特許第6021141号(P6021141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021141
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/00 20060101AFI20161027BHJP
   F04D 29/64 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   F04D29/00 C
   F04D29/64 D
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-130430(P2012-130430)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-253573(P2013-253573A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591268623
【氏名又は名称】アルバック機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(72)【発明者】
【氏名】田辺 優作
(72)【発明者】
【氏名】大坂 泰介
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−061394(JP,A)
【文献】 特開2003−130396(JP,A)
【文献】 特開平08−247097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風口を有するポンプ本体と、
前記送風口に配置された空気吸入用のファンと、
前記送風口に取り付けられ一軸方向に沿った流体の流路を規定する外枠と、前記一軸方向に突出する凸状の第1の面と前記一軸方向に前記第1の面と対向する凹状の第2の面とをそれぞれ有し、前記外枠に支持され、前記流路を複数の領域に区画するフレーム部とを含むファンカバーと
を有する送風ユニットと
を具備し、
前記ファンカバーは、前記第2の面と前記ファンとが前記一軸方向に対向するように配置される
ポンプ装置。
【請求項2】
送風口を有するポンプ本体と、
前記送風口に配置された空気排出用のファンと、
前記送風口に取り付けられ一軸方向に沿った流体の流路を規定する外枠と、前記一軸方向に突出する凸状の第1の面と前記一軸方向に前記第1の面と対向する凹状の第2の面とをそれぞれ有し、前記外枠に支持され、前記流路を複数の領域に区画するフレーム部とを含むファンカバーと
を有する送風ユニットと
を具備し、
前記ファンカバーは、前記第1の面と前記ファンとが前記一軸方向に対向するように配置される
ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風口に取り付けられるファンカバー及びこれを備えたポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプの一種である揺動ピストン型ポンプは、シリンダ内でピストンが往復運動することによりポンプ室内の吸気及び排気を交互に行う容積移送式のポンプとして知られており、例えば加圧ポンプとして広く使用されている。
【0003】
この種のポンプには、運転中のモータの発熱を抑制するための冷却機構を備えたものが知られている。例えば下記特許文献1には、モータのシャフトに取り付けられたファンブレードと、ポンプのハウジングに形成されファンブレードの回転によって空気を吸い込むための開口と、その開口に取り付けられたファンガードとを有するポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−515061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ファンカバーは、人の手指や異物の侵入を阻止する目的で送風口に取り付けられる。一方、ファンカバーの開口部が小さくなるほど流路の抵抗が大きくなり、ポンプの冷却効率の低下や騒音の発生が問題となる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、流路抵抗を低減できるファンカバー、及びモータの冷却効率を高めることができるポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るファンカバーは、送風口に取り付けられるファンカバーであって、外枠と、フレーム部とを具備する。
上記外枠は、上記送風口に取り付け可能であり、一軸方向に沿った流体の流路を規定する。
