特許第6021044号(P6021044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021044グリット製造用破砕装置、および金属ロールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021044
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】グリット製造用破砕装置、および金属ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 4/42 20060101AFI20161020BHJP
   B02C 4/32 20060101ALI20161020BHJP
   B02C 4/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B02C4/42
   B02C4/32
   B02C4/02
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-521890(P2012-521890)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2012058081
(87)【国際公開番号】WO2013108417
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-6375(P2012-6375)
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 政行
(72)【発明者】
【氏名】中野 可也
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−180633(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1846864(CN,A)
【文献】 実公昭48−000588(JP,Y1)
【文献】 特開2001−104810(JP,A)
【文献】 特開2011−020039(JP,A)
【文献】 特開2003−038968(JP,A)
【文献】 実開昭60−067148(JP,U)
【文献】 特開平11−090251(JP,A)
【文献】 特開2007−154295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 4/42
B02C 4/02
B02C 4/32
B24C 11/00
F16C 13/00
F16C 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に並列配置された一対の金属ロールの間で金属材料を破砕してグリットを製造するグリット製造用破砕装置であって、
前記金属ロールの一方が、駆動ベルトによって連結された駆動源によって回転駆動させられる駆動ロールであり、前記金属ロールの他方が従動ロールであり、
前記従動ロールが、前記駆動ベルトの軌道平面と平行な平面において、前記駆動ロールと前記駆動源との間に配置され、
少なくとも前記駆動ロールは、その回転軸が軸受ボックスに支持され、
該軸受ボックスが、該軸受ボックスに連結された圧力調整手段によって、前記回転軸と直交する方向に摺動可能に構成されている、
ことを特徴とするグリット製造用破砕装置。
【請求項2】
前記軸受ボックスの摺動方向が水平方向である、
請求項1に記載のグリット製造用破砕装置。
【請求項3】
前記圧力調整手段が、弾性体ボックスと、弾性体固定具とを備え、
前記弾性体ボックスは変形可能な外郭容器の内部に、バネ、空気、水、油から選択されるいずれか一つの弾性体が封入され、
前記弾性体ボックスは、前記軸受ボックスとブラケットの間に設置され、ブラケットに取付けられた弾性体固定具によって支持固定されている、
請求項1に記載のグリット製造用破砕装置。
【請求項4】
少なくとも前記従動ロールは、その回転軸が軸受ボックスに支持され、
前記他方の金属ロールの軸受ボックスには、該金属ロールの回転軸と直交する水平方向の位置を調整する位置調整手段が連結されている、
請求項1に記載のグリット製造用破砕装置。
【請求項5】
前記位置調整手段は、ボルト、エアーシリンダー、油圧シリンダー、電動シリンダーのいずれか一つであり、
前記軸受ボックスとブラケットの間に設置されている、
請求項4に記載のグリット製造用破砕装置。
【請求項6】
前記一対の金属ロールは、フレームに固定されたハウジング内に設置され、
前記ハウジングの上部には、前記金属ロールにグリット製造用原料を供給する原料供給機構が設けられ、該原料供給機構が、原料を前記一対の金属ロールの間に供給する原料シュートと、外部から受け入れた原料を金属ロールの軸方向に分散させながら前記原料シュートに送る原料分散台と、原料分散台上の原料を金属ロールの軸方向に分散させる原料分散手段とを備えている、
請求項1に記載のグリット製造用破砕装置。
【請求項7】
前記原料分散手段は、電力、または圧縮空気で駆動する振動発生装置である、
請求項6に記載のグリット製造用破砕装置。
【請求項8】
前記の一対の金属ロールは、少なくとも外周面が高マンガン鋳鋼で構成され、
