【実施例】
【0012】
図1および
図2に示すように、本発明の一実施形態である空気清浄機1は、各々合成樹脂材で成形された天面パネル11a、右側面パネル11b、左側面パネル11c、底部11dで略直方体状に形成された本体部11を有し、本体部11の一方の面に合成樹脂材で成形された前面パネル12が配置され、他方の面に合成樹脂材で成形されたリアパネル14が配置されている。本体部11と前面パネル12とリアパネル14とで、本発明の空気調和装置1の筐体が形成される。また、天面パネル11aと前面パネル12の上端部とリアパネル14の上端部で形成される面が筐体の上面であり、右側面パネル11bと前面パネル12の右側端部とリアパネル14の右側端部とで形成される面が筐体の右側面であり、左側面パネル11cと前面パネル12の左側端部とリアパネル14の左側端部とで形成される面が筐体の左側面であり、底部11dと前面パネル12の下端部とリアパネル14の下端部とで形成される面が筐体の底面である。
尚、以降の説明において、必要に応じ本体部11の前面パネル12配置側を前面側、本体部11のリアパネル14配置側を背面側と称する。
【0013】
前面パネル12の前方には、合成樹脂材で形成されたフロントパネル13が配置される。フロントパネル13と前面パネル12との間には、上下/左右に4カ所の隙間が形成され、これら4カ所の隙間は、筐体の上面、底面、および左右側面のそれぞれの前面側に形成される。筐体上面の前面側に形成される隙間が上面吸込口13a、筐体右側面の前面側に形成される隙間が右側面吸込口13b、筐体左側面の前面側に形成される隙間が左側面吸込口13c、筐体底面の前面側に形成される隙間が底面吸込口13dとされる。これら上面吸込口13a、右側面吸込口13b、左側面吸込口13c、底面吸込口13dが本発明の空気吸込口である。
【0014】
また、本体部11とリアパネル14との間には、上/左右に3か所の隙間が形成され、これら3カ所の隙間は、筐体の上面および左右側面のそれぞれの背面側に形成される。筐体上面の背面側に形成される隙間が上面吹出口14a、筐体右側面の背面側に形成される隙間が右側面吹出口14b、筐体左側面の背面側に形成される隙間が左側面吹出口14cとされる。これら上面吹出口14a、右側面吹出口14b、左側面吹出口14cが本発明の空気吹出口である。
【0015】
空気清浄機1では、上面吸込口13a、右側面吸込口13b、左側面吸込口13c、および底面吸込口13dから本体部11に吸い込んだ空気を、上面吹出口14a、右側面吹出口14b、および左側面吹出口14cから室内に吹き出す間に、空気の除塵・加湿および脱臭が行われる。
【0016】
尚、
図3および
図4に示すように、上面吸込口13a、右側面吸込口13b、左側面吸込口13c、および底面吸込口13dと、上面吹出口14a、右側面吹出口14b、および左側面吹出口14cとを連通する本体部11内部の空間が、本発明の空気清浄機1における通風路10となる。また、以下の説明では、必要に応じて通風路10における各吸込口側を上流側、各吹出口側を下流側として説明する。
【0017】
空気清浄機1の筐体上面には、上面吸込口13aの一部を覆うように操作部15が設けられている。操作部15は、電源ボタンや運転モード切り換えボタン等の空気清浄機1を操作するボタンが配置されるとともに、空気清浄機1の運転状態や図示しない塵埃センサ等の検出器における検出結果を表示する表示部が配置されている。
【0018】
図3に示すように、空気清浄機1の本体部11内部の通風路10には、上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ21、集塵ユニット22、脱臭ユニット23、加湿ユニット24、送風機25が配置されている。
【0019】
プレフィルタ21は、例えば糸状のPET材を編みこんで網目構造としたものであり、本体部11内部に吸い込まれる空気に含まれる塵埃を除去する。
図4に示すように、プレフィルタ21は、本体部前面側に向かって凸となるようなアーチ形状に形成されているので、プレフィルタ21を平坦な形状とする場合と比べて、上面吸込口13a、右側面吸込口13b、左側面吸込口13c、および底面吸込口13dから本体部11内部に吸い込まれた空気がプレフィルタ21を通過する面積が大きくなるので、より多くの塵埃を除去することができる。
【0020】
図3および
