【文献】
佐藤 佑介, 外3名,"ロボカップサッカー中型リーグにおける白線情報を用いた自己位置推定法の検討",ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集2009,日本,一般社団法人日本機械学会,2009年 5月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パーティクルフィルタを用いて所定範囲のパーティクルの存在分布範囲を設定し、設定した存在分布範囲内にパーティクルを散布して、車両に設置されたカメラで前記車両の周囲環境を撮像した画像から前記車両の位置及び姿勢角を推定する車両位置姿勢角推定装置であって、
前記車両は前後輪を有して前後方向に走行し、車幅方向に旋回する車両であり、
前記車両の速度を検出する車速検出部と、
前記車速検出部で検出された車両の速度が高くなると、前記存在分布範囲を前記車両の車幅方向に広げるパーティクル存在分布範囲設定部と
を備えたことを特徴とする車両位置姿勢角推定装置。
前記パーティクル存在分布範囲設定部は、前記車両の速度が高くなると、前記存在分布範囲を、前記車両の上下方向を軸とした回転方向であるヨー角方向に広げることを特徴とする請求項1に記載の車両位置姿勢角推定装置。
前記パーティクル存在分布範囲設定部は、前記車両のヨーレートが高くなると、前記存在分布範囲を前記車両のヨー角方向に広げてから所定時間経過後に前記車両の車幅方向に広げることを特徴とする請求項3に記載の車両位置姿勢角推定装置。
パーティクルフィルタを用いて所定範囲のパーティクルの存在分布範囲を設定し、設定した存在分布範囲内にパーティクルを散布して、車両に設置されたカメラで前記車両の周囲環境を撮像した画像から前記車両の位置及び姿勢角を推定する車両位置姿勢角推定装置の車両位置姿勢角推定方法であって、
前記車両は前後輪を有して前後方向に走行し、車幅方向に旋回する車両であり、
前記車両位置姿勢角推定装置は、
前記車両の速度を検出し、
前記車両の速度が高くなると、前記存在分布範囲を前記車両の車幅方向に広げることを特徴とする車両位置姿勢角推定方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した第1〜第3実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
[第1実施形態]
[車両位置姿勢角推定システムの構成]
図1は、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置を搭載した車両位置姿勢角推定システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定システムは、ECU1と、カメラ2と、三次元地図データベース3と、車両センサ群4とを備えている。
【0011】
ここで、ECU1は、ROM、RAM、演算回路等によって構成された電子制御ユニットであり、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置10を備えている。尚、ECU1は他の制御に用いるECUと兼用してもよい。
【0012】
カメラ2は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、本実施形態では、車両のフロントバンパーに光軸が水平で、尚且つ車両前方が撮像可能となるように設置されている。撮像された画像はECU1へ送信される。
【0013】
三次元地図データベース3は、例えば路面表示を含む周囲環境のエッジ等の三次元位置情報を記憶している。本実施形態では、少なくとも道路端部を示す区画線や縁石等の位置とその向きの三次元情報が記録されており、この他に白線、停止線、横断歩道、路面マーク等の路面表示の他に、建物等の構造物のエッジ情報も含まれている。尚、三次元地図データベース3のデータフォーマットとして、道路端部等の各地図情報は、エッジの集合体として定義されている。エッジが長い直線の場合には、例えば1m毎に区切られるため、極端に長いエッジは存在しない。直線の場合には、各エッジは、直線の両端点を示す三次元位置情報を持っている。曲線の場合には、各エッジは、曲線の両端点と中央点を示す三次元位置情報を持っている。
【0014】
車両センサ群4は、GPS受信機41と、アクセルセンサ42と、ステアリングセンサ43と、ブレーキセンサ44と、車速センサ45と、加速度センサ46と、車輪速センサ47と、ヨーレートセンサ48とを備えている。車両センサ群4は、ECU1に接続され、各センサ41〜48によって検出された各種の検出値をECU1に供給する。ECU1は、車両センサ群4の出力値を用いることによって、車両の概位置を算出したり、単位時間に車両が進んだ移動量を示すオドメトリを算出する。
【0015】
