特許第6021145号(P6021145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021145
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】誘導機制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/24 20160101AFI20161027BHJP
【FI】
   H02P21/24
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-183429(P2012-183429)
(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-42398(P2014-42398A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮田 賢司
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−287491(JP,A)
【文献】 特開2001−211689(JP,A)
【文献】 特開平09−094000(JP,A)
【文献】 特開2011−254596(JP,A)
【文献】 特開2007−215260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度指令(ωm*)を入力し制御切替信号(CH)を出力する制御切替信号発生器と
導機の入力電流(i)と電圧指令(V*)を入力し、電圧(V1)と演算速度(ω11)
とを出力する予備励磁演算手段と
前記入力電流(i)と前記電圧指令(V*)と電圧(V0)とを入力し、演算速度(ω12)を出力する初期速度演算手段と
前記入力電流(i)と前記電圧指令(V*)と前記電圧(V0)とを入力し、算速度(ωm)を出力する速度演算手段と、
トルク指令(τ*)と、前記演算速度(ω11)と前記演算速度(ω12)と前記演算速度(ωm)を入力し、切替トルク指令(τ0*)と切替演算速度(ω1)とを出力する制御切替手段と、
磁束指令(φ*)と前記切替トルク指令(τ0*)と前記切替演算速度(ω1)を入力し、電流指令(Id*、Iq*)と速度指令(ωm*)を出力する制御指令作成手段と、
前記入力電流(i)と前記電流指令(Id*、Iq*)と前記速度指令(ωm*)を入力し、前記電圧(V0)を出力する前記電流制御手段と、
記電圧(V0)と前記電圧(V1)を入力し、電力変換器に出力される前記電圧指令(V*)を切替える電圧切替手段を有する誘導機制御装置において、
前記入力電流(i)と前記電圧指令(V*)とを入力し、前記制御切替手段に演算速度(ω13)を出力し、前記初期速度演算手段に演算二次磁束(Ψ23)の二分の一の値を出力する初期速度演算準備手段を追加することを特徴とする誘導機制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導機の起動時に残留磁束がある場合でもスムーズな速度推定が出来るようになる誘導機制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、一従来例を示すブロック図である。1は誘導機、2は電圧検出器、3は電流検出器、4は電力変換器、5は電流制御手段、6は制御指令作成手段、7は速度演算手段、8は予備励磁演算手段、9は初期速度演算手段、10は制御切替手段、11は電圧切替手段、12は制御切替信号発生器である。
【0003】
電力変換器4は電圧切替手段11から電圧指令V*を入力し、誘導機1に電力を配給する。
【0004】
電圧検出器2は、誘導機1に入力される入力電圧vを検出する。
【0005】
電流検出器3は、誘導機1に入力される入力電流iを検出する。
【0006】
制御切替信号発生器12は、速度指令ωm*を入力し、制御切替信号CHを出力する。制御切替信号CHは、始動時に1となり、予備励磁演算手段8が予備励磁演算手段8の速度指令ωm*を演算する所定時間後に2となり、初期速度演算手段12の二次磁束Ψ2が速度演算の出来る大きさにまで初期速度演算手段12の速度指令ωm*を実速度に追従した後に0となる。
【0007】
