(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021050
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】カバーの製造方法及びこれに用いるプレス型
(51)【国際特許分類】
B21D 22/28 20060101AFI20161020BHJP
F16C 33/76 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
B21D22/28 B
F16C33/76 A
B21D22/28 J
B21D22/28 K
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-103352(P2012-103352)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-230482(P2013-230482A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100143926
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 公敏
(74)【代理人】
【識別番号】100149504
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 周子
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】清 照幸
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−066661(JP,A)
【文献】
特開2000−192181(JP,A)
【文献】
特開2007−218426(JP,A)
【文献】
特開平07−112223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/28
F16C 33/76
B21D 37/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在するカバーを、非磁性の金属板を折り曲げることによって製作するカバーの製造方法において、
前記折り曲げ加工時に、少なくとも前記金属板に接する部分が非磁化部とされた成形機具を用い、前記金属板を折り曲げる折り曲げ工程を備え、前記折り曲げ工程では、前記成形機具として、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされたプレス面を有するプレス型を用い、前記プレス型が磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型が脱磁処理されることによって構成されることを特徴とするカバーの製造方法。
【請求項2】
回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在するカバーを、非磁性の金属板を折り曲げることによって製作するカバーの製造方法において、
前記折り曲げ加工時に、少なくとも前記金属板に接する部分が非磁化部とされた成形機具を用い、前記金属板を折り曲げる折り曲げ工程を備え、前記折り曲げ工程では、前記成形機具として、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされたプレス面を有するプレス型を用い、前記プレス型が磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型に非磁性体がインサートされることによって構成されることを特徴とするカバーの製造方法。
【請求項3】
回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在するカバーを、非磁性の金属板を折り曲げることによって製作するカバーの製造方法において、
前記折り曲げ加工時に、少なくとも前記金属板に接する部分が非磁化部とされた成形機具を用い、前記金属板を折り曲げる折り曲げ工程を備え、前記折り曲げ工程では、前記成形機具として、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされたプレス面を有するプレス型を用い、前記プレス面には、段差形状を転写するための段差形状部が形成されており、前記非磁化部は前記段差形状部の少なくとも一部を形成し、前記折り曲げ工程では、前記金属板を当該段差形状部による段付き部を含む有底筒状となるよう加工することを特徴とするカバーの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のカバーの製造方法において、
前記プレス型が磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型が脱磁処理されることによって構成されることを特徴とするカバーの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のカバーの製造方法において、
前記プレス型が磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型に非磁性体がインサートされることによって構成されることを特徴とするカバーの製造方法。
