【実施例】
【0109】
下記の非限定的な実施例を参照しつつ、本発明をより詳細に以下に説明する。
【0110】
実施例1.ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis) NBRC 100599由来のBBR47_51900およびスチグマテラ・アウランチアカ(Stigmatella aurantiaca)DW4/3−1由来のStaur_4851のクローニング
機能未知タンパク質BBR47_51900およびStaur_4851をコードする遺伝子の一次構造を、E.coliでの発現のために最適化した。ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis) NBRC 100599由来のBBR47_51900およびスチグマテラ・アウランチアカ(Stigmatella aurantiaca)DW4/3−1由来のStaur_4851をコードする遺伝子を、SlonoGene
TM遺伝子合成サービス(http://www.sloning.com/)により合成し、最適化配列を有する標的遺伝子を含む合成XbaI−EcoRIフラグメントを保持するpSlo.Xプラスミドセットとして移入した。BBR47_51900およびStaur_4851タンパク質をコードする最適化配列の遺伝子を保持するXbaI−EcoRIフラグメントを、それぞれ、配列番号19および20に示す。
【0111】
pET−HT−BBRおよびpET−HT−STAプラスミドを構築するために、対応するpSlo.XプラスミドのXbaI−EcoRIフラグメントを、XbaIおよびEcoRIでの消化により切り出し、次いで、同じ制限酵素により消化されたpET15(b+)ベクター(Novagen,USA)に連結した。
【0112】
実施例2.His6タグ付加BBR47_51900およびStaur_4851の発現および精製
プラスミドpET−HT−BBRおよびpET−HT−STAを、Ca
2+依存性形質転換により、BL21(DE3)株(Novagen,USA)に導入して、BL21(DE3)[pET−HT−BBR]およびBL21(DE3)[pET−HT−STA]株を構築した。製造業者の使用説明書にしたがい、“Bio−Rad”電気穿孔器(USA)(番号165−2098,バージョン2−89)を用いて、電気形質転換を行った。BL21(DE3)[pET−HT−BBR]およびBL21(DE3)[pET−HT−STA]株の菌体を各々、37℃および150rpmでLBブロス中でOD
540約1まで増殖させた(Sambrook,J.およびRussell,D.W.(2001) Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版).Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される溶原性ブロスとも呼ばれる)中で増殖させた。イソプロビル−β−D−チオ−ガラクトシド(IPTG)を1mMの終濃度で加え、細胞培養物を37℃および150rpmで2時間インキュベートした。誘導された細胞を1Lの培養ブロスから採取し、60〜80mLのHT−1緩衝液(20mM NaH
2PO
4,0.5M NaCl,20mM イミダゾール,pH7.4,NaOHで調整)中に再懸濁し、フレンチ−プレス(Thermo Spectronic)を用いて2000Psi(約140バール)下で破砕した。破砕屑を4℃および13000rpmで2回遠心分離し、続いて0.45μmフィルター(CHROMAFIL Xtra CA−45/25,MACHEREY−NAGEL GmbH)を通じて濾過することにより除去した。粗タンパク質溶液を、総容量1mlの固定金属アフィニティー・クロマトグラフィー(IMAC)に予め充填し、かつHT−I緩衝液で平衡化したHiTrapキレートカラム(GE Healthcare)にロードした。製造業者の推奨にしたがい、IMACを行った。活性画分を回収し、合わせて、SB緩衝液(20mM Tris−HCl,120mM NaCl,1mM β−メルカプトエタノール,15%グリセロール,pH7.5)で平衡化したPD10カラム(GE Healthcare)を用いて脱塩した。タンパク質調製物を一定分量(200μL)に分け、−70℃で保存した。BIO−RADタンパク質 ASSAY(BIO−RAD,USA)を用いて、タンパク質濃度を決定した。
【0113】
実施例3.BBR47_51900およびStaur_4851の基質特異性の予備解析
BBR47_51900およびStaur_4851の基質特異性を、酵素含有反応混合液、ならびにL−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−システイン、グリシン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、およびL−バリン等の標準L−アミノ酸、またはその塩(同種または異なる2種)において試験した。総容量50μLの反応混合液の組成は、他に指摘しない限り、以下のとおりであった。
【0114】
BBR47_51900またはStaur_4851
4μg
Tris−HCl,pH8.0
50mM
第1L−アミノ酸
10mM
第2L−アミノ酸
10mM
アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP)
10mM
MgSO
4x7H
2O 10mM
H
2O
50μLにする
【0115】
反応を、32℃で15分間行った。反応混合液のうち1〜2μLを、2−プロパノール:アセトン:250mM アンモニア:H
2Oの100:100:12:28混合液を移動相として用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。ニンヒドリンのアセトン溶液(0.3%,w/v)を可視化試薬として用いた。検出を540nmで行った。反応混合液の展開後に、TLCプレート上の新たなスポットを検出した。これは、以下を含んでいた:
1)BBR47_51900およびL−Glu/L−Glu、またはL−Glu/L−Asp、またはL−Glu/L−Val、またはL−Glu/L−Ile、またはL−Asp/L−Ile、またはL−Asp/L−Val(
図2−4);
2)Staur_4851およびL−Asp/L−Phe、またはL−Asp/L−Trp、またはL−Asp/L−Thr)(
図5および6)。
【0116】
得られた結果は、BBR47_51900およびStaur_4851が、L−GluおよびL−Asp等の酸性アミノ酸の他のL−アミノ酸との連結を触媒できることを示す。
【0117】
実施例4.BBR47_51900およびStaur_4851により合成されたジペプチドのHPLC解析による決定
BBR47_51900およびStaur_4851により合成されたジペプチドを、総容量400μLの反応混合液のHPLC解析を用いて決定した。反応混合液は、以下を含んでいた:
BBR47_51900またはStaur_4851
160μg
Tris−HCl,pH9.0
50mM
L−AspまたはL−Glu
10mM
L−PheまたはL−PheOMe、L−Val、L−Trp
10mM
アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP)
10mM
MgSO
4x7H
2O 10mM
ここで、Meはメチル基を示す。
【0118】
反応を、32℃で15分間行った。次いで、0.5mLの反応混合液を、Amicon Ultra−0.5mL,3K遠心分離フィルター(Millipore,#UFC500396)を通じて濾過し、HPLC解析に供した。
【0119】
条件は、以下のとおりであった:
装置:HITACHI L−2000 シリーズ
カラム:Inertsil ODS−3 4.6x250mm,5mm(GL Sciences Inc.)
