特許第6020718号(P6020718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

特許6020718燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法
<>
  • 特許6020718-燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法 図000002
  • 特許6020718-燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法 図000003
  • 特許6020718-燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法 図000004
  • 特許6020718-燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法 図000005
  • 特許6020718-燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法 図000006
  • 特許6020718-燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法 図000007
  • 特許6020718-燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法 図000008
  • 特許6020718-燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020718
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20161020BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20161020BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20161020BHJP
【FI】
   H01M8/02 B
   H01M8/02 R
   !H01M8/10
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-516994(P2015-516994)
(86)(22)【出願日】2014年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2014060221
(87)【国際公開番号】WO2014185193
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2015年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-104421(P2013-104421)
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 明
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−311069(JP,A)
【文献】 特表2007−537574(JP,A)
【文献】 特開平11−97039(JP,A)
【文献】 特開2010−129289(JP,A)
【文献】 特開2006−228533(JP,A)
【文献】 特開2008−43972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体に隣接して設けられ断面形状が複数の凹凸からなる凹凸部位を流体を流す流路として有する第1セパレータ及び第2セパレータを備えた燃料電池用セパレータアセンブリの製造方法であって、
前記第1セパレータ側及び/又は前記第2セパレータ側から押圧力を付加した状態で前記第1セパレータ及び前記第2セパレータの前記凹凸部位において対向する凸部同士を接触させて接合する接合工程と、を有し、
前記接合工程では、弾性部材を介在させて前記第1セパレータ側及び/又は前記第2セパレータ側から押圧力を付加し、前記弾性部材の弾性変形によって前記対向する凸部同士を接触させることを特徴とする燃料電池用セパレータアセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記接合工程では前記弾性部材に設けられた押圧領域に押圧力を加えながら前記弾性部材に設けられた接合領域において前記第1セパレータと前記第2セパレータとの接合作業を行う請求項1に記載の燃料電池用セパレータアセンブリの製造方法。
【請求項3】