【請求項6】
回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在するカバーを、非磁性の金属板を折り曲げることによって製作するカバーの製造方法において、
前記折り曲げ加工時に、少なくとも前記金属板に接する部分が非磁化部とされた成形機具を用い、前記金属板を折り曲げる折り曲げ工程を備え、
前記折り曲げ工程を実施した後、折り曲げ加工後の金属板の形状に沿うように形成され、かつ、少なくとも前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされた合わせ面を有する成型型を用い、成型材を一体に成型する成型工程をさらに備えることを特徴とするカバーの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のカバーの製造方法において、
前記折り曲げ工程を実施した後に、前記金属板に接する治具として弱磁性又は非磁性の治具を用い、折り曲げ加工後の金属板の前記金属板の残留磁気を検査する検査工程をさらに備えることを特徴とするカバーの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のカバーの製造方法において、
前記金属板として、オーステナイト系ステンレス鋼板を用いることを特徴とするカバーの製造方法。
【請求項9】
互いに接離可能に構成された第1の金型及び第2の金型を備え、非磁性の金属板を折り曲げるようにプレス加工するプレス型において、
前記第1の金型及び第2の金型は、それぞれ前記金属板をプレスするプレス面の少なくとも一部に、対向する非磁化部を含み、前記第1の金型及び第2の金型は磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型が脱磁処理されることによって構成されることを特徴とするプレス型。
【請求項10】
互いに接離可能に構成された第1の金型及び第2の金型を備え、非磁性の金属板を折り曲げるようにプレス加工するプレス型において、
前記第1の金型及び第2の金型は、それぞれ前記金属板をプレスするプレス面の少なくとも一部に、対向する非磁化部を含み、前記第1の金型及び第2の金型は磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型に非磁性体をインサートすることによって構成されることを特徴とするプレス型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のABS(アンチロックブレーキシステム)において、回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在されるカバーの製造方法とこれに用いるプレス型に関する。
【背景技術】
【0002】
前記ABSにおいては、従動輪用のハブベアリングの内輪に多数のN極及びS極を周方向に交互に形成した環状磁石(エンコーダ)を固定し、固定側に磁気センサを設置して、環状磁石の回転に伴う磁気変化を検出して車輪の回転状態を判定するようになされている。この場合、環状磁石の泥水や塵埃等による損傷を防止するため、当該環状磁石を覆うカバーを固定側に取付けてその保護がなされる(例えば、特許文献1参照)。このようなカバーは、環状磁石と前記磁気センサとの間に介在するよう設けられるので、磁気検出精度を確保するため、磁気を透過しやすい非磁性金属材(例えば、SUS304、アルミニウム、銅、真鍮等)によって構成される。そして、この非磁性金属材をプレス加工してキャップ形状等の所定のカバー形状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−218426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カバーが前記のように非磁性金属材から構成されていても、プレス加工等の塑性変形を伴う加工が施されると、これに伴い磁化し、カバーに残留磁気が生じる。そして、このカバーを環状磁石と磁気センサとの間に介在するよう配設すると、環状磁石から発生する磁気は、カバーを透過する際に影響が及ぼされ、磁気センサによる検出精度にも影響が及ぶ。そこで、特許文献1においては、カバーを構成する非磁性金属材を脱磁処理、具体的には、非磁性金属材をカバー形状にプレス加工した後に脱磁処理することによって、前記問題点の解決を図っている。
しかし、特許文献1に開示された例では、製品化されたカバー毎に脱磁処理を行うので、実際のカバーの製造においては工数がかかり、製造効率の点で新たな問題点が出てくることが予想されるところであった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、非磁性材を折り曲げ加工してカバーを製作する際に、残留磁気の増加を極力抑えて効率的にカバーを製造することができるカバーの製造方法とこれに用いるプレス型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るカバーの製造方法は、回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在するカバーを、非磁性の金属板を折り曲げることによって製作するカバーの製造方法において、前記折り曲げ加工時に、少なくとも前記金属板に接する部分が非磁化部とされた成形機具を用い、前記金属板を折り曲げる折り曲げ工程を備え
