特許第6020988号(P6020988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020988
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】水力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/10 20060101AFI20161020BHJP
   F03B 11/02 20060101ALI20161020BHJP
   F03B 3/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F03B13/10
   F03B11/02
   F03B3/04
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-96117(P2012-96117)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-224592(P2013-224592A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年4月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:徳島新聞社 刊行物名:日刊徳島新聞 号数:第24410号 発行年月日:平成24年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】西岡 守
(72)【発明者】
【氏名】鶴羽 正幸
(72)【発明者】
【氏名】宇野 浩
(72)【発明者】
【氏名】森岡 和美
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−177797(JP,A)
【文献】 特開平07−259064(JP,A)
【文献】 特開2002−242811(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0244262(US,A1)
【文献】 特開平11−037033(JP,A)
【文献】 特開平06−093953(JP,A)
【文献】 特開2005−240786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/00−13/26
F03B 17/00−17/06
F03D 1/00−80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川などの水流中に配置される水力発電装置(1)であって、
水流中に、該水流(V)と平行に配置される中空円筒状の導水管(2)と、
前記導水管(2)の内部に、軸受(3)を介して水流(V)と平行に軸支される回転軸(4)と、
前記回転軸(4)に固定され、複数の羽根(5)を備える水車(6)と、
前記回転軸(4)に固定されるスプロケット(7)と、
前記スプロケット(7)にかけられるチェーン(8)と、
前記チェーン(8)を介して前記スプロケット(7)の回転と連動される発電機(9)と、
前記導水管(2)を固定する枠体(10)と、
前記枠体(10)から突出され、前記発電機(9)を固定するためのアーム(11)と、
前記枠体(10)を、水流中に配置した状態で流されないように固定するための固定手段(12)と、
を含んで構成され、
前記枠体(10)を水流中に水没させる一方、前記アーム(11)に固定される前記発電機(9)が水面上に位置するように配置されており、
前記枠体(10)を、前記固定手段(12)を介して河川岸に固定しており、
前記スプロケット(7)は、その周囲と前記回転軸(4)との間に、複数の開口部(7c)を設けてなることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水力発電装置であって、
前記固定手段(12)が、河川岸に打ち込んだ楔(13)に係止可能なワイヤー(14)を備えてなることを特徴とする水力発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水力発電装置であって、
前記回転軸(4)に複数の前記水車(6)が固定され、
各前記水車(6)が備える複数の前記羽根(5)が、前記回転軸(4)に対して一定のピッチで固定されていると共に、
隣接する前記水車(6)間で、前記羽根(5)の取り付け位置をオフセットさせてなることを特徴とする水力発電装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の水力発電装置であって、
前記羽根(5)の枚数が2〜5枚であることを特徴とする水力発電装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の水力発電装置であって、
複数の前記導水管(2)が隣接して前記枠体(10)に固定され、
各前記導水管(2)の内部に軸支される前記回転軸(4)に固定される各前記スプロケット(7)が同一平面に配置され、
