(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体側部材に固定され、第1板を含み、前記第1板に、二次衝突時のコラム移動方向と平行に延び前記コラム移動方向とは直交する方向に離隔する一対の長孔からなる第1孔が形成された固定ブラケットと、
一端に操舵部材が連結されたステアリングシャフトを回転可能に支持する可動ジャケットと、
二次衝突時に前記可動ジャケットと共に前記コラム移動方向に移動するように前記可動ジャケットを支持し、前記第1板に対向する第2板を含み、前記第2板に、前記一対の第1孔にそれぞれ対向する一対の第2孔が形成された可動ブラケットと、
対応する第1孔および対応する第2孔を挿通して前記第1板と前記第2板とを連結することで前記可動ブラケットを介して前記可動ジャケットを吊り下げ、二次衝突時に対応する第1孔に沿って移動可能な一対の吊り下げ軸と、
前記コラム移動方向とは直交する方向に関して前記一対の第1孔の間のみに配置されて前記第2板を前記第1板の所定位置に連結し、二次衝突時に剪断して前記第2板を前記所定位置から前記コラム移動方向へ離脱させる樹脂ピンを含む連結・離脱機構と、を備え、 前記樹脂ピンは、単一で設けられるか、または前記コラム移動方向に並ぶ単一列で設けられているステアリングコラム装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二次衝突時に、前記外側2列の係止ピンが同時に破断できない場合、外側2列のうち破断していない列の係止ピンの回りにモーメント(こじり)が生じる。外側2列の係止ピンは、コラム軸方向とは直交する方向(車両の幅方向に相当)に関して、コラム側ブラケットの中心からの距離が遠いため、外側2列のうち破断していない列の係止ピン回りのモーメント(こじり)が大きくなる傾向にある。このため、所望の衝撃吸収荷重が得られないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、二次衝突時のこじり発生を抑制することができるステアリングコラム装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、車体側部材(13)に固定され、第1板(30)を含み、前記第1板に、二次衝突時のコラム移動方向(X1)と平行に延び前記コラム移動方向とは直交する方向(Y1)に離隔する一対の長孔からなる第1孔(31)が形成された固定ブラケット(23)と、一端に操舵部材(2)が連結されたステアリングシャフト(3)を回転可能に支持する可動ジャケット(16)と、二次衝突時に前記可動ジャケットと共に前記コラム移動方向に移動するように前記可動ジャケットを支持し、前記第1板に対向する第2板(32)を含み、前記第2板に、前記一対の第1孔にそれぞれ対向する一対の第2孔(33)が形成された可動ブラケット(24)と、対応する第1孔および対応する第2孔を挿通して前記第1板と前記第2板とを連結することで前記可動ブラケットを介して前記可動ジャケットを吊り下げ、二次衝突時に対応する第1孔に沿って移動可能な一対の吊り下げ軸(25)と、前記コラム移動方向とは直交する方向に関して前記一対の第1孔の間のみに配置されて前記第2板を前記第1板の所定位置に連結し、二次衝突時に
剪断して前記第2板を前記所定位置から前記コラム移動方向へ離脱させる
樹脂ピン(61;61A,61B,61C)を含む連結・離脱機構(R1;R10)と、を備え
、前記樹脂ピンは、単一で設けられるか、または前記コラム移動方向に並ぶ単一列で設けられているステアリングコラム装置(1)を提供する。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ
。
【0009】
また、請求項
2のように、前記樹脂ピンは、前記第1板に設けられた樹脂ピン挿通孔(66)に挿通されており、前記コラム移動方向とは直交する方向(Y1)に関して、前記樹脂ピンと前記樹脂ピン挿通孔との遊び量が、各吊り下げ軸と対応する第1孔との遊び量よりも大きくされていてもよい。
また、請求項
3のように、前記
樹脂ピンは、前記コラム移動方向とは直交する方向に関して、前記一対の第1孔の間の中央位置に配置されていてもよい。
【0010】
また、請求項
4のように、前記吊り下げ軸の頭部(63)と前記第1板との間に介在し、前記第1板を前記第2板に向けて弾性的に付勢する板ばね(42)を備えていてもよい。
また、請求項
5のように、二次衝突時に前記第1板と前記第2板との相対移動に伴って互いに摺動する少なくとも一対の摺動部の少なくとも一方が、低摩擦材(43,45,46)で形成されていてもよい。
【0011】
また、請求項
