【実施例1】
【0024】
以下に、本発明の第1実施例であるケーブル類保護案内装置100について説明する。
本発明の第1実施例であるケーブル類保護案内装置100は、
図1乃至
図6(C)に示すように、ケーブル類Cを備える機械(図示せず)に備えられて、このケーブル類Cを保護するとともに案内するために使用される。
前記機械は、例えば、半導体製造装置、創薬試験装置、車両用ドア開閉装置または工作機械である。
【0025】
ケーブル類保護案内装置100は、ケーブル長手方向Tにリンク部材(110、150)を複数連結して多関節リンク100Aを構成し、ケーブル類Cをケーブル固定端E2からケーブル移動端E1へ向かって案内して支持体160の支持面161と接触した直線姿勢と支持面161から離間した屈曲姿勢とを呈するように設けられている。
【0026】
さらに、多関節リンク100Aが、複数のリンク部材としての第1リンク部材110および第2リンク部材150と、この複数のリンク部材のうちの少なくとも一部である第1リンク部材110に取り付けられケーブル類Cを保持する挟持部材120とを備えている。
ここで、第1リンク部材110とは、挟持部材120が取り付けられているものをいう。
他方、第2リンク部材150とは、挟持部材120が取り付けられていないものをいう。
【0027】
そして、第2リンク部材150の構造は、基本的に第1リンク部材110と同様であり、後述する円形貫通穴113が無いまたは円形貫通穴113があっても挟持部材120が取り付けられていないだけの違いであるため、第2リンク部材150の具体的な構造の説明は省略する。
本発明では、少なくとも第1リンク部材110を一部に用いてケーブル長手方向Tに多数連結して多関節リンク100Aを構成していればよい。
つまり、第1リンク部材110と第1リンク部材110との間に第2リンク部材150を入れて連結してもよいし、入れずに第1リンク部材110だけを多数連結してもよい。
【0028】
そして、第1リンク部材110が、ケーブル長手方向一端側に形成された連結ピン111と、ケーブル長手方向他端側に形成され連結ピン111と回転自在に係合するピン孔112と、ケーブル長手方向Tで連結ピン111とピン孔112との間で多関節リンク幅方向Sに貫通した円形貫通穴113とを有している。
【0029】
また、挟持部材120が、円形貫通穴113と係合する円柱形基体部分121と、この円柱形基体部分121から多関節リンク幅方向外側に延びるとともに二股状に分かれて設けられケーブル類Cを多関節リンク屈曲内側および外側の両側から挟持する挟持部分122とを一体に有している。
本実施例では、多関節リンク幅方向左側に左側挟持部材120Lが配設され、多関節リンク幅方向右側に右側挟持部材120Rが配設されている。
さらに、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが、第1リンク部材110に対して回転自在である。
【0030】
これにより、屈曲姿勢での多関節リンク100Aの曲げ半径とケーブル類Cの曲げ半径とが略同じになり、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rがケーブル類Cを挟持してケーブル類Cが左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rに対して摺動しない。
【0031】
さらに、従来技術のリンク部材の内部を空洞にして内部にケーブル類Cを挿通する構成と比べて、リンク部材(110、150)自体がコンパクトになってリンク部材(110、150)自体の質量が小さくなって停止時の慣性力が小さくなる。
同様に、リンク部材(110、150)自体がコンパクトになってリンク部材(110、150)自体の質量が小さくなって移動時の慣性力が小さくなる。
つまり、動力源としてのモータなどを小型化できる。
さらに、部品が小さく、部品点数も少ないため、製造コストを大幅に低減できる。
【0032】
さらに、従来技術のリンク部材の内部を空洞にして内部にケーブル類Cを挿通する構成と比べて、リンク部材(110、150)自体がコンパクトになって移動時のリンク部材(110、150)同士の衝突箇所が小さくなるため、衝突音を低減できる。
また、ケーブル類Cが複数ある場合であってもケーブル類Cが多関節リンク幅方向Sに並んで複数のケーブル類Cが湾曲したときの複数のケーブル類Cのそれぞれの曲げ半径が略同じとなる。
【0033】