温度:40℃
緩衝液:
A(混合物L−Asp/L−ValおよびL−Glu/L−Val):0.1M KH
2PO
4(pH2.2)+5mM オクタンスルホネート,ナトリウム塩:CH
3CN=4:1(v/v)
B(混合物L−Asp/L−Phe):0.1M KH
2PO
4(pH2.2)+5mM オクタンスルホネート,ナトリウム塩:CH
3CN=7:3(v/v)
C(混合物L−Asp/L−PheOMe、L−Asp/L−Trp、およびL−Val/L−Val):0.1M KH
2PO
4(pH2.2)+5mM オクタンスルホネート,ナトリウム塩:CH
3CN=3:2(v/v)
D(混合物L−Phe/L−Phe):0.1M KH
2PO
4(pH2.2)+5mM オクタンスルホネート,ナトリウム塩:CH
3CN=1:1(v/v)
勾配プロフィール:均一
流速:1.5mL/min
注入量:10μL
検出:UV210nm
【0120】
HPLCに用いた化学物質は、以下のとおりであった:
L−Asp(L−アスパラギン酸,ナトリウム塩):ナカライテスク株式会社 #03504−75
L−Phe(L−フェニルアラニン):ナカライテスク株式会社 #26901−35
L−Val(L−バリン):味の素株式会社 #317LG13
L−Trp(L−トリプトファン): 味の素株式会社 #0000002205
L−PheOMe(L−フェニルアラニン,メチルエステル塩酸塩):東京化成工業株式会社 #P1278
ATP:オリエンタル酵母工業株式会社 #45142000
MgSO
4x7H
2O:純正化学株式会社 #83580−0301
αAsp−Phe(H−Asp−Phe−OH):Bachem G−1620
βAsp−Phe(H−Asp(Phe−OH)−OH):Bachem G−4750
αAsp−Asp(H−Asp−Asp−OH):Bachem G−1565
Phe−Asp(H−Phe−Asp−OH):Bachem G−2870
Phe−Phe(H−Phe−Phe−OH):Bachem G−2925
αAsp−Val(H−Asp−Val−OH):Bachem G−1635
Val−Asp(H−Val−Asp−OH):Bachem G−3510
Val−Val(H−Val−Val−OH):Bachem G−3595
αGlu−Val(H−Glu−Val−OH):Bachem G−2010
γGlu−Val(H−Glu(Val−OH)−OH):Bachem G−2015
Val−Glu(H−Val−Glu−OH):Bachem G−3520
αGlu−Glu(H−Glu−Glu−OH):Bachem G−1915
αAspartame(H−Asp−Phe−OMe):Bachem G−1545
βAspartame:(H−Asp(Phe−OMe)−OH):Bachem G−3725
Asp−Trp(H−Asp−Trp−OH):Bachem G−3705
【0121】
αGlu−Val、γGlu−Val、αAsp−Val溶液(各々10mM)、およびαAsp−Phe、βAsp−Phe溶液(各々5mM)を、HPLC解析のために調製した。生成したジペプチドの濃度を、対応する検量線を用いて決定した。標準試料の各溶液を、LC−QTOF/MS/MS解析のために50倍または100倍に希釈した(実施例5)。
【0122】
反応混合液のHPLC解析の結果を表1に示す。表1から分かるように、BBR47_51900およびStaur_4851は、L−AspおよびL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有するジペプチドの生成を触媒する。
【0123】
実施例5.BBR47_51900により合成されたジペプチドについて、LC−QTOF/MS/MS解析による決定
実施例4に記載されるようにして得られた反応混合液および標準溶液の試料を、LC−QTOF/MS/MS解析に供した。
【0124】
条件は、以下のとおりであった:
装置:LC(Agilent1200SL),MS(Micromass Q−TOF Premier)
LC条件:
カラム:Develosil C30 2.0x250mm,3μm(野村化学)
温度:20℃
緩衝液:
A:H
2O(0.025%ギ酸)、
B:CH
3CN(0.025%ギ酸)。
勾配プロフィール:
時間(分) B(%)
0 0
20 2.5
20.1 100
25 100
流速:0.3mL/分
注入量:2〜5μL
【0125】
MS条件:
キャピラリー電圧:3.0kV
コーン電圧:20V
衝突電圧:4V(MS/MS 12V)
ソース温度:80℃
脱溶剤温度:120℃
コーンガス流速:50L/時間
脱溶剤ガス流速:700L/時間。
【0126】
反応混合液のLC−QTOF/MS/MS解析の結果を、
図7〜9に示す。
図7〜9から分かるように、BBR47_51900は、αAsp−Phe、αAsp−Val、およびαGlu−Valジペプチドの生成を触媒する。
【0127】
実施例6.BBR47_51900およびStaur_4851と同機能である酵素の検索
タンパク質配列のホモログについて配列データベース中で検索するため、およびタンパク質配列のアライメントのため、HMMER法を用いた。この方法は、隠れマルコフモデルプロフィール(HMMプロフィール)と呼ばれる確率モデルを使用する(Finn R.D.ら,HMMER web server:interactive sequence similarity searching,Nucleic Acids Res.,2011,39(ウェブサーバー発行):W29−37)。
【0128】
より古いスコア付け方法論に基づくBLAST、FASTA、および他の配列アライメントおよびデータベース検索ツールと比較して、HMMERは、その根底にある数学的モデルの強みのため、同機能タンパク質等の遠縁ホモログをより優位な精度および信頼性で検出することを目指している。過去には、この強みは、高額なコンピュータ費用を伴ったが、新たなHMMER3プロジェクトでは、HMMERは、BLASTと本質的に同等の速さになった(Finn R.D.ら,HMMER web server: interactive sequence similarity searching, Nucleic Acids Res.,2011,39(ウェブサーバー発行):W29−37)。
【0129】
BBR47_51900およびStaur_4851と同機能である酵素を検索するため、BBR47_51900およびStaur_4851のアライメント(
図10)を、タンパク質配列データベース(http://hmmer.janelia.org/)に対する1以上のプロフィールについて検索を可能にする、HMMER3 suiteのHMM検索プログラムに供した。BBR47_51900およびStaur_4851に対する配列アライメントに基づいて、相同性検索に用いられるHMMプロフィールを構築した(モデル1)。見出された最も近い同機能タンパク質の一覧表(ヒット)を、
図11)に示す。|Log(E値)|値の分布図の解析より、グループ間の値よりも低いグループのメンバー間で|Log(E値)|値を共有するタンパク質の5つのグループが明らかとなった(
図12)。第1のグループはBBR47_51900およびStaur_4851を含み、第2のグループはDESおよびBCEを含み、第3のグループはBMYを含み、第4のグループはBTHを含み、第5のグループはBURを含む。残りのタンパク質は、推測|Log(E値)|値を有する未分類ホモログである。AMEおよびSFLタンパク質を、ネガティブコントロールとして、このような未分類ホモログから選んだ。
【0130】
第1(BBR47_51900、Staur_4851)ならびに第2(DESおよびBCE)グループのタンパク質が同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEのアライメント(
図13)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル2)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成することができる(
図14)。この一覧表は、|Log10(E値)|値の分布図により記載されており、最初の図とは異なる(
図15)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEを含む第1のグループ;BMYおよびBTHを含む第2のグループ;ならびにBURを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得、ここで、AMEは、第1のグループにより近く(番号47(
図12)から番号33(
図15)への位置の変更)、SFLは、第1のグループよりも離れている(番号49(
図12)から番号62(
図15)への位置の変更)。
【0131】
第1(BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCE)ならびに第2(BMY等)グループが同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYのアライメント(
図13)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル3)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(
図17)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYを含む第1のグループ;BTHを含む第2のグループ;ならびにBURを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得、ここで、AMEは番号37の位置にあり、SFLは番号65の位置にある(
図17)。
【0132】
