特許第6021171号(P6021171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021171
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ペーパーホルダー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/36 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   A47K10/36 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-162962(P2012-162962)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-18577(P2014-18577A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】508205958
【氏名又は名称】ディーブイエックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087594
【弁理士】
【氏名又は名称】福村 直樹
(74)【復代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】坂本 徹
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−088238(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3133797(JP,U)
【文献】 実開昭51−002447(JP,U)
【文献】 実開平03−106996(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパーのロール状物を回転自在に保持する軸部と、前記ロール状物を覆蓋すると共に、前記ロール状物の回転を抑制することのできるカバーとを備え、
前記カバーは、前記ロール状物に対する前記カバーの摩擦力により前記ロール状物を回転させずにそのペーパーの長手方向を横切る方向にペーパーの一部を切ることができ、かつロール状物の接線方向にある第1刃と、ロール状物を回転させながら前記ペーパーを引き出しつつこれをペーパーの長手方向に沿って切る第2刃と、前記ロール状物を回転させずにそのペーパーの長手方向を横切る方向にペーパーを切り取る第3刃とを備え、前記第1刃と前記第2刃と前記第3刃とがこの順に連続するように形成され、かつ重さが300g〜700gであることを特徴とするペーパーホルダー。
【請求項2】
前記カバーは、前記ペーパーに接触し前記ペーパーとの間に摩擦力を働かせることのできる摩擦面、前記カバーの重さ、及び前記カバーに設けられたバネのうちの少なくとも一つにより、前記ペーパーのロール状物の回転を抑制することを特徴とする請求項1に記載のペーパーホルダー。
【請求項3】
前記カバーの上面を前記第1刃が下側になるようにして見た場合に、前記第1刃が前記カバーにおける左下側に、前記第3刃が前記カバーにおける右上側に配置され、前記ペーパーの長手方向に直交する方向をx方向として、前記x方向から反時計回りに回転したときの角度をθとしたとき、
前記第1刃及び前記第3刃はθが0°を超え45°未満の角度をなす方向に、前記第2刃はθが80°を超え100°未満の角度をなす方向に略直線状に形成されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のペーパーホルダー。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか一項に記載のペーパーホルダーの使用方法であって、
前記カバーの上面を前記第1刃が下側になるようにして見た場合に、前記第1刃が前記第3刃より下側に配置されているとき、
前記第1刃により前記ロール状物を回転させずに前記ペーパーを切り、前記第2刃により前記ペーパーを引き出しつつ前記ペーパーの長手方向に沿って切り、次いで第3刃により前記ロール状物を回転させずに前記ペーパーを切ることを特徴とするペーパーホルダーの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はペーパーホルダー及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設、特に病院や介護施設等では、施設内の感染の防止が非常に重要である。感染の原因の一つとして、不特定の人が手で触れるドアノブ等を介して間接的に人から人へと感染する交差感染がある。例えば、病原菌を持つ可能性のある患者等が使用する病院内のトイレでは、交差感染が起こりやすく、特に、トイレットペーパーのペーパーホルダーは、不特定の人がトイレを使用した後であって手を洗浄する前に触れる部分であるので、この部分で交差感染が生じる可能性がより高くなる。