6のように、前記第1板と前記第2板との間に介在する摩擦低減用の第1介在板および第2介在板(45,46)を備え、前記第1介在板および前記第2介在板は、前記コラム移動方向に関して、前記第2板の中央位置を挟んだ前後に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、二次衝突時に、可動ブラケットの第2板を固定ブラケットの第1板の所定位置からコラム移動方向に離脱させる連結・離脱機構が、コラム移動方向とは直交する方向に関して一対の第1孔の間のみに設けられているので、二次衝突時の固定ブラケットに対する可動ブラケットのこじりの発生を抑制して、可動ブラケットをコラム移動方向に真直に移動させることができる。
【0013】
また
、二次衝突時に、一対の第1孔の間に単一または単一列で設けられた樹脂ピンが剪断することにより、固定ブラケットの第1板の所定位置から可動ブラケットの第2板を離脱させる。二次衝突時に、樹脂ピン回りのモーメントの不均衡が生じ難いので、両ブラケットのこじりの発生を抑制して、可動ブラケットをコラム移動方向に真直に移動させることができる。
【0014】
また、請求項
2の発明によれば、樹脂ピンが、コラム移動方向とは直交する方向に関する第1板と第2板との位置決めに寄与していないので、車両への組み付け時や組み付け前の運搬時等に、樹脂ピンが不用意に破損することを防止することができる。
また、請求項
3の発明によれば、
樹脂ピンが、コラム移動方向とは直交する方向に関して、一対の第1孔の間の中央位置に配置されているので、二次衝突時に、こじりの発生を確実に抑制して、可動ブラケットをコラム移動方向に確実に真直に移動させることができる。
【0015】
また、請求項
4の発明によれば、吊り下げ軸の頭部と第1板との間に介在した板ばねによって、第1板と第2板との初期押圧荷重を容易に設定することができる。したがって、二次衝突時に可動ブラケットが固定ブラケットに対してこじりを発生することをより確実に抑制することができる。
また、請求項
5の発明によれは、二次衝突時に第1板と第2板との相対移動に伴って互いに摺動する少なくとも一対の摺動部の少なくとも一方が低摩擦材で形成されていることで、第1板と第2板とをスムーズに相対移動させることができる。したがって、こじりの発生をより確実に抑制することができる。
【0016】
また、請求項
6の発明によれば、ステアリングコラムの振動剛性の向上と、二次衝突時の両ブラケット間のこじり発生の抑制とを両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態の添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施形態のステアリングコラム装置の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、ステアリングコラム装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結されたステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを有する転舵軸としてのラック軸8とを備えている。
【0019】
ピニオン軸7およびラック軸8を含むラックアンドピニオン機構によって、操舵機構A1が構成されている。ラック軸8は、車体側部材9に固定されたハウジング10によって、車両の左右方向に沿う軸方向(紙面とは直交する方向)に移動可能に、支持されている。ラック軸8の各端部は、図示していないが、対応するタイロッドおよび対応するナックルアームを介して対応する転舵輪に連結されている。
【0020】
ステアリングシャフト3は、例えばスプライン結合を用いて、同行回転可能に且つ軸方向に相対移動可能に連結されたアッパーシャフト11およびロアーシャフト12を有している。ステアリングシャフト3は、車体側部材13,14に固定されたステアリングコラム15によって、図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。
ステアリングコラム15は、軸方向に相対移動可能に嵌め合わされた筒状のアッパージャケット16(可動ジャケット)と、筒状のロアージャケット17と、ロアージャケット17の軸方向下端に連結されたハウジング18とを備えている。ハウジング18内には、操舵補助用の電動モータ19の動力を減速してロアーシャフト12に伝達する減速機構20が収容されている。減速機構20は、電動モータ19の回転軸(図示せず)と同行回転可能に連結された駆動ギヤ21と、駆動ギヤ21に噛み合いロアーシャフト12と同行回転する被動ギヤ22とを有している。
【0021】
本実施の形態では、ステアリングコラム装置1が電動パワーステアリング装置に適用された例に則して説明するが、本発明をマニュアルステアリング装置に適用するようにしてもよい。また、本実施の形態では、ステアリングコラム装置1がチルト調節可能である場合に則して説明するが、本発明をチルト調整機能を持たないステアリングコラム装置に適用するようにしてもよいし、チルト調整可能でテレスコピック調整可能なステアリングコラム装置に適用してもよい。
