特許第6021154号(P6021154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021154
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】高圧噴射水流に対するプロテクター
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   A41D13/00 102
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-61729(P2013-61729)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185409(P2014-185409A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】斧田 安弘
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−119906(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3151155(JP,U)
【文献】 特開平06−128421(JP,A)
【文献】 米国特許第06543055(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00−13/12,20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表カバー部、プロテクター本体部および裏カバー部を有し、前記プロテクター本体部を中層にして、その表側と裏側に、前記表カバー部と前記裏カバー部が配された高圧噴射水流に対するプロテクターであって、
プロテクター本体部、可撓性を有する帯状の金属薄板の複数枚が一部重畳した構造を有して並置されて所要の面積を呈して連繋された連繋構造を少なくとも有して形成され、前記金属薄板のそれぞれがハト目またはカシメによって芯地に対して係止されており、
前記表カバー部は、撥水加工された繊維生地を有し、
前記裏カバー部は、撥水加工された他の繊維生地と、導電性繊維糸を含むポリエステル織物とを有し、該導電性繊維糸を含むポリエステル織物が前記プロテクター本体部に隣接する位置に配置されていることを特徴とする高圧噴射水流に対するプロテクター。
【請求項2】
前記プロテクター本体部の全面積の90%以上の領域において、前記該金属薄板が2枚重ね以上で重畳して存在していることを特徴とする請求項1記載の高圧噴射水流に対するプロテクター。
【請求項3】
前記可撓性を有する帯状の金属薄板が、幅80mm〜165mmのステンレス鋼板であることを特徴とする請求項1または2記載の高圧噴射水流に対するプロテクター。
【請求項4】
前記可撓性を有する帯状の金属薄板が、厚さ0.05mm〜0.3mmのステンレス鋼板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高圧噴射水流に対するプロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射水流に対するプロテクターに関する。
【0002】
更に詳しくは、高圧の噴射水流を使用して、既設のコンクリート構造物のコンクリートを削ったりする際、あるいは鉄筋コンクリート構造物からコンクリートを剥がし取って鉄筋を露出させる際などに、該高圧噴射水流を噴射するホース・パイプを操作する作業者が、自身の身体に該高圧水流が当たるなどの事故によって重篤な外傷を受けることを防止するプロテクターに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、既設のコンクリート構造物に対する補修、改修工事を行うにあたり、該コンクリート構造物のコンクリートを削ったり、あるいは該構造物の内部にある鉄筋を露出させるために鉄筋コンクリート構造物からコンクリートを剥がし取ることが要請される場合がある。
【0004】
例えば、前者であれば、既設のコンクリート構造物のコンクリート剥落防止工事をする前の下地処理として行う場合、後者であれば、既設の鉄筋コンクリート構造物に対して耐震補強工事をする前の下地処理として行う場合などがある。
【0005】
このような要請に応える工法として、ウォータージェット工事法あるいはウォータージェット施工法と呼ばれる工法(以下、これらを総称して、「ウォータージェット工法」という)があり、この工法は、既設のコンクリート構造物・鉄筋コンクリート構造物に対して、高圧(通常、2000〜2500バールという非常に高い水圧)でノズルから噴射される水流を当てて、その衝撃力でコンクリートを削り、剥がし取るものである。
