(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
計測対象の変位量を計測する変位量計測装置であって、
渦電流式変位センサと、
前記計測対象と導電率及び透磁率が同一又は略同一である比較対象と、
前記比較対象に磁場を印加した磁場印加比較対象と、
X軸を交流電圧の実数部分、Y軸を交流電圧の虚数部分としたX‐Y平面上に、前記渦電流式変位センサによって前記比較対象を任意の距離xで計測した交流電圧の値である第1計測値を点P(X
1,Y
1)、前記渦電流式変位センサによって前記磁場印加比較対象を前記距離xで計測した交流電圧の値である第2計測値を点Q(X
2,Y
2)としてプロットし、前記点Pと前記点Qとを通る直線を直線Rとし、さらに、前記渦電流式変位センサによって前記計測対象を一定時間計測した交流電圧の値である第3計測値群の複数の点をプロットし、当該複数の点のうち1つを点O(X
0,Y
0)とし、当該点Oと前記直線Rとの距離Lを、下記数式を用いて算出し、当該算出を前記第3計測値群の複数の点の全てについて行う垂線算出部と、
前記垂線算出部で算出した複数の前記距離Lの中に、所定値以上のものが存在するか否かを判断する判断部とを備えることを特徴とする変位計測装置。
【数1】
【数2】
【数3】
計測対象の変位量を計測する変位量計測方法であって、
前記計測対象と導電率及び透磁率が同一又は略同一である比較対象を、渦電流式変位センサによって任意の距離xで計測し、計測した交流電圧の値を第1計測値とし、前記比較対象に磁場を印加した磁場印加比較対象を、前記渦電流式変位センサによって任意の距離xで計測し、計測した交流電圧の値を第2計測値とする工程と、
X軸を交流電圧の実数部分、Y軸を交流電圧の虚数部分としたX‐Y平面上に前記第1計測値と前記第2計測値の2点をそれぞれP(X
1,Y
1)、Q(X
2,Y
2)としてプロットする工程と、
前記計測対象を前記渦電流式変位センサによって一定時間計測し、計測した交流電圧の値を第3計測値群とする工程と、
X‐Y平面上に前記第3計測値群の複数の点をプロットし、当該複数の点のうち1つを点O(X
0,Y
0)とし、前記点Pと前記点Qとを通る直線を直線Rとし、前記点Oと前記直線Rとの距離Lを、下記数式を用いて算出し、当該算出を前記第3計測値群の複数の点の全てについて行う工程と、
算出した複数の前記距離Lの中に、所定値以上のものが存在するか否かを判断する工程とを有することを特徴とする変位量計測方法。
【数4】
【数5】
【数6】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9のグラフは、渦電流式変位センサによるロータ周面の変位量の計測結果の一例である。当該グラフでは、横軸をロータの回転角度、縦軸をロータ周面の変位量の計測値として表しており、許容範囲の最大値を破線で表している。当該グラフでは、変位量の計測値の一部が許容範囲を超えてしまっているが、このとき、実際にロータの回転軸がずれている場合と、渦電流式変位センサのノイズによる場合とが考えられる。
【0006】
渦電流式変位センサのノイズの原因は、主にロータの材質斑である。ロータに材質の斑があると、磁気的に物性が不連続となり、回転角度によって透磁率が変化する。この透磁率の変化が渦電流式変位センサの計測に影響を与える。
【0007】
そのため、渦電流式変位センサによる計測値が許容範囲を超えたときには、別手法での再計測、要因調査、脱磁処理及び応力緩和処理などの追加作業が発生する。また、これらの処理が効かない場合は、ロータを破棄しなければならない可能性もあり、大きな損失に繋がる。よって、上述のノイズを低減することが重要となる。
【0008】
特許文献1には、差動トランス内部の1次コイルと2次コイルを、2個一組のヘルムホルツコイルと2個一組の検出用コイルの組み合わせとする技術が開示されているが、このような構成においても、検出に渦電流を利用するため、渦電流式変位センサと同様、計測値が透磁率の変化に影響される。