【0003】
ペーパーホルダーには、通常、ロール状に巻かれたペーパーのロール状物を回転自在に保持するホルダー本体と、ホルダー本体の上部に設けられたこのロール状物の上方を覆うと共にペーパーを切断するカバーとが備えられている。このようなペーパーホルダーからペーパーを切り取った後には、ペーパーの切断部がカバーの下に隠れてしまうので、次にペーパーを使用する人は、カバーを持ち上げたりロール状物を回転させたりすることによりカバーの下に隠れたペーパーの切断部を引き出さなければならず、不特定の人が不衛生な手でペーパーホルダーやロール状物に触れることになる。
【0004】
また、ペーパーを切り取る際には、カバーが持ち上がらないように一方の手でカバーを抑えつつペーパーを切り取ることが多く、このような時にも不特定の人がカバーに触れることになる。
【0005】
したがって、ペーパーをペーパーホルダーから引き出して切断する際に、他人の触れた部分に触れることなく片手で切断することができれば、トイレでの交差感染の発生率を低減させることができると考えられる。また、病院や介護施設等では、視力や肢体が不自由な人が多いので、ペーパーのロール状物をペーパーホルダーから片手で簡単に引き出して切断できることが望ましい。
【0006】
特許文献1には、「既存のペーパーホルダーの上蓋1に簡単に取り付けることの出来る構造を持つ形状でペーパー固定エッジ9を設けたことを特徴とする片手で切れるペーパーカッター。」(特許文献1の請求項1参照。)が記載されている。
【0007】
特許文献2には、「・・トイレットペーパーホルダーカバー(1)に、ロール紙(7)を貫通させるための貫通穴(2)を設け、ロール紙(7)補給の際一度この貫通穴(2)にロール紙端末を下から上方向に通し誘導しておけば、以降何度使用しても紙端末部はロールから完全に分離し切断刃部(3)まで、カバーの上に紙を乗せた状態を形成している、このため極めてつまみ易く引き出し易い、これらを特徴とするトイレットペーパーホルダーにおける切断カバー。」(特許文献2の請求項1参照。)が記載されている。
【0008】
特許文献3には、「ロールペーパーを上蓋に設けた溝又は孔を通して上面に引き出し切断する事を特徴とする溝又は孔付き上蓋。」(特許文献3の請求項1参照。)が記載されている。
【0009】
特許文献4には、「カバーを上蓋と下蓋の2枚に分け、その間からペーパーを引き出して下へ向けて引く力でロールを押さえてカットし、同時につまみの紙端を残すペーパーカッター。」(特許文献4の請求項1参照。)が記載されている。
【0010】
特許文献5には、「ロールペーパー支持軸(2)とカバー支持軸(3)を本体(4)に片側だけで固定させたホルダーで(カバーは上下に動く)ロールペーパー支持軸(2)にロールペーパーを固定側の反対の空間から挿入してロールペーパーを押えカットするカバー(1)の後ろからカバー上部にペーパーを引き出してカバー先端の切歯(5)により切断するホルダー」(特許文献5の請求項1参照。)が記載されている。
【0011】
これらはいずれも、ペーパーを片手で切ることやペーパーを切った後に次の使用者がペーパーをつまみやすいペーパーホルダーを提供することを目的として開発されている。
しかし、いずれのペーパーホルダーも一長一短があり、さらなる開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−018134号公報
【特許文献2】特開2006−141921号公報
【特許文献3】特開2005−111286号公報
【特許文献4】特開2004−329798号公報
【特許文献5】実用新案登録第3116367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、ペーパーホルダーに触れることなく、ペーパーのロール状物から片手で簡単にペーパーを切り取ることができるペーパーホルダー及びその使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段は、
(1)ペーパーのロール状物を回転自在に保持する軸部と、前記ロール状物を覆蓋すると共に、前記ロール状物の回転を抑制することのできるカバーとを備え、
前記カバーは、前記ロール状物に対する前記カバーの摩擦力により前記ロール状物を回転させずにそのペーパーの長手方向を横切る方向にペーパーの一部を切ることができ、かつロール状物の接線方向に延在する第1刃と、ロール状物を回転させながら前記ペーパーを引き出しつつこれをペーパーの長手方向に沿って切る第2刃と、前記ロール状物を回転させずにそのペーパーの長手方向を横切る方向にペーパーを切り取る第3刃とを備え、前記第1刃と前記第2刃と前記第3刃とがこの順に連続するように、かつ300g〜700gの重さを有するプラスチックで形成されて成ることを特徴とするペーパーホルダーである。
