(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明を電池モジュール10に適用した実施形態1を
図1ないし
図18によって説明する。以下の説明において、
図4における左側を前方とし右側を後方とし、
図4の上方を上とし下方を下とする。
本実施形態の電池モジュール10は、例えばIntegrated Starter Generator(ISG)用の電池モジュール10として用いられる。
【0019】
(電池モジュール10)
電池モジュール10は、
図1に示すように、全体として略直方体形状をなしている。電池モジュール10の前側面および後側面(
図1における左右に配される面)からはそれぞれ、各単電池32(蓄電素子の一例)のリード端子34に接続された電線65が複数本、外部に導出されている。複数本の電線65は、それぞれ、一端が板状の電圧検知端子66を介して単電池32のリード端子34に接続され、他端が電圧検知出力コネクタ64(以下「コネクタ64」という)に接続されている。
【0020】
前側面側に導出される電線65に接続された複数のコネクタ64、および後側面側に導出される電線65に接続された複数のコネクタ64は、それぞれ、積層され一体化されている。
【0021】
電池モジュール10は、
図4に示すように、複数の単電池32(本実施形態では6個の単電池32)を積層してなる積層体30と、各単電池32の両端部にそれぞれ取り付けられる保持部材40と、積層方向(上下方向)において隣り合う単電池32,32の間に配される伝熱板60(伝熱板材の一例)と、これらを収容する金属製のケース11と、を備える。
【0022】
(ケース11)
ケース11は、積層体30を収容するケース本体12と、ケース本体12の上面に被せ付けられる蓋部18と、を備える。ケース本体12は、上面および前側面が開口している。ケース本体12の後側面の上端には、複数の電線65をケース11外に導出する電線導出孔(図示せず)が形成されている。ケース本体12の前側の開口部には絶縁蓋部材26が取り付けられている。
【0023】
蓋部18は
図1に示すように、略長方形状の板状部19と、板状部19に対して略垂直下方に連なり、ケース本体12の上端部に固定される固定部23と、を備える。板状部19の中央位置には、内側方向(下側方向)に突出する突出面20が形成されている。蓋部18の突出面20は、最上段(上から1段目)の単電池32と接触可能とされる。蓋部18の突出面20と単電池32とが接触することにより蓋部18に単電池32から生じる熱が伝わって、外部に放熱されるようになっている。
【0024】
板状部19においては、突出面20よりも外側に、蓋部18と、積層体30と、ケース本体12とを固定するための第1固定部材(図示せず)が配される固定孔21が貫通して形成されている。固定孔21の孔径は、第1固定部材の外径よりも小さく形成されている。
【0025】
また、板状部19においては、前端部側に長方形状の孔22が貫通して形成されている。この孔22は、前側に取り付けられる絶縁蓋部材26を係止する蓋係止孔22とされる。
【0026】
固定部23には、略円形をなし、蓋部18をケース本体12に固定するための第2固定部材(図示せず)を挿通可能な挿通孔24が複数(3つ)形成されている。固定部23はケース本体12の一対の側面(
図1の手前側と奥側に配される面)および後側面の外側に重ねられる。
【0027】
ケース本体12の前側の開口部に取り付けられた絶縁蓋部材26には、バスバー38が導出されるバスバー導出口29B,29Bが形成されている。
【0028】
絶縁蓋部材26の下端部には、
図1に示すように、複数の電線65を導出するための略方形状の切欠部29Aが設けられている。この絶縁蓋部材26は、ケース本体12の開口部を覆うだけでなく積層体30の前方の端面側に配されるリード端子34を絶縁保護する機能を有している。
【0029】
(積層体30)
ケース11には
図2〜
図4に示すように、複数の単電池32を積層してなる積層体30が収容されている。本実施形態において、積層体30は、保持部材40が取り付けられた伝熱板60に載置した状態の単電池32(以下「電池ユニット31」という)を、複数積層してなるものである。
