(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021167
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】通信システム、従局装置、主局装置、通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 56/00 20090101AFI20161027BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20161027BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20161027BHJP
【FI】
H04W56/00 130
H04W72/04 131
H04W64/00 120
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-51400(P2012-51400)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-187738(P2013-187738A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】向井 雅彦
【審査官】
桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−300991(JP,A)
【文献】
特開2001−145154(JP,A)
【文献】
特開2010−278676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主局装置と従局装置との間で双方向通信を行う通信システムであって、
前記主局装置は、
自局の現在位置を示す位置情報を取得する主局位置情報取得部と、
前記主局位置情報取得部による取得した自局の位置情報を主局送信データに付加して送信する位置情報付加部と
を備え、
前記従局装置は、
前記主局装置から送信される主局送信データを受信し、該主局送信データから前記主局装置の位置情報を抽出する主局位置情報抽出部と、
自局の現在位置を示す位置情報を取得する従局位置情報取得部と、
前記主局位置情報抽出部により抽出した前記主局装置の位置情報と前記従局位置情報取得部により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出部と、
前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データの最後に付加されているタイムガードと前記従局送信データの最初に付加するタイムガードとが重なるタイミングの範囲で従局送信データの送信タイミングを早くするよう調整する送信タイミング調整部と
を備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記主局装置は、
前記従局装置から送信される従局送信データを受信し、該従局送信データから前記従局装置の位置情報を抽出する従局位置情報抽出部と、
前記従局位置情報抽出部により抽出した前記従局装置の位置情報と前記主局位置情報取得部により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記従局装置と自局との距離を算出する主局距離算出部と、
前記主局距離算出部により算出された前記従局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データのデータ量を削減するよう調整する主局送信データ量調整部と
を更に備え、
前記従局装置は、
前記従局位置情報取得部により取得した自局の位置情報を前記従局送信データに付加して送信する位置情報付加部と、
前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記従局送信データのデータ量を削減するよう調整する従局送信データ量調整部と
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記主局送信データ量調整部は、
前記主局送信データに付加されているガードタイムを延長し、該延長分だけデータを削減し、
前記従局送信データ量調整部は、
前記従局送信データに付加されているガードタイムを延長し、該延長分だけデータを削減する、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記主局送信データ量調整部は、
前記主局送信データの後尾に付加されているガードタイムを延長し、該延長分だけデータを削減し、
前記従局送信データ量調整部は、
前記従局送信データの後尾に付加されているガードタイムを延長し、該延長分だけデータを削減する、
ことを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
主局装置と双方向通信を行う従局装置であって、
前記主局装置から送信される主局送信データを受信し、該主局送信データから前記主局装置の位置情報を抽出する主局位置情報抽出部と、
自局の現在位置を示す位置情報を取得する従局位置情報取得部と、