車両位置姿勢角推定装置10は、車両の周囲環境を撮像した画像と三次元地図データとのマッチングを行って車両の位置及び姿勢角を推定するための装置である。そして、特定のプログラムを実行することにより、エッジ画像算出部12、オドメトリ算出部14、車速検出部15、パーティクル存在分布範囲設定部16、パーティクル散布部18、投影画像作成部20、尤度算出部22及び位置姿勢角推定部24として動作する。
【0016】
エッジ画像算出部12は、カメラ2から車両の周囲環境を撮像した画像を取得し、この画像からエッジを検出してエッジ画像を算出する。カメラ2で撮像された画像には、自車両の位置及び姿勢角を推定するために必要な路面情報として、少なくとも道路端部を示す区画線や縁石が撮像されている。また、この他に白線、停止線、横断歩道、路面マーク等の路面表示が撮像されていてもよい。
【0017】
オドメトリ算出部14は、車両センサ群4から得られる各種センサ値を用いて、車両の単位時間当たりの移動量であるオドメトリを算出する。
【0018】
車速検出部15は、車速センサ45で計測されたセンサ値を取得することによって、車両の速度を検出する。
【0019】
パーティクル存在分布範囲設定部16は、オドメトリ算出部14で算出されたオドメトリの分だけ移動した位置と姿勢角の近傍に所定範囲のパーティクルの存在分布範囲を設定し、車両の走行状態に応じてパーティクルの存在分布範囲を補正する。具体的には、
図12に示すように、1ループ前に推定されていた車両V(t1)の位置及び姿勢角のパーティクルPと周囲のパーティクルP1〜P5をオドメトリ分だけ移動させ、パーティクルの存在分布範囲を設定して補正する。本実施形態では、車両の走行状態として速度が高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両の前後方向、車幅方向及びヨー角方向に広げる補正を行っている。
【0020】
パーティクル散布部18は、パーティクル存在分布範囲設定部16によって設定されたパーティクルの存在分布範囲内にパーティクルを散布する。
図12に示すように、パーティクル散布部18は、新たな車両V(t2)の位置及び姿勢角を推定するためにパーティクルP10〜15を設定する。
【0021】
投影画像作成部20は、パーティクル散布部18によって散布されたパーティクルのそれぞれについて投影画像を作成する。例えば、三次元地図データベース3に記憶されたエッジ等の三次元位置情報を、各パーティクルの位置及び姿勢角からカメラで撮像した画像となるように投影変換して投影画像を作成する。
【0022】
尤度算出部22は、投影画像作成部20によって作成された投影画像とエッジ画像算出部12によって算出されたエッジ画像とを比較して、パーティクルのそれぞれについて尤度を算出する。この尤度とは、各パーティクルの位置及び姿勢角が、どれぐらい実際の車両の位置及び姿勢角に対して尤もらしいかを示す指標であり、投影画像とエッジ画像との一致度が高いほど、尤度が高くなるように設定されている。
【0023】
位置姿勢角推定部24は、尤度算出部22によって算出された尤度に基づいて車両の位置及び姿勢角を推定する。例えば、尤度が最も高いパーティクルの位置及び姿勢角を、車両の実際の位置及び姿勢角の推定結果として算出する。
【0024】
尚、本実施形態では車両の6自由度の位置(前後方向,車幅方向,上下方向)及び姿勢角(ロール,ピッチ,ヨー)を求めている。しかし、例えばサスペンション等を備えていない工場等で使用される無人搬送車のように3自由度の位置(前後方向,横方向)及び姿勢角(ヨー)を推定する場合でも本技術を適用することは可能である。具体的に、このような車両では、上下方向の位置と姿勢角のロール及びピッチは固定となるので、予めこれらのパラメータを計測しておいて利用すればよい。
【0025】
[車両の位置姿勢角推定処理の手順]
次に、本実施形態に係る車両の位置姿勢角推定処理の手順を
図2のフローチャートを参照して説明する。尚、本実施形態では、車両の位置情報として前後方向、車幅方向、上下方向、姿勢角情報としてロール、ピッチ、ヨーの合計6自由度の位置と姿勢角を推定する。ただし、ロールは車両の前後方向を軸とした回転方向であり、ピッチは車両の車幅方向を軸とした回転方向であり、ヨーは車両の上下方向を軸とした回転方向である(
図12参照)。
【0026】
また、以下で説明する車両の位置姿勢角推定処理は、例えば100msec程度の間隔で連続的に行われる。
【0027】
図2に示すように、まずステップS110において、エッジ画像算出部12は、カメラ2の画像からエッジ画像を算出する。本実施形態におけるエッジとは、画素の輝度が鋭敏に変化している箇所を指している。エッジの検出方法としては、例えばCanny法を用いることができる。この他にも微分エッジ検出など様々な手法を使用してもよい。
【0028】
また、エッジ画像算出部12は、カメラ2の画像からエッジの輝度変化の方向やエッジ近辺のカラーなどについても抽出することが望ましい。これにより、後述するステップS160及びステップS170において、三次元地図データベース3に記録されているこれらエッジ以外の情報についても利用して尤度を設定し、自車両の位置及び姿勢角を算出することが可能になる。