【0015】
前記(1)の好適な態様としては、
(2) 前記カバーは、前記ペーパーに接触し前記ペーパーとの間に摩擦力を働かせることのできる摩擦面、前記カバーの重さ、及び前記カバーに設けられたバネのうちの少なくとも一つにより、前記ペーパーのロール状物の回転を抑制することを特徴とする前記(1)に記載のペーパーホルダーであり、
(3) 前記カバーの上面を前記第1刃が下側になるようにして見た場合に、前記第1刃が前記カバーにおける左下側に、前記第3刃が前記カバーにおける右上側に配置され、前記ペーパーの長手方向に直交する方向をx方向として、前記x方向から反時計回りに回転したときの角度をθとしたとき、
前記第1刃及び前記第3刃はθが0°を超え45°未満の角度をなす方向に、前記第2刃はθが80°を超え100°未満の角度をなす方向に略直線状に形成されて成ることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のペーパーホルダーである。
【0016】
前記他の課題を解決するための手段は、
(4) 前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のペーパーホルダーの使用方法であって、
前記カバーの上面を前記第1刃が下側になるようにして見た場合に、前記第1刃が前記第3刃より下側に配置されているとき、
前記第1刃により前記ロール状物を回転させずに前記ペーパーを切り、前記第2刃により前記ペーパーを引き出しつつ前記ペーパーの長手方向に沿って切り、次いで第3刃により前記ロール状物を回転させずに前記ペーパーを切ることを特徴とするペーパーホルダーの使用方法。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るペーパーホルダーは、前記第1刃と前記第2刃と前記第3刃とを備えるので、前記第1刃でペーパーをその長手方向を横切る方向に切り、前記第2刃でペーパーを引き出しつつこれをペーパーの長手方向に沿って切るときに、第1刃で切られたカット縁を有する短冊状のペーパー片がカバーの下から引き出される。次の使用者はこの短冊状のペーパー片を掴み代として持って、ペーパーホルダーからペーパーを引き出すことができる。従来のペーパーホルダーでは、ペーパーを切断した後にペーパーの切断部がカバーの下に隠れてしまうので、次のペーパーの使用者は、カバーを持ち上げたりロール状物を回転させたりすることによりペーパーの切断部をカバーの下から引き出さなければならなかった。しかし、この発明に係るペーパーホルダーによると、ペーパーを切断した後にペーパーの切断部がすべてカバーの下に隠れてしまうことがなく、ペーパーの切断部の一部が掴み代としてカバーの外に露出されているので、不特定の人が不衛生な手でカバーやロール状物に触れることなく、ペーパーホルダーからペーパーを引き出して、ペーパーを切り取ることができる。
【0018】
また、この発明に係るペーパーホルダーは、ロール状物を覆蓋すると共に、ロール状物の回転を抑制することのできるカバーを備えるので、前記第1刃及び前記第2刃でペーパーを切るときには、一方の手でカバーを押えつつ他方の手でペーパーを切る必要がなく、カバーに触れずに片手で簡単にペーパーを切ることができ、前記第3刃でペーパーを切るときには、ロール状物を適度に回転させることでペーパーが途中で千切れてしまうことなく、ペーパーを引き出しつつペーパーを切ることができる。よって、この発明に係るペーパーホルダーによると、不特定の人が不衛生な手でカバーに触れることなく、ペーパーを切り取ることができるだけでなく、視力や肢体の不自由な人であってもペーパー片を掴み代として持って片手で簡単にペーパーを切り取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、この発明に係るペーパーホルダーの一実施態様を示すペーパーホルダーの概略説明図である。図1(a)は、この発明に係るペーパーホルダーを壁に取付けたときに上から見たときの上面概略説明図であり、図1(b)は、この発明に係るペーパーホルダーを壁に取り付けたときに横から見たときの側面概略説明図である。
図2図2は、この発明に係るペーパーホルダーの別の実施態様を示すペーパーホルダーの上面概略説明図である。
図3図3は、この発明のペーパーホルダーに設けられたペーパーのロール状物からペーパーを切り取る工程を示す説明図である。
図4図4は、この発明のペーパーホルダーにおける第2刃でペーパーを切るときのペーパーを引く方向を示す側面概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、図面を参照しつつこの発明に係るペーパーホルダーについて説明する。図1は、この発明に係るペーパーホルダーの一実施態様を示すペーパーホルダーの概略説明図である。図1(a)は、この発明に係るペーパーホルダーを壁に取付けたときに上から見たときの上面概略説明図であり、図1(b)は、この発明に係るペーパーホルダーを壁に取り付けたときに横から見たときの側面概略説明図である。
