で溶出し、回収し、実施例8.2.に記載されるように解析した。活性画分16〜21が見出された。
【0152】
工程2.回収画分16〜21からのタンパク質を、飽和(60%)(NHSOにより沈殿させ、2mLの緩衝液F中に再懸濁させ、緩衝液G(20mM Tris−HCl pH7)で平衡化した標準Superdex HR10/30Aカラム(GE Healthcare)に充填した。緩衝液Gを用い、均一な溶出を流速0.5mL/分で行った。0.5ml画分(各々0.5mL)を回収し、実施例8.2.に記載されるように解析した。活性画分(12〜13)を見出した。
【0153】
工程3.回収画分12〜13(工程2)からのタンパク質を、緩衝液G(20mM Tris−HCl pH7)で平衡化した標準Sourse15Qカラム(1.6mL)(GE Healthcare)に充填した。緩衝液Gにおいて線形勾配のNaCl(20カラム容量において0〜400mM)により、流速0.5mL/分で溶出した。画分(各々0.5mL)を回収し、実施例8.2.に記載されるように解析した。活性画分(15〜17)を見出した。精製データを表6に要約する。
【0154】
工程4.特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を有するペプチダーゼを同定するため、幾つかの画分(15〜17)からのタンパク質を、SDS−PAGE(Laemmli U.K.,Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4,Nature,1970,227:680−685)に供した。活性溶出のプロフィールを、タンパク質溶出のものと比較した。活性および溶出プロフィールが同一であるタンパク質が1種のみ見出された。
【0155】
精製タンパク質を、SDSゲルから抽出し、トリプシンで消化した(Govorun V.M.ら,Biochemistry(Mosc.),2003,68(1):42−49)。(Govorun V.M.ら,Biochemistry(Mosc.),2003,68(1):42−49)に記載されるように、MALDI−TOFを用いて消化混合液を質量分析した。単離されたタンパク質で得られた質量スペクトルは、E.coliのアミノペプチダーゼA/I(PepA)について得られたものと一致した。したがって、第6のペプチダーゼが、E.coli 5Δ株において見出された。
【0156】
8.4.E.coliペプチダーゼ欠損6Δ株の構築
PepA遺伝子を、実施例8.1.に記載されるように、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB)株において欠失させた。λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP9(配列番号36)およびP10(配列番号37)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattLプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したような電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB)/pKD46株中に導入して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB,pepA::λattL−cat−λattR)株(E.coli 6Δ株)を構築した。
【0157】
8.5.E.coli 6Δ株における特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性の解析
特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を、実施例8.2.で上記したように、インビトロで解析した。得られた結果(表4)は、4〜5Δ株と比較してより低いアスパラギン酸ペプチド加水分解活性が6Δ株において測定できることを示す。
【0158】
実施例9.Lal活性を有する改変E.coli 5Δおよび6Δ株を用いる、L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有するジペプチドの発酵生産
L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有するジペプチドを、腸内細菌科の細菌、より具体的には、E.coli等のエシェリヒア属に属する、ジペプチド生産能を有する細菌を用いて、必要なアミノ酸(例であり、これに限定されない)を補充した、またはこれを欠く培地中で生産した。ジペプチド生産菌は、L−アミノ酸αリガーゼ活性を有するようにさらに改変された、ペプチダーゼ活性を欠損する上記E.coli 5Δまたは6Δ株である。ジペプチド生産株は、さらに BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYからなる群より選ばれるLalをコードする遺伝子を、E.coliの染色体に導入するか、またはLalをコードする遺伝子を有するプラスミドにおいて、細菌の菌体中に導入する。Lalをコードする遺伝子を、プロモーター下に配置する。
【0159】
Lalをコードする遺伝子を保持する改変E.coli 5Δまたは6Δ株、およびコントロール5Δまたは6Δ株を各々、Luria−Bertaniブロス(Sambrook,J.およびRussell,D.W.(2001) Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版).Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される溶原性ブロスとも呼ばれる)中で、28〜37℃で18〜72時間培養する。Lalをコードする遺伝子を保持するE.coli 5Δまたは6Δ株を、20×200mm試験管における2mLの発酵培地中に接種し、回転式振盪機において250rpmにて28〜37℃で18〜72時間培養する。
