(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020785
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】セメントクリンカ製造システム
(51)【国際特許分類】
C04B 7/38 20060101AFI20161020BHJP
G01N 23/207 20060101ALI20161020BHJP
G01N 23/223 20060101ALI20161020BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
C04B7/38
G01N23/207
G01N23/223
G01N33/38
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-283114(P2011-283114)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133237(P2013-133237A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
(72)【発明者】
【氏名】田中 久順
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸生
(72)【発明者】
【氏名】市原 克彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一夫
(72)【発明者】
【氏名】太幡 一男
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−282455(JP,A)
【文献】
特開昭63−180832(JP,A)
【文献】
特開平03−113327(JP,A)
【文献】
特開2003−136036(JP,A)
【文献】
特開平07−017751(JP,A)
【文献】
特開2000−034139(JP,A)
【文献】
特開平07−209215(JP,A)
【文献】
セメント製造プラントに期待されるもう1つの側面 −環境浄化機能−,粉体と工業,株式会社 粉体と工業社,2005年 5月 1日,37巻5号,53−59頁
【文献】
Javed I.B.,Use of Fluxes and Mineralizers in the Cement Industry: A Survey,Portland Cement Association Research and Development information,1996年,No.2045,5−22頁
【文献】
G K Molr,MINERAISERS, MODIFIERS ANDACTIVATORS IN THE CLINKE,9th International Congress on the Chemistry of Cem,1992年,Volume I,p.125−152
【文献】
高瀬つぎ子,蛍光X線分析におけるガラスビード法と粉末プレス法との比較評価 −地質試料中の主要10元素と微量18元素の,福島大学地域創造,福島大学地域創造支援センター,2007年 9月28日,19巻1号,32−47頁,URL,http://ir.lib.fukushima-u.ac.jp/dspace/bitstream/10270/1539/1/18-97.pdf
【文献】
吉井一夫,セメント工場の計算機制御システム,日立評論,1975年,Vol.57,No.12,59−64頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
G01N 23/20−23/207
G01N 23/223
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱化剤のフッ素源と硫黄源を供給する手段、クリンカ原料を供給する手段、鉱化剤のフッ素源とクリンカ原料を混合した調合原料を粉砕する手段、粉砕した調合原料を焼成するキルン、鉱化剤の硫黄源をキルンに投入する手段、およびキルンに燃料を供給する手段を備えた製造システムにおいて、
調合原料およびクリンカの三酸化硫黄量、主要成分量、フッ素量を測定する手段、クリンカの遊離石灰量を測定する手段を有し、
