(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6021036
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】三次元走査装置および三次元測位装置
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20161020BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20161020BHJP
F16H 19/04 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
G01B21/00 L
F16H1/28
!F16H19/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-255459(P2015-255459)
(22)【出願日】2015年12月26日
【審査請求日】2015年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516002635
【氏名又は名称】中島 晨之介
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】中島 晨之介
(72)【発明者】
【氏名】野口 尚人
(72)【発明者】
【氏名】丁 洛榮
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−134163(JP,A)
【文献】
特許第5317253(JP,B1)
【文献】
特開2015−152478(JP,A)
【文献】
特開2015−197315(JP,A)
【文献】
特開2013−088366(JP,A)
【文献】
特許第5582432(JP,B2)
【文献】
米国特許第06556598(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00−21/32
F16H 1/28− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン方向とチルト方向の回転角度を同時に変化させることで得られる、始端と終端が異なる複数の単位走査軌道を重ねることで、三次元空間をメッシュ状に走査して三次元メッシュ状走査軌道を実現する三次元走査装置において、
装置下部のベース板と、ベース板に対して垂直に固定された軸材Aと、軸材Aを中心に自由に回転することができる回転板と、回転動力を供給する単一の動力装置と、その回転動力を回転板へ伝達する、回転軸が軸材Aの中心軸と一致する形で回転板に対して固定されたギヤPと、回転軸が軸材Aの中心軸と一致する形で軸材Aに固定され自らは回転しないギヤAと、ギヤAと噛み合い、回転板の回転に合わせてギヤAの周囲を自ら回転しながら円運動するギヤBと、中心軸がギヤBの回転軸と一致する形でギヤBに固定され、回転板上の穴に回転自由の形で挿入された軸材Bと、回転軸が軸材Bの中心軸と一致する形で軸材Bに固定され、ギヤBの回転に合わせて自ら回転する回転板上のギヤCと、ギヤCに噛み合う形で回転板上に組み付けられたギヤDと、回転板と挟み込む形でギヤCおよびギヤDを支持する支持板Aと、ギヤDの回転運動を往復直線運動に変換する、回転板上に組み付けられた変換機構と、変換された動力によって往復直線運動を行うスライド板と、スライド板の可動範囲と平行に組み付けられたラックと、ラックと噛み合うギヤEを介してスライド板と接続され、スライド板の往復直線運動に合わせてチルト方向の往復回転運動を行うアームと、アームが固定される支持板Bを有しており、動力装置の駆動により回転板、ギヤB、ギヤC、ギヤD、支持板A、変換機構、スライド板、ラック、ギヤE、アーム、支持板Bが一体的にパン方向に回転し、これに伴い発生するギヤBの回転動力がギヤC、ギヤD、変換機構、スライド板、ラック、ギヤE、アームと伝達され、アームがチルト方向の往復回転運動を行うことで、駆動装置の回転方向制御を伴わずに、前記三次元メッシュ状走査軌道による三次元空間走査を実現することを特徴とする三次元走査装置。
【請求項2】
前記回転運動を往復直線運動に変換する機構が、板に溝が掘られた正面カムと、溝に合わせて従動するカムフォロアによって実現されることを特徴とする、請求項1に記載の三次元走査装置。
【請求項3】
正面カムに掘られた溝が円形であることを特徴とする、請求項2に記載の三次元走査装置。
【請求項4】
