【実施例】
【0022】
図1は本発明の一実施例を示す泥土圧シールド掘削機の全体構成図、
図2は同じく泥土圧シールド掘削機の正面図、
図3は
図1のA−A断面図、
図4は同じく内周カッタの作動状態を示す泥土圧シールド掘削機の要部拡大図、
図5は同じく内周カッタと外周カッタの連結構造の説明図である。
【0023】
図1乃至
図3に示すように、泥土圧シールド掘削機(トンネル掘削機)の筒状をなす掘削機本体10のバルクヘッド11にはカッタヘッド12が回転自在に支持されると共に、このカッタヘッド12は外周カッタ12Aとその中央に位置する内周カッタ(中央切削カッタとも謂う)12Bとに同心円状に分割形成される。
【0024】
前記外周カッタ12Aは、その回転中心から放射状をなして周方向へ複数本(図示例では長,短合せて16本)に亘って配設されるカッタスポーク13が中間リング14と外周リング15とに固定されてなる。カッタスポーク13及び外周リング15の前面部には多数の各種カッタビット16が取着されている。また、周方向に等配された4本のカッタスポーク13には、カッタヘッド12の径方向(カッタスポーク13の長手方向)へ油圧ジャッキ17により伸縮(出没)可能に、コピーカッタ18が装着される。
【0025】
また、外周カッタ12Aは、前記中間リング14部において、中間ビーム19及びカッタドラム20を介してベアリング21により回転自在に装着される。このベアリング21は外周カッタ12Aに作用する負荷の内のスラスト力とラジアル力とモーメント力の三軸方向の荷重を担持するリングギア付き三軸コロ軸受からなる。
【0026】
そして、前記ベアリング21のリングギア部21aには、複数個(図示例では26個)からなる駆動モータ(回転駆動手段)22の駆動ギア23が噛み合っている。従って、駆動モータ22の駆動により駆動ギア23が回転すると、ベアリング21のリングギア部21aを介して外周カッタ12Aが回転駆動される。このベアリング21と駆動モータ22はベアリングハウジング24を介してバルクヘッド11に支持される。
【0027】
前記内周カッタ12Bは、その回転軸25が、バルクヘッド11に円盤状フレーム59を介して固設された外周カッタ用ロータリジョイント26の図示しない固定リングに回転自在で且つ前後方向にスライド可能に支持されてなる。
【0028】
前記ロータリジョイント26の外周からは、略L字状の複数本の筒状フレーム58が放射状に延出され、それらの先端部が外周カッタ12Aの複数本のカッタスポーク13にそれぞれ接続されている。そして、各筒状フレーム58内には、前記コピーカッタ18の油圧ジャッキ17に対し圧油を給排したり、前記カッタスポーク13の加泥注入口43へ加泥剤を供給したり、前記各種カッタビット16の摩耗を検知する信号等を送信するための図示しない配管、配線が通される。尚、前記ロータリジョイント26から掘削機本体10側への前記配管、配線は円盤状フレーム59と後述する支持筒部40内を通される。
【0029】
前記回転軸25の前端には筒部27を介してフィッシュテールカッタ28が取着されると共に、筒部27の外周から放射状をなして周方向へ複数本(図示例では4本)に亘ってカッタスポーク29が配設され、それらの先端が外周リング29aで連結されている。カッタスポーク29の前面部には多数の各種カッタビット30が取着されている。
【0030】
そして、点対称位置の2本のカッタスポーク29には、カッタヘッド12の径方向(カッタスポーク29の長手方向)へ伸縮(出没)可能に、後述するコピーカッタ31が装着される。また、カッタスポーク29の後面部には複数本の撹拌翼34が取着され、前記バルクヘッド11により画成されたチャンバ33内に取り込まれた土砂に後述する内周カッタ用ロータリジョイント42を介して供給される加泥剤を加えて撹拌し、泥土化し得るようになっている。
【0031】
前記コピーカッタ31は、
図5に示すように、前述したカッタスポーク29の内部に、当該カッタスポーク29の長手方向に沿って、筒状ケーシング61が補強リブ60を介して固設される。この筒状ケーシング61内に、コピーカッタビット兼係止棒32aが、油圧式のコピーカッタジャッキ32bにより当該カッタスポーク29の外端面から出没可能に、収装される。尚、図中62はコピーカッタビット兼係止棒32aに嵌装されたリングシールである。
【0032】
そして、前記外周カッタ12Aにおいては、点対称位置の2本のカッタスポーク13の内部に、当該カッタスポーク13の長手方向に沿って、筒状ケーシング(シリンダ)64が補強リブ63を介して固設される。この筒状ケーシング64内に、前記コピーカッタビット兼係止棒32aが挿抜可能に当該カッタスポーク13の内端面に開口された係合孔57を閉塞するピストン体(栓部材)65が、前記コピーカッタビット兼係止棒32aの挿抜に応動して、進退可能に収装される。
【0033】
