特許第6021133号(P6021133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021133
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】靴の中敷の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20161027BHJP
   A43B 7/14 20060101ALI20161027BHJP
   A43D 1/02 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   A43B17/00 E
   A43B7/14 A
   A43D1/02
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-522550(P2015-522550)
(86)(22)【出願日】2014年6月12日
(86)【国際出願番号】JP2014003144
(87)【国際公開番号】WO2014203506
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2015年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-127395(P2013-127395)
(32)【優先日】2013年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513153754
【氏名又は名称】株式会社神戸装具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 允三
(72)【発明者】
【氏名】東 好哲
(72)【発明者】
【氏名】鄭 文植
【審査官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−327905(JP,A)
【文献】 特開2000−62046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 7/14
A43B 7/28
A43B 17/00
A43D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の内底形状に合わせた形状の上面被覆層と下面被覆層との間に中敷本体部を挟持してなる中敷を製造する靴の中敷の製造方法であって、
前記中敷の使用者の素足の足裏の選択された部位に検査用パッドを貼った状態の足型であるパッド貼付の足型を採取する工程と、
前記パッド貼付の足型における前記検査用パッドの跡の位置に基づいて、前記使用者の素足に応じた形状の中敷フレームの上面に前記検査用パッドと同一形状の中敷用パッドを貼る工程とを有し、
前記中敷本体部は、前記中敷用パッドが貼られた前記中敷フレームを有して構成される、
靴の中敷の製造方法。
【請求項2】
前記使用者の素足の足型を採取する工程と、
前記中敷フレームを、前記素足の足型の3次元形状に応じた形状となるように作製する工程と、をさらに有する、
請求項1に記載の靴の中敷の製造方法。
【請求項3】
前記素足の足型及び前記パッド貼付の足型のそれぞれは、
前記使用者に採型用スポンジを踏み越えさせることにより採取する、
請求項2に記載の靴の中敷の製造方法。
【請求項4】
前記中敷フレームは、足指に対応する部分を含むつま先側の所定部分が欠損した形状となるように作製され、
前記中敷用パッドが貼られた前記中敷フレームの上面に、靴の内底形状に応じた形状の緩衝材層を設ける工程をさらに有し、
前記中敷本体部は、前記中敷用パッドが貼られた前記中敷フレームと、前記緩衝材層とから構成される、
請求項1〜3のいずれかに記載の靴の中敷の製造方法。
【請求項5】
前記使用者の素足の足裏に貼られた検査用パッドは、
足裏の所定の複数の貼付部位の各々に応じて異なる形状の複数の検査用パッドからなる検査用パッドセットの中から選択されたものであり、
前記中敷フレームの上面に貼られる中敷用パッドは、
前記検査用パッドセットを構成する前記複数の検査用パッドの各々と同一形状に形成された複数の中敷用パッドからなる中敷用パッドセットの中から選択されるものである、