【0009】
そこで本発明では、計測対象の透磁率変化に起因する、渦電流式変位センサのノイズを低減し、変位量の計測に高い信頼性を有する変位計測装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1の発明に係る変位計測装置は、
計測対象の変位量を計測する変位量計測装置であって、
渦電流式変位センサと、
前記計測対象と導電率及び透磁率が同一又は略同一である比較対象と、
前記比較対象に磁場を印加した磁場印加比較対象と、
X軸を交流電圧の実数部分、Y軸を交流電圧の虚数部分としたX‐Y平面上に、前記渦電流式変位センサによって前記比較対象を任意の距離xで計測した交流電圧の値である第1計測値を点P(X
1,Y
1)、前記渦電流式変位センサによって前記磁場印加比較対象を前記距離xで計測した交流電圧の値である第2計測値を点Q(X
2,Y
2)としてプロットし、前記点Pと前記点Qとを通る直線を直線Rとし、さらに、前記渦電流式変位センサによって前記計測対象を一定時間計測した交流電圧の値である第3計測値群の複数の点をプロットし、当該複数の点のうち1つを点O(X
0,Y
0)とし、当該点Oと前記直線Rとの距離Lを、下記数式を用いて算出し、当該算出を前記第3計測値群の複数の点の全てについて行う垂線算出部と、
前記垂線算出部で算出した複数の前記距離Lの中に、所定値以上のものが存在するか否かを判断する判断部とを備えることを特徴とする。
【数1】
【数2】
【数3】
【0011】
上記課題を解決する第2の発明に係る変位計測装置は、
上記第1の発明に係る変位計測装置において、
前記計測対象はタービン又は圧縮機に備わるロータであり、
前記ロータの回転軸に対し計測方向が垂直となる角度に前記渦電流式変位センサが設置されることで、前記ロータの周面の変位量を計測することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第3の発明に係る変位計測方法は、
計測対象の変位量を計測する変位量計測方法であって、
前記計測対象と導電率及び透磁率が同一又は略同一である比較対象を、渦電流式変位センサによって任意の距離xで計測し、計測した交流電圧の値を第1計測値とし、前記比較対象に磁場を印加した磁場印加比較対象を、前記渦電流式変位センサによって任意の距離xで計測し、計測した交流電圧の値を第2計測値とする工程と、
X軸を交流電圧の実数部分、Y軸を交流電圧の虚数部分としたX‐Y平面上に前記第1計測値と前記第2計測値の2点をそれぞれP(X
1,Y
1)、Q(X
2,Y
2)としてプロットする工程と、
前記計測対象を前記渦電流式変位センサによって一定時間計測し、計測した交流電圧の値を第3計測値群とする工程と、
X‐Y平面上に前記第3計測値群の複数の点をプロットし、当該複数の点のうち1つを点O(X
0,Y
0)とし、前記点Pと前記点Qとを通る直線を直線Rとし、前記点Oと前記直線Rとの距離Lを、下記数式を用いて算出し、当該算出を前記第3計測値群の複数の点の全てについて行う工程と、
算出した複数の前記距離Lの中に、所定値以上のものが存在するか否かを判断する工程とを有することを特徴とする。
【数4】
【数5】
【数6】
【0013】
上記課題を解決する第4の発明に係る変位計測方法は、
上記第3の発明に係る変位計測方法において、
前記計測対象はタービン又は圧縮機に備わるロータであり、
前記ロータの回転軸に対し計測方向が垂直となる角度に前記渦電流式変位センサを設置することで、前記ロータの周面の変位量を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明に係る変位計測装置によれば、点Oと直線Rとの距離Lを、上記数式を用いて算出し、当該算出を第3計測値群の複数の点の全てについて行うことで、計測対象の透磁率変化に起因する、渦電流式変位センサのノイズを低減することができる。
【0015】