第1(BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMY)ならびに第2(BTH)グループが同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHのアライメント(
図18)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル4)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(
図19)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHを含む第1のグループ;BURを含む第2のグループ;AMEを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得、ここで、SFLは番号73の位置にある(
図19)。
【0133】
第1(BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTH)ならびに第2(BUR)グループが同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURのアライメント(
図20)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル5)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(
図21)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BURを含む第1のグループ;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHを含む第2のグループ;AMEを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得、ここで、SFLは番号104の位置にある(
図21)。
【0134】
第1(BUR)、第2(BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTH)、ならびに第3(AME)グループが同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEのアライメント(
図22)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル6)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(
図23)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BURを含む第1のグループ;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびAMEを含む第2のグループ等の2つのグループを含み得、ここでSFLは番号65の位置にある(
図23)。
【0135】
第1(BUR)、第2(BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびAME)グループ、ならびにSFLタンパク質が同機能であると仮定して、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLのアライメント(
図24)に基づく新たなHMMプロフィール(モデル7)を構築することができる。これは、上述したようにHMM検索プログラムを用いる同機能タンパク質検索に用いることができる。したがって、同機能タンパク質の新たな一覧表を作成した(
図25)。同機能タンパク質の新たな一覧表は、BURを含む第1のグループ;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびAMEを含む第2のグループ;ならびに番号38の位置にあるSFLを含む第3のグループ等の3つのグループを含み得る(
図25)。
【0136】
同様の様式において、L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有し、かつ任意の他のL−アミノ酸またはその誘導体をC末端に有するジペプチドを合成し得る同機能L−アミノ酸αリガーゼの一覧表を作成することができる。BBR47_51900およびStaur_4851タンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル1)を構築する場合、|Log10(E値)|≧233を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DESおよびBCEタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル2)を構築する場合、|Log10(E値)|≧196を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCEおよびBMYタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル3)を構築する場合、|Log10(E値)|≧182を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMYおよびBTHタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル4)を構築する場合、|Log10(E値)|≧175を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTHおよびBURタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル5)を構築する場合、|Log10(E値)|≧162を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BURおよびAMEタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル6)を構築する場合、|Log10(E値)|≧142、新たな同機能Lals検索のために用いることができる;BBR47_51900、Staur_4851、DES、BCE、BMY、BTH、BUR、AMEおよびSFLタンパク質を用いてHMMプロフィール(モデル7)を構築する場合、|Log10(E値)|≧128を、新たな同機能Lals検索のために用いることができる(
図26)。ここで、E値は、HMM検索プログラムのパラメータである(Finn R.D.ら,HMMER web server:interactive sequence similarity searching,Nucleic Acids Res.,2011,39(ウェブサーバー発行):W29−37)。
【0137】
実施例7.DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMY酵素のクローニング、発現および精製
DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質をコードする遺伝子の一次構造を、遺伝子デザイナー・プログラムの「バック翻訳」機能(Villalobos A.ら,Gene Designer:a synthetic biology tool for constructing artificial DNA segments,BMC Bioinformatics,2006,7:285)を用いて、E.coliにおける発現のために最適化した。全てのコンストラクトは、SlonoGene
TM遺伝子合成サービス(http://www.sloning.com/)により合成し、最適化配列を有する標的遺伝子を含む合成XbaI−EcoRIフラグメントを保持するpSlo.Xのセットとして移入した。DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYをコードする最適化配列を有する遺伝子を保持するXbaI−EcoRIフラグメントを、それぞれ、配列番号21、22、23、24、25、26および27に示す。
【0138】
DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質をE.coliで発現・精製することができ、そして実施例1−5においてBBR47_51900およびStaur_4851について記載したように、それらの活性を調べることができる。
【0139】
実施例8.E.coliペプチダーゼ欠損1−6Δ株の構築
8.1.E.coliペプチダーゼ欠損1−5Δ株の構築
ΔpepB変異を有するE.coli BW25113株(E.coli BW25113株:Keioコレクション,株番号ME9062)(ΔpepB変異を有するE.coli BW25113株:Keioコレクション,株番号JW2507;E.coli遺伝子保存センター,エール大学,ニュー・ヘヴン,米国,アクセッション番号CGSC9995)において、iadA遺伝子を欠失させた(E.coli 1Δ株)。この目的のため、λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP1(配列番号28)およびP2(配列番号29)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattL(Katashkina Zh.I.ら.,Mol.Biol.(Mosk.),2005,39(5):823−831)を鋳型として用いて、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により増幅した。得られたDNAフラグメントを、製造業者の使用説明書にしたがい、「Bio−Rad」電気穿孔器(米国)(番号165−2098,バージョン2−89)を用いる電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB)/pKD46株中に導入した。組換えプラスミドpKD46(Datsenko K.A.およびWanner B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97:6640−6645)を温度感受性レプリコンとともに、λRed媒介組換え系を担うλファージ由来遺伝子のドナーとして用いた。pKD46プラスミドを、上記の方法(Datsenko K.A.およびWanner B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97:6640−6645)により、E.coli BW25113(ΔpepB)中に組み込んで、E.coli BW25113(ΔpepB)/pKD46株を得ることができる。あるいは、組換えプラスミドpKD46を含むE.coli BW25113(ΔpepB)株を、E.coli遺伝子保存センター、エール大学,ニュー・ヘヴン,米国,アクセション番号CGSC7739から得ることができる。