、前記折り曲げ工程では、前記成形機具として、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされたプレス面を有するプレス型を用い、前記プレス型が磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型が脱磁処理されることによって構成されることを特徴とする。
この発明によれば、金属板を折り曲げ加工してカバーを製作する成形機具の少なくとも金属板に接する部分が非磁化部とされているから、製作後のカバー自体に脱磁処理を施さなくても、カバーに存在する残留磁気が増加することを抑制することができる。したがって、製品としてのカバー毎の脱磁処理を要しないので、製造効率が向上する。
また、この発明によれば、前記折り曲げ加工が汎用性の高いプレス型を用いてなされる。そして、このプレス型のプレス面のうち、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされているから、プレス加工時に当該非磁化部に接する金属板の部分の残留磁気が増加することを抑制することができる。
さらに、この発明によれば、磁性材からなるプレス型であっても、少なくとも非磁化部は、前記プレス加工前に脱磁することによって構成されているから、プレス加工時に非磁化部に接する金属板の部分は、少なくとも磁性を帯びる懸念がない。
【0007】
第2の発明に係るカバーの製造方法は、回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在するカバーを、非磁性の金属板を折り曲げることによって製作するカバーの製造方法において、前記折り曲げ加工時に、少なくとも前記金属板に接する部分が非磁化部とされた成形機具を用い、前記金属板を折り曲げる折り曲げ工程を備え、前記折り曲げ工程では、前記成形機具として、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされたプレス面を有するプレス型を用い、前記プレス型が磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型に非磁性体がインサートされることによって構成されることを特徴とする。
この発明によれば、金属板を折り曲げ加工してカバーを製作する成形機具の少なくとも金属板に接する部分が非磁化部とされているから、製作後のカバー自体に脱磁処理を施さなくても、カバーに存在する残留磁気が増加することを抑制することができる。したがって、製品としてのカバー毎の脱磁処理を要しないので、製造効率が向上する。
また、この発明によれば、前記折り曲げ加工が汎用性の高いプレス型を用いてなされる。そして、このプレス型のプレス面のうち、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされているから、プレス加工時に当該非磁化部に接する金属板の部分の残留磁気が増加することを抑制することができる。
さらに、この発明によれば、磁性材からなるプレス型から磁力が発生していても、プレス加工時に、少なくとも、非磁化部に接する金属板の部分は磁性を帯びる懸念がない。また、非磁化部は非磁性体によって構成されるため、プレス面から発生する磁力を長時間弱い状態に維持することができる。
【0008】
第3の発明に係るカバーの製造方法は、回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在するカバーを、非磁性の金属板を折り曲げることによって製作するカバーの製造方法において、前記折り曲げ加工時に、少なくとも前記金属板に接する部分が非磁化部とされた成形機具を用い、前記金属板を折り曲げる折り曲げ工程を備え、前記折り曲げ工程では、前記成形機具として、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされたプレス面を有するプレス型を用い、前記プレス面には、段差形状を転写するための段差形状部が形成されており、前記非磁化部は前記段差形状部の少なくとも一部を形成し、前記折り曲げ工程では、前記金属板を当該段差形状部による段付き部を含む有底筒状となるよう加工することを特徴とする。
この発明によれば、金属板を折り曲げ加工してカバーを製作する成形機具の少なくとも金属板に接する部分が非磁化部とされているから、製作後のカバー自体に脱磁処理を施さなくても、カバーに存在する残留磁気が増加することを抑制することができる。したがって、製品としてのカバー毎の脱磁処理を要しないので、製造効率が向上する。
また、この発明によれば、前記折り曲げ加工が汎用性の高いプレス型を用いてなされる。そして、このプレス型のプレス面のうち、製造予定のカバーにおける前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされているから、プレス加工時に当該非磁化部に接する金属板の部分の残留磁気が増加することを抑制することができる。