前記接合工程において、前記弾性部材を介在させた側の反対側は前記弾性部材に比べて変形しにくい剛直な材料で構成されて前記第1セパレータ側及び/又は前記第2セパレータ側から押圧力が付加される請求項1または2に記載の燃料電池用セパレータアセンブリの製造方法。
【請求項4】
膜電極接合体に隣接して設けられ断面形状が複数の凹凸からなる凹凸部位を流体を流す流路として有する第1セパレータ及び第2セパレータを備えた燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置であって、
相対的に接近離間し、前記第1セパレータ側及び/又は前記第2セパレータ側から押圧力を付加する一対の押圧部材と、
前記一対の押圧部材におけるいずれかの押圧部材と前記第1セパレータとの間に配置されて前記第1セパレータ及び前記第2セパレータの前記凹凸部位において対向する凸部同士を弾性変形によって接触させる弾性部材と、
前記第1セパレータと前記第2セパレータとを接合する接合部と、を備えることを特徴とする燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記接合部による前記第1セパレータと前記第2セパレータとの接合を行う接合領域と、前記押圧部材による押圧力を前記第1セパレータ側及び/又は前記第2セパレータ側から付加する押圧領域と、を有する請求項4に記載の燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置。
【請求項6】
前記第2セパレータと接触する前記押圧部材は、前記弾性部材に比べて変形しにくい剛直な材料で構成される請求項4または5に記載の燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、主に膜電極接合体の両側にセパレータを配置した燃料電池セルを複数積層させて構成される。燃料電池には電気を生じさせるための燃料、酸化剤等を流通させる必要があり、隣接する膜電極接合体やセパレータとは燃料や酸化剤をシールするために膜電極接合体やセパレータの外周にシール剤が塗布されたり、溶接されたりしている。一例として、隣接する燃料電池セル間において隣り合うセパレータ同士は溶接されてセパレータアセンブリとして構成されるものがある(特許文献1参照)。また、他の例として、膜電極接合体を構成する電解質膜の両面に触媒層を配置して接合する技術がある。この場合、電解質膜と接する一方の触媒層において電解質膜と接する反対側に弾性体を配置し、電解質膜と接する他方の触媒層において電解質膜と接する反対側から超音波を付与している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−187757号公報
【特許文献2】特許第5304125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セパレータの中央部には、燃料や酸化剤を流通させるための流路として断面が複数の凹凸からなる波形形状が形成されている。燃料電池セルによって生成された電力はセパレータの波形形状同士が接触することによって伝達され、波形形状の凹凸の接触状態は燃料電池セル間の通電抵抗に影響を及ぼす。しかし、波形形状の凹凸の高さにもバラつきがあるため、全ての凹凸を接触させることは難しい。そのため、特許文献1のように隣接するセパレータ同士を積層して溶接する際にも波形形状のバラつきやセパレータの組付けバラつきによって接触させるはずの波形形状の凸部同士を接触させることが充分にできず、それにより燃料電池セル間の電気抵抗が上昇してしまう、といった問題がある。
【0005】
そこで本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、燃料電池セル間の電気抵抗を良好に抑制することができる燃料電池用セパレータアセンブリの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明は、膜電極接合体に隣接して断面形状が複数の凹凸からなる凹凸部位を流体を流す流路として有する第1セパレータ及び第2セパレータを備えた燃料電池用のセパレータアセンブリの製造方法である。上記製造方法は、第1セパレータ側及び/又は第2セパレータ側から押圧力を付加した状態で第1セパレータ及び第2セパレータの凹凸部位において対向する凸部同士を接触させて接合する接合工程、を有する。本発明において、接合工程では弾性部材を介在させて第1セパレータ及び/又は第2セパレータ側から押圧力を付加し、弾性部材の弾性変形によって対向する凸部同士を接触させることを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成する他の本発明は、膜電極接合体に隣接して設けられ断面形状が複数の凹凸からなる凹凸部位を流体を流す流路として有する第1セパレータ及び第2セパレータを備えた燃料電池用のセパレータアセンブリの製造装置である。上記製造装置は、相対的に接近離間し第1セパレータ側及び第2セパレータ側から押圧力を付加する一対の押圧部材と、一対の押圧部材のいずれかの押圧部材と第1セパレータとの間に配置されて第1セパレータ及び第2セパレータの凹凸部位において対向する凸部同士を弾性変形によって接触させる弾性部材と、第1セパレータと前記第2セパレータとを接合する接合部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池を構成するセパレータアセンブリの製造装置の概略平面図である。