【0022】
概略断面図である
図2に示すように、ステアリングコラム装置1は、固定ブラケット23によって、可動ブラケットとしてのチルトブラケット24を介してアッパージャケット16を吊り下げる一対の吊り下げ機構T1,T2を備えている。すなわち、
図1および
図2に示すように、車体側部材13に固定された固定ブラケット23に、可動ブラケットとしてのチルトブラケット24が、一対の吊り下げ機構T1,T2の吊り下げ軸としての吊り下げボルト25を介して吊り下げられている。一方、ステアリングコラム15のアッパージャケット16には、コラムブラケット26が固定されている。
【0023】
図1および
図2に示すように、ステアリングコラム装置1は、操作レバー27の操作に応じて、締付軸28によってチルトブラケット24を介して、チルト調整後のコラムブラケット26の位置(ひいてはアッパージャケット16および操舵部材2の位置)をロックしたりロックを解除したりするロック機構29を備えている。
図2、
図3に示すように、チルトブラケット24は、一対の側板41を備えており、
図2に示すように、コラムブラケット26は、チルトブラケット24の一対の側板41にそれぞれ対向する一対の側板71と、一対の側板71の下端間を連結する連結板72とを備えた溝形をなしている。
【0024】
図2を参照して、締付軸28は、チルトブラケット24およびコラムブラケット26の側板41,71を貫通するボルトからなる。締付軸28に螺合するナット73を、操作レバー27の回転操作によって回転させることにより、締付軸28としてのボルトの頭部とナット73との間に、両側板41,71を締め付け、両側板41,71をロックする。これにより、チルト調整後の操舵部材2の位置をロックし、チルトロックを達成するようにしている。
【0025】
また、ステアリングコラム装置1は、固定ブラケット23の第1板30とチルトブラケット24の第2板32とを連結し、二次衝突時に、第2板32を第1板30の所定位置(
図5に示される位置)から
図6に示すようにコラム移動方向X1へ離脱させる連結・離脱機構R1とを備えている。
図2および一部破断概略平面図である
図4に示すように、連結・離脱機構R1は、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、一対の吊り下げ機構T1,T2の間(すなわち固定ブラケット23の第1板30の後述する一対の第1孔31の間)に配置されている。具体的には、連結・離脱機構R1は、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、一対の第1孔31の間(すなわち一対の吊り下げボルト25の間)の中央位置に配置されている。
【0026】
図1を参照して、固定ブラケット23は、二次衝突時のコラム移動方向X1(ステアリングシャフト3の軸方向に相当)に平行な第1板30を備えている。第1板30には、コラム移動方向X1に平行に延びる長孔からなる、吊り下げ機構T1,T2用の第1孔31が形成されている。一方、チルトブラケット24(可動ブラケット)は、第1板30に対向する第2板32を備えている。第2板32には、第1孔31の一部と対向する、吊り下げ機構T1,T2用の第2孔33が形成されている。
【0027】
吊り下げボルト25は、第1板30の第1孔31および第2板32の第2孔33を挿通して、ナット34に螺合するボルトにより構成されている。ナット34と共同して第1板30と第2板32とを連結した吊り下げボルト25が、チルトブラケット24(可動ブラケット)およびコラムブラケット26を介してアッパージャケット16(可動ジャケット)を吊り下げている。また、吊り下げボルト25は、二次衝突時に、第1孔31に沿って、チルトブラケット24(可動ブラケット)、コラムブラケット26およびアッパージャケット16と共に、コラム移動方向X1に移動可能である。
【0028】
車体側部材14に固定されたロアーブラケット35が、ピボット軸であるチルト中心軸36を支持している。チルト中心軸36は、ステアリングコラム15のハウジング18を介して、ロアージャケット17を、当該チルト中心軸36の回りに揺動可能に支持している。
図2および
図3に示すように、各吊り下げ機構T1,T2は、吊り下げボルト25と、例えば皿ばねからなる板ばね42と、ナット34等により構成されている。連結・離脱機構R1は、二次衝突時に剪断する樹脂ピン61と、樹脂ピン61の軸方向の一部に嵌合した円筒状の金属カラー62とで構成されている。なお、金属カラー62に代えて、高硬度の樹脂やセラミック等のカラーを用いてもよい。
【0029】
