特許第6021147号(P6021147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021147
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   H02P9/00 F
   H02P9/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-195689(P2012-195689)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-54036(P2014-54036A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野村 英児
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−043184(JP,A)
【文献】 特開2003−322042(JP,A)
【文献】 特開2004−147423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00−9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車で駆動される発電機と、発電機の交流発電出力を直流に変換する整流器と、整流器の出力に接続されたフィルタコンデンサと、複数のスイッチング素子が複数相の回路を構成し、前記整流器の出力に接続された系統インバータと、前記系統インバータが出力する矩形波状の電圧を正弦波に変換する交流リアクトル及び交流コンデンサと、前記交流リアクトルの出力に接続し、商用系統との接続・釈放を行う商用系統開放接触器と、前記発電機の回転数を検出する回転センサと、前記フィルタコンデンサに印加される電圧を検出する第1の電圧センサと、交流リアクトルの出力側の電圧を検出する第2の電圧センサと、商用系統に出力される電流を検出する電流センサと、商用系統の電圧を検出する第3の電圧センサと、前記回転センサで検出した回転数に基づき出力電力指令を演算する手段と、交流リアクトルの出力側の電圧を検出する前記第2の電圧センサで検出した電圧に基づき出力電圧の実効値を演算する手段と、前記出力電力指令及び出力電圧実効値に基づき出力電流指令を演算する手段と、商用系統の電圧を検出する前記第3の電圧センサで検出した電圧に基づき電圧位相を演算する手段と、前記出力電流指令及び電圧位相及び出力電流に基づき前記系統インバータが出力する3相電圧指令を演算する3相電圧指令演算部と、前記フィルタコンデンサに印加された電圧及びキャリア信号に基づき前記インバータを構成する複数のスイッチング素子へのゲート信号を生成する手段を備えた風力発電装置において、発電機の回転数に基づき系統インバータの出力する電力を制御する事を特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
請求項1において、前記3相電圧指令演算部に外部からの力率指令を入力し、力率を固定では無く、可変にすることにより、商用系統側の電圧上昇を防ぐことができる事を特徴とする風力発電装置。
【請求項3】
請求項1において、出力電力指令の演算に、発電機回転数に対して一定の関数では無く、最大電力点追従制御方式を用いることにより、より効率的に風車から電力を取り出すことができる事を特徴とする風力発電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力を利用して発電する風力発電システムに係わり、風力に対して効率的な発電を行う風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電システムでは、風車で得られたエネルギーを商用系統に効率よく配給するために、発電機出力をコンバータにて一旦直流に変換し、変換した直流をインバータにて交流に変換、商用系統に配給している(例えば、特許文献1参照)
【0003】
図4は従来の風力発電システムの主回路構成図の一例である。
【0004】
図4において、1は風車、2は発電機、51はコンバータ、4はフィルタコンデンサ、5は系統インバータ、6は交流リアクトル、7は交流コンデンサ、8は商用系統開放接触器、9は商用系統である。
【0005】
コンバータ51は、スイッチング素子52〜57と、それぞれのスイッチング素子52〜57に逆並列接続されるフリーホイールダイオード58〜63とを備えて構成される。スイッチング素子52、53は直列接続しコンバータ51のR相アームを構成し、スイッチング素子54、55は直列接続しコンバータ51のS相アームを構成し、スイッチング素子56、57は直列接続しコンバータ51のT相アームを構成し、コンバータ51の出力にフィルタコンデンサ4が接続される。各相の位相が互いに120度ずつずれるようにスイッチング素子52〜57をオン・オフして制御することにより、コンバータ回路51の入力に接続された発電機2を制御する。