該高マンガン鋳鋼の化学成分が質量%で、C:0.8〜1.5、Mn:11〜33、Cr:1〜4、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリット製造用破砕装置。
【請求項9】
前記一対の金属ロールは、少なくとも外周面が高マンガン鋳鋼で構成され、
該高マンガン鋳鋼の化学成分が質量%で、C:0.9〜1.3、Mn:11〜14、Cr:1.5〜2.5、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物である、
請求項1〜7に記載のグリット製造用破砕装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリット製造用破砕装置に使用される前記一対の金属ロールの製造方法であって、
前記の一対の金属ロールは、少なくとも外周面が高マンガン鋳鋼で構成され、
該高マンガン鋳鋼の化学成分が質量%で、C:0.8〜1.5、Mn:11〜33、Cr:1〜4、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物であり、
前記方法は、
高マンガン鋳鋼の原料を配合して溶解し1660〜1720℃の溶湯を準備する工程と、
前記溶湯を鋳型に鋳造する工程と、
鋳物の冷却後に型バラシを行い、鋳物を取出す工程と、
鋳物に付着した鋳型材を研掃して除去する工程と、
鋳物製品部以外の堰や押し湯を除去する工程と、
鋳物製品部を200℃以下の熱処理炉に送入した後1040〜1060℃まで60℃/時間の昇温速度で昇温し、1040〜1060℃に2〜4時間保持する工程と、
熱処理炉から取出して水槽中に浸漬して急冷する水靭処理を実施する工程と、
熱処理によって生成する酸化皮膜を研掃して除去する工程と、
鋳物製品部を機械加工して規定の寸法とする工程と、を備えている、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリット製造用破砕装置に使用される前記一対の金属ロールの製造方法であって、
前記一対の金属ロールは、少なくとも外周面が高マンガン鋳鋼で構成され、
該高マンガン鋳鋼の化学成分が質量%で、C:0.9〜1.3、Mn:11〜14、Cr:1.5〜2.5、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物であり、
前記方法は
高マンガン鋳鋼の原料を配合して溶解し1660〜1720℃の溶湯を準備する工程と、
前記溶湯を鋳型に鋳造する工程と、
鋳物の冷却後に型バラシを行い、鋳物を取出す工程と、
鋳物に付着した鋳型材を研掃して除去する工程と、
鋳物製品部以外の堰や押し湯を除去する工程と、
鋳物製品部を200℃以下の熱処理炉に送入した後1040〜1060℃まで60℃/時間の昇温速度で昇温し、1040〜1060℃に2〜4時間保持する工程と、
熱処理炉から取出して水槽中に浸漬して急冷する水靭処理を実施する工程と、
熱処理によって生成する酸化皮膜を研掃して除去する工程と、
鋳物製品部を機械加工して規定の寸法とする工程と、を備えている
ことを特徴とする金属ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリット製造用の破砕装置、および金属ロールに関し、詳細には、ブラスト加工や石材の切断などに使用されるグリットを製造する破砕装置、およびこのような破砕装置に組み込まれる金属ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラスト加工などで使用される投射材として、グリットなどの金属粒が使用されている。このような投射材を製造する装置として、外周面が対向するように配置された一対の破砕用の金属ロールを回転駆動させながら金属ロールの対向した外周面間にグリット製造用の金属材料(金属粒)を供給し、この金属材料を破砕してグリッドとするロールクラッシャー(グリッド製造装置)が、一般的かつ広範に知られている。
【0003】
グリット製造用の金属原料としては、一般には、スチールショットが用いられるが、破砕によって製造されたグリットから篩い分けられた粗い粒度のグリットを、グリット製造用の金属原料として用いる場合もある。
【0004】
例えば、特許文献1では、ショットを破砕機12(ロールクラッシャー)で破砕してグリットを製造するグリット製造装置が開示されている。
また、特許文献2ないし4には、ロールクラッシャーを使用してグリットを製造することが記載されている。
このように、一対の破砕用の金属ロールを回転駆動して金属ショットを破砕するグリット製造装置(ロールクラッシャー)が、公知であり、このようなロールクラッシャーが、最も破砕効率が高い装置として普及していることが明らかである。
【0005】
また、特許文献5には、2本の破砕用の金属ロールが、それぞれ、固定軸受座と摺動軸受座に支持され、これら固定軸受座と摺動軸受座との間にバネが配置された対向ロール式グリット製造用破砕装置であって、2本の破砕用の金属ロールのそれぞれが伝動ベルトを介してモータに連結されたグリット製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特許 特開平10−180633
【特許文献2】中国特許 CN1846864A