図2】同製造装置の要部拡大平面図である。
図3】同製造装置に用いられる弾性部材を示す平面図である。
図4図2の4−4線に沿う断面図である。
図5】同実施形態に係る燃料電池を示す斜視図である。
図6】燃料電池の構成を示す分解斜視図である。
図7】燃料電池の一部を示す分解斜視図である。
図8】同実施形態に係るセパレータアセンブリ及び膜電極接合体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を構成するセパレータアセンブリの製造装置を示す概略平面図、図2は同製造装置の要部拡大平面図、図3は同製造装置に用いられる弾性部材を示す平面図、図4図2の4−4線に沿う断面図である。図5は本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す斜視図、図6は燃料電池の構成を示す分解斜視図、図7は燃料電池の一部を示す分解斜視図、図8は同実施形態に係る燃料電池のセパレータアセンブリ及び膜電極接合体を示す断面図である。
【0011】
本実施形態では、燃料電池100を構成する膜電極接合体11に隣接して配置された2つのセパレータ13,14からなる、いわゆるセパレータアセンブリ12の製造方法及び製造装置について説明する。セパレータアセンブリ12の製造方法は、図4に示すように、アノード側セパレータ13とカソード側セパレータ14とを接合する接合工程を有する。セパレータ13,14は凹凸状の波形形状13g、14gを有し、接合工程では弾性部材230を用いて波形形状13g、14gを接触させて接合を行っている。詳細については後述する。
【0012】
(燃料電池)
次にセパレータアセンブリを含む燃料電池について説明する。燃料電池100は、燃料電池セル10aを複数積層した積層体10を主要な構成要素として有している。燃料電池セル10aは、膜電接合体11の両側面にセパレータアセンブリ12を配置して構成される。膜電極接合体11は、電解質膜11aの片側にアノード11b、もう片側にカソード11cが接合されている。セパレータアセンブリ12は、2枚のセパレータ13,14を有する。また、積層体10の積層方向における両端部には集電板16,17が設けられている。また、燃料電池100は、筐体20を有している。筐体20は、一対の締結板21、22と補強板23、24、及びエンドプレート25,26を有している。燃料電池用セパレータアセンブリ12の製造装置200は、概説すれば図1図4に示すように、コンベヤ210と、セパレータ13をセパレータ14に向かって押圧する押圧部材220と、押圧部材220とセパレータ13との間に配置されてセパレータ13,14に設けられた断面が複数の凹凸からなる波形形状13g、14g(凹凸部位に相当)において波形形状13g、14gの対向する凸部同士を接触させる弾性部材230と、ハンドロボット240と、セパレータ13とセパレータ14とを接合する溶接ロボット250(接合部に相当)と、を主に有する。まず、以下に燃料電池セル10aに含まれる各部材について説明する。
【0013】
セパレータ13,14は、図7図8に示し、積層された複数の燃料電池セル10aにおいて隣り合う膜電極接合体11を隔離しつつ、膜電極接合体11で発生した電力を通電させている。セパレータ13,14は、アノード側セパレータ13(第1セパレータに相当)とカソード側セパレータ14(第2セパレータに相当)とに分類される。アノード側セパレータ13は、膜電極接合体11のアノード11bに当接させている。アノード側セパレータ13は、導電性材料を有する金属からなり、アノード11bよりも大きい薄板状に形成している。
【0014】
アノード側セパレータ13の中央には、図7図8に示すように、燃料ガス(水素)と冷却水等の冷却流体とを隔てて流す流路を構成するように複数の凹凸を一定の間隔で形成した波形形状13gを設けている。アノード側セパレータ13は、凹凸形状のうち、アノード11bと接触して形成された閉空間を、アノード11bに対して水素を供給するアノードガス流路13hとして用いている。一方、アノード側セパレータ13は、断面が複数の凹凸形状からなる波形形状13gと、カソード側セパレータ14の波形形状14gとの間に形成された閉空間を、冷却水を供給する冷却流体流路13j(14j)として用いている。