図5に示すように、集塵ユニット22は、第1電気集塵機22aと第2電気集塵機22bとで構成されており、第1電気集塵機22aと第2電気集塵機22bとは上下方向に並べて配置されている。第1電気集塵機22aおよび第2電気集塵機22bは、図示しない放電電極と集塵電極とを有し、放電電極によるコロナ放電によりプレフィルタ21で除去できなかった細かな塵埃や花粉等を帯電させ、帯電した塵埃や花粉等を集塵電極で除去する。第1電気集塵機22aおよび第2電気集塵機22bは、主に上述した放電電極や集塵電極、および、これらを保持する筐体で形成されているので、集塵ユニット22は、背景技術で説明した不織布をプリーツ形状に形成した集塵フィルタに比べて空気抵抗が小さい。
尚、
図5においては、集塵ユニット22(第1電気集塵機22aおよび第2電気集塵機22b)が視認しやすいようにするために、フロントパネル13の描画を省略している。
【0021】
図3、
図4および
図6に示すように、脱臭ユニット23は、脱臭フィルタ23aと加熱部23fとを有する。
図6に示すように、脱臭フィルタ23aは、例えば、平板材と波形に連続屈曲した屈曲材とを交互に積層してなる波形構造やハニカム構造のような多孔構造の基材を円板形状に形成してなり、その基材23aaに臭気成分を吸着して分解する触媒層23abを設けたものである。
図3および
図4に示すように、加熱部23fは、PTCヒータ23bと、2枚の放熱板23cと、2個の断熱材23dと、2個のケース23eとで構成される。PTCヒータ23bは、2枚の放熱板23cのうち本体部前面側に配置された放熱板23cに取り付けられて、2枚の放熱板23cを加熱する。2枚の放熱板23cは、各々が略三角形状に形成された金属板であり、
図3および
図4に示すように、脱臭フィルタ23aの一部を覆うように配置される。2枚の放熱板23cは、脱臭フィルタ23aの中央部に位置する箇所や脱臭フィルタ23aの外径側で接触するように構成されているので、PTCヒータ23bにより本体前面側に配置された放熱板23cだけではなく、本体背面側の放熱板23cも加熱される。断熱材23dは、PTCヒータ23bや放熱板23cを覆うように配置されてPTCヒータ23bや放熱板23cからの熱が外部に逃げることを抑制する。ケース23eは、PTCヒータ23bや放熱板23cや断熱材23dを保持できる形状に形成されている。
このように、脱臭フィルタ23aは多孔構造を有しており、また、加熱部23fが脱臭フィルタ23aの一部のみ覆う構造となっているので、脱臭フィルタ23aの空気抵抗は小さい。
【0022】
脱臭フィルタ23aの脱臭能力を再生するときは、PTCヒータ23bにより2枚の放熱板23cを加熱し、2枚の放熱板23cにより覆われた脱臭フィルタ23aの一部を加熱する。図示しないモータによって脱臭フィルタ23aを回転させながら脱臭フィルタ23aを加熱することによって、脱臭フィルタ23aの触媒層23abに吸着されていた臭気成分の分解が促進され、脱臭フィルタ23aの脱臭能力が再生される。尚、脱臭フィルタ23aが回転するのではなく、放熱板23cが移動することによって脱臭フィルタ23aを加熱してもよい。また、脱臭ユニット23は上記に限らず、加熱手段(PTCヒータ23bおよび放熱板23c)を設けず、触媒層の代わりに活性炭のような臭気成分の吸着材を基材に添加した脱臭フィルタで脱臭ユニットを構成し、吸着能力が低下すれば新しい脱臭フィルタに交換するようにしてもよい。
【0023】
図3、
図4および
図6に示すように、加湿ユニット24は、加湿フィルタ24aと水を貯留する貯水タンク24bとを有する。加湿フィルタ24aは、円板形状に形成されてその一部が貯水タンク24bに溜められた水に浸った状態で回転軸により回転可能に支持されており、図示しないモータにより回転するようになっている。尚、加湿ユニット24は上記に限らず、回転によって水分を吸い上げる加湿フィルタ24aに代えて、毛細管現象によって水分を吸い上げる加湿フィルタであってもよい。また、
図6においては、脱臭ユニット23や加湿ユニット24が視認しやすいようにするために、フロントパネル13や底部11d以外の本体部11を構成する部材、集塵ユニット22等の描画を適宜省略している。
【0024】
図3、
図4および
