(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、前述した従来の測定具は、計測基準点(孔)に差し込んだ計測ピンが傾斜した場合などに測定値が変わってしまい正確な測定作業を行いにくかった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされた。本発明の目的は、作業性に優れた二点間距離ゲージ及び二点間距離ゲージシステム並びに二点間距離ゲージシステムを使用した歪み測定方法を提供することである。
【0005】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために明細書中に使用した符号を付するが、これに限定されるものではない。また符号を付して説明した構成は適宜代替しても改良してもよい。
【0006】
本発明による第1の形態は、直径が異なる複数の円筒ロッド(111,112,113)が嵌合して任意の長さに伸縮自在に構成された棒状の本体(11)と、前記本体(11)に対して所望の角度に折り曲げ自在であるとともにその角度を保持可能となるように前記本体(11)の一端(113a)に設けられ、先端(12a)がシャフト径よりも大きな直径の球状である先端球状シャフト(12)と、前記本体(11)に対して所望の角度に折り曲げ自在であるとともにその角度を保持可能となるように前記本体(11)の他端(113a)に設けられ、先端(13a)が円錐状の先端尖状シャフト(13)とを有する二点間距離ゲージである。
【0007】
本発明による第2の形態は、第1の形態において、前記本体(11)の一端(113a)は、本体軸線を中心に回転可能であり、前記先端球状シャフト(12)は、前記本体(11)の一端(113a)とともに、本体軸線を中心とした回転が可能である二点間距離ゲージである。
【0008】
本発明による第3の形態は、第1又は第2の形態において、前記本体(11)の他端(113a)は、本体軸線を中心に回転可能であり、前記先端尖状シャフト(13)は、前記本体(11)の他端(113a)とともに、本体軸線を中心とした回転が可能である二点間距離ゲージである。
【0009】
本発明による第4の形態は、第1から第3までのいずれかの形態において、前記先端球状シャフト(12)は、前記本体(11)の一端(113a)に設けられたピン(114)で軸支される二点間距離ゲージである。
【0010】
本発明による第5の形態は、第1から第4までのいずれかの形態において、前記先端尖状シャフト(13)は、前記本体(11)の他端(113a)に設けられたピン(114)で軸支される二点間距離ゲージである。
【0011】
本発明による第6の形態は、第1から第5までのいずれかの形態において、前記本体(11)は、途中にヒンジ部(110)が設けられており、このヒンジ部(110)で折り曲げ自在である二点間距離ゲージである。
【0012】
本発明による第7の形態は、第1から第6までのいずれかの形態において、前記先端球状シャフト(12)の球状先端部分(12a)は、マグネットに吸着される強磁性体製である二点間距離ゲージである。
【0013】
本発明による第8の形態は、第7の形態である二点間距離ゲージ(10)と、被測定体の歪みを測定するときの基準ポイント(511)にセットされ、上面が窪まされ又は穿孔されることで前記先端球状シャフト(12)の球状先端部分(12a)を吸着する吸着エリア(22a)が形成されたマグネット(22)を備える吸着具(20)とを有する二点間距離ゲージシステムである。
【0014】
本発明による第9の形態は、第8の形態において、前記吸着具(20)は、前記マグネット(22)を内周面で保持するとともにマグネット(22)の厚さよりも長い樹脂製の外筒(21)をさらに備える二点間距離ゲージシステムである。
【0015】
本発明による第10の形態は、第8の形態において、前記吸着具(20)は、前記マグネット(22)を内周面で保持するとともにマグネット(22)の厚さよりも長い金属製の外筒(21)をさらに備える二点間距離ゲージシステムである。
【0016】
本発明による第11の形態は、第8の形態において、前記吸着具(20)は、前記マグネット(22)を保持するとともに被測定体にセットされる樹脂板(21)をさらに備える二点間距離ゲージシステムである。
【0017】
本発明による第12の形態は、第8から第11までのいずれかの形態である二点間距離ゲージシステムにおいて、上面が窪まされ又は穿孔されることで前記先端球状シャフト(12)の球状先端部分(12a)を吸着する吸着エリア(32a)が形成されており、その吸着エリア(32a)の中心がゼロ点に合うように取り付けられているマグネット(32)を備える巻尺(30)をさらに有する二点間距離ゲージシステムである。
【0018】