【特許文献3】中国特許 CN101362933A
【特許文献4】中国特許 CN101362934A
【特許文献5】中国実用新案 CN201445970U
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献等で開示されているグリット破砕装置(ロールクラッシャー)では、何らかの理由で、一対の金属ロール間に供給される金属材料の量が一時的に増加することがある。このような供給量の増加が起こると、金属材料(原料ショット)が、塊状となり、一対の金属ロール間で破砕されず、一対の金属ロールの外表面間に押し込まれて挟まる、所謂「咬み込み」が発生することがある。
【0008】
そして、この「咬み込み」は、一対の金属ロールを引き離す衝撃的な力を発生させ、2本の金属ロールの間隔を拡げて安定した粉砕の遂行を阻害することになる。
【0009】
しかしながら、上記特許文献等で開示されているグリット破砕装置(ロールクラッシャー)は、このような「咬み込み」に起因して一対の金属ロールを引き離す衝撃的な力が生じた場合に、2本の金属ロールの間隔を維持するよう機能する機構が設けられていない。
【0010】
このため、上記特許文献等で開示されているグリット破砕装置(ロールクラッシャー)には、「咬み込み」が生じた場合に、2本の金属ロールの間隔が拡がり、安定した破砕を行うことができなくなる、という問題があった。
【0011】
また、特許文献5に記載の構造には、このような「咬み込み」が発生した場合に、固定軸受座と摺動軸受座4の双方が弾性変形して衝撃を吸収する構成であるため、「咬み込み」発生時に固定軸受座、摺動軸受座、および軸受等に大きな力が作用し、これらの部材の寿命が短くなる、という問題があった。
【0012】
また、特許文献5に記載の構造には、2つの駆動源(モータ)が必要であるため、コストが高くなるという問題もあった。
【0013】
さらに、特許文献5に記載の構造では、2本の破砕用の金属ロールが互いに激しく衝突しないように、一対の金属ロールのそれぞれを支持する固定軸受座と摺動軸受座との間にバネが配置されているので、一対の金属ロールを近づける方向への力がバネによって相殺され、破砕力が弱くなるという問題もあった。
【0014】
さらにまた、上記特許文献等で開示されているグリット破砕装置(ロールクラッシャー)は、グリット製造用原料を一対の破砕用の金属ロール間で破砕してグリットを製造するものであるため、破砕によって生成されたグリットで、金属ロールの外周面が激しく削食され、金属ロールの外周面の摩耗が進行する。
【0015】
このため、破砕用の金属ロールの耐摩耗性を向上すべく、破砕用の金属ロールの材料として、各種の機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼、あるいはこれらの鋼材と類似の化学成分を有する鋳鋼を使用し、さらに焼入れ、焼戻し等の熱処理を実施することによって硬さと靭性を調整し、耐摩耗性を向上する試みが行われてきた。
【0016】
しかしながら、破砕用の金属ロールは、数百kg程度の重量、および60mm以上の肉厚を有する大型部品であるため、焼入れによって焼割れが発生しやすく、また、均一な硬さ分布を得ることが難しいため、摩耗が不均一になるという問題があった。
【0017】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、単一の駆動源で作動でき、高い耐久性を維持しながら、金属材料の安定した破砕を行うことができるグリット製造用の破砕装置を提供することを目的とする。
【0018】
さらに、適度な硬さと靭性を備えた耐摩耗性に優れた、グリット製造用破砕装置で使用される破砕用の金属ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、
回転可能に並列配置された一対の金属ロールの間で金属材料を破砕してグリットを製造するグリット製造用破砕装置であって、
前記金属ロールの一方が、駆動ベルトによって連結された駆動源によって回転駆動させられる駆動ロールであり、前記金属ロールの他方が従動ロールであり、
前記従動ロールが、前記駆動ベルトの軌道平面と平行な平面において、前記駆動ロールと前記駆動源との間に配置されている、
ことを特徴とするグリット製造用破砕装置が提供される。
【0020】
このような構成によれば、駆動源が単一となるので、装置の小型化と製作費用の低減が可能になった。
【0021】
また、回転駆動する金属ロールを駆動ロール、他の一方を従動ロールと呼んだ場合、駆動ロールとの摩擦力により従動ロールも回転するため、二つの回転駆動手段を備える必要はなく、むしろ駆動ロールと従動ロールの回転速度の差によって、グリット製造用原料にせん断応力が働いて破砕効率が改善され良品率が向上する。
【0022】
さらに、前記従動ロールが、前記駆動ベルトの軌道平面と平行な平面において、前記駆動ロールと前記駆動源との間に配置されている構成としたので、2本の金属ロールの間にグリット製造用原料の「咬み込み」によって金属ロール相互の間隔を拡げるような衝撃的な力が発生した場合に、ベルトの張力が増加するため空転することがなく、安定した破砕を実現することができる。
【0023】