図示例では、ピストン体65が圧縮ばね66により常に前進方向(係合孔57を塞ぐ方向)に付勢され、その前進限は、当該ピストン体65の先端面とカッタスポーク13の内端面とが面一になるように、筒状ケーシング64内周面とピストン体65外周面の段付き面で構成されるピストン体係止部67で規制されるようになっている。前記圧縮ばね66は、ピストン体65の断面に作用する土圧、水圧より大きな力をばね力として保持するように設定される。尚、図中68はばね受けで、69はピストン体65に嵌装されたリングシールである。
【0034】
一方、回転軸25の後端には、カッタドラム35を介してベアリング36が連接される。このベアリング36は内周カッタ12Bに作用する負荷の内のスラスト力とラジアル力とモーメント力の三軸方向の荷重を担持するリングギア付き三軸コロ軸受からなる。
【0035】
そして、前記ベアリング36のリングギア部36aには、複数個(図示例では3個)からなる駆動モータ(回転駆動手段)37の駆動ギア38が噛み合っている。従って、駆動モータ37の駆動により駆動ギア38が回転すると、ベアリング36のリングギア部36aを介して内周カッタ12Bが回転駆動される。
【0036】
前記ベアリング36と駆動モータ37はベアリングハウジング39に支持され、このベアリングハウジング39はバルクヘッド11の支持筒部40内を油圧式のスライドジャッキ41により支持部材70に反力をとって前後方向(掘進方向)にスライド可能になっている。また、支持筒部40には、ベアリングハウジング39が内周カッタ12Bの回転反力を取りながらスライドすることができるように、図示しない回転止め付きガイドが装備されている。さらに、前記ベアリングハウジング39には、前記コピーカッタ32の油圧ジャッキ31に対し圧油を給排したり、内周カッタに前述した加泥剤を供給したりするための内周カッタ用ロータリジョイント42の図示しない固定リングが支持されている。
【0037】
前記掘削機本体10の内部には左右一対のスクリューコンベヤ44が配設され、カッタヘッド12で掘削された土砂をトンネルの後方へ排出可能になっている。即ち、各スクリューコンベヤ44の前端部(取出口)がバルクヘッド11の下部を貫通してチャンバ33に開口すると共に、後下部に設けた排出口(ジャッキ45駆動のゲート46で開閉される)がトンネル内の長手方向に配設された図示しないベルトコンベア上に対向するのである。このスクリューコンベヤ44は、後上がりに傾斜して配置された円筒管44aの内部に、駆動モータ44bによって回転可能にスクリュー翼44cが装着されてなる。
【0038】
前記掘削機本体10の内周部には、覆工部材としてトンネルの内周面に構築された(組み立てられた)既設のセグメントSに対し伸縮し得る推進ジャッキ47が円周方向へ所定間隔離間して多数本(図示例では50本)配設される。また、掘削機本体10の後端部(スキンプレート)は、テールシール48を介して前記既設セグメントSの外周に嵌合している。また、掘削機本体10の後部にはリングガータ56を介して前記セグメントSを組み立てるエレクタ49と後方張出台50が組み付けられ、この後方張出台50上に、組み立てたセグメントSの真円保持を行うセグメントアジャスタ51や旋回式組立足場52が装備される。尚、
図1中53は外周カッタ12Aの後面部から突出した複数本の撹拌翼で、54はバルクヘッド11の前面部から突出した複数本の撹拌翼である。
【0039】
このように構成されるため、泥土圧シールド掘削機による掘削にあたっては、先ず、全ての推進ジャッキ47が縮んだ初期位置(
図1の状態)で、駆動モータ22及び37を駆動してカッタヘッド12を回転させる。つまり、外周カッタ12Aと内周カッタ12Bを伴に回転させるのである。
【0040】
次に、前記状態から全て又は任意の推進ジャッキ47を伸ばして掘削機本体10を1ストローク推進(前進)させる。この際、推進反力は既設セグメントSで受ける。そして、この推進により、カッタヘッド12に装着された多数の各種カッタビット16及び30が前方の地盤を掘削する。掘削された土砂は、外周カッタ12Aにおいてはカッタスポーク13間に開口された土砂取込み口55Aから、また、内周カッタ12Bにおいてはカッタスポーク29間に開口された土砂取込み口55Bからそれぞれチャンバ33内取り込まれ、このチャンバ33内からスクリューコンベヤ44等によって外部に排出される。
【0041】
次に、カッタヘッド12の旋回を止めた状態で、推進ジャッキ47を部分的に順次縮めてエレクタ49及びセグメントアジャスタ51によりセグメントSを組み立てると共にその真円保持を行う。以降、前述した工程を繰り返して、所定長さのトンネルを掘削・形成していく。
【0042】
そして、上記一連の掘進下において、外周カッタ12Aの突出状態にあるコピーカッタ18によりトンネルの余掘りが可能となっていると共に、内周カッタ12Bの突出状態にあるコピーカッタ31により内周カッタ12Bの外周と外周カッタ12Aの内周との隙間が掘削可能となっているので掘削効率が高められる。