【0006】
系統インバータ5は、入力側にフィルタコンデンサ4を接続し、スイッチング素子27〜32と、それぞれのスイッチング素子27〜32に逆並列接続されるフリーホイールダイオード33〜38とを備えて構成される。スイッチング素子27、28は直列接続し系統インバータ5のU相アームを構成し、スイッチング素子29、30は直列接続し系統インバータ5のV相アームを構成し、スイッチング素子31、32は直列接続し系統インバータ5のW相アームを構成している。各相の位相が互いに120度ずつずれるようにスイッチング素子27〜32をオン・オフして制御することにより、系統インバータ5の出力側に接続された商用系統に交流を出力する。
【0007】
交流リアクトル6と交流コンデンサ7は、交流フィルタを構成し、系統インバータ5が出力する矩形波状の電圧を正弦波に変換する。
【0008】
商用系統開放接触器8は、交流リアクトル6を通した交流出力を連係しようとしている商用系統に対して、開放・釈放を行う。
【0009】
コンバータ回路51は、発電機2の制御において、回転数やトルクで制御する場合が多い。
【0010】
また、発電機2の制御に有効電力を用いているものもある。(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
系統インバータ5は、コンバータ51の直流出力を電源とし、商用系統に電圧・周波数および位相制御した交流出力に変換する
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許3435474公報
【特許文献2】特開2011−217574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来技術では発電機制御にコンバータ、系統側制御に系統インバータの2つの能動的な電力変換装置が必要となる。
【0014】
また、能動的な電力変換装置が多くなると、制御電源等の待機電力の増加、電力変換装置の能動素子のスイッチング損失の増加があるため、冷却機構等が大きくなり、装置の小型化が困難となる。
【0015】
そこで、本発明では、発電機用のコンバータは能動素子による変換器では無く、受動素子のダイオードによる変換器とし、発電機の制御を系統用インバータが行うことで、装置の小型化・待機電力の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、風車で駆動される発電機と、発電機の交流発電出力を直流に変換する整流器と、整流器の出力に接続されたフィルタコンデンサと、複数のスイッチング素子が複数相の回路を構成し、前記整流器の出力に接続された系統インバータと、前記系統インバータが出力する矩形波状の電圧を正弦波に変換する交流リアクトル及び交流コンデンサと、前記交流リアクトルの出力に接続し、商用系統との接続・釈放を行う商用系統開放接触器と、前記発電機の回転数を検出する回転センサと、前記フィルタコンデンサに印加される電圧を検出する第1の電圧センサと、交流リアクトルの出力側の電圧を検出する第2の電圧センサと、商用系統に出力される電流を検出する電流センサと、商用系統の電圧を検出する第3の電圧センサと、前記回転センサで検出した回転数に基づき出力電力指令を演算する手段と、交流リアクトルの出力側の電圧を検出する前記第2の電圧センサで検出した電圧に基づき出力電圧の実効値を演算する手段と、前記出力電力指令及び出力電圧実効値に基づき出力電流指令を演算する手段と、商用系統の電圧を検出する前記第3の電圧センサで検出した電圧に基づき電圧位相を演算する手段と、前記出力電流指令及び電圧位相及び出力電流に基づき前記系統インバータが出力する3相電圧指令を演算する3相電圧指令演算部と、前記フィルタコンデンサに印加された電圧及びキャリア信号に基づき前記インバータを構成する複数のスイッチング素子へのゲート信号を生成する手段を備えた風力発電装置において、発電機の回転数に基づき系統インバータの出力する電力を制御する事を特徴とする。

【0017】
これにより、発電機制御用のコンバータを使用せずに、系統用のインバータが発電機の制御も兼ねる事ができ、風力発電装置全体の小型化、能動素子の削減による待機電力の削減をすることができる。
【0018】
また、商用系統への出力の力率は固定では無く、可変した任意の力率でも良い。
【0019】