共通の前記チェーン(8)を介して前記発電機(9)を駆動するように構成されてなることを特徴とする水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電装置に関し、特に比較的小規模で設置が容易な簡易型の水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月の東日本大震災に端を発した原子力発電所の事故に起因する全国的な電力不足への対応策が、現在の日本では強く求められている。この対応策の一つとして、安全で環境に優しい再生可能エネルギーに期待するところは大きいものがある。中でも、既に確立されている水力発電が見直されている。水力発電は、24時間、365日稼働が可能で、比較的天候に左右され難い利点がある。その一方で、高低差が大きい程水の位置エネルギーを利用して発電能力が高まることから、ある程度の高低差が求められ、設置できる場所が限られる。
【0003】
そこで、河川や用水路などでも設置可能な小規模の、発電量が1kW以下程度のいわゆるマイクロ水力発電が注目されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1に開示された水力発電装置によると、水の落差を積極的に利用することなく、比較的小さな水流で水力発電を行うことができるとされている。
【0004】
また、特許文献2に開示された小型水力発電機によると、河川中に水流に沿って単に沈めて発電を行うことが可能であり、自然を害することなく配設して安定使用することができ、水位の変動にも無関係に動作することが可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4022244号公報
【特許文献2】実用新案登録第3143189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的な水力発電設備は設置工事が極めて大掛かりな土木作業となり、これは小規模の水力発電であっても事情は変わらず、コンクリートの敷設などを含めた土木作業が必須となっていた。このため、設置のためのコスト負担が大きく、普及の妨げとなっていた。
【0007】
この点、特許文献1及び特許文献2に開示された水力発電装置や小型水力発電機によれば、河川に比較的容易に設置することができ、設置コストの削減は図られるものと思われる。しかしながら、更に発電効率の高い小型の水力発電装置が求められている。
【0008】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、高低差を要さず設置が容易であって、かつ発電効率の高い水力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は河川などの水流中に配置される水力発電装置であって、水流中に、該水流Vと平行に配置される中空円筒状の導水管2と、前記導水管2の内部に、軸受3を介して水流Vと平行に軸支される回転軸4と、前記回転軸4に固定され、複数の羽根5を備える水車6と、前記回転軸4に固定されるスプロケット7と、前記スプロケット7にかけられるチェーン8と、前記チェーン8を介して前記スプロケット7の回転と連動される発電機9と、前記導水管2を固定する枠体10と、前記枠体10から突出され、前記発電機9を固定するためのアーム11と、前記枠体10を、水流中に配置した状態で流されないように固定するための固定手段12と、を含んで構成され、前記枠体10を水流中に水没させる一方、前記アーム11に固定される前記発電機9が水面上に位置するように配置されており、前記枠体10を、前記固定手段12を介して河川岸に固定しており、前記スプロケット7は、その周囲と前記回転軸4との間に、複数の開口部7cを設けてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の水力発電装置において、前記固定手段12が、河川岸に打ち込んだ楔13に係止可能なワイヤー14を備えてなることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の水力発電装置において、前記回転軸4に複数の前記水車6が固定され、各前記水車6が備える複数の前記羽根5が、前記回転軸4に対して一定のピッチで固定されていると共に、隣接する前記水車6間で、前記羽根5の取付位置をオフセットさせてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の水力発電装置において、前記羽根5の枚数が2〜5枚であることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の水力発電装置において、複数の前記導水管2が隣接して前記枠体10に固定され、各前記導水管2の内部に軸支される前記回転軸4に固定される各前記スプロケット7が同一平面に配置され、共通の前記チェーン8を介して前記発電機9を駆動するように構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水力発電装置の構成によると、水力発電装置をユニット式として、予め工場などで組み上げた上で河川などの施工現場に輸送し、水没させた後に固定手段で固定できる。即ち、極めて施工が簡単で、大規模な土木工事などが不要となるため、設置コストを大幅に削減できる。
【0015】