【0029】
次に、ステップS120において、オドメトリ算出部14は、車両センサ群4から得られるセンサ値に基づいて、1ループ前のステップS120で算出した時点から現在までの車両の移動量であるオドメトリを算出する。なお、プログラムを開始して最初のループの場合には、オドメトリをゼロとして算出する。
【0030】
オドメトリ算出部14は、オドメトリの算出方法として、車両運動を平面上に限定した上で、左右輪の車輪速センサ47のエンコーダ値の差からヨー角方向の旋回量(旋回角)を算出する。そして、前後方向と車幅方向の移動量は、各車輪の車輪速センサ47のエンコーダ値から平均の移動量を求め、この移動量に対してヨー角方向の旋回角の余弦と正弦を取ることで求めることができる。また、各車輪の車輪速とヨーレートから単位時間での移動量と回転量を算出してもよい。さらに、車輪速を車速やGPS受信機41の測位値の差分で代用してもよく、ヨーレートを操舵角で代用してもよい。なお、オドメトリの算出方法は、様々な算出手法が考えられるが、オドメトリを算出できればどの手法を用いてもよい。
【0031】
特に、車幅方向やヨー角方向の移動量をより正確に算出するために、例えば車速約10km/h以下の極低速ではアッカーマンステアリングジオメトリ(自動車の運動と制御第3章、安部正人著、山海堂発行)に従ってオドメトリを求めてもよい。また、それ以上の車速ではタイヤの横滑り角を考慮できる線形2輪モデルの運動方程式(自動車の運動と制御第3章3.2.1節P.56(3.12)及び(3.13)式、安部正人著、山海堂発行)を用いて算出するとなお良い。ただし、線形2輪モデルの運動方程式を用いる場合には予め各車輪のタイヤパラメータ(コーナーリングパラメータ)を測定しておく必要がある。
【0032】
次に、ステップS130において、パーティクル存在分布範囲設定部16は、1ループ前のステップS170で推定した各パーティクルの位置及び姿勢角を、今回のステップS120で算出したオドメトリの分だけ移動させる。ただし、プログラムを開始して初めてのループの場合には、前回の車両位置情報がないので、車両センサ群4に含まれるGPS受信機41からのデータを初期位置情報とする。また、前回の停車時に最後に算出した車両位置及び姿勢角を記憶しておき、初期位置及び姿勢角情報としてもよい。
【0033】
そして、オドメトリの分だけ移動させた車両の位置と姿勢角の近傍に車両の動特性や走行状態を考慮してパーティクルの存在分布範囲を設定する。このとき、本実施形態では、車両の走行状態を考慮して速度が高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両の前後方向、車幅方向及びヨー角方向に広げている。
【0034】
ここで、
図3を参照して、パーティクルの存在分布範囲を広げる理由を説明する。
図3は、定速円旋回中の車両の旋回中心と各タイヤの横すべり角を模式的に表した図であり、
図3(a)は極低速での定常円旋回の場合、
図3(b)は遠心力の働く定常円旋回の場合である。
【0035】
図3(a)に示すように、極低速では車両に遠心力が働かないため、車両はタイヤの向きに沿って進み、車幅方向への移動は殆ど発生しないので、車幅方向へのオドメトリの誤差は発生しにくい。
【0036】
しかし、
図3(b)に示すように、車速が高くなってくると、車両に遠心力が働くので、各車輪に横滑り角δがついて車両に車幅方向への運動が発生する。そのため、路面状態や移動体の個体差等が原因で生じるオドメトリの誤差が極低速のときと比較して発生しやすくなる。すなわち、車両モデルの特性として、車速が高くなると旋回中心Osが変化し、特に車両の前後方向の位置や車幅方向の位置、ヨー角方向の姿勢角に誤差が発生しやすくなる。
【0037】
したがって、車速が高くなったときには、前後方向や車幅方向、ヨー角方向におけるパーティクルの存在分布範囲をオドメトリよりも拡大して広げなければ、誤差の発生によって適切なパーティクルの存在分布範囲を設定することができない。
【0038】
そこで、本実施形態では、速度が高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両の前後方向、車幅方向及びヨー角方向に広げている。
【0039】
以下、パーティクルの存在分布範囲を広げる方法について、
図4〜6を参照して具体的に説明する。
【0040】
まず、パーティクルの存在分布範囲を車両の前後方向に広げる場合について説明する。
図4(a)に示すように車速検出部15で検出された車速が、閾値Vlgth(km/h)未満では、オドメトリの分だけ移動させた位置から車両の前後方向に±Rlg_min(m)の範囲に存在分布範囲を設定する。そして、車速が閾値Vlgth以上になると、車両の前後方向に±Rlg_max(m)の範囲に存在分布範囲を設定して存在分布範囲を広げている。