【0030】
(単電池32)
電池ユニット31において、上面視略長方形状の単電池32は、
図3に示すように、短辺方向の一対の縁部を保持部材40により保持されるとともに、保持部材40に取り付けられた伝熱板60の上に載置されている。
【0031】
図9は上から3段目の電池ユニット31を上から示した図、
図11は上から6段目の電池ユニット31を上から示した図であり、
図17は上から3段目の電池ユニット31の組み立て手順を示す図であり、
図18は上から6段目の電池ユニット31の組み立て手順を示す図である。
【0032】
各単電池32は、
図9および
図11に示すように、外側面のうち面積の広い面33Aを上下に配して、略平行に配置されている。これにより面積の広い面33Aが伝熱板60に接触することとなり放熱性に優れたものとなっている。積層方向において隣り合う単電池32は、相違する極性のリード端子34が対向する位置に配されるように配置されている。
【0033】
各単電池32はラミネート型の電池である。各単電池32は、図示しない発電要素と、発電要素を包むとともに端部33Bが溶着されたラミネートフィルム33と、発電要素に接続されるとともにラミネートフィルム33の溶着された対向する端部33B,33Bから外側方向に突出するリード端子34と、を有する。
【0034】
(リード端子34)
隣り合う単電池32,32の極性の相違するリード端子34,34は、上から1段目の単電池32の負極リード端子34および上から6段目の正極リード端子34を除き、互いに逆方向に屈曲されるとともに、その端部同士を接触するように重ね合わせて溶接することにより接続されている(
図7を参照)。
【0035】
詳しくは、
図10に示すように、単電池32の一方の端部33Bから外側方向に突出するリード端子34Bは、側面視弧状の突部36を経た後、略垂直上方に屈曲されており、その端部は側面視J字状をなしている。他方の端部33Bから突出するリード端子34B(図示せず)は、側面視弧状の突部36を経た後、略垂直下方に屈曲されており、その端部は側面視J字状をなしている。つまり、詳細は図示しないが、上から2〜5段目に配されている単電池32の一方の縁部33Bから外側方向に突出するリード端子34Bと、他方の縁部33Bから外側方向に突出するリード端子34Bとは、互いに逆方向に屈曲されている。
【0036】
隣接する単電池32のリード端子34Bに接続されるリード端子34B(端子接続端子34B)以外のリード端子34A(上から1段目の負極リード端子34Aおよび上から6段目の正極リード端子34A)には、側面視U字状の突部35が形成されており、これらの端子において、U字状の突部35よりも末端寄りの部分(端部)は突出方向に対して略平行(直線状)である。
【0037】
これらのリード端子34A(上から1段目の単電池32の負極リード端子34Aおよび上から6段目の単電池32の正極リード端子34A)は、電圧検知端子66およびバスバー38に直接重ねられて接続されている(バスバー接続端子34A)。
なお、各単電池32の負極のリード端子34は、詳細は図示しないが、それぞれ電圧検知端子66に直接重ねられて接続されている。
【0038】
リード端子34Bに形成された弧状の突部36は、リード端子34B,34B間を溶接する際に当該リード端子34Bが受ける応力を緩和する機能を有する。なお、リード端子34Aに形成されたU字状の突部35はリード端子34Aとバスバー38とを接続する際にリード端子34Aが受ける応力を緩和する機能を有する。
【0039】
各リード端子34においては、
図10および
図12に示すように、ラミネートフィルム33の端部33Bと、突部35,36との間に、上下方向に突出し、保持部材40に係止される係止凸部37が形成されている。
【0040】
リード端子34のラミネートフィルムの端部33B側の領域34aは、末端側の領域34bよりも幅広な幅広領域34aとされ、この幅広領域34aの角部34cが保持部材40の単電池保持部51に嵌り込んで、単電池32の移動が規制されるようになっている。
【0041】
(バスバー38)
