【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成23年9月15日に川崎化成工業株式会社のホームページにて公開 http://www.kk−chem.co.jp/ http://www.kk−chem.co.jp/news/2011.html http://www.kk−chem.co.jp/news/20110902.html 平成23年9月15日に社団法人発明協会の発明協会ホームページ登録サービスにて公開 https://www.hanketsu.jiii.or.jp/giho/servlet/FrameControlPreview?tourokuno=2011−700088 https://www.hanketsu.jiii.or.jp/giho/servlet/FrameControlPreview?tourokuno=2011−700089 https://www.hanketsu.jiii.or.jp/giho/servlet/FrameControlPreview?tourokuno=2011−700090
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性化合物は、合成樹脂の原料として工業的に広範に利用されている有機化合物であり、このようなラジカル重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのエステル、スチレン系化合物等の多種の化合物が知られている。
【0003】
これらラジカル重合性化合物の重合過程において、目的とする用途に応じて生成ポリマーの分子量を調節することは有益である。特に、コーティング剤、接着剤、粘着剤、紙力増強剤、バインダー、レジストなどの用途に用いるとき、分子量調整は重要な技術となっている。
【0004】
ラジカル重合性化合物の重合反応において分子量を調整する技術としては種々あるが、重合系へ連鎖移動剤を添加する方法が良く用いられる。この連鎖移動剤としては、従来はおもに四塩化炭素に代表されるハロゲン化炭化水素、t−あるいはn−ドデシルメルカプタンに代表されるアルキルメルカプタン化合物あるいはスルフィド化合物などが使用されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
例えば、塗料、接着剤やシーリング材などの用途に、低分子量のアクリルポリマーなどが多く用いられてきているが、このような低分子量のアクリルポリマーを製造する場合には、連鎖移動剤としてのアルキルメルカプタン化合物が用いられる(例えば、特許文献4〜6参照。)。
【0006】
また、スチレンの重合においては、平均分子量や分子量分布、メルトフローインデックスなどを調整するためメルカプタン系の連鎖移動剤が添加されている(例えば、特許文献7、8参照。)。
【0007】
また、複写機やプリンターに用いられる重合トナーの製造において、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーの重合の際、低分子量化とシャープな分子量分布を得るために、メルカプタン系の連鎖移動剤が用いられている(例えば、特許文献9、10参照。)。
【0008】
そしてまた、連鎖移動剤は上記のように分子量を調整するだけでなく、一般にその反応機構から、ポリマー末端に自らの残基を付与することも知られている(例えば非特許文献1〜3参照。)。そのことを利用して、官能基を有した連鎖移動剤を用いることにより、ポリマー末端に官能基を付与する手法も提案されている(例えば特許文献11、12、非特許文献4、5参照。)。
【0009】
一方、スルホナート基を有する芳香族化合物がエステル化触媒として用いることができることから、フェノール性水酸基を有する芳香族スルホン酸類を水溶性のエステル化触媒兼重合防止剤として用いられる例は知られている(例えば特許文献13、14)。また、ナフトハイドロキノンスルホン酸を重合禁止剤として用いる例は知られている(特許文献15)。しかし、これらの例において、その用途や使用目的は、重合を禁止する作用に限られており、連鎖移動効果を目的としたものではなく、また、連鎖移動効果を持つという示唆もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような従来技術において、例えばドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、アルファメチルスチレンダイマーなどの従来用いられている連鎖移動剤は、悪臭を有していたり、環境に悪影響を及ぼすなど欠点を有しているとともに、いずれも疎水性であり、アクリル酸、アクリルアミド等の水溶液重合に不向きであるという欠点を有している。一方、イソプロパノール等の水溶性の低級アルコールも連鎖移動能を有するがその能力は小さく、水溶性のメルカプトエタノールも連鎖移動能を有するが、悪臭と毒性が高いという欠点を有し、満足すべき水溶性の連鎖移動剤がなかった。
【0013】
また、連鎖移動剤が成長ポリマー末端に付加し連鎖移動することが知られており、そのことを利用して末端に官能基を有するポリマーを製造することも提案されている(例えば特許文献11、12、非特許文献4、5参照。)。しかしながら、それらの連鎖移動剤はいずれも上記のハロゲン化炭化水素、アルキルメルカプタン、アルファメチルスチレンダイマーの誘導体であり、上述の欠点をそのまま有していると言わざるをえない。
【0014】
よって、本発明は、臭気の問題がなく、かつ連鎖移動能が大きい新しいタイプの水溶性連鎖移動剤を提供することにある。さらに、本発明の目的は、末端に官能基を有する縮合多環芳香族骨格を付与されたポリマーおよびその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するため、ラジカル重合性化合物の連鎖移動剤につき鋭意検討した結果、本願発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤が、水溶性であること、分子内にハロゲン等の環境に悪影響を及ぼす原子を持たず、従来より知られている連鎖移動剤とは全く異なる構造であるにもかかわらず、優れた連鎖移動効果を有すること、また分子内に本発明の連鎖移動剤に由来する縮合多環芳香族骨格を有するポリマーを製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明における第一の発明は、下記一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に存する。
【0017】
【化1】
【0018】
(上記一般式(1)において、nは1又は2の整数を表し、mは6又は7の整数を表し、且つ、mとnの合計は8であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基又はアルコキシ基のいずれかを示し、隣接するRは、前記置換基に代えて互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよく、Xは、水素原子、アルカリ金属又は下記一般式(2)で示されるアンモニウムのいずれかを示す。)
【0019】
【化2】
【0020】
(上記一般式(2)において、R
1、R
2及びR
3は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基のいずれかを示す。*は結合手を示す。)
【0021】
第二の発明は、下記一般式(3)で示される縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に存する。
【0022】
【化3】
【0023】
(上記一般式(3)において、nは1又は2の整数を表し、mは4乃至6の整数を表し、pは1又は2の整数を表し、且つ、mとnとpの合計は8であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基のいずれかを示し、隣接するRは前記置換基に代えて互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよく、Xは、水素原子、アルカリ金属又は下記一般式(2)で示されるアンモニウムのいずれかを示す。)
