特許第6020917号(P6020917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020917
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/20 20060101AFI20161020BHJP
   F02M 37/22 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F02M37/20 G
   F02M37/22 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-71665(P2013-71665)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196669(P2014-196669A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕
(72)【発明者】
【氏名】星 昌宏
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−229996(JP,A)
【文献】 実開平04−129870(JP,U)
【文献】 実開平02−001210(JP,U)
【文献】 特開2002−066216(JP,A)
【文献】 特開平07−148405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/20
F02M 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(8)と、該電動モータ(8)で回転駆動される回転部材(11)が収容されるポンプ室(12)を有する燃料ポンプ(9)とが、前記ポンプ室(12)に燃料を吸入するための吸入口(13)、前記ポンプ室(12)からの燃料を吐出する吐出口(14)、ならびに前記ポンプ室(12)で発生したベーパーを排出するための脱気孔(15)を有するポンプハウジング(10)に収容、保持され、燃料タンク(5)内の燃料を濾過して前記燃料ポンプ(9)に供給するための吸入フィルタ(41)が前記吸入口(13)に接続され、前記燃料タンク(5)内で気相となる部分および前記脱気孔(15)間がベーパー排出通路(39)で連通される燃料供給装置において、
前記吸入フィルタ(41)が、袋状の濾材(42)と、前記吸入口(13)に一端を連通させるとともに前記濾材(42)内に開口する導出口(43)を他端部に有する接続管部(44)と、該接続管部(44)の他端部に前記導出口(43)の半径方向外方に張り出すようにして設けられるとともに少なくとも一部が前記濾材(42)内に配置されるようにして前記濾材(42)に連設されるフランジ部(45)と、前記濾材(42)のうち前記導出口(43)に対向する部分の前記導出口(43)側への所定量以上の変位を規制するとともに前記濾材(42)内から前記接続管部(44)への燃料の流通を許容して前記フランジ部(45)から前記濾材(42)内に向けて突出する保護部(46)とを備え
前記保護部(46)が、前記フランジ部(45)に立設される支柱部分(49)と、その支柱部分(49)に連設されて前記フランジ部(45)と平行な平面に配置される平板部分(50)とから成り、前記支柱部分(49)が前記フランジ部(45)の周方向に間隔をあけた複数箇所に立設され、それらの支柱部分(49)に前記平板部分(50)が連設され、
前記濾材(42)に目詰まりが生じてその濾材(42)の内部容積が縮小すると、前記濾材(42)のうち導出口(43)に対向する部分がその導出口(43)側へ変位するもののその変位を前記保護部(46,55)で規制されることで、前記濾材(42)のうち前記導出口(43)に対向する部分と前記導出口(43)との間隔が保持されることにより、その後、前記濾材(42)の内部容積が復帰することになり、その濾材(42)の内部容積の減少および復帰が繰り返されることにより、脱気孔(15)からポンプ室(12)内への空気の吸入が断続的に行われることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記平板部分(50)自体が燃料の流通を許容するように形成されることを特徴とする請求項記載の燃料供給装置。