【0015】
アノード側セパレータ13は、長方形状からなり、その長手方向の一端に、カソードガス供給口13a、冷却流体供給口13b、およびアノードガス供給口13cに相当する貫通孔を開口している。同様に、アノード側セパレータ13は、その長手方向の他端に、アノードガス排出口13d、冷却流体排出口13e、およびカソードガス排出口13fに相当する貫通孔を開口している。
【0016】
カソード側セパレータ14は、膜電極接合体11のカソード11cに当接している。カソード側セパレータ14は、導電性材料を有する金属からなり、カソード11cよりも大きい薄板状に形成している。
【0017】
カソード側セパレータ14の中央には、図7図8に示すように、酸化剤ガス(酸素を含有した空気または純酸素)と冷却水とを隔てて流す流路部を構成するように断面が複数の凹凸形状からなる波形形状14gを設けている。カソード側セパレータ14は、凹凸形状のうち、カソード11cと接触して形成された閉空間を、カソード11cに対して酸化剤ガスを供給するカソードガス流路14hとして用いている。一方、カソード側セパレータ14は、凹凸形状のうち、アノード側セパレータ13との間に形成された閉空間を、冷却水を供給する冷却流体流路14j(13j)として用いている。
【0018】
カソード側セパレータ14は、長方形状からなり、その長手方向の一端に、カソードガス供給口14a、冷却流体供給口14b、およびアノードガス供給口14cに相当する貫通孔を開口している。同様に、カソード側セパレータ14は、その長手方向の他端に、アノードガス排出口14d、冷却流体排出口14e、およびカソードガス排出口14fに相当する貫通孔を開口している。セパレータ14はセパレータ13と接合され、供給口14a〜14c及び排出口14d〜14fはセパレータ13の供給口13a〜13c及び排出口13d〜13fと連通する。
【0019】
膜電極接合体11は、図8に示し、供給された酸素と水素を化学反応させて電力を生成する。膜電極接合体11は、電解質膜11aの片側にアノード11bを接合し、もう一方の側にカソード11cを接合して形成している。膜電極接合体11は、一般的にMEA(membrane electrode assembly)と称している。電解質膜11aは、たとえば、固体の高分子材料からなり、薄板状に形成している。固体高分子材料には、たとえば、水素イオンを伝導し、湿潤状態で良好な電気伝導性を有するフッ素系樹脂を用いている。アノード11bは、電極触媒層、撥水層、およびガス拡散層を積層して構成し、電解質膜11aよりも若干小さい薄板状に形成している。カソード11cは、電極触媒層、撥水層、およびガス拡散層を積層して構成し、アノード11bと同様の大きさで薄板状に形成している。アノード11bおよびカソード11cの電極触媒層は、導電性の担体に触媒成分が担持された電極触媒と高分子電解質を含んでいる。アノード11bおよびカソード11cのガス拡散層は、たとえば、充分なガス拡散性および導電性を有する炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロス、カーボンペーパ、またはカーボンフェルトから形成している。
【0020】
MEA11は、フレーム部材15を備えている。フレーム部材15は、積層した電解質膜11a、アノード11b、およびカソード11cの外周を一体に保持している。フレーム部材15は、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂からなり、セパレータ13,14の外周部分の外形形状と同様の外形形状で形成している。フレーム部材15は、その長手方向の一端に、カソードガス供給口15a、冷却流体供給口15b、およびアノードガス供給口15cに相当する貫通孔を開口している。同様に、フレーム部材15は、その長手方向の他端に、アノードガス排出口15d、冷却流体排出口15e、およびカソードガス排出口15fに相当する貫通孔を開口している。
【0021】
上記の燃料電池セル10aは、互いに密封した状態で複数積層する必要がある。このため、積層する燃料電池セル10aの中でもMEA11とセパレータ13及びセパレータ14との間は、外周に封止部材を塗布することによって封止している。封止部材は、たとえば、熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂は、たとえば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等から選択する。また、積層する燃料電池セル10aにおいて隣り合うセパレータ13とセパレータ14とは、後述するようにセパレータ13,14の外周等を溶接することによって封止している。しかし、MEA11とセパレータ13又はセパレータ14との間と同様に封止部材を塗布することによって封止することもできる。