【0160】
発酵培地の組成は、以下(g/L)である:
グルコース 5〜40
NaCl 0.8
(NHSO 22
HPO 2.0
MgSOx7H 0.8
MnSOx5H 0.02
FeSOx7H 0.02
塩酸チアミン 0.002
酵母抽出物 1.0〜2.0
CaCO 30
L−Phe 0〜100(mM)
L−Asp 0〜100(mM)
【0161】
発酵培地を、116℃で30分間滅菌する。但し、グルコースおよびCaCOは別々に以下のとおり滅菌する:グルコースは110℃で30分間、CaCOは116℃で30分間。pHを、KOH溶液により5〜8に調整する。
【0162】
培養後、蓄積したジペプチドを、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定する。TLCプレート(10×20cm)を、非蛍光指示薬を含むSorbfilシリカゲル(Sorbpolymer、クラスノダール,ロシア連邦)0.11mm層で被覆する。TLCプレートを、100:100:12:28の2−プロパノール:アセトン:250mMアンモニア:HOからなる移動相で展開する。ニンヒドリンのアセトン溶液(0.3%,w/v)を、可視化試薬として用いる。検出を540nmで行う。
【0163】
参考例1
BBR47_51900およびStaur_4851タンパク質の既知L−アミノ酸αリガーゼ(Lal)との多重アライメントを表2(同一性)および表3(類似性)に示す。表2および3から分かるように、BBR47_51900およびStaur_4851タンパク質は、既知のLalと、25%以下の同一性値(表2)、および43%以下の類似性値(表3)を有する。
【0164】
参考例2
BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質についてのペア−ワイズ・アライメント・データを表7(同一性)および表8(類似性)に示す。表7および8から分かるように、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質は、25%以下の同一性値(表7)、および44%以下の類似性値(表8)を有する。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
タンパク質の略語:
1−BBR47_51900(NCBI参照配列:YP_002774671.1);
2−Staur_4851(NCBI参照配列:ADO72629.1);
3−TDE2209(NCBI参照配列:NP_972809.1);
4−BL00235(NCBI参照配列:YP_081312.1);
5−plu1218(NCBI参照配列:NP_928530.1);
6−YwfE(UniProtKB/Swiss−Prot:P39641.1);
7−Rsp1486(NCBI参照配列:NP_523045.1);
8−NP_900476(NCBI参照配列:NP_900476.1);
9−Aple02000835(NCBI参照配列:ZP_00134462.2);
10−SMU1321c(NCBI参照配列:NP_721690.1);
11−YP_816266(NCBI参照配列:YP_816266.1);
12−YP_001544794(NCBI参照配列:YP_001544794.1);
13−YP_077482(NCBI参照配列:YP_077482.1);
14−BAH56723(GenBank:BAH56723.1);
15−NP_358563(NCBI参照配列:NP_358563.1);
16−YP_910063(NCBI参照配列:YP_910063.1);
17−BAG72134(GenBank:BAG72134.1);
18−plu1440(NCBI参照配列:NP_928738.1);
19−AAZ37741(GenBank:AAZ37741.1).
【0168】
【表3】
【0169】
タンパク質の略語:
1−BBR47_51900(NCBI参照配列:YP_002774671.1);
2−Staur_4851(NCBI参照配列:ADO72629.1);
3−TDE2209(NCBI参照配列:NP_972809.1);
4−BL00235(NCBI参照配列:YP_081312.1);
5−plu1218(NCBI参照配列:NP_928530.1);
6−YwfE(UniProtKB/Swiss−Prot:P39641.1);
7−Rsp1486(NCBI参照配列:NP_523045.1);
8−NP_900476(NCBI参照配列:NP_900476.1);
9−Aple02000835(NCBI参照配列:ZP_00134462.2);
10−SMU1321c(NCBI参照配列:NP_721690.1);
11−YP_816266(NCBI参照配列:YP_816266.1);
12−YP_001544794(NCBI参照配列:YP_001544794.1);
13−YP_077482(NCBI参照配列:YP_077482.1);
14−BAH56723(GenBank:BAH56723.1);
15−NP_358563(NCBI参照配列:NP_358563.1);
16−YP_910063(NCBI参照配列:YP_910063.1);
17−BAG72134(GenBank:BAG72134.1);
18−plu1440(NCBI参照配列:NP_928738.1);
19−AAZ37741(GenBank:AAZ37741.1)
【0170】
【表4】
【0171】
略号:
WT−BW25113;
4Δ−BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB);
5Δ−BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB;
6Δ−BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB,pepA::λattL−cat−λattR).