上記フレーム部は、上記一軸方向に突出する凸状の第1の面と、上記一軸方向に上記第1の面と対向する凹状の第2の面とをそれぞれ有し、上記外枠に支持され、上記流路を複数の領域に区画する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るポンプ装置は、ポンプ本体と、送風ユニットとを具備する。
上記ポンプ本体は、送風口を有する。
上記送風ユニットは、ファンと、ファンカバーとを有する。
上記ファンは、上記送風口に配置される。
上記ファンカバーは、外枠と、フレーム部とを有する。上記外枠は、上記送風口に取り付けられ、一軸方向に沿った流体の流路を規定する。上記フレーム部は、上記一軸方向に突出する凸状の第1の面と、上記一軸方向に上記第1の面と対向する凹状の第2の面とをそれぞれ有し、上記外枠に支持され、上記流路を複数の領域に区画する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置の全体を示す斜視図である。
図2】上記ポンプ装置の要部の縦断面図である。
図3】上記ポンプ装置のファンカバーの正面図である。
図4A】上記ファンカバーの図3におけるA−A方向の断面図である。
図4B】上記ファンカバーの図4Aにおける要部拡大図である。
図5A】上記ファンカバーの図3におけるB−B方向の断面図である。
図5B】上記ファンカバーの図5Aにおける要部拡大図である。
図6】比較例に係るファンカバーの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るファンカバーは、送風口に取り付けられるファンカバーであって、外枠と、フレーム部とを具備する。
上記外枠は、上記送風口に取り付け可能であり、一軸方向に沿った流体の流路を規定する。
上記フレーム部は、上記一軸方向に突出する凸状の第1の面と、上記一軸方向に上記第1の面と対向する凹状の第2の面とをそれぞれ有し、上記外枠に支持され、上記流路を複数の領域に区画する。
【0011】
上記フレーム部は、流体の流れ方向に対して突出する第1の面をそれぞれ有するため、第1の面側から第2の面側へ流路を通過する流体の抵抗を小さくすることができる。また凹状の第2の面は、当該第2の面が吸入用ファンに対向して配置された際にファンの回転方向に沿った空気の移動を誘導する。これにより乱流の発生を抑制して風切り音を低減することができる。
【0012】
上記ファンカバーは、上記フレーム部と接合される接合部を有し上記フレーム部を上記外枠に接続する支持部材をさらに具備してもよい。
上記支持部材により、上記フレーム部と外枠との相対位置が保持され、ファンカバーとしての機械的強度を高めることができる。
【0013】
上記接合部は、上記凸状の第1の面と連続的な凸部を有してもよい。
また、上記接合部は、上記凹状の第2の面と連続的な凹部を有してもよい。
これにより、フレーム部の第1の面と接合部の表面、あるいは第2の面と接合部の裏面との間の圧力変動を抑制し、風切り音発生の防止効果を高めることができる。
【0014】
上記凸状の第1の面は、例えば、曲面で形成される。これにより、流路抵抗を効率よく低減することができる。
【0015】
上記フレーム部は、上記一軸方向と直交する方向に同心的に配列された複数の環状体で構成されてもよい。これにより、第2の面においてファンの回転方向に移動する空気の流れを効率よく誘導し、風切り音の発生防止効果を高めることができる。
【0016】
上記外枠、上記フレーム部及び上記支持部材は、それぞれ一体に形成された金属材料の成形体であってもよい。
これにより、上記形状のフレーム部及び支持部材を容易に形成することができるとともに、生産性を高めることができる。また、ファンカバーの耐熱性及び強度を向上させることができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係るポンプ装置は、ポンプ本体と、送風ユニットとを具備する。
上記ポンプ本体は、送風口を有する。
上記送風ユニットは、ファンと、ファンカバーとを有する。
上記ファンは、上記送風口に配置される。
上記ファンカバーは、外枠と、フレーム部とを有する。上記外枠は、上記送風口に取り付けられ、一軸方向に沿った流体の流路を規定する。上記フレーム部は、上記一軸方向に突出する凸状の第1の面と、上記一軸方向に上記第1の面と対向する凹状の第2の面とをそれぞれ有し、上記外枠に支持され、上記流路を複数の領域に区画する。
【0018】
上記ポンプ装置において、上記フレーム部は、流体の流れ方向に対して突出する第1の面をそれぞれ有するため、ファンの回転により第1の面側から第2の面側へ空気が移動する場合において、流路を通過する流体の抵抗を小さくすることができる。これによりモータの冷却効率を高めることができる。またこの場合、凹状の第2の面は、ファンの回転方向に沿った空気の移動を誘導する。これにより乱流の発生を抑制して風切り音を低減することができる。
