(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6020992
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】自動車用の一体式全輪関連サスペンションシステム
(51)【国際特許分類】
B60G 11/08 20060101AFI20161020BHJP
B60G 11/06 20060101ALI20161020BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20161020BHJP
F16F 1/368 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
B60G11/08
B60G11/06
B62B5/00 Z
F16F1/368 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-146044(P2012-146044)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256272(P2013-256272A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301024394
【氏名又は名称】今井 修一
(72)【発明者】
【氏名】今井 修一
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−508726(JP,A)
【文献】
実開昭61−045211(JP,U)
【文献】
特開平03−125039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 11/08
B60G 11/06
B62B 5/00
F16F 1/368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の一体式全輪関連サスペンションシステムであって、車体の上下方向に並べた2枚の板状スプリングを有し、
当該2枚の板状スプリングは、それぞれ、アルファベットのAの文字の頭を時計回りに90度回転し、もうひとつのAの文字の頭を反時計回りに90度回転し、それぞれの頭同士をつけた形状であって互いにほぼ相似形であって、
前記2枚の板状スプリングは、それぞれ、振動の節にあたる5点でシャシ−に固定されるものであって、該5点は各板状スプリング形状におけるアルファベットのAの文字の頭同士がつけらた部位と対応するセンタ−支持部(C)、及び、各板状スプリング形状における各アルファベットのAの文字を構成する線同士が各アルファベットAの文字内の中央付近で交差する点に対応する部位(A,B,D,E)であり、
前記2枚の板状スプリングは、それぞれ、各板状スプリング形状における各アルファベットのAの文字の頭とは反対側の端点2点ずつ合計前後4箇所がハブキャリア−に接続されるものであり、
前記2枚の板状スプリングにおける下側の板状スプリングは、上側の板状スプリングよりも厚みがあり、
前記2枚の板状スプリングは互いに異なる固有振動数を有するものであって、前記ハブキャリア−を介して同時に関連して振動する時に、当該互いに異なる固有振動数が相手の振動を打ち消すように働き、振動が減衰するよう作用する上下2枚の板状スプリングのセットとして構成され、
前記2枚の板状スプリングの素材には、カ−ボン繊維複合材が用いられたことを特徴とする、自動車用の一体式全輪関連サスペンションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のサスペンションに、二つのAの文字の頭を反対向きにつけた形状の板状スプリングを2枚、車体の上下方向に並べて用いる。
上下の板状スプリングは、ほぼ相似形であり、それぞれの板状スプリングは、振動の節にあたる5点でシャシ−に固定される。
下側の板状スプリングは、上側の板状スプリングよりも厚みがあり、その2枚の板状スプリングが、ハブキャリア−を介して、同時に関連して振動する時に、それぞれが持つ、互いに異なる固有振動数が、相手の振動を打ち消すように働き、振動が素早く減衰するような、上下2枚の板状スプリングのセットとして構成する。
このセットが一体となり、全輪を関連させて、ピッチングを抑制し、またロ−リングを抑制しながら、車体をできるだけ水平に保とうと制御するサスペンションシステムを構築する。
サスペンションの素材に、カ−ボン繊維複合材を用い、その優れた特性を活用して、極めてシンプルな構造で、部品点数も大幅に少なく、製造コストも低く抑えられる、非常に軽量なサスペンションシステムを構成する。
以上のような、自動車用の一体式全輪関連サスペンションシステムである。
【背景技術】
【0002】
従来、フランスのシトロエン社が、1948年に発表したシトロエン2CVの金属製コイルスプリングによる「前後関連懸架装置」や、1955年に発表したシトロエンDSの複雑なハイドロニューマチック式の「前後関連懸架装置」を、現在得られる最新のカーボン繊維複合材(CFRP)を用いて、同様の機能を簡潔な機構で達成せしめようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−508726号広報
【特許文献2】実願昭59−131999号(実願昭61−045211号)
【特許文献3】特開平03−125039号広報
以上の3文献ともに、本発明の、2枚の板状スプリングが、ハブキャリア−を介して、同時に関連して振動する時に、それぞれが持つ互いに異なる固有振動数が、相手の振動を打ち消すように働き、振動が素早く減衰するような上下2枚の板状スプリングのセットとして構成する方式とは、原理の応用方法が相異なり、既存の発明や技術は存在しない、全く新しい発明である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現代の自動車用のサスペンションは、進歩し続け、洗練され完成の域に達しているが、部品点数も多く、複雑で重量も嵩んでいる。
本発明は、カーボン繊維複合材の優れた特性を活用して、極めてシンプルな構造で、部品点数も極めて少なく、極めて軽量なサスペンションシステムを構成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