本発明による第13の形態は、第8から第12までのいずれかの形態である二点間距離ゲージシステム(1)を使用して被測定体の歪みを測定する方法であって、被測定体の歪み側の基準ポイント(521)に対して左右対称に位置する正常側の基準ポイント(511)に、前記吸着具(20)をセットする正常側吸着具セット工程(#111)と、前記正常側の基準ポイント(511)と被測定体の歪み側の測定ポイント(522)に対して左右対称に位置する正常側の測定ポイント(512)との距離に合わせて、前記二点間距離ゲージ(10)を調整する調整工程(#112)と、前記正常側吸着具セット工程(#111)でセットした吸着具(20)のマグネット(22)に、前記二点間距離ゲージ(10)の先端球状シャフト(12)の球状先端部分(12a)をセットする正常側ゲージセット工程(#113)と、前記先端尖状シャフト(13)の折曲角度を調整して、前記先端尖状シャフト(13)の円錐状先端部分(13a)を前記正常側の測定ポイント(512)に合わせる位置合わせ工程(#114)と、前記歪み側の基準ポイント(521)に、前記吸着具(20)をセットする歪み側吸着具セット工程(#121)と、前記位置合わせ工程(#114)で調整した二点間距離ゲージ(10)の形状を維持して、前記歪み側吸着具セット工程(#121)でセットした吸着具(20)のマグネット(22)に、前記先端球状シャフト(12)の球状先端部分(12a)をセットする歪み側ゲージセット工程(#122)と、前記先端尖状シャフト(13)の円錐状先端部分(13a)が、前記歪み側の測定ポイント(522)から離れている度合に基づいて、被測定体の歪みを測定する歪み測定工程(#123)とを有する歪み測定方法である。
【0019】
本発明による第14の形態は、第13の形態において、前記正常側ゲージセット工程(#113)は、前記先端球状シャフト(12)の折曲角度を調整しつつ、前記正常側吸着具セット工程(#111)でセットした吸着具(20)のマグネット(22)に、前記先端球状シャフト(12)の球状先端部分(12a)をセットする歪み測定方法である。
【0020】
本発明による第15の形態は、第13又は第14の形態において、前記歪み測定工程(#123)は、前記先端尖状シャフト(13)の折曲角度を保持したまま、先端尖状シャフト(13)の円錐状先端部分(13a)を前記本体(11)の軸線回りに回転させて、先端尖状シャフト(13)の円錐状先端部分(13a)が、前記歪み側の測定ポイント(522)から離れている度合に基づいて、被測定体の歪みを測定する歪み測定方法である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は二点間距離ゲージシステムの二点間距離ゲージ10を示す図であり、
図1(A)は全体図、
図1(B)は一部拡大図である。
【0024】
二点間距離ゲージシステム1は、二点間距離ゲージ(トラッキングゲージ)10と、吸着具20とを含む。
【0025】
図1(A)に示されるように、二点間距離ゲージ10は、本体11と、先端球状シャフト12と、先端尖状シャフト13とを備える。
【0026】
本実施形態の本体11は、途中にヒンジ部110が設けられており、このヒンジ部110で折り曲げ可能である。このヒンジ部110を挟んで両側に、円筒状の太径ロッド111,中径ロッド112,細径ロッド113が順次嵌合して設けられる。ヒンジ部110の折り曲げ中心軸はボルトでありこのボルトの先端にノブ110aが設けられている。このノブ110aを回してボルトを緩めれば、両側の太径ロッド111が回転移動自在になる。ノブ110aを回してボルトを締めれば、両側の太径ロッド111が固定される。
【0027】
太径ロッド111及び中径ロッド112の先端には、アジャスター115が設けられている。はじめに太径ロッド111で代表してアジャスター115について説明する。
【0028】
アジャスター115は、内側スリーブ1151と、外側スリーブ1152とを有する。
【0029】
図1(B)に示されるように、内側スリーブ1151は、太径ロッド111の先端に固設されている。内側スリーブ1151は、たとえば樹脂製である。内側スリーブ1151の終端側の外周面1151aには、雄螺子が形成されている。内側スリーブ1151の先端側にはスリット1151bが形成されており、先端が径方向に窄まるように可動となっている。中径ロッド112は、この内側スリーブ1151を通過して、太径ロッド111に挿入されている。外側スリーブ1152の終端側の内周面には、内側スリーブ1151の雄螺子に螺合する雌螺子が形成されている。また外側スリーブ1152は、先細に形成されている。このような構造であるので、外側スリーブ1152を締めると、内側スリーブ1151の先端が絞まって中径ロッド112を固定する。外側スリーブ1152を緩めると、内側スリーブ1151の先端が広がって中径ロッド112が回転自在かつスライド移動自在になる。