前記主局位置情報抽出部により抽出した前記主局装置の位置情報と前記従局位置情報取得部により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出部と、
前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データの最後に付加されているタイムガードと前記従局送信データの最初に付加するタイムガードとが重なるタイミングの範囲で従局送信データの送信タイミングを調整する送信タイミング調整部と
を備える
ことを特徴とする従局装置。
【請求項6】
前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記従局送信データのデータ量を削減するよう調整する従局送信データ量調整部と
を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の従局装置。
【請求項7】
従局装置と双方向通信を行う主局装置であって、
自局の現在位置を示す位置情報を取得する主局位置情報取得部と、
前記主局位置情報取得部による取得した自局の位置情報を主局送信データに付加して送信する位置情報付加部と、
前記従局装置から送信される従局送信データを受信し、該従局送信データから前記従局装置の位置情報を抽出する従局位置情報抽出部と、
前記従局位置情報抽出部により抽出した前記従局装置の位置情報と前記主局位置情報取得部により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記従局装置と自局との距離を算出する主局距離算出部と、
前記主局距離算出部により算出された前記従局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データのデータ量を削減するよう調整する主局送信データ量調整部と
を備えることを特徴とする主局装置。
【請求項8】
主局装置と従局装置との間で双方向通信を行う通信システムにおける通信方法であって、
前記主局装置が、
自局の現在位置を示す位置情報を取得する主局位置情報取得ステップと、
前記主局位置情報取得ステップにより取得した自局の位置情報を主局送信データに付加して送信する位置情報付加ステップと、
を有し、
前記従局装置が、
前記主局装置から送信される主局送信データを受信し、該主局送信データから前記主局装置の位置情報を抽出する主局位置情報抽出ステップと、
自局の現在位置を示す位置情報を取得する従局位置情報取得ステップと、
前記主局位置情報抽出ステップにより抽出した前記主局装置の位置情報と前記従局位置情報取得ステップにより取得した自局の位置情報とに基づいて、前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出ステップと、
前記従局距離算出ステップにより算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データの最後に付加されているタイムガードと前記従局送信データの最初に付加するタイムガードとが重なるタイミングの範囲で従局送信データの送信タイミングを早くするよう調整する送信タイミング調整ステップと
を有する通信方法。
【請求項9】
主局装置との間で双方向通信を行う従局装置のコンピュータを、
前記主局装置から送信される主局送信データを受信し、該主局送信データから前記主局装置の位置情報を抽出する主局位置情報抽出手段、
自局の現在位置を示す位置情報を取得する従局位置情報取得手段、
前記主局位置情報抽出手段により抽出した前記主局装置の位置情報と前記従局位置情報取得手段により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出手段、
前記従局距離算出手段により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データの最後に付加されているタイムガードと前記従局送信データの最初に付加するタイムガードとが重なるタイミングの範囲で前記従局送信データの送信タイミングを調整する送信タイミング調整手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
主局装置と従局装置との間で双方向通信を行う通信システムであって、
前記従局装置は、
前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出部と、
前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、自局から送信する従局送信データの送信タイミングを調整する送信タイミング調整部と、
前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離が所定の閾値を超え、主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記従局送信データのデータ量を削減するよう調整する従局送信データ量調整部と
を備え、
前記主局装置は、
前記従局装置と自局との距離を算出する主局距離算出部と、
前記主局距離算出部により算出された前記従局装置と自局との距離が所定の閾値を超え、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、自局から送信する主局送信データのデータ量を削減するよう調整する主局送信データ量調整部と