請求項1〜4のいずれかに記載の靴の中敷の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の中敷の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の足裏には、横アーチ、内側縦アーチ及び外側縦アーチが形成され、これらのアーチを形成する足の骨格が崩れると、足、膝、腰、背中、肩等の体の各部に歪みや痛みが生じたりして、体に障害が生じることがあることはよく知られている。靴に、使用者の足に適した中敷を使用することは有用である。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、アーチサポート機能を有する靴の中敷が記載されている。特許文献1には、中敷本体板上に、3つのアーチに対応させて第1ないし第3のパッドを取り付け、その上から、被覆シートを貼り付けることにより、靴の中敷を構成することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、人間の足の大きさ及び形状等には個人差があるため、特許文献1の構成では、中敷の使用者に適切な大きさ及び形状の第1ないし第3のパッドを選択又は製作することが困難であるとともに、それらを適切な位置に配置することが困難であることが記載されている。
【0005】
そして、特許文献2には、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷の製造方法であって、下板の上面の、足裏のアーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置し、下板に上板を重ね合わせるようにして、使用者がその足により上板の上側から踏圧をかけることにより、シリコーンゴムをアーチの形状に合わせて成形し硬化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−88405号公報
【特許文献2】特開2008−48863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献2には、2液型液状シリコーンゴムの硬化剤の種類及び/又は量を変えることにより、硬化後の硬さ並びに厚さ及び大きさを調節することができるため、使用者の好み又は障害に応じたアーチサポート体を容易に形成することができることが記載されている。
【0008】
しかしながら、シリコーンゴムの硬化後の硬さ並びに厚さ及び大きさが使用者にとって適切なものとなるように調節することは容易ではないと考えられる。また、上記のようにして作製した中敷が使用者にとって適切なものであるか否かは、実際に使用している状態を、例えば理学療法士あるいは義肢装具士等の専門家がみないとわからない。すなわち、特許文献2に記載の製造方法でも、足裏の矯正等に効果のある使用者の足に適した中敷を製造することは困難である。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、足裏の矯正等に効果のある使用者の足に適した中敷を作製することができる靴の中敷の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある形態に係る靴の中敷の製造方法は、靴の内底形状に合わせた形状の上面被覆層と下面被覆層との間に中敷本体部を挟持してなる中敷を製造する靴の中敷の製造方法であって、前記中敷の使用者の素足の足裏の選択された部位に検査用パッドを貼った状態の足型であるパッド貼付の足型を採取する工程と、前記使用者の素足の足型を採取する工程と、前記素足の足型の3次元形状に応じた形状の中敷フレームを作製する工程と、前記パッド貼付の足型における前記検査用パッドの跡の位置に基づいて、前記中敷フレームの上面に前記検査用パッドと同一形状の中敷用パッドを貼る工程とを有し、前記中敷本体部は、前記中敷用パッドが貼られた前記中敷フレームを有して構成されるようにしている。
【0011】
この製造方法によれば、理学療法士あるいは義肢装具士等の専門家によって、使用者にとって適切な位置となるように検査用パッドの貼付部位が決められてあれば、採取したパッド貼付の足型における検査用パッドの跡に基づいて、中敷フレームの上面に検査用パッドと同一形状の中敷用パッドを貼ることにより、使用者にとって適切な位置に中敷用パッドが配置されることになる。すなわち、パッド貼付の足型を採取することにより、中敷用パッドを適切な位置に配置することが容易となり、足裏の矯正等に効果のある使用者の足に適した中敷を作製することができる。なお、ここで採取されるパッド貼付の足型は、検査用パッドが貼られた足裏の3次元データ(3次元形状データ)からなる足型であってもよく、同様に、素足の足型は、素足の足裏の3次元データ(3次元形状データ)からなる足型であってもよい。
【0012】