前記アームの先端にセンサを付加することで、センサによる三次元空間の認識を実現することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の三次元走査装置を用いた三次元測位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元空間を走査するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部環境の三次元認識は、セキュリティシステムにおける侵入者の発見や自動車における歩行者の認識、ロボットにおける障害物の検知などに応用され、様々なシステムにおいて重要な技術となっている。しかし、認識に使用されるセンサには測定範囲の限界が存在するため、単一のセンサから得られる情報は限定的となってしまう。この課題を解決し、単一のセンサによって三次元空間の認識を行う手段として、動力装置によって駆動する何らかの可動機構をセンサに付加し、三次元空間を走査する方法が提案されている。
【0003】
とりわけ、センサの特性に依存せず、なおかつ単一の動力装置によって稼働する機構は、いかなるセンサにも付加することが可能であるため汎用性が高く、動力装置の削減に伴う小型化や省電力化、低コスト化などが期待できる。
【0004】
以上の特徴を有する機構例の1つとして、特許文献1で提案されている機構が挙げられる。スタッドボルトの軸周りを回転しながら移動するフランジと、それに従動するリンク機構によって、螺旋状の軌道による三次元空間の走査を実現している。
【0005】
同様の特徴を有する別の機構例として、特許文献2で提案されている機構が挙げられる。複数のウォームギヤを組み合わせることで、単一の動力装置によるパン方向とチルト方向の回転を実現し、螺旋状の軌道によって三次元空間の走査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開 2013-88366号公報
【特許文献2】特許第5582432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の機構で用いられている螺旋状の走査軌道L2を水平方向から観測した模式図を
図13に示す。螺旋状の走査軌道では、1サイクルの走査を行う間に軌道が交差しないため、軌道間に連続的な死角が発生する。そのため、従来の機構を用いてセンサによる三次元空間の認識を行う場合、認識対象のエッジなど特徴的な部分が死角に入り込むことによる誤認識の発生が予測される。死角を小さくするためには軌道間隔d2を狭める必要があるが、それに比例して走査に要する時間が増加するため、走査効率が低下してしまう点が問題となる。
【0008】
螺旋状の走査軌道では、水平に近い軌道が垂直方向に複数積み重なることで、三次元空間が走査される。そのため、センサによる三次元空間の認識を行う場合、水平方向の測定間隔は走査速度の制御によって調整することができる。一方で、軌道間隔d2は機構の構造および機構からの距離にのみ依存するため、垂直方向の測定間隔については走査速度の制御による調整を行うことができず、測定環境に応じて垂直方向の測定分解能を変化させるといった使用は不可能である。
【0009】
従来の機構では、1サイクルの三次元空間走査が完了した後、次の走査を始めるためには動力装置の回転方向を変化させる必要がある。回転方向を変化させる際に、機構を搭載したシステムが慣性の影響を受けるため、システムの挙動に悪影響を及ぼしてしまう。
【0010】
以上の問題を踏まえて、本発明は死角を断片化し、垂直方向の測定分解能を向上させることができる走査軌道の提供、およびその走査軌道による三次元空間の走査を実現する、回転方向制御を必要としない単一の動力装置によって駆動する三次元走査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の三次元走査装置は、パン方向とチルト方向の回転角度を同時に変化させることで得られる単位走査軌道(
図1)を複数組み合わせることで、三次元空間の走査を実現する。単位走査軌道は数1に示す式として定義される。rは機構中心から軌道までの距離、θは軌道の始端に対するパン方向の回転角度、θpは軌道の始端から終端に至るまでに要するパン方向の回転角度、すなわち1つの単位走査軌道が走査するパン方向の走査領域である。θtはチルト方向の最大角度と最小角度の差、すなわちチルト方向の走査領域であり、θmはチルト方向の最大角度である。数1は走査軌道がパン方向の回転角度のみに依存することを示しており、これは単位走査軌道が単一の動力装置によって実現可能であることを意味する。
【0012】
【数1】
【0013】
θを単調に増加させる場合、ある単位走査軌道の終端は、次の単位走査軌道の始端となる。よってi番目の単位走査軌道の始端をP
Si、終端をP