段付き部を含む有底筒状のカバーとなるよう加工する場合、段付き部は、塑性変形が大きいため磁化され易くなる。しかし、この発明によれば、段付き部を含む有底筒状のカバーを製作する場合であっても、段付き部が磁化することを抑制できる。
【0009】
成形器具として
第3の発明に係る前記プレス型を用いる場合、さらに、前記プレス
型が磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型が脱磁処理されることによって構成されるものとしても良い。
【0010】
成形器具として第3の発明に係る前記プレス型を用いる場合、さらに、前記プレス型が磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型に非磁性体がインサートされることによって構成されるものとしても良い。
【0011】
第4の発明に係るカバーの製造方法は、回転部材に固定された環状磁石と前記環状磁石から発生する磁気を検出する磁気センサとの間に介在するカバーを、非磁性の金属板を折り曲げることによって製作するカバーの製造方法において、前記折り曲げ加工時に、少なくとも前記金属板に接する部分が非磁化部とされた成形機具を用い、前記金属板を折り曲げる折り曲げ工程を備え、前記折り曲げ工程を実施した後、折り曲げ加工後の金属板の形状に沿うように形成され、かつ、少なくとも前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされた合わせ面を有する成型型を用い、成型材を一体に成型する成型工程をさらに備えることを特徴とする。
この発明によれば、金属板を折り曲げ加工してカバーを製作する成形機具の少なくとも金属板に接する部分が非磁化部とされているから、製作後のカバー自体に脱磁処理を施さなくても、カバーに存在する残留磁気が増加することを抑制することができる。したがって、製品としてのカバー毎の脱磁処理を要しないので、製造効率が向上する。
また、この発明によれば、
折り曲げ加工後に、金属板に成型材を一体に成型する場合でも、金属板に存在する残留磁気が増加することを抑制できる。
【0012】
本発明のカバーの製造方法において、前記
折り曲げ工程を実施した後に、前記金属板に接する治具として弱磁性又は非磁性の治具を用い、折り曲げ加工後の金属板の残留磁気を検査する検査工程をさらに備えるようにしても良い。
この発明によれば、
残留磁気を検査する場合でも、検査用の治具が弱磁性又は非磁性であるから、検査時に治具が金属板に接しても、カバーに存在する残留磁気が増加することを抑制することができる。
【0013】
本発明のカバーの製造方法において、前記金属板として、オーステナイト系ステンレス鋼板を用いても良い。
この発明によれば、カバー材料として汎用されているオーステナイト系鋼板は、非磁性であっても塑性変形すると磁化し易くなる特性を有する。しかし、この発明によれば、カバー材料として汎用されているオーステナイト系鋼板を折り曲げ加工しても、磁化する懸念が少ない。
【0014】
第5の発明に係るプレス型は、互いに接離可能に構成された第1の金型及び第2の金型を備え、非磁性の金属板を折り曲げるようにプレス加工するプレス型において、前記第1の金型及び第2の金型は、それぞれ前記金属板をプレスするプレス面の少なくとも一部に、対向する非磁化部を含み、前記第1の金型及び第2の金型は磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型が脱磁処理されることによって構成されることを特徴とする。
この発明によれば、非磁性の金属板をプレス加工した際に、前記非磁化部に接する金属板の被プレス面が磁化することを抑制できる。
また、この発明によれば、プレス型の作製時に、プレス面の一部に磁気が生じても、少なくともこの部分は金属板の前記プレス加工前に脱磁されているから、プレス加工時に金属板が磁性を帯びる懸念がなく、これによって、製作されるカバーの残留磁気の増加を抑制することができる。
【0015】
第6の発明に係るプレス型は、互いに接離可能に構成された第1の金型及び第2の金型を備え、非磁性の金属板を折り曲げるようにプレス加工するプレス型において、前記第1の金型及び第2の金型は、それぞれ前記金属板をプレスするプレス面の少なくとも一部に、対向する非磁化部を含み、前記第1の金型及び第2の金型は磁性材からなり、前記非磁化部は、前記プレス型に非磁性体をインサートすることによって構成されることを特徴とする。
この発明によれば、非磁性の金属板をプレス加工した際に、前記非磁化部に接する金属板の被プレス面が磁化することを抑制できる。
また、この発明によれば、金属板のプレス加工時に、非磁性体をインサートした部分では、金属板が磁性を帯びる懸念がない。また、非磁化部は非磁性体によって構成されるため、プレス面から発生する磁力を長時間弱い状態に維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
第1
〜4の発明に係るカバーの製造方法によれば、非磁性材からなる金属板を成形機具により折り曲げ加工してカバーを製作する際に、金属板における残留磁気の増加を極力抑えることができる。したがって、製作された製品としてのカバー毎の脱磁処理を要しないので、製造効率の向上を図ることができる。また、第