図3を参照して、固定ブラケット23は、第1板30の一対の側縁からそれぞれ下向きに延設された一対の側板37と、一対の側板37からそれぞれ外側方へ延設された一対の取付板38とを備えている。固定ブラケット23は、例えば板金により形成されている。各取付板38に設けられたねじ挿通孔39(
図3および
図4参照)を挿通した固定ボルト40(
図4参照)によって、各取付板38が、車体側部材13に固定されている。これにより、固定ブラケット23が車体側部材13に固定されている。
【0030】
図2〜
図4を参照して、固定ブラケット23の第1板30において、第1孔31は、一対の吊り下げボルト25に対応して一対設けられている。一対の第1孔31は、二次衝突時のコラム移動方向X1と平行に延び、また、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に離隔している。
図2、
図3に示すように、チルトブラケット24(可動ブラケット)は、例えば板金により形成されている。チルトブラケット24は、第2板32と、第2板32の一対の側縁から下向きに延設された一対の側板41とを備えており、溝形をなしている。第2板32と各側板41との連結部は、
図2、
図3に示すように湾曲状に形成されていてもよい。
【0031】
チルトブラケット24の第2板32において、第2孔33は、一対の吊り下げボルト25に対応して一対設けられている。各吊り下げボルト25は、例えば皿ばねからなる環状の板ばね42と、介在板43の対応する挿通孔44と、第1板30の対応する第1孔31と、第2板32の対応する第2孔33とを順次に挿通して、ナット34にねじ込まれている。これにより、吊り下げボルト25がチルトブラケット24を吊り下げている。
【0032】
介在板43は、
図3および
図4に示すように、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に延びる長板からなり、
図2に示すように、両板ばね42と第1板30の上面30aとの間に介在している。介在板43の少なくとも第1板30側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で形成されている。すなわち、介在板43全体が、低摩擦材で形成されていてもよいし、介在板43の第1板30側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。
【0033】
第1板30と第2板32との間には、二次衝突時に第2板32が第1板30に対して、コラム移動方向X1に移動するときの摺動抵抗を低減させる働きをする第1介在板45と第2介在板46とが介在している。
第1介在板45は、第2板32のコラム移動方向X1側の端部である第1端部321に係止された溝形のユニット45Uを構成している。すなわち、ユニット45Uは、第2板32の上面32aおよび第1板30の下面30bに沿う第1介在板45と、第1介在板45と対向し且つ第2板32の下面32bに沿う対向板47と、第1介在板45と対向板47とを連結し且つ第2板32のコラム移動方向X1側の端縁に当接する連結板48とを備えている。
【0034】
第1介在板45の少なくとも第1板30側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で形成されている。すなわち、第1介在板45ないしユニット45Uが、低摩擦材で形成されていてもよいし、第1介在板45の第1板30側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。
第2介在板46は、第1板30のコラム移動方向X1とは反対側の端部である第2端部302および第2板32のコラム移動方向X1とは反対側の端部である第2端部322に係止されたユニット46Uを構成している。すなわち、ユニット46Uは、第2板32の上面32aおよび第1板30の下面30bに沿う第2介在板46と、第2介在板46に対向し且つ第1板30の上面30aに沿う対向板49とを備えている。また、ユニット46Uは、第2介在板46と対向板49とを連結し且つ第1板30のラコム移動方向X1とは反対側の端縁に当接する連結板50と、第2板32の第2端部322に引っ掛け係止される例えば鉤形フック状の係止部51とを備えている。
【0035】
第2介在板46の少なくとも第2板32側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で形成されている。すなわち、第2介在板46ないしユニット46Uが、低摩擦材で形成されていてもよいし、第2介在板46の第2板32側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。
図2および
図3に示すように、各吊り下げボルト25は、頭部52と、頭部52に連なり頭部52より小径の大径部53と、大径部53に連なり大径部53より小径の小径部54と、大径部53と小径部54との間に形成された段部55と、小径部54に設けられたねじ部56とを備えている。頭部52には、例えば六角孔形状の工具係合部57が設けられている。