予備励磁演算手段8は、電圧指令V*と、入力電流iを入力し、予備励磁演算手段8の電圧指令V1と予備励磁演算手段8の演算速度ω11と予備励磁演算手段8の演算二次磁束Ψ21を出力する。制御切替信号CHが1の時、誘導機1の電圧指令V*と入力電流iから、誘導機1の入力電流iが所定の直流電流idxとなる電圧切替手段11に出力する予備励磁演算手段8の電圧V1を演算し、予備励磁演算手段8の演算速度ω11を求めるための二次磁束Ψ2のα成分Ψ、β成分Ψを式(1)、式(2)で演算する。
【数1】
【数2】
ここで、R1は誘導機1の一次抵抗、LσはL1−M2/L2、L1は誘導機1の一次自己インダクタンス、L2は誘導機1の二次自己インダクタンス、Mは誘導機1の相互インダクタンス、pはd/dt 、iα、iβは入力電流iのα、β成分、vα、vβは電圧指令V*のα、β成分である。所定時間後の二次磁束Ψ2のベクトルの回転角θを所定時間で除することで予備励磁演算手段8の演算速度ω11を求める。予備励磁演算手段8の演算二次磁束Ψ21は式(3)で演算する。
【数3】
ここで、T2は誘導機1の二次時定数であり、jは虚数単位である。式(3)の第2項は円軌跡を描く項であり、式(1)と式(2)により所定時間後の第2項のベクトルと予備励磁演算手段8の演算速度ω11が求められると、第1項も求められるため、所定時間後の予備励磁演算手段8の演算二次磁束Ψ21を演算できる。
【0008】
初期速度演算手段9は、電圧指令V*と、入力電流iと予備励磁演算手段8の演算二次磁束Ψ21を入力し、初期速度演算手段9の演算速度ω12を出力する。予備励磁演算後、磁束が速度演算の出来る大きさになるまで演算速度を実速度に追従させるため、制御切替信号CHが2の時、予備励磁演算手段8のω11と予備励磁演算手段8の演算二次磁束Ψ21を初期値として、電圧指令V*と誘導機1の入力電流iから式(1)、式(2)を用いて二次磁束Ψ2を演算し、誘導機1の入力電流iと二次磁束Ψ2から、制御切替手段10に出力する初期速度演算手段9の演算速度ω12を式(4)で演算する。
【数4】
ここでkgは速度ゲイン、Ψ、Ψは二次磁束Ψ2のα、β成分である。この時、トルク指令を0で制御した時、演算速度と実速度に誤差があると演算トルクが0にならないことを利用し、演算トルクに比例する式(2)の括弧の中の値が0になるように初期速度演算手段9の演算速度ω12を演算する。
【0009】
速度演算手段7は、電圧指令V*と、入力電流iを入力し、速度演算手段7の演算速度ωmを出力する。初期速度演算後、速度を演算するため、制御切替信号CHが0の時、電圧指令V*と誘導機1の入力電流iから式(1)、式(2)を用いて二次磁束Ψ2を演算し、誘導機1の入力電流iと二次磁束Ψ2から、速度演算手段7の演算速度ωmを式(5)〜式(7)で演算する。
【数5】
【数6】
【数7】
ここでωは二次磁束速度、ωsはすべり速度、Rは誘導機の二次抵抗である。
【0010】
制御切替手段10は、制御切替信号CHと予備励磁演算手段8の演算速度ω11と初期速度演算手段9の演算速度ω12と速度演算手段7の演算速度ωmとトルク指令τ*を入力し、切替トルク指令τ0*と切替演算速度ω1を出力する。制御指令作成手段6に出力する切替トルク指令τ0*と切替演算速度ω1を、制御切替信号CHが1の時は予備励磁演算手段8の演算速度ω11とトルク指令0に、制御切替信号CHが2の時は初期速度演算手段9の演算速度ω12とトルク指令0に、制御切替信号CHが0の時は速度演算手段7の演算速度ωmとトルク指令τ*に切り替える。
【0011】
制御指令作成手段6は、切替トルク指令τ0*と切替演算速度ω1と磁束指令φ*を入力し、電流指令Id*、Iq*と速度指令ωm*を出力する。切替トルク指令τ0*と磁束指令φ*から電流制御手段5に出力する電流指令Id*、Iq*を式(8)、式(9)で演算する。
【数8】
【数9】
切替演算速度ω1と切替トルク指令τ0*と磁束指令φ*と電流指令Iq*から電流制御手段5と制御切替信号発生器12に出力する速度指令ωm*を式(10)、式(11)で演算する。
【数10】
【数11】
ここでωs*は滑り速度指令である。
【0012】