【0041】
これは、
図3で説明したように、車速が高くなると、車両の旋回中心が車両前方に移動するので、路面状態や移動体の個体差等が原因で生じる車両の前後方向への誤差が大きくなるためである。
【0042】
また、
図4(b)に示すように、車速に応じて前後方向の存在分布範囲を連続的に変化させてもよい。
【0043】
尚、本実施形態では、例えばVlgth、Rlg_min、Rlg_maxを、それぞれ20[km/h]、0.5[m]、1.0[m]とする。ただし、Vlgthは、車両の前後方向への誤差が大きくなる速度である。また、Rlg_minは、車両の前後方向への誤差が少ない低速でのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。Rlg_maxは、車両の前後方向への誤差が大きくなる高速でのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。一方、前後方向以外のパーティクルの存在分布範囲は以下のように設定する。すなわち、オドメトリの分だけ移動させた位置と姿勢角から車幅方向、上下方向、ロール、ピッチ、ヨーの各方向にそれぞれ±0.5[m]、±0.1[m]、±0.5[deg]、±0.5[deg]、±3.0[deg]とする。
【0044】
次に、パーティクルの存在分布範囲を車両の車幅方向に広げる場合について説明する。
図5(a)に示すように、車速が閾値Vltth(km/h)未満では、オドメトリの分だけ移動させた位置から車両の車幅方向に±Rlt_min(m)の範囲に存在分布範囲を設定する。そして、車速が閾値Vltth以上になると、車両の車幅方向に±Rlt_max(m)の範囲に存在分布範囲を設定して存在分布範囲を広げている。
【0045】
これは、
図3で説明したように、車速が高くなると、転舵したときに極低速では現れなかった車両の車幅方向の運動が発生するので、路面状態や移動体の個体差等が原因で生じる車両の車幅方向への誤差が大きくなるためである。
【0046】
また、
図5(b)に示すように、車速に応じて車幅方向の存在分布範囲を連続的に変化させてもよい。
【0047】
尚、本実施形態では、例えばVltth、Rlt_min、Rlt_maxを、それぞれ20[km/h]、0.2[m]、0.5[m]とする。ただし、Vltthは、車両に遠心力が働いて各車輪に横滑り角がついて車両に車幅方向への運動が発生する速度である。また、Rlt_minは、車両に車幅方向への運動が発生しない低速でのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。Rlt_maxは、車両に車幅方向への運動が発生するような高速でのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。
【0048】
次に、パーティクルの存在分布範囲をヨー角方向に広げる場合について説明する。
図6(a)に示すように、車速が閾値Vywth(km/h)未満では、オドメトリの分だけ移動させた姿勢角から車両のヨー角方向に±Ryw_min(rad)の範囲に存在分布範囲を設定する。そして、車速が閾値Vywth以上になると、車両のヨー角方向に±Ryw_max(rad)の範囲に存在分布範囲を設定して存在分布範囲を広げている。
【0049】
これは、
図3で説明したように、車速が高くなると、車両の旋回中心が車両前方に移動するので、路面状態や移動体の個体差等が原因で生じる車両のヨー角方向への誤差が大きくなるためである。
【0050】
また、
図6(b)に示すように、車速に応じてヨー角方向の存在分布範囲を連続的に変化させてもよい。
【0051】
尚、本実施形態では、例えばVywth、Ryw_min、Ryw_maxを、それぞれ10[km/h]、0.02[rad]、0.05[rad]とする。ただし、Vywthは、車両に遠心力が働いて各車輪に横滑り角がついて車両にヨー角方向への運動が発生する速度である。また、Ryw_minは、車両にヨー角方向への運動が発生しない低速でのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。Ryw_maxは、車両にヨー角方向への運動が発生するような高速でのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。
【0052】
次に、ステップS140において、パーティクル散布部18は、ステップS130で設定された存在分布範囲内にパーティクルを散布する。散布方法としては、パーティクルの位置及び姿勢角を規定する6自由度のパラメータに対して、それぞれステップS130で設定された範囲(上下限)の中で、乱数表等を用いてランダムに設定する。また、本実施形態では、パーティクルを常に500個作成する。
【0053】