を備える
ことを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、従局装置、主局装置、通信方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
時分割複信方式(TDD:Time Division Duplex)では、同じ周波数を用いて双方向通信を行うため、想定した最大通信距離を基準にフレーム構成(
図3)を設計している。すなわち、伝搬遅延時間を考慮してデータの前後に最大伝搬遅延時間に相当するTG(TDD GUARD:ガードタイム)を設けることで、スロット間における衝突を回避している。
【0003】
例えば、特許文献1では、無線基地局が、他無線基地局までの距離に関する情報と、方向に関する情報とを取得し、他無線基地局までの距離が長いほど送信タイミングを早める技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、通信装置が、他の通信装置との距離が所定値を超えて、他の通信装置との無線通信を継続する場合、第2の通信装置との無線通信に用いるタイムスロット長を制御する技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、無線基地局に対する固定局の距離が異なっても両者間の距離に基づいて送信タイミングが適切となるよう調整する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−232917号公報
【特許文献2】特開2009−010664号公報
【特許文献3】特開2001−145154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1〜3では、想定した最大通信距離を基準にフレーム構成を設計する必要があるため、より長距離の通信が必要になった場合に、距離によっては全く通信ができなくなり、また、伝送容量が抑えられてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決することのできる通信システム、従局装置、主局装置、通信方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、主局装置と従局装置との間で双方向通信を行う通信システムであって、前記主局装置は、自局の現在位置を示す位置情報を取得する主局位置情報取得部と、前記主局位置情報取得部による取得した自局の位置情報を主局送信データに付加して送信する位置情報付加部とを備え、前記従局装置は、前記主局装置から送信される主局送信データを受信し、該主局送信データから前記主局装置の位置情報を抽出する主局位置情報抽出部と、自局の現在位置を示す位置情報を取得する従局位置情報取得部と、前記主局位置情報抽出部により抽出した前記主局装置の位置情報と前記従局位置情報取得部により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出部と、前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、
前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データの最後に付加されているタイムガードと前記従局送信データの最初に付加するタイムガードとが重なるタイミングの範囲で従局送信データの送信タイミングを
早くするよう調整する送信タイミング調整部とを備えることを特徴とする通信システムである。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、主局装置と双方向通信を行う従局装置であって、前記主局装置から送信される主局送信データを受信し、該主局送信データから前記主局装置の位置情報を抽出する主局位置情報抽出部と、自局の現在位置を示す位置情報を取得する従局位置情報取得部と、前記主局位置情報抽出部により抽出した前記主局装置の位置情報と前記従局位置情報取得部により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出部と、前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、
前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データの最後に付加されているタイムガードと前記従局送信データの最初に付加するタイムガードとが重なるタイミングの範囲で従局送信データの送信タイミングを調整する送信タイミング調整部とを備えることを特徴とする従局装置である。
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、従局装置と双方向通信を行う主局装置であって、自局の現在位置を示す位置情報を取得する主局位置情報取得部と、前記主局位置情報取得部による取得した自局の位置情報を主局送信データに付加して送信する位置情報付加部と、前記従局装置から送信される従局送信データを受信し、該従局送信データから前記従局装置の位置情報を抽出する従局位置情報抽出部と、前記従局位置情報抽出部により抽出した前記従局装置の位置情報と前記主局位置情報取得部により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記従局装置と自局との距離を算出する主局距離算出部と、前記主局距離算出部により算出された前記従局装置と自局との距離に基づいて、