また、前記中敷フレームは、足指に対応する部分を含むつま先側の所定部分が欠損した形状となるように作製され、前記中敷用パッドが貼られた前記中敷フレームの上面に、靴の内底形状に応じた形状の緩衝材層を設ける工程をさらに有し、前記中敷本体部は、前記中敷用パッドが貼られた前記中敷フレームと、前記緩衝材層とから構成されるようしてもよい。
【0013】
この製造方法により作製された中敷を用いれば、足指の部分に中敷フレームが存在しないため、靴を履いた時の足指への圧迫を低減できる。
【0014】
また、前記素足の足型及び前記パッド貼付の足型のそれぞれは、前記使用者に採型用スポンジを踏み越えさせることにより採取するようにしてもよい。
【0015】
このように、使用者に採型用スポンジを踏み越えさせることにより採取される足型は歩行時の足型であり、静止時よりも歩行時には足に大きな負荷がかかるので、歩行時の素足の足型に基づいて中敷フレームを作製し、かつ、歩行時のパッド貼付の足型に基づいて中敷用パッドの配置がなされることにより、足裏の矯正等に、より効果のある中敷を作製することができる。
【0016】
また、前記使用者の素足の足裏に貼られた検査用パッドは、足裏の所定の複数の貼付部位の各々に応じて異なる形状の複数の検査用パッドからなる検査用パッドセットの中から選択されたものであり、前記中敷フレームの上面に貼られる中敷用パッドは、前記検査用パッドセットを構成する前記複数の検査用パッドの各々と同一形状に形成された複数の中敷用パッドからなる中敷用パッドセットの中から選択されるものであるようにしてもよい。
【0017】
このように、互いに対応する検査用パッドセット及び中敷用パッドセットを予め用意しておき、その中から検査用パッド及び中敷用パッドを選択して用いることにより、中敷の製造の容易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上に説明した構成を有し、靴の中敷の製造方法において、足裏の矯正等に効果のある使用者の足に適した中敷を作製することができるという効果を奏する。
【0019】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)は、本発明の実施形態の靴の中敷の製造方法によって製造された左足用の靴の中敷を上から見た平面図であり、図1(b)は同中敷の側面図である。
図2図2は、図1に示す中敷の分解図である。
図3図3は、本発明の実施形態の靴の中敷の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施形態における検査用パッド及びその貼付部位の一例を示す図である。
図5図5(a)は、採型用スポンジを用いて採取した素足の足型の一例を示す図であり、図5(b)は、採型用スポンジを用いて採取したパッド貼付の足型の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態における検査用パッド及びその貼付部位の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、主に左足用の靴の中敷について説明するが、右足用の靴の中敷も同様である。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0022】
(実施形態)
図1(a)は、本発明の実施形態の靴の中敷の製造方法によって製造された左足用の靴の中敷を上から見た平面図であり、図1(b)は同中敷の側面図である。また、図2は、同中敷の分解図である。
【0023】
この中敷Aは、図2に示すように、上面被覆層4と下面被覆層5との間に中敷本体部1が挟持されている。
【0024】
中敷本体部1は、この中敷Aの使用者の素足の足裏形状に沿った3次元形状を有する樹脂製フレーム(中敷フレーム)2と、ゴム製の中敷用パッドP(例えばP1,P3,P5)と、この中敷Aを使用する靴の内底形状に応じた形状の緩衝材層3とによって構成されている。この中敷本体部1は、樹脂製フレーム2の上面に中敷用パッドPが貼付され、その上に緩衝材層3が貼り付けられている。
【0025】
そして、中敷本体部1が上面被覆層4と下面被覆層5とで被覆されるように、上面被覆層4と下面被覆層5との外周縁部がミシン糸6で縫い合わされている。
【0026】
なお、図1(a)では、中敷用パッドP2,P4,P6の貼付位置の例が二点鎖線で示されているが、この中敷Aには、中敷用パッドP2,P4,P6は使用されていない。
【0027】
樹脂製フレーム2は、例えばABS樹脂等で形成することができる。緩衝材層3は、例えばEVA樹脂等で形成することができる。上面被覆層4は、例えばポリエステルの布、綿パイル等のシートで形成することができる。下面被覆層5は、例えば合成皮革、人工皮革等のシートで形成することができる。
【0028】