【0024】
【化4】
【0025】
(上記一般式(2)において、R
1、R
2及びR
3は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基のいずれかを示す。*は結合手を示す。)
【0026】
第三の発明は、下記一般式(4)で示される縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に存する。
【0027】
【化5】
【0028】
(上記一般式(4)において、nは1又は2の整数を表し、mは4又は5の整数を表し、且つ、mとnの合計は6であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基のいずれかを示し、隣接するRは前記置換基に代えて互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよく、Xは、水素原子、アルカリ金属又は下記一般式(2)で示されるアンモニウムのいずれかを示す。)
【0029】
【化6】
【0030】
(上記一般式(2)において、R
1、R
2及びR
3は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基のいずれかを示す。*は結合手を示す。)
【0031】
第四の発明は、下記一般式(5)で示される縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に存する。
【0032】
【化7】
【0033】
(上記一般式(5)において、Xは、水素原子、アルカリ金属又は下記一般式(2)で示されるアンモニウムのいずれかを示す。)
【0034】
【化8】
【0035】
(上記一般式(2)において、R
1、R
2及びR
3は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基のいずれかを示す。*は結合手を示す。)
【0036】
第五の発明は、第一の発明乃至第四の発明のいずれかひとつに記載する縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤と、ラジカル重合性化合物とを含有するラジカル重合性組成物に存する。
【0037】
第六の発明は、ラジカル重合性化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルまたはスチレンであることを特徴とする第五の発明に記載のラジカル重合性組成物に存する。
【0038】
第七の発明は、第五の発明又は第六の発明に記載のラジカル重合性組成物をラジカル重合して得られるポリマーであって、ポリマーの末端あるいは主鎖の一部に、該縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に由来する残基を有するポリマーに存する。
【0039】
第八の発明は、第一の発明乃至第四の発明のいずれかひとつに記載する縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤存在下にラジカル重合性化合物をラジカル重合することを特徴とする、ポリマーの末端あるいは主鎖の一部に、縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に由来する残基を有するポリマーを製造する方法に存する。
【0040】
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを表し、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを表す。
【発明の効果】
【0041】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤は不快臭がなく、水溶性であり、ラジカル重合性化合物に用いることにより、所望するポリマーの分子量を効果的に調整することが可能であり、生成したポリマーの不快臭の発生も抑制できる。さらに本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を用いてラジカル重合性化合物を重合することによりその末端に縮合多環芳香族骨格を有するポリマーを合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[連鎖移動剤]
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0044】
(上記一般式(1)において、nは1又は2の整数を表し、mは6又は7の整数を表し、且つ、mとnの合計は8であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基又はアルコキシ基のいずれかを示し、隣接するRは、前記置換基に代えて互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよく、Xは、水素原子、アルカリ金属又は下記一般式(2)で示されるアンモニウムのいずれかを示す。)
【0046】
(上記一般式(2)において、R
1、R
2及びR
3は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基のいずれかを示す。*は結合手を示す。)
【0047】
一般式(1)において、Rの一つ又は二つがヒドロキシ基である場合が、一般式(3)の化合物となる。
【0049】
(上記一般式(3)において、nは1又は2の整数を表し、mは4乃至6の整数を表し、pは1又は2の整数を表し、且つ、mとnとpの合計は8であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基のいずれかを示し、隣接するRは前記置換基に代えて互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよく、Xは、水素原子、アルカリ金属又は上記一般式(2)で示されるアンモニウムのいずれかを示す。)
【0050】
一般式(3)において、ヒドロキシ基が二つあり、それらがナフタレン骨格の1,4位についたものが、一般式(4)の化合物となる。
【0052】
(上記一般式(4)において、nは1又は2の整数を表し、mは4又は5の整数を表し、且つ、mとnの合計は6であり、複数あるRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基のいずれかを示し、隣接するRは前記置換基に代えて互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成してもよく、Xは、水素原子、アルカリ金属又は上記一般式(2)で示されるアンモニウムのいずれかを示す。)
【0053】
一般式(4)において、nが1であり、SO
3X基がナフタレン骨格の2位についたもので、全てのRが水素原子であるものが、一般式(5)の化合物となる。
【0055】
(上記一般式(5)において、Xは、水素原子、アルカリ金属又は上記一般式(2)で示されるアンモニウムのいずれかを示す。)
【0056】
一般式(1)乃至(4)において、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基が挙げられる。
【0057】
一般式(1)乃至(4)において、隣接するRが前記置換基に代えて互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成している例としては、隣接する二つのRがCH
2CH
2基であり、隣接する二つのRが一重結合で結合しているもの、隣接する二つのRがCH
2CH基であり、隣接する二つのRが二重結合で結合しているもの、隣接する二つのRがCH=CH基であり、隣接する二つのRが一重結合で結合しており芳香環を形成しているものなどが挙げられる。隣接する二つのRによって形成される6員環はさらにアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、スルホニル基が置換していてもよい。さらに置換されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基等が挙げられる。