5、6の発明に係るプレス型を用いて、非磁性材からなる金属板を折り曲げ加工してカバーを製作する際に、残留磁気の増加を極力抑えることができ、カバーの製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)(b)は、本発明の第1の実施形態に係るカバーの製造方法及びプレス型を概略的に示す部分破断断面図であり、(a)は鋼板を第1及び第2の金型間に導入した状態を示し、(b)は第1及び第2の金型によって鋼板をプレス加工している状態を示す。
【
図2】(a)(b)は、本発明の第2の実施形態に係るカバーの製造方法及びプレス型を概略的に示す
図1(a)(b)と同様図である。
【
図3】第1及び第2の実施形態の製造方法に付加される成型工程の一形態を示す部分破断断面図である。
【
図4】同成型工程の他の形態を示す
図3と同様図である。
【
図5】第1及び第2の実施形態の製造方法に付加される検査工程の一形態を示す部分破断断面図である。
【
図6】本発明の製造方法を概略的に示すフロー図である。
【
図7】本発明の製造方法によって得られたカバーを軸受装置に装着した状態を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の製造方法によって得られるカバーの変形例であって、装着対象に装着された状態の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。先ず、
図7を参照して、本発明の製造方法及びプレス型によって得られたカバーが装着された軸受装置について説明する。
図7に示す軸受装置は、自動車の従動輪を回動自在に支持する軸受装置の一例としてのハブベアリングを示している。図例のハブベアリング(軸受装置)1は、車体(不図示)に固定される外輪部材2の内径部に2列の転動体(玉)3…を介して、ハブ輪4及び内輪(単に環状部材ということもある)5が軸心回りに回動自在に支持されている。ハブ輪4は、ハブフランジ41を有し、該ハブフランジ41に、不図示の従動輪(タイヤホイール)がボルト41aによって取付けられる。ハブ輪4と内輪5とにより回転部材としての内輪部材6が構成され、前記外輪部材2とこの内輪部材6との間に、前記転動体3…がリテーナ3aに保持された状態で介装されている。転動体3…の介装部分を含む外輪部材2と内輪部材6との間が軸受空間Sとされ、この軸受空間Sには、転動体3…の転動を円滑にするための潤滑剤(例えば、グリース)が充填される。
【0019】
前記軸受空間Sの車輪側端部における外輪部材2と内輪部材6(ハブ輪4)との間には、軸シールタイプのシールリング7が、内輪部材6(ハブ輪4)に対して摺接可能に装着されている。また、内輪部材6(内輪5)の車体側端部の外径面5aには、断面L形の金属製補強環8の円筒部8aが嵌合一体とされている。この円筒部8aの一端部には中心軸に垂直な円板部8bが連成されている。円板部8bは、外向鍔状に形成されるとともに、その車体側面に環状磁石9が固着されている。この環状磁石9としては、例えば、ゴム材或いは樹脂材(図例はゴム材)に磁性粉を混練して環状に成型し、その周方向に多数のN極及びS極を交互に着磁した環状多極磁石が用いられるが、焼結体からなる環状多極磁石も使用可能である。そして、前記外輪部材2の車体側端部の内径面2aには、非磁性の鋼板を後記する製造方法によって折り曲げ加工して得られたカバー10が、前記環状磁石9に近接し、かつ、この環状磁石9を覆うように装着されている。図例のカバー10は、前記外輪部材2の内径面2aに車体側から嵌合される円筒部11と、該円筒部11の車体側端部に前記外輪部材2の車体側端部を塞ぐように連成された蓋部12とを備えた有底筒状の形状とされている。該蓋部12には、その前記環状磁石9に対向する部分が段付き部12aとされている。また、円筒部11と蓋部12との連成部分に相当する入隅形状の角部11aには、後記するように、ゴム等の成型材からなる環状のシール部13が一体に成型されている。前記カバー10の外側(車体側)には、前記環状磁石9に対向し、前記カバー10を前記環状磁石9との間に介在させるよう磁気センサ20が設置されており、この磁気センサ20は、環状磁石9の回転に伴う磁気変化を検出する。前記カバー10は、環状磁石9と磁気センサ20との間のエアギャップ部分に位置するので、環状磁石9が発する磁束が透過し得るよう、非磁性の鋼板、望ましくは、オーステナイト系ステンレス鋼板で製作される。
【0020】
本発明の第1の実施形態に係るカバーの製造方法及びプレス型を示す
図1(a)(b)を参照して、前記のようなカバー10を製作する要領を説明する。