【0030】
中径ロッド112の先端にも、アジャスター115が設けられており、外側スリーブ1152を締めると細径ロッド113が固定され、外側スリーブ1152を緩めると細径ロッド113が回転自在かつスライド移動自在になる。
【0031】
細径ロッド113は、先端113aが軸を中心とした摺動回転可能であって所望の回転角度で摩擦保持されるようになっている。
【0032】
先端球状シャフト12は、先端12aがシャフト径よりも大きな直径の球状である。先端球状シャフト12の球状先端部分12aの近傍には、滑り止めのローレット加工が施されている。先端球状シャフト12は、一方(
図1では左側)の細径ロッド113の先端113aに固定されたピン114で軸支される。先端球状シャフト12は、ピン114を中心として摩擦摺動回転可能である。先端球状シャフト12は、細径ロッド113に対して任意の角度に折り曲げ自在であるとともにその角度で摩擦保持される。なおピン114は、ボルトであってもよい。ボルトにすれば、ボルトを緊緩することで、先端球状シャフト12を折り曲げたり固定したりすることが可能になる。また上述したように、細径ロッド113の先端113aは、軸を中心とした回転が可能であるので、先端球状シャフト12に力をかけると、先端球状シャフト12は、細径ロッド113の先端113aとともに、細径ロッド113の軸を中心として回転する。先端球状シャフト12の球状先端部分12aは、マグネット22に吸着される強磁性体の材料製、たとえば鉄製である。
【0033】
先端尖状シャフト13は、先端13aが円錐状である。先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aの近傍には、滑り止めのローレット加工が施されている。先端尖状シャフト13は、他方(
図1では右側)の細径ロッド113の先端113aに固定されたピン114で軸支される。先端球状シャフト12は、ピン114を中心として摩擦摺動回転可能である。先端尖状シャフト13は、細径ロッド113に対して任意の角度に折り曲げ自在であるとともにその角度で摩擦保持される。なおこのピン114も、ボルトであってもよい。ボルトにすれば、ボルトを緊緩することで、先端尖状シャフト13を折り曲げ/固定することが可能になる。また上述したように、細径ロッド113の先端113aは、軸を中心とした回転が可能であるので、先端尖状シャフト13に力をかけると、先端尖状シャフト13は、細径ロッド113の先端113aとともに、細径ロッド113の軸を中心として回転する。
【0034】
図2は二点間距離ゲージシステムの吸着具20を示す図であり、
図2(A)はボルトヘッド等にセットするタイプの吸着具20の斜視図、
図2(B−1)は穴等にセットするタイプの吸着具20の斜視図、
図2(B−2)はそれの平面図である。
【0035】
吸着具20は、車体(被測定体)の歪みなどの二点間距離を測定するときの基準ポイントに取り付けられる部材である。
【0036】
図2(A)に示された吸着具20は、ボルトヘッド等にセットするタイプの吸着具であり、外筒21と、マグネット22とを有する。
【0037】
外筒21は、たとえば弾力のある樹脂製のチューブである。外筒21は、マグネット22の厚さよりも長い。内径は、マグネット22の外径よりも少し小さく、また基準ポイントとなるボルトのヘッド径と略同じ又は少し小さい。
【0038】
マグネット22は、二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aを吸着する。マグネット22は、上面が窪まされ又は穿孔されており、ここが先端球状シャフト12の球状先端部分12aを吸着する吸着エリア22aである。マグネット22の外径は、外筒21の内径よりもやや大きい。またマグネット22の外径は、基準ポイントとなるボルトのヘッド径と略同じ又は少し大きい。マグネット22の厚みは、外筒21の長さよりも薄い。マグネット22は、外筒21に差し込まれて、マグネット22の上面が外筒21の上端面と略一致する位置に配置されて、外筒21の内周面で保持される。そして、外筒21はマグネット22の下まで延びた状態になる。この延びた部分を、車体の歪みを測定するときの基準ポイントとなるボルトのヘッドに被せて取り付けることで、吸着具20がボルト(車体の歪みを測定するときの基準ポイント)にしっかりと固定される。なお自動車には、さまざまなサイズのボルトが使用されるので、それに合ったバリエーションの吸着具20を準備しておくとよい。
【0039】
なお外筒21は、たとえば金属製の円筒であってもよい。この場合は、内径が、マグネット22の外径と同じであって、また基準ポイントとなるボルトのヘッド径と同じ又は少し大きい。金属製であれば耐久性が増す。