【0022】
一対の集電板16,17は、図6図7に示し、燃料電池セル10aで生成された電力を外部に取り出す。
【0023】
一対の集電板16,17は、燃料電池セル10aが複数積層された積層体10の両端にそれぞれ配設している。一対の集電板16,17の外形形状は、一部の形状を除いて、層厚を少し厚くしたMEA11のフレーム部材15と同様である。一対の集電板16,17は、その長手方向の一端に、カソードガス供給口16a、17a、冷却流体供給口16b、17b、およびアノードガス供給口16c、17cに相当する貫通孔を開口している。同様に、長手方向の他端には、アノードガス排出口16d、17d、冷却流体排出口16e、17eおよびカソードガス排出口16f、17fに相当する貫通孔を開口している。一対の集電板16、17は、その中央に集電部16h(集電板17についても同様)を備えている。
【0024】
一対の集電板16,17の集電部16h等は、たとえば、ガスを透過させない緻密質カーボンのような導電性部材からなり、アノード11bおよびカソード11cの外形よりも若干小さい薄板状に形成している。一対の集電部16h等は、複数積層した最外層の燃料電池セル10aに設けたMEA11のアノード11bまたはカソード11cに当接している。集電部16h等は、その一面から導電性を備えた円柱形状の突起部16g等を突出して設けている。突起部16g等は、後述する筺体20の一対のエンドプレート25、26の貫通孔25g等を挿通して、外部に臨んでいる。また、集電板16の突起部16gに当る形状は集電板17についても同様に設けられている。
【0025】
筺体20は、図5および図6に示し、複数積層した燃料電池セル10aおよび一対の集電板16,17を互いに密着させた状態で保持している。
【0026】
筺体20は、上記のように一対の締結板21、22、一対の補強板23,24、および一対のエンドプレート25,26、及びネジ27を含んでいる。以下、筺体20に含まれた各部材について説明する。
【0027】
一対のエンドプレート25,26は、複数積層された燃料電池セル10aの両端に配設した一対の集電板16,17を挟持して付勢している。一対のエンドプレート25,26の外形形状は、一部の形状を除いて、層厚を増したMEA11のフレーム部材15と同様である。一対のエンドプレート25,26は、たとえば、金属からなり、一対の集電板16,17と当接する部分に絶縁体を設けている。
【0028】
一対のエンドプレート25,26は、その長手方向の一端に、カソードガス供給口25a、26a、冷却流体供給口25b、26b、およびアノードガス供給口25c、26cに相当する貫通孔を開口している。同様に、その長手方向の他端には、アノードガス排出口25d、26d、冷却流体排出口25e、26eおよびカソードガス排出口25f、26fに相当する貫通孔を開口している。
【0029】
セパレータ13,14、フレーム部材15、集電板16,17、及びエンドプレート25,26のカソードガス供給口13a〜17a、25a、26a、冷却流体供給口13b〜17b、25b、26b、アノードガス供給口13c〜17c、25c、26c、アノードガス排出口13d〜17d、25d、26d、冷却流体排出口13e〜17e、25e、26e、及びカソードガス排出口13f〜17f、25f、26fは、セパレータ13,14、MEA11、集電板16,17、及びエンドプレート25,26を位置合わせした際に連通するように構成されている。一対のエンドプレート25,26は、前述した一対の集電板16,17の突起部16g等を挿通させる貫通孔25g、26gを有している。
【0030】
一対の締結板21、22は、たとえば、金属からなり、板状に形成している。一対の締結板21、22は、縁部が一部立ち上げて形成されており、組み付けた際に一対のエンドプレート25、26の面と接触する。また、締結板21,22においてエンドプレート25,26と接触する面にはネジ27を挿通させる穴が設けられており、当該穴に取り付けたネジ27を締め付けることによってエンドプレート25、26、集電板16,17、及び積層体10が積層方向に加圧される。一対の補強板23、24は、たとえば、金属からなり、一対の締結板21、22よりも細長い板状に形成している。一対の補強板23、24は、長手方向における端部が一部立ち上げて形成されており、当該部分にはネジ27を挿通させる穴が設けられている。当該穴はネジ27を積層方向に通すように形成されており、ネジ27を取り付けて締結することによって、締結板21,22と同様にエンドプレート25,26、集電板16,17、及び積層体10が積層方向に加圧される。このように、一対の締結板21、22および一対の補強板23、24は、ネジ27を締結することによって、エンドプレート25、26、集電板16,17、及び積層体10を積層方向に加圧している。