また、発電機の回転数に基づきインバータの出力する電力を制御は固定値では無く、最大電力点追従制御(MPPT制御;Maximum Power Point Tracker制御)でも良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上述したインバータを有する風力発電装置において、風力発電装置全体の小型化、能動素子の削減による待機電力の削減をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る風力発電装置の回路を示す図である。(実施例1)
図2】本発明に係る制御ブロック構成の一例を示す図である。(実施例1)
図3】本発明に係る制御ブロック構成の一例を示す図である。(実施例1)
図4】従来の技術による風力発電装置の回路を示す図である。
図5】本発明に係る制御ブロック構成の一例を示す図である。(実施例2)
図6】本発明に係る制御ブロック構成の一例を示す図である。(実施例2)
図7】本発明に係る制御ブロック構成の一例を示す図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の実施例1に関わる風力発電装置を示す図、図2は本発明の実施例1に関わる制御ブロック構成の一例を示す図、図3は本発明の実施例1に関わる制御ブロック構成の一例を示す図である。
【0024】
図1において、風力発電装置は、風車1と、発電機2と、整流器3と、フィルタコンデンサ4と、系統インバータ5と、交流リアクトル6と、交流コンデンサ7と、商用系統開放接触器8と、回転センサ11と、電圧センサ12〜15及び18〜19と、電流センサ16及び17と、制御部71とを備える。
【0025】
整流器3は、ダイオード21〜26を備えて構成される。ダイオード21、22は直列接続し整流器3のR相アームを構成し、ダイオード23、24は直列接続し整流器3のS相アームを構成し、ダイオード25、26は直列接続し整流器3のT相アームを構成している。これらにより、発電機2の交流発電出力を直流に変換する。
【0026】
フィルタコンデンサ4は、整流器3で変換した直流を平滑する。
【0027】
系統インバータ5は、スイッチング素子27〜32と、それぞれのスイッチング素子27〜32に逆並列接続されるフリーホイールダイオード33〜38とを備えて構成される。スイッチング素子27、28は直列接続しインバータ5のU相アームを構成し、スイッチング素子29、30は直列接続しインバータ5のV相アームを構成し、スイッチング素子31、32は直列接続しインバータ5のW相アームを構成している。各相の位相が互いに120度ずつずれるようにスイッチング素子27〜32をオン・オフして制御することにより、系統インバータ5の出力側に接続された商用系統に交流を出力する。
【0028】
交流リアクトル6と交流コンデンサ7は、交流フィルタを構成し、系統インバータ5が出力する矩形波状の電圧を正弦波に変換する。
【0029】
商用系統開放接触器8は、交流リアクトル6を通した交流出力を連係する商用系統に対して、開放・釈放を行う。
【0030】
回転センサ11は、発電機2の回転数Ngを検出する。
【0031】
電圧センサ12は、フィルタコンデンサ4に印加されている電圧Vcを検出する。
【0032】
電圧センサ13〜15は、交流リアクトル6の出力側に印加されている3相出力電圧Vu、Vv、Vwを検出する。
【0033】
電流センサ16及び17は、商用系統に出力する3相出力電流Iu、Iwを検出する。
【0034】
電圧センサ18及び19は、商用系統の系統電圧VLu、VLvを検出する。
【0035】
制御部71は、回転センサ11、電圧センサ12〜15、電流センサ16及び17、電圧センサ18及び19から値を入力し、系統インバータ5のスイッチング素子に対してゲート信号Gup、Gun、Gvp、Gvn、Gwp、Gwnを出力する。
【0036】
図2は、制御部71の構成を示しており、制御部71は、出力電力指令演算部72Aと、出力電圧実効値演算部73と、除算器74と、系統電圧位相演算部75と、3相電圧指令演算部76Aと、ゲート信号生成部77とを備える。
【0037】
出力電力指令演算部72Aは、発電機回転数Ngに基づき、系統インバータ5が商用系統に出力する出力電力指令Pout*を演算する。
【0038】
出力電圧実効値演算部73は、3相出力電圧Vu、Vv、Vwに基づき、出力電圧実効値Voutを演算する。
【0039】
除算器74は、出力電力指令Pout*を出力電圧実効値Voutで除算し、出力電流指令Iout*を演算する。
【0040】
系統電圧位相演算部75は、系統電圧VLu、VLvに基づき、PLL演算(Phase
Locked Loop;位相同期演算)を行い、系統電圧の位相θを演算する。
【0041】