図1(a)(b)は、互いに接離可能に構成された第1の金型31及び第2の金型32を備えるプレス型30を用いて、非磁性の鋼板100をプレス加工して前記構成のカバー10を製作する要領を示している。第1の金型31及び第2の金型32は、所望のカバー10の外側形状に対応する凹形状のプレス面31a及び同カバー10の内側形状に対応する凸形状のプレス面32aをそれぞれ備える凹型(雌型)及び凸型(雄型)とされ、矢印a方向に沿って互いに接離可能に構成される。前記第1の金型31及び第2の金型32のそれぞれのプレス面31a,32aは、前記カバー10の段付き部12aに対応するよう互いに対向する段差形状部31b,32bを含んでいる。この段差形状部31b,32bは、第1の金型31及び第2の金型32によってプレス加工される鋼板100の被プレス面100aの少なくとも一部に対向する。そして、第1の金型31及び第2の金型32は事前に脱磁処理が施されており、段差形状部31b,32b(クロスハッチング部参照)を含むプレス面31a,32aは、互いに対向する非磁化部とされている。ここに、非磁化部とは、磁気を帯びていない部位、又は鋼板100をプレス加工する際に磁化しない程度に弱い磁気しか帯びていない部位のことであり、非磁性の鋼板100をプレス加工によって塑性変形させる際に、鋼板100を磁化させないプレス面の部位を意味する。
【0021】
図1(a)に示すように、第1の金型31及び第2の金型32の間に、鋼板100を配し、不図示の駆動機構によって、第2の金型32を第1の金型31内に嵌め合わせるように、両金型31、32を接近させる。両金型31,32間に配された鋼板100は、金型31,32の嵌め合いによる両プレス面31a,32aの作用を受け、プレス面31a,32aの形状が転写される。すなわち、鋼板100には塑性変形を伴う折り曲げ加工が施されて、
図1(b)に示すような円筒部11及び蓋部12を備えた有底形状のカバー10が得られる。段付き部12aは、鋼板100に前記段差形状部31b,32bの形状が転写され段差形状部31b,32bに対応する部分が大きく塑性変形することによって形成される。ここで、非磁性の鋼板100であっても、塑性変形する程、磁化し易くなる特性に変わるため、磁気を帯びた部位で鋼板100がプレスされると鋼板100に残留磁気が増加する。しかし、本実施形態では、鋼板100に接するプレス面31a,32aは、非磁化部とされているから、段付き部12aに大きな塑性変形がなされ磁化し易い状態になっても、段付き部12aに接する部分は非磁化部であるため、段付き部12aの残留磁気が増加することは抑制される。したがって、製品化されたカバー10を個々に脱磁処理をしなくても良く、カバー10の製造効率の向上が図られる。また、第1の金型31及び第2の金型32全体が脱磁処理されているため、プレス面31a,32a全体が非磁化部となっており、鋼板100全体を対象として残留磁気の発生を抑制できる。
なお、この実施形態では、第1の金型31及び第2の金型32の全体に脱磁処理が施されているが、これに限らず、少なくともカバー10として使用されるときに磁気が透過する鋼板100の部位に接するプレス面31a,32aの部分が非磁化部とされていればよく、例えば、プレス型30の段差形状部31b,32bにのみ脱磁処理を施しても良い。また、段差形状部31b,32bを含むさらに広い範囲のプレス面31a,32aに、脱磁処理を施しても良い。
【0022】
このように製作されたカバー10は、
図7に示すように、円筒部11を外輪部材2の車体側内径面2aに車体側から嵌合することにより、外輪部材2の車体側開口部を塞ぐように装着される。したがって、前記シールリング7とともに前記軸受空間Sの車体側及び車輪側端部が密封され、外部からの軸受空間S内への泥水や塵埃等の侵入が防止され、あるいは、軸受空間Sに充填された潤滑剤の外部への漏出が防止される。特に、車体側においては、環状磁石9をも覆うようにカバー10が装着されるから、環状磁石9に塵埃等のアタックによる損傷が生じず、環状磁石9の長寿命化が図られる。そして、カバー10が外輪部材2に装着された状態で、前記段付き部12aは、環状磁石9の車体側面に対向するよう位置しており、環状磁石9から発生する磁気は段付き部12aを透過して、車体側に設置された磁気センサ20によって検出される。前記プレス型30によるプレス加工の際、段付き部12aに対応する段差形状部31b、32bは非磁化部とされているから、段付き部12aにおける残留磁気の増加が抑制される。したがって、環状磁石9から発生した磁気は、当該カバー10を透過しても影響が及ばされず、磁気センサ20は内輪部材6の回転に伴う磁気変化を正確に検出することができる。また、カバー10がこのような段付き部12aを備えることによって補強され、外輪部材2の車体側端部に圧入によって嵌合する場合等において、変形することが抑制される。
【0023】
図2(a)(b)は、本発明の第2の実施形態に係るカバーの製造方法及びプレス型を概略的に示す図である。
図2(a)(b)も、矢印a方向に沿って互いに接離可能に構成された第1の金型31及び第2の金型32を備えるプレス型30を用いて、非磁性の鋼板100をプレス加工して前記構成のカバー10を製作する要領を示している。そして、この実施形態の第1の金型31及び第2の金型32の形状も、前記第1の実施形態の各金型の形状と同じであるが、非磁化部の構成が異なる。即ち、本実施形態では、前記第1の金型31及び第2の金型32の段差形状部31b、32bに対応する箇所に、環状の非磁性体31c、32cがインサートされている。この非磁性体31c、32cは、一部露出することによりプレス面31a,32aの一部である段差形状部31b、32bを構成している。したがって、プレス面31a,32aには、その一部に、前記と同義の互いに対向する非磁化部が構成されている。
【0024】