尚、特許文献1で開示された技術を用いてパーティクルを散布してもよい。この場合には、ステップS130でオドメトリの分だけ移動させた車両の位置と姿勢角が、ステップS170で算出した位置と姿勢角によってどれだけ補正されたかを算出し、この補正量に応じてパーティクルを散布する平均と分布を設定して散布すればよい。このとき、パーティクルを散布する範囲はステップS130で設定された存在分布範囲とする。また、存在分布範囲についても特許文献1で開示された技術を用いて求め、ステップS130で設定された存在分布範囲とのORをとってもよい。さらに、パーティクルを散布する数についても、特許文献1に開示された技術を用いてステップS130で設定された存在分布範囲に応じて動的に決定してもよい。
【0054】
次に、ステップS150において、投影画像作成部20は、ステップS140で散布された複数のパーティクルについてそれぞれ投影画像(仮想画像)を作成する。このとき、例えば三次元地図データベース3に記憶されたエッジ等の三次元位置情報を、それぞれの予測位置及び姿勢角候補でのカメラ画像に投影変換し、評価用の投影画像を作成する。この投影画像に投影された評価点群は、後述するステップS160において、ステップS110で算出したエッジ画像上のエッジと比較される。
【0055】
また、投影変換では、カメラ2の位置を示す外部パラメータと、カメラ2の内部パラメータとが必要となる。外部パラメータは、車両からカメラ2までの相対位置を予め計測しておくことによって、予測位置及び姿勢角候補から算出すればよい。また内部パラメータは、予めキャリブレーションをしておけばよい。
【0056】
なお、ステップS110においてカメラ画像からエッジの輝度変化の方向やエッジ近辺のカラー等について抽出している場合には、それらを用いて投影画像を作成することが望ましい。
【0057】
次に、ステップS160において、尤度算出部22は、ステップS140で散布した複数のパーティクルのそれぞれについて、ステップS110で算出したエッジ画像と、ステップS150で作成した投影画像とを比較する。そして、比較した結果に基づいて、予測位置及び姿勢角候補であるパーティクルごとに尤度を算出する。この尤度とは、それぞれの予測位置及び姿勢角候補が、どれぐらい実際の車両の位置及び姿勢角に対して尤もらしいかを示す指標である。尤度算出部22は、投影画像とエッジ画像との一致度が高いほど、尤度が高くなるように設定する。この尤度の求め方の一例を以下で説明する。
【0058】
まず、投影画像上において画素位置を特定し、この画素位置にエッジが存在するか否かを判定する。そして、投影画像と同じ画素位置となるエッジ画像上の位置にエッジが存在するか否かを判定し、エッジの有無が一致する場合には尤度likelihood(単位:なし)として1を設定し、一致しない場合には0を設定する。このような処理を全評価点に対して行い、その総和である一致評価点の数を尤度とする。そして、全ての予測位置及び姿勢角候補である各パーティクルについて尤度を算出したら、それぞれの尤度の合計値が1になるよう正規化する。尚、尤度の算出方法は、他にも多くの算出方法が考えられるので、それらの方法を用いてもよい。
【0059】
次に、ステップS170において、位置姿勢角推定部24は、ステップS160で算出した尤度情報を有する複数の予測位置及び姿勢角候補を用いて、最終的な車両の位置及び姿勢角を算出する。例えば、位置姿勢角推定部24は、尤度が最も高い予測位置及び姿勢角候補を、車両の実際の位置及び姿勢角として算出する。また、各予測位置及び姿勢角候補の尤度を用いて、予測位置及び姿勢角の重み付き平均を求め、その値を最終的な車両の位置及び姿勢角としてもよい。こうして車両の位置と姿勢角の推定結果が算出されると、本実施形態に係る車両の位置姿勢角推定処理を終了する。
【0060】
尚、本実施形態では、車載したカメラ2で撮影した画像と三次元地図データベース3とをマッチングして車両の位置と姿勢角を推定したが、特許文献1で開示されているようにレーザセンサの測定値を用いて車両の位置と姿勢角を推定してもよい。
【0061】
この場合には、三次元地図データベース3は、例えばレーザセンサで車両からの距離や方位角の測定が可能な電柱などのポール状の障害物の位置情報、道路周辺の建物や塀等の構造物の位置や形状に関する情報を占有格子地図として備えているようにする。
【0062】
この占有格子地図は、環境を格子状の細かいセルで区切り、各セルが障害物に占有されているか否かの占有確率を付加することで地図を表現する(確率ロボティクス・第9章、毎日コミュニケーションズ発行)。
【0063】
そして、
図2のフローチャートにおけるステップS150において、各パーティクルの位置及び姿勢角に車両がいた場合に、三次元地図データベース3に記憶された各障害物や構造物がどのような配置になるのかを算出し、占有格子地図に投影する。
【0064】
その上で、