【0006】
この作業は、通常はロボットが行うことが多いが、ロボットの使用が適さない現場では、作業者が送水ホースに繋がれて先端に高圧水流噴射ノズルを有する噴射ノズル装置を持って行うことがある。
【0007】
作業者が作業をする場合、現場ごとに状況は異なるが、通常、作業者は高圧水流や粉砕されたコンクリート片などが身体に当たった場合等でも身体が損傷を受けることがないように、頭部・顔部から胴部、手足の先端部に至るまで身体を防護するプロテクターを着用して作業にあたる。プロテクターは、さまざまな現場環境・作業状況のなかで、極めて高圧の噴射水流やその反射水流から着用者の身体を保護することが役割である。
【0008】
すなわち、コンクリート構造物のコンクリートを破壊するほどに高圧でかつある程度継続性がある噴射水流が、自身の身体に当たるなどの事故によって作業者が重篤な外傷を受けることもある。特に、コンクリート構造物のコンクリートを破壊するような非常に高圧でかつある程度継続性がある噴射水流が、何らかの理由で作業者の身体に当たったときには重大な事態になりかねないのである。
【0009】
従来、こうした作業時に使用されるプロテクターとしては、撥水性のある合羽などしかなく、安全対策上の施策としては作業手順書等によるのが通常だった。しかし、高圧力である程度継続性がある噴射水流のエネルギーを跳ね返すという作用効果の点では、合羽などでは十分なものとはいえなかった。
【0010】
一方、強度および柔軟性を兼ね備え、かつ軽量化およびコストダウンを実現することのできるウォータージェットプロテクターとして、人体の部位の曲面に合わせて変形可能なシート状の保護部材の表裏面を被覆部材で覆ってあるプロテクター本体と、プロテクター本体を人体の部位に取付けるための装着部材とを備え、保護部材は、シート状の弾性部材と弾性部材よりも高硬度で網状の高硬度部材とを交互に積み重ねた積層構造であるウォータージェット作業用プロテクターに関する提案がされている(特許文献1)。
【0011】
しかし、特許文献1に記載のものでは、高圧で加えられる衝撃を跳ね返すという点、また、作業者の自由な動きを妨げるという点で、まだ改良の余地があると考えられるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012−82552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、ウォータージェット工法を施工する際に、ノズル操作をする作業者が、コンクリート構造物のコンクリートを破壊するほどに高圧でかつある程度継続性がある噴射水流やその反射水流が、自身の身体に当たるなどの事故によって重篤な外傷を受けることを防止するプロテクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成する本発明の高圧噴射水流に対するプロテクターは、以下の(1)に記載の構成を有する。
(1)表カバー部、プロテクター本体部および裏カバー部を有し、前記プロテクター本体部を中層にして、その表側と裏側に、前記表カバー部と前記裏カバー部が配された高圧噴射水流に対するプロテクターであって、
プロテクター本体部、可撓性を有する帯状の金属薄板の複数枚が一部重畳した構造を有して並置されて所要の面積を呈して連繋された連繋構造を少なくとも有して形成され、前記金属薄板のそれぞれがハト目またはカシメによって芯地に対して係止されており、
前記表カバー部は、撥水加工された繊維生地を有し、
前記裏カバー部は、撥水加工された他の繊維生地と、導電性繊維糸を含むポリエステル織物とを有し、該導電性繊維糸を含むポリエステル織物が前記プロテクター本体部に隣接する位置に配置されていることを特徴とする高圧噴射水流に対するプロテクター。
【0015】
また、かかる本発明の高圧噴射水流に対するプロテクターにおいて、好ましくは、以下の(2)〜(4)のいずれかの構成からなる。
(2)前記プロテクター本体部の全面積の90%以上の領域において、前記金属薄板が2枚重ね以上で重畳して存在していることを特徴とする上記(1)記載の高圧噴射水流に対するプロテクター。
(3)前記可撓性を有する帯状の金属薄板が、幅80mm〜165mmのステンレス鋼板であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の高圧噴射水流に対するプロテクター。