【0140】
E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattR−cat−λattL)形質転換体は、cat遺伝子によりコードされるクロラムフェニコール(Cm)に耐性であり、かつiadAの代わりに「切出し可能」なクロラムフェニコール耐性マーカー(Cm
Rマーカー)を染色体中に保持する。Cm
Rマーカーを、(Katashkina Zh.I.ら,Mol.Biol.(Mosk.),2005,39(5):823−831)に記載されるように切り出して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB)株(E.coli 2Δ株)株を構築した。
【0141】
pepE遺伝子を、BW25113(ΔpepB, iadA::λattB)株において欠失させた。λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP3(配列番号30)およびP4(配列番号31)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattLプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したような電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattR−cat−λattL)形質転換体から切り出して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB)株(E.coli 3Δ株)を構築した。
【0142】
ybiK遺伝子を、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB)株において欠失させた。λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP5(配列番号32)およびP6(配列番号33)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattLを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したような電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB)/pKD46株に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattR−cat−λattL)形質転換体から切り出して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB)株(E.coli 4Δ株)を構築した。
【0143】
dapE遺伝子を、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB)株において欠失させた。λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP7(配列番号34)およびP8(配列番号35)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattLプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したような電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattR−cat−λattL)形質転換体中に導入して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB)株(E.coli 5Δ株)を構築した。
【0144】
このようにして、1〜5個の欠失したペプチダーゼをコードする遺伝子を有するE.coli株(E.coli 1−5Δ株)を構築した。
【0145】
8.2.E.coli 5Δ株における特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性の解析
特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を解析するため、人工ジペプチドDP3(L−Asp−L−5−フルオロトリプトファン)を合成した(ロシア科学アカデミーの生物有機化学研究所部門(BIBCh),プーシチノ,ロシア連邦)。ペプチド加水分解活性を、インビトロおよびインビボで試験した。
【0146】
インビトロ研究については、E.coli BW25113およびE.coli 5Δの菌体を、OD
595nm 約1の菌体密度になるまで、LBおよびM9塩+グルコース(0.2%,w/v)培地(Sambrook, J.およびRussell,D.W.(2001) Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版) Cold Spring Harbor Laboratory Press)で37℃にて増殖させた。増殖菌体を、遠心分離(4℃,10000rpm)により採取し、緩衝液E(50mM Tris−HCl pH8.0,20mM NaCl)中に再懸濁し、超音波処理により破砕し、続いて遠心分離(14000g,4℃,20分)して、細胞屑を除去した。粗タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンを標品として用いて、Bradfordタンパク質アッセイ(Bradford M.M.,Anal. Biochem.,1976,72:248−254)を用いて決定することができる。得られた粗タンパク質調製物を用いて、DP3加水分解活性を試験した。
【0147】
反応混合液は、以下を含んでいた:
50mM Tris−HCl pH8.0、
20mM NaCl、
5mM DP3ジペプチド、
1mM ZnSO
4またはMnCl
2、
24μg粗タンパク質調製物、
H
2O 総容量10μLまで。
【0148】
反応混合液を、37℃で異なる時間インキュベートした。DP3加水分解活性を、放出される5−フルオロトリプトファンの定量的TLC解析により測定した(
図27,表4)。移動相として2−プロパノール:アセトン:H
2Oの25:25:4の混合液を用いた。ニンヒドリンのアセトン溶液(0.3%,w/v)を、可視化試薬として用いた。得られた結果は、アスパラギン酸ペプチド加水分解活性を5Δ株において測定できることを示す。このことは、E.coli 5Δ株におけるDP3加水分解活性を有する未知のペプチダーゼが存在することを示す。
【0149】
インビボ研究については、構築したペプチダーゼ欠損E.coli 5Δ株に対するDP3ジペプチドの毒性を試験した(
図28)。E.coli BW25113およびE. coli 5Δ株の菌体を、OD
555nm 約2の菌体密度になるまで、D−グルコースまたはグリセロール(0.4%,w/v)を補充したM9塩培地で増殖させた。菌体バイオマスを希釈し、約106菌体を、D−グルコースまたはグリセロール(0.4%,w/v)、およびDP3ジペプチドを補充したM9塩寒天上に撒いた。プレートを、37℃で48時間(D−グルコースに対する)または72時間(グリセロールに対する)インキュベートした(表5)。可視化解析は、pepB、iadA、pepE、ybiKおよびdapE遺伝子によりコードされる5個の既知のアスパラギン酸ペプチド加水分解酵素の欠失が、E.coli 5Δ株に対するDP3毒性を減少させることを示した(M9塩+D−グルコース培地で増殖した、BW25113に対する6μMから5Δ株に対する30μMまで)。50μMまでDP3濃度を上昇させると、E.coli 5Δ株の増殖が停止した。このことは、細胞内DP3ペプチダーゼ活性が残存していることを示唆する。
【0150】
8.3.特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を有するE.coli Δ5株における残存ペプチダーゼの同定
特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を有する残存細胞内ペプチダーゼを同定するため、以下の手法を用いた。E.coli 5Δ株の菌体を、D−グルコース(0.4%,w/v)を補充したM9塩培地4L中で37℃で一晩増殖させた。増殖した菌体を、遠心分離(4℃,10000rpm)により採取し、100mLの緩衝液F(20mM Tris−HCl pH7.5,20mM NaCl)中に再懸濁した。
【0151】
精製プロトコルは、以下のとおりであった:
工程1.フレンチ−プレス(Termo Spectronic)を2回通し、続いて遠心分離(14000g,4℃,20分)により、菌体を破砕して菌体屑を除去した。得られた粗タンパク質調製物を、緩衝液F(20mM Tris−HCl pH7.5,20mM NaCl)で平衡化したDEAE FF 16/10カラム(20mL)(GE Healthcare)に充填した。緩衝液F(各々10mL)において線形勾配のNaCl(20カラム容量において20〜600mM)により流速1mL/分で溶出し、回収し、実施例8.2.に記載されるように解析した。活性画分16〜21が見出された。