【0058】
一般式(2)において、R
1、R
2、R
3で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、ヒドロキシルアルキル基としては、ヒドロキシルエチル基、ヒドロキシルプロピル基等が挙げられる。
【0059】
次に、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤の具体例を示す。一般式(1)において、nが1又は2であり、Rの二つがヒドロキシ基であり、それらがナフタレン骨格の1,4位についている化合物が、一般式(4)の化合物である。まず、この一般式(4)の化合物について説明する。
【0060】
この一般式(4)において、nが1の場合で、SO
3X基がナフタレン骨格の2位についたもので、全てのRが水素原子である化合物が、一般式(5)の化合物であるが、その具体例としては、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸カリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸アンモニウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0061】
次に、一般式(5)で表される化合物以外の一般式(4)で表される化合物の具体例としては、1,4−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸、1,4−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸カリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸アンモニウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,3−ジスルホン酸、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,3−ジスルホン酸ナトリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,3−ジスルホン酸カリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,3−ジスルホン酸アンモニウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,3−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジスルホン酸、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジスルホン酸ナトリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジスルホン酸カリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジスルホン酸アンモニウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,4−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸、1,4−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸ナトリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸カリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸アンモニウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、6−メチル−1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸、6−メチル−1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム、6−メチル−1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸カリウム、6−メチル−1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸アンモニウム、6−メチル−1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0062】
さらには、隣接するRが前記置換基に代えて互いに結合して飽和又は不飽和の6員環を形成している例としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン−1−スルホン酸、9,10−ジヒドロキシアントラセン−1−スルホン酸ナトリウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−1−スルホン酸カリウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−1−スルホン酸アンモニウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−1−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2−スルホン酸、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2−スルホン酸ナトリウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2−スルホン酸カリウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2−スルホン酸アンモニウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,6−ジスルホン酸、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,6−ジスルホン酸ナトリウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,6−ジスルホン酸カリウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,6−ジスルホン酸アンモニウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,6−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,7−ジスルホン酸、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,7−ジスルホン酸ナトリウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,7−ジスルホン酸カリウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,7−ジスルホン酸アンモニウム、9,10−ジヒドロキシアントラセン−2,7−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0063】