普遍的な4輪自動車の場合では、2枚の板状スプリングを用いて構成するものである。
図1は、2枚の板状スプリングの形状の概念図を、3面図で示したものである。(右上は上面図、左上は正面図、下は側面図であり、以下の3面図も同様の表示である。)
上下のスプリングは、ほぼ相似形であり、A、B、C、D、Eは、球状の支持部で、それぞれラバ−ブッシュにくるまれて、シャシ−に固定されている。
板状スプリングは、Cのセンタ−支持部を中心にして、前後、左右ともほぼ相似形である。前輪は、ダブル・セミリ−ディングア−ムとして、後輪は、ダブル・セミトレ−リングア−ムとして働く。
下側のスプリングは、地面からの衝撃等に対してより強度を高めるために、上側のスプリングよりも厚みのあるものを用い、それぞれが、ハブキャリア−を介して、一緒に振動した場合、互いに相手の振動を打ち消すように働くようなセットとして構成するものである。
白ぬきの矢印は、車両の前方を示すものである。
図2は、
図1の3面図を、斜視図とした概念図である。
本発明は、以上の構成よりなるサスペンションシステムである。
【発明の効果】
【0006】
図3の上の図は、車両を側面から見て、(左または両)前輪が突起物に乗り上げた場合の、スプリングの動き方を示した概念図である。この時、(右または両)後輪は点線で示したように、下に動き、車両全体としては、ほぼ水平を保ちながら、振動は速やかに減衰する。
図3の下の図は、(左または両)前輪が凹みに落ちた場合の、スプリングの動き方を示した概念図である。この時、(右または両)後輪は点線で示したように、上に動き、車両全体としては、ほぼ水平を保ちながら、振動は速やかに減衰する。
図4の上の図は、車両を前方から見て、右前輪が突起物に乗り上げた場合の、スプリングの動き方を示した概念図である。この時、左前輪は点線で示したように、上に動き、車両全体としては、ほぼ水平を保ちながら、振動は速やかに減衰する。
また、この図は、車両が左旋回に入った場合に、遠心力により車両が右に傾いた場合の、スプリングの動き方を示した概念図としても見ることができる。この時、左前輪は点線で示したように上に動き、車両の傾きは抑制される。
図4の下の図は、車両を前方から見て、右前輪が凹みに落ちた場合の、スプリングの動き方を示した概念図である。この時、左前輪は点線で示したように、下に動き、車両全体としては、ほぼ水平を保ちながら、振動は速やかに減衰する。
このように、上下2枚の板状スプリングのセットが一体となり、全輪を関連させて、ピッチングを抑制し、ロ−リングを抑制しながら、車体をできるだけ水平に保とうと制御するサスペンションシステムを構築する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
自動車用に応用する場合の、実施の形態の、板状スプリングの支持部と端点の構造の概念図を、それぞれ3面図と2面図(この場合、上は上面図、下は側面図)で示したものが、図5から図9までである。
本発明は以上の構成よりなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の図面は、すべて概念図である。
【
図1】本発明の
自動車用に応用する場合の、標準的な場合の3面図
【
図2】本発明の
自動車用に応用する場合の、標準的な場合の斜視図
【
図3】本発明の
自動車用に応用する場合の、2枚の板状スプリングの振動の様子を示す側面図
【
図4】本発明の
自動車用に応用する場合の、2枚の板状スプリングの振動の様子を示す正面図
【
図5】本発明の
自動車用に応用する場合の3面図。A、B、C、D、Eの球状の支持部が、ラバ−ブッシュにくるまれて、平たい円筒形のケ−シングの中に収まり、そのケ−シングは、シャシ−に固定される。ここで、Cのラバ−ブッシュは硬めに設定し、各4輪の移動軌跡を小さめに規制するように働く。一方、A、B、D、Eのラバ−ブッシュはやや柔らかめに設定し、各4輪が上下に振動した場合に、スプリングがたわんで、それぞれ各4輪が車体の内側には入り込むが、車体の外側には出にくくなるように、球状の支持部を、図のように、前後左右のケ−シングの、それぞれの外側に偏心させて配置する。
【
図6】上記の、
図5の標準的な4輪車用よりも、高い負荷がかかる車両の場合には、図のように、(1)のカーボン繊維複合材製のテンションロッド(またはテンションワイヤ−)4本を付け加えて、前方4カ所をシャシ−に支持させ、強化版の4輪車用とした場合の2面図。
【
図7】マウントA部の構成法の2面図。(1)は、板状スプリング、(2)は、球状の支持部の上部部分、(3)は、(2)と一体成型されるひれ状の補強部分、(4)は、(2)と(1)の固着部を補強するカーボン繊維複合材のリボンを巻き付けた部分、(5)は、(2)と一体成型される円筒状の補強部分、(6)は、(2)および(5)と一体成型されるリブ状の補強部分、(7)は、ラバ−ブッシュ上部部分、(8)は、上下半分に分かれた平たい円筒形のケ−シング中に、全て組上げ、収めた状態のマウント部の、シャシ−に固定するためのブラケット部である。白ぬきの矢印は、車両の前方を示すものである。下の、側面図のブラケット位置は、図面的には正しくないが、ケ−シングには、ブラケット部が付いているという概念図である。また、マウントB、D、E部は、マウントA部の構成パ−ツの左右上下を反転させた相似形である。
【
図8】マウントC部の構成法の2面図。(1)は、板状スプリング、(2)は、球状の支持部で、マウントA部の球状の支持部と同様の構造である。(3)は、ひれ状の補強部分、(4)は、カーボン繊維複合材のリボンを巻き付けた補強部分、(5)は、ラバ−ブッシュ、(6)は、マウントC部のブラケットである。白ぬきの矢印は、車両の前方を示すものである。
【
図9】マウントA部の先の端点部の構成法の2面図。(5)は、板状スプリング、(2)は、ハブキャリア−の支持部、(3)は、(2)と一体成型されるひれ状の補強部分、(4)は、(5)と(2)の固着部を補強するカーボン維複合材のリボンを巻き付けた部分、(1)は、ハブキャリア−を支持するた めのボルト用の穴。上下に半分に分かれた(2)は、チタン等の電蝕が起きにくい軽量な金属を用い、必要ならば、絶縁塗装を施す。白ぬきの矢印は、車両の前方を示すものである。マウントB、D、E部の先の端点部も同様の構造である。