【0019】
上記ファンは吸入用のファンであってもよい。この場合、上記ファンカバーは、上記第2の面と上記ファンとが上記一軸方向に対向するように配置される。一方、上記ファンは排出用のファンであってもよく、この場合、上記ファンカバーは、上記第1の面と上記ファンとが上記一軸方向に対向するように配置される。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
[ポンプ装置]
図1は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置を示す図である。
【0022】
本実施形態のポンプ装置1は、第1のポンプ部11と、第2のポンプ部12と、第1のポンプ部11及び第2のポンプ部12を共通に駆動する駆動部13とを有する。
【0023】
第1及び第2のポンプ部11は、それぞれ真空ポンプとして構成される。これに限られず、両ポンプ部11,12は、それぞれ加圧ポンプ(昇圧ポンプ)として構成されてもよい。ポンプ装置1は、例えば、燃料電池システムにおけるガスの昇圧ブロワ等として使用される。
【0024】
第1及び第2のポンプ部11,12は典型的には共通の構成を有しており、本実施形態では揺動ピストンポンプとして構成される。なおこれ以外にも、第1及び第2のポンプ部11,12は、ダイアフラムポンプ等の他の容積移送式ポンプとして構成されてもよい。
【0025】
ポンプ装置1は、ポンプ本体10と、送風ユニット300とを有する。またポンプ本体10は、ピストン21と、ポンプケース100と、モータMと、変換機構200とを有する。ポンプケース100は、第1のポンプ部11の一部を構成する第1のケーシング101と、第2のポンプ部12の一部を構成する第2のケーシング102と、駆動部13の一部を構成する第3のケーシング103とを含む。
【0026】
図2は、第1のポンプ部11及び駆動部13の一部の構成を示す縦断面図である。図2においてX軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する3軸方向をそれぞれ示している。なお、第2のポンプ部12は、第1のポンプ部11と同様に構成されているため、ここでは第1のポンプ部11を主に説明する。
【0027】
第1のポンプ部11は、第1のケーシング101と、変換機構200と、送風ユニット300とを有する。
【0028】
第1のケーシング101は、ケース本体110と、シリンダ111と、ポンプヘッド112と、ポンプヘッドカバー113とを有する。ケース本体110、シリンダ111、ポンプヘッド112及びポンプヘッドカバー113は、Z軸方向に積み重ねられるように相互に一体化されている。
【0029】
ケース本体110は、モータMを収容する第3のケーシング103と接続され、コネクティングロッド210が貫通する貫通孔110hを有する。また、ケース本体110の送風ユニット300が配置される一側面には、空気の吸入口となる送風口115が形成される。送風口115は円形状の開口であり、一部には後述するファンカバー32を取り付けるための係合部115aが形成されている。
【0030】
シリンダ111は、ケース本体110とポンプヘッド112との間に配置され、内部にピストン21をZ軸方向に摺動自在に収容する。ポンプヘッド112は、シリンダ111とポンプヘッドカバー113との間に配置され、吸気弁112a及び排気弁112bをそれぞれ有する。ポンプヘッドカバー113はポンプヘッド112の上に配置されており、吸気ポート114aに連通する吸気室113aと、排気ポート114bに連通する排気室113bとを内部に有する。吸気ポート114a及び排気ポート114bは、図1に示すように各ポンプ部11,12の相互に対向する側面にそれぞれ設けられており、各ポンプ部11,12間を相互に接続している。
【0031】
ピストン21は円板形状を有し、コネクティングロッド210の第1の端部211にネジ部材25を介して固定されている。ピストン21は、当該ピストン21とポンプヘッド112との間にポンプ室26を形成する。ピストン21は、シリンダ111の内部においてZ軸方向に往復移動し、吸気弁112a及び排気弁112bを介してポンプ室26を交互に吸気し及び排気することで、所定のポンプ作用を行う。
【0032】
変換機構200は、コネクティングロッド210と、偏芯部材220とを有する。変換機構200は、モータMの駆動軸131に連結され、モータMの駆動軸131の回転をシリンダ111内部におけるピストン21の往復移動に変換する。