最上段の単電池32に接続されるバスバー38(第2バスバー38B)は、電池モジュール10の負極として機能する端子38Bであり、最下段の単電池32に接続されるバスバー38は、電池モジュール10の正極として機能する端子38A(第1バスバー38A)である。各バスバー38は、純アルミ、アルミ合金、銅または銅合金などの導電性材料からなり、絶縁蓋部材26のバスバー導出口29Bから導出される部分39が外部機器と接続される端子部39である。
【0042】
(保持部材40)
各単電池32は、絶縁樹脂製の保持部材40により、伝熱板60の上に載置された状態で保持されている。保持部材40は、単電池32の両端部に、それぞれ配されている。
【0043】
本実施形態において、上下方向において重なりあう保持部材40のうち、一方の保持部材40には、他方の保持部材40側に突出するとともに、内側方向に突出する係止爪41Aが形成された係合突部41が設けられ、他方の保持部材40には、係合突部41を受け入れる凹み形状をなすとともに、係止爪41Aを係止する係止突部42Aが形成された係合受け部42が設けられている。係合突部41と係合受け部42は相互に係合する構造となっている。上下方向において隣り合う保持部材40,40は2か所で係合している。具体的には、以下のとおりである。
【0044】
上から2段目の前方に配置される保持部材40Bの2つの側面には、それぞれ係合突部41が設けられる一方、上から1段目の前方に配置される保持部材40Aの2つの側面には、上から2段目の前方の保持部材40Bに設けられた係合突部41と相互に係合する係合受け部42がそれぞれ設けられている(
図4および
図5参照)。
【0045】
上から3段目の前方に配置される保持部材40Cの前側面には、2つの係合突部41が設けられる一方、上から2段目の前方に配置される保持部材40Bの前側面には、上から3段目の前方の保持部材40Cに設けられた各係合突部41と相互に係合する係合受け部42が設けられている(
図7および
図8参照)。
【0046】
上から4段目の前方に配置される保持部材40Dの2つの側面には、それぞれ係合突部41が設けられる一方、上から3段目の前方に配置される保持部材40Cの2つの側面には、上から4段目の前方の保持部材40Dに設けられた係合突部41と相互に係合する係合受け部42がそれぞれ設けられている(
図4および
図5参照)。
【0047】
上から5段目の前方に配置される保持部材40Eの前側面には、2つの係合突部41が設けられる一方、上から4段目の前方に配置される保持部材40Dの前側面には、上から5段目の前方の保持部材40Eに設けられた各係合突部41と相互に係合する係合受け部42が設けられている(
図7および
図8参照)。
【0048】
上から6段目の前方に配置される保持部材40Fの2つの側面には、それぞれ係合突部41が設けられる一方、上から5段目の前方に配置される保持部材40Eの2つの側面には、上から6段目の前方の保持部材40Fに設けられた係合突部41と相互に係合する係合受け部42がそれぞれ設けられている(
図4および
図5参照)。
【0049】
上から2段目の後方に配置される保持部材40Hの後側面には、2つの係合突部41が設けられる一方、上から1段目の後方に配置される保持部材40Gの後側面には、上から2段目の後方の保持部材40Hに設けられた各係合突部41と相互に係合する係合受け部42が設けられている(
図8参照)。
【0050】
上から3段目の後方に配置される保持部材40Iの2つの側面には、それぞれ係合突部41が設けられる一方、上から2段目の後方に配置される保持部材40Hの2つの側面には、上から3段目の後方の保持部材40Iに設けられた係合突部41と相互に係合する係合受け部42がそれぞれ設けられている(
図4参照)。
【0051】
上から4段目の後方に配置される保持部材40Jの後側面には、2つの係合突部41が設けられる一方、上から3段目の後方に配置される保持部材40Iの後側面には、上から4段目の後方の保持部材40Jに設けられた各係合突部41と相互に係合する係合受け部42が設けられている(
図8参照)。
【0052】
上から5段目の後方に配置される保持部材40Kの2つの側面には、それぞれ係合突部41が設けられる一方、上から4段目の後方に配置される保持部材40Jの2つの側面には、上から5段目の後方の保持部材40Kに設けられた係合突部41と相互に係合する係合受け部42がそれぞれ設けられている(