図2のフローチャートにおけるステップS160では、各パーティクルごとに、三次元地図データベース3に記憶された各障害物や構造物によって占有されたセルを、占有格子地図上においてレーザセンサでいくつ検出できたかをカウントして尤度を求めるようにする。
【0065】
このように、
図2のフローチャートのステップS150及びS160の処理を変更するか、あるいは確率ロボティクス・第8章(毎日コミュニケーションズ発行)に記載されている方法を用いて位置や姿勢角を推定してもよい。
【0066】
[第1実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置では、車両の速度が高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両の車幅方向に広げている。これにより、車両の速度が高くなって車両に車幅方向への移動が生じた場合でもパーティクルの存在分布範囲を適正に設定できるので、車両の位置及び姿勢角を正確に推定することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置では、車両の速度が高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両のヨー角方向に広げている。これにより、車両の速度が高くなって車両にヨー角方向への移動が生じた場合でもパーティクルの存在分布範囲を適正に設定できるので、車両の位置及び姿勢角を正確に推定することができる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置について図面を参照して説明する。
【0069】
[車両位置姿勢角推定システムの構成]
図7は、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置を搭載した車両位置姿勢角推定システムの構成を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置10は、ヨーレート検出部75をさらに備えたことが第1実施形態と相違している。尚、その他の構成は第1実施形態と同一なので、同一の番号を付して詳細な説明は省略する。
【0070】
ヨーレート検出部75は、ヨーレートセンサ48で計測されたセンサ値を取得することによって、車両のヨー角方向の変化率であるヨーレートを検出する。
【0071】
[車両の位置姿勢角推定処理の手順]
本実施形態に係る車両の位置姿勢角推定処理は、
図2のステップS130で実行されるパーティクルの存在分布範囲の設定方法が、第1実施形態と相違している。第1実施形態では、車両の速度に応じてパーティクルの存在分布範囲を設定していたが、本実施形態では、車両のヨーレートに応じてパーティクルの存在分布範囲を設定するようにしたことが相違している。
【0072】
図2のステップS130において、パーティクル存在分布範囲設定部16は、1ループ前の各パーティクルの位置及び姿勢角をオドメトリの分だけ移動させる。そして、移動させた車両の位置と姿勢角の近傍にパーティクルの存在分布範囲を設定し、本実施形態では車両のヨーレートが高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両の車幅方向及びヨー角方向に広げている。
【0073】
ここで、
図8を参照して、車両のヨーレートが高くなった場合にパーティクルの存在分布範囲を広げる理由を説明する。
図8は、車両が転舵した際のタイヤ横力とヨーモーメントを示した図であり、
図8(a)は直進走行した場合、
図8(b)は前輪を転舵した直後の場合、
図8(c)は定常円旋回の場合である。
【0074】
図8(a)に示すように、車両のハンドルが中立位置に固定され、進行方向Mへ車両が直進しているときに、
図3(b)で説明したように各車輪に横すべり角δが付くような高い車速でハンドルを切って転舵する。そうすると、
図8(b)に示すように、転舵直後はまず前輪のみに横すべり角δがついて前輪にタイヤ横力Ffが発生する。そして、このタイヤ横力FfによってヨーモーメントYfが発生し、旋回が始まる。この状態ではヨー角方向の運動が主となるのでヨー角方向の姿勢角に誤差が出やすい状態となる。
【0075】
そして、
図8(b)の転舵状態を維持すると、
図8(c)に示すように前輪のタイヤ横力FfによるヨーモーメントYfと後輪のタイヤ横力FrによるヨーモーメントYrとがつりあってヨーレートが増加しなくなり、定常円旋回状態となる。この状態では、車両のヨー角方向の運動に加えて、車幅方向の加速度が大きくなり、車幅方向の位置にも誤差が出やすい状態となる。
【0076】
したがって、車両が転舵することによってヨーレートが高くなっているときには、車両の車幅方向及びヨー角方向におけるパーティクルの存在分布範囲を拡大して広げなければ、誤差の発生によって適切なパーティクルの存在分布範囲を設定することができない。
【0077】