図2(a)に示すように、この実施形態においても、第1の金型31及び第2の金型32の間に、鋼板100を配し、不図示の駆動機構によって、第2の金型32を第1の金型31内に嵌め合わせるように、両金型31、32を接近させる。両金型31,32間に配された鋼板100は、金型31,32の嵌め合いによる両プレス面31a,32aの作用を受け、塑性変形を伴い折り曲げ加工されて、
図2(b)に示すような円筒部11及び蓋部12を備えた有底形状のカバー10が得られる。この塑性変形の際に、前記段差形状部31b,32bにおいて、鋼板100が大きく塑性変形して前記と同様に段付き部12aが形成される。この段差形状部31b,32bに対応する箇所には、非磁性体31c、32c(例えば、SUS304、アルミニウム、樹脂、チタニウム等)がインサートされている。非磁化体31c,32cは、第1の金型31及び第2の金型32の磁性部分と段付き部12aとの間に、鋼板100に影響を与えない程度にまで磁気を弱めることができる距離を確保可能な形状に形成されている。したがって、段差形状部31b,32bは非磁化部とされているから、鋼板100に大きな塑性変形がなされても、形成される段付き部12aの残留磁気が増加することが抑制される。したがって、製品化されたカバー10を個々に脱磁処理をしなくても良く、カバー10の製造効率の向上が図られる。
その他の構成及び作用効果は、第1の実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
図3は、前記第1及び第2の実施形態の製造方法に成型工程が付加されたカバーの製造方法の一形態(以下、第3の実施形態と言う)を示している。この第3の実施形態は、前記折り曲げ工程を実施した後、折り曲げ加工後の鋼板の形状に沿うように形成され、かつ、少なくとも前記磁気が透過する部位に接する部分が非磁化部とされた合わせ面を有する成型型を用い、成型材を一体に成型する成型工程をさらに備えている。図例の成型型40は、磁性体製の上型41と下型42とからなる。下型42のキャビティ42aは、前記折り曲げ加工によって形成された円筒部11と蓋部12の一部を収容し、かつ、円筒部11と蓋部12との連成部分に相当する角部11aに対応する部位に空所42bを有する形状とされている。そして、上型41を下型42に型締めして、不図示の注入口より未加硫のゴム材(成型材)を前記空所42bに注入して加硫硬化させることによって、前記角部11aに前記成型材による成型体としてのシール部13を一体に形成するよう構成されている。このように、前記角部11aにシール部13が成型されたカバー10を、
図7に示すように外輪部材2の車体側端部に装着したとき、シール部13が、外輪部材2の車体側内径面2bと、カバー10の前記角部11aとの間に圧縮された状態で介在する。したがって、前記円筒部11と当該内径面2bとの嵌合面を経た泥水等の軸受空間S内への侵入が防止される。
【0026】
前記上型41及び下型42は磁性体からなり、該上型41及び下型42には、事前に脱磁処理が施されている。したがって、カバー10の段付き部12aに対応する合わせ面41c,42cは前記と同義の非磁化部とされている。したがって、このような成型型40を用いて、前記折り曲げ加工によって製作されたカバー10(折り曲げ加工後の鋼板)の前記角部11aに前記未加硫のゴム材を成型してシール部13を形成する際に、上型41及び下型42の合わせ面41c,42cがカバー10に接しても、カバー10の残留磁気の増大を抑制することができる。なお、上型41及び下型42の全体を脱磁処理するものに限らず、合わせ面41c,42cにのみ脱磁処理を施してもよいし、合わせ面41c,42cを含む広い範囲に脱磁処理を施しても良い。
【0027】
図4は、前記成型工程が付加されたカバーの製造方法の他の形態(以下、第4の実施形態と言う)を示している。この第4の実施形態においても、成型型40は、前記と同様に磁性体製の上型41と下型42とからなる。また、下型42のキャビティ42aも、第3の実施形態のキャビティ42aと同様の形状とされ、第3の実施形態と同様に、不図示の注入口より未加硫のゴム材(成型材)を前記空所42bに注入して加硫硬化させることによって、前記角部11aに前記成型材による成型体としてのシール部13を一体に形成するよう構成されている。しかし、前記上型41及び下型42における前記カバー10の段付き部12aに対応する部位の合わせ面41c,42cには、環状の非磁性体41d,42dが、露出するようインサートされ、この非磁性体41d,42dの露出部分が前記と同義の非磁化部とされている。したがって、このような成型型40を用いて、前記折り曲げ加工によって製作されたカバー10(折り曲げ加工後の鋼板)の前記角部11aに未加硫のゴム材を成型してシール部13を形成する際にも、成型型40の型締めによるカバー10の残留磁気の増大を抑制することができる。
【0028】