焼成前の調合原料を採取して粉砕する手段、粉砕した調合原料をビード試料とプレス試料にする手段を有し、調合原料のビード試料について三酸化硫黄量および主要成分量を測定し、調合原料のプレス試料についてフッ素量を測定し、
クリンカを採取して粉砕する手段、粉砕したクリンカをプレス試料にする手段を有し、クリンカのプレス試料について遊離石灰量、フッ素量、三酸化硫黄量および主要成分量を測定し、これらの測定量に基づいて、フッ素源と硫黄源の供給量、調合原料の供給量、および燃料の供給量の少なくとも何れかが制御されることを特徴とするセメントクリンカ製造システム。
【請求項2】
調合原料ビード試料の三酸化硫黄量および主要成分量を測定する蛍光X線分析手段、調合原料プレス試料のフッ素量を測定する蛍光X線分析手段、クリンカプレス試料の遊離石灰量を測定するX線回折手段、クリンカプレス試料のフッ素量、三酸化硫黄量および主要成分量を測定する蛍光X線分析手段を有し、これらの測定量に基づいた制御信号が鉱化剤のフッ素源と硫黄源の供給手段、調合原料の供給手段、および燃料供給手段に伝達され、フッ素源と硫黄源の供給量、調合原料の供給量、および燃料の供給量の少なくとも何れかが制御される請求項1に記載するセメントクリンカ製造システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する製造システムにおいて、採取した調合原料またはクリンカが搬入される受入れ部、受入れ部の調合原料またはクリンカを粉砕する装置、粉砕した調合原料をビードにする試料調製装置、粉砕した調合原料またはクリンカをプレスする試料調製装置、X線回折装置、蛍光X線分析装置、試料搬出部、および試料の出し入れを行う分配装置を備えており、上記試料受入れ部、上記ビード試料調製装置、上記プレス試料調製装置、X線回折装置、蛍光X線分析装置、試料搬出部が環状に配置されており、該環状配列の中央部に分配装置が設置されており、該分配装置は回転自在なアームを有しており、
上記受入れ部に搬入された調合原料またはクリンカは分配装置のアームによって粉砕装置に装入され、該アームが待機位置に戻り、調合原料またはクリンカが粉砕され、
粉砕された試料が調合原料であるときは上記アームによって上記ビード試料調製装置に搬入され、調製されたビード試料は上記アームによって上記蛍光X線分析装置に搬入されて三酸化硫黄量および主要成分量が測定され、さらに、粉砕された試料が調合原料であるときは上記アームによって上記プレス試料調製装置に搬入され、調製されたプレス試料は上記アームによって上記蛍光X線分析装置に搬入されてフッ素量が測定され、
一方、粉砕された試料がクリンカであるときは上記アームによってプレス試料調製装置に搬入され、調製されたクリンカプレス試料は上記アームによって上記X線回折装置に搬入されて遊離石灰量が測定され、さらに、上記アームによって上記蛍光X線分析装置に搬入されてフッ素量、三酸化硫黄量および主要成分量が測定されるセメントクリンカ製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントクリンカの焼成熱量の削減に適し、高品質のセメントを得ることができる製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
セメント製造に要する熱エネルギーの大半はクリンカの焼成工程で消費される。このためクリンカの焼成温度を低下できれば、エネルギーコストを大幅に下げることができ、またCO
2排出量の削減にも寄与することができる。
【0003】
通常、普通ポルトランドセメントのクリンカは、調合原料をロータリーキルンで1450℃以上に焼成して製造される。このクリンカの焼成工程において焼成温度を低下するため以下のような手段が従来から検討されている。
(イ)クリンカの組成を変えて焼成時の液相量を増やし、比較的低温でもクリンカを生成し易くする(非特許文献1)。
(ロ)ロータリーキルンの前段に急速昇温炉を設置して、投入原料をすみやかに融液反応温度以上に昇温させた後、ロータリーキルン内で低温焼成(1300〜1400℃)を行う(特許文献1)。
(ハ)クリンカの主要鉱物であるエーライトの生成に高温を必要とするので、クリンカ原料に予めエーライトの結晶生成の核となる物質を混入する(特許文献2)。