図4参照)。
【0053】
上から6段目の後方に配置される保持部材40Lの後側面には、2つの係合突部41が設けられる一方、上から5段目の後方に配置される保持部材40Kの後側面には、上から6段目の後方の保持部材40Lに設けられた各係合突部41と相互に係合する係合受け部42が設けられている(
図8参照)。
【0054】
保持部材40の係合突部41は、当該保持部材40と重なり合う保持部材40の係合受け部42の内部に嵌り込むようになっていて、複数の保持部材40を重ねて係合状態とすると、係合突部41および係合受け部42はともに、保持部材40の外側に突出しないようになっていて省スペースである。
【0055】
また、本実施形態では、
図2および
図8に示すように、複数の電池ユニット31を積層したときに、上下方向において隣り合う保持部材40,40間に、
図4に示すように、空間Sが形成されるようになっている。
詳しくは、上から2段目の前方に配置される保持部材40Bの下側面と、上から3段目の前方に配置される保持部材40Cの上側面はともに凹んだ形状をなしており、これら2つの保持部材40B,40Cを重ね合わせると、保持部材40B,40C間に単電池32のラミネートフィルム33の短辺方向に対し略平行に貫通する空間Sが形成される。
【0056】
同様に、上から4段目の前方に配置される保持部材40Dと上から5段目の前方に配置される保持部材40Eとの間、上から1段目の後方に配置される保持部材40Gと上から2段目の後方に配置される保持部材40Hとの間、上から3段目の後方に配置される保持部材40Iと上から4段目の後方に配置される保持部材40Jとの間、上から5段目の後方に配置される保持部材40Kと上から6段目の後方に配置される保持部材40Lとの間にも、それぞれ、空間Sが形成される。
【0057】
上下方向において隣り合う保持部材40,40の間の空間Sには、上下方向において、隣り合う極性の相違するリード端子34B,34Bの接続部36Bが配されている。この空間Sには、隣り合う極性の相違するリード端子34B,34Bを溶接する際の治具(図示せず)が挿入可能であり、保持部材40の
図2の手前側の側面または奥側の側面が治具を空間Sに挿入する挿入口71とされる。
【0058】
各保持部材40には、第1固定部材を挿通可能な2つの貫通孔43が貫通して設けられている。
【0059】
各保持部材40の上側面には、リード端子34を配置して保持する端子配置部45が形成されており、この端子配置部45には、リード端子34の係止凸部37を受け入れて係止する係止溝46が設けられている(
図10および
図12を参照)。係止溝46はリード端子34を係止して単電池32を位置決めする機能を有する。
【0060】
各保持部材40の端子配置部45と隣接した領域に端子配置部45よりも厚み寸法を大きく設定した肉厚領域52が設けられており、この肉厚領域52に、リード端子34の幅広領域34aの角部34cが嵌り込む凹状の単電池保持部51が形成されている。この単電池保持部51により、リード端子34(単電池32)は移動を規制される。
【0061】
さて、本実施形態では、各保持部材40の下側面に、伝熱板60の係止孔63A(係合部の一例)と相互に係合する伝熱板係止部44(被係合部の一例)が、対向する位置に(合計2つ)設けられている(
図13〜
図16を参照)。
【0062】
伝熱板係止部44は、
図15及び
図16に示すように、保持部材40の下側面の一部を方形状にくりぬいた部分に設けられている。伝熱板係止部44の両側にはスリット44B,44Bがそれぞれ、形成され、上下方向に撓み変形可能な構造となっている。方形状をなす伝熱板係止部44には、端部寄りに、下側(伝熱板が配置される側)に突出する伝熱板係止突部44Aが形成されている。
【0063】
保持部材40のスリット44B,44Bを隔てた端面44Cは、段差状をなしており、段差状の端面44Cに沿って伝熱板60の突出片63を移動させることにより、伝熱板60の突出片63が保持部材40にスライド装着されるようになっている(スライド部の一例)。
【0064】