【0152】
工程2.回収画分16〜21からのタンパク質を、飽和(60%)(NH
4)
2SO
4により沈殿させ、2mLの緩衝液F中に再懸濁させ、緩衝液G(20mM Tris−HCl pH7)で平衡化した標準Superdex HR10/30Aカラム(GE Healthcare)に充填した。緩衝液Gを用い、均一な溶出を流速0.5mL/分で行った。0.5ml画分(各々0.5mL)を回収し、実施例8.2.に記載されるように解析した。活性画分(12〜13)を見出した。
【0153】
工程3.回収画分12〜13(工程2)からのタンパク質を、緩衝液G(20mM Tris−HCl pH7)で平衡化した標準Sourse15Qカラム(1.6mL)(GE Healthcare)に充填した。緩衝液Gにおいて線形勾配のNaCl(20カラム容量において0〜400mM)により、流速0.5mL/分で溶出した。画分(各々0.5mL)を回収し、実施例8.2.に記載されるように解析した。活性画分(15〜17)を見出した。精製データを表6に要約する。
【0154】
工程4.特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を有するペプチダーゼを同定するため、幾つかの画分(15〜17)からのタンパク質を、SDS−PAGE(Laemmli U.K.,Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4,Nature,1970,227:680−685)に供した。活性溶出のプロフィールを、タンパク質溶出のものと比較した。活性および溶出プロフィールが同一であるタンパク質が1種のみ見出された。
【0155】
精製タンパク質を、SDSゲルから抽出し、トリプシンで消化した(Govorun V.M.ら,Biochemistry(Mosc.),2003,68(1):42−49)。(Govorun V.M.ら,Biochemistry(Mosc.),2003,68(1):42−49)に記載されるように、MALDI−TOFを用いて消化混合液を質量分析した。単離されたタンパク質で得られた質量スペクトルは、E.coliのアミノペプチダーゼA/I(PepA)について得られたものと一致した。したがって、第6のペプチダーゼが、E.coli 5Δ株において見出された。
【0156】
8.4.E.coliペプチダーゼ欠損6Δ株の構築
PepA遺伝子を、実施例8.1.に記載されるように、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB)株において欠失させた。λattL−cat−λattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP9(配列番号36)およびP10(配列番号37)、ならびにpMW118−λattR−cat−λattLプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したような電気的形質転換により、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB)/pKD46株中に導入して、E.coli BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB,pepA::λattL−cat−λattR)株(E.coli 6Δ株)を構築した。
【0157】
8.5.E.coli 6Δ株における特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性の解析
特異的なアスパラギン酸ペプチド加水分解活性を、実施例8.2.で上記したように、インビトロで解析した。得られた結果(表4)は、4〜5Δ株と比較してより低いアスパラギン酸ペプチド加水分解活性が6Δ株において測定できることを示す。
【0158】
実施例9.Lal活性を有する改変E.coli 5Δおよび6Δ株を用いる、L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有するジペプチドの発酵生産
L−AspまたはL−Glu等の酸性L−アミノ酸をN末端に有するジペプチドを、腸内細菌科の細菌、より具体的には、E.coli等のエシェリヒア属に属する、ジペプチド生産能を有する細菌を用いて、必要なアミノ酸(例であり、これに限定されない)を補充した、またはこれを欠く培地中で生産した。ジペプチド生産菌は、L−アミノ酸αリガーゼ活性を有するようにさらに改変された、ペプチダーゼ活性を欠損する上記E.coli 5Δまたは6Δ株である。ジペプチド生産株は、さらに BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYからなる群より選ばれるLalをコードする遺伝子を、E.coliの染色体に導入するか、またはLalをコードする遺伝子を有するプラスミドにおいて、細菌の菌体中に導入する。Lalをコードする遺伝子を、プロモーター下に配置する。
【0159】
Lalをコードする遺伝子を保持する改変E.coli 5Δまたは6Δ株、およびコントロール5Δまたは6Δ株を各々、Luria−Bertaniブロス(Sambrook,J.およびRussell,D.W.(2001) Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版).Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される溶原性ブロスとも呼ばれる)中で、28〜37℃で18〜72時間培養する。Lalをコードする遺伝子を保持するE.coli 5Δまたは6Δ株を、20×200mm試験管における2mLの発酵培地中に接種し、回転式振盪機において250rpmにて28〜37℃で18〜72時間培養する。
【0160】
発酵培地の組成は、以下(g/L)である:
グルコース
5〜40
NaCl
0.8
(NH
4)
2SO
4 22
K
2HPO
4 2.0
MgSO
4x7H
2O
0.8
MnSO
4x5H
2O
0.02
FeSO
4x7H
2O
0.02
塩酸チアミン
0.002
酵母抽出物
1.0〜2.0
CaCO
3 30
L−Phe
0〜100(mM)
L−Asp
0〜100(mM)
【0161】
発酵培地を、116℃で30分間滅菌する。但し、グルコースおよびCaCO
3は別々に以下のとおり滅菌する:グルコースは110℃で30分間、CaCO
3は116℃で30分間。pHを、KOH溶液により5〜8に調整する。
【0162】
培養後、蓄積したジペプチドを、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定する。TLCプレート(10×20cm)を、非蛍光指示薬を含むSorbfilシリカゲル(Sorbpolymer、クラスノダール,ロシア連邦)0.11mm層で被覆する。TLCプレートを、100:100:12:28の2−プロパノール:アセトン:250mMアンモニア:H
2Oからなる移動相で展開する。ニンヒドリンのアセトン溶液(0.3%,w/v)を、可視化試薬として用いる。検出を540nmで行う。
【0163】
参考例1
BBR47_51900およびStaur_4851タンパク質の既知L−アミノ酸αリガーゼ(Lal)との多重アライメントを表2(同一性)および表3(類似性)に示す。表2および3から分かるように、BBR47_51900およびStaur_4851タンパク質は、既知のLalと、25%以下の同一性値(表2)、および43%以下の類似性値(表3)を有する。
【0164】
参考例2
BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質についてのペア−ワイズ・アライメント・データを表7(同一性)および表8(類似性)に示す。表7および8から分かるように、BBR47_51900、Staur_4851、DES、BUR、BCE、BTH、AME、SFLおよびBMYタンパク質は、25%以下の同一性値(表7)、および44%以下の類似性値(表8)を有する。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
タンパク質の略語:
1−BBR47_51900(NCBI参照配列:YP_002774671.1);
2−Staur_4851(NCBI参照配列:ADO72629.1);
3−TDE2209(NCBI参照配列:NP_972809.1);
4−BL00235(NCBI参照配列:YP_081312.1);
5−plu1218(NCBI参照配列:NP_928530.1);
6−YwfE(UniProtKB/Swiss−Prot:P39641.1);
7−Rsp1486(NCBI参照配列:NP_523045.1);
8−NP_900476(NCBI参照配列:NP_900476.1);
9−Aple02000835(NCBI参照配列:ZP_00134462.2);
10−SMU1321c(NCBI参照配列:NP_721690.1);
11−YP_816266(NCBI参照配列:YP_816266.1);
12−YP_001544794(NCBI参照配列:YP_001544794.1);
13−YP_077482(NCBI参照配列:YP_077482.1);
14−BAH56723(GenBank:BAH56723.1);
15−NP_358563(NCBI参照配列:NP_358563.1);
16−YP_910063(NCBI参照配列:YP_910063.1);
17−BAG72134(GenBank:BAG72134.1);
18−plu1440(NCBI参照配列:NP_928738.1);
19−AAZ37741(GenBank:AAZ37741.1).