【請求項3】
電動モータ(8)と、該電動モータ(8)で回転駆動される回転部材(11)が収容されるポンプ室(12)を有する燃料ポンプ(9)とが、前記ポンプ室(12)に燃料を吸入するための吸入口(13)、前記ポンプ室(12)からの燃料を吐出する吐出口(14)、ならびに前記ポンプ室(12)で発生したベーパーを排出するための脱気孔(15)を有するポンプハウジング(10)に収容、保持され、燃料タンク(5)内の燃料を濾過して前記燃料ポンプ(9)に供給するための吸入フィルタ(41)が前記吸入口(13)に接続され、前記燃料タンク(5)内で気相となる部分および前記脱気孔(15)間がベーパー排出通路(39)で連通される燃料供給装置において、
前記吸入フィルタ(41)が、袋状の濾材(42)と、前記吸入口(13)に一端を連通させるとともに前記濾材(42)内に開口する導出口(43)を他端部に有する接続管部(44)と、該接続管部(44)の他端部に前記導出口(43)の半径方向外方に張り出すようにして設けられるとともに少なくとも一部が前記濾材(42)内に配置されるようにして前記濾材(42)に連設されるフランジ部(45)と、前記濾材(42)のうち前記導出口(43)に対向する部分の前記導出口(43)側への所定量以上の変位を規制するとともに前記濾材(42)内から前記接続管部(44)への燃料の流通を許容して前記フランジ部(45)から前記濾材(42)内に向けて突出する保護部(55)とを備え、
前記保護部(55)が、前記導出口(43)を前記濾材(42)内で跨ぐ枠状に形成され
前記濾材(42)に目詰まりが生じてその濾材(42)の内部容積が縮小すると、前記濾材(42)のうち導出口(43)に対向する部分がその導出口(43)側へ変位するもののその変位を前記保護部(46,55)で規制されることで、前記濾材(42)のうち前記導出口(43)に対向する部分と前記導出口(43)との間隔が保持されることにより、その後、前記濾材(42)の内部容積が復帰することになり、その濾材(42)の内部容積の減少および復帰が繰り返されることにより、脱気孔(15)からポンプ室(12)内への空気の吸入が断続的に行われることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項4】
前記濾材(42)の形状を形作るとともに前記濾材(42)の相互に対向する部分の張りつきを抑制する骨格部(52)が、前記フランジ部(45)または前記保護部(46,55)から延設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと、該電動モータで回転駆動される回転部材が収容されるポンプ室を有する燃料ポンプとが、前記ポンプ室に燃料を吸入するための吸入口、前記ポンプ室からの燃料を吐出する吐出口、ならびに前記ポンプ室で発生したベーパーを排出するための脱気孔を有するポンプハウジングに収容、保持され、燃料タンク内の燃料を濾過して前記燃料ポンプに供給するための吸入フィルタが前記吸入口に接続され、前記燃料タンク内で気相となる部分および前記脱気孔間がベーパー排出通路で連通される燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内の燃料を燃料ポンプによって昇圧して燃料噴射弁に供給するようにした燃料供給装置では、ポンプ室内に異物が侵入することを抑制するための吸入フィルタと、ポンプ室内に生じるベーパーを外部に排出するための脱気孔を備えるのが一般的である。このような燃料供給装置において、吸入フィルタで目詰まりが生じると、異物を含んだ燃料を脱気孔からポンプ室内に吸い込むという問題があるが、そのような問題を解決するようにした燃料供給装置が、特許文献1で知られている。このものでは、燃料ポンプから吐出される燃料のうちレギュレータから戻される圧力余剰分を充満させるリターン燃料充満域を設けるとともに、そのリターン燃料充満域を脱気孔に連通させるようにしており、リターン燃料充満域に貯留されている燃料は吸入フィルタで濾過されたクリーンな燃料であるので、吸入フィルタの目詰まり発生時にはリターン燃料充満域の燃料が脱気孔からポンプ室に吸入されるようにして、脱気孔からポンプ室に異物が侵入するのを防止している。