上記第2の発明に係る変位計測装置によれば、ロータの回転軸に対し計測方向が垂直となる角度に渦電流式変位センサを設置することで、ロータの周面の変位量を計測することができる。
【0016】
上記第3の発明に係る変位計測方法によれば、点Oと直線Rとの距離Lを、上記数式を用いて算出し、当該算出を第3計測値群の複数の点の全てについて行うことで、計測対象の透磁率変化に起因する、渦電流式変位センサのノイズを低減することができる。
【0017】
上記第4の発明に係る変位計測方法によれば、ロータの回転軸に対し計測方向が垂直となる角度に渦電流式変位センサを設置することで、ロータの周面の変位量を計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明に係る変位計測装置及び方法に用いる基本概念を、以下の(1)〜(3)において説明する。
【0020】
(1)
図1は、従来の渦電流式変位センサに用いるコイル11とターゲット材12とが用意されたシミュレーションモデルである。
【0021】
上述のコイル11には外径が10mm、高さが5mm、周波数が20kHzのものを用いる。コイル11の周波数は渦電流の浸透深さに影響を与えるものであるが、数十k〜1MHzでは変位センサの計測結果の傾向は略同一であることがわかっているため、ここでは20kHzのみとしている。
【0022】
また、上述のターゲット材12には、導電率が2×10
6S/mであり、比透磁率が100H/m,150H/m,200H/mのものをそれぞれ用いる。
【0023】
このシミュレーションモデルでは、コイル11とターゲット材12との距離xを変化させ、電圧V(Vr,Vi)[V](Vr:電圧Vの実数部分、Vi:電圧Vの虚数部分、Vは任意単位で、絶対値に意味はない)を計測するが、その際、距離xを2.0mm〜2.5mmの間で0.1mmずつ変化させるように設定する。
【0024】
すると、上記シミュレーションモデルによる計測結果は、まず
図2のグラフに示すようになる。当該グラフは横軸をVr、縦軸をViとしている。また、a,b,cはそれぞれ距離xが2.0mmの場合の計測値、d,e,fはそれぞれ距離xが2.5mmの場合の計測値であり、その間の計測値は距離xを0.1mmずつ変化させて計測したものである。
【0025】
図2のグラフを見ればわかるように、電圧V(Vr,Vi)の計測値は、ターゲット材12の比透磁率が100,150,200でそれぞれ異なる値を示している。
【0026】
これによって、例えば比透磁率100の直線上の計測値を読み取るつもりが、計測対象(ロータ)が回転する中でいつの間にか比透磁率150に変化すると、読み取るべき直線が変わってしまい、恰も変位量が変わってしまったかのように見えてしまい、許容範囲を超えてしまっているように見えることもあり得る。
【0027】
ここで、a,b,cを通る一点鎖線で示す直線yの傾きと、d,e,fを通る一点鎖線で示す直線zの傾きとを算出し、平均の傾きを求める。なお、a,b,c又はd,e,fは略同一線上となるが、場合によっては、当該算出に最小二乗法を用いてもよい。
【0028】
次に、直線yと直線zとが、それぞれ横軸と略平行になるように、上述の平均の傾きを基に、100,150,200の3つの線分(a‐d,b‐e,c‐z)を回転させる。
【0029】
上記回転後のグラフを
図3に示す。当該グラフを見ればわかるように、上述のように3つの線分を回転させたことで、比透磁率の変化による電圧V(Vr,Vi)の値の違いがVrのみに表れ、Viは比透磁率の変化に影響を受けにくくなる。
【0030】
上述の状態で、縦軸方向のみを読み取ることで、透磁率の変化によるノイズを除外した上での変位量の変化を検出することが可能となる。
【0031】
すなわち、(1)は、従来の渦電流式変位センサにおいて、計測対象の透磁率の変化によりノイズが発生することに着目し、透磁率の変化の影響を排除するものである。
【0032】