図7に示すように、送風機25は、ターボファン25aとファンモータ25bとを有する。ターボファン25aは、合成樹脂材で形成されており、ファンモータ25bの出力軸に接続されている。ファンモータ25bは回転数可変であり、ファンモータ25bが回転することでターボファン25aも回転し、ターボファン25aの回転によって、空気清浄機1内部へ空気が流入あるいは空気清浄機1内部から空気が流出する。尚、
図7においては、送風機25が視認しやすいようにするために、フロントパネル13や底部11d以外の本体部11を構成する部材、集塵ユニット22、脱臭機集ユニット23、加湿ユニット24等の描画を適宜省略している。
【0025】
次に、
図8を用いて、以上説明した構成を有する空気清浄機1が運転を行っているときの、空気清浄機1の動作および空気清浄機1が設置される部屋の空気の流れについて説明する。空気清浄機1は、
図8(B)に示す、天井面300a、床面300b、および4面の側壁面300cとで形成される部屋300に設置され、空気清浄機1のリアパネル14が、側壁面300cのうちの1面に対向するように近接して配置されている。使用者が操作部15を操作して空気清浄機1の運転を開始すると、送風機25が駆動するとともに、集塵ユニット22の第1電気集塵機22aおよび第2電気集塵機22bに通電が開始され、加湿ユニット24の加湿フィルタ24aが回転を開始する。送風機25が駆動すると、
図8(A)に示す破線矢印100のように、上面吸込口13a、右側面吸込口13b、左側面吸込口13c、および底面吸込口13dの4方向の吸込口から本体部11内部に空気が吸い込まれる。
【0026】
本体部11内部に吸い込まれた空気は、1)通風路10における脱臭ユニット23の下部と加湿ユニット24の上部とが前後方向に重なって配置される箇所では、プレフィルタ21→集塵ユニット22→脱臭ユニット23→加湿ユニット24の順に、2)通風路10における脱臭ユニット23の下部と加湿ユニット24の上部とが前後方向に重なって配置されていない箇所では、プレフィルタ21→集塵ユニット22→脱臭ユニット23の順に、または、プレフィルタ21→集塵ユニット22→加湿ユニット24の順に、それぞれ流れる。このとき、プレフィルタ21および通電されている集塵ユニット22で吸い込まれた空気に含まれる塵埃や花粉が除去される。また、脱臭ユニット23で吸い込まれた空気に含まれる臭気成分が除去されるとともに、加湿ユニット24で吸い込まれた空気が加湿される。
【0027】
通風路10において除塵・脱臭および加湿が行われた空気は、
図8(A)に示す実線矢印200のように、上面吹出口14a、右側面吹出口14b、および左側面吹出口14cの3方向の吹出口から空気清浄機1が設置された室内に吹き出される。このとき、各空気吹出口から空気が吹き出された空気は、
図8(B)に同じく実践矢印200で示すように、部屋300の天井面300aと側壁面300cに沿って空気清浄機1が配置された側壁面300cの反対側の側壁面300c、つまり、空気清浄機1からみて部屋300の奥側に向かって流れていく。具体的には、上面吹出口14aから吹き出された空気は、天井面300aに沿って部屋300の奥側に向かって流れていき、右側面吹出口14bから吹き出された空気は、右側の側壁面300cに沿って部屋300の奥側に向かって流れていき、左側面吹出口14cから吹き出された空気は、左側の側壁面300cに沿って部屋300の奥側に向かって流れていく。
【0028】
以上説明したように、空気清浄機1が設置された部屋300を包み込むように浄化・加湿された空気が吹き出されるとともに、リアパネル14が側壁面300cのうちの1面に対向するように近接して配置された空気清浄機1の上面吸込口13a、右側面吸込口13b、左側面吸込口13c、および底面吸込口13dの4方向の吸込口から部屋300の空気を吸い込むので、部屋300の空気の流れが良くなって部屋300の空気をまんべんなく吸い込んで除塵・加湿および脱臭できる。また、床面300bに付着・散乱している塵埃や花粉、臭気成分等を底面吸込口13dから吸い込まれる空気によって空気清浄機1に吸い込むことができるので、床面300b上も含めた部屋300の空気の循環を良くして部屋300全体の空気をより効果的に浄化できる。
【0029】
また、本発明の空気清浄機1は、筐体の前面側に形成された空間を上面吸込口13a、右側面吸込口13b、左側面吸込口13c、および底面吸込口13dとしている。従って、筐体の前面であるフロントパネル13に空気吸込口を設けないため、空気清浄機1の意匠性が向上する。
【0030】