次に、本実施形態の靴の中敷の製造方法の一例について説明する。図3は、本実施形態の靴の中敷の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0029】
この中敷Aは、オーダーメイドで作製され、中敷Aの使用者(例えば患者)の足裏の矯正等に効果があり、外反母趾等の足指等の変形の治癒や、起立及び歩行姿勢の矯正等を促すことなどを目的として作製される。
【0030】
使用者の左右の靴の各々の中敷に用いる中敷用パッドP(P1〜P6)を選択し、その取付位置を決めるために、まず、理学療法士、義肢装具士等の評価者は、中敷用パッドP(P1〜P6)と同一形状の検査用パッドPs(Ps1〜Ps6)を使用者の足裏に貼って体の歪み等を評価し、使用者に適した検査用パッドPsを選択する。これについて、次に詳しく説明する。
【0031】
図4は、検査用パッドPs(Ps1〜Ps6)及びその貼付部位の一例を示す図である。
【0032】
本実施形態では、使用者の左足11及び右足12の各々に対し、複数の所定の貼付部位の各々に貼付するための検査用パッドPs1〜Ps6が予め用意されている。各検査用パッドPs1〜Ps6は、各貼付部位に応じて所定の形状のものが用意されている。
【0033】
ここで、各検査用パッドPs1〜Ps6の貼付目的及び貼付部位の一例について説明しておく。なお、中敷に実際に用いる中敷用パッドP1〜P6は、各検査用パッドPs1〜Ps6と対応しており、その貼付目的及び貼付部位についても同じである。
【0034】
パッドPs1(P1)は、距骨下関節の回内誘導を促すために、例えば、内果直下に同パッドの中央を合わせて貼付する。パッドPs2(P2)は、距骨下関節の回外誘導を促すために、例えば、第5中足骨底に同パッドの遠位端を合わせて貼付する。
【0035】
パッドPs3(P3)は、母趾の拳上を促すために、例えば、母趾球部の外側に合わせて同パッドを貼付する。パッドPs4(P4)は、小趾の拳上を促すために、例えば、第5中足骨底に同パッドの近位端を合わせて貼付する。
【0036】
パッドPs5(P5)は、第2、第3中足骨を持ち上げて幅の狭い横アーチとし足底筋膜の緊張を高めるために、例えば、中足骨頭部を避けその近位端から第2、第3中足骨部に合わせて貼付する。パッドPs6(P6)は、第2、第3、第4中足骨を持ち上げて幅の広い横アーチとし足底筋膜の緊張を緩めるために、例えば、中足骨頭部を避けその近位端から第2、第3、第4中足骨部に合わせて貼付する。
【0037】
なお、各々の検査用パッドPsの一方の面(貼付面)には、接着剤が塗布されて、かつ剥離紙が貼り付けられており、剥離紙を剥がして足裏に貼ることができる。
【0038】
評価者は、使用者に立位体前屈、静止立位姿勢及び歩行等を行わせて、使用者に適した左右の各足に貼付する検査用パッドを選択し、その選択した検査用パッドの貼付部位を決めて、その貼付部位に貼付する。この際、評価者は、例えば、まず、検査用パッドPs1,Ps2の貼付の有無(貼付するか否か)及び貼付部位(貼付する場合の貼付位置)を決め、次に、検査用パッドPs3,Ps4の貼付の有無及び貼付部位を決め、最後に、検査用パッドPs5,Ps6の貼付の有無及び貼付部位を決める。但し、この順番に限られるものではない。
【0039】
より、具体的には、評価者は、まず、使用者に検査用パッドPs1,Ps2を適宜貼付して、使用者に立位体前屈をさせて、より大きく体を曲げられるように、検査用パッドPs1,Ps2の貼付の有無及び貼付部位を決める。
【0040】
この決められた検査用パッドPs1,Ps2を貼った状態で、次に、検査用パッドPs3,Ps4を適宜貼付して、使用者に上記同様の立位体前屈に加え、静止立位姿勢及び歩行等を行わせて、体の左右のバランス(肩及び骨盤の位置、膝が内側あるいは外側を向いているか、足のアーチが低いか高いか等)をみて、体の左右のバランスがとれるように検査用パッドPs3,Ps4の貼付の有無及び貼付部位を決める。
【0041】
さらに、決められた検査用パッドPs3,Ps4を貼った状態で、検査用パッドPs5,Ps6を適宜貼付して、使用者に歩行等を行わせて、左右の体のバランス及び左右の歩幅等をみて、検査用パッドPs5,Ps6の貼付の有無及び貼付部位を決める。
【0042】
なお、検査用パッドPs5と検査用パッドPs6との両方が、同じ片方の足(左足あるいは右足)に、貼付されることはない。中敷用パッドP5、P6についても同様である。
【0043】
以上のようにして評価者は、使用者の足裏のアーチが良好な状態となり、体の左右のバランスがとれるように、左右の足裏に貼付する検査用パッドPsを選択してその貼付部位を決める。
【0044】