【0033】
コネクティングロッド210、ピストン21と偏芯部材220との間を相互に連結する。コネクティングロッド210は、ピストン21と接続される第1の端部211と、偏芯部材220と接続される第2の端部212とを有する。第1の端部211は、ピストン21とほぼ同径の円形に形成される。ピストン21と第1の端部211との間には円板形状のシール部材24が取り付けられている。シール部材24の周縁部は、シリンダ111の内周面に摺接可能にポンプ室26側とは反対側に折り曲げられる。
【0034】
なお第1のポンプ11が加圧ポンプとして構成される場合には、当該シール部材24の周縁部は、ポンプ室26側に折り曲げられる。
【0035】
コネクティングロッド210の第2の端部212は、偏芯部材220と嵌合する嵌合孔213が形成されている。嵌合孔213には偏芯部材220を回転自在に支持するベアリングB1が装着されている。ベアリングB2は、モータMの駆動軸131を回転可能に支持するように構成され、ケース本体110に固定される。ベアリングB1,B2は、内輪(インナレース)と、外輪(アウタレース)と、これらの間に封入された複数の転動体(球)とを有する円環状の球軸受で構成される。
【0036】
偏芯部材220は、偏芯軸221と、カウンタウェイト222とを有する。偏芯部材220は、固定ネジ223によって駆動軸131に固定されている。
【0037】
偏芯軸221は、駆動軸131の回転中心に対して偏芯して形成される。カウンタウェイト222は、駆動軸131の回転に伴うコネクティングロッド210の偏芯軸221まわりの回転の際に生じる振動を打ち消すためのもので、駆動軸131に対して偏芯軸221の偏芯方向とは逆方向に偏倚した位置に配置される。
【0038】
送風ユニット300は、ファン31と、ファンカバー32とを有する。送風ユニット300は、ファン31が回転することにより、ポンプケース100の内部に外気(空気)を導入することで、運転中のポンプ装置1を冷却するように構成される。
【0039】
ファン31は、送風口115に配置され、偏芯部材220から突出する駆動軸131の端部131aに取り付けられる。ファン31は、駆動軸131と一体に回転する空気吸入用のファンとして構成される。すなわちモータMは、ファン31を回転させる駆動源として用いられ、ファン31及びファンカバー32と共に送風ユニット300の一部を構成する。
【0040】
なお、第2のポンプ部12側も送風ユニット300と同様の構成の送風ユニットを有しており、当該送風ユニットのファンも、空気吸入用のファンとして構成される。これにより第2のポンプ部12の冷却効率を高めることができる。
【0041】
なお図1に示すように、第1及び第2のケーシング101,102には、通気孔116a,116bが形成される。通気孔116aは、第1のポンプ部11側の送風ユニット300から吸入された空気をケーシング外部へ排出し、通気孔116bは、第2のポンプ部12側の送風ユニットから吸入された空気をケーシング外部へ排出する。
【0042】
[ファンカバー]
次に、ファンカバー32の詳細について説明する。
【0043】
図3はファンカバー32の正面図である。図4Aは、図3における[A]−[A]線方向断面図であり、図4Bは、図4Aの要部の拡大図、図5Aにおける[B]−[B]線方向断面図、図5Bは、図5Aにおける要部の拡大図である。
【0044】
ファンカバー32は、外枠33と、複数のフレーム部34と、複数の支持部材35とを有する。ファンカバー32は、例えばアルミニウム合金等の金属材料の成形体で構成される。ファンカバー32は、ファン31とY軸方向に対向して送風口115に取り付けられる。
【0045】
外枠33は、送風口115と略同一の径を有する環状に構成され、ファン31と対向する側の面には送風口115の周縁に取り付けられることが可能な環状の嵌合凹部33aを有する。外枠33は、その内周側の縁部によって、送風口115の外部から内部へ吸入されるY軸方向に沿った空気の流路を規定する。
【0046】
複数のフレーム部34は、外枠33によって規定された空気の流路を複数の領域に区画する。複数のフレーム部34の各々は、ファンカバー32の略中央(駆動軸131とY軸方向に対向する領域)に形成された円盤部36の周囲に配置された径の異なる複数の環状体で構成される。すなわち各フレーム部34は、Y軸方向と直交する方向である径方向に同心的に配列される。なお、各フレーム部34は、大きさは異なるが同一形状で構成されるため、それぞれ同一の符号を付して説明する。
【0047】
円盤部36は、ポンプ装置1の外方へ向かって膨出するように断面が凸状に形成される。これにより円盤部36を通過する空気の流動抵抗を低下させることができる。