【0040】
また
図2(B−1)及び
図2(B−2)に示された吸着具20は、穴等にセットするタイプの吸着具であり、樹脂板21と、マグネット22とを有する。
【0041】
樹脂板21は、透明又は半透明の樹脂製の薄板である。この樹脂板21にマグネット22が接着される。樹脂板21は、マグネット22よりも大きく、マグネット22の周囲には、マグネット22の中心を同心とする目印マーカー21aが刻まれている。なお
図2(B)では3列の目印マーカー21aが示されているが列数は一例に過ぎない。1列や2列であっても4列以上であってもよい。
【0042】
マグネット22は、二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aを吸着する。マグネット22は、上面が窪まされ又は穿孔されており、ここが先端球状シャフト12の球状先端部分12aを吸着する吸着エリア22aである。マグネット22は、樹脂板21の略中央に接着されている。
【0043】
(二点間距離ゲージシステムの使用方法1)
図3は、二点間距離ゲージ10の保管状態を示す図である。
【0044】
二点間距離ゲージ10は、保管状態では、大径ロッド111に中径ロッド112が収納され、その中径ロッド112に細径ロッド113が収納されている。
【0045】
そして二点間距離ゲージ10を使用するときは、二点間距離ゲージ10のノブ110aを緩めてヒンジ部110で本体11(大径ロッド111)をストレート状態にしてからノブ110aを締める。また外側スリーブ1152を緩めて中径ロッド112及び細径ロッド113を伸ばしてから外側スリーブ1152を締める。さらに先端球状シャフト12及び先端尖状シャフト13を、本体11に対して90度程度となるように折り曲げる。以上を経て、
図1に示した状態にする。
【0046】
そして、たとえば
図4に示されるエンジンルーム50の歪みを測定するときは、以下のように、二点間距離ゲージ10を使用する。
【0047】
まず、
図5に示されるように、車体(被測定体)の歪み側の基準ポイント521に対して左右対称に位置する正常側の基準ポイント(タイヤハウス上部のボルトヘッド)511に、
図2(A)に示した吸着具20の外筒21を被せてセットする(正常側吸着具セット工程#111)。
【0048】
次に、その正常側の基準ポイント511と、車体の歪み側の測定ポイント522に対して左右対称に位置する正常側の測定ポイント512との距離に合わせて、二点間距離ゲージ10の本体11の長さを調整するとともに、必要があれば先端球状シャフト12の折曲角度も調整する(調整工程#112)。正常側の基準ポイント511の周囲に障害物がなければ、先端球状シャフト12が本体11に対して90度にするとよい。なお、正常側吸着具セット工程#111と長さ調整工程#112とは、先後が入れ替わってもよい。
【0049】
そして、正常側吸着具セット工程#111でセットした吸着具20のマグネット22に、二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする(正常側ゲージセット工程#113)。
【0050】
続いて、先端尖状シャフト13の折曲角度を調整して、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを正常側の測定ポイント512に合わせる(位置合わせ工程#114)。この状態が
図6に示されている。
【0051】
次に、歪み側の基準ポイント521に、吸着具20をセットする(歪み側吸着具セット工程#121)。
【0052】
続いて、位置合わせ工程#114で位置合わせした二点間距離ゲージ10の形状を維持して、歪み側吸着具セット工程#121でセットした吸着具20のマグネット22に、先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする(歪み側ゲージセット工程#122)。
【0053】
そして、
図7に示されているように、位置合わせ工程#114で位置合わせした二点間距離ゲージ10の形状を維持したまま先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを歪み側の測定ポイント522に近づけ、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aが、歪み側の測定ポイント522から離れている度合に基づいて、車体の歪みを測定する(歪み測定工程#123)。
図7では、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aが、歪み側の測定ポイント522よりも手前に位置するので、車体前部が後退変形していることが判る。また変形量は、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aが、歪み側の測定ポイント522から離れている度合から把握できる。