また吸入フィルタの目詰まり発生後のエンジン運転中に、リターン燃料充満域の燃料液面が所定位置以下に低下したときには、脱気孔からポンプ室に空気が吸入され、それによってエンジンが不調をきたすことで吸入フィルタの交換を運転者に促すことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−229996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加速不能、突然の失速、エンジン停止などの唐突なエンジンの挙動変化は、運転者の操作性を損なう可能性があり、唐突なエンジンの挙動変化が生じることは抑止することが望ましいが、吸入フィルタの目詰まり発生時における上述のような唐突なエンジンの挙動変化は、従来の吸入フィルタの構造に起因することを本願発明者は実験によって確認した。
【0005】
すなわち従来から用いられている吸入フィルタにおいては、図5で示すように、袋状の濾材42内に開口する導出口43を有する接続管部44に設けられて導出口43の半径方向外方に張り出すフランジ部45に、前記導出口43の周囲の複数箇所に配置される突起56,56…が突設されるだけであり、濾材42の目詰まり発生時には、目の詰まった濾材42が、図5の鎖線で示すように、内部容積を減らして前記導出口43を塞ぐように変位する。この状態は燃料ポンプの稼働中は変化することがなく、濾材42が導出口43から離れることがないので、導出口43から燃料ポンプの吸入口に吸入される燃料量が極端に低下したままとなる。これによって脱気孔からポンプ室内に継続して空気が吸入されることになり、唐突なエンジンの挙動変化を来し、エンジン停止へと至ることになる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、吸入フィルタの目詰まりが生じても唐突なエンジンの挙動変化が生じることを抑止し得るようにした燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、電動モータと、該電動モータで回転駆動される回転部材が収容されるポンプ室を有する燃料ポンプとが、前記ポンプ室に燃料を吸入するための吸入口、前記ポンプ室からの燃料を吐出する吐出口、ならびに前記ポンプ室で発生したベーパーを排出するための脱気孔を有するポンプハウジングに収容、保持され、燃料タンク内の燃料を濾過して前記燃料ポンプに供給するための吸入フィルタが前記吸入口に接続され、前記燃料タンク内で気相となる部分および前記脱気孔間がベーパー排出通路で連通される燃料供給装置において、前記吸入フィルタが、袋状の濾材と、前記吸入口に一端を連通させるとともに前記濾材内に開口する導出口を他端部に有する接続管部と、該接続管部の他端部に前記導出口の半径方向外方に張り出すようにして設けられるとともに少なくとも一部が前記濾材内に配置されるようにして前記濾材に連設されるフランジ部と、前記濾材のうち前記導出口に対向する部分の前記導出口側への所定量以上の変位を規制するとともに前記濾材内から前記接続管部への燃料の流通を許容して前記フランジ部から前記濾材内に向けて突出する保護部とを備え、前記保護部が、前記フランジ部に立設される支柱部分と、その支柱部分に連設されて前記フランジ部と平行な平面に配置される平板部分とから成り、前記支柱部分が前記フランジ部の周方向に間隔をあけた複数箇所に立設され、それらの支柱部分に前記平板部分が連設され、前記濾材に目詰まりが生じてその濾材の内部容積が縮小すると、前記濾材のうち導出口に対向する部分がその導出口側へ変位するもののその変位を前記保護部で規制されることで、前記濾材のうち前記導出口に対向する部分と前記導出口との間隔が保持されることにより、その後、前記濾材の内部容積が復帰することになり、その濾材の内部容積の減少および復帰が繰り返されることにより、脱気孔からポンプ室内への空気の吸入が断続的に行われることを第の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記平板部分自体が燃料の流通を許容するように形成されることを第の特徴とする。
【0009】