前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データのデータ量を
削減するよう調整する主局送信データ量調整部とを備えることを特徴とする主局装置である。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は、主局装置と従局装置との間で双方向通信を行う
通信システムにおける通信方法であって、
前記主局装置が、自局の現在位置を示す位置情報を取得する主局位置情報取得ステップと、前記主局位置情報取得ステップにより取得した自局の位置情報を主局送信データに付加して送信する位置情報付加ステップと、を有し、前記従局装置が、前記主局装置から送信される主局送信データを受信し、該主局送信データから前記主局装置の位置情報を抽出する主局位置情報抽出ステップと、自局の現在位置を示す位置情報を取得する従局位置情報取得ステップと、前記主局位置情報抽出ステップにより抽出した前記主局装置の位置情報と前記従局位置情報取得ステップにより取得した自局の位置情報とに基づいて、前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出ステップと、前記従局距離算出ステップにより算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データの最後に付加されているタイムガードと前記従局送信データの最初に付加するタイムガードとが重なるタイミングの範囲で従局送信データの送信タイミングを早くするよう調整する送信タイミング調整ステップとを有する通信方法である。
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明は、主局装置との間で双方向通信を行う従局装置のコンピュータを、
前記主局装置から送信される主局送信データを受信し、該主局送信データから前記主局装置の位置情報を抽出する主局位置情報抽出手段、自局の現在位置を示す位置情報を取得する従局位置情報取得手段、前記主局位置情報抽出手段により抽出した前記主局装置の位置情報と前記従局位置情報取得手段により取得した自局の位置情報とに基づいて、前記主局装置と自局との距離を算出する
従局距離算出手段、
前記従局距離算出手段により算出された前記主局装置と
自局との距離に基づいて、
前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記主局送信データの最後に付加されているタイムガードと前記従局送信データの最初に付加するタイムガードとが重なるタイミングの範囲で前記従局送信データの送信タイミングを調整する送信タイミング調整手段、として
機能させることを特徴とするプログラムである。
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明は、主局装置と従局装置との間で双方向通信を行う通信システムであって、前記従局装置は、前記主局装置と自局との距離を算出する従局距離算出部と、前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離に基づいて、自局から送信する従局送信データの送信タイミングを調整する送信タイミング調整部と、前記従局距離算出部により算出された前記主局装置と自局との距離が所定の閾値を超え
、主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、前記従局送信データのデータ量を
削減するよう調整する従局送信データ量調整部とを備え、前記主局装置は、前記従局装置と自局との距離を算出する主局距離算出部と、前記主局距離算出部により算出された前記従局装置と自局との距離が所定の閾値を超え
、前記主局送信データと従局送信データの送信タイミングが重なる距離であると判定した場合には、自局から送信する主局送信データのデータ量を
削減するよう調整する主局送信データ量調整部とを備えることを特徴とする通信システムである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、想定される通信距離を超えてしてしまった場合でも、伝送容量を増やすことができ、また、全く通信ができなくなる状態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による、時分割複信方式を用いる主局装置、従局装置を備えた通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による、時分割複信方式を用いる主局装置1と従局装置10との通信におけるスロットを説明するための概念図である。
【
図3】時分割複信方式を用いる主局装置1と従局装置10との通信におけるスロットを説明するための概念図である。
【
図4】本実施形態による、時分割複信方式を用いる主局装置1と従局装置10とにおいて互いの距離が大きい場合に生じる遅延について説明するための概念図である。
