(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020807
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】焼結機への気体燃料供給方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/20 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
C22B1/20 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-201052(P2012-201052)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-55330(P2014-55330A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩見 友司
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 耕治
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−052857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/16,1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動するパレット上に粉鉱石と炭材を含む焼結原料を装入して装入層を形成し、その装入層表面の炭材に点火炉で点火するとともに、点火炉の下流に機長方向に複数設置された気体燃料供給装置から供給した気体燃料を含む装入層上方の空気をパレット下に配設されたウインドボックスで吸引して装入層内に導入し、装入層内において前記気体燃料と炭材を燃焼させて焼結鉱を製造する際の気体燃料供給方法であって、
前記ウインドボックスの下流に設置された排気ブロアーの吸引圧に対して上限値および下限値を設定し、正常操業中における排気ブロアーの吸引圧が前記上限値を上回るまたは下限値を下回るときには異常発生と判定し、気体燃料供給装置への気体燃料の供給を停止することを特徴とする焼結機への気体燃料供給方法。
【請求項2】
前記排気ブロアーの吸引圧に基いて異常発生を判定する方法に代えて、ウインドボックスの吸引圧に対して上限値および下限値を設定し、焼結操業中におけるウインドボックスの吸引圧が前記上限値を上回るまたは下限値を下回るときには異常発生と判定し、気体燃料供給装置への気体燃料の供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の焼結機への気体燃料供給方法。
【請求項3】
異常発生と判定した時には、ウインドボックスの排気経路に不活性ガスを導入することを特徴とする請求項1または2に記載の焼結機への気体燃料供給方法。
【請求項4】
異常判定に用いる下限値を、正常操業中における吸引圧に対して−30%以下、上限値を、正常操業中における吸引圧に対して+30%以上に設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結機への気体燃料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方吸引式のドワイトロイド焼結機で、焼結に要する熱源の一部として気体燃料を供給し、高品質の焼結鉱を製造する技術における気体燃料供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉製銑法の主原料である焼結鉱は、一般に、
図1に示すような工程を経て製造される。焼結鉱の原料は、鉄鉱石粉や焼結鉱篩下粉、製鉄所内で発生した回収粉、石灰石およびドロマイトなどの含CaO系副原料、生石灰等の造粒助剤、コークス粉や無煙炭などであり、これらの原料は、ホッパー1・・・の各々から、コンベヤ上に所定の割合で切り出される。切り出された原料は、ドラムミキサー2および3等によって適量の水が加えられ、混合、造粒されて、平均径が3〜6mmの擬似粒子である焼結原料とされる。この焼結原料は、その後、焼結機上に配設されているサージホッパー4、5からドラムフィーダー6と切り出しシュート7を介して、無端移動式の焼結機パレット8上に400〜800mmの厚さで装入され、焼結ベッドともいわれる装入層9を形成する。その後、装入層9の上方に設置された点火炉10で装入層表層の炭材に点火するとともに、パレット8の直下に配設されたウインドボックス11を介して装入層上方の空気を下方に吸引することにより、装入層内の炭材を順次燃焼させ、このときに発生する燃焼熱で前記焼結原料を溶融して焼結ケーキを得る。このようにして得た焼結ケーキは、その後、破砕、整粒され、5mm以上の塊成物は成品焼結鉱として高炉に供給され、それ以下のものは返鉱として焼結原料として再使用される。