駆動ロールおよび従動ロールの双方を、外部へ突出する径方向のエッジを有しない構造とすることによって、両端に外部へ突出した径方向のエッジ部分に応力が集中して破損しやすいと同時に、破砕用の金属ロールを製作するための費用が増加するという問題を解消することができる。
【0024】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記金属ロールの少なくとも一方は、その回転軸が軸受ボックスに支持され、
該軸受ボックスが、該軸受ボックスに連結された圧力調整手段によって、前記回転軸と直交する方向に摺動可能に構成されている、が提供される。
【0025】
このような構成によれば、
金属ロール相互の押圧力を圧力調整手段によって設定できるため、グリット製造用原料の粒度に応じた調整が可能になる。
【0026】
さらに、2本の金属ロールの間に、グリット製造用原料が咬み込んで金属ロール相互の間隔を広げるように衝撃的な力が作用した場合に、金属ロールは、間隔が拡大する方向に動くことができるので、軸受や軸受ボックスにかかる負荷が軽減されて耐久性が向上する。
【0027】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記軸受ボックスの摺動方向が水平方向である。
【0028】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記圧力調整手段が、弾性体ボックスと、弾性体固定具とを備え、
前記弾性体ボックスは変形可能な外郭容器の内部に、バネ、空気、水、油から選択されるいずれか一つの弾性体が封入され、
前記弾性体ボックスは、前記軸受ボックスとブラケットの間に設置され、ブラケットに取付けられた弾性体固定具によって支持固定されている。
【0029】
このような構成によれば、
弾性体ボックスが、弾性体を封入した簡易な構造とされるので、装置を小型化することが可能である。
【0030】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記金属ロールの少なくとも他方は、その回転軸が軸受ボックスに支持され、
前記他方の金属ロールの軸受ボックスには、該金属ロールの回転軸と直交する水平方向の位置を調整する位置調整手段が連結されている。
【0031】
このような構成によれば、金属ロール相互の押圧力を位置調整手段によって任意に設定できるため、グリット製造用原料の粒度に応じた調整が可能になった。
【0032】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記位置調整手段は、ボルト、エアーシリンダー、油圧シリンダー、電動シリンダーのいずれか一つであり、
前記軸受ボックスとブラケットの間に設置されている。
【0033】
前記一対の金属ロールは、フレームに固定されたハウジング内に設置され、
前記ハウジングの上部には、前記金属ロールにグリット製造用原料を供給する原料供給機構が設けられ、該原料供給機構が、原料を前記一対の金属ロールの間に供給する原料シュートと、外部から受け入れた原料を金属ロールの軸方向に分散させながら前記原料シュートに送る原料分散台と、原料分散台上の原料を金属ロールの軸方向に分散させる原料分散手段とを備えている。
【0034】
このような構成によれば、グリット製造用原料が金属ロールに沿って軸線方向に均一に拡がって、金属ロールに供給されるので、金属ロールの偏摩耗が減少して耐久性が向上した。
また、金属ロールの摩耗が均一に進行するため、偏摩耗部の隙間からグリット製造用原料が破砕されずに落下する問題が大幅に低減され、良品率が向上した。
【0035】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記原料分散手段は、電力、または圧縮空気で駆動する振動発生装置である。
【0036】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記の一対の金属ロールは、少なくとも外周面が高マンガン鋳鋼で構成され、
該高マンガン鋳鋼の化学成分が質量%で、C:0.8〜1.5、Mn:11〜33、Cr:1〜4、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物である。
【0037】
高マンガン鋳鋼を用いることとすると、適度な硬さと靭性を備えた耐摩耗性に優れた破砕用の金属ロールが提供される。
そして、上記のような高マンガン鋳鋼は、靭性に優れた残留オーステナイトの基地組織を有し、使用中に衝撃が加わる表面部のみ加工硬化してマルテンサイト組織に変態するため優れた耐摩耗性と靭性を兼ね備えており、金属ロールの材料として好適である。
【0038】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記一対の金属ロールは、少なくとも外周面が高マンガン鋳鋼で構成され、
該高マンガン鋳鋼の化学成分が質量%で、C:0.9〜1.3、Mn:11〜14、Cr:1.5〜2.5、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物である。
【0039】
このような高マンガン鋳鋼は、現材料費が低く、機械加工の容易性が高いため、より好ましい。
【0040】