また、集塵ユニット22は、背景技術で説明した不織布をプリーツ形状に形成した集塵フィルタに比べて空気抵抗が小さく、また、脱臭ユニット23も、背景技術で説明した触媒フィルタとほぼ同面積となるよう形成された板形状の加熱部を有する脱臭ユニットに比べて空気抵抗が小さい。これにより、シロッコファンと比べて静圧が低い、つまり、同じ空気抵抗がある場合においてシロッコファンより風量が小さいが、シロッコファンと比べて効率が高く騒音が小さいターボファン25aを送風機25に用いることができるので、必要な集塵能力や脱臭能力を確保しつつ騒音を抑制した空気清浄機1を実現できる。尚、ターボファン25aは、シロッコファンが備えるスクロールハウジングが不要なことから、シロッコファンより小型化と薄型化ができる。
【0031】
また、集塵ユニット22や脱臭ユニット23の空気抵抗が小さいので、
図3乃至
図7に示したように、通風路10の上流側から下流側に向かって、集塵ユニット22、脱臭ユニット23、加湿ユニット24、送風機25の順に並べて配置しても空気抵抗がさほど大きくならないので、送風機25の駆動によって本体部11内部の通風路10を流れる空気量が低下しない。そして、上記のように各構成を並べて配置することによって、本体部11が前後(奥行き)方向の寸法が長くなり、かつ、本体部11の前面側に各空気吸込口を配置し本体部11の背面側に各空気吹出口を配置しているので、
図4に示す各空気吸込口と各空気吹出口との距離Lを大きくすることができる。これにより、各空気吹出口から室内に吹き出された空気がすぐに各空気吸込口から空気清浄機1内部に吸い込まれる、所謂空気吸込口と空気吹出口との間のショートサーキットの発生が抑制される。尚、上述したように、脱臭ユニット23より上流側に集塵ユニット22が配置されているので、脱臭ユニット23に流入する空気は塵埃や花粉等が除去されており、塵埃や花粉等によって脱臭ユニット23の脱臭フィルタ23aが目詰まりすることがない。
【0032】
さらには、
図3および
図4に示すように、送風機25において、各空気吸込口から各空気吹出口に向かってファンモータ25b、ターボファン25aの順に配置されている、つまり、各空気吸込口から最も遠い場所にターボファン25aが配置されており、ターボファン25aの配置に対応して各空気吹出口が配置されているので、各空気吸込口と各空気吹出口との距離Lをより大きくすることができ、よりショートサーキット発生の抑制効果が得られる。尚、ターボファン25aとファンモータ25bの配置順は、上記と逆であってもよい。
【0033】
上述したショートサーキットが発生しづらい距離Lを実現できるので、筐体の前面側に形成される上下/左右の4つの隙間を、空気清浄機1内部に空気を吸込むための上面吸込口13a、右側面吸込口13b、左側面吸込口13c、および底面吸込口13dとすることができるとともに、筐体の背面側に形成される上/左右の3つの空間を、空気清浄機1内部から空気を吹き出すための上面吹出口14a、右側面吹出口14b、および左側面吹出口14cとすることができる。これにより、空気吸込口および空気吹出口の面積を大きくでき、空気の吸い込み量や吹き出し量を十分に確保できる。
【0034】
尚、
図3の線分Pに示すように、ファンモータ25bの中心の高さを、集塵ユニット22の第1電気集塵機22aと第2電気集塵機22bとの間の空間の高さに合せるように、集塵ユニット22および送風機25を配置することが望ましい。ファンモータ25bの中心付近には、ターボファン25aの回転による空気の流れが少ないため、本体部11内部におけるファンモータ25bの中心付近の空間での空気の流れは少ないと考えられる。そこで、集塵ユニット22のうち空気が通過しても集塵能力のない第1電気集塵機22aと第2電気集塵機22bとの間の空間の高さを、ファンモータ25bの中心の高さに合わせることによって、空気の流れが多いと考えられる、ターボファン25aの羽根が存在する空間に第1電気集塵機22aと第2電気集塵機22bとを配置することとなるので、効率的に集塵ユニット22での除塵が行える。
【0035】
尚、以上説明した実施形態では、空気清浄機1が略直方体形状の筐体を有する場合を例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、上面、底面、および左右側面を有し、これら各面に空気吸込口や空気吹出口が設けられる多面体形状であればよい。