【0054】
(二点間距離ゲージシステムの使用方法2)
上述の使用方法1では、本体11の軸線を中心として、先端尖状シャフト13を回転させることが特段必要ではなかった。しかしながら、測定場所によっては、本体11の軸線を中心として、先端尖状シャフト13を回転させることが必要になる。本実施形態の二点間距離ゲージ10によれば、このような場合も歪みを測定できる。リアゲートを開いたままバックして壁に突き当たると、リアゲートの近傍が歪むことがあり、ここではこのような歪みを測定する場合を例示して説明する。
【0055】
まず、
図8に示されるように、車体の歪み側の基準ポイント521に対して左右対称に位置する正常側の基準ポイント511(リアゲートのヒンジを固定するボルトのヘッド)に、
図2(A)に示した吸着具20をセットする(正常側吸着具セット工程#111)。
【0056】
次に、車体の歪み側の測定ポイント522に対して左右対称に位置する正常側の測定ポイント512と正常側の基準ポイント511との距離に合わせて、二点間距離ゲージ10の本体11の長さを調整するとともに、必要があれば先端球状シャフト12の折曲角度も調整する(調整工程#112)。正常側の基準ポイント511の周囲に障害物がなければ、先端球状シャフト12が本体11に対して90度となるように折り曲げる。なお、正常側吸着具セット工程#111と長さ調整工程#112とは、先後が入れ替わってもよい。
【0057】
そして、
図9に示されるように、正常側吸着具セット工程#111でセットした吸着具20のマグネット22に、二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする(正常側ゲージセット工程#113)。
【0058】
次に、本体11の軸線を中心として、先端尖状シャフト13を回転させて、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを正常側の測定ポイント512に近づける(正常側シャフト回転工程#113−2)。
【0059】
続いて、先端尖状シャフト13の折曲角度を調整して、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを正常側の測定ポイント512に合わせる(位置合わせ工程#114)。この状態が
図10に示されている。
【0060】
続いて、歪み側の基準ポイント521に、吸着具20をセットする(歪み側吸着具セット工程#121)。
【0061】
次に、位置合わせ工程#114で位置合わせした二点間距離ゲージ10の形状を維持して、歪み側吸着具セット工程#121でセットした吸着具20のマグネット22に、先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする(歪み側ゲージセット工程#122)。
【0062】
続いて、本体11の軸線を中心として、先端尖状シャフト13を、正常側シャフト回転工程#113−2とは反対方向に回転させて、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを歪み側の測定ポイントに近づける(歪み側シャフト回転工程#122−2)。
【0063】
そして、
図11に示されているように、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aが、歪み側の測定ポイントから離れている度合に基づいて、車体の歪みを測定する(歪み測定工程#123)。
【0064】
(二点間距離ゲージシステムの使用方法3)
本実施形態の二点間距離ゲージシステムによれば、アンダーフロア50の歪みも容易に測定することができる。
【0065】
基準ポイントが孔の場合には、車体の歪み側の基準ポイント521に対して左右対称に位置する正常側の基準ポイント511に、
図2(B)に示した吸着具20をセットする(正常側吸着具セット工程#111)。吸着具20の樹脂板21は、透明又は半透明であるので、樹脂板21を基準ポイント(孔)511に重ねると、孔511が透けて見える。この状態で目印マーカー21aを目印として、
図13に示されるように、孔511の中心に、マグネット22の中心を合わせる。そして、
図14に示されるように、樹脂板21を磁石23でアンダーフロアに固定することで、吸着具20をセットする(正常側吸着具セット工程#111)。
【0066】
