(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に配慮した様々な環境技術が提唱されている。照明分野においても例外ではなく、省エネルギー化のための様々な技術が提案されている。照明分野の中でも、建物内部の明るさ確保に関して、特許文献1から特許文献4において開示されているような技術が存在する。
【0003】
特許文献1は、室内における昼光調節装置を開示し、この装置には鏡面反射性の表面を持つ成形体が複数上下方向に配置される。成形体の間には外側採光孔と内側採光孔が形成され、外部からの光を室内に導く。
【0004】
特許文献2は、小型軽量の棚状の昼光システムを開示しており、このシステムは複数の同一形状の光反射要素を備えている。当該要素は、上面の光反射手段と、低高度の光を遮る光遮蔽手段と、隣接した要素から到来した光の方向を変える手段とを備えている。
【0005】
特許文献3は、複層ガラスの内部に封じ込められたブラインドのルーバーの一方面に、光を電気に変換する太陽電池セルを装着する技術を提案している。ここでは、ルーバーの他方面に光を反射してその反射光を室内に取り込む採光面部が形成される。これにより、従来の複層ガラスの機能(断熱・防音・防犯など)に加えて、室内への採光及び太陽光発電の双方を適切に行うことを狙っている。
【0006】
特許文献4は、換気作用を有するモニター屋根に、建屋内への自然採光作用を持つ機構を取り付ける技術を開示している。建物最上部の上開口部から入射した自然光は、拡散反射用シート材や鏡面反射用シート材で反射しながら下開口部に導かれ、ルーバーユニットを通過して建屋内へ拡散される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の採光ルーバーユニットの好適な実施形態を、図面に基づいて詳述する。
【0013】
図1は、一実施形態の採光ルーバーユニット1が、建物100の壁110付近に備え付けられた状態を示す図である。採光ルーバーユニット1は、建物100の壁110に配置可能であって、外部の自然光NLを当該建物100の内部に導入するための装置である。近年、地球環境に配慮した様々な環境技術が提唱されているが、採光ルーバーユニット1もそのような環境技術の一つであり、建物100の屋外Oから到来し、建物100の内部(室内)Rに進入する自然光NLを最大限利用することにより、建物内部の照明用電力を減らし、省エネルギー化を図る技術である。
【0014】
自然光NLは太陽光であるが、時刻や季節などの要因により、太陽高度および方位は変化し、その進行方向や強度は変化する。このような状況下で、採光ルーバーユニット1は自然光NLを最大限利用し、建物100の内部Rの奥まで光を届けることを狙っている。
【0015】
採光ルーバーユニット1は、建物100の壁110に配置されたガラス120に、数mmの間隔をもって配置されている。特に本実施形態の採光ルーバーユニット1は、当該階層の壁110及びガラス120の上部に配置され、導入した自然光NLを効率的に建物100の内部Rの天井面130に向けて供給する。採光ルーバーユニット1の下方には、木製のブラインド150が設けられている。しかしながら、採光ルーバーユニット1の配置される場所は、図示した場所には限定されない。
【0016】
天井面130に供給された自然光NLは、天井面130にて反射し、建物100の内部Rの奥まで届けられる。自然光NLを効率的に反射するため、天井面130に反射板、反射フィルムなどを設置してもよい。
【0017】
図2は、採光ルーバーユニット1の分解斜視図を示す。採光ルーバーユニット1は、基本的に、箱型の筺体10と、この筺体10に収納された複数のルーバーとから構成される。さらに本実施形態においては、光拡散部材50が、筺体10の内部に配置される。光拡散部材50については後に詳しく説明する。
【0018】
筺体10は、6面を備えた直方体から構成され、その内部に複数のルーバー30を収納し、高い光の反射率が要求されるルーバー30に対し埃などが付着するのを防止する役割を果たす。筺体10のサイズは、たとえば長さL(1800mm)×高さH(700mm)×奥行きD(85mm)、に設定されるが特に限定はされない。