さらに、ケーブル類Cが複数あり多関節リンク幅方向両側でケーブル類Cを挟持する場合は多関節リンク幅方向一方側でケーブル類Cを挟持することで生じるケーブル類Cの曲げ抵抗による反発力と幅方向他方側で同様に生じる反発力とが相殺または減殺される。
つまり、多関節リンク幅方向両側での力のバランスがよく、多関節リンク100Aの捩れを防止するとともに多関節リンク100Aの屈曲をスムーズにできる。
【0034】
さらに、直線姿勢と屈曲姿勢との間で姿勢が変化する際にケーブル類Cに無理な力が作用しようとした場合であっても、無理な力を受けて自動的に左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが第1リンク部材110に対して無理な力を逃がす方向へ回転して無理な力が逃げる。
例えば、多関節リンク100Aにおける直線姿勢から屈曲姿勢に変化する箇所やこの逆に屈曲姿勢から直線姿勢に変化する箇所では、所謂、多角形運動による変位差によりケーブル類Cに対して無理な力が作用しようとする。
【0035】
そして、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが第1リンク部材110に対して回動自在であることにより、無理な力を受けて自動的に左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが第1リンク部材110に対して無理な力を逃がす方向へ回転する。
つまり、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rは、無理な力を受け止めずに、回転することで無理な力を受け流す。
そのため、反発力が生じない。
【0036】
具体的に、第1リンク部材110は、
図5(A)〜
図5(C)に示すように、連結ピン111と、ピン孔112と、円形貫通穴113と、一端側直線姿勢保持面114と、他端側直線姿勢保持面115と、一端側屈曲姿勢規制面116と、他端側屈曲姿勢規制面117と、爪係合凹部118とを有している。
このうち、連結ピン111は、第1リンク部材110におけるケーブル長手方向一端側で多関節リンク幅方向両側に突出するように配設されている。
【0037】
また、ピン孔112は、第1リンク部材110におけるケーブル長手方向他端側に配設され、ケーブル長手方向Tで隣の第2リンク部材150(または第1リンク部材110)の連結ピン111と回動自在に係合するように設けられている。
さらに、円形貫通穴113は、ケーブル長手方向Tで第1リンク部材110における連結ピン111とピン孔112との間で多関節リンク幅方向Sに貫通して配設されている。
【0038】
また、一端側直線姿勢保持面114は、第1リンク部材110におけるケーブル長手方向一端側に配設されており、他端側直線姿勢保持面115は、第1リンク部材110におけるケーブル長手方向他端側に配設されている。
そして、多関節リンク100Aが直線姿勢のとき、1つの第1リンク部材110の一端側直線姿勢保持面114が、ケーブル長手方向Tで隣の第2リンク部材150(または第1リンク部材110)の他端側直線姿勢保持面115と面接触するように構成されている。
【0039】
同様に、一端側屈曲姿勢規制面116は、第1リンク部材110におけるケーブル長手方向一端側に配設されており、他端側屈曲姿勢規制面117は、第1リンク部材110におけるケーブル長手方向他端側に配設されている。
そして、多関節リンク100Aが屈曲姿勢のとき、1つの第1リンク部材110の一端側屈曲姿勢規制面116が、ケーブル長手方向Tで隣の第2リンク部材150(または第1リンク部材110)の他端側屈曲姿勢規制面117と面接触するように構成されている。
つまり、1つの第1リンク部材110と隣の第2リンク部材150(または第1リンク部材110)とが鈍角で小さく屈曲して多関節リンク100Aの一部が弧を描くような屈曲姿勢となる。
その結果、ケーブル類Cは折れ曲がることなく、弧を描くように曲がる。
【0040】
さらに、爪係合凹部118は、一例として第1リンク部材110におけるリンク屈曲内外方向外側に4つ配設され、多関節リンク幅方向Sで対となるように構成されている。
また、
図5(D)乃至
図5(F)に示すように、留め部材130は、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rの後述する係合溝121aと係合する係合凸部131と、第1リンク部材110の4つの爪係合凹部118とそれぞれ係合する4つの爪部132とを有している。
【0041】
さらに、
図6(A)および