しかし、一般的に、ロータ材質の斑に起因した透磁率の変化がどのような値になるのかは不明であるため、実際には、上記計測方法では
図2のようなグラフを求めることができない。そこで、グラフの回転角度を簡易的に求めることができる手段を以下(2)で説明する。
【0033】
(2)まず上記(1)で説明した、
図1に示すようなシミュレーションモデルを用いる。但し、上述でのシミュレーションとは異なり、ターゲット材12として、計測対象(ロータ)と導電率及び透磁率が同一又は略同一の材料を用いる。
【0034】
そして、コイル11とターゲット材12との距離xを1.0mm,2.0mmの2つの値に設定し、それぞれの値につき、電圧V(Vr,Vi)の計測値を求める。
【0035】
次に、
図4に示すように、ターゲット材12の下方に磁石13を設けて磁場を印加することで、透磁率を変化させる。このように透磁率を変化させた磁場印加ターゲット材14で、距離xを1.0mm,2.0mmの2つの値に設定し、それぞれの値につき、電圧V(Vr,Vi)の計測値を求める。
【0036】
上述のように計測値を求めた結果を
図5のグラフに示す。当該グラフは横軸がVr,縦軸がViを表しており、ターゲット材12を用いた場合の、距離xが1.0mmのときの計測値をh、距離xが2.0mmのときの計測値をkとし、磁場印加ターゲット材14を用いた場合の、距離xが1.0mmのときの計測値をg、距離xが2.0mmのときの計測値をjとしている。
【0037】
ここで、g,hを通る一点鎖線で示す直線mの傾きと、j,kを通る一点鎖線で示す直線nの傾きとを算出し、平均の傾きを求める。
【0038】
次に、直線mと直線nとが、それぞれ横軸と略平行になるように、上述の平均の傾きを基に、2つの線分(g‐j,h‐k)を回転させ、
図6のような状態とする。そして、このときの回転角度を求める。
【0039】
計測対象(ロータ)を計測した場合の計測値も、上述の2つの線分(g‐j,h‐k)と略同一の傾斜となると予想されることから、上述の回転角度の値をそのまま適用して回転させることで、比透磁率の変化による電圧V(Vr,Vi)の値の違いがVrのみに表れ、Viは比透磁率の変化に影響を受けにくくなる。
【0040】
上述の状態で、縦軸方向のみを読み取ることで、透磁率の変化によるノイズを除外した上での変位量の変化を検出することが可能となる。
【0041】
このように、(2)では、計測対象(ロータ)と導電率及び透磁率が同一又は略同一の材料の計測値と、透磁率を変化させた材料の計測値とを基に、計測対象の計測値の回転角度を予め決定しておくことが重要となる。
【0042】
すなわち、(2)は(1)の基本概念を実現可能とするための概念となる。
【0043】
なお、上述の距離xは1mm,2mmの2つの値に限定されるものではない。また、さらに多くの距離xを設定してもよく、距離xを1つの値としてもよい。ただし、より多くの距離xを設定して、直線の傾きを求めた方が信頼性確保に繋がる。
【0044】
また、上述の磁石13は永久磁石でも電磁石でもよい。
【0045】
上記(1)及び(2)では、直線y,z,m,nがそれぞれ横軸と略平行になるように回転させたが、縦軸と略平行にしてもよく、さらに言えば、横軸でも縦軸でもなく、任意の直線に平行になるように回転させ、その任意の直線と直交する直線に沿ってグラフの値を読み取るようにすれば結果は同様となる。
【0046】
また、上記概念を拡張して、グラフの回転を行わなくとも、同様の結果を得ることが可能である。これについて以下(3)で説明する。
【0047】
(3)まず上記(2)と同様に、
図1に示すようなシミュレーションモデルを用い、ターゲット材12に、計測対象(ロータ)と導電率及び透磁率が同一又は略同一の材料を用いる。
【0048】
そして、コイル11とターゲット材12との距離xを1.0mmに設定し、電圧V(Vr,Vi)の計測値を求める。
【0049】
次に、