その後は、使用方法1と同様に、正常側の基準ポイント511と車体の歪み側の測定ポイント522に対して左右対称に位置する正常側の測定ポイント512との距離に合わせて、二点間距離ゲージ10の本体11の長さを調整するとともに、必要があれば先端球状シャフト12の折曲角度も調整する(調整工程#112)。そして、吸着具20のマグネット22に、二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする(正常側ゲージセット工程#113)。続いて、先端尖状シャフト13の折曲角度を調整して、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを正常側の測定ポイント512に合わせる(位置合わせ工程#114)。次に、歪み側の基準ポイント521に、
図2(B)に示した吸着具20の樹脂板21を磁石23でセットする(歪み側吸着具セット工程#121)。この作業は、正常側吸着具セット工程#111の作業と同様である。続いて、二点間距離ゲージ10の形状を維持して、吸着具20のマグネット22に、先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする(歪み側ゲージセット工程#122)。そして、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを歪み側の測定ポイントに近づけ、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aが、歪み側の測定ポイントから離れている度合に基づいて、車体の歪みを測定する(歪み測定工程#123)。
【0067】
また必要であれば、途中で、使用方法2と同様に、先端尖状シャフト13を回転させる(正常側シャフト回転工程#113−2及び歪み側シャフト回転工程#122−2)。
【0068】
(二点間距離ゲージ単独の使用方法)
自動車の車体には、計測基準点となる孔が多々形成されており、エンジンルームにも計測基準点となる孔が多々形成されている。そこで、吸着具20を用いることなく、その孔に直接二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットしてもよい。またこの場合、球状先端部分12aを磁石で構成すればさらに使用しやすくなる。
【0069】
(作用効果)
従来、車体に形成された計測基準点となる孔に計測ピンの円錐状の先端を差し込んで車体の歪みを測定していた。このような方式であっても、計測ピンが孔の法線方向に直立していれば、計測ピンが全周に渡って孔に接し、計測ピンの差し込み量も常に一定であるので、正確な測定作業を行うことができる。しかしながら、実際の現場では、特に1人の作業者で作業する場合に、計測ピンを孔の法線方向に直立させることは難しく、計測ピンが傾いてしまう。すると、計測ピンは或る1点とそれに対向する1点での2点の接触となってしまう。このような場合、計測ピンの差し込み量がバラついてしまって、測定量もバラついてしまう。
【0070】
これに対して本実施形態は、本体の一端に、先端が球状の先端球状シャフトが設けられている。先端が球状であるので、シャフトが傾斜しても、計測基準点となる孔又は吸着具20に対して一定の接触量で当接することとなる。したがってシャフトが傾いても、測定量がバラつかない。
【0071】
また本実施形態では、先端113aが軸を中心とした摺動回転可能であって所望の回転角度で摩擦保持されるようになっているので、先端球状シャフト12や先端尖状シャフト13に力をかけると、先端球状シャフト12・先端尖状シャフト13は、細径ロッド113の先端113aとともに、細径ロッド113の軸を中心として回転する。そのため、測定ポイントが基準ポイントに対して横向きに位置するような場合でも、上述の使用方法2のように、先端球状シャフト12・先端尖状シャフト13の向きを回転することで、測定可能である。
【0072】
さらに本実施形態では、先端球状シャフト12及び先端尖状シャフト13が、本体11(細径ロッド113)の先端113aに固定されたピン114で軸支されており、このピン114を中心として所望の角度に折り曲げ自在で、その角度で摩擦保持される。そのため、たとえば
図15に示されるように、車体の歪みを測定するときの基準ポイントの上方にパネルなどの障害物500が在るなどして、先端球状シャフト12を直立させることが困難でも、先端球状シャフト12を適宜傾斜させることで、車体の歪みを測定することが可能になる。
【0073】
また本体11の途中には、ヒンジ部110が設けられており、このヒンジ部110で折り曲げ自在である。したがって、ヒンジ部110で折り曲げることで、本体11が周辺部品に干渉しないように逃がすことが可能になる。また基準ポイントと測定ポイントとが近い場合には、ヒンジ部110で折り曲げてコンパスのように使用することで、車体の歪みを測定することが可能になる。
【0074】