【
図5】本実施形態による、主局装置1と従局装置10との距離が大きい場合におけるデータ通信を説明するための概念図である。
【
図6】本実施形態において、主局装置1と従局装置10との距離が大きく、送信タイミングの調整だけでは吸収できなくなってしまった場合に実施されるフレーム構成の変更を説明するための概念図である。
【
図7】本実施形態による、従局装置10での送信タイミングの調整で主局−従局間の距離による遅延時間に対処する場合の例を示す概念図である。
【
図8】本実施形態による、従局装置10での送信タイミングの調整で主局−従局間の距離による遅延時間に対処する場合の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本発明は、時分割複信方式において、その通信距離に応じて効率よくデータ通信を行う手法である。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による、時分割複信方式を用いる主局装置、従局装置を備えた通信システムの構成を示すブロック図である。図において、主局装置1は、GPS受信部3(主局位置情報取得部)、送信データ量調整部4(主局送信データ量調整部)、位置情報付加部5、距離算出部6(主局距離算出部)、及び位置情報抽出部7(従局位置情報抽出部)を備えている。GPS受信部3は、自局の現在位置を示す位置情報を取得し、距離算出部6、及び位置情報抽出部7に供給する。送信データ量調整部4は、送信ユーザデータD1を入力し、後述する距離算出部6から供給される、自局と従局装置10との距離に応じて、該送信ユーザデータD1のデータ量を調整し、位置情報付加部5に供給する。
【0019】
位置情報付加部5は、送信データ量調整部4で送信データ量が調整された送信ユーザデータD1にGPS受信部3から供給される自局の位置情報を付加して送信する。距離算出部6は、位置情報抽出部7により抽出された従局装置10の位置情報と、GPS受信部3により取得された自局の位置情報とを用いて互いの距離を算出し、送信データ量調整部4に供給する。位置情報抽出部7は、従局装置10から送信される送信信号から従局装置10の位置情報を抽出し、従局装置10の位置情報を距離算出部6に供給するとともに、受信ユーザデータD2を出力する。
【0020】
従局装置10は、送信タイミング調整部11、位置情報抽出部12(主局位置情報抽出部)、距離算出部13(従局距離算出部)、位置情報付加部14、送信データ量調整部15(従局送信データ量調整部)、及びGPS受信部18(従局位置情報取得部)を備えている。GPS受信部18は、自身の現在位置を示す位置情報を取得し、距離算出部13、及び位置情報付加部14に供給する。位置情報抽出部12は、主局装置1から送信される送信信号から主局装置1の位置情報を抽出し、主局装置1の位置情報を距離算出部13に供給するとともに、受信ユーザデータD4を出力する。
【0021】
距離算出部13は、位置情報抽出部12により抽出された主局装置1の位置情報と、GPS受信部18により取得された自局の位置情報とを用いて互いの距離を算出し、送信タイミング調整部11、及び送信データ量調整部15に供給する。送信データ量調整部15は、送信ユーザデータD3を入力し、距離算出部13から供給される、自局と主局装置1との距離に応じて、送信ユーザデータD3の送信データ量を調整し、位置情報付加部14に供給する。
【0022】
位置情報付加部14は、送信データ量調整部15で送信データ量が調整された送信ユーザデータD3にGPS受信部18で取得された自局の位置情報を付加し、送信タイミング調整部11に供給する。送信タイミング調整部11は、距離算出部13から供給される、自局と主局装置1との距離に応じて、送信タイミングを調整して、自局の位置情報が付加された送信ユーザデータD3を送信する。
【0023】
図1において、主局装置1では、GPS受信部3により取得した自局の位置情報を送信ユーザデータD1に付加して送信する。従局装置10では、位置情報抽出部12にて受信データから抽出した、主局装置1の位置情報と、自局の位置情報とを用いて互いの距離を計算し、該互いの距離に応じて、従局装置10での送信タイミングを調整する。以下、詳細に説明する。
【0024】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図2は、本実施形態による、時分割複信方式を用いる主局装置1と従局装置10との双方向通信を説明するための概念図である。また、
図3は、時分割複信方式を用いる主局装置1と従局装置10との通信におけるスロットを説明するための概念図である。
【0025】
主局装置1において、位置情報付加部5でGPS受信部3により取得した自局の位置情報を送信ユーザデータD1に付加し、送信ユーザデータD1(主局送信データ)を送信する。一方、従局装置10は、主局装置1の送信していない時間に送信タイミングを合わせてデータ(従局送信データ)を送信する。すなわち、時分割複信方式であるため、
図2に示すように、主局装置1からデータを送信する主局データ送信スロット20、21、22、…と、従局装置10からデータを送信する従局データ送信スロット30、31、…とが交互に現れる間欠送信となる。なお、