本発明の他の態様によれば
回転可能に並列配置された一対の金属ロールの間で金属材料を破砕してグリットを製造するグリット製造用破砕装置で使用される金属ロールであって、
高マンガン鋳鋼の原料を配合して溶解し1660〜1720℃の溶湯を準備する工程と、
前記溶湯を鋳型に鋳造する工程と、
鋳物の冷却後に型バラシを行い、鋳物を取出す工程と、
鋳物に付着した鋳型材を研掃して除去する工程と、
鋳物製品部以外の堰や押し湯を除去する工程と、
鋳物製品部を200℃以下の熱処理炉に送入した後1040〜1060℃まで60℃/時間の昇温速度で昇温し、1040〜1060℃に2〜4時間保持する工程と、
熱処理炉から取出して水槽中に浸漬して急冷する水靭処理を実施する工程と、
熱処理によって生成する酸化皮膜を研掃して除去する工程と、
鋳物製品部を機械加工して規定の寸法とする工程によって製造されたことを特徴とする金属ロールが提供される。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、単一の駆動源で作動でき、高い耐久性を維持しながら、金属材料の安定した破砕を行うことができるグリット製造用の破砕装置が提供される。
さらに、適度な硬さと靭性を備えた耐摩耗性に優れた、グリット製造用破砕装置で使用される破砕用の金属ロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の好ましい実施形態のグリット製造用破砕装置の概略的な正面図である。
図2】グリット製造用破砕装置の一部分を破断した概略的な右側面図である。
図3】グリット製造用破砕装置のハウジングを取外した状態での一部分を破断した平面図である。
図4図1のグリット製造用破砕装置で使用される圧力調整手段の構造を示す概略図である。
図5】他の圧力調整手段の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態のグリット製造用破砕装置10について説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態のグリット製造用破砕装置10の概略的な正面図であり、図2は、グリット製造用破砕装置10の一部分を破断した概略的な右側面図であり、図3は、グリット製造用破砕装置10のハウジングを取外した状態での一部分を破断した平面図である。
【0044】
本実施態様のグリット製造用破砕装置10は、フレーム12の上部のハウジング14内内に、一対の円柱状の金属ロール16、18が、外周面が接触するように回転可能に並列配置(支持)され、この一対の金属ロール16、18の外周面間にグリット製造用原料が供給され、一対の金属ロール間で破砕され、グリットとなって、金属ロール16、18の下方に排出される構造を有するものである。
【0045】
図1ないし図3に示されているように、グリット製造用破砕装置10では、フレーム12上に設けられたハウジング14内に、一対の金属ロール16、18を構成する駆動ロール16と従動ロール18とが回転可能に支持されている。
【0046】
一対の金属ロール16、18は、それぞれが、略円筒状の外周部16a、18aを備え、この外周部16a、18aが高マンガン鋳鋼で構成されている。なお、外周部16a、18aは、少なくとも最外層面が高マンガン鋳鋼で構成されていれば、他の構成でもよい。
本実施態様のグリット製造用破砕装置の金属ロール16、18に使用される高マンガン鋳鋼としては、たとえば、化学成分が、質量%で、C:0.8〜1.5、Mn:11〜33、Cr:1〜4、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物であるものがある。また、C:0.9〜1.3、Mn:11〜14、Cr:1.5〜2.5、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物であるものでもよい。
【0047】
グリット製造用破砕装置10は、フレーム12の上方に、図示しない原料ホッパから供給されたグリット製造用原料である金属原料(金属粒)を、金属ロール16、18に供給する原料供給機構を備えている。
原料供給機構は、原料ホッパ等の外部装置から金属原料を受け入れる原料分散台20と、金属原料を原料分散台20から受け入れ一対の金属ロール16、18の間に供給する原料シュート22と、金属材料分散手段24とを備えている。
【0048】
原料分散装置24は、原料分散台20上の金属原料を金属ロール16、18の軸線方向に分散させる機能を有し、本実施態様では、電力、または圧縮空気で駆動する振動発生装置である。
また、原料分散装置24として、外部の動力によって駆動する回転羽根、回転ブラシなどを用いてもよい。さらに、原料分散台20のグリット製造用原料が流れる表面に複数の凸部を設けて原料分散装置に代わる原料分散手段としてもよい。さらにまた、凸部を、振動発生装置などと併用してもよい。
【0049】
このような構成よって、原料ホッパ等の外部装置から、原料分散台20の図1に矢印示す部分に供給された金属粒は、原料分散台20上を原料シュート22方向に移動しながら、原料分散装置24からの振動によって金属ロール16、18の軸方向(図1の紙面に直交する方向)に均一に拡がりながら原料シュート22に供給される。原料シュート22に供給された金属粒は、金属ロール16、18の軸方向にほぼ均一に、金属ロール16、18間に供給され、破砕されることになる。