【0036】
図2に示すように、大径部53が、環状の板ばね42と、介在板43の挿通孔44と、第1板30の第1孔31とを挿通している。段部55は、第2板32の上面32aに当接し、上面32aによって受けられている。段部55とナット34との間で第2板32が挟持されて、吊り下げボルト25と第2板32とが固定されている。
頭部52と段部55との間隔H1(大径部53の軸長に相当)は、第1板30と第2板32との間に介在する第1介在板45の板厚(ないし第2介在板46の板厚)と、第1板30の板厚と、第1板30の上面30aに沿う介在板43の板厚と、最圧縮時の板ばね42の板厚との合計よりも大きくされている。これにより、板ばね42が、介在板43を介して第1板30を第2板32側へ弾性的に付勢している。
【0037】
連結・離脱機構R1の樹脂ピン61は、例えば断面円形の頭部63と、頭部63よりも小径の円柱状の軸部64とを備えている。円筒状の金属カラー62は、軸部64の外周に嵌合されている。金属カラー62の外径は、樹脂ピン61の頭部63の外径と等しくされている。金属カラー62の軸方向の第1端部621が、樹脂ピン61の頭部63に当接し、金属カラー62の軸方向の第2端部622が、第2板32の上面32aによって受けられている。これにより、樹脂ピン61および金属カラー62が、第2板32の下方へ脱落することが防止されている。
【0038】
一方、介在板43が、樹脂ピン61の頭部63の上方を覆うように配置されることで、樹脂ピン61の上方への脱落が防止されている。また、介在板43には、樹脂ピン61の頭部63に対向して、頭部63の外径よりも小さい覗き孔65が形成されている。連結・離脱機構R1の組立後に、介在板43の覗き孔65を通して樹脂ピン61の頭部63を視認することにより、樹脂ピン61の組み付け忘れ等の作業不良を容易に判断することができる。
【0039】
樹脂ピン61の頭部63と金属カラー62の大部分とは、固定ブラケット23の第1板30の、連結・離脱機構R1用の第1孔66(樹脂ピン挿通孔)に挿通されている。金属カラー62の一部は、第1孔66から突出している。樹脂ピン61の軸部64のうち、金属カラー62から突出した部分が、チルトブラケット24(可動ブラケット)の第2板32の、連結・離脱機構R1用の第2孔67に挿通されている。
【0040】
図2のVII −VII 線に沿う断面である
図7に示すように、第1板30の連結・離脱機構R1用の第1孔66は、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、吊り下げ機構T1,T2用の第1孔31間の中央位置に配置されている。すなわち、樹脂ピン61は、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、一対の吊り下げボルト25間の中央位置に配置されている。
【0041】
また、第1板30の連結・離脱機構R1用の第1孔66は、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に長い横長孔に形成されている。これにより、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、金属カラー62の外周と第1孔66の内周との間に隙間S1,S2が設けられている。
図2のVIII−VIII線に沿う断面である
図8に示すように、チルトブラケット24の第2板32の、連結・離脱機構R1用の第2孔67は、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、吊り下げ機構T1,T2用の一対の第2孔33間の中央位置に配置されている。第2孔67は、樹脂ピン61の軸部64の外径と同じか又は若干大きい内径を持つ円孔により形成されている。
【0042】
二次衝突時には、金属カラー62の第2端部622と第2板32との合わせ面のずれによって、樹脂ピン61の軸部64が剪断される。金属カラー62の第2端部622の内周縁で構成される剪断刃は、円弧状であり、第2板32の第2孔67の縁部で構成される剪断刃も、円弧状である。
本実施形態によれば、二次衝突時に、チルトブラケット24(可動ブラケット)の第2板32を固定ブラケット23の第1板30の所定位置(
図5参照)からコラム移動方向X1に離脱させる連結・離脱機構R1が、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、一対の長孔からなる第1孔31の間のみに設けられているので、二次衝突時の固定ブラケット23に対するチルトブラケット24のこじりの発生を抑制して、チルトブラケット24をコラム移動方向X1に真直に移動させることができる。
【0043】