図4のように、ターゲット材12の下方に磁石13を設けて磁場を印加することで、透磁率を変化させる。このように透磁率を変化させた磁場印加ターゲット材14で、距離xを1.0mmに設定し、電圧V(Vr,Vi)の計測値を求める。
【0050】
上述のように計測値を求めた結果を
図7のグラフに示す。ただし当該グラフでは、便宜的に、Vrを示す横軸をX軸とし、Viを示す縦軸をY軸とし、各座標を(X
n,Y
n)で表示することにする。
【0051】
ターゲット材12の計測値をP(X
1,Y
1)とし、磁場印加ターゲット材14の計測値をQ(X
2,Y
2)とすると、P,Qを通る一点鎖線で表した直線Rの方程式は次式となる。
【0052】
【数7】
但し、
【数8】
【数9】
【0053】
さらに、計測対象(ロータ)を計測した計測値をO(X
0,Y
0)とすると、点Oから直線Rへの垂線の長さすなわちO‐Rの距離Lは、上記(一)〜(三)式から、次式となる。
【0055】
計測対象(ロータ)は回転しており、計測対象(ロータ)の計測値は複数出てくるため、それぞれの計測値に対し、上述のように距離Lを求め、それを比較することで、ノイズを除外した上での計測対象(ロータ)の変位量の変化が判断できる。
【0056】
このようにして(3)では、グラフを回転させなくとも、透磁率の変化によるノイズを除外した上での変位量の変化を検出することが可能となる。
【0057】
また、(3)においても(2)と同様、複数の距離xを設定し、それぞれにつき計測値を取り、距離Lを求め、それぞれのLの平均値を求めることで、より信頼性向上に繋がる。
【0058】
以上、本発明に係る変位計測装置及び方法に用いる基本概念を説明したが、本発明に係る変位計測装置及び方法は、上記基本概念のうち特に(3)に基づいたものである。
【0059】
ちなみに、特許文献2にも透磁率の変化に起因するノイズを低減する手法が開示されているが、当該手法では計測距離を細かく変更して都度計測したデータベースを用意しなければならないのに対し、上述の(3)では、距離xを1点だけに設定することも可能である。
【0060】
なお、本発明に係る変位計測装置は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、情報処理装置が構築されるものである。
【0061】
以下、本発明に係る変位計測装置及び方法を実施例にて図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0062】
本発明の実施例1に係る変位計測装置について
図8を用いて説明する。本装置は、
図8の概略図に示すように、比較対象18、磁場印加比較対象19、渦電流式変位センサ21、スイッチ部22、処理部26及び出力部27を備え、処理部26は、記憶部23、垂線算出部24及び判断部25を備える。
【0063】
上述の比較対象18は、計測対象(ロータ)20と導電率及び透磁率が同一又は略同一とし、上述の磁場印加比較対象19は、比較対象18に磁場を印加したものである。
【0064】
上述の渦電流式変位センサ21は、絶縁体に巻かれたコイルに交流電圧を加えておき、コイルと対象物(計測対象(ロータ)20、比較対象18及び磁場印加比較対象19)との距離によって変化する電圧V(Vr,Vi)を計測することで、当該対象物の変位を調べる、非接触式のセンサである。
【0065】
スイッチ部22は、渦電流式変位センサ21による計測値のうち、比較対象18の計測値である第1計測値及び磁場印加比較対象19の計測値である第2計測値を、記憶部23に出力し、回転する計測対象(ロータ)20を一定時間計測した交流電圧の値である第3計測値群を垂線算出部24及び判断部25に出力することが可能である。
【0066】
上述の記憶部23では、渦電流式変位センサ21によって、比較対象18を任意の距離xで計測した交流電圧の値である第1計測値と、磁場印加比較対象19を同距離xで計測した交流電圧の値である第2計測値とを記憶しておく。
【0067】
上述の垂線算出部24は、