【0048】
隣り合う各フレーム部34は、径方向に略等間隔で配置され、各々の間に空気の流路の一部となる開口部Sを形成する。開口部Sの径方向の幅は、例えば人の指等が入らないような幅に規定され、本実施形態において約5mm以下である。
【0049】
フレーム部34は、表面(第1の面)341と、裏面(第2の面)342とをそれぞれ有する。フレーム部34の表面341は、Y軸方向に突出する凸状に構成される。すなわち表面341は、径方向の略中心部を通る頂部341aを有し、頂部341aから各開口部Sへ傾斜する曲面で構成される。なお、曲面は球面でも非球面でもよく、曲率も特に限られない。
【0050】
一方フレーム部34の裏面342は、Y軸方向に表面341と対向する凹状に構成される。裏面342は、径方向の略中心部を通る底部342aを有し、底部342aから各開口部Sへ傾斜する曲面で構成される。裏面342は、例えば表面341の凸形状と同心的な曲面で構成される。
【0051】
フレーム部34は、裏面342がファン31と対向するように配置される。これにより、ポンプ装置1の運転中に第1のポンプ部11側のファンカバー32を通過する空気は、表面341から裏面342に向かって流れることとなる。
【0052】
複数の支持部材35は、外枠33と複数のフレーム部34との間に接続される。すなわち複数の支持部材35は、複数のフレーム部34をそれぞれ支持し、複数のフレーム部34を外枠33へ接続する。複数の支持部材35は、それぞれ径方向に沿って延在し、Y軸まわりに等間隔に配列される。すなわち円盤部36から放射状に配置される。
【0053】
各支持部材35は、複数のフレーム部34と接合される複数の接合部350を有する。支持部材35は、径方向に沿って略等間隔で複数のフレーム部34と接合されるため、接合部350は、径方向である支持部材35の延在方向に沿って略等間隔に形成される。
【0054】
接合部350は、フレーム部34の凸状の表面341と連続的な凸部351と、フレーム部34の凹状の裏面342と連続的な凹部352とを有する。凸部351及び凹部352は、フレーム部34の表面341及び裏面342とそれぞれ同様の形状の曲面で構成される。また、凸部351は、フレーム部34の頂部341aと連続する頂部351aを有し、凹部352は、フレーム部34の底部342aと連続する底部352aを有する。すなわち接合部350では、フレーム部34の表面341及び裏面342と支持部材35の表面及び裏面とがそれぞれ滑らかに連接し、周方向に表面341及び裏面342を構成する曲面が連続するように形成される。
【0055】
ファンカバー32は、取付部37と、一対の係止部38と、一対の固定部39とをさらに有する。
【0056】
取付部37は、外枠33の一部に形成され、送風口115の一部に形成された係合部115aと係合可能に構成される。一対の係止部38は、外枠33の一部に一体的に形成されており、ケース本体110の送風口115近傍に形成された係止孔117(図1)に係止可能に構成される。一対の固定部39は、外枠33の一部に一体的に形成されており、送風口115に螺合するネジ118(図1)が挿通されるネジ孔391をそれぞれ有する。
【0057】
取付部37、係止部38及び固定部39の形成位置は特に限定されず、本実施形態では図3において、取付部37はファンカバー32の最下部に形成され、係止部38及び固定部39はZ軸に関して対称なファンカバー32の上部の位置にそれぞれ形成される。取付部37、係止部38及び固定部39の形状、個数等は特に限定されず、例えば係止部38は必要に応じて省略されてもよい。
【0058】
以上のように構成されるファンカバー32は、金属材料の成形体で構成される。成形法はプレス法、ダイキャスト法その他の成形法でもよい。金属材料は、例えばアルミニウム又はその合金が採用されるが、これ以外にも、鉄、ステンレス鋼、銅又はその合金、マグネシウム又はその合金その他の金属材料が採用可能である。
【0059】
ファンカバー32が成形法で形成されることで、例えば凸状の表面341及び凹状の裏面342が形成されたフレーム部34と、凸部351及び凹部352が形成された支持部材35とを、容易にかつ同時に形成することが可能となり、生産性を高めることができる。
【0060】
また、ファンカバー32が金属製であるため、耐熱性及び機械的強度を高めることができる。さらに伝熱特性も高まるため、ポンプケース100の放熱性を向上させることができる。
【0061】
[第2のポンプ部]
第2のポンプ部12は、第1のポンプ部11と同様に構成される。第2のポンプ部12は、第1のポンプ部11と同時に共通のモータMによって駆動される。駆動軸131は、第2のポンプ部12側にも延在し、第2のポンプ部12の偏芯軸(図示略)に連結される。