【0172】
【表5】
【0173】
【表6】
【0174】
【表7】
【0175】
【表8】
【0176】
実施例10.ATP再生系を用いる、BBR47_51900およびStaur_4851によるAsp−Pheの酵素生産
高度に濃縮されたATPが酵素反応を阻害することを防ぐため、Asp−Pheの生産収率を、ATP再生のためのホスホエノールピルビン酸およびピルビン酸キナーゼを含むBBR47_51900およびStaur_4851の反応混合液において試験した。総容量1mlの反応混合液の組成は、以下のとおりであった。
【0177】
BBR47_51900またはStaur_4851 0.15U
Tris−HCl pH9.0 50mM
L−AspNa 100mM
L−Phe 100mM
ATP 10mM
ホスホエノールピルビン酸 100mM
MgSOx7HO 10mM
ピルビン酸キナーゼ 25U
総容量1mLまで
【0178】
反応を、37℃で1〜48時間行った。1mLの反応混合液のうち100μLを、各反応時間でサンプリングした。反応を停止させるために10μLの1M EDTA(pH9.0)が添加された各反応混合液を、HPLC解析に供した。条件は、実施例4に記載されるとおりであった。その結果、BBR47_51900およびStaur_4851は、ATP再生系においてAsp−Pheを生産することができた(表9)。
【0179】
【表9】
【0180】
実施例11.E.coli 7Δ株における特異的なAsp−Phe加水分解活性の解析
11.1.E.coli Asp−Phe加水分解ペプチダーゼ欠損7Δ株の構築
pepD遺伝子を、E.coli JM109株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP11(配列番号38)およびP12(配列番号39)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB)株を構築した。
【0181】
pepE遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP13(配列番号40)およびP14(配列番号41)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepB::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB)株を構築した。
【0182】
iadA遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP15(配列番号42)およびP16(配列番号43)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB)株を構築した。
【0183】
pepA遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP17(配列番号44)およびP18(配列番号45)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB)株を構築した。
【0184】
pepB遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP19(配列番号46)およびP20(配列番号47)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB)株を構築した。
【0185】
iaaA遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP21(配列番号48)およびP22(配列番号49)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB)株を構築した。
【0186】
dpp遺伝子オペロン(dppA,dppB,dppC,dppD,dppF)を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP23(配列番号50)およびP24(配列番号51)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB)株を構築した。
【0187】
11.2.E.coli 7Δ株における特異的なAsp−Phe加水分解活性の解析
E.coli JM109およびE.coli 7Δ株の菌体を、LB寒天培地上で、37℃で16時間増殖させた。増殖した菌体を、20mLのMS培地中に接種し、OD610nm 約20の菌体密度になるまで37℃で増殖させた。次いで、Asp−Pheの標準品を培養液に添加し(終濃度2mM)、さらに32時間培養を行った。各培養時間で得られた培養液を遠心分離して、培養上清を得た。培養上清中の残存Asp−Pheを、HPLCにより解析した。結果を表10に示す。E.coli 7Δ株の培地におけるAsp−Phe加水分解活性は、E.coli JM109のものと比較して、はるかに低かった。
【0188】
MS培地の組成は、以下(g/L)である。
グルコース 20
(NHSO
KHPO 0.5
FeSOx7H 0.005
MnSOx7H 0.005
酵母抽出物
L−Tyr 0.05
MgSOx7H 0.5
CaCO 30
【0189】