【0003】
上記製造プロセスにおいて、点火炉10によって点火された装入層内の炭材は、その後、装入層内を上層から下層に向かって吸引される空気によって燃焼を続け、厚さ方向に幅をもった燃焼・溶融帯(以降、単に「燃焼帯」ともいう。)を形成する。この燃焼帯は、パレット8が下流側に移動するのに伴って次第に装入層の上層から下層に移行し、燃焼帯が通過した後には、焼結反応が完了した焼結ケーキ層(焼結層)が生成される。
【0004】
図2は、点火炉で点火された装入層表層の炭材が、吸引される空気によって燃焼を続けて燃焼帯を形成し、これが装入層の上層から下層に順次移動し、焼結ケーキが形成されていく過程を模式的に示した図である。また、
図3(a)は、上記燃焼帯が、
図2に示した太枠内に示した装入層の上層部、中層部および下層部の各層内に存在しているときの温度分布を模式的に示したものである。焼結鉱の強度は、1200℃以上の温度に保持される温度と時間の積に影響され、その値が大きいほど焼結鉱の強度は高くなる。そのため、装入層内の中層部および下層部は、装入層上層部の炭材の燃焼熱が吸引される空気によって運ばれて予熱されるため、高温度に長時間にわたって保持されるのに対して、装入層上層部は、予熱されない分、燃焼熱が不足し、焼結に必要な燃焼溶融反応(焼結反応)が不十分となりやすい。その結果、装入層の幅方向断面内における焼結鉱の歩留り分布は、
図3(b)に示したように、装入層上層部ほど歩留りが低くなる。また、パレット両幅端部も、パレット側壁からの放熱や、通過する空気の量が多いことによる過冷却によって、焼結に必要な高温域での保持時間が十分に確保できず、やはり歩留りが低くなる。
【0005】
これらの問題に対して、従来は、焼結原料中に添加している炭材(粉コークス)量を増量することが行われてきた。しかし、コークスの添加量を増やすことによって、
図4に示したように、焼結層内の温度を高め、1200℃以上に保持される時間を延長することができるものの、それと同時に焼結時の最高到達温度が1400℃を超えて適正範囲から外れ、却って焼結鉱の被還元性や冷間強度の低下を招くことになる。
【0006】
そこで、従来から、装入層上層部を長時間にわたって高温に保持することを目的とした技術が幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、装入層に点火後、装入層上に気体燃料を噴射する技術が、特許文献2には、装入層に点火後、装入層に吸引される空気中に可燃性ガスを添加する技術が、また、特許文献3には、焼結原料の装入層内を高温にするため、装入層の上にフードを配設し、そのフードから空気やコークス炉ガスとの混合ガスを点火炉直後の位置で吹き込む技術が、さらに、特許文献4には、低融点溶剤と炭材や可燃性ガスを同時に点火炉直後の位置で吹き込む技術が提案されている。
【0007】
しかし、これらの技術は、高濃度の気体燃料を使用し、しかも燃料ガスの吹き込みに際して炭材量を削減していないため、装入層内の焼結時の最高到達温度が操業管理上の上限温度である1400℃を超える高温となり、焼結過程で生成したカルシウムフェライトが分解して、被還元性や冷間強度の低い焼結鉱が生成して歩留改善効果が得られなかったり、気体燃料の燃焼による温度上昇と熱膨張によって通気性が悪化し、生産性が低下したりし、さらには、気体燃料の使用によって焼結ベッド(装入層)上部空間で火災を起こす危険性があったりするため、いずれも実用化には至っていない。
【0008】
そこで、発明者らは、上記問題点を解決する技術として、焼結原料中の炭材添加量を削減した上で、焼結機の点火炉の下流かつ焼結に必要な熱量が不足する装入層上層部が焼結反応を起こす焼結機の機長の前半部分において、燃焼下限濃度以下に希釈した各種気体燃料を、パレット上方から装入層内に導入し、装入層内で燃焼させることにより、装入層内の最高到達温度および高温域保持時間の両方を適正範囲に制御する技術を特許文献5〜7等に提案している。