【0019】
筺体10の材料も特に限定はされないが、光の通過のため、第1の面11および第2の面12の各々の少なくとも一部は、ガラスなどの透明部材によって構成される必要がある。本実施形態においては、第1の面11および第2の面12の全面が、ガラスによって構成されている。ルーバー30と光拡散部材50の収納のため、第2の面12は、矢印S方向に回転可能である。
【0020】
筺体10の内部においては、筺体10の高さ方向に、所定の間隔をおいて複数のルーバー30が配置されている。ルーバー30は、筺体10の第1の面11から導入された自然光NLを第2の面12、ひいては建物100の内部Rの側へ供給する役割を果たす。各ルーバー30は、その長手方向に沿って互いに略平行に延びるように、筺体10の内部に配置されている。
【0021】
さらに本実施形態においては、
図2において点線で示したように、ルーバー30の長手方向における所定の位置に、ルーバー30の撓みを防止するためにルーバー支持部材70が設けられている。本実施形態では、ルーバー支持部材70は、ルーバー30の長手方向における略中央位置に設けられている。
【0022】
図3は、
図1における、採光ルーバーユニット1周辺の領域の拡大図である。採光ルーバーユニット1は、締結具140を介して建物100の一部に取り付けられている。
図3に示すように、ルーバー支持部材70は、二つのルーバー30間またはルーバー30と筺体10との間に配置された複数の支持部材片71から構成される。ルーバー支持部材70と支持部材片71については後に詳しく説明する。
【0023】
ルーバー30は略三角形状の断面を呈し、アルミニウムの如き金属部材で構成されているが、光を反射可能な表面加工が施されているものならば、その材料は特に限定はされない。ルーバー30の表面は、元の材料のままであってもよいし、光反射のための特殊な加工を施してもよい。光反射フィルムをルーバー30の表面に貼付してもよい。
【0024】
図4は、二つのルーバー30の間に確定された光伝送路(チャネル)CHを示す図である。ルーバー30の基本的な機能は、2つのルーバー30の間に確定された光伝送路CHによって発揮される。光伝送路CHは、第1と第2のルーバー30の4つの面A、B、CおよびDによって画定される。面A、CおよびDは、いわゆる天頂アニドリック(anidolic)集光器と類似の断面の形状(プロファイル;profile)を構成する。ルーバー30の断面形状、すなわちルーバー・プロファイルは、ルーバー30の長手方向に沿って一定であるが、一定であることは必須ではない。
【0025】
ルーバー・プロファイルは、前縁(点H)、後縁(点I)および頂点(点E)を有する略三角形を呈する。前縁(点H)および後縁(点I)は、面状(平面または曲面)により構成してもよい。
【0026】
面Aは、放物面反射面または放物集光面より構成され、進入開口CH1を通った入射光(自然光NL)を集め、小さい入口開口CH2によって反射されるように、光を入口開口CH2に導く。すなわち、仰角αが90°以下でこの放物面としての面Aに当たる光線が、入口開口CH2を適正に通過するよう、面Aは設計されている。
【0027】
仰角αの定義と、面Bで反射した後で入口開口CH2を通る90°の仰角αを有する光線L1の例とが
図4で示されている。
図4で示すように、この現象は、面A(放物面)の頂点(点F)が、放物面の曲線が面Dの端(点G)で交わるように焦点(点E)の真下の適切な距離にあるために起こる。
【0028】
面Bは平面により構成されている。面Bではね返された入射光が、面Aの方に向けられる。反射光が、面Aから90°以下の仰角で出る限り、面Aの放物面に当たり、入口開口CH2に入る(L1はその一例)。理想的には、面Bの水平に対する角度は45°であり、従って、水平方向の光は、面Bで真下の面Aの方に反射される。その場合、0°以上の仰角αを有するどの入射光も入口開口CH2内に適正に進む。
【0029】