発酵培地を121℃で20分間滅菌する。但し、グルコース、MgSO7HOおよびCaCOは別々に以下のとおり滅菌する:グルコースおよびMgSO7HOは121℃で20分間、CaCOは180℃で2時間。pHを、KOH溶液により7に調整する。その結果、特異的なAsp−Phe加水分解活性は、E.coli 7Δ数では、E.coli JM109におけるものと比較して、より低かった(表10)。
【0190】
【表10】
【0191】
実施例12.Lal遺伝子を過剰発現するE.coli 7Δ株によるAsp−Pheの生産性の評価
BBR47_51900およびStaur_4851をコードする遺伝子の一次構造を、E.coliでの発現のためにさらに最適化した。ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis) NBRC 100599由来のBBR47_51900およびスチグマテラ・アウランチアカ(Stigmatella aurantiaca) DW4/3−1由来のStaur_4851をコードする遺伝子を、GenScriptにより合成し、pUC57プラスミドのセット(pUC57−cBBRおよびpUC57−cSTA)として移入した。調製したcBBRおよびcSTAの塩基配列を、それぞれ、配列番号68および69に示す。
【0192】
12.1.pSF12−cBBRおよびpSF12−cSTAの構築
BBR47_51900を保持するDNAフラグメントを、プライマーP25(配列番号52)およびP26(配列番号53)、ならびにpUC57−cBBRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。PCRを、以下の工程プログラム:98℃,30秒;(98℃,15秒;58℃,10秒;72℃,1分)×30サイクル;72℃,5分を用いて、0.04μgのプラスミドDNA、各0.2μmol/Lのプライマー、1.0ユニットのPhusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(New England Labs)、10μLの5×Phusion HF緩衝液および各0.2mmol/LのdNTPを含む50μLの反応混合液で行った。増幅したDNAフラグメントを、MinElute PCR精製キット(Qiagen)により精製した。
【0193】
Staur_4851を保持するDNAフラグメントを、プライマーP27(配列番号54)およびP28(配列番号55)、ならびにpUC57−cSTAプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。PCR条件および精製方法は、上述したとおりであった。
【0194】
得られた溶液中の、増幅DNAを制限酵素NdeIおよびPstIで切断し、次いで、各1.3kbフラグメントを、MinElute Reaction Cleanupキット(Qiagen)で精製した。
【0195】
pSF12−ggtベクターを、pUC18ベクターから構築した。これは、E.coli W3110株由来のrpoHプロモーターおよびγ−グルタミルトランスペプチダーゼをコードするggt遺伝子を保持する(WO2013051685A1)。pSF12−ggtベクターを、NdeIおよびPstIで切断した。DNAフラグメントを、アガロースゲル電気泳動により分離し、3.0kb DNAフラグメントを、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)により回収した。
【0196】
BBR47_51900またはStaur_4851を含む1.3kb DNAフラグメント、および上記で得られた3.0kb DNAフラグメントを、TaKaRa LigationキットVer.2.1.(TaKaRa)を用いる連結反応に16℃で30分間供した。E.coli JM109コンピテント細胞(TaKaRa)を、連結反応混合液を用いて、熱ショック法により形質転換し、100μg/mLアンピシリンを含むLB寒天培地上に塗布し、30℃で一晩培養した。プラスミドを、既知の方法にしたがって、培地上で増殖した形質転換体のコロニーから抽出し、それによりpSF12−cBBRおよびpSF12−cSTAを得た。ベクターのDNA配列を、3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いて確認した。
【0197】
12.2.Lal活性を有する改変E.coli 7Δ株を用いる、Asp−Pheの発酵生産
ジペプチド生産菌は、L−アミノ酸αリガーゼ活性を有するようにさらに改変された、ペプチダーゼおよびジペプチドパーミアーゼ活性を欠損する、上記E.coli 7Δ株である。ジペプチド生産株は、プラスミド(それぞれpSF12−cBBRまたはpSF12−cSTA)において、細菌の菌体中に導入されるBBR47_51900またはStaur_4851をコードする遺伝子を保持する。Lalをコードする各遺伝子を、rpoHプロモーター下に配置する。Lalをコードする遺伝子を保持する改変E.coli 7Δ株、およびコントロール7Δ株を各々、LB寒天培地(Lalをコードする遺伝子を保持する改変E.coli 7Δ株のために、100μg/mlアンピシリンを含む)上で25℃にて24時間培養した。Lalをコードする遺伝子を保持するE.coli 7Δ株、およびコントロール7Δ株を、500mL坂口フラスコにおいて、100mM L−Aspおよび100mM L−Pheを補充した20mLのMS培地中に接種し、往復式振盪機において120rpmで25℃にて32時間培養した。得られた培養液を遠心分離して、培養上清を得た。培養上清中に蓄積したAsp−Pheを、HPLCにより解析した。結果を表11に示す。