【0062】
本実施形態では、第1のポンプ部11と第2のポンプ部12とが異なる位相で駆動される。例えば、第1のポンプ部11のピストン21が上死点に位置するとき、第2のポンプ部12のピストンが下死点に位置するように、各ポンプ部11,12の偏芯軸が設定される。また、第2のポンプ部12に取り付けられるファンカバーは、第1のポンプ部11に取り付けられるファンカバー32と同様に、フレーム部34の裏面342がファンに対向するように配置される。
【0063】
[ポンプ装置の動作]
次に、以上のように構成される本実施形態のポンプ装置1の動作について説明する。ここでは、第1のポンプ部11の作用を中心に説明する。
【0064】
モータMの駆動により、偏芯軸221は、駆動軸131からの偏芯量に対応する半径を有する円周に沿って駆動軸131のまわりを公転する。偏芯軸221に連結されたコネクティングロッド210は、駆動軸131の回転をシリンダ111の内部におけるピストン21の往復移動に変換する。すなわちピストン21は、シリンダ111の内部において図2においてX軸方向に揺動しながらZ軸方向に往復移動する。これによりポンプ室26の吸気及び排気が交互に行われることで、第1のポンプ部11による所定の真空排気作用が得られる。
【0065】
ポンプ装置1の駆動時、各ポンプ部のファン31は、駆動軸131と一体に回転する。これにより、ポンプ装置1のポンプケース100外部の空気がファンカバー32を通過してポンプケース100の内部に吸入される。そして、空気はファンカバー32のフレーム部34間に形成された複数の開口部Sを通過し、各ポンプ部の送風口115から第1のケーシング101及び第2のケーシング102内へ吸入される。吸入された空気は、駆動中のモータM等と熱交換しながら通気孔116a,116bから排出される。
【0066】
ここで比較例として、従来構造のファンカバーにおけるフレーム部の構成例を図6に示す。図6は、比較例に係るファンカバー40の要部断面図であり、複数の開口部Saを形成するフレーム部41の一部を示している。比較例に係るファンカバー40は、板金の打ち抜き等で作製され、フレーム部41の表面411及び裏面412がY軸方向に直交する平面で構成される。このような形態のフレーム部41は、開口部Saを通過する空気の流れを阻害するため開口部Saの流路抵抗を高める。これにより空気の吸入効率が低下し、モータMの冷却効率が低下する。さらに、ファンカバー40によって空気の乱流を招き、風切り音が発生しやすい。
【0067】
これに対して本実施形態のポンプ装置1に係るファンカバー32は、フレーム部34の表面341が頂部341aから開口部Sに向かって傾斜する凸状の曲面で形成されるため、表面341に向かって空気が流れる際、頂部341aから当該傾斜面に沿った空気の流れが発生する。これにより、比較例に係るファンカバー40よりも開口部Sの流路抵抗が低下し、空気の吸入効率が高められる。これによりモータM及びその周辺のポンプケース100の冷却効率が向上し、ポンプ装置1の長寿命化及び動作の安定化を実現することが可能となる。
【0068】
また本実施形態のファンカバー32において、ファン31と対向する裏面342が凹状に形成されているため、ファン31の回転方向に沿った空気の移動を誘導し、これにより乱流の発生を抑制して風切り音を低減することができる。
【0069】
さらに、ファンカバー32の支持部材35は、フレーム部34との接合部350がフレーム部34の凸状の表面341及び凹状の裏面342と連続して形成される凸部351及び凹部352を有する。したがってフレーム部34の表面341及び裏面342と支持部材35との間に段差が形成されず、これにより接合部350における圧力変動を抑制し、風切り音発生の防止効果を高めることができる。また、複数のフレーム部34が環状の枠体で構成されているため、ファン31の回転方向に移動する空気の流れが効率よく誘導され、これによっても風切り音の発生防止に大きく貢献することができる。
【0070】
さらに、本実施形態に係るファンカバー32は、外枠33、フレーム部34、支持部材35等が一体に形成された金属材料の成形体で構成される。これにより、所定の曲面を有するフレーム部34及び支持部材35を容易に作製することができる。また、例えば金属ワイヤの溶接等により作製された場合と比較して生産性を高めることが可能となる。
【0071】
さらに、ファンカバー32がアルミニウム等の金属材料で形成されることから、同程度の厚みの樹脂等の成形体で形成された場合と比較して、より強度を高めることが可能となる。したがって、ファンカバー32の薄型化が可能となり、材料費が抑えられ低コストで作製することが可能となる。