(4)前記可撓性を有する帯状の金属薄板が、厚さ0.05mm〜0.3mmのステンレス製鋼板であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高圧噴射水流に対するプロテクター。
【発明の効果】
【0016】
請求項1にかかる本発明の高圧噴射水流にするプロテクターによれば、ウォータージェット工法を施工する際に、ノズル操作をする作業者が、プロテクターにコンクリート構造物のコンクリートを破壊するほどに高圧で、かつある程度継続性がある噴射水流が、自身の身体に当たるなどの事故によって重篤な外傷を受けることを効果的に防止できるプロテクターが提供される。
【0017】
すなわち、本発明の高圧噴射水流にするプロテクターを着用していれば、噴射水流が身体に当たったとしてもその衝撃エネルギーを跳ね返すことができ、外傷を受けることを防止できる。
【0018】
請求項2〜請求項4のいずれかにかかる本発明の高圧噴射水流に対するプロテクターによれば、上述した請求項1にかかる高圧噴射水流に対するプロテクターの効果を有するとともに、その効果をより確実に大きく発揮できる高圧噴射水流に対するプロテクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にかかる高圧噴射水流に対するプロテクターの外観構造の1態様例をモデル的に説明する正面図である。
図2】(a)、(b)はいずれも、本発明にかかる高圧噴射水流に対するプロテクターにおけるプロテクター本体部の金属薄板の重畳している例をモデル的に説明する側面図である。
図3】本発明にかかる高圧噴射水流に対するプロテクターを、表カバーおよび裏カバーでカバーして使用する場合のそれらの積層構造の1例を説明する断面図である。
図4】本発明にかかる高圧噴射水流に対するプロテクターの外形構造の態様例をモデル的に説明する正面図である。
図5】(a)〜(c)はいずれも、本発明にかかる高圧噴射水流に対するプロテクターの外形構造の態様例をモデル的に説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面などを参照しながら、更に詳しく、本発明の高圧噴射水流に対するプロテクターについて説明する。
【0021】
図1に示したように、本発明の高圧噴射水流に対するプロテクター1は、帯状の可撓性を有する金属薄板2、3の複数枚が一部重畳した構造を有して並置されて所要の面積を呈して連繋された連繋構造を少なくとも有して形成されている。
【0022】
本発明の高圧噴射水流に対するプロテクター1は、ウォータージェット工法の施工時において、作業者が、2000〜2500バールのような高圧でかつある程度継続性がある噴射水流の直撃を受けた場合でも、帯状の可撓性を有する金属薄板2、3の複数枚が一部重畳した構造を有して並置されて連繋された構造によって、その衝撃エネルギーを跳ね返すことができ、作業者が外傷を受けることを良好に防止できる。この効果は、高圧噴射水流に対するだけでなく、破壊されたコンクリート片が衝突する場合に対しても同様である。
【0023】
また、プロテクター1は、帯状の可撓性を有する金属薄板2、3の複数枚が一部重畳した構造を有して並置されて連繋された連繋構造を有していることにより、プロテクター1の全面積の90%以上の領域において、それら金属薄板2、3が2枚重ね以上で存在していることが好ましい。より好ましくは、プロテクター1の全面積の95%以上の領域において、金属薄板2、3が2枚重ね以上で存在していることである。
【0024】
また、好ましくは、プロテクター1の全面積の90%以上の領域において、それら金属薄板2、3が2枚重ねで存在していることが好ましい。より好ましくは、プロテクター1の全面積の95%以上の領域において、金属薄板2、3が2枚重ねで存在していることである。3枚重ね部分が多くなると、全体の重量が増加し、その点での着用者の負担が大きくなるからである。
【0025】
図2は、そのプロテクター1の金属薄板2、3が重畳して存在している例をモデル的に説明したものであり、図2(a)に示したように、同じ幅を有する金属薄板2、3が一定の移相(ずれ)をもって前後に交互に配置されているものでもよく、あるいは、図2(b)に示したように、前後に交互でなく、竹の子バネのように一定の側に重畳されているものでもよい。この図2(a)、(b)のものは、いずれもプロテクター1の全面積の90%以上の領域において、金属薄板2、3が2枚重ねで存在していると解されるものである。
【0026】
プロテクター1を形成する可撓性を有する帯状の金属薄板2、3は、幅80mm〜165mmのステンレス鋼板であることが好ましい。幅80mm〜165mmの範囲内にある金属薄板2、3を重畳して使用することにより、衝撃エネルギーを跳ね返す効果を大きく発揮することができる。金属薄板の材質は、腐食しないことからステンレス鋼板であることが好ましいが、特に限定されず、また、一部他素材の金属薄板を混合して使用してもよい。