また、一般式(4)及び(5)で表される化合物以外の一般式(3)で表される化合物の具体例としては、1−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸カリウム、1−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸アンモニウム、1−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシナフタレン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシナフタレン−1−スルホン酸カリウム、2−ヒドロキシナフタレン−1−スルホン酸アンモニウム、2−ヒドロキシナフタレン−1−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸カリウム、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸アンモニウム、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸、1−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸カリウム、1−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸アンモニウム、1−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸カリウム、2−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸アンモニウム、2−ヒドロキシナフタレン−5−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸カリウム、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸アンモニウム、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,2−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸、1,2−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、1,2−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸カリウム、1,2−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸アンモニウム、1,2−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸カリウム、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸アンモニウム、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸カリウム、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸アンモニウム、1,7−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,8−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、1,8−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸カリウム、1,8−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸アンモニウム、1,8−ジヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸カリウム、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸アンモニウム、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,3−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸、1,3−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸ナトリウム、1,3−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸カリウム、1,3−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸アンモニウム、1,3−ジヒドロキシナフタレン−5,7−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,2−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸、1,2−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸ナトリウム、1,2−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸カリウム、1,2−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸アンモニウム、1,2−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,4−ジスルホン酸、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,4−ジスルホン酸ナトリウム、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,4−ジスルホン酸カリウム、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,4−ジスルホン酸アンモニウム、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,4−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸ナトリウム、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸カリウム、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸アンモニウム、1,8−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、2,7−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸、2,7−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸ナトリウム、2,7−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸カリウム、2,7−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸アンモニウム、2,7−ジヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0064】
さらに、一般式(3)(4)及び(5)で表される化合物以外の一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、ナフタレン−1−スルホン酸カリウム、ナフタレン−1−スルホン酸アンモニウム、ナフタレン−1−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム、ナフタレン−2−スルホン酸カリウム、ナフタレン−2−スルホン酸アンモニウム、ナフタレン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ナトリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸カリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸アンモニウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、4−ブチルナフタレン−1−スルホン酸、4−ブチルナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、4−ブチルナフタレン−1−スルホン酸カリウム、4−ブチルナフタレン−1−スルホン酸アンモニウム、4−ブチルナフタレン−1−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、2,6−ジブチルナフタレン−1−スルホン酸、2,6−ジブチルナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジブチルナフタレン−1−スルホン酸カリウム、2,6−ジブチルナフタレン−1−スルホン酸アンモニウム、2,6−ジブチルナフタレン−1−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、2,6−ジノニルナフタレン−1−スルホン酸、2,6−ジノニルナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジノニルナフタレン−1−スルホン酸カリウム、2,6−ジノニルナフタレン−1−スルホン酸アンモニウム、2,6−ジノニルナフタレン−1−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0065】