図2は、主局装置1における主局データ送信スロットのタイミングと、従局データ送信スロットのタイミングとを示している。
【0026】
主局データ送信スロット20、及び従局データ送信スロット30は、各々、
図3に示すように、先頭からTG40、データ41、TG42から構成されている(横軸は時間である)。TG40、42は、通信距離、すなわち伝搬遅延時間を考慮して配置された、許容される最大伝搬遅延時間に相当する。つまり、通常であれば、該TG40、41を設けることで、スロット間における衝突を回避することが可能である。しかし、前述したように、主局装置1と従局装置10との距離が長距離なると、TG40、42を設けただけでは対応することができなくなる。
【0027】
図4は、本実施形態による、時分割複信方式を用いる主局装置1と従局装置10とにおいて互いの距離が大きい場合に生じる遅延について説明するための概念図である。主局装置1と従局装置10との距離が大きい場合には、
図4に示すように、主局装置1からの主局データ送信スロット20に対し、従局装置10側での主局データ受信スロット20Rの受信タイミングに、距離に応じた遅延Dが生じる。このため、従局装置10側からの従局データ送信スロット30に対し、主局装置10側での従局データ受信スロット30Rの受信タイミングにも遅延が生じる。このため、主局装置10側において、
図2に示す間欠送信の送信タイミングでデータを送信しようとすると、
図4に示すように、従局データ受信スロット30Rと主局データ送信スロット21とが衝突してしまうので、正常に通信することができなくなる。
【0028】
より具体的には、
図4に示す拡大部分のように、従局データ受信スロット30Rと主局データ受信スロット21とで、それぞれのデータが衝突してしまうことになる。なお、
図3に示したように、時分割複信を行う際のスロット前後には、通信距離を考慮してTGが存在する。該TGには、情報を入れていないため、重なっても影響のないが、データ同士が重なると、正常に通信することができなくなる。
【0029】
そこで、本実施形態では、従局装置10において、主局装置1からの送信信号を受信すると、位置情報抽出部12において受信信号の中から主局装置1の位置情報を抽出し、距離算出部13において、その抽出した位置情報と従局装置(自局)10の位置情報とを用いて互いの距離を算出する。従局装置10では、送信タイミング調整部11が主局−従局間の距離に応じて送信タイミングを調整して送信データを送信する。
【0030】
図5は、本実施形態による、主局装置1と従局装置10との距離が大きい場合におけるデータ通信を説明するための概念図である。
図5に示すように、従局装置10では、主局データ受信スロット20Rから次の従局データ送信スロット30の送信タイミングにおいて、主局装置1と従局装置10との距離に応じた遅延時間を考慮した時間だけ送信タイミングを早めることで、主局装置1の送信と衝突しないようにしている。
図5に示す拡大部分のように、従局装置10側でも、主局装置1側においても、それぞれのデータは衝突していない。上述したように、TGには、情報を入れていないため、
図5に示すように、データ同士が重ならないなら、送受信でTGが重なっても通信に影響することはない。
【0031】
図6は、本実施形態において、主局装置1と従局装置10との距離が大きく、送信タイミングの調整だけでは吸収できなくなってしまった場合に実施されるフレーム構成の変更を説明するための概念図である。
図6には、主局装置1と従局装置10との距離が大きく、送信タイミングの調整だけでは吸収できなくなってしまった場合に、本実施形態で用いるフレームを示している。
【0032】
つまり、主局−従局間の距離がさらに大きくなり、従局装置10での送信タイミングの調整だけでは吸収できなくなってしまった場合には、主局装置1も従局装置10と同様に、互いの距離を算出する。そして、主局装置1、及び従局装置10の双方で、互いの距離に応じて、
図6に示すように、主局データ送信スロットフレーム20、21、22、…、従局データ送信スロット30、31、…の後尾のTG51を延長してデータ50のデータ量を延長分だけ削減する。これにより、
図4、
図5からも分かるように、従局データ受信スロット30Rと主局データ送信スロット21において、双方が重なったとしても、TGとデータとが重ならなくなる。このため、想定している通信距離以上になった場合でも、長距離通信を可能とすることができる。
【0033】
なお、従局装置10での送信タイミングの調整だけでは吸収できなくなるほど、主局−従局間の距離が大きくなったか否かは、主局装置1、及び従局装置10に、予め閾値となる距離を設定、登録しておき、送信データ量調整部4、15において、距離算出部6、13で算出した距離が、上記閾値を超えたか否かで判定すればよい。そして、互いの距離が閾値を超えた場合には、主局データ送信スロットフレーム20、21、22、…、従局データ送信スロット30、31、…の後尾のTG51を延長してデータ50を削る処理へ進むようにすればよい。なお、具体的な距離の算出方法については後述する。
【0034】