【0027】
可撓性を有する帯状の金属薄板2、3は、厚さ0.05mm〜0.3mmであることが好ましい。金属薄板2、3が可撓性を有することは、衝撃エネルギーを跳ね返す効果を大きく発揮する上で重要であり、厚さが0.3mmよりも厚い場合は、全体重量が大きくなり作業者の負担が増大することや、適度な可撓性を得ることが難しく、衝撃エネルギーを跳ね返す効果を大きく得ることが難しくなる方向であるので好ましくない。また、0.05mmよりも薄い場合には、強度面の問題や折れ込んだりする結果、全体としての衝撃エネルギーを跳ね返す効果が小さくなり好ましくない。
【0028】
本発明の高圧噴射水流に対するプロテクター1を作業者が着用して作業に臨むにあたっては、該プロテクター1の全体を覆うカバーや、全体の形態を安定させる芯地などとともに使用すること、具体的には、それら表裏のカバーや芯地などと積層させた構成にして使用することが好ましい。
【0029】
例えば、図3に積層構造の1例を示したように、少なくとも、表カバー部4、プロテクター本体部5および裏カバー部6を有し、プロテクター本体部5は、帯状の可撓性を有する金属薄板2、3の複数枚が一部重畳した構造を有して並置されて所要の面積を呈して連繋された連繋構造を少なくとも有し、表カバー部4は撥水加工された繊維生地7を少なくとも有し、裏カバー部6は撥水加工された繊維生地8とアラミド繊維からなる繊維シート9を少なくとも含んだ2層以上の積層構造を有し、かつ、表カバー部4、プロテクター本体部5および裏カバー部6は、該プロテクター本体部5を中層にして、その表側と裏側に、表カバー部4と裏カバー部6が配され、かつ裏カバー部6側が被着用者の身体側にして、防護服10として着用されて使用されることが好ましい。
【0030】
プロテクター本体部5は、その表側と裏側に、表カバー部4と裏カバー部6が配され、該表カバー部4は撥水加工された繊維生地7を少なくとも有していること、かつ、該裏カバー部6も撥水加工された繊維生地8を少なくとも有していることから、防護服10は、水が当たったとしても全体的には水を含んだ状態にはならず、これにより、内層におけるプロテクター本体部5の可撓性を有する帯状の金属薄板2、3の動きを阻害することが少なく、上述した衝撃エネルギーを跳ね返す効果を良好に持続して発揮することができる。
【0031】
これに対して、表カバー部4と裏カバー部6に撥水加工された繊維生地が使用されていない場合には、表カバー部、裏カバー部が水を含んで濡れてしまい、そのため、内層におけるプロテクター本体部5の帯状の可撓性を有する金属薄板2、3の動きを阻害することとなり好ましくない。
【0032】
図3に示したように、表カバー部4の撥水加工された繊維生地7は該防護服10の表側の表面層を構成し、裏カバー部6の撥水加工された繊維生地8は該防護服10の裏側の表面層を構成していることが、上述した水濡れ防止効果を発揮する上で好ましい。
【0033】
すなわち、表カバー部4は撥水加工された繊維生地7を少なくとも有していて、該撥水加工された繊維生地7の部分において水をはじくことにより、少なくともプロテクターの内部では金属薄板の動きが阻害されることがないようにする。表カバー部4は、主たる役割が内部への水の浸入防止であり、図3に示したように、撥水加工された繊維生地7が単独で表カバー部4を構成していてもよい。撥水加工された繊維生地7は、好ましくは、ポリエステルまたはナイロンからなる高密度織物であり、目付200〜300g/m2 のものが好ましい。
【0034】
一方、裏カバー部6は、プロテクター本体部5の身体側に位置し、着用者を高圧噴射水流から最後に守る役割を有することから、強靱であることが重要であり、同時にまた、表カバー部4と同様に、内部への水の浸入を防止し、少なくともプロテクターの内部では金属薄板2、3の動きが阻害されることがないようにすることが要請され重要である。
【0035】
このような要請から、裏カバー部6は、撥水加工された繊維生地8とアラミド繊維からなる繊維シート9を少なくとも含んだ2層以上の積層構造を有するように構成することが好ましい。
【0036】
図3に示したように、該撥水加工された繊維生地8は、表側と同様、表面層として配されることが好ましく、アラミド繊維からなる繊維シート9は、その内部側(表側)に配されることが好ましい。撥水加工された繊維生地9は、好ましくは、表カバー部4に使用される撥水加工された繊維生地7と同様のものであってもよい。
【0037】