これら例示した化合物の中でも、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸カリウム、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸アンモニウム、1−ヒドロキシナフタレン−4−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸カリウム、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸アンモニウム、2−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸カリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸アンモニウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸カリウム、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸アンモニウム、1,6−ジヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸カリウム、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸アンモニウム、6,7−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩など、その骨格にOH基を持つ化合物が連鎖移動能が高いという点で好ましく、特に、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸ナトリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸カリウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸アンモニウム、1,4−ジヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸のトリエチルアンモニウム塩は、連鎖移動能が特に高く、合成が容易であるという点で好ましい。
【0066】
一般式(1)におけるXとして水素原子である化合物は、強酸性を示すため、添加する重合性化合物等が、酸性で不安定である場合は、中和剤等を併用する必要がある。一方、Xがアルカリ金属やアンモニウムの場合は、当該化合物の溶媒に対する溶解度等は異なるが、一般式(1)におけるSO
3X基が、溶液中では強く解離しているため、SO
3基と塩を形成するアルカリ金属やアンモニウム等の塩基はその種類にかかわらず、当該塩基の連鎖移動の作用部位近傍での存在確率が低いため、連鎖移動剤としての効果に差はない。
【0067】
[ラジカル重合]
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤をもちいることにより、ラジカル重合性化合物の重合反応において、ラジカル重合性化合物の重合度等を調整することができる。
【0068】
重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合など種々の重合方法をとることができる。本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤は、水溶性を有することから、水溶液重合、乳化重合、懸濁重合において、ラジカル重合性化合物の重合度等を調整する場合に適する。
【0069】
水溶液重合法では、水を溶媒として、たとえばアクリル酸やそのナトリウム塩などの水溶性エチレン性不飽和単量体をラジカル重合開始剤などと混合溶解し、その水溶液を加熱することにより重合させるが、その際に、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を添加することにより、ラジカル重合性化合物の重合度等を調整することができる。
【0070】
また、乳化重合法では、通常は、水を媒体とし、酢酸ビニル、スチレン、メタクリル酸メチルなどの水に難溶な疎水性のモノマーと、ラジカル重合開始剤などを、界面活性剤存在下に混合攪拌し、乳化状態(O/W型エマルション)で重合する。その際に、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を添加することにより、ラジカル重合性化合物の重合度等を調整することができる。
【0071】
乳化重合法において、有機溶剤を媒体とし、有機溶剤に難溶な親水性のモノマーを、ラジカル重合開始剤存在下に重合する方法(W/O型エマルション)も用いられるが、その場合も、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を添加することにより、ラジカル重合性化合物の重合度等を調整することができる。
【0072】
懸濁重合法では、たとえば、酢酸ビニル、スチレン、メタクリル酸メチルなどの水に難溶な疎水性のモノマーと、ラジカル重合開始剤を水中で、分散安定剤を用いて、混合攪拌し、懸濁状態で重合する。その際に、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を添加することにより、ラジカル重合性化合物の重合度等を調整することができる。
【0073】
また、アクリル酸およびそのアルカリ金属塩、メタクリル酸およびそのアルカリ金属塩、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN,N−ジメチルアクリルアミドなどの水溶性エチレン性不飽和単量体などの水溶液を、界面活性剤、ラジカル重合開始剤、架橋剤と有機溶剤とを混合し、攪拌下で加熱し、油中水系において重合させる逆相懸濁重合法もある。その場合も、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を添加することにより、ラジカル重合性化合物の重合度等を調整することができる。
【0074】
[連鎖移動剤の添加方法]
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を重合反応器に添加する方法としては特に制限はないが、重合性化合物とはじめから混合し、ラジカル重合性組成物としておく方法、重合反応時に反応系に一括で添加する方法、各工程であるいは重合度に応じて何回かに分けて回分添加する方法、ある設定された時間に連続添加する方法、あるいはこれらの組み合わせなど公知の添加方法がその目的に応じて選択される。
【0075】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を重合反応器に添加する形状としては、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を固体又は粉体のまま直接添加する方法や、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を水や適当な有機溶剤に溶解し添加する方法、あるいは重合性化合物と本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を混合したものを調整して、添加してもよい。