図5は、第1及び第2の実施形態(図例は、第1〜第4の実施形態)の製造方法に付加される検査工程の一形態を示す部分破断断面図である。製品化されたカバー10は、検査工程において、残留磁気の測定がなされる。図例の検査装置50は、軸心bの回りに回転するチャック式の検査台(治具)51と、ガウスメータ52とからなる。検査台51は、複数の分割部材51aからなり、各分割部材51aは軸心bを中心とする径方向に移動可能とされている。該分割部材51aを、遠心方向に変位させることによって、カバー10の円筒部11の内面に圧接させ、これによってカバー10が検査台51に固定される。この固定状態では、カバー10の前記段付き部12aが、分割部材51aの上面部51bに支持される。そして、前記ガウスメータ52の検出面を段付き部12aの上面に近接させた状態で、検査台51を不図示の駆動装置によって軸心bの回りに回転させながら、前記ガウスメータ52によって残留磁気の測定がなされる。検査台51は、全体又は少なくとも前記上面部51bを含む部位が弱磁性又は非磁性体(例えば、SUS304、アルミニウム、樹脂、或いは、チタニウム)からなり、これによって、カバー10を検査台51に固定して残留磁気を検出する過程で、カバー10に残留磁気が増大することを抑制することができる。なお、検査台51が磁性体からなるものである場合は、検査台51に脱磁処理を施すことで、少なくとも前記上面部51bが非磁化部となるように構成しても良い。また、脱磁処理を施す対象は、検査台51全体に限らず、例えば、上面部51bのみに脱磁処理を施しておいても良い。
なお、
図5は、成型工程(第3、第4の実施形態)を経た後のカバー10について、その残留磁気を検出しているが、実際には、
図6に示すように、プレス工程(折り曲げ加工)がなされた後で、成型工程の前にも残留磁気の検出がなされることが望ましい。
【0029】
図6は、前述した本発明のカバーの製造方法の手順を概略的に示すフロー図である。
図6において、工程S1で鋼板100のプレス型30への受け入れがなされ、工程S2で前記プレス型30による折り曲げ加工がなされる。工程S3では、工程S2で製作されたカバー10の残留磁気が、
図5に示す検査装置によって測定される。工程S4では、前記シール部13の成型がなされ、工程S5で、シール部13を備えたカバー10の残留磁気の測定がなされる。なお、シール部13を成型しない場合は、工程S3で終了する。
【0030】
図8は、本発明の製造方法によって得られるカバーの変形例であって、
図7に示す例とは異なる装着対象にカバーが装着された状態の要部の断面図である。
図7の例では、カバー10が外輪部材2の車体側端部に装着されて、外輪部材2の車体側開口部を塞ぐように構成されているが、
図8の例では、カバー10が、環状磁石9を固着する補強環8の円板部8bの外周縁部8cに加締められるよう装着されている。即ち、本例のカバー10は、前記と同様に非磁性の鋼板を折り曲げ加工して製作され、前記円板部8bの外周縁部8cに加締めによって装着される短寸の円筒部14と、該円筒部14の車体側端部から内向き(求心側)に連成された環状円板部15とから構成される。この環状円板部15は、カバー10が外周縁部8cに装着された際には、前記環状磁石9の車体側面に接するように構成される。したがって、環状磁石9から発生する磁気は、該環状円板部15を透過して磁気センサ20(
図7参照)によって検出される。また、円筒部14及び環状円板部15により環状磁石9の大半が覆われるから、外部から侵入する塵埃等による環状磁石9の損傷が防止され、その長寿命化が図られる。
【0031】
この例のカバー10も、不図示のプレス型を用いて非磁性の鋼板を折り曲げ加工することによって製作される。プレス型の形状は、この例のカバー10の形状に整合する形状のものが用いられることは当然であるが、当該プレス型における環状円板部15に相当する部位には、前記と同様に、事前の脱磁処理や、非磁性体のインサートによる互いに対向関係の非磁化部が形成される。したがって、前記と同様に、製作された製品としてのカバー10を個々に脱磁処理をすることを必要とせず、製造効率の向上が図られる。
【0032】
なお、前記各実施形態では、カバー10をオーステナイト系ステンレス鋼板から製作する例を示したが、本発明のカバーを製作する際に用いられる金属板はこれに限らない。非磁性の金属板であるならばよく、例えば、アルニウム、銅、真鍮等の金属板でも良い。また、プレス型を用いて折り曲げ加工してカバーを製作した例について述べたが、これに限らず、例えば、成形機具としてへら絞り加工装置を用い、鋼板を同様に塑性変形させてカバーを製作するようにして良い。この場合も、へら絞り加工装置による加工時に少なくとも鋼板に接する部分(例えば、金型や押圧ローラ等)が、前記と同様に非磁化部とされていることが肝要である。また、カバーの形状は、図例のものに限定されず、例えば、第1及び第2の実施形態におけるカバー10の蓋部12が段付き部12aを有さない平坦な形状であっても良い。また、本発明の製造方法によって製作されるカバーは、段付き状のもに限らず、例えば、段付き部12aに替えて、径方向断面形状がテーパ形状となるような縮径部を形成しても良い。また、成型工程で用いる成型型40は、特に限定されず、種々の形式のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
6 内輪部材(回転部材)
9 環状磁石
10 カバー
12a 段付き部
100 鋼板(金属板)
20 磁気センサ
30 プレス型(成形機具)
31 第1の金型
32 第2の金型
31a,32a プレス面
31b,32b 段差形状部
31c,32c 非磁性体
40 成型型
41c,42c 合わせ面
51a 検査台(検査装置の治具)
13 シール部(成型材による成型体)