また、本発明の水力発電装置に係る固定手段がワイヤーを備えることによって、陸上の楔にワイヤーでもって固定できるので、枠体の固定作業が簡単に行える利点が得られる。
【0016】
また、本発明の水力発電装置に係る水車の構成によると、水流の流れ方向に隣接する水車が備える各羽根がずれた状態で並ぶこととなる。即ち、水流を受ける羽根の取付位置を隣接する水車間で異ならせることにより、水流を効率よく受けることができるため、もって回転トルクを高めることができ、発電効率の向上を図ることができる。
【0017】
さらに、本発明の水力発電装置に係る水車が備える羽根の枚数を2〜5枚とすることによって、水車の回転時におけるバランスがよく、効率よく水流を受けることができると共に、羽根の回転軸側の取付部分の強度も十分に確保することが可能となる。
【0018】
また、本発明の水力発電装置における導水管が複数隣接して枠体に固定され、各導水管の内部に軸支される回転軸に固定される各スプロケットが同一平面に配置されることによって、複数の水車でチェーンを駆動することで回転トルクを増大させ、発電量を増やすことができる。特に河川の川幅等に応じて複数列の水車を配置すれば、水流を最大限に利用した水力発電が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1に係る水力発電装置を設置した状態を示す平面図である。
図2図1の水力発電装置の水平断面図である。
図3図1の水力発電装置を正面側から見た斜視図である
図4図1の水力発電装置を背面側から見た斜視図である。
図5図1の水力発電装置の正面図である。
図6図1の水力発電装置の側面から見た垂直断面図である。
図7図1の水力発電装置の背面図である。
図8】本発明の実施例2に係る水力発電装置を示す正面図である。
図9図8の水力発電装置の側面から見た垂直断面図である。
図10】本発明の実施例3に係る水力発電装置を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための水力発電装置を例示するものであって、本発明は水力発電装置を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0021】
本発明の実施例1に係る水力発電装置1を図1図7に示す。これらの図において、図1は水力発電装置1を設置した状態を示す平面図、図2は水力発電装置1の水平断面図、図3は水力発電装置1を正面側から見た斜視図、図4は水力発電装置1を背面側から見た斜視図、図5は水力発電装置1の正面図、図6は水力発電装置1の側面から見た垂直断面図、図7は水力発電装置1の背面図である。
【0022】
これらの図に示すように、例えば河川Rなどの水流中に配置される本実施例1に係る水力発電装置1は、水流中に、水流Vと平行に配置される中空円筒状の導水管2と、導水管2の内部に、軸受3を介して水流Vと平行に軸支される回転軸4と、回転軸4に固定され、複数の羽根5を備える水車6と、回転軸4に固定されるスプロケット7と、スプロケット7にかけられるチェーン8と、チェーン8を介してスプロケット7の回転と連動される発電機9と、導水管2を固定する枠体10と、枠体10から突出され、発電機9を固定するためのアーム11と、枠体10を、水流中に配置した状態で流されないように固定するための固定手段12と、を含んで構成されている。
【0023】
本実施例1に係る水力発電装置1では、図2及び図3に示すように、2本の中空円筒状の導水管2が、その長手方向を水流Vと平行となるようにして、かつ水流Vに対して直交する方向に2本並列の状態で枠体10に固定されている。なお枠体10は、後述する固定手段12によって水流Vで流されることがないように河川岸に固定されるが、更に枠体10を含む水力発電装置1の流出防止を図るためには、枠体10自体にある程度の重量を持たせる、また必要に応じておもりや錨等を付加する、といった対策も有効である。
【0024】
回転軸4は、その前端部及び後端部に配設された軸受3を介して、導水管2の内部に回転自在に配設されている。ここで、回転軸4はその軸心を導水管2の軸心と一致するようにして導水管2の内部に配設されている。つまり、回転軸4は水流Vと平行に回転自在に軸支されることとなる。
【0025】
そして、この回転軸4には、複数の羽根5を備える水車6が複数固定されている。本実施例1に係る水力発電装置1では、図3図5及び図6などに示すように、水車6は4枚の羽根5を備えており、かつこれら4枚の羽根5が回転軸4に対して一定のピッチで均等に配設されている。さらに、図2に示すように、一の回転軸4につき、回転軸4の軸心に沿って3つの水車6が固定されている。このとき、隣接する水車6、6間で、各々の水車6が備える羽根5の取付位置をオフセットさせた状態で各水車6が回転軸4に固定されている。即ち、図2等に示すように、回転軸4に固定されている水車6が備える羽根5の取付位置を、隣接する水車6、6間でオフセットさせることによって、水流Vの流れ方向に隣接する水車6、6が備える各羽根5がずれた状態で並ぶこととなる。水流Vを受ける羽根5の取付位置を隣接する水車6、6間で異ならせることにより、水流Vを効率よく受けることができるため、もって回転トルクを高めることができ、発電効率の向上を図ることができる。