【0004】
しかし、上記(イ)の方法では鉱物組成の変更によるセメントの強度低下や流動性の低下が懸念される。上記(ロ)の方法は製造設備の改造によるコスト高を招く。一方、上記(ハ)の方法によれば、高品質のクリンカを従来よりも小さい熱量原単位で焼成することができる利点を有しているが、エーライトの結晶生成の核となる物質として、セメントクリンカの液相生成温度(1200℃〜1300℃)より高い融点を有する物質を必要とする。
【0005】
また、(ニ)クリンカ原料に蛍石(フッ化カルシウム)等のフラックス(鉱化剤)を添加して、クリンカの焼成温度を下げることが検討されている。例えば、鉱化剤としてフッ素源および硫黄源を添加して普通ポルトランドセメントクリンカーを製造すれば、焼成温度を100℃程度低下させることができる。
【0006】
例えば、鉱化剤のフッ素源として蛍石やフッ素を含む廃棄物など、硫黄源として無水石膏や硫黄分の高い燃料などが用いられ、これはクラッシャで粉砕された後にクリンカのアルミニウム源となる粘土や石炭灰、各種焼却灰等と混合されてクリンカ原単位が調整され、ドライヤで乾燥された後に、クリンカ成分となる乾燥粘土、石灰石、けい石、および鉄原料と混合されて原料比率が調整された後に、これらの混合原料がミルで粉砕され、焼成キルンに投入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−17751号公報
【特許文献2】特開2006−182638号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.F.W. Taylor :Cement chemistry(1990) p80、p93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
原料に鉱化剤を加えて低い温度でクリンカを焼成する場合、高品質のセメントを製造するためには、混合原料中のフッ素量および主要成分量、クリンカ中のフッ素量、三酸化硫黄量および遊離石灰量を正確に把握する必要がある。これらの含有量を測定するには、例えば、成分に応じた次のような測定方法が用いられている。
【0010】
(イ)セメントの化学組成はJIS R 5204 2002:2002「セメントの蛍光X線分析方法」、あるいは、JCAS I-03「ポルトランドセメントの蛍光X線分析方法」。
(ロ)セメント中のフッ素量は、粉末ブリケットを用いた蛍光X線分析、あるいは、セメント協会標準試験方法I−51:1981「セメント及びセメント原料中の微量成分の定量方法」、あるいは加熱気化吸収イオンクロマトグラフによる測定。
(ハ)添加石膏量や半水化率は熱重量−示差熱分析(TG−DTA),あるいは,粉末X線回折/リートベルト解析による測定。
(ニ)遊離石灰量(f.CaO)はセメント協会標準試験方法I−01:1997「遊離酸化カルシウムの定量方法」、あるいは、粉末X線回折/リートベルト解析による測定。
【0011】
上記測定方法にはX線回折装置および蛍光X線分析装置などが用いられ、採集した試料は熔融してビードにし、あるいはプレスして分析にかけられる。この場合、フッ素量の測定では試料をビードにするとフッ素が希釈および揮発して正確な定量ができず、また、遊離石灰量の測定では試料をビードにするとクリンカ鉱物が変質して正確な定量ができなくなる。そこで、フッ素量や遊離石灰の定量では試料をビードにせず、プレス試料に調製し、X線回折による鉱物成分の分析によって遊離石灰量を定量している。このようにフッ素量および遊離石灰量を正確に測定するには、X線回折と蛍光X線分析の二種類の分析装置を用い、測定元素に応じた状態の試料に調製する必要がある。
【0012】
本発明は、焼成前の調合原料および焼成後のクリンカについて、フッ素量および遊離石灰量の測定に必要なX線回折による分析と蛍光X線による分析、およびその試料調製を効率よく実施して迅速かつ正確にフッ素量および遊離石灰量を測定し、高品質のセメントを製造することができる製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下の構成を有するセメント製造システムに関する。