電流制御手段5は、入力電流iと電流指令Id*、Iq*と速度指令ωm*を入力し、電流制御手段5の電圧指令V0を出力する。誘導機1の入力電流iを基に、誘導機1の入力電流と速度が電流指令Id*、Iq*、速度指令ωm*となるような、電圧切替手段11と速度演算手段7と初期速度演算手段9に出力する電流制御手段5の電圧指令V0を演算する。
【0013】
電圧切替手段11は、電流制御手段5の電圧指令V0と予備励磁演算手段8の電圧指令Vを入力し、電圧指令V*を出力する。電力変換器に出力する電圧指令V*を、制御切替信号CHが1の時は予備励磁演算手段8の電圧指令V1に、制御切替信号CHが1以外の時は電流制御手段5の電圧指令V0に切替える。
【0014】
以上の構造にすることにより、誘導機1の始動時に予備励磁演算、初期速度演算、速度演算の順に演算しスムーズな速度推定が出来るようになる。また速度演算手段7と予備励磁演算手段8と初期速度演算手段9に入力される電圧指令V*の代わりに、電圧検出器2で検出される入力電圧vを用いても同等な速度推定が出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−285300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
すなわち、請求項1に係る発明によれば、速度指令(ωm*)を入力し制御切替信号(CH)を出力する制御切替信号発生器と
導機の入力電流(i)と電圧指令(V*)を入力し、電圧(V1)と演算速度(ω11)
とを出力する予備励磁演算手段と
前記入力電流(i)と前記電圧指令(V*)と電圧(V0)とを入力し、演算速度(ω12)を出力する初期速度演算手段と
前記入力電流(i)と前記電圧指令(V*)と前記電圧(V0)とを入力し、算速度(ωm)を出力する速度演算手段と、
トルク指令(τ*)と、前記演算速度(ω11)と前記演算速度(ω12)と前記演算速度(ωm)を入力し、切替トルク指令(τ0*)と切替演算速度(ω1)とを出力する制御切替手段と、
磁束指令(φ*)と前記切替トルク指令(τ0*)と前記切替演算速度(ω1)を入力し、電流指令(Id*、Iq*)と速度指令(ωm*)を出力する制御指令作成手段と、
前記入力電流(i)と前記電流指令(Id*、Iq*)と前記速度指令(ωm*)を入力し、前記電圧(V0)を出力する前記電流制御手段と、
記電圧(V0)と前記電圧(V1)を入力し、電力変換器に出力される前記電圧指令(V*)を切替える電圧切替手段を有する誘導機制御装置において、
前記入力電流(i)と前記電圧指令(V*)とを入力し、前記制御切替手段に演算速度(ω13)を出力し、前記初期速度演算手段に演算二次磁束(Ψ23)の二分の一の値を出力する初期速度演算準備手段を追加することを特徴とする。
【0017】
図4は残留磁束がある場合の制御の例である。101は予備励磁演算手段7で式(1)、式(2)よって演算される二次磁束Ψ2が描くベクトル軌跡、102は予備励磁演算手段7で演算される初期速度演算手段9の初期磁束となる予備励磁演算手段8の演算二次磁束Ψ21、103は初期速度演算手段9で式(1)、式(2)よって演算される二次磁束Ψ2が描く二次磁束のベクトル軌跡である。
【0018】
始動時に残留磁束Ψ20がある場合、式(3)は式(12)となる。
【数12】
予備励磁演算手段7で速度を推定後、初期速度演算手段9の初期値の予備励磁演算手段8の演算二次磁束Ψ21を演算する時に残留磁束Ψ20がある場合、式(12)により予備励磁演算手段8の演算二次磁束Ψ21が残留磁束Ψ20を含むことで、原点を中心にするベクトル軌跡を描く実際の磁束からずれた値になり、初期速度演算手段9が式(1)、式(2)を用いて演算する二次磁束Ψ2は103の様に、中心点が原点からずれたベクトル軌跡を描き始める。
【0019】
その結果、初期速度演算手段9は原点からずれた二次磁束Ψ2を修正するため、速度推定に時間がかかってしまったり、磁束のずれを修正できない場合、速度推定が出来ず起動が出来なくなってしまう現象が起きる。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述の問題点を解決するために、制御切替信号発生器12の代わりに制御切替信号CHを出力する第2の制御切替信号発生器14と、制御切替手段10に初期速度演算準備手段13の演算速度ω13と初期速度演算手段9に一定時間後の初期速度演算準備手段13の演算二次磁束Ψ23の半分の値を出力する初期速度演算準備手段13を追加する。