【0021】
図1に示すように、この実施態様のペーパーホルダー1は、壁などに取り付け可能な取付け部2と、前記取付け部2の両側縁から取付け部2に対して垂直方向に延在する2つの側部3と、ペーパーのロール状物4を回転自在に保持し、2つの側部3の間に設けられ、前記取付け部2に対して平行な方向にする延在する棒状の軸部5と、前記ロール状物4の一部を覆蓋すると共に、前記ロール状物4の回転を抑制することのできるカバー6とを備える。
【0022】
この発明のペーパーホルダーは、カバーにおけるペーパーの切断部に技術的特徴を有するので、カバー以外の構成については特に限定されず、ペーパーホルダーとして公知の構成を適宜採用することができる。
【0023】
例えば、図1に示す取付け部2は板状であるが、棒状、網状など適宜の形状を採用することができる。図1に示す側部3は、側面から見て短冊状であり取付け部2に対して垂直方向に延在しているが、側面から見たその形状は楕円形状や多角形状等適宜の形状を採用することができ、また、ロール状物4全体を覆うような大きさであってもよい。側部3は軸部5を固定することができればよく、取付け部2における一方の端縁のみに設けられていてもよいし、両端縁に設けられていてもよい。図1に示す軸部5は、棒状でありロール状物4の軸孔に挿通するように設けられているが、軸部5はロール状物4を回転自在に保持することができればよく、別の態様として例えば、側部3に対して垂直方向に突出する突起部を形成し、この突起部がロール状物4の軸孔の両端部に挿入されてロール状物4を回転自在に保持するように形成されていてもよい。
【0024】
前記カバー6は、図1(a)に示すように、上面から見て略四角形であり、取付け部2側とは反対側の辺の一部が切りかかれて切欠き部11を形成している。上面から見ると、カバー6はロール状物4の左端部から右端部までを少なくとも覆う幅を有し、この切欠き部11を有する取付け部2とは反対側の辺でロール状物4が切断される。カバー6は、取付け部2の上縁に、カバー6の一辺12を軸にして回転することができるように取付けられている。カバー6は取付け部2の上縁に取付けられる態様に限らず、側部3に設けられていてもよい。図1(b)に示すように、カバー6は側面から見て取付け部2側からその反対側にあるペーパーの切断部13まで全体に渡って湾曲するように形成されているが、湾曲せずに直線状すなわち板状に形成されていてもよいし、取付け部2側からその反対側の端部までにおける一部のみが湾曲するように形成されていてもよい。
【0025】
前記カバー6は、ペーパーの切断部13に、ロール状物4を回転させずにそのペーパーの長手方向を横切る方向にペーパーの一部を切る第1刃7と、ペーパーを引き出しつつこれをペーパーの長手方向に沿って切る第2刃8と、ロール状物4を回転させずにそのペーパーの長手方向を横切る方向にペーパーを切り取る第3刃9とを備え、第1刃7と第2刃8と第3刃9とがこの順に連続するように形成されている。
【0026】
前記カバー6は、図1(a)に示すように、その上面を第1刃7が下側になるようにしてみた場合に、第1刃7がカバー6における左下側に、第3刃9がカバー6における右上側に配置され、第1刃7と第3刃9とはペーパーの引き出し方向に略直交する方向に延在し、ペーパーの一部を切ることができるように形成されている。第2刃8は第1刃7と第3刃9との間に配置され、ペーパーの引き出し方向に沿って延在し、ペーパーを引き出しつつこれをペーパーの長手方向に沿って切ることができるように形成されている。また、第2刃8と第3刃9とで切欠き部11を形成している。なお、この実施態様においては、第1刃7がカバー6における左下側に配置されているが、第1刃と第3刃とが入れ替えられて、第3刃がカバーにおける左下側に、第1刃がカバーにおける右上側に配置されていてもよい。
【0027】
また、この実施態様においては、第1刃7と第2刃8とが直交し、第2刃8と第3刃9とが直交するように形成されているが、例えば、図2に示すように、互いに直交せずに互いの刃のなす角度が鈍角になるように形成されていてもよいし、鋭角(図示せず。)になるように形成されてもよい。
【0028】
図2は、この発明に係るペーパーホルダーの別の実施態様を示すペーパーホルダーの上面概略説明図である。図2に示すように、ペーパーの長手方向に直交する方向をx方向として、このx方向から反時計回りに回転した角度をθとしたとき、第1刃7及び第3刃9はθが0°以上45°未満、特に0°を超え15°未満の角度θ1及び角度θ3をなす方向にそれぞれ略直線状に形成されているのが好ましく、第2刃8はθが80°を超え100°未満、特に85°を超え90°未満又は90°を超え95°未満の角度θ2をなす方向に略直線状に形成されているのが好ましい。これらの刃が前記角度の範囲で、互いに直交せずに、第1刃7及び第3刃9の角度θ1及び角度θ3がそれぞれ0°を超え及び/又は第2刃8の角度θ2が90°未満若しくは90°を超える方向に延在するように形成されていると、ペーパーが切り易くなり、片手であっても容易にペーパーを切断し易くなる。