図6(B)に示すように、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rは、それぞれ円柱形基体部分121と、挟持部分122とを一体に有している。
ここで、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが、可撓性素材で形成されている。
これにより、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが移動時に基準面となる支持体160の支持面161を叩いた場合であっても左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが撓んで衝撃が吸収される。
つまり、騒音を低減できる。
【0042】
さらに、円柱形基体部分121に設けられた係合溝121aが、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rの回転方向である円柱の周方向に延びている。
そして、円柱形基体部分121が、円形貫通穴113に入った状態で、第1リンク部材110に係止される留め部材130の係合凸部131が、円柱形基体部分121の係合溝121aと係合している(
図4(C)参照)。
これにより、第1リンク部材110に対する左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rの回動が許容される他方で第1リンク部材110に対する多関節リンク幅方向S(左右方向)での左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rの移動が規制される。
また、
図3に示すように、円形貫通穴113に円柱形基体部分121を入れて、留め部材130を第1リンク部材110に係止するだけで、
図2に示す状態に組み立てることができる。
【0043】
さらに、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが、第1リンク部材110に対してそれぞれ独立して回転自在である。
これにより、例えば、左右で異なる外径のケーブル類Cを設置すると左右それぞれで作用しようとする無理な力の大きさや反発力の大きさが異なるが、左右それぞれで作用しようとする無理な力の大きさに応じた回転量で左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rがそれぞれ回転する。
【0044】
また、挟持部分122は、円柱形基体部分121から屈曲内側挟持部分122aと屈曲外側挟持部分122bとの二股状に分かれて多関節リンク幅方向外側に延設されている。
そして、屈曲内側挟持部分122aおよび屈曲外側挟持部分122bがケーブル類Cを多関節リンク屈曲内側および外側の両側から挟持するように構成されている。
本実施例では、二股状に分かれた挟持部分122の屈曲内側挟持部分122aと屈曲外側挟持部分122bとが、多関節リンク幅方向Sに所定間隔で設けられ、二股状に分かれた箇所を貫通する複数の係止孔122aa、122baをそれぞれ有している。
【0045】
そして、この係止孔122aa、122baが、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rとは別部材のピン140と係合自在に設けられている。
これにより、ケーブル類Cの径の大きさに応じた係止孔122aa、122baを選ぶことで左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rのそれぞれ二股状に分かれた挟持部分122とケーブル類Cとの間の無駄な隙間が小さくなりケーブル類Cに対する挟持力が大きくなる。
さらに、多関節リンク幅方向Sで複数のケーブル類Cの間にピン140が位置することで複数のケーブル類Cが互いに接触せずに多関節リンク幅方向Sに並ぶ。
つまり、複数のケーブル類C同士の接触による表皮の摩耗を防止する。
【0046】
具体的に、ピン140は、
図6(C)に示すように、大径部分141と、小径部分142と、中径部分143とからなる。
このうち、大径部分141の径および中径部分143の径は、係止孔122aa、122baの径より大きく、小径部分142の径は、係止孔122aa、122baの径より小さく設けられている。
そして、中径部分143を係止孔122aa、122baに押し込むと係止孔122aa、122baが広がって中径部分143が通過し、大径部分141と中径部分143とで屈曲内側挟持部分122aおよび屈曲外側挟持部分122bを挟み込んだ状態となる。