吸着具20は、上面が窪まされ又は穿孔されることで先端球状シャフト12の球状先端部分12aを吸着する吸着エリアが形成されている。また先端球状シャフト12の球状先端部分12aは、マグネット22に吸着される強磁性体製である。そのため、先端球状シャフト12の球状先端部分12aが吸着エリアに吸着されるので、先端球状シャフト12の位置ズレが生じない。そして先端球状シャフト12の先端部分12aが球状なので、周辺部品に干渉しないように傾けることも容易であり、また傾けてもマグネット22に吸着されているので、位置ズレが生じない。したがって、使用者が一人で作業しても正確に測定することが可能である。
【0075】
マグネット22は、外筒21に挿入されてその外筒21に保持される。外筒21は、マグネット22の厚さよりも長い。このようになっているので、外筒21が、基準ポイントとなるボルトヘッドに被せられてセットされることで、マグネット22をボルトヘッドに容易にセットできる。外筒21が、弾力のある樹脂製であって、内径がマグネット22の外径よりも少し小さく、また基準ポイントとなるボルトのヘッド径と略同じ又は少し小さければ、吸着具20がボルトにしっかりと固定される。また外筒21が金属製であれば耐久性が増す。
【0076】
また別の形態では、マグネット22は、樹脂板21に固定されている。樹脂板21は、透明又は半透明であって、マグネット22よりも大きく、マグネット22の周囲には、マグネット22の中心を同心とする目印マーカー21aが刻まれている。このようになっているので、樹脂板21を基準ポイントとなる孔に重ねると、孔が透けて見える。この状態で目印マーカー21aを目印として、孔の中心に、マグネット22の中心を簡単に合わせることができる。そして、樹脂板21を磁石23で車体に固定することで吸着具20を容易にセットできる。
【0077】
また、車体の歪み側の基準ポイントに対して左右対称に位置する正常側の基準ポイントに、吸着具20をセットして、吸着具20のマグネット22に二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする。そして、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを正常側の測定ポイントに合わせる。このようにするだけで、正常側の寸法を容易に測定できる。
【0078】
そして車体の歪み側の基準ポイントに、吸着具20をセットして、二点間距離ゲージ10の形状を維持したまま、吸着具20のマグネット22に二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする。そして、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aが、歪み側の測定ポイントから離れている距離に基づいて、車体の歪みを測定する。このようにするだけで、容易に車体の歪みを正確に測定できる。
【0079】
さらに、
図15に示されるように、正常側の基準ポイント511の周囲にパネルなどの障害物500が在る場合には、先端球状シャフト12の折曲角度を調整しつつ、吸着具20のマグネット22に先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットすることで、障害物500を避けて、先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットすることが可能である。
【0080】
また、先端尖状シャフト13の折曲角度を保持したまま、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを本体11の軸線回りに回転させて、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aが、歪み側の測定ポイントから離れている度合に基づいて、車体の歪みを測定することで、測定ポイントが基準ポイントに対して横向きに位置するような場合でも、上述の使用方法2のように測定可能である。
【0081】
(車体の具体的な歪み量の測定方法)
図16は、車体の具体的な歪み量を測定するための巻尺30を示す図である。
【0082】
ボデー寸法図と照らし合わすために、車体の具体的な寸法(歪み量)を測定したい場合がある。この場合は、
図16に示されている巻尺30を使用する。
【0083】
巻尺30は、マグネット32を備える。このマグネット32には、上面が窪まされ又は穿孔されることで、先端球状シャフト12の球状先端部分12aを吸着する吸着エリア32aが形成されている。マグネット32は、吸着エリア32aの中心が、巻尺30のゼロ点に一致するように取り付けられている。
【0084】