【0009】
下方吸引式焼結機を用いた焼結鉱の製造方法に、上記特許文献5〜7の技術を適用し、焼結原料中への炭材添加量を削減した上で、燃焼下限濃度以下に希釈した気体燃料を装入層内に導入し、気体燃料を装入層内で燃焼させた場合には、
図5に示したように、上記気体燃料は、炭材が燃焼した後の装入層内(焼結層内)で燃焼するので、燃焼・溶融帯の最高到達温度を1400℃超えとすることなく、燃焼・溶融帯の幅を厚さ方向に拡大させることができ、効果的に高温域保持時間の延長を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭48−018102号公報
【特許文献2】特公昭46−027126号公報
【特許文献3】特開昭55−018585号公報
【特許文献4】特開平05−311257号公報
【特許文献5】WO2007/052776号公報
【特許文献6】特開2010−047801号公報
【特許文献7】特開2008−291354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、焼結機の点火炉の下流側に設置された気体燃料供給装置から気体燃料を供給して焼結操業を行う場合には、気体燃料という性質上、安全であることが最優先とされる。この点、本発明においては、気体燃料を常温では燃焼も爆発も起こらない濃度に希釈して供給するため、通常であれば、安全上問題はない。しかし、高濃度の気体燃料を気体燃料供給装置のフード内で希釈して供給する場合、例えば、焼結原料を堆積したパレット台車のグレートバーが折損したときなどには、気体燃料が十分に希釈されることなくウインドボックスの下流の電気集塵機に到達し、火災や爆発につながるそれがある。したがって、斯かる異常は早期に検知して対策を講じてやる必要がある。
【0012】
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたもののであり、その目的は、下方吸引式の焼結機において気体燃料を供給して焼結操業を行う際の異常を早期に検知すると同時に、その異常に対する適切な対策を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた。その結果、パレット台車のグレートバー折損のような異常が発生したときには、ウインドボックスあるいはその下流の排気ブロアーの吸引圧が急激に変動することから、これらの変動を検知すれば異常を検知できることを知見し、本発明を開発するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、循環移動するパレット上に粉鉱石と炭材を含む焼結原料を装入して装入層を形成し、その装入層表面の炭材に点火炉で点火するとともに、点火炉の下流に機長方向に複数設置された気体燃料供給装置から供給した気体燃料を含む装入層上方の空気をパレット下に配設されたウインドボックスで吸引して装入層内に導入し、装入層内において上記気体燃料と炭材を燃焼させて焼結鉱を製造する際の気体燃料供給方法であって、上記ウインドボックスの下流に設置された排気ブロアーの吸引圧に対して上限値および下限値を設定し、焼結操業中における排気ブロアーの吸引圧が上記上限値を上回るまたは下限値を下回るときには異常発生と判定し、気体燃料供給装置への気体燃料の供給を停止することを特徴とする焼結機への気体燃料供給方法である。
【0015】
本発明の焼結機への気体燃料供給方法は、上記排気ブロアーの吸引圧
に基いて異常発生を判定する方法に代えて、ウインドボックスの吸引圧に対して上限値および下限値を設定し、焼結操業中におけるウインドボックスの吸引圧が上記上限値を上回るまたは下限値を下回るときには異常発生と判定し、気体燃料供給装置への気体燃料の供給を停止することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の焼結機への気体燃料供給方法は
、異常
発生と判定