本発明は、電動モータと、該電動モータで回転駆動される回転部材が収容されるポンプ室を有する燃料ポンプとが、前記ポンプ室に燃料を吸入するための吸入口、前記ポンプ室からの燃料を吐出する吐出口、ならびに前記ポンプ室で発生したベーパーを排出するための脱気孔を有するポンプハウジングに収容、保持され、燃料タンク内の燃料を濾過して前記燃料ポンプに供給するための吸入フィルタが前記吸入口に接続され、前記燃料タンク内で気相となる部分および前記脱気孔間がベーパー排出通路で連通される燃料供給装置において、前記吸入フィルタが、袋状の濾材と、前記吸入口に一端を連通させるとともに前記濾材内に開口する導出口を他端部に有する接続管部と、該接続管部の他端部に前記導出口の半径方向外方に張り出すようにして設けられるとともに少なくとも一部が前記濾材内に配置されるようにして前記濾材に連設されるフランジ部と、前記濾材のうち前記導出口に対向する部分の前記導出口側への所定量以上の変位を規制するとともに前記濾材内から前記接続管部への燃料の流通を許容して前記フランジ部から前記濾材内に向けて突出する保護部とを備え、前記保護部が、前記導出口を前記濾材内で跨ぐ枠状に形成され、前記濾材に目詰まりが生じてその濾材の内部容積が縮小すると、前記濾材のうち導出口に対向する部分がその導出口側へ変位するもののその変位を前記保護部で規制されることで、前記濾材のうち前記導出口に対向する部分と前記導出口との間隔が保持されることにより、その後、前記濾材の内部容積が復帰することになり、その濾材の内部容積の減少および復帰が繰り返されることにより、脱気孔からポンプ室内への空気の吸入が断続的に行われることを第の特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、第1〜第の特徴の構成のいずれかに加えて、前記濾材の形状を形作るとともに前記濾材の相互に対向する部分の張りつきを抑制する骨格部が、前記フランジ部または前記保護部から延設されることを第の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、吸入口に一端が通じる接続管部が濾材内に開口する導出口を他端部に有し、その接続管部に設けられるフランジ部が濾材に連設され、濾材のうち導出口に対向する部分の導出口側への所定量以上の変位を規制する保護部が、濾材内から接続管部への燃料の流通を許容してフランジ部から突出しているので、濾材に目詰まりが生じて濾材がその内部容積を縮小するように変位しても濾材のうち導出口に対向する部分で導出口が完全に塞がれることはなく、脱気孔からポンプ室内への空気の導入が断続的となる。すなわち濾材に目詰まりが生じて濾材の内部容積が縮小すると、燃料ポンプの吸入口からの燃料吸入量が低下し、脱気孔からポンプ室内に空気が吸入されるが、目の詰まった濾材を燃料が通過することで発生するベーパーが、完全には閉じられることのない導出口から接続管部を経て吸入口に吸い込まれ、燃料ポンプの吸入力(濾材を張りつかせる力)が低下する。このため濾材の相互に対向する部分は再び離間し、離間した濾材間に燃料が確保されることによって吸入口からの燃料ポンプの燃料吸入量が復帰し、脱気孔からポンプ室内への空気の吸入が停止される。この際、導出口と、濾材のうち導出口に対向する部分との間の間隔が保護部によって保持されているので、濾材の相互に対向する部分の離間が促進されることになる。このような濾材の内部容積の減少および復帰が繰り返されることにより、脱気孔からポンプ室内への空気の吸入が断続的に行われることになり、吸入フィルタの目詰まりが生じたときのエンジンの挙動変化は緩やかなものとなり、唐突なエンジンの挙動変化を抑止することができ、保護部が、フランジ部に立設される支柱部分と、その支柱部分に連設されてフランジ部と平行な平面に配置される平板部分とから成るので、濾材のうち導出口に対向する部分が導出口側に変位することを平板部分で抑止し、導出口に通じる濾材内の燃料通路を、フランジ部および平板部分間に確保することができ、また、フランジ部の周方向に間隔をあけて立設される複数の支柱部分を平板部分で連結するように保護部を構成するので、保護部の強度を確保することができる。
【0012】
本発明の第の特徴によれば、平板部分自体が燃料の流通を許容するように形成されるので、保護部を通過して導出口から吸入口に吸入される燃料吸入量を確保できる。
【0013】
本発明の第の特徴によれば、保護部が導出口を跨ぐ枠状であるので、濾材のうち導出口に対向する部分の導出口側への変位を確実に抑止することができる。
【0014】