これにより、ケーブル類Cに対する挟持力が大きくなる。
【0047】
なお、例えば、二股状に分かれた挟持部分122の一方の屈曲内側挟持部分122aが、多関節リンク幅方向Sに所定間隔で設けられ係止孔122aa、122baを複数有し、二股状に分かれた挟持部分122の他方の屈曲外側挟持部分122bが、多関節リンク幅方向Sに所定間隔で設けられて係止孔122aaと係合自在な突起を複数有している構成であってもよい。
これにより、別部材のピン140を設ける必要がないため、その分部品点数を少なくできる。
【0048】
また、本実施例では、ピン140でケーブル類Cに対する挟持力を大きくしたが、必ずしもピン140で留める必要はない。
技術的思想としては、挟持部分122の屈曲内側挟持部分122aと屈曲外側挟持部分122bとの隙間をケーブル類Cの直径より小さくするとともに、屈曲内側挟持部分122aと屈曲外側挟持部分122bとを硬めに設けることにより、ピン140で留めずに十分な挟持力を発生させて、挟持部分122の屈曲内側挟持部分122aと屈曲外側挟持部分122bとがケーブル類Cを挟持するように構成してもよい。
【0049】
また、必要に応じて、多関節リンク100Aを多関節リンク幅方向Sに2列または3列以上配置してもよい。
これにより、ケーブル類Cの本数が増えた場合であってもしっかりと支えることができる。
また、複数の多関節リンク100Aを多関節リンク屈曲内外方向Uに重ねて配置してもよい。
これにより、多関節リンク幅方向Sにスペースが制限されている場合であっても多数のケーブル類Cを支えることができる。
【0050】
このようにして得られた本発明の第1実施例であるケーブル類保護案内装置100は、多関節リンク100Aが、複数のリンク部材としての第1リンク部材110および第2リンク部材150と、この複数のリンク部材のうちの少なくとも一部である第1リンク部材110に取り付けられケーブル類Cを挟持する挟持部材120とを備え、第1リンク部材110が、ケーブル長手方向一端側に形成された連結ピン111と、ケーブル長手方向他端側に形成され連結ピン111と回転自在に係合するピン孔112と、ケーブル長手方向Tで連結ピン111とピン孔112との間で多関節リンク幅方向Sに貫通した円形貫通穴113とを有し、挟持部材120が、円形貫通穴113と係合する円柱形基体部分121と、この円柱形基体部分121から多関節リンク幅方向外側に延びるとともに二股状に分かれて設けられケーブル類Cを多関節リンク屈曲内側および外側の両側から挟持する挟持部分122とを一体に有し、挟持部材120が、第1リンク部材110に対して回転自在であることにより、ケーブル類Cの表皮の摩耗を防止できるとともに、従来技術のリンク部材の内部を空洞にして内部にケーブル類Cを挿通する構成と比べて、高い位置精度で多関節リンク100Aを停止させることができ、装置の動力源の出力の大きさを小さくでき、製造コストを大幅に低減でき、衝突音を低減でき、曲げ半径が異なることでケーブル類Cに無理な力がかかることによるケーブル類Cの断線などの不具合を防止でき、多関節リンク100Aが捩れる方向への力の作用を殆ど無にでき、無理な力の影響でケーブル類Cが破損してしまうことを防止できる。
【0051】
さらに、挟持部材120が、多関節リンク幅方向右側および左側に配設され、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが、相互に連結して一体で複数のリンク部材のうちの少なくとも一部に対して回転自在であることにより、左右両側で同様に無理な力を逃がすことができる。
【0052】
また、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rの円柱形基体部分121に設けられた係合溝121aが、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rの回転方向である円柱の周方向に延びており、円柱形基体部分121が、円形貫通穴113に入った状態で、複数のリンク部材のうちの少なくとも一部に係止される留め部材130の係合凸部131が、円柱形基体部分121の係合溝121aと係合していることにより、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが第1リンク部材110から抜けてしまうことを防止できる。
さらに、左側挟持部材120Lおよび右側挟持部材120Rが、可撓性素材で形成されていることにより、挟持部材が撓まない素材で形成されている構成と比べて騒音を低減できるなど、その効果は甚大である。