【0021】
すなわち、 速度指令(ωm*)を入力し制御切替信号(CH)を出力する制御切替信号発生器と、前記制御切替信号(CH)で、誘導機の入力電流(i)と電圧指令(V*)を入力し、電圧切替手段に予備励磁演算手段の電圧(V1)を出力し、制御切替手段に予備励磁演算手段の演算速度(ω11)を出力し、初期速度演算手段に予備励磁演算手段の演算二次磁束(Ψ21)を出力する予備励磁演算手段と、前記制御切替信号で、誘導機の入力電流(i)と電圧指令(V*)と予備励磁演算手段の演算二次磁束(Ψ21)を入力し、前記制御切替手段に初期速度演算手段の演算速度(ω12)を出力する初期速度演算手段と、前記制御切替信号で、誘導機の入力電流(i)と電圧指令(V*)を入力し、前記制御切替手段に速度演算手段の演算速度(ωm)を出力する速度演算手段と、前記制御切替信号(CH)で、トルク指令(τ*)と、前記予備励磁演算手段の演算速度(ω11)と前記初期速度演算手段の演算速度(ω12)と前記速度演算手段の演算速度(ωm)を入力し、制御指令作成手段に出力される切替トルク指令(τ0*)と切替演算速度(ω1)を切替える制御切替手段と、磁束指令(φ*)と前記制御切替手段から切替トルク指令(τ0*)と切替演算速度(ω1)を入力し、電流制御手段に電流指令(Id*、Iq*)と速度指令(ωm*)を出力し前記制御切替信号発生器に速度指令(ωm*)を出力する前記制御指令作成手段と、前記誘導機の入力電流(i)と前記制御指令作成手段から電流指令(Id*、Iq*)と速度指令(ωm*)を入力し、電圧切替手段に電流制御手段の電圧(V0)を出力する前記電流制御手段と、前記制御切替信号(CH)で電流制御手段の電圧(V0)と予備励磁演算手段の電圧(V1)を入力し、電力変換器に出力される電圧指令(V*)を切替える電圧切替手段を有する誘導機制御装置において、前記制御切替信号発生器の代わりに速度指令(ωm*)を入力し、制御切替信号(CH)を出力する第2の制御切替信号発生器を備え、前記制御切替信号(CH)により、誘導機の入力電流(i)と電圧指令(V*)を入力し、制御切替手段に初期速度演算準備手段の演算速度(ω13)を出力し、初期速度演算手段に初期速度演算準備手段の演算二次磁束(Ψ23)の二分の一の値を出力する初期速度演算準備手段を追加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
誘導機の起動時に残留磁束がある場合でも、初期速度演算時に二次磁束Ψ2のベクトル軌跡が原点を中心に回る様に修正し、スムーズな速度推定が出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。
図2図2は、一従来例を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の一実施例が描く磁束のベクトル図である。
図4図4は、一従来例が描く磁束のベクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
初期速度演算準備手段13と制御切替信号発生器12の代わりに第2の制御切替信号発生器14を新たに追加し、起動時に残留磁束がある場合でも、初期速度演算時に二次磁束Ψ2のベクトル軌跡が原点を中心に回る様に修正し、スムーズな速度推定が出来るようになる。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。13は初期速度演算準備手段、14は第2の制御切替信号発生器である。
【0026】
第2の制御切替信号発生器14は、速度指令ωm*を入力し、制御切替信号CHを出力する。制御切替信号CHは、始動時に1となり、予備励磁演算手段8で速度指令ωm*を演算する所定時間後に3となり、初期速度演算準備手段13で初期速度演算準備手段13の演算二次磁束Ψ23のベクトル軌跡が半周する一定時間後に2となり、初期速度演算手段12で磁束が速度演算の出来る大きさにまで速度指令ωm*を実速度に追従した後に0となる。
【0027】