Eiとすると、数2の関係が成り立つ。始端と終端が一致しない、すなわち数3の条件を満たす単位走査軌道では数4の関係が成立するため、θを単調に増加させることで単位走査軌道を変位させることが可能となる。変位させた単位走査軌道を統合することで、複数の単位走査軌道が交差した三次元メッシュ状走査軌道による三次元空間走査を実現することができる。三次元メッシュ状走査軌道がθの単調増加によって実現されることは、動力装置の回転方向の制御が不要であることを示している。
【0014】
【数2】
【0015】
【数3】
【0016】
【数4】
【0017】
上記の三次元メッシュ状走査軌道を用いて三次元空間を走査する装置の外観を
図3に、内部構造を表した断面図を
図4に示す。本発明は、装置下部のベース板と、ベース板に対して垂直に固定された軸材Aと、軸材Aを中心に自由に回転することができる回転板と、回転動力を供給する単一の動力装置と、その回転動力を回転板へ伝達する、回転軸が軸材Aの中心軸と一致する形で回転板に対して固定されたギヤPと、回転軸が軸材Aの中心軸と一致する形で軸材Aに固定され自らは回転しないギヤAと、ギヤAと噛み合い、回転板の回転に合わせてギヤAの周囲を自ら回転しながら円運動するギヤBと、中心軸がギヤBの回転軸と一致する形でギヤBに固定され、回転板上の穴に回転自由の形で挿入された軸材Bと、回転軸が軸材Bの中心軸と一致する形で軸材Bに固定され、ギヤBの回転に合わせて自ら回転する回転板上のギヤCと、ギヤCに噛み合う形で回転板上に配置されたギヤDと、回転板と挟み込む形でギヤCおよびギヤDを支持する支持板Aと、ギヤDの回転運動を往復直線運動に変換する、回転板上に配置された変換機構と、変換された動力によって往復直線運動を行うスライド板と、スライド板の可動範囲と平行に配置されたラックと、ラックと噛み合うギヤEを介してスライド板と接続され、スライド板の往復直線運動に合わせてチルト方向の往復回転運動を行うアームと、アームが固定される支持板Bによって構成されている。
【0018】
動力装置の駆動により回転板、ギヤB、ギヤC、ギヤD、支持板A、変換機構、スライド板、ラック、ギヤE、アーム、支持板Bが一体的にパン方向に回転し、これに伴い発生するギヤBの回転動力がギヤC、ギヤD、変換機構、スライド板、ラック、ギヤE、アームと伝達され、アームがチルト方向の往復回転運動を行うことで、前述の三次元メッシュ状走査軌道による三次元空間走査を実現している。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、複数の単位走査軌道が交差することで構成される三次元メッシュ状走査軌道によって三次元空間の走査を行う。三次元メッシュ状走査軌道L1を水平方向から観測した模式図を
図5に示す。従来の機構で用いられている螺旋状の走査軌道を示した
図13と比較すると、水平に対して斜めの各単位走査軌道が交差することで、死角が断片化されている。これによって、認識対象が死角に入り込むことによる誤認識の発生を抑制することが可能となる。
【0020】
従来の螺旋状の走査軌道では垂直方向の測定分解能が走査速度に依存しないのと比較し、三次元メッシュ状走査軌道は水平に対して斜めの単位走査軌道によって構成されるため、垂直方向の測定分解能についても走査速度に依存する。そのため、状況に応じて走査速度を落として垂直方向の測定分解能を向上させるなど、柔軟な使用が可能となる。
【0021】
また三次元空間の走査に要する動力装置の回転方向は一定であり、慣性力の発生を伴う回転方向の変化は不要である。すなわち、本発明をシステムに搭載することによる、システムの動作に対する悪影響を軽減することができる。
【0022】
それに加えて、いかなる種類のセンサに対しても付加することが可能な高い汎用性を有する点、単一の動力装置によって駆動することができる点といった、従来の機構が有する利点を損なわない装置となっている。また、提供する三次元走査装置は、センサを付加することで三次元測位装置として使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、三次元メッシュ状走査軌道を構成する単位走査軌道の概要図である。
【
図2】
図2は、三次元メッシュ状走査軌道の概要図である。
【
図3】
図3は、本発明である三次元走査装置の外観図である。
【
図4】
図4は、本発明である三次元走査装置の内部構造を表した断面図である。
【
図5】
図5は、三次元メッシュ状走査軌道を水平方向から観測した模式図である。
【
図6】
図6は、回転板回転時のギヤAとギヤBの関係を示した模式図である。
【
図7】
図7は、ギヤCとギヤDの関係を示した模式図である。
【
図8】
図8は、正面カムを溝が掘られた面に垂直な方向から観測した模式図である。
【
図9】
図9は、正面カムの回転に伴う、Pcの移動を示した図である。
【
図10】
図10は、スライド板とギヤEの関係を示した模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の三次元空間走査の動作を示した図である。