【0029】
カバー6におけるこれらの刃の縁辺の形状は、特に限定されず、公知の任意の形状を採用することができ、直刃であってもよいし、鋸のようにギザギザになっている半刃であってもよい。
【0030】
前記カバー6は、ロール状物4の回転を抑制することができるように形成されている。すなわち、前記カバー6は、ペーパーを第1刃7及び第3刃9で切るときには、ロール状物4を回転させないように、またペーパーを第2刃8で切るときには、ロール状物4を適度に回転させてペーパーを引き出しつつペーパーを切れるように形成されている。例えば、カバー6が適度な重さを有すると、ペーパーを第1刃7及び第3刃9で切るときには、カバー6を一方の手で押さえることなくロール状物4を回転させずに片手で簡単に切ることができ、ペーパーを第2刃8で切るときにはロール状物4を適度に回転させることによりペーパーが途中で千切れてしまうことなく、ペーパーを引き出しつつ切ることができる。カバー6の重さは、ペーパーの材質、カバー6を形成する材料及びカバー6における刃の縁辺の形状等によっても異なるが、例えば、プラスチックで形成され、刃の縁辺が直刃であるカバーの場合には、カバーが300g〜700gの重さを有することにより、第1刃7及び第3刃9でペーパーを切るときにはロール状物4を回転させずに片手で簡単にペーパーを切ることができ、第2刃8でペーパーを切るときにはロール状物4を適度に回転させることでペーパーが途中で千切れてしまうことなく、ペーパー引き出しつつ切ることができる。
【0031】
ロール状物4の回転を抑制することのできるカバー6の構成として、この他に、カバー6におけるペーパーと接触する接触面に設けられた、ペーパーとの間に摩擦力を働かせることのできる摩擦面を挙げることができる。摩擦面としては、例えば、前記接触面の少なくとも一部に設けられた凹凸形状、前記接触面の少なくとも一部に設けられた粘着面等を挙げることができ、粘着面は例えばゴム材料等によって形成することができる。カバー6とペーパーとの間に適度な摩擦力が働くことにより、第1刃7及び第3刃9でペーパーを切るときにはロール状物4を回転させずに片手で簡単にペーパーを切ることができ、第2刃8でペーパーを切るときにはロール状物4を適度に回転させることでペーパーが途中で千切れてしまうことなく、ペーパー引き出しつつ切ることができる。
【0032】
ロール状物4の回転を抑制することのできるカバー6の構成として、この他に、カバー6に設けられたバネを挙げることができる。このバネはカバー6の接触面又は表面のいずれに設けられてもよく、第1刃7及び第3刃9でペーパーを切るときには、ロール状物4を回転させずに、第2刃8でペーパーを切るときにはペーパーを引き出すことのできる程度の押圧力をカバー6からロール状物4にかけられるように形成される。カバー6がロール状物4を適度に押圧可能にカバー6を形成することで、第1刃7及び第3刃9でペーパーを切るときにロール状物4が回転しないので、一方の手でカバー6を押える必要がない。
【0033】
ロール状物の回転を抑制することのできるカバーの構成は、前述した構成のうちの一つのみが設けられていてもよいし、2つ以上の構成が組合わされて設けられていてもよい。
【0034】
カバー6及び軸部5等のペーパーホルダー1を構成する部品の材質については、特に限定されず、ペーパーホルダーに使用される公知の材料を採用することができ、例えば、プラスチック及び金属等を挙げることができる。
【0035】
この発明のペーパーホルダーは、ロール状に巻かれたペーパーである限り公知のペーパーに使用することができ、ペーパーとして、例えば、トイレットペーパー、キッチンペーパー、感熱紙、上質紙等公知のペーパーを挙げることができる。この発明のペーパーホルダーは、これらの中でも、トイレットペーパーを保持するペーパーホルダーとして好適に使用され、不特定の人が触れることによる交差感染を予防する必要のある病院や介護施設等で使用されるトイレットペーパーを保持するペーパーホルダーとして特に好適に使用される。
【0036】
次に、この発明のペーパーホルダーの使用方法を、前記ペーパーホルダー1を例にとって以下に説明する。図3は、この発明のペーパーホルダーに設けられたペーパーのロール状物からペーパーを切り取る工程を示す説明図である。図3に示すペーパーホルダー1は、取付け部2に向かって第1刃7を下側にして見たときの図であり、以下の説明においては、取付け部2に向かって左側を左、右側を右、ロール状物4における取付け部2が設けられている位置とは反対側を手前として説明する。
【0037】