【0198】
【表11】
【0199】
表11から分かるように、Asp−Pheは、7Δ株の使用によっては生産されなかった一方で、Asp−Pheは、Lalをコードする遺伝子を保持する7Δ株の使用によって生産された。
【0200】
実施例13.E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalによるAsp−Phe生産性の評価
13.1.tyrRおよびtyrA欠損E.coli 7Δ株の構築
先ず、芳香族アミノ酸の生合成に関与する酵素の合成を抑制するため、tyrR遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP29(配列番号56)およびP30(配列番号57)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、実施例11.1に記載したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔttB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB)株を構築した。
【0201】
次いで、tyrA遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB)株において欠損させて、PheおよびTyrの生合成における共通中間体であるプレフェン酸が、Tyr生合成に利用されないようにした。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP31(配列番号58)およびP32(配列番号59)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cmマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB,tyrA::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB,tyrA::ΔattB)株を構築した。
【0202】
13.2.pHSG−cBBRおよびpHSG−cSTAの構築
pHSG−cBBRプラスミドを構築するために、pSF12−cBBRプラスミドのrpoHプロモーターおよびBBR47_51900遺伝子を含む対応EcoRI−SphIフラグメントを、EcoRIおよびSphIでの消化により切出し、次いで、同じ制限酵素により消化されたpHSG396ベクター(TaKaRa)に連結した。
【0203】
pHSG−cSTAを構築するため、rpoHプロモーター下にあるStaur_4851を保持するDNAフラグメントを、プライマーP33(配列番号60)およびP34(配列番号61)、ならびにpSF12−cSTAプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。PCRは、以下の工程プログラム:98℃,30秒;(98℃,15秒;58℃,10秒;72℃,1分)×30サイクル;72℃,5分を用いて、0.04μgのプラスミドDNA、各0.2μmol/Lのプライマー、1.0ユニットのPhusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(New England Labs)、10μLの5×Phusion HF緩衝液および各0.2mmol/LのdNTPを含む50μLの反応混合液で行った。次いで、BamHIおよびXhoIにより消化された1.5kbフラグメントを、同じ制限酵素で消化されたpHSG396に連結した。
【0204】
13.3.pMGAL1およびpHSG−cLalベクターによるE.coli 9Δ株の形質転換
pMGAL1ベクターを、pMW19(Wako)から構築した。これは、E.coliにおけるPhe生合成に関与する3つの遺伝子;コリスミ酸ムターゼ−プレフェン酸デヒドラターゼ(CM−PD)、3−デオキシ−D−アラビノヘプツロソン酸−7−リン酸シンテターゼ(DAHPシンテターゼ)、およびシキミ酸キナーゼ(SK)をそれぞれコードするpheA、aroG4、およびaroLを保持する(特許第3225597号)。pheAおよびaroG4遺伝子の各々を、対応する元の遺伝子から変異させて、生合成されるPheによるネガティブ・フィードバックを回避した。
【0205】
pMGAL1およびpHSG−cLalベクターを、100μg/mLアンピシリンおよび25μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地を用いて、電気穿孔法により、E.coli 9Δ株中に同時に導入した。このようにして得られた株を、E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalと名付けた。
【0206】
13.4.E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalによるAsp−Pheの発酵生産