また、アラミド繊維からなる繊維シート9は、高圧の水流やコンクリート破片が衝突したときの衝撃に対する緩衝材として、フェルト状のものが、あらゆる方向に強力を発揮しやすいことから好ましい。アラミド繊維は、パラ系アラミド繊維が望ましい。
【0038】
また、本発明のプロテクターは、金属薄板等の積層構造を有していることから帯電することがあり得て、帯電を防止するために、裏カバー部6は、図3に示したように、導電性繊維糸を含むポリエステル織物13を含んで構成するようにしてもよい。
【0039】
本発明のプロテクター1は、表カバー部4と裏カバー部6からなる封筒状のような袋を作り、その内部にプロテクター本体部5を入れて適宜の手段で、互いにずれたりしないように全体を固定するのがよい。
【0040】
プロテクター本体部5は、図3に示したように、複数枚の可撓性を有する帯状の金属薄板2、3のそれぞれがポリエステル繊維からなる芯地11に係止されて構成されていることが好ましい。ポリエステル繊維は、強度も高くまた耐水性、寸法安定性などが優れており、その適度な目付を有する平織物は金属薄板を係止して保持するのに最適なことによる。該芯地11をなすポリエステル繊維の織物は、目付500〜800g/m2 のものであることが好ましい。該目付を有する平織物は、一般的に帆布と呼ばれる厚手の平織物であり、耐引裂き性、織物強力、耐久性に優れているので、本発明にかかる防護服の芯地として最適である。
【0041】
ここで、「芯地」とは、プロテクター(特に、プロテクター本体部)の全体の形態を保持し、かつ複数の金属薄板を係止してそれらの配置位置を固定的に維持する機能を有する基材を意味している。
【0042】
複数枚の可撓性を有する帯状の金属薄板2、3のそれぞれは、全体が該芯地に固定的に保持されて一体的にされ、さらにその全体が上述したように封筒状のような袋の内部に納められ状態で着用者が着用することにより、作業者が金属薄板によって負傷することが防止される。
【0043】
図4は、プロテクター本体部5の外形構造の1例モデルとして、着用者の肩から足元までをカバーする全身対応サイズのエプロン型プロテクター本体部5を示している。この例では、プロテクター本体部5のエプロン型の輪郭構造を呈する芯地11に対し、その長尺方向を水平方向にして配置された複数枚の帯状の可撓性を有する金属薄板2、3のそれぞれが、ハト目またはカシメ12によって係止されている。ハト目またはカシメ12による係止は、自由度を確保するために、該帯状薄板2、3の両端部付近よりも中央側で行うのが良く、かつ、該帯状薄板2、3の幅の大小にも応じて、垂直方向で該帯状薄板の中央付近で1箇所あるいは上下寄り付近で2箇所で行うのが良い。16は首掛けひもの通し孔である。
【0044】
図4において、14は胸から腰付近までの領域位置を示しており、この領域では、帯状の金属薄板を長尺方向に、より短い寸法のもの(1/3〜1/5程度のもの)20、30を使用して、同図に描いているように帯状薄板の長尺方向(プロテクターの水平方向)に一部分を重畳するようにして使用している。このようにしてプロテクター本体部を形成すると、該領域14では金属薄板20、30の重畳部分15がさらに垂直方向にも複数箇所連続的に存在する構造となり、腰を屈曲させる動きを妨げることがなく、また、着用者の胴部を防護する機能がいっそう強力となり好ましい。
【0045】
図5(a)〜(c)はいずれも、本発明にかかる高圧噴射水流に対するプロテクター1におけるプロテクター本体部の外形構造の他の態様例をモデル的に説明する正面図であり、(a)と(b)はいずれも胸から腰までの上半身のカバー用のもの、(c)は腰から足元までの下半身のカバー用のものを示しており、ハト目またはカシメは図示せずに省略している。
【0046】
防護服10は、着用者が着用できる形態のものであれば、図4図5に示したものに限定されず、他の形態のもので構成してもよい。例えば、片足だけを主に保護するようにしたものなどもよく、例えば、図5(c)に示したタイプで垂直方向で2分割したものなどは、片足を保護するものとして有効である。
【符号の説明】
【0047】
1:高圧噴射水流に対するプロテクター
2:金属薄板
3:金属薄板
4:表カバー部
5:プロテクター本体部
6:裏カバー部
7、8:撥水加工された繊維生地
9:アラミド繊維からなる繊維シート
10:防護服
11:芯地(ポリエステル繊維の平織物)
12:ハト目またはカシメ
13:導電性繊維糸を含むポリエステル織物
14:プロテクター本体部の胸から腰付近までの位置
16:首掛けひもの通し孔
15:金属薄板20、30の重畳部分
20、30:より短い寸法の金属薄板
図1
図2
図3
図4
図5