ペーパーのロール状物4は、その軸孔に軸部5を挿通させて2つの側部3の間に設置され、ロール状物4における上方から手前までの外周面の一部がカバー6で覆われている。ペーパーの使用者がペーパーの端部を持ってペーパーを引き出すときには、ペーパーがロール状物4と取付け部2との間を通って、さらにロール状物4とカバー6との間を通って引き出されるように、ロール状物4が設置される。
【0038】
ペーパーの使用者は、ロール状物4におけるペーパーの端部を持って所望の長さのペーパーを引き出す(図3(a)参照。)。ペーパーを切るときには、引き出されたペーパーを右斜め上方(図3(b)の矢印A方向)に引き、ペーパーの長手方向を横切る方向にペーパーの一部を第1刃7で切る(図3(b)参照。)。第1刃7でペーパーを切るときには、例えば、カバー6が適度な重さを有するので、ロール状物4が適度にカバー6により押圧されてロール状物4の回転が抑制され、一方の手でカバー6を押えることなく、ロール状物4を回転させずに片手で容易にペーパーを切ることができる。
【0039】
ペーパーを第1刃7で第2刃8との境界まで切った後には、ペーパーを引く方向を手前側(図3(c)及び図4の矢印B方向)に変えて、ペーパーを引き出しつつこれをペーパーの長手方向に沿って切る(図3(c)参照。)。このとき、ペーパーホルダー1を取付け板2に向かって見たときに、ペーパーを切る方向にほぼ沿ってペーパーを引き、図4に示すように、ペーパーホルダー1を側面からみたときに、ペーパーとカバー6との接点におけるカバー6の接線Tに対して反時計回りに0°を超え90°未満の範囲内の角度αだけ回転させた方向にペーパーを引くことで、ペーパーを引き出しつつ第2刃8でペーパーを切ることができる。したがって、第2刃8でペーパーを切った後には、第1刃7で切られたカット縁14を有する短冊状のペーパー片15がカバー6の下から引き出された状態で残る。
【0040】
ペーパーを第2刃8で第3刃9との境界まで切った後には、ペーパーを引く方向を再び右斜め上方(図3(d)の矢印C方向)に変えて引くことにより、ペーパーの長手方向を横切る方向にペーパーを第3刃9で切り、ペーパーの全幅に渡って切り離して完全に切断する(図3(d)参照。)。第3刃9でペーパーを切るときには、第1刃7でペーパーを切るときと同様にして、ロール状物4が適度にカバー6により押圧されてロール状物4の回転が抑制されているので、一方の手でカバー6を押えることなく、ロール状物4を回転させずに片手で容易にペーパーを切ることができる。
【0041】
このようにして、ペーパーが完全に切り離された後には、第1刃7で切られたカット縁14を有する短冊状のペーパー片15がカバー6の下から引き出された状態で残っている。この短冊状のペーパー片15は、次のペーパーの使用者の掴み代として使用することができる。したがって、従来のペーパーホルダーでは、ペーパーのカット縁が全てカバーの下に隠れてしまい、ペーパーを引き出すためにカバーを持ち上げたり、ロール状物を回転させたりしなければならなかったところ、この発明のペーパーホルダーによると、カバー6の下から短冊状のペーパー片15が引き出された状態で残っているので、これを掴み代としてペーパーを所望の長さだけ引き出すことができ、カバー6やロール状物4に触れることなく切断することができる。また、カバー6の下から引き出された状態で残っているペーパー片15は、引き千切られたような醜い状態ではなく、短冊状にきれいな状態で残っているので、美観もよい。
【0042】
前記ペーパーホルダーの使用方法では、ロール状物4からペーパーを左側から右側に向かって切り取った例について説明したが、図3において左下側にある第1刃7が右下側に、右上側にある第3刃9が左上側にある場合には、右側から左側に向かって同様にして切り取る。
【0043】
なお、この発明のペーパーホルダーは、前述した実施態様に限定されず、この発明の課題を達成することができる限り、種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、前記実施態様のペーパーホルダー1におけるカバー6は、一つの材料で一体に形成されているが、ペーパーを切る第1刃7、第2刃8及び第3刃9を有する切断部を別体としてカバーに着脱可能に設けてもよい。
【0045】
また、この発明のペーパーホルダーによると、ペーパーホルダーに触れることなく片手で簡単にペーパーを切り取ることができるので、交差感染の可能性が低減し、視力や肢体の不自由な人にとっても好ましいことを述べたが、この発明のペーパーホルダーは、交差感染の可能性のある場所及び視力や肢体の不自由な人の多い場所、例えば病院や介護施設等での使用に限定されず、あらゆる場所に設置されることができ、また、あらゆる人にとって便利に使用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 ペーパーホルダー
2 取付け部
3 側部
4 ロール状物
5 軸部
6 カバー
7 第1刃
8 第2刃
9 第3刃
図1
図2
図3
図4