さらに本発明の第の特徴によれば、骨格部が、濾材の形状を形作るとともに濾材の相互に対向する部分の張りつきを抑制するようにして、フランジ部または保護部から延設されるので、濾材に目詰まりが生じても濾材の相互に対向する部分の張りつきを骨格部で抑制することができ、濾材の内部容積の減少からの復帰をより促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態の燃料タンク内での燃料供給装置の縦断面図である。
図2図1の2矢示部拡大図である。
図3】吸入フィルタから濾材を省略して示す斜視図である。
図4】第2の実施の形態の図2に対応した断面図である。
図5】従来例の吸入フィルタの一部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0017】
本発明の第1の実施の形態について図1図3を参照しながら説明すると、先ず図1において、自動二輪車等の車両に搭載される燃料タンク5の天井壁5aには、該燃料タンク5内の燃料をエンジンの燃料噴射弁6に供給するためのポンプユニット7が取付けられる。
【0018】
前記ポンプユニット7は、電動モータ8と、該電動モータ8で回転駆動される回転部材であるポンプインペラ11が収容されるポンプ室12を有する燃料ポンプ9とが、前記ポンプ室12に燃料を吸入するための吸入口13、前記ポンプ室12からの燃料を吐出する吐出口14、ならびに前記ポンプ室12で発生したベーパーを排出するための脱気孔15を有するポンプハウジング10に収容、保持されて成るものである。
【0019】
前記ポンプハウジング10は、電動モータ8のモータハウジング17と、該モータハウジング17の下部に取付けられるポンプケース18とから成る。前記モータハウジング17は、円筒状のステータ19と、上下に延びる軸線を有するモータ軸22の上端部を回転自在に支承して前記ステータ19の上端部にかしめ結合される上部軸受ブラケット20と、前記モータ軸22の下部を回転自在に支承して前記ステータ19の下端部にかしめ結合される下部軸受ブラケット21とから成り、前記ポンプケース18は、下部軸受ブラケット21との間に前記ポンプ室12を形成して前記下部軸受ブラケット21とともに前記ステータ19の下端部にかしめ結合される。
【0020】
前記モータ軸22の下端部は、前記下部軸受ブラケット21を回転自在に貫通して前記ポンプ室12内に突入され、このモータ軸22の下端部に取付けられるポンプインペラ11が前記ポンプ室12に収容されることで前記燃料ポンプ9が構成される。
【0021】
前記ポンプハウジング10の前記ポンプケース18には、前記ポンプ室12に燃料を吸入するための吸入口13を形成して下方に突出する吸入管部18aが一体に設けられるとともに、前記ポンプ室12で発生したベーパーを排出するための脱気孔15が設けられる。また前記ポンプ室12で昇圧された燃料は前記モータハウジング17内を上方に向けて流通するものであり、前記モータハウジング17の上部の上部軸受ブラケット20には、前記ポンプ室12からの燃料を吐出する吐出口14を形成する吐出管部20aが上方に突出するようにして一体に突設され、前記吐出口14には、逆止弁23が配設される。
【0022】
前記ポンプハウジング10は円筒状のケーシング24内に挿入されており、該ケーシング24の上端部には前記燃料タンク5の天井壁5aに締結される取付けベース部材25が取付けられており、この取付けベース部材25には、前記吐出管部20aを液密に嵌合せしめる嵌合凹部26が設けられるとともに、前記燃料タンク5の天井壁5aに複数ずつのボルト27,27…およびナット28,28…で取付けられるフランジ部25aと、外側方に突出する燃料吐出管29とが一体に設けられ、燃料吐出管29は燃料ホース等の管路30を介して燃料噴射弁6に接続される。
【0023】
また前記取付けベース部材25には、前記嵌合凹部26および前記燃料吐出管29を結ぶ出口側流路32が形成されるとともに、その出口側流路32から分岐した調圧通路33が形成されており、該調圧通路33は、前記出口側流路32を流通する燃料の圧力を所定圧力に調整するようにして前記取付けベース部材25に保持されるレギュレータ弁34に接続される。
【0024】