そして、図3に示すように、評価者によって決められた検査用パッドPsを貼った状態で使用者の両足の足型(パッド貼付の足型)を採型用スポンジを用いて採取する(工程S1)。
【0045】
次に、検査用パッドPsを取り外し、使用者の両足の素足の足型を採型用スポンジを用いて採取する(工程S2)。
【0046】
図5(a)は、採型用スポンジ21を用いて採取した素足の足型の一例を示す図である。この例では、左足の素足の足型11Aが示されているが、右足の素足の足型も同様に採取される。
【0047】
図5(b)は、採型用スポンジ22を用いて採取したパッド貼付の足型の一例を示す図である。この例では、左足のパッド貼付の足型11Bが示され、MPs1、MPs3、MPs5は、それぞれ左足に貼付された検査用パッドPs1、Ps3、Ps5の跡である。右足のパッド貼付の足型も同様に採取される。
【0048】
次に、両足の各々の素足の足型に基づいて左右両方の中敷の樹脂製フレーム2を作製する(工程S3)。この際、例えば、図5(a)に示す採型用スポンジ21の素足の足型11Aを3次元スキャナを用いて測定し、その測定した3次元データを、3次元スキャナに接続されたコンピュータに読み込む。このコンピュータでは、上記3次元データに、例えば、靴の内底の形状に応じ、かつ、足指(第1趾〜第5趾)に対応する部分を含むつま先側の所定の領域部分が欠損した形状となるように所定の補正処理を行い、加工データを作成する。この加工データに基づいて樹脂製フレーム作製用の型を作製し、この型を用いて真空成形等によって、例えばABS樹脂を用いた透明な樹脂製フレーム2を作製する。
【0049】
この樹脂製フレーム2は、靴を履いた時の足指への圧迫を低減するために、その表面(上面)形状が、例えば、踵骨から中足骨頭までの足裏の形状(輪郭)に対応した形状となるようにして、足指に対応する部分を含むつま先側の部分が欠損した形状となるように作製されているが、これに限られない。例えば、上記つま先側の部分を、より柔軟性があり、かつ、厚みをより薄く形成できるのであれば、つま先側の部分も形成されてあってもよい。但し、この場合、足指に対応する部分はほぼ平坦面となるように形成することが好ましい。
【0050】
次に、パッド貼付の足型における検査用パッドPsの跡に合わせて、中敷用パッドPを樹脂製フレーム2の上面に貼る(工程S4)。例えば、図5(b)に示すパッド貼付の足型11Bにおける検査用パッドPs1、Ps3、Ps5の跡MPs1、MPs3、MPs5の位置に基づいて、中敷用パッドP1、P3、P5を樹脂製フレーム2に貼る。より具体的には、例えば、透明な樹脂製フレーム2を、パッド貼付の足型11B上に載せて、パッド跡MPs1、MPs3、MPs5に合わせて中敷用パッドP1、P3、P5を貼ることにより、正確な位置に中敷用パッドP1、P3、P5を容易に貼ることができる。例えば、各々の中敷用パッドPの一方の面Pb(図2)には、接着剤が塗布されて、かつ剥離紙が貼り付けられており、剥離紙を剥がして樹脂製フレーム2に貼ることができる。
【0051】
次に、中敷用パッドPが貼られた樹脂製フレーム2の上面に、靴の内底形状に応じた形状の緩衝材層3を貼る(工程S5)。例えば、緩衝材層3の一方の面3b(図2)には、接着剤が塗布されて、かつ剥離紙が貼り付けられており、剥離紙を剥がして樹脂製フレーム2に貼ることができる。これにより、中敷本体部1が作製される。
【0052】
次に、中敷本体部1に、靴の内底形状に応じた形状の上面被覆層4及び下面被覆層5を取り付ける(工程S6)。本例では、上面被覆層4及び下面被覆層5を貼り付けて、外周縁部を縫製する。上面被覆層4の一方の面4b及び下面被覆層5の一方の面5b(図2)には、接着剤が塗布されて、かつ剥離紙が貼り付けられており、剥離紙を剥がして貼ることができる。上面被覆層4は緩衝材層3の上面に貼られ、下面被覆層5は樹脂製フレーム2及び緩衝材層3の下面に貼られる。緩衝材層3は、上面被覆層4及び下面被覆層5より若干小さく形成されており、上面被覆層4及び下面被覆層5が貼り付けられた後、上面被覆層4及び下面被覆層5の外周縁部をミシン糸6で縫い合わせる。これにより、中敷Aが完成する。
【0053】
なお、上記の工程S1〜S6において、パッド貼付の足型を採取する工程S1と素足の足型を採取する工程S2との順番が入れ替わってもよい。すなわち、素足の足型を採取した後、評価者により左右の足裏に貼付する検査用パッドPs及びその貼付部位(貼付位置)が決められて、パッド貼付の足型を採取するようにしてもよい。
【0054】