対向する段差状の端面44C,44Cの間の距離は、
図16に示すように、保持部材40の上面側(
図16では下側のP)において、伝熱板60の突出片63の幅寸法Qより、やや大きく設けられているが、下面側(
図16では上側のR)において伝熱板60の突出片63の幅寸法Qよりも小さく設けられている。つまり、伝熱板60の突出片63は保持部材40に取り付けられた状態においては、保持部材40の下側面と保持部材40の伝熱板係止部44により挟まれていることになる(
図14を参照)。
【0065】
保持部材40C,40E,40H,40Jには、リード端子34同士を接続した接続部36Aの周囲を取り囲んで他の接続部36Aや他のリード端子34との接触を防止し絶縁する絶縁壁部54が形成されている(
図2等を参照)。
【0066】
また、保持部材40A,40C,40E,40F,40H,40J,40Lには、それぞれ、電圧検知端子66が保持される端子保持部47と、電圧検知端子66に接続された電線65を収容する電線収容溝48と、が設けられている。電線収容溝48には電線65の電圧検知端子66により圧着された圧着部65Aも保持されるようになっている。
【0067】
保持部材40A,40C,40E,40F,40H,40J,40Lの端子保持部47に、それぞれ保持される電圧検知端子66は、
図10および
図12に示すように、その上面(一面)がリード端子34の下側面(表面の一例)と同一線上(X−X線上、Y−Y線上)となる位置に保持されている。
【0068】
さらに、保持部材40A,40Fには、それぞれ、バスバー38を保持するバスバー保持部49(接続部材保持部の一例)も設けられている。バスバー保持部49には、バスバー38が嵌めこまれる凹み部49Aと、凹み部49Aに嵌めこまれたバスバー38を抜け止めする複数の抜け止め突部49Bとが形成されている。
【0069】
保持部材40A,40Fのバスバー保持部49に保持されているバスバー38は、
図12に示すように、その上面(一面)がリード端子34の下側面(表面の一例)と同一線上(Y−Y線上)となる位置に保持されている。
【0070】
各保持部材40にはその保持部材40あるいは別の保持部材40に取り付けられた電線65を通す電線通し部53が形成されている。上から1段目の後方に配される保持部材40G以外の保持部材40の電線通し部53は保持部材40の一部を切り欠いた溝状の部分であり、ケース11内に収容されるが、保持部材40Gの電線通し部53は、ケース本体12の後側面の上端に形成された電線導出孔からケース11外に突出するように配置される。保持部材40Gの電線通し部53からは、複数本の電線65がケース11の外部に導出される。
【0071】
上から6段目の保持部材40F,40Lにおいて、係止溝46は上面のみに設けられているが、これら以外の保持部材40においては、係止溝46は上下面にそれぞれ設けられている。
【0072】
また、上から1段目の後方に配される保持部材40Gには、積層体保持部材(図示せず)を係止する係止孔50Aと、積層体保持部材が取付られる取付凹部50Bとが、設けられている。積層体保持部材は、積層体30の後方の端面側に配されるリード端子34の接続部36Aとケース11との間に配され、リード端子34を絶縁保護する。
【0073】
(伝熱板60)
本実施形態においては、隣り合う単電池32,32の間には、熱伝導性材料からなる伝熱板60が配置されている。本実施形態では、熱伝導性材料として、熱伝導性に優れたアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。伝熱板60の長手方向における一対の側縁には、
図2に示すように、上方に起立する起立壁61が4つずつ間隔をあけて形成されている。この起立壁61は、積層体30をケース11に収容したときにケース11の内壁面に接触するように配置されて、単電池32から発生する熱をケース11に伝導する熱伝導壁61である。単電池32から発生した熱は熱伝導壁61を介してケース11に伝わり、ケース11の外に放熱されるようになっている。
【0074】
伝熱板60の長手方向の一対の側縁よりも内側には、
図13に示すように、長手方向の側縁と概ね平行に、
図13における下方に突出する凸部62Aと、