初期速度演算準備手段13は、電圧指令V*と入力電流iを入力し、初期速度演算準備手段13の演算速度ω13と初期速度演算準備手段13の演算二次磁束Ψ23を出力する。初期速度演算時に、二次磁束Ψ2のベクトル軌跡が原点を中心に回る様に修正するため、制御切替信号CHが3の時、二次磁束の初期値を0とし、速度を予備励磁演算で演算された予備励磁演算手段8の演算速度ω11で固定して、電圧指令V*と誘導機1の入力電流iから式(1)、式(2)を用いて初期速度演算準備手段13の演算二次磁束Ψ23を、初期速度演算準備手段13の演算二次磁束Ψ23のベクトル軌跡が半周する一定時間の間演算し、一定時間後に初期速度演算手段9に初期速度として予備励磁演算手段8の演算速度ω11と同じ初期速度演算準備手段13の演算速度ω13と、初期磁束として一定時間後の初期速度演算準備手段13の演算二次磁束Ψ23の半分の値を出力する。
【0028】
制御切替手段10は、予備励磁演算手段8の演算速度ω11と初期速度演算手段9の演算速度ω12と初期速度演算準備手段13の演算速度ω13と速度推定手段7の演算速度ωmとトルク指令τ*を入力し、切替トルク指令τ0*と切替演算速度ω1を出力する。制御指令作成手段6に出力する切替トルク指令τ0*と切替演算速度ω1を、制御切替信号CHが1の時は予備励磁演算手段8の演算速度ω11とトルク指令0に、制御切替信号CHが3の時は初期速度演算準備手段13の演算速度ω13とトルク指令0に、制御切替信号CHが2の時は初期速度演算手段9の演算速度ω12とトルク指令0に、制御切替信号CHが0の時は速度演算手段7の演算速度ωmとトルク指令τ*に切替える。
【0029】
図3は初期速度演算準備手段13を追加し残留磁束がある場合の制御の例である。104は式(1)、式(2)よって演算される初期速度演算準備手段13の演算二次磁束Ψ23が描くベクトル軌跡、105は初期速度演算準備手段13で演算される初期速度演算手段9の初期磁束となる一定時間後の初期速度演算準備手段13の演算二次磁束Ψ23の半分の値である。予備励磁演算手段7で速度を推定後、その速度で初期速度演算準備手段13により磁束ベクトルを半周回転した後、磁束を半分にして初期速度演算手段9の初期値にすることで、初期速度演算手段9の二次磁束が描くベクトル軌跡の中心が原点になるような初期速度演算手段9の初期磁束に修正する。
【0030】
以上の構造にすることにより、誘導機1の起動時に残留磁束がある場合でも、初期速度演算手段9を行う前に初期速度演算準備手段13を行うことで、初期速度演算手段9で演算される二次磁束Ψ2のベクトル軌跡の中心点を修正し、原点を中心に回転することでスムーズな速度推定が出来るようになる。また速度演算手段7と予備励磁演算手段8と初期速度演算手段9と初期速度演算準備手段13に入力される電圧指令V*の代わりに、電圧検出器2で検出される入力電圧vを用いても同等な速度推定が出来る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
誘導機の始動時に残留磁束がある場合でも、スムーズな速度推定が出来るようになる。
【符号の説明】
【0032】
1 誘導機
2 電圧検出器
3 電流検出器
4 電力変換器
5 電流制御手段
6 制御指令作成手段
7 速度演算手段
8 予備励磁演算手段
9 初期速度演算手段
10 制御切替手段
11 電圧切替手段
12 制御切替信号発生器
13 初期速度演算準備手段
14 第2の制御切替信号発生器
101 予備励磁演算手段7が描く二次磁束のベクトル軌跡、
102 予備励磁演算手段7の所定時間後の演算二次磁束Ψ21
103 初期速度演算手段9が描く二次磁束のベクトル軌跡
104 初期速度演算準備手段13が描く二次磁束のベクトル軌跡
105 初期速度演算準備手段13の一定時間後の演算二次磁束Ψ23の半分の値


v・・・・入力電圧
i・・・・入力電流
ω1・・・・切替演算速度
ω11・・・・予備励磁演算手段の演算速度
ω12・・・・初期速度演算手段の演算速度
ω13・・・・初期速度演算準備手段の演算速度
ωm・・・・速度演算手段の演算速度
Ψ21・・・・予備励磁演算手段の演算二次磁束
Ψ23・・・・初期速度演算準備手段の演算二次磁束
V0 ・・・・電流制御手段の電圧
V1・・・・予備励磁演算手段の電圧
V*・・・・電圧指令
φ*・・・・磁束指令
τ*・・・・トルク指令
τ0*・・・・切替トルク指令
d*・・・・d軸電流指令
q*・・・・q軸電流指令
ωm*・・・・速度指令
CH・・・・制御切替信号
図1
図2
図3
図4