した時には、ウインドボックスの排気経路に不活性ガスを導入することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の焼結機への気体燃料供給方法は、異常判定に用いる下限値を、正常操業中における吸引圧に対して−30%以下、上限値を、正常操業中における吸引圧に対して+30%以上に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、焼結に必要な熱量が不足する焼結原料装入層の領域に気体燃料を安全に供給することができるので、高強度かつ被還元性に優れる高品質の焼結鉱を、安定して高歩留りで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】焼結の進行に伴う装入層内の変化を説明する模式図である。
【
図3】燃焼帯が装入層の上層部、中層部および下層部の各位置に存在しているときの温度分布と、装入層の幅方向断面内における焼結鉱の歩留り分布を説明する図である。
【
図4】炭材量の変化(増量)による装入層内の温度変化を説明する図である。
【
図5】気体燃料供給が高温域保持時間に及ぼす効果を説明する模式図である。
【
図6】本発明の焼結機におけるパレット、点火炉および気体燃料供給装置を説明する図である。
【
図7】本発明の気体燃料供給装置のパレット幅方向の断面図である。
【
図8】パレット台車のグレートバーが折損したときの状況を説明する図である。
【
図9】本発明における異常発生時の対応例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図6は、本発明に係る焼結機のパレット、点火炉および気体燃料供給装置を示す側面図であり、無端移動式の焼結機パレット8は、一列に連結した複数のパレット台車13・・・がレール14上を移動する構成とされている。また、パレット台車13は、
図7に示すように、焼結原料が装入・堆積されるグレート13aと、グレート13aの幅方向両縁部から立ち上がるサイドウォール13bから構成されている。
また、
図6の符号15は、焼結機パレット8上に焼結原料を装入する図示されていない床敷鉱ホッパー4、サージホッパー5、ドラムフィーダー6および切り出しシュート7からなる原料装入部であり、これらを介して切り出され、装入された床敷鉱(返鉱)および焼結原料が、焼結機パレット8のグレート13a上に装入層9を形成する。
【0021】
また、原料装入部15の下流側には、点火炉10が設置され、この点火炉の下流側に、気体燃料供給装置16が複数基(
図6では3基)の直列に設置されている。ここで、気体燃料供給装置16は、点火炉10で点火された焼結機パレット8上の装入層内に気体燃料を導入させることで、装入層の燃焼・焼結帯を拡幅して高温域保持時間を延長し、焼結鉱の品質改善、生産性の向上を図る装置であり、
図7に示すように、焼結機パレット8の上方に配置したフード17と、フード17内に配置した多数の邪魔板18と、フード17内の邪魔板18の下方に配置した複数の気体燃料供給配管19とを備えている。
【0022】
フード17は、上部及び下部が開口しており、フード17内の邪魔板18は、頂点を上方とする断面がへ字状の部材であって、焼結機パレット8の搬送方向に沿って延長し、焼結機パレット8の搬送方向と直交する幅方向に所定ピッチをもって複数列かつ上下方向にも複数段配設されている。気体燃料供給配管19は、焼結機パレット8の搬送方向に延長し、搬送方向と直交するパレット幅方向に所定間隔を保って複数本配置されており、これら気体燃料供給配管19には、図示されていたい気体燃料供給素管から、気体燃料が供給されている。各気体燃料供給配管19には、気体燃料が水平方向に噴出する気体燃料噴出ノズルが配設または開口部が設けられている。この気体燃料としては、高炉ガス(Bガス)、コークス炉ガス(Cガス)、高炉・コークス炉混合ガス(Mガス)、LNG、都市ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス等の可燃性ガスやこれらの混合ガスを用いることができる。
【0023】