【0031】
(セパレータアセンブリの製造装置)
次に本実施形態に係るセパレータアセンブリの製造装置について説明する。本実施形態に係るセパレータアセンブリ12の製造装置200は、コンベヤー210と、押圧部材220と、弾性部材230と、ハンドロボット240と、溶接ロボット250と、を有する。
【0032】
コンベヤー210は、セパレータ13,14を載置する載置台221を図1における左側から右側へと搬送して次工程へと送る。コンベヤー210にはセパレータアセンブリを組み立てるための停止位置210a、210bが設けられている。
【0033】
押圧部材220は、相対的に接近離間する載置台221及び押圧バー222と、押圧ピン223と、ナット224と、支持柱225と、アーム226と、を有する。
【0034】
載置台221は、セパレータアセンブリ12を構成するセパレータ13,14を載置し、載置台221においてセパレータ13,14の接合が行われる。載置台221は、セパレータ13,14よりも面積の大きい矩形状に構成されているが、形状は矩形に限定されない。また、載置台221には押圧部材220を構成する押圧バー222、押圧ピン223、ナット224、支持柱225、及びアーム226が設置されている。載置台221は、押圧バー222がセパレータ13をセパレータ14に向けて押圧する際の受け部材に当たる。
【0035】
押圧バー222とセパレータ13との間には後述するように弾性部材230が配置されてセパレータ13,14の波形形状13g、14gのバラつきが吸収されるのに対し、載置台221はステンレス等の剛直な材料で構成される。このように載置台221が弾性部材230に比べて剛直な材料で構成されることによって、弾性部材230を押圧バー222とセパレータ13との間に配置した際にも、セパレータ13,14の接合部分が弾性部材230の弾性変形によっていびつな形状となることを防止できる。よって、本実施形態に係る方法により製造されるセパレータアセンブリ12の形状がいびつになることでMEA11と充分に接触できなくなることによる燃料電池の発電特性の低下を防止することができる。
【0036】
支持柱225は、図4に示すように載置台221の端部に対になって設置されている。アーム226は、支持柱225に回転可能に接続される。アーム226は、図4の二点鎖線で示すように開いた状態にすることによって、載置台221にセパレータ13,14を搬入して設置することができる。
【0037】
押圧ピン223は、アーム226において支持柱225の取り付け点と反対側の端部に取り付けられる。押圧ピン223はナット224と螺合することによってアーム226の一辺からの突出量を調整できるように固定されている。
【0038】
押圧バー222は、押圧ピン223からの押圧力を受けて載置台221と接近離間し、弾性部材230を介してセパレータ13に押圧力を付加する。また、押圧バー222は、対となる押圧ピン223に接続されている。そのため、セパレータ13,14を載置台221に設置する際には、押圧バー222を対となる押圧ピン223から外すか、又は対となる押圧ピン223の一方にのみ接続した状態でセパレータ13,14を載置台221に載置した後に押圧バー222を対となる押圧ピン223の両方に接続した状態にする。
【0039】
ハンドロボット240は、多関節のロボットであり、先端には部品を把持するハンド機構が設けられている。ハンドロボット240は、ハンド機構によって部品を把持し、関節部分の回動によってセパレータ13,14を載置台221にまで移動し、設置する。
【0040】
溶接ロボット250は、先端に溶接ヘッド251が取り付けられている。溶接ロボット250は、レーザーの照射によってセパレータ13,14を溶接するが、弾性部材230を押圧バー222とセパレータ13との間に設置できれば溶接方法はレーザーに限定されない。
【0041】
セパレータ13とセパレータ14との接合は、図2に示すように、波形形状13gを構成する凹凸の一部13kについて凹凸の断面形状が伸びる方向に沿って部分的に溶接して行っている。また、セパレータ13とセパレータ14との接合は、セパレータ13のカソードガス供給口13aの縁部13m、アノードガス供給口13cの縁部13n、アノードガス排出口13dの縁部13p、カソードガス排出口13fの縁部13q、セパレータ13の外形となる4つの辺13r、13s、13t、13uを溶接して行っている。なお、図2では溶接場所を示すために。アーム226及び溶接ロボット250を一部透かして図示し、弾性部材230を不図示にしている。