【0043】
また、内周カッタ12Bにおけるカッタスポーク29の後面部には複数本の撹拌翼34が取着されているので、筒状フレーム58による撹拌効果と相俟って、チャンバ33内における内周カッタ12B付近の土砂の流動性及び泥土化が向上し、内周カッタ12Bにおける前述した土砂取込み口55Bからの土砂の取込み性が一段と向上する。これによって、アジテータ及びこれの駆動モータ等を用いないで済む。
【0044】
また、内周カッタ12Bの回転軸25上に嵌装された外周カッタ用ロータリジョイント26の外周から放射状に延出した複数本の筒状フレーム58を外周カッタ12Aの複数本のカッタスポーク13にそれぞれ接続して該筒状フレーム58内に少なくとも加泥剤の供給配管を通したので、外周カッタ12Aの各カッタスポーク13における効果的な位置から加泥剤を切羽やチャンバ33内に供給でき、効率良く泥土化が図れる。これにより、大断面のトンネルを掘削するのに好適となる。
【0045】
また、万が一、内周カッタ12Bの駆動系が故障して回転不能になった場合は、先ず、
図5の(a)に示すように、コピーカッタ31のコピーカッタビット兼係止棒32aをコピーカッタジャッキ32bの収縮により一旦縮めた後、
図4に示すように、スライドジャッキ41を収縮して内周カッタ12Bを外周カッタ12Aと面一になるまで後退させる。この時、ピストン体65は依然として係合孔57を塞いだままであり、土砂水の侵入は阻止されている(
図5の(a)参照)。
【0046】
その後、外周カッタ12Aを回転させて、所定の回転位相合せ手段により、外周カッタ12Aの内周面(厳密にはカッタスポーク13の内端面)に形成した係合孔57が前記コピーカッタ31のコピーカッタビット兼係止棒32aと位相が一致したら、
図5の(b)に示すように、当該コピーカッタビット兼係止棒32aをコピーカッタジャッキ32bの伸長により再び突出させてその先端側半部を前記係合孔57に挿入すれば、内周カッタ12Bと外周カッタ12Aが相互の筒状ケーシング61,64を介して連結される。これにより、内周カッタ12Bと外周カッタ12Aは外周カッタ駆動用の駆動モータ22により一体回転され、内周カッタ12Bの空転等が未然に回避される。この時も、係合孔57はコピーカッタビット兼係止棒32aとこれに押圧されて圧縮ばね66の付勢力に抗して後退するピストン体65により塞がれ、土砂水の侵入は阻止される。
【0047】
また、内周カッタ12Bを前方へスライドさせた状態の仮壁掘進時等において、大きな推進力が内周カッタ12Bに過負荷した場合は、これをスライドジャッキ41のストロークセンサや油圧センサ等で検知して、内周カッタ12Aをスライドジャッキ41の収縮により後方へスライドさせるので、内周カッタ12Bの過負荷を効果的に吸収することができ、内周カッタ12Bの破損等を未然に回避できる。この際、コピーカッタ32を突出させた状態のまま外周カッタ12Aの直前まで後退させても良いし、コピーカッタ32を縮めた状態のまま内周カッタ12Bを外周カッタ12Aと面一になるまで後退させても良い。
【0048】
また、内周カッタ12Bを前方へスライドさせた状態では、芯抜き効果と加泥剤撹拌向上効果により高速掘進時のトルク低減が図れる一方、内周カッタ12Bを後方へスライドさせた状態では、立坑組立時の機長短縮が図れるという利点も得られる。
【0049】
そして、本実施例では、内周カッタ12Bと外周カッタ12Aを各々独立した駆動モータ22,37で回転させるので、特許文献1のように差動歯車機構や内,外周の爪車等からなる回転動力伝達手段を用いる場合と比べ、駆動系の簡略化により信頼性を高められると共にコストダウンが図れる。
【0050】
また、内周カッタ12Bの回転速度を外周カッタ12Aの回転速度如何に拘わらず任意に上昇させられるので、例えばφ16mの大口径のカッタヘッド12であっても、掘削効率や撹拌効率を高められ、カッタ全体のカッタトルクや電力量の低減が図れるという利点もある。
【0051】
また、内周カッタ12Bと外周カッタ12Aは伴にバルクヘッド11に各々独立して支持されるので、特許文献1及び2のように内周カッタ部が外周カッタ部に内装されて個別駆動される場合と比べ、外周カッタ12Aの駆動モータ22の負荷が、内周カッタ部の重量分だけ軽減できる利点もある。
【0052】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、カッタスポーク13,29及びコピーカッタ18,32の本数変更やピストン体65を圧縮ばね66で付勢する代わりに空気ジャッキや油圧ジャッキで駆動する構造に変更する等各種変更が可能であることはいうまでもない。また、本発明は面盤を有するカッタヘッドにも適用することができる。