入口開口CH2を通過した光線は、面CおよびDによって反射され、出口開口CH3から建物100の内部Rの天井面130に向けて供給される。面CおよびDは、いわゆる複合放物面集光器(CPC)を構成し、放出される光線の最大出力角度は、たとえば20°に設計される。従って、本実施形態のルーバーの出力範囲は、入射光の方向に関係なく、0°と水平から40°の間であるが、このような角度設定は特に限定はされない。
【0030】
図5は、本実施形態のルーバー30による自然光NLを建物100の内部Rに導入するイメージである(自然採光イメージ)。このようにして、建物内部における光の確保に関して、自然光NLの有効利用が図られる。
【0031】
図6は、ルーバー30とルーバー支持部材70を構成する複数の支持部材片71との分解斜視図を示す。
図2に示すように、複数のルーバー30は、その長手方向に沿って互いに略平行に延びるように、筺体10の内部に配置されている。ルーバー支持部材70は、ルーバー30の長手方向における略中央位置に設けられ、ルーバー30の曲がりや撓みを効果的に防止することができる。
【0032】
本実施形態においては、ルーバー支持部材70は、二つのルーバー30の間またはルーバー30と筺体10との間に配置された複数の支持部材片71から構成されている。
図6は、二つのルーバー30の間に配置された支持部材片71を示している。
【0033】
複数の支持部材片71の中の少なくとも一部であって、二つのルーバー30の間に配置されたものは、
図6に示す形状を有する。すなわち支持部材片71は、ルーバー30の二つの面に適合する二つの接合面を持つ本体72と、当該本体72から延びて、ルーバー30および他の支持部材片71aに形成された孔72aに挿入される棒状の接続部材73とを備える。
【0034】
支持部材片71は、アクリル樹脂などの透明材料によって形成された本体72と、ステンレスなどの金属材料よって形成された棒状の接続部材73とを接合して構成される。
【0035】
図3にも示すように、本体72は、その上面がルーバー30の面Bおよび面C(
図4)に適合する形状を有している。一方、本体72の下面は、ルーバー30の面Aおよび面D(
図4)に適合する形状を有している。このため、ルーバー30と支持部材片71の組み立て時にルーバー30と支持部材片71が強固に組みつけられると共に、ルーバー30による正確な自然光の導入効果が得られる。
【0036】
棒状の接続部材73は、本体72の下面から延びるよう本体72に接着剤などにより接合されている。ルーバー30と支持部材片71の組み立て時において、接続部材73は、ルーバー30の上下を貫通するように形成された円形状のルーバー孔30Aに挿入され、ルーバー孔30Aを貫通した後、他の支持部材片71の本体72に形成された円形状の孔72aに挿入される。
【0037】
本実施形態において、各部分の寸法は以下のように設定されているが、あくまで一例であり、特に限定はされない。
・本体72の直径:10mm
・棒状の接続部材73の直径:4mm
・ルーバー孔30Aの直径:4.5mm
・本体72の孔72aの直径4.5mm
【0038】
図7(a)は、採光ルーバーユニット1の上部における、ルーバー30とルーバー支持部材70の関係を示す断面図であり、
図7(b)は、採光ルーバーユニットの下部における、ルーバー30とルーバー支持部材70の関係を示す断面図である。さらに
図7(a)、(b)は、ルーバー30と筺体10との間に配置された支持部材片71b、71cを示している。支持部材片71b、71cは、
図6の支持部材片71、71aとは形状が異なる。
【0039】
支持部材片71b、71cは、それぞれ、締結具(ボルトとナット)13、14によって、筺体10に取り付けられる。この結果、ルーバー30が、筺体10に取り付けられることとなる。
【0040】
本実施形態において、複数のルーバー30が筺体10に組み込まれる際は、まず、
図7(b)に示すように、最下段のルーバー30aが、筺体10の両側面に図示せぬ締結具で取り付けられると同時に、その長手方向における略中央位置において、支持部材片71cおよび締結具14により筺体10に固定される。その後
図6に示すように、ルーバー30は、その略中央位置において支持部材片71によって固定されつつ、その両側面においても固定される。
【0041】
最後に、