次に、上述した主局装置1と従局装置10との距離、該距離に応じて生じる遅延時間の算出方法について具体的に説明する。主局装置1と従局装置10において、GPS受信部3、18から取得したデータには、自局が現在いる場所の緯度、及び経度情報が記載されている。そこで、主局装置1または/及び従局装置10は、その緯度経度情報を送信データに付加して対向局に送信する。それぞれの主局装置1、及び従局装置10は、送信データに付加されたそれぞれの緯度経度情報から互いの距離を算出する。
【0035】
互いの距離が判明すると、光速度=299792.458km/sであることを利用して対向局に電波が届くまでの時間を計算することができる。
【0036】
例えば、主局データ送信スロット、従局データ送信スロットの前後に配置されているTGが、それぞれTG=50usであったとすると、299792.458*50/10^6=14.9kmであるため、主局−従局間の距離が29.8kmまでは従局装置10側の送信タイミングを早めることで対応できる。すなわち、該距離「29.8km」が、従局装置10で送信タイミングを早めたことにより対処できるか否かを判別するための閾値となる。
【0037】
図7(a)、(b)、及び
図8は、本実施形態による、従局装置10での送信タイミングの調整で主局−従局間の距離による遅延時間に対処する場合の例を示す概念図である。
図7(a)に示すように、主局−従局間の距離が14.9kmである場合には、従局装置10で、主局装置1と自局との距離に応じた遅延時間を考慮した時間だけ送信タイミングを早める。これにより、従局装置10側では、主局データ受信スロット20Rの後尾のTGと次の従局データ送信スロット30の先頭のTGとが丁度重なり、主局装置1側では、従局データ受信スロット30Rの後尾のTGと次の主局データ送信スロット21の先頭のTGとが丁度重なるところで通信が可能になる。
【0038】
これに対して、
図7(b)に示すように、主局−従局間の距離が29.8kmである場合には、従局装置10で、主局装置1と自局との距離に応じた遅延時間を考慮した時間だけ送信タイミングを早める。これにより、従局装置10側では、主局データ受信スロット20Rの後尾のTGと次の従局データ送信スロット30の先頭のTGとがそれぞれ相手のデータ部分に重なり、従局データ受信スロット30Rの後尾のTGと次の主局データ送信スロット21の先頭のTGとがそれぞれ相手のデータ部分に重なるところで通信が可能になる。つまり、データ同士は重なっていない。
【0039】
しかし、互いの距離が29.8kmを超えたときには、
図8に示すように、従局装置10側において、主局データ受信スロット20Rに対する従局データ送信スロット30の送信タイミングを、データの衝突しない時間まで早めたとしても、主局装置1側では、従局データ受信スロット30Rのデータ部分と主局
データ送信スロット21のデータ部分とが重なってしてしまう。
【0040】
そこで、本実施形態では、
図6に示すように、主局−従局間の距離に応じた遅延分だけデータ50を減らして後方のTG51を延長し、さらに従局装置10の送信タイミングを調整することで、長距離通信にも対応することで、想定を超えた長距離であっても長距離通信に対応することができる。
【0041】
具体的には、主局データ送信スロット、従局データ送信スロットの前後に配置されているTGが、それぞれTG=50us、距離が40kmであった場合、40/299792.458=134usとなる。このため、主局装置1、従局装置10共に後方の50usのTGを134usに変更し、前述したように、従局装置10側の送信タイミング調整を行うことで対応できる。
【0042】
なお、主局データ送信スロット、従局データ送信スロットの前後に配置されているTG51を延長してデータ50を削ることで対応する場合には、従局装置10のみでTG51を延長してデータ50を削ることも可能である。しかしながら、主局装置1、及び従局装置10の双方でデータ50を削るときに比べて倍の量のデータを削る必要があるので、主局装置1、及び従局装置10の双方で行うことが好ましい。
【0043】
上述した実施形態によれば、主局装置1と従局装置10とが互いの通信距離に応じて、従局装置10側の送信タイミングを早めることで通信距離による遅延を吸収するようにしたので、比較的に互いの距離が長距離であっても通信することができる。また、従局装置10側の送信タイミングで通信距離による遅延を吸収するようにしたので、想定される通信距離から算出したTGをより短縮することができ、その結果、データを増加させることが可能になるので、伝送容量を増やすことができる。
【0044】
また、上述した実施形態によれば、想定される通信距離をさらに超えてしまった場合であっても、主局データ送信スロット、従局データ送信スロットの前後に配置されているTGを延長してデータ部分を削ることで対応することにより、想定外の長距離通信にも対応することができる。
【0045】
また、上述した実施形態によれば、リアルタイムで正確な通信距離を把握できるため、全く通信ができなくなる状態を回避することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 主局装置
3 GPS受信部
4 送信データ量調整部
5 位置情報付加部
6 距離算出部
7 位置情報抽出部
10 従局装置
11 送信タイミング調整部
12 位置情報抽出部
13 距離算出部
14 位置情報付加部
15 送信データ量調整部
18 GPS受信部