【
図13】
図13は、螺旋状走査軌道を水平方向から観測した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、
図3および
図4に示す各部品によって構成される。装置の土台となるベース板401の中心に、軸材A501が回転不可の形で垂直に配置される。ベース板401の上には、回転軸が軸材A501の中心軸と一致し、内輪502と外輪504によって構成されるベアリングが、内輪502をベース板401に固定する形で配置される。ベース板401とベアリング外輪504の擦過を回避することを目的として、ベース板401とベアリングの内輪502はスペーサー503を挟む形で固定される。ベアリングの外輪504には、アダプタA505、スリップリング506、アダプタB507、ギヤP404、回転板405が一体となり固定される。また、動力装置402によって回転動力が与えられるギヤM403が、ギヤP404に噛み合うように配置される。回転板405の中心に開けられた穴には軸材A501が回転自由の形で挿入され、ギヤP404は回転軸が軸材A501の中心軸と一致するように配置される。そのため、動力装置402によって与えられた回転動力はギヤM403を介してギヤP404へと伝達され、ベアリング外輪504に固定された構成部品が軸材A501を中心に一体的に回転する。
【0025】
軸材B510は、回転板405および支持板A408に開けられた穴に回転自由の形で挿入され、軸材A501と平行に配置される。軸材B510には、回転板405を挟んでベース板401側にギヤB509が、支持板A408側にギヤC406が、それぞれ回転軸が軸材B510の中心軸と一致するように固定される。ギヤB509は、軸材A501の中心軸と回転軸が一致するように固定されたギヤA508と噛み合う形で配置される。ギヤA508は軸材A501に固定されており、軸材A501はベース板401に対して回転しないため、ギヤA508は自ら回転することはできない。そのため、回転板405の回転に伴って、ギヤB509は自ら回転しながらギヤA508の周囲を円運動することになる。このときのギヤA508とギヤB509の関係を示したモデルが
図6である。回転板405がθ1回転した場合のギヤB509の絶対的回転角度はθ2であるが、ギヤB509は回転板405の回転に合わせて、軸材A501を中心とした円運動を行うため、回転板405に対する相対的な回転角度はθ2−θ1となり、数5によって得られる。ここでZaはギヤA508の歯数、ZbはギヤB509の歯数である。
【0027】
ギヤB509が回転すると、軸材B510を介して接続されたギヤC406も同時に回転する。ギヤC406に噛み合うようにギヤD407が配置され、回転動力はギヤD407へと伝達される。ギヤD407は、中心軸がギヤD407の回転軸と一致するように配置された軸材C511に、回転板405と支持板A408に挟み込まれる位置で固定される。軸材C511は回転板405および支持板B412に開けられた穴に回転自由の形で挿入され、軸材A501および軸材B510と平行に配置される。ギヤC406とギヤD407の関係を示したモデルが
図7であり、ギヤB509とギヤC406の回転角度が同じであることを考慮すると、回転板405の回転に伴うギヤD407の回転角度θ4は数6によって得られる。ここでZcはギヤC406の歯数、ZdはギヤD407の歯数である。
【0029】
正面カム409は、回転軸が軸材C511の中心軸と一致するように配置され、支持板A408と支持板B412に挟み込まれる位置で固定される。正面カム409には
図8に示す溝が掘られており、溝が掘られた面に対して垂直となる形で、カムフォロア512が溝に挿入される。カムフォロア512は可動範囲が直線方向のみに制限されたスライド板410に固定される。スライド板410の可動範囲と平行な直線Lと溝の中心線の交点をPcとすると、Pcは正面カム409の回転に合わせて2点間を往復する(
図9)。Pcの動きはカムフォロア512の動きと一致するため、カムフォロア512が固定されたスライド板410は往復直線運動を行うこととなる。これによって、ギヤD407の回転運動をスライド板410の往復直線運動へ変換することが可能となる。単位走査軌道の実現を考えると、パン方向の走査領域の走査を完了、すなわち回転板405がθpだけ回転した際に、正面カム409は360度回転する必要がある。
【0030】
スライド板410はラック411およびギヤE413を介してアーム414と接続されており、スライド板410の移動に合わせてギヤE413が回転、すなわちアーム414の角度が変化することになる。ラック411とギヤE413の関係を示したモデルが