前記ケーシング24の下端部には、前記ポンプケース18を下方から覆うようにしてアダプタ37が取付けられており、このアダプタ37には、前記ケーシング24の側方で上下に延びるように配置されるパイプ38の下端部が連設される。前記アダプタ37の一部と、前記パイプ38とで、前記脱気孔15に一端が通じるベーパー排出通路39が形成されるものであり、該ベーパー排出通路39は、前記脱気孔15に通じて前記アダプタ37に設けられる通路部39aと、該通路部39aに連通して前記パイプ38内に形成される通路部39bとで構成され、前記パイプ38の上端にはストレーナ40が装着される。
【0025】
前記パイプ38は、その上端を燃料タンク5内の液面Lの最高レベルよりも上方に配置するようにして前記ケーシング24の側方で上下に延びるように配置されており、前記ベーパー排出通路39は、前記燃料タンク5内で気相となる部分および前記脱気孔15間を連通することになる。
【0026】
ポンプケース18に一体に設けられて前記吸入口13を形成する吸入管部18aは、前記アダプタ37を貫通して該アダプタ37から下方に突出するものであり、この吸入管部18aに吸入フィルタ41が接続される。すなわちポンプユニット7は、燃料タンク5内で前記吸入管部18a内の吸入口13に前記吸入フィルタ41が接続されるようにして前記燃料タンク5内に配置されることになる。
【0027】
図2および図3を併せて参照して、前記吸入フィルタ41は、袋状の濾材42と、前記吸入口13に一端を連通させるとともに前記濾材42内に開口する導出口43を他端部に有して前記吸入管部18aに接続される接続管部44と、該接続管部44の他端部に前記導出口43の半径方向外方に張り出すようにして設けられるとともに少なくとも一部が前記濾材42内に配置されるようにして前記濾材42に連設されるフランジ部45と、前記濾材42のうち前記導出口43に対向する部分の前記導出口43側への所定量以上の変位を規制するとともに前記濾材42内から前記接続管部44への燃料の流通を許容して前記フランジ部45から前記濾材42内に向けて突出する保護部46とを備える。
【0028】
前記接続管部44は、前記濾材42の外部に配置される管部材の濾材42側の端部に設けられるリング板部47と、該リング板部47との間に濾材42を挟むようにして前記濾材42内に挿入されるリング板部48とが、相互間に前記濾材42の一部を挟んだままで超音波溶着によって相互に接合されることで前記濾材42に連設されるものであり、前記フランジ部45は、その一部が濾材42内に配置されるようにして前記リング板部47,48で構成される。
【0029】
前記保護部46は、前記フランジ部45に立設される支柱部分49,49,49と、その支柱部分49…に連設されて前記フランジ部45と平行な平面に配置される平板部分50とから成る。
【0030】
しかも前記支柱部分49…は、前記フランジ部45の周方向に間隔をあけた複数箇所たとえば4箇所に立設され、それらの支柱部分49…に前記平板部分50が連設される。
【0031】
また前記平板部分50自体が燃料の流通を許容するように形成されるものであり、この実施の形態では前記平板部分50の中央に円形の流通孔51が設けられる。
【0032】
また前記濾材42の形状を形作るとともに前記濾材42の相互に対向する部分の張りつきを抑制する骨格部52が、前記フランジ部45または前記保護部46から延設されるものであり、この実施の形態で前記骨格部52は、前記フランジ部45から延設されて前記濾材42の形状を形作る枠部分53と、その枠部分53に一体に突設される複数の突起54,54…とを有する。
【0033】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、吸入フィルタ41が、袋状の濾材42と、燃料ポンプ9の吸入口13に一端を連通させるとともに前記濾材42内に開口する導出口43を他端部に有する接続管部44と、該接続管部44の他端部に前記導出口43の半径方向外方に張り出すようにして設けられるとともに少なくとも一部が前記濾材42内に配置されるようにして前記濾材42に連設されるフランジ部45と、前記濾材42のうち前記導出口43に対向する部分の前記導出口43側への所定量以上の変位を規制するとともに前記濾材42内から前記接続管部44への燃料の流通を許容して前記フランジ部45から前記濾材42内に向けて突出する保護部46とを備えている。