【0026】
なお、水車6に設けられる羽根5の枚数は限定されないが、特に2〜5枚の羽根5を回転軸4に対して一定のピッチで均等に配設されることが好ましい。水車6に配設される羽根5が1枚のみでは、効率よく水流Vを受けることができず、水車6の回転時のバランスも悪くなる。一方、羽根5が6枚以上配設された場合には、羽根5の1枚あたりのサイズが小さくなるため、効率よく水流Vを受けることができなくなる。さらに、羽根5の1枚あたりのサイズが小さくなることによって、羽根5の回転軸4側の取付部分の強度も十分に確保することが困難となる。そこで、好ましくは羽根5を2〜5枚設ける。
【0027】
そして、図4及び図7に示すように、2本の回転軸4の後端側には、それぞれスプロケット7が固定され、かつこれらのスプロケット7、7が同一平面に配置されている。これらのスプロケット7、7には、後述する発電機9の回転軸15に取り付けられた小スプロケット16との間でチェーン8が架け渡され、スプロケット7、7の回転がチェーン8を介して発電機9に伝達されることとなる。なお、本実施例1の水力発電装置1に係るスプロケット7には、歯部7a及びボス部7b以外の部分に開口部7cが多数設けられている。スプロケット7に開口部7cを多数設けることによって、導水管2内を流れる水流Vの妨げになりにくくなり、効率よく水流Vを導水管2外へ送出することができる。
【0028】
導水管2が固定されている枠体10には、図3図4及び図6などに示すように、その上方に突出するアーム11が設けられ、アーム11の上端部に発電機9が固定されている。発電機9は公知の回転型の発電機が種々利用でき、特に限定されるものではないが、本実施例1の水力発電装置1に係る発電機9としては防水性を備えるものが好適である。例えば風力発電用の発電機のように、風雨に晒されても動作可能な発電機が種々開発されており、これらを好適に利用できる。そして、発電機9の回転軸15に取り付けられた小スプロケットと、回転軸4、4に固定されているスプロケット7、7との間にチェーン8が架け渡され、回転軸4、4の回転力がチェーン8を介して発電機9へと伝達されることとなる。なお、スプロケット7、7と、小スプロケット16とは、発電機9の回転数を増速するように、スプロケットの回転比を上げることが、発電効率を高める点で好ましい。また、チェーン8のテンションを一定に維持するために、スプロケット7と小スプロケット16との間にテンションスプロケット17を介在させておくことがより好ましい。
【0029】
導水管2やアーム11が取り付けられる枠体10は、固定手段12を備えている。固定手段12は、枠体10が水流Vで流されることがないように、河川岸などに枠体10を固定することが可能であれば特に限定されない。例えば図1に示すように、河川Rの両岸にそれぞれ設置した楔13に係止可能なワイヤー14であってもよく、或いは鎖19のような固定手段12であってもよい。
【0030】
さらに、本実施例1の水力発電装置1に係る枠体10には、導水管2内に水流Vを効率的かつ積極的に導くためのガイド板18が設けられている。ガイド板18は、水流Vが流入してくる側に向かって末広がりとなるように先端側を広くしたハの字状に形成される。なお、河川などの水流中に水力発電装置1を設置する際、ガイド板18の下辺18aは、川底に接するか、極力近付けるように位置させることが好ましい。これによって、導水管2の下方に水流Vが逃げる事態を回避でき、導水管2内に水流Vを効率的且つ積極的に導いて発電効率の向上を図ることができる。また、導水管2の下方に水流Vが逃げると、導水管2を含む水力発電装置1が浮き上がってしまい、安定的な発電を行うことが困難となる可能性もあるため、水力発電装置1を河川などの水流中に安定的に設置するためにも、ガイド板18の下辺18aは川底に接するか、極力近付けるように位置させることが好ましい。
【0031】
以上の構成からなる本実施例1の水力発電装置1によると、以下のようにして効率的に発電を行うことができる。まず、導水管2が固定された枠体10を、河川Rの水流中に水没させ、固定手段12であるワイヤー14及び鎖19によって河川Rの両岸に設置した楔13にそれぞれ係止する。このとき、枠体10から上方に突出するアーム11に固定された発電機9は、水面上に位置するように配置されることとなる。
【0032】
水流中に水没させた水力発電装置1に係る導水管2内には、ガイド板18によって導かれる水流Vが流入する。すると、導水管2内に流入した水流Vによって水車6が回転し、水車6の回転が回転軸4を介してスプロケット7に伝達される。スプロケット7、7が回転すると、この回転がチェーン8を介して発電機9の回転軸15に取り付けられた小スプロケット16に伝達され、小スプロケット16を回転させることによって発電機9の回転軸15が回転し、発電機9で発電されることとなる。
【0033】
なお、発電機9で発電した電力は、河川岸に設けられた蓄電装置21に充電される。この電力は、例えば山間部の防犯灯や鳥獣被害対策用の電柵の電源、あるいは自家発電用や災害対策用等に利用できる。
【0034】
以上のように、本実施例1に係る水力発電装置1によると、水力発電装置1をユニット式として、予め工場などで組み上げた上で河川Rなどの施工現場に輸送し、水没させた後に固定手段12で固定できる。即ち、極めて施工が簡単で、大規模な土木工事などが不要となるため、設置コストを大幅に削減できる。