3相電圧指令演算部76Aは、3相出力電流Iu、Iwと、系統電圧位相θと、出力電流指令Iout*に基づき、3相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を演算する。
【0042】
ゲート信号生成部77は、3相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*と、キャリア信号と、電圧Vcに基づき、ゲート信号を生成する。例えば、キャリア信号を三角波とし、電圧指令とキャリア信号を比較する三角波比較方式を使用する。このゲート信号は、系統インバータ5のスイッチング素子をオン、オフする。
【0043】
図3は、3相電圧指令演算部76Aの構成を示しており、3相電圧指令演算部76Aは、3相―dq座標変換部81と、電流指令生成部82Aと、減算部83及び84と、PI制御部85及び86と、dq座標―3相変換部87とを備える。
【0044】
3相−dq座標変換部81は、3相出力電流Iu、Iwと、系統電圧位相θに基づき、dq座標に対する電流Id、Iqに変換する。
【0045】
電流指令生成部82Aは、出力電流指令Iout*に基づき、dq座標に対する電流指令Id*、Iq* に変換する。
【0046】
減算器83は、電流指令Id*から電流Idを減算し、ΔIdを出力する。
【0047】
減算器84は、電流指令Iq*から電流Iqを減算し、ΔIqを出力する。
【0048】
PI制御部85は、ΔIdに基づき、PI演算を行い、電圧指令Vd*を出力する。
【0049】
PI制御部86は、ΔIqに基づき、PI演算を行い、電圧指令Vq*を出力する。
【0050】
dq座標−3相変換部87は、電圧指令Vd*、Vq*と、系統電圧位相θに基づき、3相座標に対する3相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*に変換する。
【実施例2】
【0051】
図5は、本発明の実施例2に関わる風力発電装置を示す図、図6は本発明の実施例2に関わる制御ブロック構成の一例を示す図である。本実施形態は、実施例1において、3相電圧指令演算部76Aに外部からの力率指令φをさらに入力するもので、72A、73〜75、77、81、83〜87は、図2図3と同じである。力率を固定では無く、可変にすることにより、商用系統側の電圧上昇等を防ぐことができる。

【0052】
3相電圧指令演算部76Bは、3相出力電流Iu、Iwと、系統電圧位相θと、出力電流指令Iout*と、力率指令φに基づき、3相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を演算する。
【0053】
電流指令生成部82Bは、出力電流指令Iout*と、力率指令φに基づき、dq座標に対する電流指令Id*、Iq* に変換する。
【実施例3】
【0054】
図7は、本発明の実施例3に関わる風力発電装置を示す図である。本実施形態は、実施例1の出力電力指令演算部72Aにおいて、回転数Ngに対して一定の関数では無く、最大電力点追従制御方式を用いる。最大電力点追従制御式出力電力指令演算部72B以外の73〜77は、図2と同じである。これにより、より効率的に風車から電力を取り出すことができる。
【0055】
出力電力指令演算部72Bは、発電機回転数Ngに基づき、最大電力点追従制御方式を用いて、系統インバータ5が商用系統に出力する出力電力指令Pout*を演算する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、風力を利用して発電する風力発電システムにおいて、装置の小型化及び待機電力の低減をすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 風車
2 発電機
3 整流器
4 フィルタコンデンサ
5 系統インバータ
6 交流リアクトル
7 交流コンデンサ
8 商用系統開放接触器
9 商用系統
11 回転センサ
12〜15 電圧センサ
16〜17 電流センサ
18〜19 電圧センサ
21〜26 ダイオード
27〜32 スイッチング素子
33〜38 フリーホイールダイオード
51 コンバータ
52〜57 スイッチング素子
58〜63 フリーホイールダイオード
71 制御部
72A、72B 出力電力指令演算部
73 出力電圧実効値演算部
74 除算器
75 系統電圧位相演算部
76A、76B 3相電圧指令演算部
77 ゲート信号生成部
81 3相―dq座標変換部
82A、82B 電流指令生成部
83〜84 減算器
85〜86 PI制御部
87 dq座標―3相変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7