各中敷用パッドP1〜P6は、各検査用パッドPs1〜Ps6と同一形状であり、ゴム製のものを用いることができる。また、各検査用パッドPs1〜Ps6は、使用者が素足に貼って歩行等を行うので各中敷用パッドP1〜P6よりも柔らかいものを用いており、そのため体重によってへこみやすいので、各検査用パッドPs1〜Ps6の厚み(例えば3mm)は、各中敷用パッドP1〜P6の厚み(例えば2mm)よりも少し厚くしている。なお、これに限らず、各検査用パッドPs1〜Ps6は各中敷用パッドP1〜P6と同一のものを用いてもよい。
【0055】
また、各検査用パッドPs1〜Ps6及び各中敷用パッドP1〜P6は線対称の形状になっている。そのため、左右両足のいずれにも同じ検査用パッドPs1〜Ps6及び中敷用パッドP1〜P6を用いることができる。
【0056】
なお、上面被覆層4と緩衝材層3とが一体化された構成であってもよい。例えば、緩衝材層3を無くし、緩衝材層3の機能をも有する上面被覆層が設けられてあってもよい。
【0057】
本実施形態では、理学療法士あるいは義肢装具士等の専門家(評価者)によって、使用者にとって適切な位置となるように検査用パッドPsの貼付部位が決められ、採取したパッド貼付の足型11Bにおける検査用パッドの跡MPs(MPs1、MPs3、MPs5等)に基づいて、樹脂製フレーム2の上面に検査用パッドPsと同一形状の中敷用パッドPを貼ることにより、使用者にとって適切な位置に中敷用パッドPが配置されることになる。すなわち、パッド貼付の足型11Bを採取することにより、中敷用パッドPを適切な位置に配置することが容易となり、足裏の矯正等に効果のある使用者の足に適した中敷を作製することができる。
【0058】
また、本実施形態では、検査用パッドセット(6個の検査用パッドPs1〜Ps6)及びそれに対応する中敷用パッドセット(6個の中敷用パッドP1〜P6)を予め用意しておき、その中から検査用パッドPs及び中敷用パッドPを選択して用いることにより、中敷Aの製造の容易化を図ることができる。
【0059】
なお、図4に示された検査用パッドPs1〜Ps6及び図1に示された中敷用パッドP1〜P6は、一例であり、これらの形状は他の形状であってもよく、また貼付部位も適宜(例えば使用者の足裏形状に応じて)変更されることがあってもよい。例えば、図6に、検査用パッド及びその貼付部位の他の例を示す。図6の例では、左足11用の検査用パッドPs11〜Ps15と、右足12用の検査用パッドPs21〜Ps25とは、互いに対称な形状で、別個のものが用いられており、中敷用パッドについても同様である。
【0060】
また、検査用パッドPsは、足裏に貼る際に、評価者がシート状のパッド材料を所望の形状に切り取って作製するようにしてもよい。この場合、中敷用パッドPも、シート状のパッド材料を、検査用パッドPsと同一形状に切り取って作製するようにしてもよい。
【0061】
なお、前述の工程S1,S2において採取される足型は、例えば使用者が立位あるいは座位の静止した状態の足型であってもよいが、使用者が採型用スポンジを踏み越える(踏んで越える)ことにより採取される足型、すなわち歩行時の足型であることが好ましい。これは、足には、静止時よりも歩行時には大きな負荷がかかるので、歩行時の素足の足型に基づいて樹脂製フレーム2を作製し、かつ、歩行時のパッド貼付の足型に基づいて中敷用パッドPの配置がなされることにより、足裏の矯正等に、より効果のある中敷を作製することができるからである。
【0062】
また、使用者が静止した状態の足型を採取する場合には、採型用スポンジを用いずに、例えば、検査用パッドPsを貼付した足裏形状を3次元スキャナ等の3次元計測機を用いて測定し、検査用パッドPsを貼付した足裏形状の3次元データを取得するようにしてもよい。同様に、素足の足裏形状を3次元スキャナ等の3次元計測機を用いて測定し、素足の足裏形状の3次元データを取得するようにしてもよい。すなわち、図3の工程S1、S2で採取される足型は、足裏形状の3次元データ(3次元形状データ)からなる足型であってもよい。
【0063】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、足裏の矯正等に効果のある使用者の足に適した中敷を作製することができる靴の中敷の製造方法等として有用である。
【符号の説明】
【0065】
A 中敷
1 中敷本体部
2 樹脂製フレーム
3 緩衝材層
4 上面被覆層
5 下面被覆層
P(P1〜P6) 中敷用パッド
Ps(Ps1〜Ps6) 検査用パッド
S1 パッド貼付の足型を採取する工程
S2 素足の足型を採取する工程
S3 樹脂製フレームを作製する工程
S4 中敷用パッドを貼る工程
S5 緩衝材層を貼る工程
S6 上面及び下面被覆層の取付け工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6