【0072】
[実施例]
本実施形態に係る実施例として、径約130mmで約13000mmの表面積を有するファンカバーを作製した。実施例に係るファンカバーの開口率は約40%であった。一方、比較例として、図6に示す構成、すなわちフレーム部の表面が平面で構成されるファンカバーを用意した。比較例に係るファンカバーも、実施例と同様に径約130mmで約13000mmの表面積を有し、開口率が約40%である。これらをそれぞれ本実施形態に係る構成のポンプ装置の送風ユニットとして適用し、50kPaの圧力下において120分間の運転後のシリンダ表面における温度上昇量を測定した。
【0073】
その結果、本実施形態に係るファンカバーを適用したポンプ装置においては、比較例に係るポンプ装置よりも、シリンダの温度上昇が約0.9K(℃)低下し、モータの温度上昇が約3K(℃)低下した。この結果から、本実施形態に係るファンカバー32は、開口面積を変えずに冷却効率の低下を抑制できることが確認された。
【0074】
ここでシリンダの温度上昇は、ピストンのシール部材の磨耗や偏芯軸まわりに取り付けられたベアリングの劣化を招き、ポンプ装置自体の寿命にも関わる。実際に、シリンダ表面の温度の上昇を約0.9K低下させることができると、本発明者らの試算によればポンプ装置の寿命が約6%向上することが確認された。すなわち本実施形態に係るファンカバー32によれば、ポンプ装置1の長寿命化にも貢献することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0076】
例えば、以上の実施形態では、ファンカバーとして、ポンプ装置1の送風ユニット300を構成するファンカバー32を例に挙げて説明したが、ポンプ装置以外の他の送風ユニットにおけるファンカバーにも本発明は適用可能である。
【0077】
また以上の実施形態においては、フレーム部34の表面341が曲面であると説明したが、これに限られず、例えば断面形状が台形状であってもよい。このほかにも、断面形状が頂部341aを一頂点とした三角形状で構成されてもよい。
【0078】
以上の実施形態においては、複数のフレーム部34が同心円状に形成される環状体で構成されると説明したが、これに限られず、例えば、格子状に配列されていてもよい。この場合、複数のフレーム部を外枠に接続するための支持部材は省略可能であり、複数のフレーム部は、外枠に直接支持されてもよい。
【0079】
また、フレーム部34は複数設けられる場合に限られず、単数のみで構成されてもよい。この場合、フレーム部は、延在方向を交互に変化させた矩形波、三角波のような波形状に形成されてもよいし、平面内で渦巻状に巻回したスパイラル形状に形成されてもよい。
【0080】
また、以上の実施形態においては、吸気ポート114aと排気ポート114bとが第1及び第2のポンプ部11,12に共通の構成と説明したが、これに限られず、第1及び第2のポンプ部11,12がそれぞれの吸気ポート、排気ポートを有していてもよい。
【0081】
さらに以上の実施形態においては、ファン31の回転駆動源にポンプ装置1のモータMを用いたが、ファン31の回転駆動源としてモータM以外のモータが装備されてもよい。
【0082】
さらに以上の実施形態では、第2のポンプ部12側の送風ユニットを構成するファンは空気吸入用のファンとして構成されたが、当該ファンを空気排出用のファンとして構成されてもよい。この場合、第2のポンプ部12に取り付けられるファンカバーは、第1のポンプ部11に取り付けられるファンカバー32とは逆に、フレーム部の表面がファンに対向するように配置される。上記構成において、第1のケーシング101の送風口115から吸気された空気は、第3のケーシング103内を通過して、第2のケーシング102に形成された送風口から排出される。このようにポンプケース100内において一方向の空気の流れが形成されるようにすることによっても、ポンプ装置1を効率よく冷却することができる。
【0083】
本発明に係るファンカバーは、揺動ピストン型ポンプの送風ユニットに限られず、ファンを有する他のポンプ装置にも同様に適用可能である。さらに、空調の室外機等の他の電気製品のファンカバーとしても広く用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
1…ポンプ装置
10…ポンプ本体
21…ピストン
31…ファン
32…ファンカバー
33…枠体
34…フレーム部
35…支持部材
200…変換機構
300…送風ユニット
100…ポンプケース
111…シリンダ
115…送風口
131…駆動軸
M…モータ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6