また、二次衝突時に、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、一対の第1孔31の間に単一で設けられた樹脂ピン61が剪断することにより、固定ブラケット23の第1板30の所定位置からチルトブラケット24の第2板32を離脱させる。二次衝突時に、樹脂ピン61回りのモーメントの不均衡が生じることを抑制でき、両ブラケット23,24のこじりの発生を抑制して、チルトブラケット24をコラム移動方向X1に真直に移動させることができる。
【0044】
特に、連結・離脱機構R1が、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、一対の第1孔31の間の中央位置に配置されているので、二次衝突時に、こじりの発生を確実に抑制して、チルトブラケット24をコラム移動方向X1に確実に真直に移動させることができる。
また、吊り下げボルト25の頭部52と第1板30との間に介在した板ばね42によって、第1板30と第2板32との初期押圧荷重を容易に設定することができる。したがって、二次衝突時にチルトブラケット24が固定ブラケット23に対してこじりを発生することをより確実に抑制することができる。
【0045】
また、二次衝突時に第1板30と第2板32との相対移動に伴って互いに摺動する少なくとも一対の摺動部の少なくとも一方が、低摩擦材で形成されている。すなわち、本実施形態では、二次衝突時に相対移動する板ばね42と第1板30の上面30aとの間に、板ばね42と同行移動する介在板43を介在させ、介在板43の少なくとも第1板30側の面(摺動部)を低摩擦部材で形成している。
【0046】
また、第1板30と第2板32との間に、二次衝突時に第2板32と同行移動する第1介在板45を介在させ、第1介在板45の少なくとも第1板30側の面(摺動部)を低摩擦材で形成している。
また、第1板30と第2板32との間に、第1板30に保持されて、二次衝突時に、第2板32の上面32aに対して相対移動する第2介在板46を介在させ、第2板32と摺動する第2介在板46の少なくとも第2板32側の面(摺動部)を低摩擦材で形成している。
【0047】
これら介在板43、第1介在板45および第2介在板46の働きで、二次衝突時に、第1板30と第2板32とをスムーズに相対移動させることができる。したがって、こじりの発生をより確実に抑制することができる。
特に、固定ブラケット23の第1板30とチルトブラケット24(可動ブラケット)の第2板32との間に介在する摩擦低減用の第1介在板45と第2介在板46とが、下記の効果を奏する。すなわち、第1介在板45および第2介在板46は、コラム移動方向X1に関して、チルトブラケット24の第2板32の中央位置を避け、前記中央位置を挟んでコラム移動方向X1の前後に配置されている。したがって、ステアリングコラム15の振動剛性の向上と、二次衝突時の両ブラケット23,24間のこじり発生の抑制とを両立することができる。
【0048】
特に、第1介在板45が第2板32のコラム移動方向X1側の端部(第1端部321)に配置され、第2介在板46が第2板32のコラム移動方向X1とは反対側の端部(第2端部322)に配置されているので、前記の振動剛性の向上と前記のこじり発生の抑制とをより高い次元で実現することができる。
また、
図2に示すように、吊り下げボルト25の大径部53が、板ばね42と介在板43と第1板30とを挿通し、大径部53と小径部54との間の段部55が、第2板32の上面32aに着座している。また、小径部54が第2板32を挿通し、小径部54に螺合したナット34と段部55との間で、第2板32が挟持固定されている。一方、吊り下げボルト25の頭部52と第2板32の上面32aとの間で、板ばね42が、介在板43を介して第1板30を第2板32側へ弾性的に付勢している。
【0049】
このように吊り下げボルト25を着座させているので、締付トルクの管理が容易であり、その結果、従来のような一対のボルトの同時締付が不要であり、組立工数を削減することができる。しかも、頭部52と段部55との間の間隔H1の精度が高いので、頭部52と第1板30の上面30aとの間隔の精度も高くなる。したがって、板ばね42のセット長も精度が高くなるので、板ばね42によって、第1板30を第2板32側へ弾性的に付勢す付勢力のばらつきを抑制することができる。その結果、二次衝突時に、第2板32が第1板30に対してコラム移動方向X1に移動するときに相対摺動する一対の摺動部の摺動抵抗(本実施形態では、介在板43と第2板32の上面32aとの摺動抵抗)のばらつきを抑制することができる。
【0050】
また、従来のようにナット34を第2板32に溶接したり、かしめたりする必要もないので、この点からも部品点数を削減することができる。また、溶接する場合のような熱歪みの影響のおそれもない。
また、
図2〜