【0050】
このように、グリット製造用原料が金属ロール16、18の軸方向ロールの幅方向に均一に拡がって供給されるので、金属ロール16、18の外周面16a、18aの偏摩耗が減少して耐久性が向上する。
また、金属ロールの摩耗が均一に進行するため、偏摩耗部の隙間からグリット製造用原料が破砕されずに落下する問題が大幅に低減され、良品率が向上する。
【0051】
次に、一対の金属ロール16、18、すなわち駆動ロール16と、従動ロール18の支持機構について説明する。
駆動ロール16および従動ロール18の径方向中心には、それぞれ、駆動軸26、および従動軸28が固定されている。駆動軸26、および従動軸28は、両端が駆動ロール16および従動ロール18の両側面から突出し、軸受ボックス30、31に格納された軸受32によって回転可能に支持されている。
【0052】
駆動ロール16の駆動軸26を支持する軸受ボックス30は、図2の破断部分に示されているように、駆動側位置調整スライド34に嵌合して固定されている。駆動側位置調整スライド34は駆動側スライドブロック36にボルトで固定されている。さらに、スライドブロック36は、駆動側スライドプレート38に摺動可能に支持されている。
この結果、駆動ロール16の駆動軸26は、従動ロール18の従動軸28に対して離間接近する方向(図2において紙面に直交する方向)に摺動可能に構成されている。
【0053】
駆動側位置調整スライド34と駆動側スライドブロック36と間には、垂直方向に伸びる隙間(図示せず)が設けられ、駆動側位置調整スライド34と駆動側スライドブロック36とを連結しているボルトを調整することによって、駆動ロール16の軸方向位置を微調整することができる。
【0054】
従動ロール18も、従動側位置調整スライド34’と従動側スライドブロック36’等によって、駆動ロール16側と同様に支持されている。
【0055】
次に、フレーム12の全体構造について説明する。
図1および図2の部分断面図に示されているように、グリット製造用破砕装置10では、フレーム12上に金属ロール16、18を据え付けるための据付台座40がボルトで締結されている。さらに、据付台座40上に下部ベース42がボルトで締結され、下部ベース42に上部ベース44が、ディスタンスブロック46を介してボルトで締結されている。
【0056】
上部ベース44と下部ベース42には、タイバー48を通すための孔部が形成されており、この孔部にタイバー48が貫通されている。タイバー48の両端には、スペーサ50、52を介して、ブラケット54、56が取付けられ、ブラケット54、56の外方からナット58が締結されている。
【0057】
また、下部ベース42の上面には、駆動ロール16側に、駆動側スライドプレート38が交換可能に取付けられ、従動ロール18側に従動側スライドプレート60が交換可能に取付けられている。
【0058】
グリット製造用破砕装置10では、駆動ロール16および従動ロール18は、図3に示されているように、軸線方向両端の内径が最大となるように軸線方向内方に向かってテーパ状の先細りする内部空間を形成する略円筒状の外周部16a、18aを備えている。
【0059】
この内部空間内に、内部空間と相捕的な形状にテーパ加工されたロール固定具62が、軸線方向両端から挿入され、両側のロール固定具62が、ボルトなどのロール連結具64によって連結されている。このロール固定具62が、駆動軸26、および従動軸28に嵌合することによって、駆動ロール16および従動ロール18が駆動軸26、従動軸28に連結されている。
【0060】
本実施形態のグリット製造用破砕装置10では、駆動ロール16および従動ロール18の外周面が摩耗した場合は、略円筒状の外周部16a、18aのみを交換することができる。
【0061】
次に、駆動ロール16を回転駆動させる回転駆動機構について説明する。
図1および図3に示されているように、本実施形態のグリット製造用破砕装置10では、駆動ロール16の駆動軸26の一方の端部に駆動軸プーリ65が固定されている。
【0062】
一方、駆動ロール16の駆動源となるモータ66は、フレーム1上に固定された据付台座68上に固定されている。モータ66の出力軸70には、モータ軸プーリ72が固定されている。そして、駆動軸プーリ65とモータ軸プーリ72には、駆動ベルト74が巻回され、モータ66の出力軸70の回転が駆動軸プーリ65に伝達されるように構成されている。
本実施態様では、駆動ベルト74として、ゴム製の芯材に外被布が被せられた所謂伝動ベルトが使用されているが、他の種類の駆動ベルトを使用することも可能である。
【0063】
モータ66は、駆動ロール16から従動ロール18を挟んで反対側の位置に配置されている。すなわち、従動ロール18が、駆動ベルト74の軌道平面と平行な平面において、駆動ロール16とモータ66との間に配置されていることになる。
【0064】
このような構造によって、グリット製造作業中に、駆動ロール16と従動ロール18の間で、グリット製造用原料の「咬み込み」が発生して、駆動ロール16と従動ロール18の間隔を拡げる力が生じた場合には、駆動ロール16にモータ66とは反対方向に向かう力が作用して、駆動ベルト74の張力が増加する。この結果、駆動ロール16が従動ロール18に向かって押圧され、空転することなく、安定した破砕を実現することができる。