したがって濾材42に目詰まりが生じて濾材42がその内部容積を縮小するように変位しても、図2の鎖線で示すように濾材42のうち導出口43に対向する部分で導出口43が完全に塞がれることはなく、脱気孔15からポンプ室12内への空気の導入が断続的となる。すなわち濾材42に目詰まりが生じて濾材42の内部容積が縮小すると、燃料ポンプ9の吸入口13からの燃料吸入量が低下し、脱気孔15からポンプ室12内に空気が吸入されるが、目の詰まった濾材42を燃料が通過することで発生するベーパーが、完全には閉じられることのない導出口43から接続管部44を経て吸入口13に吸い込まれ、燃料ポンプ9の吸入力(濾材を張りつかせる力)が低下する。このため濾材42の相互に対向する部分は再び離間し、離間した濾材42間に燃料が確保されることによって吸入口13からの燃料ポンプ9の燃料吸入量が復帰し、脱気孔15からポンプ室12内への空気の吸入が停止される。この際、導出口43と、濾材42のうち導出口43に対向する部分との間の間隔が保護部46によって保持されているので、濾材42の相互に対向する部分の離間が促進されることになる。このような濾材42の内部容積の減少および復帰が繰り返されることにより、脱気孔15からポンプ室12内への空気の吸入が断続的に行われることになり、吸入フィルタ41の目詰まりが生じたときのエンジンの挙動変化は緩やかなものとなり、唐突なエンジンの挙動変化を抑止することができる。
【0034】
また前記保護部46が、前記フランジ部45に立設される支柱部分49,49…と、その支柱部分49,49…に連設されて前記フランジ部45と平行な平面に配置される平板部分50とから成るので、濾材42のうち導出口43に対向する部分が導出口43側に変位することを平板部分50で抑止し、導出口43に通じる濾材42内の燃料通路を、フランジ部45および平板部分50間に確保することができる。
【0035】
また前記支柱部分49,49…が前記フランジ部45の周方向に間隔をあけた複数箇所に立設され、それらの支柱部分49,49…に前記平板部分50が連設されるので、保護部46の強度を確保することができる。
【0036】
また前記平板部分50自体が燃料の流通を許容するように形成されるので、保護部46を通過して導出口43から吸入口13に吸入される燃料吸入量を確保できる。
【0037】
さらに濾材42の形状を形作るとともに前記濾材42の相互に対向する部分の張りつきを抑制する骨格部52が、前記フランジ部45から延設されるので、濾材42に目詰まりが生じても濾材42の相互に対向する部分の張りつきを骨格部52で抑制することができ、濾材42の内部容積の減少からの復帰をより促進することができる。
【0038】
本発明の第2の実施の形態について図4を参照しながら説明すると、濾材42のうち導出口43に対向する部分の前記導出口43側への所定量以上の変位を規制するとともに前記濾材42内から接続管部44への燃料の流通を許容する保護部55が、フランジ部45に突設される。
【0039】
この保護部55は、前記導出口43の周方向に間隔をあけた複数箇所から延出されて円弧状に延びる複数の枠部55a,55a…が組合わされて成り、全体として前記導出口43を前記濾材42内で跨ぐ枠状に形成される。
【0040】
また前記濾材42の形状を形作るとともに前記濾材42の相互に対向する部分の張りつきを抑制する骨格部52が、第1の実施の形態と同様に、前記フランジ部45から延設される。
【0041】
この第2の実施の形態によれば、濾材42に目詰まりが生じて濾材42がその内部容積を縮小するように変位しても、保護部55が導出口43を跨ぐ枠状のものであるので、濾材42の変位は鎖線で示すように保護部55で規制されることになり、濾材42のうち導出口43に対向する部分の導出口43側への変位を確実に抑止することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
5・・・燃料タンク
8・・・電動モータ
9・・・燃料ポンプ
10・・・ポンプハウジング
11・・・回転部材であるポンプインペラ
12・・・ポンプ室
13・・・吸入口
14・・・吐出口
15・・・脱気孔
39・・・ベーパー排出通路
41・・・吸入フィルタ
42・・・濾材
43・・・導出口
44・・・接続管部
45・・・フランジ部
46,55・・・保護部
49・・・支柱部分
50・・・平板部分
52・・・骨格部
図1
図2
図3
図4
図5