車体の具体的な寸法(歪み量)を測定する場合は、車体の歪み側の基準ポイント521に吸着具20をセットし、その吸着具20のマグネット22に、二点間距離ゲージ10の先端球状シャフト12の球状先端部分12aをセットする。続いて、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを歪み側の測定ポイント522に合わせる。そして、二点間距離ゲージ10の形状を維持したまま、先端球状シャフト12の球状先端部分12aを、巻尺30のマグネット32にセットし、先端尖状シャフト13の円錐状先端部分13aを巻尺30のメモリに合わせる。このようにすることで、車体の具体的な歪み量を測定することができる。こうして求めた具体値を、ボデー寸法図と照らし合わせれば、修正すべき量が容易に把握できる。
【0085】
(二点間距離ゲージの第1応用形態)
図17は、二点間距離ゲージ10の第1応用形態を示す図であり、
図17(A)は全体図、
図17(B)及び
図17(C)は一部拡大平面図である。
【0086】
この二点間距離ゲージ10の細径ロッド113には、先端113aとの境界に目盛りが付されている。この目盛りは、ゼロを中心に左右対称に、順次、1,2,3,・・・と振られている。また先端113aには合いマークが付されている。
【0087】
このような構成であれば、たとえば、上述した使用方法2のように使用する場合に、正常側の測定をするときに合いマークが位置する目盛りを確認しておく。そして歪み側を測定するときに合いマークを反対側の同じ目盛りに合わせる。このようにすることで、二点間距離ゲージ10の正常側の姿勢に対して対称な姿勢を容易に形成することができ、より正確な測定が可能になる。
【0088】
(二点間距離ゲージの第2応用形態)
図18は、二点間距離ゲージ10の第2応用形態を示す図である。
【0089】
この二点間距離ゲージ10では、先端球状シャフト12・先端尖状シャフト13の途中にジョイント(中間部材)14を入れることで長さを延長できるようになっている。ジョイント14の一端には雄ネジが形成され、他端には雌ネジが形成されている。これらのネジを螺合することで、先端球状シャフト12・先端尖状シャフト13の途中に固定することができる。なおジョイント14は、たとえば、短尺ジョイント14−1,中尺ジョイント14−2,長尺ジョイント14−3というように、サイズ違いで複数用意しておき、適宜選択するとよい。また、本体11のように径が異なるロッドを嵌合することで伸縮構造としてもよい。
【0090】
このような構成であれば、先端球状シャフト12・先端尖状シャフト13を延長して障害物を避けることができ利便性が増す。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0092】
たとえば、図面において二点間距離ゲージ10・吸着具20はデフォルメされて示されており、サイズは一例に過ぎない。
【0093】
また二点間距離ゲージ10の各部の材料も特に限定されない。たとえば、太径ロッド111,中径ロッド112,細径ロッド113などを金属製にすれば、丈夫にすることができる。またプラスチックなどの樹脂製にすれば軽量化を図ることができる。
【0094】
さらに、使用方法3では、磁石23を使用して、吸着具20の樹脂板21を固定した。しかしながら、吸着具20の樹脂板21をフロントガラス等に固定したい場合もある。この場合は、マスキングテープなどの粘着テープを用いて、樹脂板21を固定すればよい。
【0095】
さらにまた、先端球状シャフト12側の細径ロッド113は、先端113aが摺動回転できない固定タイプであってもよい。
【0096】
また上記説明においては、被測定体として車体を例示して説明したが、車体に限られるものではない。船体などであってもよいしさらには建築物などであってもよい。被測定体は特段限定されない。
【0097】
また板の表面に先端球状シャフト12をあてて板の裏面に先端尖状シャフト13をあてることで、板厚を測定することもできる。
【0098】
さらにまた上記説明においては、車両(車体)を修理する場合の使用例を挙げて説明したが、車両等の製造に使用してもよいことは勿論である。使用シーンは特段限定されない。
【0099】
上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
直径が異なる複数の円筒ロッド111,112,113が嵌合して任意の長さに伸縮自在に構成された棒状の本体11と、本体11に対して所望の角度に折り曲げ自在であるとともにその角度を保持可能となるように本体11の一端113aに設けられ、先端12aがシャフト径よりも大きな直径の球状である先端球状シャフト12と、本体11に対して所望の角度に折り曲げ自在であるとともにその角度を保持可能となるように本体11の他端113aに設けられ、先端13aが円錐状の先端尖状シャフト13とを有する。