【0076】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤の配合量は、十分な連鎖移動効果と経済性との観点から、通常、ラジカル重合性化合物に対して0.005〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%が更に好ましい。
【0077】
重合体の数平均分子量は、一般に主として用いるラジカル重合性化合物の濃度、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤の濃度及びラジカル重合開始剤の濃度によって調整することができる。例えば、ラジカル重合性化合物に対する本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤の配合量が多い程、数平均分子量は小さくなり、逆に該配合量が少ない程、数平均分子量は大きくなる。そのことを考慮して、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤の濃度の範囲内で適宜変更して数平均分子量の調整をすることができる。
【0078】
[ラジカル重合性化合物]
本発明におけるラジカル重合性化合物は、分子内に重合性二重結合を有する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸等のα、β−不飽和カルボン酸化合物およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のα、β−不飽和カルボン酸エステル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物等;アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデンのような置換エチレン化合物;エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、ピネン等のエチレン性不飽和化合物、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどの不飽和有機シラン化合物などが挙げられる。
【0079】
前記ラジカル重合性化合物の中でも、α、β−不飽和カルボン酸化合物、α、β−不飽和カルボン酸エステル化合物、芳香族ビニル化合物、アクリルアミド化合物、ビニルエステル化合物が好ましい。
【0080】
これらの化合物の中でも、α、β−不飽和カルボン酸化合物である(メタ)アクリル酸、α、β−不飽和カルボン酸エステルである(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物であるスチレンが好ましい。
【0081】
前記ラジカル重合性組成物に含有されるラジカル重合性化合物は、その形態や含有量は特に限定されない。例えばラジカル重合性化合物そのものやラジカル重合性化合物の溶液等が挙げられる。
【0082】
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合開始剤としては、エネルギーを与えてラジカル重合性化合物に対して活性なラジカルを発生するものであれば特に限定されない。一般には市販されているいわゆるラジカル重合開始剤を用いることができる。通常便宜的に、熱エネルギーを与えて用いるものを、熱ラジカル重合開始剤と呼び、光エネルギーを与えるものを、光ラジカル重合開始剤と呼ぶ。本発明は熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤のどちらも使用することが可能である。
【0083】
熱ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、公知の化合物を使用することができる。例えば、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、及びアゾ系化合物が挙げられる。具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、及びジ−クミルペルオキシド等のペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及び過酸化水素等のヒドロペルオキシド、(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル))、(2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル))、(2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル))、(2,2’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0084】
また、熱ラジカル重合開始剤を比較的低温で使用するためにペルオキシド、ヒドロペルオキシド、アスコルビン酸等の酸化剤系開始剤に対して遷移金属やアミン等の還元剤を組み合わせるいわゆるレドックス開始剤系を用いることもできる。
【0085】
光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知の化合物を使用することができる。例えば、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α−アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類が含まれる。具体的に、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド類等が挙げられる。有機合成化学協会誌66,458(2008)等公知文献に紹介されている光ラジカル重合開始剤も用いることができる。
【0086】
また、市場より入手可能な光ラジカル重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製イルガキュア184、イルガキュアはチバ・スペシャリティケミカルズ社の登録商標)、(2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン)(イルガキュア907)、またビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(イルガキュア819)等のアシルホスフィンオキサイド化合物;ビス(η
5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(イルガキュア784)等のチタノセン化合物;6,12−ビス(トリメチルシリルオキシ)−1,11−ナフタセンキノン等のナフタセンキノン化合物等が挙げられる。
【0087】
これらのラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合開始剤の添加量は、用いるラジカル重合性化合物及び連鎖移動剤にもよるが、ラジカル重合性化合物の合計量100質量部に対して0.0001質量部以上10質量部以下の範囲内であるのが好ましい。
【0088】
[開始エネルギー]
開始エネルギーは添加したラジカル開始剤からラジカルを発生しうるエネルギーであればよい。一般には熱エネルギー、電離波エネルギーが適宜選ばれる。具体的なエネルギー源としては熱、光、電子線(EB)、マイクロ波、放射線等の電磁線が挙げられ、用いるエネルギー源に応じて、熱重合、電磁線重合(光重合、電子線重合、マイクロ波重合、放射線重合)等と呼ばれる。
【0089】
熱重合の場合、用いる重合性化合物及びその様態にもよるが、重合に用いる温度範囲は通常−20〜200℃で、好ましくは0〜150℃、より好ましくは10〜120℃である。
【0090】