【0065】
また、本実施形態のグリット製造用破砕装置10では、従動ロール18は、駆動ロール16との摩擦力により回転する構成であるため、1台の駆動源(モータ)によって装置を作動させることができるため、装置の小型化と製作費用の低減が可能になった。
さらに、駆動ロール16と従動ロール18の回転速度の差によって、グリット製造用原料にせん断応力が作用するため、破砕効率が改善され良品率が向上した。
【0066】
本実施態様のグリット製造用破砕装置10では、上述のように従動ロール18は駆動ロール16との摩擦接触により回転するため、ロール相互の押圧力を調整する必要がある。
また、駆動ロール16と従動ロール18の間にグリット製造用原料の「咬み込み」によってロール相互の間隔を拡げるような衝撃的な力が発生した場合には、軸受32、軸受ボックス30、31に、過大な負荷が作用するため、この負荷を軽減する構造が必要となる。
【0067】
このため、本実施態様のグリット製造用破砕装置10では、駆動ロール16および従動ロール18を、軸受ボックス30、31によって回転可能に支持すると共に、スライドプレート38、60上に沿って回転軸に直交する方向に摺動可能に支持することによって、上記負荷の軽減が図られている。
【0068】
本実施形態においては、駆動ロール16を支持する軸受ボックス30に、駆動軸26と直交する水平方向に作用する圧力調整手段が連結され、従動ロール16を支持する軸受ボックス31にはロール軸と直交する水平方向の位置を調整する位置調整手段76が連結されている。
【0069】
圧力調整手段は、弾性体ボックス78と、弾性体固定具80とを備えている。弾性体ボックス78は、変形可能な外郭容器の内部にバネ、空気、水、油から選択されるいずれか一つの弾性体を封入した構造である。また、弾性体ボックス78は、駆動ロール16を支持する軸受ボックス30と駆動側ブラケット54の間に設置され、駆動側ブラケット54に取付けられた弾性体固定具80によって支持固定されている。
このように、弾性体ボックス78は、弾性体を封入した簡易な構造とすることができるので、装置を小型化することが可能である。
【0070】
弾性体ボックス78に封入される弾性体としてバネを使用した圧力調整手段の構造を図4に示す。
図4に示されているように、この圧力調整手段では、弾性体ボックス78の内部に、バネ82と板状の弾性体連結具84が設置されている。弾性体ボックス78は、バネ82と弾性体連結具84を覆う蛇腹状に伸縮可能な構造であり、粉塵やグリット製造用原料等から弾性体を保護する役目を果たし、樹脂、金属、布等によって製作されたベローズ(蛇腹)が使用される。
【0071】
バネ82と弾性体ボックス78の基端側(図1および図4の右側)部分は、駆動側ブラケット54に接続された弾性体連結具84の一方の面に連結されている。また、弾性体固定具80の先端側(図1および図4の左側)部分が、駆動側ブラケット54に設けられた孔部を通って、弾性体連結具84の他方の面に連結固定されている。
【0072】
このような構造によって、圧力調整手段が、駆動ロール16を支持する軸受ボックス30と駆動側ブラケット54の間に配置され、駆動ロール16を支持する軸受ボックス30が、従動ロール18を支持する軸受ボックス31に向けて押圧される圧力を調整する。
【0073】
バネ82に代えて、弾性体として水または油を使用した場合の圧力調整手段の具体的な構造を図5に示す。
この例では、弾性体ボックス78’内に、変形可能なベローズ構造容器内に水または油が充填された流体バネ86が設置されている。流体バネ86の基端側(図1および図5の右側)部分は、弾性体連結具84と連結されている。このような弾性体ボックス78’は、図4の構成と同様に、駆動ロール16を支持する軸受ボックス30と駆動側ブラケット54の間に配置されている。
【0074】
流体バネ86は、図5に示されているように、流体貯蔵容器88、圧力弁90、空気ポンプ92等と流体連通することにより、任意に圧力を制御することができることが好ましい。
【0075】
また、位置調整手段76は、ボルト、エアーシリンダー、油圧シリンダー、電動シリンダーから選択されるいずれか一つであり、従動側の軸受ボックス31と従動側ブラケット56との間に設置されている。
【0076】
破砕作業によって、駆動ロール16、従動ロール18が摩耗してくると、圧力調整手段からの押しつけ圧力で、駆動ロール16が従動ロール側に押され、両ロール16、18の接触点が、原料シュート22の真下の位置から従動ロール側に変位してしまう。このため、位置調整手段76で、従動ロール18の軸受ボックス31を駆動ロール側に押圧し、両ロール16、18の位置を補償している。
【0077】
位置調整手段76は、ボルトや各種シリンダーを用いることによって簡易な構造とすることができる。
【0078】
なお、弾性体ボックス78が、空気、水、油を封入した構成である場合には、必要に応じて、圧力を調整するためのポンプ、流体を貯蔵するタンク、圧力調整弁などの外部機器を弾性体ボックス78に接続して、弾性体ボックス78内の圧力を制御することができる。
【0079】