【0042】
弾性部材230は、押圧バー222からの押圧力を受け、セパレータ13,14の波形形状13g、14gにおいて対向する凸部同士が接触する凸部の数を増加させる。弾性部材230は、溶接ロボット250がセパレータ13,14の溶接作業を行えるように設けられたスリット231〜233(接合領域に相当)と、押圧部材220の押圧バー222が接触する部分となるバー載置部234〜237(押圧領域に相当)と、を有する。
【0043】
スリット231〜233は、溶接ロボット250によるレーザーが弾性部材230を通過してセパレータ13に照射できるように設けられている。スリット231〜233は、図2図3に示すように、セパレータ13,14の溶接箇所に対応して設けられ、本実施形態では10列設けられているが、これに限定されない。スリット231〜233は、セパレータ13の上に設置した際にセパレータ13,14の波形形状13g、14gの凹凸が伸びる方向と同じ方向に伸びて形成されており、本実施形態では凹凸の延びる方向に3分割されている。
【0044】
バー載置部234〜237は、押圧部材220の押圧バー222が載置される場所に対応して設けられる。押圧バー222は、図2に示すように波形形状13g、14gの一部を押圧しており、波形形状13g、14gの凸部同士を接触させるために波形形状13g、14gの全範囲を押圧する必要はない。そのため、バー載置部234〜237についても波形形状13g、14gの全範囲とせず、一部をバー載置部とすることによって、溶接に必要なスリット231〜233を設けることができる。よって、弾性部材230を介在させて波形形状13g、14gの凸部同士の接触する数が増加した状態で凸部同士を接合することができる。
【0045】
弾性部材230は、例えばNBRのようなエラストマーから構成される。このように弾性部材230が復元力を発揮する材料から構成されることによって、セパレータ13,14の波形形状13g、14gの対向する凸部同士の高さのバラつきを吸収し、凸部同士の接触する数を増加させることができる。
【0046】
(セパレータアセンブリの製造方法)
次に本実施形態に係るセパレータアセンブリの製造方法について説明する。セパレータアセンブリ12の製造方法は、製造装置200を用いてセパレータ13,14を接合する接合工程を有する。
【0047】
コンベヤー210によって位置210aに載置台221が搬送されると、不図示の制御部によってアーム226が回転して上方に向かって開いた状態となる(図4の二点鎖線参照)。この状態でハンドロボット240は、不図示の部品格納場所からセパレータ13,14を把持して載置台221にまで搬送し、設置する。本実施形態では、まずセパレータ14が設置され、セパレータ13がさらにその上に位置合わせして設置されるが、位置は逆転していてもよい。
【0048】
載置台221にセパレータ13、14を設置したら、弾性部材230をスリット231〜233がセパレータ13,14の溶接箇所13kと一致するようにセパレータ13に位置合わせして設置する。次に、対となるアーム226を図4の二点鎖線に示す状態から90度程度回転させて実線に示す状態にする。
【0049】
次に対となる押圧ピン223に押圧バー222を取り付け、ナット224と螺合する量を調整し、押圧バー222をセパレータ13に位置合わせしながら接触させ、押圧力を付与する。所定の押圧力が付与できたら、溶接ロボット250の溶接ヘッド251を弾性部材230のスリット231〜233のいずれかの頭上に配置し、溶接を行う。これによってセパレータアセンブリ12が完成する。
【0050】
セパレータアセンブリ12が完成したら、MEA11の両側面にセパレータアセンブリ12を配置して封止部材を塗布して燃料電池セル10aを形成し、燃料電池セル10aの間にも封止部材を塗布しながら所定数積層して積層体10を形成する。そして、積層体10の両端に集電体16,17を配置し、締結板21,22、補強板23,24、及びエンドプレート25,26を取り付けて、ネジ27で積層体10の積層方向から押圧荷重を付加することによって燃料電池100が完成する。
【0051】
次に本実施形態の作用及び効果を説明する。セパレータの中央部に形成された断面が凹凸からなる波形形状は燃料、酸化剤等を流通させる流路して機能すると共に、波形形状において対向する凸部同士は通電のために接触させることを想定している。そのため、凸部同士の接触状態は燃料電池セル間の通電抵抗に影響を及ぼす。隣接するセパレータは波形形状の中でも対向する凸部同士の部分で溶接されることがあるが、凸部の形状にもバラつきは生じるため、波形形状の凸部同士全てを接触させることは難しく、凸部のバラつきによって充分な接合が行えないと、燃料電池セル間の通電抵抗が高くなって燃料電池の発電特性に影響を与えるおそれがある。