さらに熱重合の一種として酸化還元(レドックス)開始剤(後述)を用いるレドックス重合が挙げられる。この際、用いられる温度範囲は通常の熱重合より低く、−40〜100℃で、好ましくは−20〜80℃、より好ましくは0〜60℃である。
【0091】
光重合において、照射する光としては紫外線、可視光線、赤外線等を用いることができる。光ラジカル重合開始剤あるいは増感剤を用いることもできる。紫外線、可視光線の場合具体的には、たとえば300〜800nmの波長範囲の光線である。光源としては、300〜800nmの範囲の波長の光線を照射できるLED(発光ダイオード)やランプを使用する。LEDとしては、UV−LED、青色LED、白色LED等が挙げられる。ランプとしては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0092】
電子線重合は電子線照射により行われる。電子線照射には、前記の電子線重合化合物に作用し重合性物質の重合を起こすことができる方法であれば、特に制限なく使用することができる。照射する電子線量は、吸収線量として1から300kGy程度の範囲で調節するのが望ましい。1kGy未満では十分な照射効果が得られず、300kGyを超えるような照射は基材を劣化させる恐れがあるため好ましくない。電子線の照射方法としては、例えばスキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線を照射する際の加速電圧は、照射する側の基材の厚さによりコントロールする必要があるが、20から100kV程度が適当である。
【0093】
マイクロ波重合はStraussら(Aust. J. Chem.,48,1665〜1692(1995))の公知の手法を用いることが出来る。マイクロ波は、マイクロ波技術において既知の種々の方法のいずれかによって発生させることができる。一般に、これらの方法は、マイクロ波発生源として作用するクライストロンまたはマグネトロンに依存している。一般に、発生の周波数は約300MHz〜30GHzの範囲であり、対応する波長は約1m〜1mmである。理論的には、この範囲のいずれの周波数も、効果的に使用することができるが、約850〜950MHzまたは約2300〜2600MHzを包含する商業的に利用可能な範囲の周波数を使用するのが好ましい。
【0094】
放射線重合はγ線、X線、α線、β線を照射して重合を行う。通常、コバルト60のγ線照射が用いられることが多い。
【0095】
更に、重合開始のエネルギー源を併用することもできる。たとえば電子線と赤外線の併用等である。
【0096】
また、熱重合以外は通常、常温近傍で重合することが多いが、加熱しながら実施することも可能である。この場合重合の促進が期待できる。
【0097】
[ラジカル重合性組成物]
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤は、ラジカル重合性化合物に添加することにより、ラジカル重合性組成物として用いることもできる。
【0098】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を必須成分として含有する当該ラジカル重合性組成物には、ラジカル反応を開始するラジカル重合開始剤が必要により添加される。そして、重合を開始するに必要な熱や光などの開始エネルギーを与え、重合を開始することにより、分子量が調整されたポリマーを製造することができる。
【0099】
[他の成分]
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤とラジカル重合性化合物とを含有するラジカル重合性組成物をラジカル重合させるにあたり、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤のほかに必要があれば、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有していてもよく、以下に例示する成分の他に着色剤、可塑剤、粘着付与剤、酸化防止剤、各種安定剤、充填剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、消臭剤なども添加することが可能である。
【0100】
たとえば、界面活性剤としては、公知のものであればよく特に限定されるものではないが、例えば、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルアリールスルフォン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、脂肪酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤(ここで、「塩類」とは、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。)、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類などの親水性のノニオン性界面活性剤類が挙げられる。これらの中から、何れかが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
乳化重合においては、乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホサクシン酸ナトリウムのエステル、アベックス(Abex)アニオン界面活性剤(アルコラック社)、アルキルフェノキシポリエトキシエタノール(HLB=13〜19)、エトキシ脂肪酸アルコール(HLB=13〜19)、酸化エチレンおよび酸化プロピレンのブロック共重合体等があげられる。
【0102】
また、乳化重合にさいして、水溶性保護コロイドを使用してもよい。このような保護コロイドの代表例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ(酸化エチレン-酸化プロピレン)ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサゾリン、ポリビニルピロリドン(PVP)、および上記化合物の共重合体が挙げられる。保護コロイドは通常、モノマーに対して0.1〜1.5重量%の割合で使用される。
【0103】
また、懸濁重合においては、分散安定剤なども用いることができる。分散安定剤としては、例えば、水溶性あるいは油溶性の部分ケン化ポリビニルアルコール;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロース;アクリル酸重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、グリセリンモノステアレート、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤が挙げられ、これらは1種又は2種以上の組合せで使用することができる。
【0104】
その他、重合に際しては、反応系に、澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子0〜50重量%(対単量体)や、その他0〜10重量%の、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒等の各種発泡剤;キレート剤;カオリン、タルク、二酸化珪素等の無機微粒子;ポリ塩化アルミ、硫酸アルミ、硫酸マグネシウムなどの多価金属塩などを添加してもよい。
【0105】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤以外の他の連鎖移動剤等の成分を含有していてもよい。このような他の連鎖移動剤としては、特に限定されないが、連鎖移動剤として公知の化合物等が挙げられる。
【0106】
例えば、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラジウムジスルフィド、テトラエチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化合物、2−メチル−1−ブテン、α−メチルスチレンダイマー等のオレフィン類が挙げられる。
【0107】