また、装入層内に導入する空気中に含まれる気体燃料は、その気体燃料の燃焼下限濃度以下のものである。希釈気体燃料の濃度が燃焼下限濃度より高いと、装入層上方で燃焼してしまい、気体燃料を供給する効果が失われてしまったり、爆発を起こしたりするおそれがある。また、希釈気体燃料が高濃度であると、低温度域で燃焼してしまうため、高温域保持時間の延長に有効に寄与し得ないおそれがあるからである。好ましくは、希釈した気体燃料の濃度は、大気中の常温における燃焼下限濃度の3/4以下、より好ましくは燃焼下限濃度の1/5以下、さらに好ましくは燃焼下限濃度の1/10以下である。ただし、希釈気体燃料の濃度が、燃焼下限濃度の1/100未満では、燃焼による発熱量が不足し、焼結鉱の強度向上と歩留りの改善効果が得られないため、下限は燃焼下限濃度の1/100とする。これを、天然ガス(LNG)についてみると、LNGの室温における燃焼下限濃度は4.8vol%であるから、希釈気体燃料の濃度は0.05〜3.6vol%の範囲が好ましく、0.05〜1.0vol%の範囲がより好ましく、0.05〜0.5vol%の範囲がさらに好ましいことになる。なお、希釈した気体燃料を供給する方法は、予め気体燃料を燃焼下限濃度以下に希釈した空気を供給する方法、気体燃料を高速で空気中に噴出させて瞬時に燃焼下限濃度以下に希釈させる方法のいずれでもよい。
【0024】
ところで、パレット台車の底部を構成するグレート13aは、グレートバーと称される鋳物製の棒を、パレット移動方向に平行に間隔を開けて並べたものであり、時として折損することがある。このような事態が発生すると、
図8に示したように、折損したグレート上に堆積された焼結原料が落下して大きな空隙部ができるため、その部分の圧損は大きく低下する。その結果、パレット台車の下方に配設されたウインドボックス(風箱)によって吸引される原料装入層上方の気体燃料が添加された空気は、上記空隙部に集中して流れ、しかも、その部分には焼結原料が存在しないため燃焼することなくウインドボックスの下流に流れることになる。
【0025】
ウインドボックスの下流には、通常、
図9に示すように、電気集塵機23が設置されており、放電を繰り返すことによって排ガスの除塵、清浄化が行われている。気体燃料を供給する本発明では、空気中に添加される気体燃料の濃度は、燃焼下限濃度以下に希釈されているため、未燃焼の気体燃料を含む排ガスが電気集塵器に到達したとしても、通常であれば放電により燃焼や爆発を起こすおそれはない。しかし、気体燃料を予め燃焼下限濃度以下に希釈して供給する気体燃料供給方法の場合は別として、高濃度の気体燃料を高速で空気中に高速で噴出し、瞬時に燃焼下限濃度以下に希釈する気体燃料供給方法の場合には、空気中に添加された気体燃料が燃焼下限濃度以下に希釈される前に電気集塵機まで到達してしまうおそれもある。
【0026】
一方、グレートの折損のない焼結原料が堆積した正常部分は、圧損が大きいだけでなく、上記空隙部の形成により、ウインドボックスの吸引圧(負圧)も低下するため、正常部分への気体燃料の導入量は大きく低下し、気体燃料供給効果が得られなくなる。さらに、高濃度の気体燃料を供給する気体燃料供給方法の場合には、グレートバーの折損により生じた空気の流れの変動によって、供給された気体燃料が高濃度のまま原料装入層上で局部的に滞留を起こし、火災や爆発を起こすおそれがある。
なお、同様の現象は、原料装入部の何らかのトラブルによって、パレット幅方向で局部的に焼結原料が装入されなかったような装入異常の場合にも起こり得ることである。
【0027】
したがって、グレートバーの折損等の異常は、早期に検出して然るべき対策を講じる必要がある。そこで、本発明では、
図9に示したように、グレートバーの折損等の異常を、ウインドボックス11を介して空気を吸引している排気ブロアー24の吸引圧を常時または定期的にモニターし、上記吸引圧の急激な変化が生じた場合には、グレートバーの折損等の異常発生のおそれがあると判定し、気体燃料の供給を停止する等の対策を講じることとした。具体的には、上記ウインドボックスの下流に設置された排気ブロアーの吸引圧に対して上限値および下限値を設定し、焼結操業中における排気ブロアーの吸引圧が上記上限値を上回るまたは下限値を下回るときには異常発生と判定する。
【0028】
下方吸引式の焼結機における排気ブロアーの吸引圧は、通常、−20kPa〜−15kPa程度であり、それらの吸引圧は、焼結原料の構成や粒度、層厚、焼結速度の変動等によって、正常な焼結操業時においても上記吸引圧に対して±25〜28%程度の範囲で変動することがある。そこで、グレートバーの折損等の異常発生と判定する基準値(閾値)を、正常操業時の吸引圧に対してわずかに高い±30%以上の範囲として設定するのが好ましい。