【0168】
【表3】
【0169】
タンパク質の略語:
1−BBR47_51900(NCBI参照配列:YP_002774671.1);
2−Staur_4851(NCBI参照配列:ADO72629.1);
3−TDE2209(NCBI参照配列:NP_972809.1);
4−BL00235(NCBI参照配列:YP_081312.1);
5−plu1218(NCBI参照配列:NP_928530.1);
6−YwfE(UniProtKB/Swiss−Prot:P39641.1);
7−Rsp1486(NCBI参照配列:NP_523045.1);
8−NP_900476(NCBI参照配列:NP_900476.1);
9−Aple02000835(NCBI参照配列:ZP_00134462.2);
10−SMU1321c(NCBI参照配列:NP_721690.1);
11−YP_816266(NCBI参照配列:YP_816266.1);
12−YP_001544794(NCBI参照配列:YP_001544794.1);
13−YP_077482(NCBI参照配列:YP_077482.1);
14−BAH56723(GenBank:BAH56723.1);
15−NP_358563(NCBI参照配列:NP_358563.1);
16−YP_910063(NCBI参照配列:YP_910063.1);
17−BAG72134(GenBank:BAG72134.1);
18−plu1440(NCBI参照配列:NP_928738.1);
19−AAZ37741(GenBank:AAZ37741.1)
【0170】
【表4】
【0171】
略号:
WT−BW25113;
4Δ−BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB);
5Δ−BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB;
6Δ−BW25113(ΔpepB,iadA::λattB,pepE::λattB,ybiK::λattB,dapE::λattB,pepA::λattL−cat−λattR).
【0172】
【表5】
【0173】
【表6】
【0174】
【表7】
【0175】
【表8】
【0176】
実施例10.ATP再生系を用いる、BBR47_51900およびStaur_4851によるAsp−Pheの酵素生産
高度に濃縮されたATPが酵素反応を阻害することを防ぐため、Asp−Pheの生産収率を、ATP再生のためのホスホエノールピルビン酸およびピルビン酸キナーゼを含むBBR47_51900およびStaur_4851の反応混合液において試験した。総容量1mlの反応混合液の組成は、以下のとおりであった。
【0177】
BBR47_51900またはStaur_4851
0.15U
Tris−HCl pH9.0
50mM
L−AspNa
100mM
L−Phe
100mM
ATP
10mM
ホスホエノールピルビン酸
100mM
MgSO
4x7H
2O 10mM
ピルビン酸キナーゼ
25U
H
2O
総容量1mLまで
【0178】
反応を、37℃で1〜48時間行った。1mLの反応混合液のうち100μLを、各反応時間でサンプリングした。反応を停止させるために10μLの1M EDTA(pH9.0)が添加された各反応混合液を、HPLC解析に供した。条件は、実施例4に記載されるとおりであった。その結果、BBR47_51900およびStaur_4851は、ATP再生系においてAsp−Pheを生産することができた(表9)。
【0179】
【表9】
【0180】
実施例11.E.coli 7Δ株における特異的なAsp−Phe加水分解活性の解析
11.1.E.coli Asp−Phe加水分解ペプチダーゼ欠損7Δ株の構築
pepD遺伝子を、E.coli JM109株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP11(配列番号38)およびP12(配列番号39)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB)株を構築した。
【0181】
pepE遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP13(配列番号40)およびP14(配列番号41)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepB::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB)株を構築した。
【0182】
iadA遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP15(配列番号42)およびP16(配列番号43)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB)株を構築した。
【0183】
pepA遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP17(配列番号44)およびP18(配列番号45)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB)株を構築した。
【0184】
pepB遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP19(配列番号46)およびP20(配列番号47)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB)株を構築した。
【0185】
iaaA遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP21(配列番号48)およびP22(配列番号49)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB)株を構築した。
【0186】
dpp遺伝子オペロン(dppA,dppB,dppC,dppD,dppF)を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP23(配列番号50)およびP24(配列番号51)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB)株を構築した。
【0187】
11.2.E.coli 7Δ株における特異的なAsp−Phe加水分解活性の解析
E.coli JM109およびE.coli 7Δ株の菌体を、LB寒天培地上で、37℃で16時間増殖させた。増殖した菌体を、20mLのMS培地中に接種し、OD
610nm 約20の菌体密度になるまで37℃で増殖させた。次いで、Asp−Pheの標準品を培養液に添加し(終濃度2mM)、さらに32時間培養を行った。各培養時間で得られた培養液を遠心分離して、培養上清を得た。培養上清中の残存Asp−Pheを、HPLCにより解析した。結果を表10に示す。E.coli 7Δ株の培地におけるAsp−Phe加水分解活性は、E.coli JM109のものと比較して、はるかに低かった。
【0188】
MS培地の組成は、以下(g/L)である。
グルコース
20
(NH
4)
2SO
4 8
KH
2PO
4 0.5
FeSO
4x7H
2O
0.005
MnSO
4x7H
2O
0.005
酵母抽出物
1
L−Tyr
0.05
MgSO
4x7H
2O
0.5
CaCO
3 30
【0189】
発酵培地を121℃で20分間滅菌する。但し、グルコース、MgSO
47H
2OおよびCaCO
3は別々に以下のとおり滅菌する:グルコースおよびMgSO
47H
2Oは121℃で20分間、CaCO
3は180℃で2時間。pHを、KOH溶液により7に調整する。その結果、特異的なAsp−Phe加水分解活性は、E.coli 7Δ数では、E.coli JM109におけるものと比較して、より低かった(表10)。
【0190】
【表10】
【0191】
実施例12.Lal遺伝子を過剰発現するE.coli 7Δ株によるAsp−Pheの生産性の評価