これらの前記他の成分は、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に対して単独で、あるいは同時に二種類以上で用いることができる。これらの他の成分は、適用対象のラジカル重合性化合物の種類や用途等に応じて適宜選択することができる。
【0108】
<製造態様>
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤とラジカル重合性化合物とを含有するラジカル重合性組成物をラジカル重合することにより、生成するポリマーの末端あるいは主鎖の一部に、縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に由来する残基を有するポリマーを製造することができる。
【0109】
ポリマーの末端あるいは主鎖の一部に、縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に由来する残基を有するポリマーの製造態様として、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、またはスラリー重合などの方法を用いることができる。また、回分式に重合する場合でも、連続的に重合する場合でも用いることができる。
【0110】
本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤は、水溶性を有することから、水溶液重合、乳化重合、懸濁重合によって、生成するポリマーの末端あるいは主鎖の一部に、縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に由来する残基を有するポリマーを製造する場合に適する。
【0111】
重合時の雰囲気は分子状酸素を除去することが好ましく、一般的には減圧下あるいは不活性気体存在下用いられる。不活性気体としては、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等があげられる。
【0112】
<末端に縮合多環芳香族骨格を有するポリマー>
本発明の連鎖移動剤を用いて、上記重合方法で製造したポリマーは前述したように末端に本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に由来する残基である縮合多環芳香族骨格を付与することが可能である。すなわち、本発明の連鎖移動剤は、ポリマー成長末端に付加し、連鎖移動するため、該連鎖移動剤由来の末端構造を有することになる。よって末端に本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に由来する残基を有するポリマーを合成することができ、さらに本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤がもつ官能基をポリマーに付与することができる。縮合多環芳香族骨格および官能基に由来する、親和性、反応性、耐熱性、光学特性、化学的安定性等、縮合多環芳香族骨格および官能基の有する化学的、物理的性質を生成ポリマーに付与し、機能性ポリマーとして供することができる。
【0113】
すなわち、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤は、反応性基を有する末端官能化ポリマーを提供することができる。
【0114】
たとえば、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を用いることにより、縮合多環芳香族骨格がポリマーに導入されるが、その縮合多環芳香族骨格に由来する紫外線吸収能、蛍光特性、高屈折率等の物性をポリマーに与えることができる。また、発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤は水溶性を有することから、ポリマー末端を親水化することが可能となり、他の化合物との相溶性やなじみを改善したり、ポリマーの親水性親油性バランスを調整することが可能となる。また特に反応性を与えたものは、ブロックポリマー、グラフトポリマー、マクロモノマーの原料として供することもできる。
【0115】
また一般にポリマーに熱、光、機械等のエネルギーを与えることにより、分解反応を通してラジカルを生じることは広く知られている(大津隆行著「高分子合成の化学」(化学同人、1979)245頁、250頁、260頁)。その際、本発明の連鎖移動剤を施すことによりポリマーのゲル化を防止したり、官能基をグラフトさせることも可能である。例えば特開昭54−100449号公報、特開平6−256430号公報等に記載されている手法が援用できる。具体的には、熱可塑性ポリマーを融混練することにより、熱エネルギー、機械エネルギーを与え、ポリマー鎖を切断しつつ、添加薬剤として本発明の連鎖移動剤を施し、ポリマーのゲル化を防止したり、官能基をグラフトさせる事が出来る。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
重合禁止剤として200重量ppmのp−メトキシフェノール含有の市販のアクリル酸(和光純薬工業製、特級)を再結晶操作3回実施し、p−メトキシフェノールを除去した。このアクリル酸2g、親水性溶媒として1,4−ジオキサン4gを試験管に入れ、さらに開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業製、特級)0.02g、連鎖移動剤として30重量%1,4−ナフトヒドロキノン−2−スルホン酸アンモニウム(以下、NHQS(NH4)と略す。)水溶液を0.003g加えラジカル重合性組成物とした。このラジカル重合性組成物の入った試験管にセプタムで蓋をして、窒素を20分間、15mL/分の速度で組成物中に通気した。そして、窒素を通気したまま次いで、加熱したオイルバスに試験管を浸し、試験管内の溶液温度が60℃になるように2時間保持した。生成物をビストリメチルシリルアセトアミドで処理し、所定濃度でテトラヒドロフラン(和光純薬工業製、特級)に溶解させ、検出器として、屈折率計(RI)(日本分光製RI−2031)、多波長紫外線分光計(日本分光製MD−2010)、およびGPCカラム(昭和電工製Shodex GPC KF−806L)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(日本分光製)を用い生成ポリマーのキャラクタリゼーションを行った。このうち検出器として屈折率計を用い、生成ポリマーの平均分子量、その分布を測定した。さらに検出器として多波長紫外線分光計を用い、生成ポリマーの紫外線吸収スペクトルを測定し、縮合多環芳香族骨格に由来する波長が波長350〜500nmの吸収の有無を測定した。これらの測定結果を表1に示した。
【0117】
(実施例2)
連鎖移動剤として30重量%NHQS(NH4)水溶液の添加量を0.003gから0.03gに変えた他は実施例1と同様の操作を行い、得られたポリマーの平均分子量等の測定結果を表1に示した。
【0118】
(比較例1)
連鎖移動剤として30重量%NHQS(NH4)水溶液を加えなかった他は実施例1と同様の操作を行い、測定結果を表1に示した。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例1、2と比較例1の対比から、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤が少量の添加で分子量1万未満のオリゴマーから、分子量1万超のハイポリマーまで幅広く分子量制御可能な優れた連鎖移動能を持つことが分かる。
【0121】
また、生成したポリマーの紫外吸収スペクトルにおいて、波長350〜500nmにおける吸収が、比較例1では観察されないのに対して、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を用いた実施例1、2では観測されることから、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤を用いた場合は、生成したポリマー中に本発明の縮合多環芳香族骨格を有する連鎖移動剤に由来する縮合多環芳香族骨格が導入されていることが分かる。