そこで、本実施形態では、ヨーレートが高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両の車幅方向及びヨー角方向に広げている。
【0078】
以下、パーティクルの存在分布範囲を広げる方法について、
図9を参照して具体的に説明する。
【0079】
図9(a)に示すように、ヨーレート検出部75で検出されたヨーレートが、閾値γth(rad/s)未満では、オドメトリの分だけ移動させた位置から車幅方向に±Rltr_min(m)の範囲に存在分布範囲を設定する。また、オドメトリの分だけ移動させた姿勢角からヨー角方向に±Rywr_min(rad)の範囲に存在分布範囲を設定する。そして、ヨーレートが閾値γth以上になると、車幅方向に±Rltr_max(m)の範囲に、ヨー角方向には±Rywr_max(rad)の範囲に存在分布範囲を設定して存在分布範囲を広げている。
【0080】
これは、
図8で説明したようにヨーレートや車幅方向の加速度が高くなると、各車輪に横すべり角が発生し、オドメトリによって算出した位置や姿勢角に誤差が発生しやすくなるためである。そこで、本実施形態では、路面状態や移動体の個体差等が原因で生じる車幅方向やヨー角方向の誤差が大きくなることを考慮して存在分布範囲を広げて設定している。
【0081】
また、
図9(b)に示すように、ヨーレートに応じて存在分布範囲を連続的に変化させてもよい。
【0082】
尚、本実施形態では、例えばγth,Rltr_min,Rltr_max,Rywr_min,Rywr_maxを、それぞれ0.15[rad/s]、0.2[m]、0.5[m]、0.02[rad]、0.05[rad]とする。ただし、γthは、車両の転舵によって車両のヨー角方向や車幅方向への運動が発生するヨーレートである。また、Rltr_min、Rywr_minは、車両に車幅方向やヨー角方向への運動が発生しない低いヨーレートでのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。Rltr_max、Rywr_maxは、車両に車幅方向やヨー角方向への運動が発生するような高いヨーレートでのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。
【0083】
さらに、本実施形態の方法と第1実施形態の方法とを併用してパーティクルの存在分布範囲を設定することも可能であり、その場合には各方向の上下限値のうち大きいほうの値を用いて存在分布範囲を設定すればよい。
【0084】
また、本実施形態に係るパーティクル存在分布範囲設定部16は、車両のヨーレートが高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両のヨー角方向に広げてから所定時間経過後に車両の車幅方向に広げるように制御する。例えば、ヨー角方向に広げてから時定数0.5[s]の
一次遅れを入れて車幅方向に広げるようにする。
【0085】
これは、
図8で説明したように、車両の車幅方向の位置はヨー角方向の姿勢角に対して遅れて変化するためである。
【0086】
このように、ヨー角方向の存在分布範囲を広げた後に、遅れて車幅方向に広げるようにしたので、車両の車幅方向の位置がヨー角方向の姿勢角に対して遅れて変化することに対応させてパーティクルの存在分布範囲を適切に設定することができる。
【0087】
尚、車両のヨー角方向の移動は、運転者のステアリング操舵に対してステアリング機構やタイヤ横力による遅れがある。そこで、ステアリング操舵に対してヨー角方向のパーティクルの存在分布範囲を広げるタイミングを遅らせてもよい。すなわち、運転者によってステアリングが操舵されると、例えば時定数0.2[s]の
一次遅れを入れてからヨー角方向のパーティクルの存在分布範囲を広げるようにしてもよい。
【0088】
[第2実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置では、車両のヨーレートが高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両のヨー角方向に広げている。これにより、車両のヨーレートが高くなって車両にヨー角方向への移動が生じた場合でもパーティクルの存在分布範囲を適正に設定できるので、車両の位置及び姿勢角を正確に推定することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置では、車両のヨーレートが高くなると、パーティクルの存在分布範囲を車両のヨー角方向に広げてから所定時間経過後に車両の車幅方向に広げている。これにより、車両の車幅方向の位置がヨー角方向の姿勢角に対して遅れて変化することに対応させてパーティクルの存在分布範囲を適切に設定することができる。
【0090】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置について図面を参照して説明する。
【0091】