【0035】
また、本実施例1の水力発電装置1に係る固定手段12にワイヤー14や鎖19を適用することによって、河川岸の楔13にワイヤー14などで容易に固定できるので、枠体10の固定作業が非常に簡単に行える。
(実施例2)
【0036】
以上、本発明の実施例1に係る水力発電装置1について詳述したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の実施例2に係る水力発電装置1aは、図8及び図9に示すように、水力発電装置1aが備えるガイド板18の前方に、流木片や落ち葉といった各種ゴミを除去するための一定の大きさの目をもった網20が設置されている。この網20をガイド板18の前方に設置し、網20によって導水管2の開口を覆うことによって、導水管2内へのゴミの流入を回避でき、発電効率の低下、水車6やスプロケット7などの損傷を容易に防止することができる。なお、網20の形状は特に限定されず、平板状の網であっても水流中のゴミを除去することは可能である。しかし、図9に示すように、網20の形状を、中心部がガイド板18の前方に突出するように、ガイド板18の下辺18a及び上辺18bからそれぞれ中心部に向かって先細り形状となるように傾斜させ、縦方向断面形状をくの字状とすることによって、各種ゴミが網20に引っ掛かりにくくなり、導水管2内への水流Vの流入量の低下を防止することができる。なお、図示した網20は、上下方向から中心部に向かって先細り形状となるように形成され、縦方向断面形状がくの字状をなしているが、例えば左右方向から中心部に向かって先細り形状となるように形成することによって、横方向断面形状がくの字状をなす網のような態様であってもよい。
【0037】
なお、網20における突出した中心部の角度αは30度から150度の範囲とすることが好ましい。当該角度αが150度を超えると網20は略平板状となり、各種ゴミが網19を塞いでしまって導水管2内へ効率よく水流Vを導くことが困難となる。一方、角度αを30度未満とすると、中心部がガイド板18の前方に突出し過ぎてしまい、水力発電装置1aの設置面積が増大することとなる。
【0038】
また、実施例1の水力発電装置1では、一の回転軸4につき3つの水車6を固定していたが、回転軸4に固定される水車6の設置数は特に限定されず、水力発電装置の設置箇所に応じて適宜増減することが可能である。例えば図9に示すように、河川Rにおける水流Vの方向に十分な設置箇所を確保可能であれば、回転軸4を長めにし、この回転軸4の長さに応じて水車6を多数(図9では6つ)固定してもよい。水車6の数を増やすことによって、水流Vをより多くの羽根5で受けることができ、発電効率の更なる向上が図られる。
(実施例3)
【0039】
上記の実施例1に係る水力発電装置1及び実施例2に係る水力発電装置1aでは、いずれも導水管2が2本の態様であったが、本発明の水力発電装置に係る導水管2の本数、換言すれば水車6の列数はこれらに限定されない。例えば図10に示す水力発電装置1bのように、河川Rの川幅や流量、要求されるトルクなどに応じて3本以上の導水管2を並列に設け、その内部に各々配設した回転軸4に水車6を設ける構成とすることもできる。ここで、各導水管2内に配設される回転軸4に固定されるスプロケット7が同一平面に配置されることによって、共通のチェーン8を介して発電機9を駆動することが可能となる。つまり、複数の水車6でチェーン8を駆動することで回転トルクを増大させ、発電量を増やすことができる。特に河川Rの川幅等に応じて複数列の水車6を配置すれば、水流Vを最大限に利用した水力発電が可能となる。
【0040】
以上、本発明の水力発電装置の種々の実施例について詳述したが、本発明の水力発電装置は、更に他の実施形態でも実施可能である。例えば、本発明の水力発電装置を構成する枠体10や回転軸4、水車6などの材質は特に限定されないが、耐水性、防錆性に優れたステンレス製とすることがより好ましい。また、導水管2の材質も特に限定されないが、硬質塩化ビニール製とすることがコスト面や設置の容易性などの観点からは好ましい。
【0041】
また、何れの実施例においても、水車6には独立した複数の羽根5を配設しているが、これに代えて、連続した一定のねじれ角をもつ螺旋形状の羽根とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る水力発電装置は、マイクロ水力発電等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1、1a、1b…水力発電装置
2…導水管
3…軸受
4…回転軸
5…羽根
6…水車
7…スプロケット;7a…歯部;7b…ボス部;7c…開口部
8…チェーン
9…発電機
10…枠体
11…アーム
12…固定手段
13…楔
14…ワイヤー
15…発電機の回転軸
16…小スプロケット
17…テンションスプロケット
18…ガイド板、18a…ガイド板の下辺、18b…ガイド板の上辺
19…鎖
20…網
21…蓄電装置
R…河川;V…水流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10