図13における上方に突出する凹部62Bとが交互に形成されている。単電池32を被覆するラミネートフィルム33の端縁からは、ラミネートフィルム33の内側に配されている金属製の被覆材が露出することがあるが、伝熱板60に形成された凸部62Aと凹部62Bにより単電池32のラミネートフィルム33の端縁が伝熱板60に接触しないようになっている。これにより単電池32の短絡を防止している。
【0075】
伝熱板60は、
図13〜
図16に示すように、短辺方向の両側縁に略長方形状の係止孔63Aが形成された突出片63を2つずつ(合計4つ)有している。突出片63は対向する位置に設けられている。突出片63は保持部材40の端面44C(スライド部44C)に沿って移動させることによりスライド装着されるようになっている。突出片63に設けた係止孔63A内に保持部材40の伝熱板係止突部44Aが嵌り込んで相互に係合するようになっている。
【0076】
(本実施形態の電池モジュール10の組み立て方法)
次に本実施形態の電池モジュール10の組み立て方法について説明する。所定形状のリード端子34を備える単電池32を合計6個準備する。
【0077】
6枚の伝熱板60の端部に対応する保持部材40をそれぞれ取り付ける。具体的には、伝熱板60に保持部材40Aと保持部材40Gを取り付けたもの、伝熱板60に保持部材40Bと保持部材40Hを取り付けたもの、伝熱板60に保持部材40Cと保持部材40Iを取り付けたもの、伝熱板60に保持部材40Dと保持部材40Jを取り付けたもの、伝熱板60に保持部材40Eと保持部材40Kを取り付けたもの、伝熱板60に保持部材40Fと保持部材40Lを取り付けたものを作製する。
【0078】
伝熱板60に保持部材40を取り付ける作業は、以下のようにして行う。伝熱板60の突出片63を、保持部材40の対向する段差状の端面44C,44Cの間に差し込んで、伝熱板60を保持部材40に対してスライド移動させる。伝熱板60の突出片63と保持部材40の伝熱板係止突部44Aとが当接すると、伝熱板係止部44が外側方向にたわみ変形する。伝熱板60を保持部材40に対してさらにスライド移動させて、伝熱板60の係止孔63A内に保持部材40の伝熱板係止突部44Aが嵌り込むと、伝熱板係止部44が弾性復帰して、伝熱板60の突出片63が保持部材40の下側面と伝熱板係止部44とに挟持され、両部材40,60が一体となる。
【0079】
次に、2つずつ保持部材40が取り付けられた伝熱板60の所定位置に、コネクタ64が接続された電圧検知端子66と、バスバー38を取り付ける。
【0080】
詳しくは、保持部材40A,40C,40E,40H,40J,40F,40Lの電線収容溝48に、コネクタ64に接続された電線65を収容するとともに、保持部材40A,40Fのバスバー保持部49に、それぞれバスバー38を取り付ける(
図17及び
図18を参照)。
【0081】
コネクタ64に接続された電線65の取り付け作業は、保持部材40の端子保持部47に電圧検知端子66を嵌めこんで取り付け、電線収容溝48に電線65を収容することにより実行することができる。
【0082】
バスバー38の取り付け作業は、以下のように行う。バスバー保持部49の凹み部49Aに、バスバー38を差し込むと、バスバー38と抜け止め突部49Bが当接して、抜け止め突部49Bが外側方向にたわみ変形する。バスバー38が凹み部49Aに嵌めこまれると、抜け止め突部49Bが弾性復帰して、バスバー38の上方への移動を規制し抜け止め状態となる。
【0083】
次に、伝熱板60の上に、単電池32を載置する。
保持部材40Aと保持部材40Gを取り付けた伝熱板60に、単電池32を載置すると上から1段目の電池ユニット31Aが得られる。保持部材40Bと保持部材40Hを取り付けた伝熱板60に、単電池32を載置すると上から2段目の電池ユニット31Bが得られる。保持部材40Cと保持部材40Iを取り付けた伝熱板60に、単電池32を載置すると上から3段目の電池ユニット31Cが得られる。保持部材40Dと保持部材40Jを取り付けた伝熱板60に、単電池32を載置すると上から4段目の電池ユニット31Dが得られる。保持部材40Eと保持部材40Kを取り付けた伝熱板60に、単電池32を載置すると上から5段目の電池ユニット31Eが得られる。保持部材40Fと保持部材40Lを取り付けた伝熱板60に、単電池32を載置すると上から6段目の電池ユニット31Fが得られる。