〔1〕鉱化剤のフッ素源と硫黄源を供給する手段、クリンカ原料を供給する手段、鉱化剤のフッ素源とクリンカ原料を混合した調合原料を粉砕する手段、粉砕した調合原料を焼成するキルン、鉱化剤の硫黄源をキルンに投入する手段、およびキルンに燃料を供給する手段を備えた製造システムにおいて、
調合原料およびクリンカの三酸化硫黄量、主要成分量、フッ素量を測定する手段、クリンカの遊離石灰量を測定する手段を有し、
焼成前の調合原料を採取して粉砕する手段、粉砕した調合原料をビード試料とプレス試料にする手段を有し、調合原料のビード試料について三酸化硫黄量および主要成分量を測定し、調合原料のプレス試料についてフッ素量を測定し、
クリンカを採取して粉砕する手段、粉砕したクリンカをプレス試料にする手段を有し、クリンカのプレス試料について遊離石灰量、フッ素量、三酸化硫黄量および主要成分量を測定し、これらの測定量に基づいて、フッ素源と硫黄源の供給量、調合原料の供給量、および燃料の供給量の少なくとも何れかが制御されることを特徴とするセメントクリンカ製造システム。
〔2〕
調合原料ビード試料の三酸化硫黄量および主要成分量を測定する蛍光X線分析手段、調合原料プレス試料のフッ素量を測定する蛍光X線分析手段、クリンカプレス試料の遊離石灰量を測定するX線回折手段、クリンカプレス試料のフッ素量、三酸化硫黄量および主要成分量を測定する蛍光X線分析手段を有し、これらの測定量に基づいた制御信号が鉱化剤のフッ素源と硫黄源の供給手段、調合原料の供給手段、および燃料供給手段に伝達され、フッ素源と硫黄源の供給量、調合原料の供給量、および燃料の供給量の少なくとも何れかが制御される上記[1]に記載するセメントクリンカ製造システム。
〔3〕上記[1]または上記[2]に記載する製造システムにおいて、採取した
調合原料またはクリンカが搬入される受入れ部、受入れ部の調合原料またはクリンカを粉砕する装置、
粉砕した調合原料をビードにする試料調製装置、粉砕した調合原料またはクリンカをプレスする試料調製装置、X線回折装置、蛍光X線分析装置、試料搬出部、および試料の出し入れを行う分配装置を備えており、上記試料受入れ部、上記ビード試料調製装置、上記プレス試料調製装置、X線回折装置、蛍光X線分析装置、試料搬出部が環状に配置されており、該環状配列の中央部に分配装置が設置されており、
該分配装置は回転自在なアームを有しており、
上記受入れ部に搬入された調合原料またはクリンカは分配装置のアームによって粉砕装置に装入され、該アームが待機位置に戻り、調合原料またはクリンカが粉砕され、
粉砕された試料が調合原料であるときは上記アームによって上記ビード試料調製装置に搬入され、調製されたビード試料は上記アームによって上記蛍光X線分析装置に搬入されて三酸化硫黄量および主要成分量が測定され、さらに、粉砕された試料が調合原料であるときは上記アームによって上記プレス試料調製装置に搬入され、調製されたプレス試料は上記アームによって上記蛍光X線分析装置に搬入されてフッ素量が測定され、
一方、粉砕された試料がクリンカであるときは上記アームによってプレス試料調製装置に搬入され、調製されたクリンカプレス試料は上記アームによって上記X線回折装置に搬入されて遊離石灰量が測定され、さらに、上記アームによって上記蛍光X線分析装置に搬入されてフッ素量、三酸化硫黄量および主要成分量が測定されるセメントクリンカ製造システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造システムでは、焼成前の調合原料とクリンカのフッ素量および遊離石灰量が測定され、この測定量に基づいて適切な量の鉱化剤と調合原料が供給されるので、鉱化剤によるキルン内やプレヒータ内のコーチングが増加することなく、クリンカ焼成温度を下げることができ、高品質のセメントを製造することができる。
【0015】
また、本発明の製造システムでは、クリンカに含まれる遊離石灰量に基いて燃料の使用量を制御することができるので、熱エネルギー原単位や燃料コストを大幅に削減することができる。また燃料の使用量を減らすことによってCO
2ガス排出量を削減することができる。
【0016】
本発明の製造システムでは、鉱化剤のフッ素源としてフッ化カルシウムを含む汚泥を用いることができ、鉱化剤の硫黄源として廃石膏ボードや硫黄を多く含有する燃料などを用いることができるので、製造コストを低減するうえで有利であり、また廃石膏ボード等の廃棄物利用を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の製造システムについて試料分析システムの一例を示す概念図