図7に示すように、X軸を交流電圧の実数部分、Y軸を交流電圧の虚数部分としたX‐Y平面上に第1計測値と第2計測値の2点をそれぞれP(X
1,Y
1),Q(X
2,Y
2)としてプロットし、P(X
1,Y
1),Q(X
2,Y
2)を通る直線を直線Rとし、さらに、第3計測値群の複数の点を、上記X‐Y平面上にプロットし、当該複数の点のうち1点をO(X
0,Y
0)とし、O(X
0,Y
0)と直線Rとの距離Lを、上述の(二)〜(四)式を用いて算出し、当該算出を第3計測値群の複数の点の全てについて行う。
【0068】
上述の判断部25は、垂線算出部24の算出した複数の距離Lの中に、所定値以上のものが存在するか否かを判断し、存在する場合は、実際の計測対象(ロータ)20の変位量が許容範囲を超えているものとして、出力部27により外部へ出力する。
【0069】
以上、本発明に係る変位計測装置について説明したが、換言すれば本装置は、計測対象の変位量を計測する変位量計測装置であって、渦電流式変位センサ21と、計測対象20と導電率及び透磁率が同一又は略同一である比較対象18と、比較対象18に磁場を印加した磁場印加比較対象19と、X軸を交流電圧の実数部分、Y軸を交流電圧の虚数部分としたX‐Y平面上に、渦電流式変位センサ21によって比較対象18を任意の距離xで計測した交流電圧の値である第1計測値を点P(X
1,Y
1)、渦電流式変位センサ21によって磁場印加比較対象19を同距離xで計測した交流電圧の値である第2計測値を点Q(X
2,Y
2)としてプロットし、点Pと点Qとを通る直線を直線Rとし、さらに、渦電流式変位センサ21によって計測対象18を一定時間計測した交流電圧の値である第3計測値群の複数の点をプロットし、当該複数の点のうち1つを点O(X
0,Y
0)とし、点Oと直線Rとの距離Lを、上述の(二)〜(四)式を用いて算出し、当該算出を第3計測値群の複数の点の全てについて行う垂線算出部24と、垂線算出部24で算出した複数の前記距離Lの中に、所定値以上のものが存在するか否かを判断する判断部25とを備えることを特徴とするものである。
【0070】
また、本発明の実施例1に係る変位計測方法とは、計測対象の変位量を計測する変位量計測方法であって、計測対象20と導電率及び透磁率が同一又は略同一である比較対象18を、渦電流式変位センサ21によって任意の距離xで計測し、計測した交流電圧の値を第1計測値とし、比較対象18に磁場を印加した磁場印加比較対象19を、渦電流式変位センサ21によって任意の距離xで計測し、計測した交流電圧の値を第2計測値とする工程と、X軸を交流電圧の実数部分、Y軸を交流電圧の虚数部分としたX‐Y平面上に第1計測値と第2計測値の2点をそれぞれP(X
1,Y
1)、Q(X
2,Y
2)としてプロットする工程と、計測対象20を渦電流式変位センサ21によって一定時間計測し、計測した交流電圧の値を第3計測値群とする工程と、X‐Y平面上に第3計測値群の複数の点をプロットし、当該複数の点のうち1つを点O(X
0,Y
0)とし、前記点Pと前記点Qとを通る直線を直線Rとし、前記点Oと前記直線Rとの距離Lを、上述の(二)〜(四)式を用いて算出し、当該算出を第3計測値群の複数の点の全てについて行う工程と、算出した複数の距離Lの中に、所定値以上のものが存在するか否かを判断する工程とを有することを特徴とするものである。
【0071】
さらに、本装置及び方法は、計測対象20をタービン又は圧縮機に備わるロータとし、ロータの回転軸に対し計測方向が垂直となる角度に渦電流式変位センサ20が設置されることで、ロータの周面の変位量を計測するものとしてもよい。
【0072】
なお、上述では、距離xを任意の値としているが、これは1つの値に限定されるものではなく、複数の値を設定してもよい。その場合、各距離xにつき第1計測値及び第2計測値を求め、直線Rを取り、点O(X
0,Y
0)と直線Rとの垂線の長さを複数算出し、複数の垂線の長さの平均値を求めた値を距離Lとすることで、より信頼性向上に繋がる。