図4に示すように、二次衝突時に、一対の吊り下げボルト25や一対の板ばね42と、コラム移動方向X1に同行移動する介在板43が、コラム移動方向X1とは直交する方向に長い長板により形成されているので、一対の吊り下げボルト25や一対の板ばね42を一括してコラム移動方向X1へ真直に移動させる効果がある。しかも、介在板43の少なくとも第2板32側の面が低摩擦材で形成されているので、摺動抵抗を低減して、一対の吊り下げボルト25や一対の板ばね42を一括して、より真直にコラム移動方向X1に移動させる効果がある。
【0051】
また、二次衝突時に、
図5、
図6に示すように、第1板30と第2板32との相対移動に伴って軸部64の一部641が残りの部分から分離するように剪断する連結・離脱機構R1の樹脂ピン61が、第1板30の第1孔66と第2板32の第2孔67とに挿通されている。
図7に示すように、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、樹脂ピン挿通孔としての第1孔66と樹脂ピン61とが所定量相対移動可能である。具体的には、樹脂ピン61の外周に嵌合された金属カラー62の外周と第1孔66の内周との間に、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して隙間S1,S2が設けられている。これにより、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に関して、樹脂ピン61と第1孔66との遊び量(本実施形態では金属カラー62と第1孔66との遊び量に相当)が、各吊り下げボルト25と対応する第1孔31との遊び量よりも大きくされている。
【0052】
すなわち、固定ブラケット23とチルトブラケット24(可動ブラケット)との横方向(コラム移動方向X1とは直交する方向Y1)の位置決めは、第1板30の第1孔31および第2板32の第2孔33と吊り下げボルト25とで行う。樹脂ピン61は、前記横方向の位置決めには寄与しない。
したがって、車両への組み付け前のステアリングコラム装置1を運搬するときや、ステアリングコラム装置1を車両へ組み付けるときに、前記横方向に働く何らかの外力で横方向の衝撃が加わったとしても、樹脂ピン61が直接力を受けて不用意に剪断して破損することがない。
【0053】
また、
図8に示すように、樹脂ピン61が挿通する第2孔67が、コラム移動方向X1とは反対側の領域で、円弧状の断面形状をなしている(具体的には、第2孔67の断面全体が円形をなしている)。したがって、二次衝突時に、樹脂ピン61がコラム移動方向X1に倒れる(いわゆる転ぶ)ようなことがなく、スムーズに剪断する。したがって、安定した衝撃吸収荷重を得ることができる。
【0054】
また、
図5に示すように、樹脂ピン61が第1孔66および第2孔67に跨がるストレートな断面い形状の円柱状部(軸部64に相当)を含んでいるので、樹脂ピン61の剪断面積が一定となり、安定した衝撃吸収荷重を得ることができる。
また、
図5に示すように、内周が円断面をなす金属カラー62が、樹脂ピン61の円柱状部(軸部64)の外周に嵌合し、金属カラー62が、第1板30の第1孔31に挿通されて、金属カラー62の第2端部622が第2板32の上面32aの第2孔33の周縁によって受けられている。したがって、二次衝突時に、樹脂ピン61を剪断する一対の剪断刃として機能する一対の部位間(金属カラー62の第2端部622の内周と第2孔67の上端の周縁)の、樹脂ピン61の軸方向に関する隙間を殆どなくすことができる。したがって、剪断時に樹脂ピン61に曲げが及ぼされることがなく、樹脂ピン61の剪断荷重を安定させることができる。
【0055】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、
図4の実施形態の連結・離脱機構R1に代えて、
図9の実施形態に示すように、コラム移動方向X1に並ぶ単一列で設けられた複数の樹脂ピン61A,61B,61Cを含む連結・離脱機構R10を用いてもよい。各樹脂ピン61A,61B,61Cは、それぞれ、対応する第1孔66A,66B,66Cに挿通されている。樹脂ピン61A,61B,61Cの列は、コラム移動方向X1とは直交方向Y1に関して、一対の第1孔31間の中央位置に配置されている。
【0056】
本実施形態においても、
図4の実施形態と同じ効果を奏することができる。しかも、樹脂ピン61A,61B,61Cの個数の選択によって離脱荷重を容易に設定することができる。本実施形態において、
図4の実施形態の構成要素と同じ構成要素には、
図4の実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付してある。
その他、本発明の請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。