【
図3】試料分析システムによる分析例を示す処理工程図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の製造システムは、鉱化剤のフッ素源と硫黄源を供給する手段、クリンカ原料を供給する手段、鉱化剤のフッ素源とクリンカ原料を混合した調合原料を粉砕する手段、粉砕した調合原料を焼成するキルン、鉱化剤の硫黄源をキルンに投入する手段、およびキルンに燃料を供給する手段を備えた製造システムにおいて、
調合原料およびクリンカの三酸化硫黄量、主要成分量、フッ素量を測定する手段、クリンカの遊離石灰量を測定する手段を有し、焼成前の調合原料を採取して粉砕する手段、粉砕した調合原料をビード試料とプレス試料にする手段を有し、調合原料のビード試料について三酸化硫黄量および主要成分量を測定し、調合原料のプレス試料についてフッ素量を測定し、クリンカを採取して粉砕する手段、粉砕したクリンカをプレス試料にする手段を有し、クリンカのプレス試料について遊離石灰量、フッ素量、三酸化硫黄量および主要成分量を測定し、これらの測定量に基づいて、フッ素源と硫黄源の供給量、調合原料の供給量、および燃料の供給量の少なくとも何れかが制御されることを特徴とするセメントクリンカ製造システムである。
【0019】
本発明の製造システムは、例えば、焼成前の調合原料と焼成後のクリンカをおのおの採取する手段、採取した試料をビードにする手段、採取した試料をプレスする手段、X線回折装置、および蛍光X線分析装置を有する試料分析システムが設けられており、焼成前の調合原料と焼成後のクリンカとの相違に応じてビードまたはプレスの試料調製がなされ、調製された試料の種類に応じてX線回折装置または蛍光X線分析装置によってフッ素量、主要成分量、および遊離石灰量が測定され、この測定量に応じて、鉱化剤のフッ素源と硫黄源の供給量、調合原料の供給量、および燃料の供給量の少なくとも何れかが制御されるセメントクリンカ製造システムである。
【0020】
本発明の製造システムの一例を
図1に示す。図示する本発明の製造システムには、鉱化剤のフッ素源であるフッ化カルシウム汚泥10を粉砕する手段11、粉砕した上記汚泥を供給する手段12、クリンカ原料の粘土を供給する手段13、フッ化カルシウム汚泥粉砕物と粘土の混合原料を乾燥する乾燥機14、乾燥された混合原料に乾燥粘土を加える手段15、クリンカ原料の石灰石16を供給する手段17、クリンカ原料のケイ石と鉄原料を供給する手段18、これらの原料を粉砕する手段19、粉砕した原料に石炭灰を供給する手段20、粉砕された原料と石炭灰の混合物を貯留する手段21、細かく粉砕された混合物に石炭灰を混合して原料精粉とし、これに集塵ダストを加えた調合原料(フィード原料)をキルン22に投入する手段23が設けられている。なお、キルン22には廃石膏ボードを窯前から投入する手段(図示省略)が設けられている。
【0021】
さらに、
図1の製造システムには、焼成前の調合原料を採取する手段(図示省略)、焼成後のクリンカを採取する手段(図示省略)、採取した試料を粉砕する手段、粉砕した試料をビードにする手段、粉砕した試料をプレスする手段、X線回折装置、および蛍光X線分析装置を有する試料分析システムが設けられている。
【0022】
上記試料分析システムの構成例を
図2に示す。
図2において、採取した調合原料試料が搬入される受入れ部30、採取したクリンカ試料が搬入される受入れ部31、これらの試料を粉砕する手段(粉砕機)32、粉砕した試料をビードにする装置33、粉砕した試料をプレスする装置34、蛍光X線分析装置35、X線回折装置36、試料の搬出部37、試料を各装置に出し入れする分配装置38が設けられている。
【0023】
試料受入れ部30および31、粉砕機32、ビード装置33、プレス装置34、蛍光X線分析装置35、X線回折装置36、試料搬出部37は環状に配置されており、この環状配列の中央部に分配装置38が設置されている。該分配装置38は回転自在なアーム40と該アーム先端にチャック41を有している。
【0024】