【0084】
伝熱板60に単電池32を載置するときには、各リード端子34の係止凸部37が、端子配置部45の係止溝46に嵌るようにするとともに、各リード端子34の角部33cが、各保持部材40の単電池保持部51に嵌るように単電池32を伝熱板60に載置する。すると、単電池32のリード端子34が係止溝46により係止されることで単電池32の位置ずれが防止されるとともに、単電池32が単電池保持部51により移動を規制される。
【0085】
隣り合うリード端子34,34同士の接続部36Aの周縁には保持部材40の絶縁壁部54が配置されるので、これにより、隣り合うリード端子34,34同士の接続部36Aも絶縁状態で保持される。
【0086】
そして各電池ユニット31においては、保持部材40の端子保持部47に保持されている電圧検知端子66の上面と、単電池32のリード端子34の下側面が同一線上に配されて電圧検知端子66とリード端子34とが面接触する(
図10および
図12を参照)。特に、電池ユニット31A,31Fにおいては、保持部材40の端子保持部47に保持されている電圧検知端子66の上面と、バスバー38の上面と、単電池32のリード端子34の下側面とが同一線上に配されて、電圧検知端子66およびバスバー38が、リード端子34と面接触する(
図12を参照)。
【0087】
電圧検知端子66およびバスバー38を、リード端子34とレーザー溶接により接合すると電池ユニット31が得られる。
【0088】
6つの電池ユニット31を最下段から順に積層する。下から2段目(上から5段目)に配される保持部材40の係合受け部42を、最下段(上から6段目)に配される保持部材40に形成された係合突部41に対応するように配して、電池ユニット31を積層する。
【0089】
上側に配される保持部材40を下方に移動させると、係合突部41が係合受け部42の内部に嵌り込み、係合突部41の係止爪41Aが係合受け部42内の係止突部42Aに当接すると、係合突部41の移動が規制され係合突部41と係合受け部42とが相互に係合する。
【0090】
同様の作業を繰り返して6つの電池ユニット31を積層すると、上下方向において重なりあう保持部材40の一方の係合突部41と他方の係合受け部42とが相互に係合して一体化され、
図2に示すような積層体30が得られる。このとき6段に積層された保持部材40の貫通孔43が重なって、1つの貫通した孔となるとともに隣り合う保持部材40,40間に空間Sが形成される。電池ユニット31を積層する際にコネクタ64も積層し一体化しておく。
【0091】
次に、上下に隣り合う保持部材40,40の間の挿入口71から空間S内に溶接用の治具を挿入して、上下方向において、隣り合う2つのリード端子34B,34Bの端部(直線状の部分)同士を接合する。2つのリード端子34B,34Bの端部を重ねた部分をリード端子34の突出する方向に対し交差する方向に挿入した一対の治具で挟んで、レーザー光を照射することにより溶接することで、隣り合う極性の相違するリード端子34B,34B同士を接続する。
このようにして得られた積層体30の後方の端面側に積層体保持部材を取り付けて積層体30を保持状態とする。
【0092】
次に、積層体30の後側から導出されるコネクタ付き電線65を、ケース本体12の後側面の上端に形成した電線導出孔から導出させて、積層体30をケース本体12に収容する。積層体30をケース本体12内に収容すると熱伝導壁61がケース本体12の内壁面12Aに接触するように配される。
【0093】
次に、絶縁蓋部材26をケース本体12の前側の開口部に取り付ける。具体的には、絶縁蓋部材26の切欠部29Aから積層体30の前側から導出されるコネクタ付き電線65を導出させるとともに、絶縁蓋部材26のバスバー導出口29Bからバスバー38を導出させるようにして、絶縁蓋部材26をケース本体12に取り付ける。次に、蓋部18をケース本体12の上面を覆うように被せ付けると、
図1に示すような、電池モジュール10が得られる。
【0094】