改変E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalおよびコントロール9Δ株/pMGAL1の各々を、LB寒天培地(E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalのために100μg/mlアンピシリンおよび25μg/mlクロラムフェニコールを含む)上で、25℃で24時間培養した。E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalおよびコントロール9Δ/pMGAL1株を、500mL坂口フラスコにおいて100mM L−Aspを補充した20mLのMS培地中に接種し、往復式振盪機において、120rpmで25℃にて72時間培養した。得られた培養液を遠心分離して、培養上清を得た。培養上清中に蓄積したPheおよびAsp−Pheを、HPLCにより解析した。結果を表12に示す。
【0207】
【表12】
【0208】
表12から分かるように、Asp−Pheは、9Δ/pMGAL1株の使用によって生産されなかった一方で、Asp−Pheは、Lalをコードする遺伝子を保持する9Δ/pMGAL1株の使用によって生産された。
【0209】
実施例14.DESの基質特異性の解析
14.1.pELAC−MBP−DES−HTプラスミドの構築
14.1.1.補助プラスミドpELACの構築
<PlacUV5>DNAフラグメントを、オリゴプライマーP35(配列番号62)、P36(配列番号63)、およびpUC18プラスミド(GenBank:L08752.1)のDNAを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。
【0210】
得られたDNAフラグメントを、BglIIおよびXbaIにより消化し、同じ制限酵素により消化されたpET22(b+)プラスミド(Novagen,カタログ番号69744−3)中にクローニングした。これにより、pELACプラスミドを構築した。
【0211】
14.1.2.補助プラスミドpELAC−MBP−HTの構築
malE遺伝子(シグナルペプチド配列無し)を、オリゴプライマーP37(配列番号64)、P38(配列番号65)、およびE.coli MG1655染色体を鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、XbaIおよびBamHIにより消化し、pELAC−/XbaI−BamHIベクター中にクローニングした。これにより、pELAC−MBP−HTプラスミドを構築した。
【0212】
14.1.3.pELAC−MBP−DES−HTプラスミドの構築
pELAC−MBP−DES−HTプラスミドを構築するため、我々は、オリゴプライマーP39(配列番号66)、P40(配列番号67)、およびpUC57−DES(ジペプチド特許出願に記載される)のDNAを鋳型として用いることにより、DES遺伝子を含むDNAフラグメントを増幅した。得られたDNAフラグメントを、BamHIおよびNotIで消化し、pELAC−MBP−HT/BamHI−NotIベクターに連結した。これにより、pELAC−MBP−DES−HTプラスミドを構築した。
【0213】
14.2.MBP融合His6タグ付加DESの発現および精製
pELAC−MBP−DES−HTを保持するE.coli 7Δの菌体を、試験管において、100μg/mLアンピリシンを含むLB培地中で、OD610nmが約2になるまで、37℃で増殖させた。得られた培養液2mLを、500ml坂口フラスコにおいて、IPTG(終濃度0.1mmol/L)を補充した100mLのLB培地中に、30℃で8時間接種した。誘導された菌体を、1.6Lの培養ブロスから採取し、200〜240mLのHT−II緩衝液(50mM Tris−HCL,pH8.0,0.3M NaCl,10mMイミダゾール,15%グリセロール)中に再懸濁し、ソニケーター(INSONATOR 201M,KUBOTA)を用いて超音波処理した。4℃および14,000rpmでの15分間の遠心分離、続いて、0.45mmフィルター(Millipore)を通じた濾過により、屑を除去した。粗タンパク質の溶液を、製造業者の推奨にしたがい、AKTA avant 25(GE healthcare)を用いて、HisTALON Superflowカートリッジ,5ml(Clontech)に充填した。MBP融合Hisタグ付加DESを含む画分を合わせ、SC緩衝液(50mM Tris−HCl,pH8.0,0.3M NaCl,15%グリセロール)で平衡化したPD−10カラム(GE healthcare)を用いて脱塩した。
【0214】
14.3.MBP融合Hisタグ付加DESのAsp−Phe加水分解活性の解析
MBP融合Hisタグ付加DESにより合成されたジペプチドを、総容量400μLの反応混合液のHPLC解析を用いて決定した。反応混合液は、以下を含んだ:
DES 160μg
Tris−HCl,pH9.0 50mM
L−Asp 100mM
L−Phe 100mM
アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP) 10mM
MgSOx7HO 10mM
【0215】
反応を、37℃で15分間行った。次いで、酵素反応を停止するために10μlの1M EDTA(pH9.0)が添加された反応混合液を、HPLC解析に供した。条件は、実施例4に記載されるとおりであった。その結果、DESは、0.30mM Asp−Pheの精製を触媒する。
【0216】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して詳細に記載されているものの、発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更が為され得ること、および均等物が採用され得ることは、当業者に明らかである。本明細書中の全ての引用文献は、参照により本願の一部として援用される。