BBR47_51900およびStaur_4851をコードする遺伝子の一次構造を、E.coliでの発現のためにさらに最適化した。ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis) NBRC 100599由来のBBR47_51900およびスチグマテラ・アウランチアカ(Stigmatella aurantiaca) DW4/3−1由来のStaur_4851をコードする遺伝子を、GenScriptにより合成し、pUC57プラスミドのセット(pUC57−cBBRおよびpUC57−cSTA)として移入した。調製したcBBRおよびcSTAの塩基配列を、それぞれ、配列番号68および69に示す。
【0192】
12.1.pSF12−cBBRおよびpSF12−cSTAの構築
BBR47_51900を保持するDNAフラグメントを、プライマーP25(配列番号52)およびP26(配列番号53)、ならびにpUC57−cBBRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。PCRを、以下の工程プログラム:98℃,30秒;(98℃,15秒;58℃,10秒;72℃,1分)×30サイクル;72℃,5分を用いて、0.04μgのプラスミドDNA、各0.2μmol/Lのプライマー、1.0ユニットのPhusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(New England Labs)、10μLの5×Phusion HF緩衝液および各0.2mmol/LのdNTPを含む50μLの反応混合液で行った。増幅したDNAフラグメントを、MinElute PCR精製キット(Qiagen)により精製した。
【0193】
Staur_4851を保持するDNAフラグメントを、プライマーP27(配列番号54)およびP28(配列番号55)、ならびにpUC57−cSTAプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。PCR条件および精製方法は、上述したとおりであった。
【0194】
得られた溶液中の、増幅DNAを制限酵素NdeIおよびPstIで切断し、次いで、各1.3kbフラグメントを、MinElute Reaction Cleanupキット(Qiagen)で精製した。
【0195】
pSF12−ggtベクターを、pUC18ベクターから構築した。これは、E.coli W3110株由来のrpoHプロモーターおよびγ−グルタミルトランスペプチダーゼをコードするggt遺伝子を保持する(WO2013051685A1)。pSF12−ggtベクターを、NdeIおよびPstIで切断した。DNAフラグメントを、アガロースゲル電気泳動により分離し、3.0kb DNAフラグメントを、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)により回収した。
【0196】
BBR47_51900またはStaur_4851を含む1.3kb DNAフラグメント、および上記で得られた3.0kb DNAフラグメントを、TaKaRa LigationキットVer.2.1.(TaKaRa)を用いる連結反応に16℃で30分間供した。E.coli JM109コンピテント細胞(TaKaRa)を、連結反応混合液を用いて、熱ショック法により形質転換し、100μg/mLアンピシリンを含むLB寒天培地上に塗布し、30℃で一晩培養した。プラスミドを、既知の方法にしたがって、培地上で増殖した形質転換体のコロニーから抽出し、それによりpSF12−cBBRおよびpSF12−cSTAを得た。ベクターのDNA配列を、3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いて確認した。
【0197】
12.2.Lal活性を有する改変E.coli 7Δ株を用いる、Asp−Pheの発酵生産
ジペプチド生産菌は、L−アミノ酸αリガーゼ活性を有するようにさらに改変された、ペプチダーゼおよびジペプチドパーミアーゼ活性を欠損する、上記E.coli 7Δ株である。ジペプチド生産株は、プラスミド(それぞれpSF12−cBBRまたはpSF12−cSTA)において、細菌の菌体中に導入されるBBR47_51900またはStaur_4851をコードする遺伝子を保持する。Lalをコードする各遺伝子を、rpoHプロモーター下に配置する。Lalをコードする遺伝子を保持する改変E.coli 7Δ株、およびコントロール7Δ株を各々、LB寒天培地(Lalをコードする遺伝子を保持する改変E.coli 7Δ株のために、100μg/mlアンピシリンを含む)上で25℃にて24時間培養した。Lalをコードする遺伝子を保持するE.coli 7Δ株、およびコントロール7Δ株を、500mL坂口フラスコにおいて、100mM L−Aspおよび100mM L−Pheを補充した20mLのMS培地中に接種し、往復式振盪機において120rpmで25℃にて32時間培養した。得られた培養液を遠心分離して、培養上清を得た。培養上清中に蓄積したAsp−Pheを、HPLCにより解析した。結果を表11に示す。
【0198】
【表11】
【0199】
表11から分かるように、Asp−Pheは、7Δ株の使用によっては生産されなかった一方で、Asp−Pheは、Lalをコードする遺伝子を保持する7Δ株の使用によって生産された。
【0200】
実施例13.E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalによるAsp−Phe生産性の評価
13.1.tyrRおよびtyrA欠損E.coli 7Δ株の構築
先ず、芳香族アミノ酸の生合成に関与する酵素の合成を抑制するため、tyrR遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB)株において欠損させた。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP29(配列番号56)およびP30(配列番号57)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、実施例11.1に記載したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔttB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB)株を構築した。
【0201】
次いで、tyrA遺伝子を、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB)株において欠損させて、PheおよびTyrの生合成における共通中間体であるプレフェン酸が、Tyr生合成に利用されないようにした。ΔattL−cat−ΔattRカセットを保持するDNAフラグメントを、プライマーP31(配列番号58)およびP32(配列番号59)、ならびにpMW118−ΔattL−cat−ΔattRプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、上記したように、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB)/pKD46株中に導入した。Cm
Rマーカーを、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB,tyrA::ΔattR−cat−ΔattL)形質転換体から切り出して、E.coli JM109(pepD::ΔattB,pepE::ΔattB,iadA::ΔattB,pepA::ΔattB,pepB::ΔattB,iaaA::ΔattB,dpp::ΔattB,tyrR::ΔattB,tyrA::ΔattB)株を構築した。
【0202】
13.2.pHSG−cBBRおよびpHSG−cSTAの構築
pHSG−cBBRプラスミドを構築するために、pSF12−cBBRプラスミドのrpoHプロモーターおよびBBR47_51900遺伝子を含む対応EcoRI−SphIフラグメントを、EcoRIおよびSphIでの消化により切出し、次いで、同じ制限酵素により消化されたpHSG396ベクター(TaKaRa)に連結した。
【0203】