また、上記グレートバーの折損等の異常発生と判定する基準値(閾値)を、正常操業時の吸引圧に対して±30%以上の範囲として設定することに加え、その継続時間を設定することがより好ましい。なお、この継続時間は、空気中に添加された気体燃料が、電気集塵機まで到達するまでの時間を最長の継続時間として設定すればよい。
【0029】
なお、前述したグレートバーの折損や焼結原料の装入異常の場合には、排気ブロアーにおける吸引圧の変化は負(マイナス)となるが、例えば、グレートバー折損により落下した焼結原料によって排気系統が閉塞を起こした場合には、正(プラス)となることも有り得る。そこで、本発明では、正常操業時の吸引圧に対して上下限値を設定することとした。なお、上記上下限値の正常操業時の吸引圧に対する隔たり量は同じである必要はなく、別々の量に設定してもよい。
【0030】
また、本発明においては、上記排気ブロアーの吸引圧に代えて、ウインドボックスの吸引圧に対して上限値および下限値を設定し、焼結操業中におけるウインドボックスの吸引圧が上記上限値を上回るまたは下限値を下回るときには異常発生と判定してもよい。また、上記排気ブロアーの吸引圧に代えて、排気ブロアーを駆動するモーターの負荷電流をモニターする方法としてもよい。吸引圧によってモーターの負荷も変化するからである。
【0031】
また、グレートバーの折損等の異常発生と判定したときの本発明における対応策としては、高濃度の気体燃料に起因する火災や爆発等を防止する観点から、気体燃料供給装置からの気体燃料の供給停止は必須の事項である。さらに安全性を高める観点からは、気体燃料供給ラインから不活性ガスを導入するようにするのが好ましい。
【0032】
図9中には、排気経路22の排気ブロアー24前に設置した圧力計PG25で吸引圧の変動を測定し、この測定データを異常監視装置26で解析して異常発生の有無を判定し、その結果、異常発生と判断した場合には、気体燃料供給装置16に気体燃料を供給する配管に設けられた遮断弁27を閉止すると同時に、不活性ガス供給経路に設けられた不活性ガス供給弁28を開にして、気体燃料の供給ラインに、N
2ガスやArガス等の不活性ガスを供給する対策例を示した。なお、不活性ガス供給経路に設けられた不活性ガス供給弁29を開にして、排気ガスの排気経路に、N
2ガスやArガス等の不活性ガスを供給すれば、より好ましい。
【実施例】
【0033】
パレット幅が5m、有効機長(点火炉〜排鉱部までの長さ)が82m、装入層の層厚が700mmで、点火炉の下流側約4m以降に7.5mの長さの気体燃料供給装置が3基直列に配設されており、その気体燃料供給装置から気体燃料(LNG)を供給して焼結操業を行う実機焼結機に、本発明の気体燃料供給方法を適用した。なお、焼結原料中の炭材量は4.7mass%とし、供給する気体燃料としてはLNGを用い、希釈後の気体燃料の濃度は、0.4vol%(炭材約0.4mass%に相当)とした。
【0034】
上記条件で、焼結鉱の製造を約1年に亘って実施した。その結果、グレートバー折損による異常が3件、焼結原料の装入不具合により異常が5件発生したが、いずれの異常も検知することができ、見逃しは0件であった。以上の結果から、本発明の気体燃料供給方法を適用することにより、高品質の焼結鉱を安全に生産できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の気体燃料供給方法は、製鉄用、特に高炉用原料として使用される焼結鉱の製造方法として有用であるばかりでなく、その他の鉱石塊成化技術にも好ましく適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1:原料ホッパー、 2、3:ドラムミキサー、 4:床敷鉱ホッパー、 5:サージホッパー、 6:ドラムフィーダー、 7:切り出しシュート、 8:パレット、 9:装入層、 10:点火炉、 11:ウインドボックス(風箱)、 12:カットオフプレート、 13:パレット台車、 13a:グレート、 13b:サイドウォール、 14:レール、 15:原料装入部、 16:気体燃料供給装置、 17:フード、 18:邪魔板、 19:気体燃料供給配管、20:排鉱部 21:ウインドレッグ、 22:排気経路主管、 23:電気集塵機、 24:排気ブロアー、 25:圧力計、 26:異常監視装置、 27:LNG遮断弁、 28,29:不活性ガス供給弁