試料受入れ部30、31に搬入された試料は分配装置38のチャック41に把持され、アーム40が回転して試料を粉砕機32に装入した後にチャック41が開き、試料を残してアーム40が待機位置に戻る。試料は粉砕機32によって細かく粉砕された後、再びアーム40が粉砕機32まで回転して試料をチャック41で把持し、粉砕された試料が調合原料試料であるときは、ビード装置33またはプレス置34に試料を装入する。粉砕された試料はクリンカ試料であるときはプレス置34に試料を装入する。試料をこれらの試料調製装置に装入した後に試料を残してアーム40が回転して待機位置に戻る。
【0025】
試料がその種類に応じてビード試料またはプレス試料に調製された後に、分配装置38によって試料が取り出され、アーム40が回転して試料を蛍光X線分析装置35またはX線回折装置36に搬入する。搬入後、チャック41が開き、試料をこれらの分析装置に残してアーム40が待機位置に戻る。
【0026】
蛍光X線回折装置35またはX線回折装置36において目的成分が分析された後に、再びアーム40が回転して試料を把持し、試料を搬出部37に送りこみ、試料を残してアームが待機位置に戻る。分析を終えた試料は搬出部37から外部に取り出される。
【0027】
上記試料分析システムによるフッ素量、三酸化硫黄量、主要成分量、および遊離石灰量の分析工程例を
図3に示す。図示するように、採取された焼成前の調合原料は粉砕された後に、フッ素量や塩素量を測定するためのプレス試料に調製される。また、主要成分量および三酸化硫黄を測定するためのビード試料に調製される。これらのビード試料およびプレス試料は蛍光X線分析装置35に装入され、フッ素量や三酸化硫黄量、および主要成分量が測定される。
【0028】
一方、採取されたクリンカ試料は粉砕された後に、プレス装置34でプレス試料に調製される。このプレス試料はX線回折装置36に装入され、鉱物成分に基づいて鉱物組成および遊離石灰量が測定される。次いで該プレス試料は蛍光X線分析装置35に装入されてフッ素量や三酸化硫黄量、および主要成分量が測定される。
【0029】
このように、上記試料分析システムによれば、採取した試料の種類および測定元素の種類に応じて、ビード試料またはプレス試料に調製される。具体的には、焼成前の調合原料については、ビード試料とプレス試料の両方に調製され、ビード試料によって三酸化硫黄量、主要成分量が測定され、プレス試料によってフッ素量が測定される。従って、微量のフッ素を希釈せずに試料調製することによって揮発せず、正確な定量を行うことができる。
【0030】
また、クリンカ試料はプレス試料に調製されて遊離石灰量が直接測定されるので、クリンカ鉱物が変質せず、正確な遊離石灰量および鉱物組成を測定することができる。さらに、このプレス試料を用いてフッ素量や三酸化硫黄量および主要成分量を測定することができる。
【0031】
上記試料分析システムにおいて、試料の出し入れから分析後の搬出までの一連の操作は自動制御回路によって連続的に行うことができる。なお、三酸化硫黄、フッ素量および主要成分量は蛍光X線分析方法(ビード法または粉末ブリケット法)に従い、遊離石灰量(f.CaO)は粉末X線回折を用いた検量線法または内標準法またはリートベルト解析法に従って測定することができる。
【0032】
測定したフッ素量や三酸化硫黄量、および主要成分量に応じた制御信号が鉱化剤のフッ素源と硫黄源の供給手段、調合原料の供給手段、および燃料供給手段に伝達され、これらの供給量が制御される。
【0033】
本発明の製造システムについて、上述した例は焼成前の調合原料を採取して分析する例を示したが、調合原料のクリンカ原料または原料精粉について、これらを個々に採取してフッ素量、三酸化硫黄量、および主要成分量を測定することができる。本発明の製造システムはこのような態様も含む。
【符号の説明】
【0034】
10−フッ化カルシウム汚泥、11−粉砕手段(クラッシャ)、12、13−供給手段(ホッパ)、14−乾燥機(ドライヤ)、15−供給手段(ホッパ)、16−石灰石、17−供給手段、18−供給手段、19−粉砕手段(RM)、20−供給手段、21−貯留手段、22−キルン、23−投入手段、30、31−試料受入れ部、32−粉砕装置、33−ビード装置、34−プレス装置、35−蛍光X線分析装置、36−X線回折装置、37−搬出部、39−分配装置、40−アーム、41−チャック。