【配列表フリーテキスト】
【0217】
(配列の記載)
配列番号1は、BBR47_51900遺伝子を示す。
配列番号2は、BBR47_51900タンパク質を示す。
配列番号3は、Staur_4851遺伝子を示す。
配列番号4は、Staur_4851タンパク質を示す。
配列番号5は、DES遺伝子を示す。
配列番号6は、DESタンパク質を示す。
配列番号7は、BUR遺伝子を示す。
配列番号8は、BURタンパク質を示す。
配列番号9は、BCE遺伝子を示す。
配列番号10は、BCEタンパク質を示す。
配列番号11は、BTH遺伝子を示す。
配列番号12は、BTHタンパク質を示す。
配列番号13は、AME遺伝子を示す。
配列番号14は、AMEタンパク質を示す。
配列番号15は、SFL遺伝子を示す。
配列番号16は、SFLタンパク質を示す。
配列番号17は、BMY遺伝子を示す。
配列番号18は、BMYタンパク質を示す。
配列番号19は、BBR47_51900を保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号20は、Staur_4851を保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号21は、DESを保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号22は、BURを保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号23は、BCEを保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号24は、BTHを保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号25は、AMEを保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号26は、SFLを保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号27は、BMYを保持するXbaI−EcoRIフラグメントを示す。
配列番号28は、プライマーP1を示す。
配列番号29は、プライマーP2を示す。
配列番号30は、プライマーP3を示す。
配列番号31は、プライマーP4を示す。
配列番号32は、プライマーP5を示す。
配列番号33は、プライマーP6を示す。
配列番号34は、プライマーP7を示す。
配列番号35は、プライマーP8を示す。
配列番号36は、プライマーP9を示す。
配列番号37は、プライマーP10を示す。
配列番号38は、プライマーP11を示す。
配列番号39は、プライマーP12を示す。
配列番号40は、プライマーP13を示す。
配列番号41は、プライマーP14を示す。
配列番号42は、プライマーP15を示す。
配列番号43は、プライマーP16を示す。
配列番号44は、プライマーP17を示す。
配列番号45は、プライマーP18を示す。
配列番号46は、プライマーP19を示す。
配列番号47は、プライマーP20を示す。
配列番号48は、プライマーP21を示す。
配列番号49は、プライマーP22を示す。
配列番号50は、プライマーP23を示す。
配列番号51は、プライマーP24を示す。
配列番号52は、プライマーP25を示す。
配列番号53は、プライマーP26を示す。
配列番号54は、プライマーP27を示す。
配列番号55は、プライマーP28を示す。
配列番号56は、プライマーP29を示す。
配列番号57は、プライマーP30を示す。
配列番号58は、プライマーP31を示す。
配列番号59は、プライマーP32を示す。
配列番号60は、プライマーP33を示す。
配列番号61は、プライマーP34を示す。
配列番号62は、プライマーP35を示す。
配列番号63は、プライマーP36を示す。
配列番号64は、プライマーP37を示す。
配列番号65は、プライマーP38を示す。
配列番号66は、プライマーP39を示す。
配列番号67は、プライマーP40を示す。
配列番号68は、ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis) NBRC 100599のBBR47_51900をコードする最適化遺伝子を示す。
配列番号69は、スチグマテラ・アウランチアカ(Stigmatella aurantiaca)のStaur_4851をコードする最適化遺伝子を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図14-4】
図15
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図17-4】
図17-5】
図18-1】
図18-2】
図19-1】
図19-2】
図19-3】
図19-4】
図19-5】
図20-1】
図20-2】
図20-3】
図20-4】
図21-1】
図21-2】
図21-3】
図21-4】
図21-5】
図21-6】
図21-7】
図22-1】
図22-2】
図22-3】
図22-4】
図23-1】
図23-2】
図23-3】
図23-4】
図24-1】
図24-2】
図24-3】
図24-4】
図24-5】
図25-1】
図25-2】
図25-3】
図26
図27
図28
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]