次に、蓋部18とケース本体12の底壁部との間において、積層体30の端部に配されている保持部材40の貫通孔43に第1固定部材を貫通させた状態で、図示しない治具に蓋部18の固定孔21、中空の第1固定部材およびケース本体12の底壁部の固定孔を挿入して位置合わせを行った後に、ビスまたはピンを用いて蓋部18とケース本体12を固定する。このようにして電池モジュール10が完成する。
【0095】
(本実施形態の作用および効果)
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態において、伝熱板60と保持部材40とは、保持部材40に設けた伝熱板係止突部44Aと伝熱板60に設けた係止孔63Aとを相互に係合させることにより一体となっているので、保持部材40に設けた伝熱板係止突部44Aを伝熱板60に設けた係止孔63Aに係合させれば、伝熱板60と保持部材40とを一体にすることができる。その結果、本実施形態によれば、リード端子34等との接触に起因する短絡を防止しつつ、放熱性を向上した電池モジュール10を提供することができる。
【0096】
また、本実施形態によれば、保持部材40には、伝熱板60をスライド装着するスライド部44Cが形成されているから、伝熱板60と保持部材40とを一体とする作業の効率がさらに向上する。
【0097】
また、本実施形態によれば、伝熱板係止突部44Aおよび係止孔63Aは、複数設けられるとともに、対向する位置に設けられているから、伝熱板60が保持部材40に対して、対向する位置において複数箇所で取り付けられるので、部材のずれが確実に防止される。
【0098】
また、本実施形態によれば、積層体30と、保持部材40と、伝熱板60と、を収容するケース11とを備え、伝熱板60には、ケース11の内壁面12Aと接触して単電池32で発生する熱をケース11に伝導する熱伝導壁61が設けられているから、単電池32で発生する熱が熱伝導壁61を介してケース11に伝わり、ケース11の外に放熱されるので放熱性に優れる。
【0099】
さらに、本実施形態によれば、複数の単電池32のうち、積層方向における端部(上端部)に配置される単電池32が、ケース11の内壁面12Aと接触可能に配置されているから、積層方向における端部に配置される単電池32において発生した熱が、ケース11の内壁面12Aに伝わってケース11外に放熱されるので、放熱性がさらに向上する。
【0100】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、両端部にリード端子34が設けられている単電池32の両端部にそれぞれ保持部材40が取り付けられた構成を示したが、これに限定されない。一端部にリード端子が設けられている単電池の、リード端子が設けられている端部のみに保持部材を取り付けたものや、一端部にリード端子が設けられている単電池の両端部に保持部材を取り付けたものであってもよい。
(2)上記実施形態では、係合部44Aおよび被係合部63Aが、複数設けられるとともに、対向する位置に設けられている例を示したが、
参考例として、係合部および被係合部は1つずつでもよい。
(3)上記実施形態では、伝熱板60をスライド装着するスライド部44Cが形成された保持部材40を示したが、スライド部が設けられていない保持部材であってもよい。
(4)上記実施形態では、ケース11の内壁面12Aと接触する熱伝導壁61が設けられている伝導板60を示したが、熱伝導壁の設けられていない伝熱板であってもよい。
(5)上記実施形態では、積層体30を構成する単電池32のうち、積層方向における上端部に配置される単電池32が、ケース11の内壁面12Aと接触可能に配置されている構成を示したが、積層方向における下端部に配置される単電池がケースの内壁面と接触していてもよい。
(6)上記実施形態では、伝熱板60がアルミニウムまたはアルミニウム合金製である例を示したが、熱伝導性の材料からなる伝熱板であれば、構成材料は限定されない。
(7)上記実施形態では、蓄電素子が電池である例を示したが、蓄電素子は、コンデンサなどであってもよい。
(8)上記実施形態では、ISG用の電池モジュール10に用いる例を示したが、他の用途の電池モジュールに用いてもよい。