[車両位置姿勢角推定システムの構成]
図10は、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置を搭載した車両位置姿勢角推定システムの構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置10は、操舵角検出部105をさらに備えたことが第1実施形態と相違している。尚、その他の構成は第2実施形態と同一なので、同一の番号を付して詳細な説明は省略する。
【0092】
操舵角検出部105は、ステアリングセンサ43で計測されたセンサ値を取得することによって、車両の操舵角を検出する。
【0093】
[車両の位置姿勢角推定処理の手順]
本実施形態に係る車両の位置姿勢角推定処理は、
図2のステップS130で実行されるパーティクルの存在分布範囲の設定方法が、第1実施形態と相違している。第1実施形態では、車両の速度に応じてパーティクルの存在分布範囲を設定していたが、本実施形態では、車両のステアリング操舵角に応じてパーティクルの存在分布範囲を設定するようにしたことが相違している。
【0094】
図2のステップS130において、パーティクル存在分布範囲設定部16は、1ループ前の各パーティクルの位置及び姿勢角をオドメトリの分だけ移動させる。そして、移動させた車両の位置と姿勢角の近傍にパーティクルの存在分布範囲を設定し、車両のステアリング操舵角が大きくなると、パーティクルの存在分布範囲を車両の前後方向、車幅方向及びヨー角方向に広げている。
【0095】
以下、パーティクルの存在分布範囲を広げる方法について、
図11を参照して具体的に説明する。
【0096】
図11(a)に示すように、操舵角検出部105で検出されたステアリング操舵角が、閾値θth未満では、オドメトリの分だけ移動させた位置から車両の前後方向に±Rlgs_min
(m)の範囲に、車幅方向に±Rlts_min
(m)の範囲に存在分布範囲を設定する。また、オドメトリの分だけ移動させた姿勢角からヨー角方向に±Ryws_min(rad)の範囲に存在分布範囲を設定する。そして、ステアリング操舵角が閾値θth以上になると、車両の前後方向に±Rlgs_max(m)の範囲に、車幅方向に±Rlts_max(m)の範囲に存在分布範囲を設定して存在分布範囲を広げている。また、ヨー角方向には±Ryws_max(rad)の範囲に存在分布範囲を設定して存在分布範囲を広げている。
【0097】
これは、
図8で説明したようにヨーレートや車幅方向の加速度が高くなると、各車輪に横すべり角が発生して位置や姿勢角に誤差が発生するためで、このときステアリングが切られた状態であると、その誤差はさらに拡大する可能性が高くなるためである。
【0098】
また、
図11(b)に示すように、ステアリング操舵角に応じて存在分布範囲を連続的に変化させてもよい。
【0099】
尚、本実施形態では、例えばθth、Rlgs_min、Rlts_min、Ryws_minを、それぞれ3[rad]、0.2[m]、0.2[m]、0.02[rad]とする。また、Rlgs_max、Rlts_max、Ryws_maxを、それぞれ1.0[m]、0.5[m]、0.05[rad]とする。ただし、θthは、車両の転舵によって車両のヨー角方向や車幅方向への運動が発生し、誤差が拡大するステアリング操舵角である。また、Rlgs_min、Rlts_min、Ryws_minは、車両に車幅方向やヨー角方向への運動が発生しない低いステアリング操舵角でのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。Rlgs_max、Rlts_max、Ryws_maxは、車両に車幅方向やヨー角方向への運動が発生するような高いステアリング操舵角でのパーティクルの存在分布範囲であり、予め実験やシミュレーションによって適正な値を求めて設定されている。
【0100】
さらに、本実施形態の方法と第1及び第2実施形態の方法とを併用してパーティクルの存在分布範囲を設定することも可能であり、その場合には各方向の上下限値のうち最も大きい値を用いて存在分布範囲を設定すればよい。
【0101】
[第3実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る車両位置姿勢角推定装置では、車両の操舵角が大きくなると、存在分布範囲を車両の車幅方向とヨー角方向に広げている。これにより、操舵角が大きくなって車両に車幅方向やヨー角方向への移動が生じた場合でもパーティクルの存在分布範囲を適正に設定できるので、車両の位置及び姿勢角を正確に推定することができる。
【0102】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0103】
本出願は、2013年8月1日に出願された日本国特許願第2013−160074号に基づく優先権を主張しており、この出願の内容が参照により本発明の明細書に組み込まれる。