【0052】
これに対し、本実施形態に係るセパレータアセンブリ12の製造方法及び製造装置200によれば、セパレータ13,14の接合工程において、セパレータ13に押圧力を付加する押圧バー222とセパレータ13との間に波形形状13g、14gの対向する凸部同士を弾性変形によって接触させる弾性部材230を介在させるように構成している。そのため、波形形状13g,14gのバラつきを吸収して凸部同士の接触する数を増加させることができ、凸部同士の接触する数が増加した状態で接合を行うことができる。よって、本実施形態に係る製造方法または製造装置200によって製造されたセパレータアセンブリを用いて燃料電池セル間の通電抵抗(電気抵抗)を良好に抑制することができる。
【0053】
また、弾性部材230は、溶接ロボット250によりセパレータ13,14の波形形状13g、14gにおいて対向する凸部同士の溶接を行うためのスリット231〜233と、押圧部材220の押圧バー222による押圧力を付加するバー載置部234〜237とを有している。そのため、弾性部材230を介して押圧バー222による押圧力を付加しながら溶接ロボット250による接合作業を行うことによって、波形形状13g、14gの対向する凸部同士の接触する数を増加させた状態で溶接作業を行うことができる。
【0054】
また、押圧バー222の受け部材に当たり、弾性部材230を介在させた押圧バー222とは反対側に配置された載置台221は、弾性部材230に比べて外力による変形が困難な材料で構成している。そのため、弾性部材230によって波形形状13g、14gのバラつきを吸収した際にセパレータの接合部分がいびつな形状となってしまうことを防止できる。よって、セパレータアセンブリ12の形状がいびつであることによって、積層体10を構成するセパレータアセンブリ12とMEA11とが充分接触できずに燃料電池の発電特性が低下することを防止できる。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態のみに限定されず、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
【0056】
弾性部材230は、押圧部材220を構成する押圧バー222とセパレータ13との間に設置される実施形態について説明したが、これに限定されない。弾性部材230は、受け部材に当る載置台221とセパレータ14との間に設置することもできる。また、載置台221は、押圧バー222に対して受け部材に当たる実施形態について説明したが、これに限定されず、押圧バー222と共に載置台221が押圧バー222に向かって移動し、セパレータ13,14に押圧力を付加することもできる。
【0057】
本出願は、2013年5月16日に出願された日本特許出願番号2013−104421号に基づいており、その開示内容は参照され、全体として組み込まれている。
【符号の説明】
【0058】
10 積層体、
10a 燃料電池セル、
100 燃料電池、
11 膜電極接合体(MEA)、
11a 電解質膜、
11b アノード、
11c カソード、
12 セパレータアセンブリ、
13 アノードセパレータ、
14 カソードセパレータ、
13g、14g 波形形状(凹凸部位)、
13h アノードガス流路、
13j(14j) 冷却流体流路、
13k 波形形状における溶接箇所、
13m、13n、13p、13q アノードガス、カソードガス供給口、排出口における溶接箇所、
13r〜13u セパレータの外周における溶接箇所、
14h カソードガス流路、
15 MEAのフレーム部材、
16,17 集電板、
16g 突起部、
16h 集電部、
20 筐体、
21,22 締結板、
23,24 補強板、
25,26 エンドプレート、
13a、14a、15a、16a、25a、26a カソードガス供給口、
13b、14b、15b、16b、25b、26b 冷却流体供給口、
13c、14c、15c、16c、25c、26c アノードガス供給口、
13d、14d、15d、16d、25d、26d アノードガス排出口、
13e、14e、15e、16e、25e、26e 冷却流体排出口、
13f、14f、15f、16f、25f、26f カソードガス排出口、
25g、26g 貫通孔、
27 ネジ、
210 コンベヤー、
210a、210b 停止位置、
220 押圧部材、
221 載置台、
222 押圧バー、
223 押圧ピン、
224 ナット、
225 支持柱、
226 アーム、
230 弾性部材、
231〜233 スリット(接合領域)、
234〜237 バー載置部(押圧領域)、
240 ハンドロボット、
250 溶接ロボット(接合部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8