図10である。スライド板410の移動距離とギヤE413の回転距離が等しいことを考慮すると、回転板405の回転とギヤE413の回転運動の関係は数7となる。ここで、Lはスライド板410のスライド幅、θ5はギヤE413の回転角度、ZeはギヤE413の歯数、m3はギヤE413のモジュールである。
【0032】
スライド板410が可動範囲を往復直線運動するのに合わせて、ギヤE413は角度θt/2を基準として、0からθtの角度を往復回転運動する。これを考慮すると、スライド板410が可動範囲の限界まで移動した際のギヤE413の回転角度はθt/2となるため、数8の関係が成り立つ。数8は、チルト方向の走査領域はギヤE413の歯数とモジュールおよびスライド板410のスライド幅に依存することを示している。本発明では円形の溝が掘られた正面カム409によって往復直線運動を実現しており、
図8中のLがスライド幅に対応する。
【0034】
以上の原理によって、回転板405のパン方向の回転と、ギヤE413に固定されたアーム414のチルト方向の往復回転を単一の動力装置402によって実現することができる。アーム414の先端に、検出部416を装置の外側へ向ける形でセンサ415を搭載することで、三次元メッシュ状走査軌道による三次元空間の認識を行うことが可能となる。
【0035】
三次元メッシュ状走査軌道を実現するためには、数6および数8のパラメータを適切に選択する必要がある。数6におけるパラメータは、ギヤA508、ギヤB509、ギヤC406、ギヤD407の歯数である。正面カム409が360度回転することで単位走査軌道によるチルト方向の走査が完了することを考慮すると、数9を満たすようにパラメータを選択する必要がある。三次元メッシュ状走査軌道は始端と終端が一致しない単位走査軌道によって実現されるため、正面カム409を360度回転させるのに要する回転板405の回転角度は360の整数倍であってはならない。すなわち、θpは数3を満たす必要がある。例えばθp=350の単位走査軌道によって三次元メッシュ状走査軌道を実現する場合、Za=18、Zb=18、Zc=36、Zd=35とすれば、数9の条件を満たすことができる。
【0037】
数8におけるパラメータは、スライド幅、パン方向の走査領域、ギヤE413の歯数およびモジュールである。例えばθt=90の単位走査軌道を、歯数25、モジュール0.8のギヤE413を用いて実現する場合、L=5πとすれば、数8の条件を満たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、単一のセンサによる広範囲の認識を可能とするため、セキュリティシステムや移動ロボットなどのシステムにおける、物体認識などへ導入することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
r:軌道中心から走査軌道までの距離
θ:単位走査軌道の始端に対するパン方向の回転角度
PS:単位走査軌道の始端
PE:単位走査軌道の終端
401:ベース板
402:動力装置
403:ギヤM
404:ギヤP
405:回転板
406:ギヤC
407:ギヤD
408:支持板A
409:正面カム
410:スライド板
411:ラック
412:支持板B
413:ギヤE
414:アーム
415:センサ
416:センサの検出部
501:軸材A
502:ベアリング内輪
503:スペーサー
504:ベアリング外輪
505:アダプタA
506:スリップリング
507:アダプタB
508:ギヤA
509:ギヤB
510:軸材B
511:軸材C
512:カムフォロア
d1:三次元メッシュ状走査軌道の軌道間隔
L1:三次元メッシュ状走査軌道
θ1:回転板の回転角度
θ2:ギヤBの絶対的回転角度
901:正面カムに掘られた溝
Ln:スライド板の移動方向と平行な直線
Pc:Lnと溝の中心線の交点
r1:正面カムの回転軸から溝の中心までの最長距離
r2:正面カムの回転軸から溝の中心までの最短距離
L:Pcの移動幅
d2:螺旋状走査軌道の軌道間隔
L2:螺旋状走査軌道
【要約】
【課題】動力装置の回転方向の制御を必要とせずに三次元空間を走査することができる走査軌道と、回転方向が変化しない単一の動力装置によってその走査軌道を実現した、汎用性が高く、連続的な死角の発生を抑制し、搭載するシステムへの影響を軽減することができる三次元走査装置を提供する。
【解決手段】
動力装置402からの回転動力がギヤP404に伝達されることで回転板405が回転し、ギヤB509、ギヤC406、ギヤD407を介して回転動力が正面カム409へ伝達される。回転動力は正面カム409によってスライド板410の往復直線運動へ変換され、ラック411とギヤE413を介して接続されたアーム414の往復回転運動によって、三次元空間の走査を実現している。
【選択図】
図3