図7(a)に示すように、最上段のルーバー30bが、筺体10の両側面に図示せぬ締結具で取り付けられると同時に、その長手方向における略中央位置において、支持部材片71bおよび締結具13により筺体10に固定される。
【0042】
しかしながら、採光ルーバーユニット1の組み立て方法は上述したものに限定されない。例えば、最初に複数のルーバー30の集合体としてルーバー組立体を形成し、この組立体を筺体10の内部に組み込んでもよい。
【0043】
図8は、
図3のYで示した領域において、ルーバー30に取り付けられた弾性部材80が光拡散部材50に接触している様子を示す図である。光拡散部材50は、ルーバー30の後縁(点I;
図4)と、筺体10の第2の面12との間に設けられる。そして、ルーバー30の後縁に取り付けられた弾性部材80が、光拡散部材50に接触するとともに、光拡散部材50を第2の面12の側へ付勢する。
【0044】
本実施形態においては、弾性部材80は、ルーバー30の長手方向に延びる円柱状の弾性材料(ゴムなど)によって構成されているが、その形状や材料は特には限定されない。弾性部材80が設けられる位置(ルーバー)は特に限定はされないが、一般的に建物100の内部Rの人から見て、視野に入りにくい位置に設けられる。
【0045】
図2に示すように、光拡散部材50は複数の透明の棒状部材51の集合体であり、各棒状部材51は断面が円形形状(例えば直径10mm)を有し、ルーバー30の長手方向に対して略垂直方向に延びている。ルーバー30の長手方向に複数の棒状部材51が隣接した状態で配置されている。各棒状部材51は透明のアクリル樹脂などによって構成されているが、光を透過させることができるものであれば、材料は特に限定されない。
【0046】
光拡散部材50を構成する棒状部材51は筺体の高さ方向に700mm程度の長さをもち、撓みがちである。しかしながら、本実施形態においては、弾性部材80が光拡散部材50に接触するとともに、光拡散部材50を第2の面12の側へ付勢するので、光拡散部材50の撓みが防止される。
【0047】
図9は、筺体10の第1の面の透明部材であるガラスに貼付された視野制御フィルム90を示す図である。視野制御フィルム90は、第1の面11の透明部材たるガラスの外側に貼付され、ポリエステル等の透明樹脂フィルムより構成されるが、その材料は特に限定はされない。視野制御フィルム90の透過率はたとえば86〜88%に設定されるが、特に限定はされない。
【0048】
図10は、視野制御フィルム90によるルーバー30からの外部の通行人への光の発射を防止する機能を示す図である。視野制御フィルム90は、特定の人から見た特定の視野角度における視界を制御する作用をもつ。視野制御フィルム90のこの作用により、通行人からは
図10の55°の角度で指定された範囲ではルーバー30を視認することができない。すなわち、視野制御フィルム90が貼付された範囲における建物100の内部は不透明となり、ルーバー30は通行人から見えなくなる。そして、ルーバー30から建物の外側へ反射された光は通行人に届かないため、ルーバー30による反射光が通行人にあたって、通行人が眩しさを感じるという事態が防止される。
【0049】
図11は、本実施形態の採光ルーバーユニット1による効果を示すグラフである。横軸が、建物の内部における窓面(壁)からの距離(m)であり、横軸は照度(ルクス;lux)である。このグラフから、本実施形態の採光ルーバーユニット1を使用することにより、従来のオフィスビルにおけるブラインドを全開にしたときに比べ、建物内部の奥までより安定した光量を導入することができることが理解される。
【0050】
実施形態の採光ルーバーユニット1はあくまで一実施形態である。例えば、ルーバー支持部材70を複数の支持部材片71によって構成するのではなく、一体の支持部材によって構成し、ルーバー30の撓みを防止するようにしてもよい。弾性部材80は、三角形状や矩形形状にしてもよい。視野制御フィルム90は、第1の面11の全面に必ずしも設ける必要はない。
【0051】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。