pHSG−cSTAを構築するため、rpoHプロモーター下にあるStaur_4851を保持するDNAフラグメントを、プライマーP33(配列番号60)およびP34(配列番号61)、ならびにpSF12−cSTAプラスミドを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。PCRは、以下の工程プログラム:98℃,30秒;(98℃,15秒;58℃,10秒;72℃,1分)×30サイクル;72℃,5分を用いて、0.04μgのプラスミドDNA、各0.2μmol/Lのプライマー、1.0ユニットのPhusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(New England Labs)、10μLの5×Phusion HF緩衝液および各0.2mmol/LのdNTPを含む50μLの反応混合液で行った。次いで、BamHIおよびXhoIにより消化された1.5kbフラグメントを、同じ制限酵素で消化されたpHSG396に連結した。
【0204】
13.3.pMGAL1およびpHSG−cLalベクターによるE.coli 9Δ株の形質転換
pMGAL1ベクターを、pMW19(Wako)から構築した。これは、E.coliにおけるPhe生合成に関与する3つの遺伝子;コリスミ酸ムターゼ−プレフェン酸デヒドラターゼ(CM−PD)、3−デオキシ−D−アラビノヘプツロソン酸−7−リン酸シンテターゼ(DAHPシンテターゼ)、およびシキミ酸キナーゼ(SK)をそれぞれコードするpheA、aroG4、およびaroLを保持する(特許第3225597号)。pheAおよびaroG4遺伝子の各々を、対応する元の遺伝子から変異させて、生合成されるPheによるネガティブ・フィードバックを回避した。
【0205】
pMGAL1およびpHSG−cLalベクターを、100μg/mLアンピシリンおよび25μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地を用いて、電気穿孔法により、E.coli 9Δ株中に同時に導入した。このようにして得られた株を、E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalと名付けた。
【0206】
13.4.E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalによるAsp−Pheの発酵生産
改変E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalおよびコントロール9Δ株/pMGAL1の各々を、LB寒天培地(E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalのために100μg/mlアンピシリンおよび25μg/mlクロラムフェニコールを含む)上で、25℃で24時間培養した。E.coli 9Δ/pMGAL1/pHSG−cLalおよびコントロール9Δ/pMGAL1株を、500mL坂口フラスコにおいて100mM L−Aspを補充した20mLのMS培地中に接種し、往復式振盪機において、120rpmで25℃にて72時間培養した。得られた培養液を遠心分離して、培養上清を得た。培養上清中に蓄積したPheおよびAsp−Pheを、HPLCにより解析した。結果を表12に示す。
【0207】
【表12】
【0208】
表12から分かるように、Asp−Pheは、9Δ/pMGAL1株の使用によって生産されなかった一方で、Asp−Pheは、Lalをコードする遺伝子を保持する9Δ/pMGAL1株の使用によって生産された。
【0209】
実施例14.DESの基質特異性の解析
14.1.pELAC−MBP−DES−HTプラスミドの構築
14.1.1.補助プラスミドpELACの構築
<PlacUV5>DNAフラグメントを、オリゴプライマーP35(配列番号62)、P36(配列番号63)、およびpUC18プラスミド(GenBank:L08752.1)のDNAを鋳型として用いて、PCRにより増幅した。
【0210】
得られたDNAフラグメントを、BglIIおよびXbaIにより消化し、同じ制限酵素により消化されたpET22(b+)プラスミド(Novagen,カタログ番号69744−3)中にクローニングした。これにより、pELACプラスミドを構築した。
【0211】
14.1.2.補助プラスミドpELAC−MBP−HTの構築
malE遺伝子(シグナルペプチド配列無し)を、オリゴプライマーP37(配列番号64)、P38(配列番号65)、およびE.coli MG1655染色体を鋳型として用いて、PCRにより増幅した。得られたDNAフラグメントを、XbaIおよびBamHIにより消化し、pELAC−/XbaI−BamHIベクター中にクローニングした。これにより、pELAC−MBP−HTプラスミドを構築した。
【0212】
14.1.3.pELAC−MBP−DES−HTプラスミドの構築
pELAC−MBP−DES−HTプラスミドを構築するため、我々は、オリゴプライマーP39(配列番号66)、P40(配列番号67)、およびpUC57−DES(ジペプチド特許出願に記載される)のDNAを鋳型として用いることにより、DES遺伝子を含むDNAフラグメントを増幅した。得られたDNAフラグメントを、BamHIおよびNotIで消化し、pELAC−MBP−HT/BamHI−NotIベクターに連結した。これにより、pELAC−MBP−DES−HTプラスミドを構築した。
【0213】
14.2.MBP融合His6タグ付加DESの発現および精製
pELAC−MBP−DES−HTを保持するE.coli 7Δの菌体を、試験管において、100μg/mLアンピリシンを含むLB培地中で、OD
610nmが約2になるまで、37℃で増殖させた。得られた培養液2mLを、500ml坂口フラスコにおいて、IPTG(終濃度0.1mmol/L)を補充した100mLのLB培地中に、30℃で8時間接種した。誘導された菌体を、1.6Lの培養ブロスから採取し、200〜240mLのHT−II緩衝液(50mM Tris−HCL,pH8.0,0.3M NaCl,10mMイミダゾール,15%グリセロール)中に再懸濁し、ソニケーター(INSONATOR 201M,KUBOTA)を用いて超音波処理した。4℃および14,000rpmでの15分間の遠心分離、続いて、0.45mmフィルター(Millipore)を通じた濾過により、屑を除去した。粗タンパク質の溶液を、製造業者の推奨にしたがい、AKTA avant 25(GE healthcare)を用いて、HisTALON Superflowカートリッジ,5ml(Clontech)に充填した。MBP融合His
6タグ付加DESを含む画分を合わせ、SC緩衝液(50mM Tris−HCl,pH8.0,0.3M NaCl,15%グリセロール)で平衡化したPD−10カラム(GE healthcare)を用いて脱塩した。
【0214】
14.3.MBP融合His
6タグ付加DESのAsp−Phe加水分解活性の解析
MBP融合His
6タグ付加DESにより合成されたジペプチドを、総容量400μLの反応混合液のHPLC解析を用いて決定した。反応混合液は、以下を含んだ:
DES
160μg
Tris−HCl,pH9.0
50mM
L−Asp
100mM
L−Phe
100mM
アデノシン 5’−トリホスフェート(ATP)
10mM
MgSO
4x7H
2O 10mM
【0215】
反応を、37℃で15分間行った。次いで、酵素反応を停止するために10μlの1M EDTA(pH9.0)が添加された反応混合液を、HPLC解析に供した。条件は、実施例4に記載されるとおりであった。その結果、DESは、0.30mM Asp−Pheの精製を触媒する。
【0216】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して詳細に記載されているものの、発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更が為され得ること、および均等物が採用され得ることは、当業者に明らかである。本明細書中の全ての引用文献は、参照により本願の一部として援用される。