このような圧力調整手段によって、ロール相互の間には常に一定の押圧力が維持され、位置調整手段76によって押圧力の微調整とロールが摩耗した時の位置調整が可能であり、ロール相互の間隔を広げるように衝撃的な力が作用した場合には圧力調整手段によって、その負荷を軽減する効果が得られる。
【0080】
また、圧力調整手段が駆動ロール16の軸受ボックス30に連結されているので、駆動ロール16と従動ロール18の間でグリット製造用原料の「咬み込み」が発生し、ロール相互の間隔を拡げるような衝撃的な力が生じた場合に、駆動ベルト74の張力が増加するため空転することがなく、安定した破砕を実現することができることから、圧力調整手段にかかる負荷が一時的であり最小限に抑制されるため、より好ましい。
【0081】
さらに、位置調整手段76が、モータ66が設置される側になるため、位置調整手段76として各種シリンダーを用いても装置が大型化しない利点がある。
【0082】
一対の金属ロール16、18間で破砕されたグリット製造用原料は排出シュート94から下方に流出され、図示しないホッパなどに一時的に貯蔵される。
【0083】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【実施例】
【0084】
次に本発明の実施例について説明する。
金属ロールの外周部の材料に関して検討するための実験を実施した。表1に示す材料を用いて金属ロールの外周部を製作し、耐摩耗性、耐衝撃性を比較した。
実施例1〜3は化学成分が異なる3種類の高マンガン鋳鋼である。比較例1〜2は化学成分が異なる2種類のクロムモリブデン鋼である。
化学成分は試作した鋳物の一部を切断して、発光分光分析法によって測定した結果である。硬さ測定は、ロックウェル硬度計のCスケール(HRC)を使用し、測定方法はJISZ2245(ISO6508)に従って実施した。
【0085】
耐摩耗性の評価は、実際に一対のロールを製作し、φ2mmのスチールショットを原料に使用して100時間連続運転した後の摩耗量を重量減少量から求めて比較した。表1では、比較例1の摩耗量を100として表しており、数値が小さい程耐摩耗性が良好であることを示している。耐衝撃性は、100時間連続運転した後にクラックの発生状況を調査し、発生の有無を示している。
【0086】
比較例1のクロムモリブデン鋼の硬さと比較して、実施例1〜3の高マンガン鋳鋼の硬さが低くなっているが、これは使用前の硬さであり、使用後の最表面の硬さをマイクロビッカース硬さ計で測定したところ、Hv400〜520を示し、ロックウェル硬さに換算するとHRC40.8〜50.5に相当する硬さであった。ただし、加工硬化している層は、表面から0.5mm程度と薄く、内部は使用前と同じ硬さであった。従って、実施例1〜3の高マンガン鋳鋼の場合、最表面は加工硬化して比較例1のクロムモリブデン鋼の硬さよりも高いため、耐摩耗性が向上したと推定される。
【0087】
比較例2はC、Siを増加して硬さを上げた事例であり、硬さは最も高くなったが、使用後のロールにはクラックが発生しており、靭性が不足していることが確認された。実施例1〜3の高マンガン鋳鋼は、最表面が加工硬化して優れた耐摩耗性を発揮し、内部は残留オーステナイトからなる靭性の高い組織であるため、クラックを発生する可能性が低く安全性が高い。
【0088】
実施例1〜3の高マンガン鋳鋼の場合、Mnが増加すると硬さが僅かに高くなる傾向が認められたが、耐摩耗性は逆に少し低下した。従って、現材料費および機械加工の容易性を考慮すると実施例1の化学成分が、より好ましい。実施例1はJIS規格SCMnH11の化学成分を採用して試作したもので、目標成分は質量%で、C:0.9〜1.3、Mn:11〜14、Cr:1.5〜2.5、Si:0.8以下、残部がFeおよび不可避不純物からなっている。
【0089】
【表1】
【0090】
次に金属ロールを高マンガン鋳鋼によって製造する方法について実験を行った。高マンガン鋳鋼は酸素との親和力が高い元素であるMnを多く含有するため、一般に湯流れ性が悪く、鋳物に湯じわ、湯回り不良などの欠陥が発生し易い。従って、健全な鋳物を製造するためには、溶解工程において1660〜1720℃程度の溶湯を準備する必要がある。また、溶湯を鋳型に鋳造する工程と、鋳物の冷却後に型バラシを行い鋳物を取出す工程と、鋳物に付着した鋳型材を研掃して除去する工程と、鋳物製品部以外の堰や押し湯を除去する工程を経て製作した鋳物製品部を、200℃以下の熱処理炉に送入した後1040〜1060℃まで60℃/時間の昇温速度で昇温し、1040〜1060℃に2〜4時間保持する工程によって均一に加熱した後、熱処理炉から取出して水槽中に浸漬して急冷する水靭処理を実施する工程によって均一な残留オーステナイト基地の組織が形成される。さらに、熱処理によって生成する酸化皮膜を研掃して除去する工程と、鋳物製品部を機械加工して規定の寸法とする工程によって製造することができることを確認した。
【符号の説明】
【0091】
10:グリット製造用破砕装置
12:フレーム
14:ハウジング
16:駆動ロール
18:従動ロール
20:原料分散台
22:原料シュート
24:金属材料分散手段
26:駆動軸
28:従動軸
30:軸受ボックス
32:軸受
66:モータ
74:駆動ベルト
図1
図2
図3
図4
図5